特許第5652413号(P5652413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5652413コイル部品の製造方法とワイヤの継線方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652413
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法とワイヤの継線方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20141218BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20141218BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H01F41/10 C
   H01F27/28 A
   H01F15/10 P
   H01F15/10 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-33271(P2012-33271)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-171880(P2013-171880A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 朗
(72)【発明者】
【氏名】植村 博之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 洋志
(72)【発明者】
【氏名】鷹島 亨
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広明
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−34338(JP,A)
【文献】 特開2009−16502(JP,A)
【文献】 特開2006−121013(JP,A)
【文献】 特開平1−295609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/10
H01F 27/28
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被膜が施されたワイヤのリード部を、端子金具の接続予定部から持ち上げた状態で、前記リード部の両側にレーザを照射し、前記リード部の外周に形成してある絶縁被膜を除去する工程と、
前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させ、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する工程とを有し、
前記端子金具の金具本体には、前記リード部の先端が仮止めされる巻線補助片が形成してあり、前記金具本体に対する前記巻線補助片の折曲角度を調節することで、前記端子金具の接続予定部から前記リード部を持ち上げ、または、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続した後は、前記巻線補助片が前記端子金具から除去される請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記端子金具の接続予定部は、前記金具本体に対して折曲自在に一体化された羽根片を前記金具本体に対して折りたたむことで形成される前記羽根片の表面である請求項1または2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記端子金具の金具本体には、前記金具本体に対して折曲自在に一体化される仮押さえ片が形成してあり、前記仮押さえ片と前記金具本体との間で、前記リード部の途中を仮押さえ片において仮保持可能になっており、前記リード部の長手方向に沿って前記仮押さえ片と前記巻線補助片との間に、前記接続予定部が位置する請求項1〜3のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記リード部の両側には、それぞれマイクロプリズムが配置され、前記リード部の両側には、各マイクロプリズムを通して、単一のレーザ光源からのレーザ光を、異なるタイミングで照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記リード部の両側に配置してある一対のマイクロプリズムは、一方のマイクロプリズムから前記リード部に向けて照射されるレーザ光が、他方のマイクロプリズムには入射しないように配置してある請求項5に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させた後、前記端子金具の接続予定部である表面に対して略垂直方向からレーザ光を照射することで、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する請求項1〜6のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
絶縁被膜が施されたワイヤのリード部を、端子金具の接続予定部から持ち上げた状態で、前記リード部の両側にレーザを照射し、前記リード部の外周に形成してある絶縁被膜を除去する工程と、
前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させ、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する工程とを有し、
前記端子金具の金具本体には、前記リード部の先端が仮止めされる巻線補助片が形成してあり、前記金具本体に対する前記巻線補助片の折曲角度を調節することで、前記端子金具の接続予定部から前記リード部を持ち上げ、または、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させることを特徴とするワイヤの継線方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法とワイヤの継線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスなどのコイル部品、あるいはその他の電子部品を製造する場合に、ワイヤのリード部を端子金具に接続するワイヤの継線方法が用いられることがある。コイル部品のワイヤには、絶縁被覆が施してあるため、ワイヤのリード部を端子金具に接続するには、リード部の絶縁被覆を除去する作業が必要となる。
【0003】
被覆線の絶縁被膜を除去する方法としては、たとえば特許文献1に示すように、反射鏡を用いて、被覆線の両側からレーザ光を同時に照射し、絶縁被膜を除去する方法が知られている。しかしながら、この方法は、端子電極と絶縁被膜ワイヤとの継線を考慮しておらず、端子電極と絶縁被膜ワイヤとの継線に際しては使いにくいという課題を有している。
【0004】
たとえば端子電極と絶縁被膜ワイヤとの継線に際しては、ワイヤのリード部は、端子電極に接触した状態であり、しかも、端子電極には溶接片や仮固定片などの障害物が存在し、その状態では、ワイヤのリード部に両側からレーザ光を照射することが困難である。
【0005】
特に、複数のコイル部品をまとめて(姿勢変更することなく)一括処理しようとすると、ワイヤのリード部の両側から絶縁被膜を全周剥離するようにレーザ光を当てることが困難であり、部分的にしか絶縁被膜を剥離できなかった。絶縁被膜の剥離残りや剥離カスの付着などの剥離不具合が生じると、ワイヤのリード部と端子電極との接続が不完全になるおそれがあり、不良品の発生の原因となる。
【0006】
また、剥離不具合をなくすために、レーザ光の出力を高めすぎると、リード部が変形したり、断線が生じたりするおそれがあり、やはり、ワイヤのリード部と端子電極との接続が不完全になり、不良品の発生の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−191518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、絶縁被膜の剥離不具合を低減することが可能であり、ワイヤのリード部と端子電極との接続の信頼性が向上するワイヤの継線方法とコイル部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤの継線方法は、
絶縁被膜が施されたワイヤのリード部を、端子金具の接続予定部から持ち上げた状態で、前記リード部の両側にレーザを照射し、前記リード部の外周に形成してある絶縁被膜を除去する工程と、
前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させ、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する工程とを有する。
【0010】
本発明に係るコイル部品の製造方法は、
絶縁被膜が施されたワイヤのリード部を、端子金具の接続予定部から持ち上げた状態で、前記リード部の両側にレーザを照射し、前記リード部の外周に形成してある絶縁被膜を除去する工程と、
前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させ、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する工程とを有する。
【0011】
本発明に係るワイヤの継線方法とコイル部品の製造方法によれば、絶縁被膜が施されたワイヤのリード部を、端子金具の接続予定部から持ち上げた状態で、リード部の両側にレーザを照射する。このため、端子金具の接続予定部の近くに、溶接片や仮固定片などの障害物が存在してあったしても、それらの障害物を避けて、リード部の両側にレーザを照射することが可能になる。
【0012】
したがって本発明の方法では、絶縁被膜の剥離残りや剥離カスの付着などの剥離不具合が生じ難くなり、絶縁被膜の剥離不具合を低減することが可能である。また、レーザ光が絶縁被膜の全周に沿って略均一に照射されることから、レーザ光の出力の調整が容易になり、リード部の変形や断線が防止される。したがって、その後の工程において、絶縁被膜が除去されたリード部を端子金具の接続予定部に接触させ、リード部を端子金具の接続予定部に接続する際に、ワイヤのリード部と端子電極との接続の信頼性が向上する。
【0013】
好ましくは、前記端子金具の金具本体には、前記リード部の先端が仮止めされる巻線補助片が形成してあり、前記金具本体に対する前記巻線補助片の折曲角度を調節することで、前記端子金具の接続予定部から前記リード部を持ち上げ、または、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させる。
【0014】
端子金具の金具本体に巻線補助片が形成してあることで、ワイヤの巻線作業が容易になると共に、しかも、この巻線補助片を利用して、端子金具の接続予定部からリード部を持ち上げ、その後に、リード部を端子金具の接続予定部に接触させる作業が容易になる。
【0015】
前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続した後は、前記巻線補助片が前記端子金具から除去されてもよい。巻線補助片は、コイル部品などの製品が完成した後には、一般には不要となる部分なので除去される。
【0016】
好ましくは、前記端子金具の接続予定部は、前記金具本体に対して折曲自在に一体化された羽根片を前記金具本体に対して折りたたむことで形成される前記羽根片の表面である。
【0017】
羽根片は、従来では、ワイヤのリード部の上から覆うための部分であり、リード部の両側からレーザ光を照射する際に、レーザ光の邪魔になっていた部分である。その邪魔になっていた羽根片を、金具本体に対して折りたたみ、折りたたむことで形成される羽根片の表面を接続予定部にすることで、障害物を避けて、リード部の両側にレーザを照射することが容易になる。なお、羽根片自体を除去する構造も考えられるが、羽根片自体を除去する構造に比較して、リード部を端子金具の接続予定部に安定して接触させ易く、リード部と端子金具との接続が確実である。
【0018】
好ましくは、前記端子金具の金具本体には、前記金具本体に対して折曲自在に一体化される仮押さえ片が形成してあり、前記仮押さえ片と前記金具本体との間で、前記リード部の途中を仮押さえ片において仮保持可能になっており、前記リード部の長手方向に沿って前記仮押さえ片と前記巻線補助片との間に、前記接続予定部が位置する。
【0019】
このような構造の場合に、金具本体に対する巻線補助片の折曲角度を調節することで、端子金具の接続予定部からリード部を持ち上げ、または、リード部を端子金具の接続予定部に接触させる作業が容易になる。
【0020】
好ましくは、前記リード部の両側には、それぞれマイクロプリズムが配置され、前記リード部の両側には、各マイクロプリズムを通して、単一のレーザ光源からのレーザ光を、異なるタイミングで照射する。マイクロプリズムを用いることで、複数のレーザ光源が不要となり経済的である。また特に、複数のコイル部品のワイヤ被覆をまとめて姿勢変更することなく、絶縁被膜の除去作業が容易になる。
【0021】
さらに、リード部の両側には、各マイクロプリズムを通して、単一のレーザ光源からのレーザ光を、異なるタイミングで照射するように構成することで、リード部への熱負荷を低減することが可能になる。そのため、リード部の変形や断線を有効に防止することができ、しかも、リード部の全周に亘り略均一にレーザ光を照射し、絶縁被膜の全周剥離が確実になる。
【0022】
好ましくは、前記リード部の両側に配置してある一対のマイクロプリズムは、一方のマイクロプリズムから前記リード部に向けて照射されるレーザ光が、他方のマイクロプリズムには入射しないように配置してある。この場合には、一方のマイクロプリズムからのレーザ光が他方のマイクロプリズムへ入射せず、レーザ光が光路を逆向きに辿ってレーザ光源を損傷することを有効に防止できる。
【0023】
好ましくは、前記絶縁被膜が除去された前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接触させた後、前記端子金具の接続予定部である表面に対して略垂直方向からレーザ光を照射することで、前記リード部を前記端子金具の接続予定部に接続する。この場合には、絶縁被膜の剥離不具合が無い状態で、端子金具とワイヤのリード部を良好に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の一実施形態に係るコイル部品の製造途中の斜視図である。
図2図2図1に示すコイル部品のリード部における絶縁被膜の剥離処理を行う剥離装置の平面図である。
図3図3図2に示すIII−III線に沿うマイクロプリズムの断面図である。
図4図4図2に示す剥離装置に用いられる光学系の概略図である。
図5図5(A)〜図5(C)は図1に示すコイル部品のリード部における絶縁被膜の剥離処理を含む継線方法の各工程を示す概略図である。
図6図6図1に示すコイル部品のリード部における絶縁被膜の剥離処理に用いられるレーザ光の照射状態を示す概略斜視図である。
図7図7(a)〜図7(d)は絶縁被膜の剥離状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示すように、
【0026】
本発明の一実施形態に係るコイル部品2は、コア8を有する。コア8は、たとえば(Ni,Zn)Fe、(Mn,Zn)Fe、CoFe、CuFeなどのフェライト材料で構成され、少なくとも1本のワイヤ10が巻回される巻芯部4と、巻芯部4の軸方向の両端に形成される一対の鍔部6とを有する。なお、コア8は、フェライトコアのみならずアルミナなど他のセラミックスコアを用いて構成されてもよい。
【0027】
それぞれの鍔部6には、少なくとも1つの端子金具20が装着してあり、巻芯部4で巻軸(X軸)方向に巻回してあるワイヤ10の端部であるリード部10aが端子金具20に接続される。図1は、コア8の巻芯部4にワイヤ10を巻軸(X軸)方向にコイル状に巻回した後に、ワイヤ10の各リード部10aを、端子金具に継線する前の状態を示している。
【0028】
各ワイヤ10としては、たとえば丸線や角線のエナメル線(マグネットワイヤー)、撚り線、複層線などの導線の表面に絶縁被膜が形成してある線材が用いられる。絶縁被膜の材質は、特に限定されないが、たとえばポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドなどが例示される。
【0029】
本実施形態では、各端子金具20は、たとえばFe、Ni、Cu(タフピッチ銅やリン青銅)、A1、またはこれらにSnめっきを施したものなどの金属で構成される。各端子金具20は、コア8の各鍔部6におけるX軸方向の端面6aにそれぞれ装着される第1金具本体22と、各第1金具本体22に対して折り曲げられて一体に形成され各鍔部6におけるZ軸方向の上側面6bのY軸方向の中央部に装着される第2金具本体24とを有する。なお、図面において、X軸とY軸とZ軸とは相互に垂直であり、X軸は、ワイヤ10の巻軸方向に一致する。
【0030】
第1金具本体22は、各鍔部6における端面6aにおいてY軸方向の中央部でZ軸方向に延びる中央片22aと、その中央片22aのY軸方向の両側に位置する側部片22bおよび22cとを有し、これらはZ軸方向の下方に位置する基部片22dにおいて一体的に連続している。中央片22aのZ軸方向先端には、前述した第2金具本体24が連続して形成してある。
【0031】
側部片22bおよび22cの内、いずれか一方の側部片22bのZ軸方向上端部には、巻線補助片26が、第1金具本体22に対して所定角度θ(図5(A)参照)で折り曲げて一体に成形してある。巻線補助片26の先端部には、Y軸方向に向けて突出する突出片26aが一体に形成してあり、その突出片26aの先端部には、係止片28が一体に形成してある。
【0032】
巻線補助片26に形成してある係止片28は、コア8のY軸方向の略中央位置に位置するように、単一のコイル部品2において、相互に対向する端子金具20は、同一形状の金具で構成される。すなわち、X−Y軸平面において、巻線補助片26は、相互に点対称位置となるように一対の同じ形状の端子金具20がコア8のX軸方向の両端に配置される。端子金具20をコア8の鍔部6に取り付けるには、接着、カシメ、はめ込み、挿入などの手段が採用される。
【0033】
第2金具本体24は、第1金具本体22の中央片22aと同じY軸方向幅で一体に形成してある基部片24aを有する。基部片24aには、仮押さえ片25と羽根片27とが一体に形成してある。仮押さえ片25、羽根片27および基部片24aを含めて、端子金具20は、一枚の板材を切り抜き加工した後に、折曲加工することにより形成される。
【0034】
仮押さえ片25は、ワイヤ10の巻線工程の段階では、基部片24aに対して開いた状態であり、ワイヤ10のリード部10aを、仮押さえ片25と基部片24aとの間で挟んではいない。ただし、羽根片27に関しては、ワイヤ10の巻線工程の段階またはその前の工程の段階で、基部片24aに対して折り重なるように折り曲げてあることが好ましい。巻線の邪魔にならないようにするためであるが、巻線の邪魔にならないのであれば、絶縁被膜の剥離工程の前段階までは、羽根片27に関しても、仮押さえ片25と同様に、基部片24aに対して、160度〜180度の角度で開いていても良い。
【0035】
コア8の巻芯部4に対するに対するワイヤ10の巻線工程では、フライヤー付き巻線装置などを用いる。まず、ワイヤ10における巻始め端に相当するリード部10aの先端を、一方の端子金具20の係止片28に巻き付けて、基部片24aに折り重ねてある羽根片27の上を通し、次に仮押さえ片25と基部片24aとの間の隙間を通し、巻芯部4の外周に沿って巻軸方向Xにワイヤ10を巻き付ける。
【0036】
巻芯部4へのワイヤ10の巻回が終了した段階で、そのワイヤの巻き終わり端に相当するリード部10aを、他方の端子金具20における仮押さえ片25と基部片24aとの間の隙間を通し、基部片24aに折り重ねてある羽根片27の上を通し、最後に、他方の端子金具20の係止片28に巻き付ける。
【0037】
巻線工程において、仮押さえ片25が基部片24aに対して開いている場合には、仮押さえ片25を基部片24aの上に重ねるように折り曲げ、それらの間に挟まれているリード部10aを第2金具本体24に対して仮固定する。また、巻線工程において、羽根片27が基部片24aに対して開いていた場合には、巻線工程の終了後に、羽根片27を基部片24aに対して完全に折り重なるように折り曲げ、その上に、リード部10aの一部が位置するようにする。その状態を図1に示す。基部片24aに対して完全に折り重なるように折り曲げられた羽根片27の表面が、後述する接続予定部27aとなる。
【0038】
このようにして巻線工程が終了した図1に示すコイル部品2は、図2に示す絶縁被膜の剥離装置100にセットされる。剥離装置100にセットされるコイル部品2では、巻線補助片26の第1金具本体22に対する折り曲げ角度θは、90度以上になるように調整される。折り曲げ角度θを、90度以上、好ましくは100〜120度に設定することで、図5(A)に示すように、端子金具20の接続予定部27aにリード部10aが接触しないように、リード部10bを接続予定部27aから持ち上げることができる。このような折り曲げ角度θの調整は、巻線工程の前に行っても良い。
【0039】
図2に示す剥離装置100は、複数の剥離装置40を有することが好ましく、複数の剥離装置40が、Y軸方向に沿って所定間隔で配置してあることが好ましい。各剥離装置40は、一対のマイクロプリズム30の内のそれぞれを保持する一対のプリズム保持装置42を有する。一対のマイクロプリズム30が、各コイル部品2の巻軸(X軸)方向に沿って平行となり、且つプリズム30のY軸方向の両側に位置するように、プリズム保持装置42がX軸方向の両側に配置される。
【0040】
各プリズム保持装置42は、それぞれマイクロプリズム30を,X軸回りに回転調整自在に、且つX軸、Y軸およびZ軸方向に位置調整自在に保持する。各プリズム保持装置42による各マイクロプリズム30のX軸回りの回転角度の制御と、各マイクロプリズム30のX軸、Y軸およびZ軸方向に位置調整は、図3および図6に示すように、一方のマイクロプリズム30からコイル部品2のリード部10aに向けて照射されるレーザ光Lが、他方のマイクロプリズム30には入射しないように行われる。
【0041】
図2に示す複数の装置40に保持される複数のコイル部品2の各リード部10a(図2では図示省略してあるので図1参照)には、図4に示す光学系の単一のレーザ光源50を用いてレーザ光Lが照射される。レーザ光源50としては、たとえば波長λが532nmのSHGレーザが用いられるが、これに限定されず、その他のレーザ光源を用いても良い。
【0042】
レーザ光源50から出射されたレーザ光Lは、ビーム拡大およびコリメータとしての機能を有するエキスパンダ52を通り、X軸ガルバノミラー54で反射され、Y軸ガルバノミラー56で反射または透過し、fθレンズ58を通して、各マイクロプリズム30に送られる。マイクロプリズム30に入射したレーザ光は、そこを通して、支持台60の上に設置してあるコイル部品2のY軸方向の両側に照射される。
【0043】
X軸ガルバノミラー54およびY軸ガルバノミラー56の角度を調整することで、単一のレーザ光源50から出射されたレーザ光Lは、図2に示す複数対のマイクロプリズム30の内の4つの照射位置S1〜S4の内のいずれかに順次に入射するようになっている。
【0044】
図2に示す複数対のマイクロプリズム30の内の4つの照射位置S1〜S4の内のいずれに入射するかに関しては、たとえば最初は、図2の最も左側に位置する一対のマイクロプリズム30の内の第1照射位置S1にレーザ光Lを、0.5〜1.5秒間で照射する。その後に、直ぐに、第2照射位置S2に、レーザ光Lを第1照射位置S1での照射時間と同じ時間で照射し、順次、同様にして、第3照射位置S3および第4照射位置S4に照射する。
【0045】
その後に、照射が終了した剥離装置40の隣に位置する剥離装置40に保持してある一対のマイクロプリズム30に対しても、同様にしてレーザ光を照射し、順次、照射が終了した剥離装置40の隣に位置する剥離装置40に保持してある一対のマイクロプリズム30に対して同様にしてレーザ光を照射する。
【0046】
このようにしてレーザ光Lをマイクロプリズム30の所定の照射位置S1〜S4に順次に照射していくことで、図1および図5(A)に示すコイル部品2における接続予定部27aのZ軸方向上に離れて位置するリード部10aに対して、図3および図6に示すように、Y軸方向の両側からレーザ光Lが、異なるタイミングで照射される。
【0047】
本実施形態の方法によれば、たとえば図7(a)に示す絶縁被膜14が施されたワイヤ10のリード部10aを、図5(A)に示すように、端子金具20の接続予定部27aから持ち上げた状態で、図3および図6に示すように、リード部10aのY軸方向の両側からレーザ光Lを照射する。このため、端子金具20の接続予定部27aの近くに、溶接片や仮固定片などの障害物が存在してあったしても、それらの障害物を避けて、リード部10aのY軸方向両側にレーザ光Lを照射することが可能になる。
【0048】
したがって本実施形態の方法では、図7(b)に示す絶縁被膜14の剥離残り14aや図7(c)に示す剥離カス14bの付着などの剥離不具合が生じ難くなり、図7(a)に示すように、必要な部分で、絶縁皮膜14を完全に除去できる。そのため、本実施形態の方法では、ワイヤ10の導線12の外周を完全に露出させることができ、絶縁被膜の剥離不具合を低減することが可能である。
【0049】
また、図6に示すように、レーザ光Lが絶縁被膜14の全周に沿って略均一に照射されることから、レーザ光Lの出力の調整が容易になり、図7(d)に示すリード部10aの変形や断線(図示省略)が防止される。したがって、その後の工程において、リード部10aを端子金具20の接続予定部27aに接続する際に、ワイヤ10のリード部10aと端子電極20との接続の信頼性が向上する。
【0050】
なお、リード部10aを端子金具20の接続予定部27aに接続する際には、具体的には、たとえばまず、図5(B)に示すように、巻線補助片26の第1金具本体22に対しての折り曲げ角度θaを、図5(A)に示す角度θに対して小さくなるように変化させる。そのことにより、絶縁被膜14が除去されたリード部10aを端子金具20の接続予定部27aに最大限に接触(好ましくは押し付け)させることができる。その状態で、Z軸方向の上部から、絶縁膜剥離用レーザ光とは出力が異なるレーザ光を、接続予定部27aの表面に対して略垂直方向上から照射する。
【0051】
図5(B)に示す状態で、レーザ光を接続予定部27aの表面に対して垂直方向上から照射することで、図5(C)に示すように、リード部10aにおいて絶縁被膜14が除去された導線12と羽根片27とが溶融して溶接部10bが形成され、リード部10aの導線12が羽根片27に対して強固に接続され、導線12と端子金具20との電気的接続が達成される。
【0052】
同時に、端子金具20の巻線補助片26の弾性力などにより、余分なリード部10a’は、溶接部10bから自動的に離れる。その後に、巻線補助片26は、第1金具本体22との折り曲げ部付近で、第1金具本体22から切断されて除去される。同時に、余分なリード部10a’も、巻線補助片26と共にコイル部品2から除去される。巻線補助片26は、コイル部品2が完成した後には、一般には不要となる部分なので除去される。
【0053】
このように本実施形態の方法では、端子金具20の第1金具本体22に巻線補助片26が形成してあることで、ワイヤ10の巻線作業が容易になると共に、しかも、この巻線補助片26を利用して、端子金具20の接続予定部27aからリード部10aを持ち上げ、その後に、リード部10aを端子金具20の接続予定部27aに接触させる作業が容易になる。
【0054】
なお、羽根片27は、従来では、ワイヤ10のリード部10aの上から覆うための部分であり、リード部10aの両側からレーザ光を照射する際に、レーザ光の邪魔になっていた部分である。その邪魔になっていた羽根片27を、第2金具本体24に対して折りたたみ、折りたたむことで形成される羽根片27の表面を接続予定部27aにすることで、障害物を避けて、リード部10aの両側にレーザ光Lを照射することが容易になる。なお、羽根片27自体を除去する構造も考えられるが、羽根片27自体を除去する構造に比較して、巻線補助片26の折り曲げ角度θaを調整するのみで、リード部10aを端子金具20の接続予定部27aに安定して接触させ易く、リード部10aと端子金具20との接続が確実である。
【0055】
また本実施形態では、端子金具20の第2金具本体24には、金具本体24に対して折曲自在に一体化される仮押さえ片25が形成してあり、仮押さえ片25と金具本体24との間で、リード部10aの途中を仮押さえ片25において仮保持可能になっており、リード部10aの長手方向に沿って仮押さえ片25と巻線補助片26との間に、折り畳まれた羽根片27の接続予定部27aが位置する。
【0056】
このような構造の場合には、第1金具本体22に対する巻線補助片26の折曲角度θまたはθaを調節することで、接続予定部27aからリード部10aを持ち上げ、または、リード部10aを端子金具20の接続予定部27aに接触させる作業が容易になる。
【0057】
さらに本実施形態では、図2に示すように、各コイル部品2のY軸方向の両側には、それぞれマイクロプリズム30が配置され、各マイクロプリズム30を通して、図に示す単一のレーザ光源50からのレーザ光Lを、異なるタイミングでリード部10aの両側に照射する。マイクロプリズム30を用いることで、複数のレーザ光源が不要となり経済的である。また特に、図2に示すように、複数のコイル部品2のワイヤ被覆をまとめて姿勢変更することなく、図4に示すミラー54および56の角度を制御するのみで、絶縁被膜の除去作業が容易になる。
【0058】
さらに、リード部10aの両側には、各マイクロプリズム30を通して、単一のレーザ光源からのレーザ光を、異なるタイミングで照射するように構成することで、リード部10aへの熱負荷を低減することが可能になる。そのため、リード部10aの変形や断線を有効に防止することができ、しかも、リード部10aの全周に亘り略均一にレーザ光を照射し、絶縁被膜14の全周剥離が確実になる。
【0059】
しかも本実施形態では、リード部10aの両側に配置してある一対のマイクロプリズム30は、一方のマイクロプリズム30からリード部10aに向けて照射されるレーザ光Lが、他方のマイクロプリズム30には入射しないように配置してある。そのため、一方のマイクロプリズム30からのレーザ光が他方のマイクロプリズム30へ入射せず、レーザ光Lが光路を逆向きに辿ってレーザ光源50を損傷することを有効に防止できる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、コイル部品の製造方法に用いられるワイヤの継線方法について説明したが、本発明に係るワイヤの継線方法は、コイル部品以外に、トランス、ヒーター、リードリレー、抵抗やコンデンサ等のリード付き受動部品、小型コネクタなどの電子部品におけるリード部と端子電極との接合方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
2… コイル部品
4… 巻芯部
6… 鍔部
8… コア
10… ワイヤ
10a… リード部
12… 導線
14… 絶縁被膜
20… 端子金具
22… 第1金具本体
24… 第2金具本体
25… 仮押さえ片
26… 巻線補助片
27… 羽根片
27a… 接続予定部
30… マイクロプリズム
40,100… 剥離装置
50… レーザ光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7