(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)を、パーフルオロアルキル基を含有するビニルモノマー(E)と非フッ素系ビニルモノマー(F)から形成されている枝ポリマーに反応させて得たマクロモノマーと、非フッ素系ビニルモノマー(B)および重合性環状酸無水物(C)とを共重合させて幹ポリマーを形成することからなる、枝ポリマーの存在下で幹モノマーを重合する方法によってグラフト共重合体が製造されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の撥水撥油剤組成物。
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)と非フッ素系ビニルモノマー(B)および重合性環状酸無水物(C)とを共重合させることによって得られた幹ポリマーに、パーフルオロアルキル基を含有するビニルモノマー(E)と非フッ素系ビニルモノマー(F)を反応させることからなる、枝ポリマーと幹ポリマーを別個に重合する方法によってグラフト共重合体が製造されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の撥水撥油剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例えば、グラフト共重合体において、幹ポリマーが、
(A)必要により存在する、パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマー、
(B)必要により存在する、非フッ素系ビニルモノマー、
(C)必要により存在する、重合性環状酸無水物、
(D)枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー
から構成され、
枝ポリマーが、
(E)必要により存在する、パーフルオロアルキル基を含有するビニルモノマー、
(F)必要により存在する、非フッ素系ビニルモノマー、
(G)必要により存在する、重合性環状酸無水物
から構成されており、
成分(A)および成分(E)の少なくとも一方が必須成分であり、成分(C)および成分(G)の少なくとも一方が必須成分である。
【0008】
グラフト共重合体としては次のものが挙げられる:
(i)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および重合性環状酸無水物(C)を含有する幹ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)および重合性環状酸無水物(G)を含有する枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(ii)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)を含有し、重合性環状酸無水物(C)を含有しない幹ポリマー、重合性環状酸無水物(G)を含有し、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有しない枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(iii)重合性環状酸無水物(C)を含有し、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)を含有しない幹ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有し、重合性環状酸無水物(G)を含有しない枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(iv)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および重合性環状酸無水物(C)を含有する幹ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有し、重合性環状酸無水物(G)を含有しない枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
【0009】
(v)重合性環状酸無水物(C)を含有し、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)を含有しない幹ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)および重合性環状酸無水物(G)を含有する枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(vi)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)を含有し、重合性環状酸無水物(C)を含有しない幹ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)および重合性環状酸無水物(G)を含有する枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(vii)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および重合性環状酸無水物(C)を含有する幹ポリマー、重合性環状酸無水物(G)を含有し、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有しない枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(viii)パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および、重合性環状酸無水物(C)を含有する幹ポリマー、非フッ素系ビニルモノマー(F)を含有し、重合性環状酸無水物(G)およびパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有しない枝ポリマーを有するグラフト共重合体;
(ix)非フッ素系ビニルモノマー(B)を含有し、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および重合性環状酸無水物(C)を含有しない幹ポリマー、重合性環状酸無水物(G)およびパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(E)を含有する枝ポリマーを有するグラフト共重合体。
【0010】
幹ポリマーおよび/または枝ポリマーを形成するパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー(A)および(D)は、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートであってよい。
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは、次の一般式で表されるものであってよい。
Rf−A
2−OCOR
18=CH
2
[式中、Rfは炭素数3〜21のパーフルオロアルキル基、R
18は水素またはメチル基、A
2は2価の有機基である。]
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものを例示できる。
【0013】
[式中、Rfは炭素数3〜21のパーフルオロアルキル基、R
1は水素または炭素数1〜10のアルキル基、R
2は炭素数1〜10のアルキレン基、R
3は水素またはメチル基、Arは置換基を有することもあるアリーレン基、nは1〜10の整数である。]
【0014】
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例は次のとおりである。
CF
3(CF
2)
7(CH
2)OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
6(CH
2)OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
6(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
7(CH
2)
2OCOC(CH
3)=CH
2、
CF
3(CF
2)
7(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
7SO
2N(CH
3)(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
7SO
2N(C
2H
5)(CH
2)
2OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
6CH
2CH(OCOCH
3)CH
2OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
8CH
2CH(OH)CH
2OCOCH=CH
2、
CF
3C
6F
10(CF
2)
2SO
2N(CH
3)(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
【0016】
上記のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは2種以上を混合して用いることももちろん可能である。
パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーは、他のフッ素系モノマーを使用してもよい。他のフッ素系モノマーとしては、フッ素化オレフィン(炭素数、例えば3〜20)、例えば、CF
3(CF
2)
7CH=CH
2などが挙げられる。
【0017】
非フッ素系ビニルモノマー(B)および(F)としては、例えば、(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルは、(メタ)アクリル酸と、脂肪族アルコール、例えば、一価アルコールまたは多価アルコール(例えば、2価アルコール)とのエステルであってもよい。
非フッ素系ビニルモノマーとしては、例えば以下のものを例示できる。
【0018】
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートグリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グルコシルエチルメタクリレート、メタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、p−イソプロピルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類。
【0019】
さらに、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルキルケトン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
また、非フッ素系ビニルモノマーは、ケイ素系モノマー(例えば、(メタ)アクリロイル基含有アルキルシラン、(メタ)アクリロイル基含有アルコキシシラン、(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン)であってよい。
【0020】
ケイ素系モノマーとしては、(メタ)アクリロキシトリアルキルシラン、(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシポリシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピルトリアルキルシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルポリシロキサン、アリルトリアルキルシラン、アリルトリアルコキシシラン、アリルポリシロキサン、ビニルトリアルキルシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルポリシロキサンが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリロキシプロピルポリシロキサンは、
【化4】
[式中、R
20:HまたはCH
3、R
21:HまたはCH
3、R
22:HまたはCH
3
、R
23:HまたはCH
3、n=1〜100]
(例えば、(メタ)アクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン)
であってよい。
上記の非フッ素系ビニルモノマーは2種以上を混合して用いることもできる。
【0022】
重合性環状酸無水物(C)および(G)は、一分子中にビニルモノマー(例えば、パーフルオロおよび/または非フッ素系ビニルモノマー)と共重合可能な炭素−炭素二重結合と、少なくとも1つの分子内環状カルボン酸無水物構造を持つ化合物であってよい。重合性環状酸無水物(C)および(G)の炭素−炭素二重結合、環状カルボン酸無水物構造の環内であっても環外であってもよい。
【0023】
環状カルボン酸無水物構造の環内に炭素−炭素二重結合を有する重合性環状酸無水物(C)および(G)は、例えば、式:
【化5】
[式中、R
31、R
32は、独立して、水素原子または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を示し、R
31とR
32は一緒になって、4〜30個の炭素原子を有する置換または非置換の環を形成することができる。]
で示される化合物であってよい。
具体的には、無水マレイン酸(R
31=H、R
32=H)、無水シトラコン酸(R
31=H、R
32=CH
3)が挙げられる。
【0024】
環状カルボン酸無水物構造の環外に炭素−炭素二重結合を有する重合性環状酸無水物(C)および(G)は、例えば、式:
【化6】
[式中、R
33とR
34は一緒になって、炭素−炭素二重結合を有し、4〜30個の炭素原子を有する置換(例えば、メチル基または、環状無水物基による置換)または非置換の環を形成する。R
35、R
36は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)を示す。R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42は、独立して塩素原子または水素原子または1〜10個の炭素原子を有する飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)を示してよく、R
37とR
39は一緒になって、置換(ハロゲン原子置換)または非置換の炭素数1〜10の二価の飽和炭化水素基を形成してよい。]
【0025】
重合性環状酸無水物(C)および(G)は、例えば以下のものであってもよい。
【化7】
[無水イタコン酸]
【化8】
[マレイン化メチルシクロヘキサン四塩基酸無水物]
【0026】
【化9】
[メチルテトラヒドロ無水フタル酸]
【化10】
[無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸]
【化11】
[メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物]
【化12】
[無水クロレンド酸]
【0027】
重合性環状酸無水物(C)および(G)は、炭素−炭素二重結合および1つの分子内環状カルボン酸無水物構造を有するもの、例えば無水マレイン酸が好ましい。
【0028】
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)における結合する基は、NCO基、グリシジル基、酸クロライド基および/またはハロメチル基であってよい。
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)は、イソシアネート基、グリシジル基または酸クロライド基含有ビニルモノマーであってよい。イソシアネート(NCO)基、グリシジル基または酸クロライド基が、枝ポリマーの活性水素基と反応して、幹ポリマーと枝ポリマーが結合する。
【0029】
イソシアネート基含有ビニルモノマーとは、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基を有する化合物を意味する。一般に、イソシアネート基含有ビニルモノマーにおいて、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基の数は1である。イソシアネート基含有ビニルモノマーの分子は、通常、分子の一末端に炭素−炭素二重結合、他末端にイソシアネート基を有する。
【0030】
イソシアネート基含有ビニルモノマーの例は、
(i)イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル
(ii)式:H
2C=C(R
11)−A
1−NCO
[R
11:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分岐状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基)、A
1:直接結合または炭素数1〜20の炭化水素基]
で示されるビニルイソシアネート、または
(iii)イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(iii−2)との反応物
である。
【0031】
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル(i)としては、
H
2C=C(R
12)COO(CH
2CH
2O)
n(CH
2)
m−NCO
[R
12:HまたはCH
3、n:0〜20、m:1〜20]
(例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート)
が挙げられる。
【0032】
ビニルイソシアネート(ii)としては、
H
2C=C(R
13)−NCO
[R
13:炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)]
H
2C=C(R
14)−(CH
2)
n−NCO
[R
14:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)、n:2〜20]
H
2C=C(R
15)−Ph−C(R
16)
2−NCO
[R
15:HまたはCH
3、R
16:HまたはCH
3、Ph:フェニレン基]
が挙げられる。
【0033】
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(iii−2)(以下、「活性水素を有するモノマー」ともいう)としては、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
HO(CH
2CH
2O)
nCOC(R
17)C=CH
2
[R
17:HまたはCH
3、n=2〜20]、
アミノエチル(メタ)アクリレート
が挙げられる。
【0035】
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、活性水素を有するモノマー(iii−2)の反応は、溶媒(特に、非プロトン性溶媒、例えばエステル系溶媒)中で、要すればジブチルスズジラウレート等の触媒を用いて行ってよい。反応において、活性水素を有するモノマー(iii−2)の量は、イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)に対して1.0〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.7当量であってよい。
【0036】
グリシジル基を有するビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
酸クロライドを有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリロイルクロリドが挙げられる。
【0037】
枝ポリマーと結合する基がイソシアネート基、グリシジル基または酸クロライド基である場合、枝ポリマーは、上記モノマーおよび連鎖移動剤から形成されうる。幹ポリマーにある枝ポリマーと結合する基(すなわち、イソシアネート基、グリシジル基または酸クロライド基)と反応する枝ポリマーの活性水素基は、枝ポリマーの一端に結合した連鎖移動剤の活性水素基である。
【0038】
連鎖移動剤は、両末端に活性水素基を有する連鎖移動剤、例えば活性水素基を有するアルキレンチオール連鎖移動剤または活性水素基を有するアリール連鎖移動剤であってよい。活性水素基としては、OH、NH
2、SO
3H、NHOH、COOH、SHが挙げられる。アルキレンチオールのアルキレン基の炭素数は、1〜20であってよい。
【0039】
アルキレンチオール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
HS(CH
2)
nOH [n=2、4、6、11]
HSCH
2COOH
HSCH
2CH(CH
3)COOH
HSCH
2CH
2SO
3Na
HSCH
2CH
2SO
3H
【化13】
【0040】
アリール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
【化14】
【化15】
【0041】
例えば、枝ポリマーと結合する基がNCO基である場合、連鎖移動剤の活性水素基は、幹ポリマーのイソシアネート基と反応して−NH−C(=O)−結合(アミド結合)を形成する。活性水素基がOH基である場合は、ウレタン結合(−NH−C(=O)−O−)を形成する。活性水素基がNH
2基である場合は、ウレア結合(−NH−C(=O)−NH−)を形成する。
【0042】
連鎖移動剤の量は、枝モノマーの量に対してモル比で、0.7以下、例えば0.05〜0.7、特に0.1〜0.5であってよい。枝モノマーを重合して得られた枝ポリマーの1つの末端には、連鎖移動剤が結合していてよい。連鎖移動剤は、枝ポリマーの鎖の長さを調節できる。
【0043】
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)は、ハロメチル基(−CH
2X(X:ハロゲン原子))を有するビニルモノマーであってよい。ハロメチル基におけるハロゲン原子を枝ポリマーに置換することによって、幹ポリマーと枝ポリマーが結合しうる。
ハロメチル基を有するモノマーは、ハロメチル基およびスチレン基を有するモノマーであってよい。
【0044】
ハロメチル基を有するハロメチルモノマーは、式:
【化16】
[式中、Rは、−CH
3またはHであり、R’は、直接結合またはC
1-3のアルキレン基、Xはハロゲン原子である。]
で示される化合物であってよい。
【0045】
ハロメチルモノマーの例は、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、1−クロロエチルスチレンなどである。ハロメチル基のハロゲンが塩素であることが好ましい。
【0046】
幹ポリマーおよび/または枝ポリマーは、少なくとも2種の繰り返し単位を有することが好ましい。幹ポリマーおよび/または枝ポリマーは、ブロックポリマーであっても、ランダムポリマーであってもよい。
【0047】
グラフト共重合体100重量部に対して、
パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマー(A)と(E)の合計量が10〜75重量部、例えば10〜65重量部であり、
非フッ素系ビニルモノマー(B)と(F)の合計量が0〜89.8重量部、例えば0〜89、特に1〜50重量部であり、
枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)の量が0.1〜10重量部、例えば1〜10重量部であり、
重合性環状酸無水物(C)と(G)の合計量が0.1〜89.9重量部、例えば0.1〜50であってよい。
【0048】
幹ポリマーと枝ポリマーの重量比は、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、特に30:70〜70:30であってよい。
【0049】
幹ポリマーは、幹ポリマー100重量部に対してパーフルオロアルキル基を有するビニルモノマー(A)から誘導された繰り返し単位0〜75重量部、例えば0〜65、特に1〜50重量部を有していてよい。
幹ポリマーは、幹ポリマー100重量部に対して重合性環状酸無水物(C)から誘導された繰り返し単位0.1〜89.9重量部、例えば0.1〜50重量部を有していてよい。
【0050】
枝ポリマーは、枝ポリマー100重量部に対してパーフルオロアルキル基を有するビニルモノマー(E)から誘導された繰り返し単位0〜75重量部、例えば0〜65、特に1〜50重量部を有していてよい。
枝ポリマーは、枝ポリマー100重量部に対して重合性環状酸無水物(G)から誘導された繰り返し単位0〜75重量部、例えば0〜50重量部を有してよい。
【0051】
グラフト共重合体の数平均分子量(THF中でのGPC、スチレン換算)は、5,000〜200,000、好ましくは5,000〜100,000であってよい。
【0052】
グラフト共重合体の合成法は、マクロモノマーによるグラフト重合、活性水素と反応性を持つ基(NCO基、グリシジル基、酸クロライド基)を持つ幹ポリマーに、活性水素基を持つ連鎖移動剤により重合した片末端に活性水素基を有する枝ポリマーを反応させる方法、ATRP法(atomic transfer radical polymerization)のようなハロメチル基を有する幹ポリマーにハロゲン化金属触媒によりリビングラジカルを発生し、ハロゲン原子を枝ポリマーに置換する方法、幹ポリマーにラジカル、カチオン活性種、アニオン活性種、ヒドロペルオキシドのような連鎖移動開始種を用いて、枝モノマーを重合する方法(特公昭61−50082公報参照)等が挙げられるが、種々の用途に合わせた分子設計をするにあたって枝ポリマーの重合度制御の容易なマクロモノマーによるグラフト重合や活性水素と反応性を持つ基(NCO基、グリシジル基、酸クロライド基)を持つ幹ポリマーに、活性水素基を持つ連鎖移動剤により重合した片末端に活性水素基を有する枝ポリマーを反応させる方法、ATRP法のようなハロメチル基を有する幹ポリマーにハロゲン化金属触媒によりリビングラジカルを発生し、ハロゲン原子を枝ポリマーに置換する方法が好適である。
【0053】
本発明のグラフト共重合体の製造は、例えば、枝ポリマーと結合する基が、NCO基、グリシジル基または酸クロライド基である場合に、以下の方法(A)または(B)のどちらで行ってもよい。
(A)枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマーを枝ポリマーに反応させて得たマクロモノマーと、共重合可能なモノマー(幹モノマー)を共重合させて幹ポリマーを形成することからなる方法(枝ポリマーの存在下で幹モノマーを重合する方法)、または
(B)枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させることによって得られた幹ポリマーに、枝ポリマーを反応させることからなる方法(枝ポリマーと幹ポリマーを別個に重合する方法)。
【0054】
方法(A)は、以下の工程からなる:
(A−1)枝ポリマーの構成成分であるモノマー(枝モノマー)、必要により存在する、連鎖移動剤を重合して枝ポリマーを得る;
(A−2)得られた枝ポリマーと、枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマーを反応させ、マクロモノマーを得る;
(A−3)マクロモノマーを幹モノマーと重合して、グラフト共重合体を得る。
【0055】
方法(B)は、以下の工程からなる:
(B−1)幹ポリマーの構成成分である枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマーと共重合可能なモノマーを重合して、枝ポリマーと結合する基を有する幹ポリマーを得る;
(B−2)得られた幹ポリマーに、別に合成した枝ポリマーをグラフト化して、グラフト共重合体を得る。
【0056】
枝ポリマーの重合工程(A−1)および幹ポリマーの重合工程(A−3およびB−1)は、溶媒中で、重合開始剤を用いて、70〜80℃の温度で行ってよい。重合時間は、一般に2〜12時間である。
【0057】
枝ポリマーを構成する連鎖移動剤の活性水素基と、幹ポリマーを構成するモノマーに含まれているイソシアネート基との反応工程(A−2およびB−2)は、溶媒中で、30〜65℃の温度で行ってよい。反応時間は、一般に2〜24時間である。
【0058】
重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシドピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0059】
重合溶媒は、極性溶媒、炭化水素系溶媒、およびそれらの混合溶媒のいずれであってもよい。枝ポリマーと結合する基が反応系に存在する場合(すなわち、工程(A−2)、(B−1)および(B−2))において、アルコール系溶媒などの活性水素基を持つプロトン性溶媒は使用できない。
【0060】
枝ポリマーと結合する基がハロメチル基である場合、グラフト共重合体の製造は次のようにして行うことができる。
(C−1)ハロメチルモノマー(例えば、クロロメチルスチレン)と他のモノマーと溶媒と重合開始剤を用いて、幹ポリマーを製造する。溶媒は、ハロゲンを含まない有機溶媒である。幹ポリマー製造で用いる溶媒の例は、以下の枝ポリマー製造で説明する溶媒の例と同様である。幹ポリマーの典型的な重合条件の例は、重合温度110℃、時間4hrである。重合開始剤としては、パーオキサイド等の通常の重合開始剤を使用できる。
(C−2)幹ポリマーに、枝モノマーとハロゲン化金属触媒を添加して、枝ポリマーが幹ポリマーに結合したグラフト共重合体を得る。
【0061】
反応手順(C−2)において、幹ポリマーのハロメチル基(−CH
2X(X:ハロゲン原子))の反応性を使用して、枝ポリマーを幹ポリマーに結合させる。ハロゲン化金属触媒によりリビングラジカルを発生して、幹ポリマーのハロメチル基におけるハロゲン原子を枝ポリマーに置換する反応が生じていると考えられる。このような反応手法は、ATRP法(atomic transfer radical polymerization)またはATRA法(atom transfer radical addition)と呼ばれ、例えば、J.S.Wang, K.Matyjaszewsky, Macromolecules, 28, 7572(1955)に記載されている。
【0062】
触媒として使用するハロゲン化金属のハロゲンは塩素であることが好ましい。ハロゲン化金属の金属の例は、銅(Cu)および第VIII族遷移金属[例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)]である。ハロゲン化金属の例は、CuCl、CuCl
2、FeCl
2、NiCl
2およびRuCl
2である。ハロゲン化金属(例えば、CuCl)の添加量は、ハロメチルモノマー(例えば、クロロメチルスチレン)1モルに対して、0.1〜5モル、好ましくは0.5〜1.5、更に好ましくは0.8〜1.2モルであってよい。
【0063】
ハロゲン化金属の可溶化剤または分散剤(すなわち、促進剤)を用いることが好ましい。促進剤はハロゲン化金属に配位して配位子となり、重合溶媒中でのハロゲン化金属の溶解度を増大させる化合物であることが好ましい。促進剤の例は、有機窒素化合物または有機リン化合物である。有機窒素化合物(例えば、アミン)の例は、ビピリジル(2,2'−ジピリジン)、2,2'−ジピリジンの誘導体、例えば4,4'−ビス(5−ノニル)−2,2'−ジピリジン、トリフェニルアミン、キノリン、テトラメチレンジアミン、アルキル基の炭素数が2〜10のトリアルキルアミン、1,10−フェナンスロリン、(CH
3)
2N(C
2H
4N(CH
3))
nCH
3[式中、n=1、2または3である。]で表される化合物である。有機リン化合物の例は、P(C
6H
5)
3、P(OC
6H
5)
3、P(C
2H
5)
3、P(OC
2H
5)
3である。促進剤の量は、ハロゲン化金属1モルに対して、10モル以下、例えば0.5〜8モル、好ましくは1〜4モルで、更に好ましくは1.8〜3モルであってよい。
【0064】
枝ポリマーを形成するATRP反応温度は、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜150℃であってよい。反応温度は、24時間以下、例えば1〜12時間であってよい。
反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、種々の非フッ素系溶媒を使用できるが、炭化水素系溶媒または極性溶媒およびその混合溶媒を使用することが好ましい。
【0065】
極性溶媒は、分子中に極性基を有する溶媒である。極性基は、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アシル基、エーテル酸素基などである。極性溶媒としては、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が挙げられる。
【0066】
炭化水素系溶媒は、炭素と水素のみからなる溶媒であってよい。炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素であってよい。炭化水素溶媒の例は、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルペンタン、2−エチルペンタン、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット、ミネラルターペンなどである。場合によっては、芳香族溶媒を使用してもよい。
【0067】
アルコール系溶媒の例は、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどである。グリコール系溶媒の例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびこれらのアセテートなどである。エステル系溶媒の例は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの一塩基酸エステル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどの二塩基酸エステルなどである。ケトン系溶媒の例は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン、アセトンなどである。
【0068】
炭化水素系溶媒と極性溶媒の混合物を使用しても良い。炭化水素系溶媒と極性溶媒の重量比は、100:0〜0:100、例えば5:95〜95:5であってよい。
【0069】
グラフト共重合体の有機溶媒溶液は、溶液型撥水撥油剤組成物である。
本発明の撥水撥油剤組成物には、必要に応じて他の撥水撥油剤や柔軟剤、帯電防止剤、架橋剤、防しわ剤などの添加剤を配合してよい。
【0070】
本発明の撥水撥油剤組成物で処理される被処理物としては、種々の物が挙げられる。被処理物の例は、繊維製品、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面およびプラスターなどである。繊維製品の例は、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、或いはこれらの混合繊維である。本発明の撥水撥油剤組成物を非処理物に適用するには、浸漬塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。
【0071】
またさらに本発明の撥水撥油剤組成物は、たとえば噴射剤を添加してエアゾールとして用いることができる。噴射剤としては、炭素数1または2のフルオロアルカンもしくはクロロフルオロアルカン、LPGガス、ジメチルエーテル、窒素ガスまたは炭酸ガスが好ましくあげられる。炭素数1または2のフルオロアルカンもしくはクロロフルオロアルカンの代表例としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、これらの2種類以上の混合物などがあげられる。噴射剤の量は溶媒を含む表面処理剤組成物の合計重量に対して0.05〜2倍であることが好ましい。
エアゾールは、容器内部の液体を外部に噴射する機構を有する容器、例えばエアゾール容器、スプレー容器などに収容される。
【実施例】
【0072】
以下に実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0073】
特性は、次のようにして測定した。
撥水撥油性
重合体溶液を、固形分濃度が0.8重量%になるようミネラルスピリットで希釈し、ハンドスプレーでしっとりぬれる程度に布に塗布する。布としては、ポリエステル布、ポリエステル/綿混紡布および綿布を使用する。室温で10時間乾燥後、以下の方法で、撥水性および撥油性を評価する。
【0074】
撥水性はJIS−L−1092(1998)のスプレー法による撥水性No.(下記表1参照)をもって表す。
撥油性はAATCC−TM118によって下記表2に示す試験溶液を試験布上、2箇所に数滴たらし、30秒後の浸透状態を観察し、浸漬を示さない試験溶液が与える撥油性の最高点を撥油性とする。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
製品安定性
重合体溶液を石油系溶媒で、15重量%の濃度に調整した後に−5℃で1ヶ月保存し、固化又は析出を生ずる化を評価する、含芳香族溶媒中は、ミネラルスピリットに溶解し、非芳香族溶媒中は、n-デカンに溶解して評価した。
○:均一な液状を保つ
×:固化又は析出
希釈安定性
重合体溶液をn-デカンで、固形分0.8重量%の濃度になるように希釈し、−5℃で1ヶ月保存し、固化又は析出を生ずる化を評価する、
○:均一な液状で透明
△:濁りがあるが、均一で使用可能なレベル
×:固化又は析出
【0078】
合成例1(イソシアネート含有ビニルモノマーの合成)
滴下漏斗を装着した、500mlの三口フラスコに
2,4−トリレンジイソシアネート 100g
酢酸エチル 100g
ジブチルスジズラウレート 0.1g
を投入し、60〜65℃で振とうしながら、
ヒドロキシエチルメタクリレート 90g
酢酸エチル 90g
を滴下漏斗から15分かけて滴下し8時間反応させて、以下に示すイソシアネート基含有ビニルモノマー(a)を得た。:
【化17】
【0079】
実施例1
1000mlガラス製重合サンプル中に以下の物を投入
し窒素雰囲気下で、振とうしながら75℃で8時間反応させ、枝ポリマーを得た。
メルカプトエタノール 3g
CF
3CF
2(C
2F
2)
nC
2H
2OCOCH=CH
2 (平均n=3.5) (FA) 95g
ステアリルメタクリレート (StMA) 5g
アゾイソブチロニトリル 0.17g
酢酸エチル 120g
反応後に於いてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。NMRによればポリマー中の各成分の組成比(モル比)はメルカプトエタノール:FA:StMA=1.0:4.8:0.8であった。
【0080】
次に、温度を55℃から60℃に温度を下げ、空気雰囲気で、2−イソシアネートエチルメタクリレート9gを投入し、振とうしながら55℃から60℃で8時間反応させマクロモノマーを得た。反応後に於いてIRスペクトルのNCO基の吸収ピークはほとんど消失していた。
【0081】
次にマクロモノマーに以下の物を加え、窒素雰囲気下で振とうしながら75℃で8時間反応させ、グラフト共重合体を得た。
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 100g
無水マレイン酸 (MAN) 10g
酢酸エチル 515g
ターシャリーブチルパーオキシピバレート 9g
(日本油脂製、パーブチルPV)
反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。GPCによれば、得られた重合体の数平均分子量は8,000であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0082】
実施例2
2−イソシアネートエチルメタクリレートの代わりに、合成例1で、製造されたイソシアネート基含有ビニルモノマー(a)の溶液(50重量%)38gを用いる以外は、実施例1と同様にして合成した。
枝ポリマーおよびグラフト共重合体のそれぞれの製造において、モノマー消費率は100%であった。NMRによれば枝ポリマー中の各成分の組成比(モル比)はメルカプトエタノール:FA:StMA=1.0:4.7:0.6であった。
又マクロマー化時のIRスペクトルのNCO吸収はほとんど消失した。GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は8,000であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0083】
実施例3〜6
表3に示すモノマーを用いる以外は、実施例1の手順を繰り返した。
枝ポリマーおよびグラフト共重合体のそれぞれの製造において、モノマー消費率は100%であった。NMRによればポリマー中の各成分の組成比(モル比)は実施例4では、メルカプトエタノール:FA:2−EHMA=1.0:5.2:1.8、実施例5では、メルカプトエタノール:FA:MAN=1.0:5.0:1.2、実施例6では、メルカプトエタノール:FA:StMA=1.0:5.8:1.9であった。
又マクロマー化反応のIRスペクトルのNCO吸収はほとんど消失した。
GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は実施例3では9,300、実施例4では8,900、実施例5では8,600、実施例6では8,200であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
参考例1
1000mlガラス製重合サンプル中に以下の物を投入
し窒素雰囲気下で、振とうしながら75℃で8時間反応させ、酢酸エチルを留去して、枝ポリマーを得た。
メルカプト酢酸 3g
FA 95g
ステアリルメタクリレート(StMA) 5g
アゾイソブチロニトリル 0.09g
酢酸エチル 120g
枝ポリマーの製造において、ガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。NMRによればポリマー中の各成分の組成比(モル比)はメルカプトエタノール:FA:StMA=1.0:6.1:1.3であった。
【0086】
次にメチルイソブチルケトン150g加えた枝ポリマー溶液を空気雰囲気下で、グリシジルメタクリレート(GMA)5g、N,N−ジメチルラウリルアミン1gを投入し、振とうしながら100 ℃で10時間反応させマクロモノマーを得た。反応後に於いてガスクロマトグラフィーによるグリシジルメタクリレートの消費率は100%であった。
【0087】
次にマクロモノマーに以下の物を加え、窒素雰囲気下で振とうしながら75℃で8時間反応させ、グラフト共重合体を得た。
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 100g
無水マレイン酸(MAN) 10g
メチルイソブチルケトン 465g
ターシャリーブチルパーオキシピバレート 9g
(日本油脂製、パーブチルPV)
反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。GPCによれば、得られた重合体の数平均分子量は9,400であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0088】
参考例2〜4
参考例1と同様の手順を繰り返し、表4に示すモノマーを重合した。
枝ポリマーおよびグラフト共重合体のそれぞれの製造において、モノマー消費率は100%であった。NMRによればポリマー中の各成分の組成比(モル比)は
参考例2では、メルカプト酢酸:FA:2−EHMA=1.0:6.5:2.1、
参考例3では、メルカプト酢酸:FA:MAN=1.0:6.9:1.6、
参考例4では、メルカプト酢酸:FA:StMA=1.0:7.1:2.2であった。
【0089】
又、反応後に於いてガスクロマトグラフィーによるグリシジルメタクリレートの消費率は100%であった。
GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は
参考例2では9,300、
参考例3では8,900、
参考例4では8,600であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例7
(一段目幹ポリマー重合)
500mlガラス製重合サンプルに以下の物を投入し、窒素雰囲気下で振とうしながら、80℃で8時間反応させ、幹ポリマーを得た。
クロロメチルスチレン(CMS) 5g
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 90g
無水マレイン酸(MAN) 9g
コハク酸ジエチル 100g
ターシャリーブチルパーオキシピバレート 4g
(日本油脂製、パーブチルPV)
反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。
【0092】
(二段目枝重合)
次に、幹ポリマー溶液に以下の物を添加した。
FA 100g
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 10g
塩化第一銅 3g
ビピリジル 10g
ミネラルターペン 100g
さらに、窒素雰囲気下で振とうしながら110℃で、8時間反応させ、枝ポリマーが幹ポリマーに結合したグラフト共重合体を得た。反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。
【0093】
次に、ミネラルターペンで固形分15重量%となるよう調整し、溶液に対して、10重量%の割合で活性炭を投入した。室温で2時間振とうした後、濾紙で活性炭を濾去した。
得られた濾液は、プラズマ発光分析(ICP)で、銅が残存していないことが確認された。GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は11,200であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表10に示す。
【0094】
実施例8〜9
実施例
7と同様の手順を繰り返し、表5に示すモノマーを重合した。
幹ポリマー、枝ポリマー各々の段階で反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。
GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は実施例
8では9,600、実施例
9では10,900であった。
【0095】
【表5】
【0096】
比較例1〜4
実施例1、実施例2と同様の手順を繰り返し、表6に示すモノマーを重合した。
枝ポリマーおよびグラフト共重合体のそれぞれの製造において、モノマー消費率は100%であった。NMRによれば枝ポリマー中の各成分の組成比(モル比)は比較例1では、メルカプトエタノール:FA:StMA= 1.0:4.7:0.9で、比較例2では、メルカプトエタノール:FA:StMA= 1.0:4.8:0.6で、比較例3では、メルカプトエタノール:FA:2−EHMA= 1.0:5.1:1.5で、比較例4では、メルカプトエタノール:FA:StMA= 1.0:4.8:0.7であった。
【0097】
又マクロマー化時のIRスペクトルのNCO吸収はほとんど消失した。GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は比較例1では、8,600、比較例2では、8,500、比較例3では、8,000、比較例4では、9,400であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0098】
【表6】
注)
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
【0099】
比較例5〜7
参考例1と同様の手順を繰り返し、表7に示すモノマーを重合した。
枝ポリマーおよびグラフト共重合体のそれぞれの製造において、モノマー消費率は100%であった。NMRによれば枝ポリマー中の各成分の組成比(モル比)は比較例5でメルカプト酢酸:FA:StMA=1.0:6.0:1.3、比較例6でメルカプト酢酸:FA:2−EHMA=1.0:6.4:2.2比較例7でメルカプト酢酸:FA:StMA=1.0:6.9:1.5であった。
【0100】
又マクロマー化反応終了時のガスクロマトグラフィーによるグリシジルメタクリレートの反応率は100%であった。GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は比較例5で9,100、比較例6で8,600、比較例7で8,900であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0101】
【表7】
【0102】
比較例8〜9
実施例
7と同様の手順を繰り返し、表8に示すモノマーを重合した。
幹ポリマー、枝ポリマー各々の段階で反応後においてガスクロマトグラフィーによるモノマー消費率は100%であった。
GPCによれば、得られたグラフト重合体の数平均分子量は
比較例8では11,600、
比較例9では12,300であった。
得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0103】
【表8】
【0104】
比較例10
1.0当量の2−イソシアナトエチルメタクリレートに対し0.7当量のメルカプトエタノールとジブチルスズジラウレート0.1重量%の存在下酢酸エチル中50℃で12時間反応させた。
【0105】
次いで、1000mlガラス製重合サンプル中へ得られた反応物(イソシアネート基含有ビニルモノマーとメルカプトエタノールの反応物)の5.5gと以下の物を加え、窒素雰囲気下で振とうしながら75℃で8時間反応させ、ポリマーを得た。
FA 42.7g
ステアリルメタクリレート(StMA) 2.3g
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 45.0g
無水マレイン酸(MAN) 4.5g
酢酸エチル 515g
tert−ブチルパーオキシピバレート 9g
GPCによれば、得られたランダム重合体の数平均分子量は、15,000であった。得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0106】
比較例11
参考例4と同様の手順で、表9に示すモノマーを重合した。
GPCによれば、得られたランダム重合体の数平均分子量は、13,400であった。得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0107】
比較例12
1.0当量の2−グリシジルメタクリレートに対し0.7当量のメルカプトエタノールN,N−ジメチルラウリルアミン1.0重量%の存在下酢酸エチル中50℃で12時間反応させた。
次いで、1000mlガラス製重合サンプル中へ得られた反応物(グリシジルメタクリレートとメルカプト酢酸の反応物)3.7gと以下の物を加え、窒素雰囲気下で振とうしながら75℃で8時間反応させ、ポリマーを得た。
FA 43.5g
ステアリルメタクリレート(StMA) 2.3g
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 46.0g
無水マレイン酸(MAN) 4.6g
酢酸エチル 515g
tert−ブチルパーオキシピバレート 9g
GPCによれば、得られたランダム重合体の数平均分子量は、14,500であった。得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0108】
比較例13
1000mlガラス製重合サンプル中へ以下の物を加え、窒素雰囲気下で振とうしながら75℃で8時間反応させ、ポリマーを得た。
FA 46.7g
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 46.7g
無水マレイン酸(MAN) 4.3g
クロロメチルスチレン(CMS) 2.3g
酢酸エチル 515g
tert−ブチルパーオキシピバレート 9g
GPCによれば、得られたランダム重合体の数平均分子量は、13,600であった。得られた重合体溶液について、撥水撥油性、製品安定性及び希釈安定性を測定した。結果を表11に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
本発明における態様は、次のとおりである。
A. パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーから誘導された繰り返し単位、および重合性環状酸無水物から誘導された繰り返し単位を有するグラフト共重合体、および有機溶剤を含む溶液型の撥水撥油剤組成物。
B. グラフト共重合体において、幹ポリマーが、
(A)必要により存在する、パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマー、
(B)必要により存在する、非フッ素系ビニルモノマー、
(C)必要により存在する、重合性環状酸無水物、
(D)枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー
から構成され、
枝ポリマーが、
(E)必要により存在する、パーフルオロアルキル基を含有するビニルモノマー、
(F)必要により存在する、非フッ素系ビニルモノマー、
(G)必要により存在する、重合性環状酸無水物
から構成されており、
成分(A)および成分(E)の少なくとも一方が必須成分であり、成分(C)および成分(G)の少なくとも一方が必須成分である前記Aに記載の撥水撥油剤組成物。
C. グラフト共重合体100重量部に対して、
成分(A)と(E)の合計量が10〜75重量部であり、
成分(B)と(F)の合計量が0〜89.8重量部であり、
成分(D)の量が0.1〜10重量部であり、
成分(C)と(G)の合計量が0.1〜89.9重量部である前記Bに記載の撥水撥油剤組成物。
D. 重合性環状酸無水物が、一分子中にビニルモノマーと共重合可能な炭素−炭素二重結合と、少なくとも1つの分子内環状カルボン酸無水物構造を持つ前記Aに記載の組成物。
E. 枝ポリマーと結合する基を有するビニルモノマー(D)における結合する基が、NCO基、グリシジル基、酸クロライド基および/またはハロメチル基である前記Bに記載の撥水撥油剤組成物。
F. パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーから誘導された繰り返し単位、および重合性環状酸無水物から誘導された繰り返し単位を有する、撥水撥油剤用のグラフト共重合体。