【実施例】
【0016】
本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の外観検査装置の全体構成を表す構成図である。光透過性を有したガラス・樹脂を原材料として成形された被検査物Sの外観を検査するため、検査台を兼ねた拡散板3上に設置する。光源2は、拡散板3の下方に配置され、拡散板3に向けて光を放射する構成になっており、光源より放射された光Lは拡散板3を透過することで拡散光L’となり、ランダムな方向から被検査物Sを照明する。被検査物Sの上方にはカラー撮像装置1が設置されており、光源2から放射された光で照明された被検査物Sを撮影する。
【0017】
カラー撮像装置1で撮影された画像データは、本発明の画像処理を行うため画像処理装置4に転送される。画像処理装置4は、画像処理の演算を行うコンピュータ装置40とデータの出力を行うプリンタ41、データの表示を行うモニタ42と画像処理装置4の操作などを行うためのキーボード・マウス等として入力機器43より構成されている。更に、コンピュータ装置40は、カラー撮像装置1で撮影された画像データを画像処理装置4に入力する接続部であるインターフェース部40dと画像処理の演算を行うCPU40a、本発明の画像処理プログラムがインストールされたメインメモリ40bやデータ等の保管を行う補助記憶装置40cで構成されている。
【0018】
次に、本発明の画像データの処理の流れを説明する。
図2は、本発明の外観検査装置の画像処理の手順を示すフローチャートである。
画像入力S1は、カラー撮像装置1で撮影された画像データを、画像処理装置4に入力する工程である。多くの場合、画像データは画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色成分の光量値に分解された画像 立て表現される。RGBの三原色による色の表現と異なる色表現方法として、色相(H)と彩度(S)を用いた表現方法がいくつか知られており、HSI(Hue、Saturation、Intensity)色空間やHSV(Hue、Saturation、Value)色空間、HLS(Hue、Lightness、Saturation)色空間などと呼ばれているものがある。
HSI変換S2は、RGB色成分で表現された画像データを色相(H)と彩度(S)で表現された色空間に変換を行う工程である。なお、HSI変換S2は、画像データを構成する色成分の表現方法を変換するだけの等価な変換であり、人間が外観検査装置のモニタ42を通して観察する画像の色が変化する訳ではない。
【0019】
抽出色指定S3は、注目している色シミなどが確認されている領域を指定し色情報を取得する工程である。予め色シミなどの色見本が存在している場合は色見本から色を指定することもある。
選択色指定S4は、前記抽出色指定S3で指定した色を、例えばR、G、Bいずれかの指定した色に変換するか指定する工程である。
色相回転S5は、抽出した領域の色が、R(赤)G(緑)B(青)いずれかが強調して見えるように画像データ全体の色相を変化させる工程である。色相の変化量は、前記抽出色指定S3で指定した色と前記選択色指定S4で指定した色のそれぞれの色相(H)の差分になる。
RGB変換S6は、前記色相回転S5を行った後の画像データを、RBG色空間で表現された画像データに変換する工程である。
【0020】
工程S7から工程S12は、前記RGB変換S6で得られた画像データから、単色の濃淡画像を生成する工程(階調処理)である。
工程S7は、RGB色空間で表現された画像データについて、選択色のデータと選択されなかった残りの2つのデータ(非選択色1、非選択色2)に区別してコンピュータ装置40のメモリに保管する工程である。なお、説明では、選択色はG(緑)とし、残りの非選択色の大小関係はR(赤)>B(青)となっている場合について記載している。
本発明による画像処理では、階調処理の方法として3種類の補正方法を実施できる。
【0021】
第一の方法は、工程S8と工程S9に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の内大きな値をとる色の色成分の光量値の差分をとる方法である。
第二の方法は、工程S10と工程S11に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の内小さな値をとる色の色成分の光量値の差分をとる方法である。
第三の方法は、工程S12と工程S13に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の色成分の光量値の平均値を求め、差分をとる方法である。
画像データについて、上記の階調処理を行うことで選択色と非選択色の色成分の光量値の関係から単色の濃淡画像が生成され画面表示S13される。
なお、工程S9、工程S11、工程S12において、得られた結果が0より小さくなる場合は、得られた値は0になるとしている。
【0022】
本発明の検査装置を用いた場合、その画像処理によって、選択色に対してそれ以外の色がどのような階調で表現されるか示したのが
図3である。
図3では、選択色はG(緑)[色相120度に相当]とし、上記画像処理によって得られる階調の強さを感度として表している。なお、感度は比較する2箇所の色成分の光量値の差分のため、無単位の量である。
本発明は光透過性成形体の外観検査を目的としているため、光透過性成形体を観察したときの特徴である彩度が低い状態として、非選択色の色成分の光量値に対して、選択色の色成分の光量値が10%高い値を示す場合を例にして求めた値である。
選択色に対して、非選択色の最大値で補正した場合(工程S9)は、選択色に近い色のみが濃淡画像として現れる。これは、比較対照する箇所の色合いが似ている場合に、目的とする色のみを切り出す場合に有効である。(
図3III))
これに対して、選択色に対して、非選択色の最小値で補正した場合(工程S11)は、選択色周辺の広い色相範囲の色が濃淡画像として現れる。これは、彩度が低い画像は、灰色のバックグラウンドの中に僅かに色合いが認識できるだけで、人間の目では色合いを誤認しやすい場合に類似する色を把握する場合に有効である。(
図3(I))
三番目の選択色に対して、非選択色の平均値を求めて補正する場合は、上記二つの方法の中間的な性質を有しており、選択色からの色相の差異も濃淡値として表現される。(
図3(II))
上記3種類の方法は、対象となる被検査物の状態に応じて選択することができる。
【0023】
図4は、本発明の第一の実施例を適用した際に、色相と階調の変化を示した図である。
図4(a)の左の図は、色成分を色相と彩度で表した図であり、色相を円周方向、色彩を径方向に表している。一般的には色相環と呼ばれている図である。
図4の例では、彩度値が同じ値で、色相値が近接している3種類の色(a、b,c)に本発明を適用することにより区別する過程を示している。
図4(a)の左から2番目、3番目、4番目の図は、前記3種類の色(a、b,c)について、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分で表した場合の図を示している。
図4(1)について、例えば、R、G、Bの色成分がそれぞれ90、100,110のいずれかの値を採るものとすると、三色の成分が相対的に近接しているため、彩度が小さくなり視覚的には単色の濃淡の色調に僅かに色がついた色に認識される。このような色を色相環で表現すると、中心部分に分布したものとなる。なお、
図4(1)及び
図4(2)に示した色相環は各色の色相の違いが判るように、説明のため、色彩の値を便宜的に大きく強調して表示している。
【0024】
図4の色調と階調の変化を
図2のフローチャートを用いて説明する。取得した画像から、色調の近接した三箇所を選択し、各点(a、b、c)の色情報を取得する。(
図4(1)(a)〜(c))(工程S1)
各点の色情報を色相と色彩に変換し色相環に表示する。(
図4(1)左図)(工程S2)
点bの色に着目し(工程S3)、点bの色を色相変換する色としてG(緑)を選択する。(工程S4)
点bの色相値とG(緑)の色相の差(θ)を求め、点bの色相が緑となるように、画像全体の色相をθだけシフトさせる。(
図4(2))(工程S5)
色相変換後の各点の色情報を、R・G・Bで表す。(工程S6)(
図4(2)(a’)〜(c’))
【0025】
ここで、選択色に対して、非選択色の最大値で補正する場合は、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値を比較し、大きな値の色成分の光量値を選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(
図4(3))(工程S9)。
選択色に対して、非選択色の平均値で補正する場合は、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値の平均値を求め、選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(
図4(4))(工程S12)。
画像全体につき、上記工程S9あるいは工程S12を繰り返し、得られた画像を表示する。(工程S13)
このように、本発明による手順により画像処理を行うことにより、着目した色に対して、一致する色が最大となり、色相が近接している場合であっても階調の濃淡の差として区別することができる。
なお、
図3で説明したとおり、補正の手法を選択することにより隣接する色相の違いから得られる濃淡の階調は調整することができる。
図4に示したように色相が近接している場合は、非選択色の色成分は、最大値あるいは平均値を用いて補正することが適している。
【0026】
互いに色相が近接している場合に区別する方法を説明したが、彩度が低い色については、色相の値が近接していなくても、単色の濃淡画像のように認識されるため、色の特徴を見つけることが難しい、むしろ、周辺の色との関係で視覚的な錯覚を生じ、本来とは別の色と認識してしまうこともある。
このような場合においても、発明の画像処理を行うことが有効である。
図5を用いて説明すると、取得した画像から、三箇所を選択し、各点(a、b、c)の色情報を取得する。(
図5(1)(a)〜(c))(工程S1)
各点の色情報を色相と色彩に変換し色相環に表示する。(
図5(1)左図)(工程S2)
点bの色に着目し(工程S3)、点bの色を色相変換する色としてG(緑)を選択する。(工程S4)
点bの色相値とG(緑)の色相の差(θ)を求め、点bの色相が緑となるように、画像全体の色相をθだけシフトさせる。(
図5(2))(工程S5)
色相変換後の各点の色情報を、R・G・Bで表す。(工程S6)(
図5(2)(a’)〜(c’))
ここで、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値を比較し、小さな値の色成分の光量値を選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(
図5(3))(工程S11)。
画像全体につき、上記工程S11を繰り返し、得られた画像を表示する。(工程S13)
このように、本発明による手順により画像処理を行うことにより、着目した色に対して、補色にあたる色を除くことができるため、彩度が低く色の特徴を判断しづらい状態であっても、視覚的な錯覚を防止することが可能になる。
【0027】
図1の全体構成図を使って、本発明の検査方法及び検査装置について説明を行ってきたが、前述のとおり、本検査方法及び装置は、色調の微妙な差異を効率よく判定することを目的としていることから、検査機周辺の人や物の動きや、室内の照明などさまざまな光が迷光としてカラー撮像装置1に検出され、誤検出の要因となる可能性がある。
このように周辺環境による影響を防止するためには、被検査物Sやカラー撮像装置1などを覆うように
図6に示すような遮光壁5を用いることが有効である。
遮光壁5を設けることにより、光源2から照射された光だけがカラー撮像装置1に捕捉されるため、迷光による誤検出を防止することができる。
また、誤検出の防止だけでなく、迷光が無くなることで検出感度が向上することが期待される。このため、より微細な色調の変化も精度よく判定することが可能になる。
【0028】
被検査物Sを照射する光源2は、
図1と
図6では被検査物Sの下方に設置され、カラー撮像装置1に対して透過照明となるように配置されている。本発明においては光源2の位置は透過照明に限定されている訳ではない。
図7に示すようにカラー撮像装置1の側方に設置して反射照明としてもよい。
さらに、拡散板3が導光板の機能を持っていれば、拡散板3の側壁に光源2を設置して拡散板の側面から光を導入することで、被検査物Sの下方から拡散光L’を照射することが可能になり、
図1の透過照明の場合と同じように照射することができる。