特許第5652421号(P5652421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652421
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】光透過性成形品の外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20141218BHJP
   G01N 21/958 20060101ALI20141218BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20141218BHJP
   G06T 7/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   G01N21/88 Z
   G01N21/958
   G06T1/00 510
   G06T7/00 100D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-79262(P2012-79262)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210227(P2013-210227A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2012年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109519
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】東岡 幸広
(72)【発明者】
【氏名】三上 正芳
(72)【発明者】
【氏名】天野 正樹
【審査官】 遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−152868(JP,A)
【文献】 特開2001−280939(JP,A)
【文献】 特開2003−222598(JP,A)
【文献】 特許第2943170(JP,B2)
【文献】 特開昭64−12381(JP,A)
【文献】 特開平10−302069(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/044432(JP,A1)
【文献】 特開2010−79522(JP,A)
【文献】 特許第4791900(JP,B2)
【文献】 特許第3389678(JP,B2)
【文献】 特開平5−332838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − 21/958
G06T 1/00
G06T 7/00
G01B 11/00 − 11/30
G01J 3/00 − 3/52
G06T 11/40 − 11/60
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に光を照射する光源と、
前記被検査物を透過あるいは前記被検査物から反射した光を受光するカラー撮像装置と、
前記カラー撮像装置で撮像された画像データを記録する記録手段と、
を備えた光透過性成形品の外観検査装置において、
前記画像データは赤(R)、青(B)、緑(G)の色成分の光量値で構成された色空間データ群1で構成されており、
前記色空間データ群1を色相(H)と彩度(S)を含む色成分で構成された色空間データ群2に変換する第一の変換手段と、
前記画像データを構成する抽出色の領域を指定し、
前記色空間データ群2の該抽出色の領域の値がRGBいずれかの指定した色が最大あるいは最小になるように色相(H)を回転させて色空間データ群3に変換する第二の変換手段と、
前記色空間データ群3を赤(R)、青(B)、緑(G)の色成分の光量値で構成された色空間データ群4に変換する第三の変換手段とを備え、
前記色空間データ群4を構成する色成分の一つを選択し、選択した色成分の光量値を残りの色成分の光量値を用いて補正することを特徴とする光透過性成形品の外観検査装置。
【請求項2】
前記補正は、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の内、光量値が小さい成分の値を減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置。
【請求項3】
前記補正は、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の内、光量値が大きい成分の値を減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置。
【請求項4】
前記補正は、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の光量値の平均値を求め減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透明性を有するガラス・樹脂などを成型した際に発生する軽微な色ムラなどの部分的な変色を、画像処理を用いて検出する光透過性成形品の外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明なガラスや樹脂を材料として成形した部品(以下、光透過性成形品)には、製作する際に微量の異物の付着や熱による変質などにより変色や色ムラが発生することがある。このような変色や色ムラは外観的な美観を損なうばかりでなく、部品の機械的な強度低下や経時劣化の原因になることもある。このため、光透過性成形品の製作工程では、目視検査を主体とした外観検査が行われることが一般的である。しかし、このような目視検査は官能検査であるため、検査員の体調や習熟度の違いなど要因となって、検査結果に個人差があることなどが知られており、検査結果が安定しないため、一定水準の品質を確保することが困難であった。更に、目視検査は、機械が行う自動検査に比べて一般的に検査時間が長くなるという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、CCDカメラなどの撮像装置を用いて画像を撮影し、画像処理を用いて外観検査を行うことにより検査の安定性を向上させたり、検査時間を短縮させたりする試みが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1で開示されている、色ムラ外観検査装置で用いられている手法を図8で説明すると、CCDカラーカメラで被検物を撮影する工程(S61)と、撮影した一次画像からR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の色成分の光量値に応じた三原色データを画素毎に生成する工程(S62)と、画像処理装置を用いて、該三原色データを画素毎に演算処理して色ムラ分布データを算出する工程(S63、S64)と、該色ムラ分布データに基づき、図9に示す擬似カラー化処理用変換テーブルを用いて該一次画像の色ムラ分布を表わす擬似カラー化二次画像を二次画像用モニタ再生する工程(S65)を備えており、被検物の色ムラ外観検査(S66)を行う。
【0005】
また、特許文献2で開示されているように、被検物の僅かな色差を明確にする方法として図10に示す方法が知られている。カラー画像を入力する工程(S81)と、必要に応じてネガポジ反転変換を行う工程(S82)と、該カラー画像を構成する各画素のRGBデータを、色相(H)、彩度(S)、輝度(I)で表されるHSI変換する工程(S83)と、該カラー画像の各画素から、少なくとも彩度を含む色情報を求める情報取得手段と、カラー画像の各画素の彩度を所定量シフトする工程(S84)と、色相の最頻値を求める工程(S85)と得られた色相の最頻値より各画素の色相を回転させる工程(S86)と注目画素を抽出する工程(S87)と、彩度/輝度を変換処理する工程(S88)と得られた画像データを階調変換する工程(S89)よりなり、僅かな色差を明確にした画像を出力(S90)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−332838号公報
【特許文献2】特開2009−152868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光透過性成形体に発生した汚れ、色ムラなどで著しく汚れ、変色したものは、目視検査でも容易の判別でき、従来の外観検査装置でも検査することができる。しかし、光透過性成形体の外観検査では成形体を構成する材料が光を透過するため、次の様な固有の問題があった。一つ目は、周囲の光や被検物を照射した光が、汚れや色ムラなどと重なって観察されるため、汚れや色ムラなどに固有の色彩が目立たなくなり、色の特徴で区別することが難しくなるという問題である。すなわち、図12に示すように、汚れや色ムラが固有の色(図12(a))を示していたとしても、周辺の光の色(図12(b))が重なることで、観察される状態は、周辺の色の中に、僅かな固有の色の変化がある状態になり視覚的に色の区別をすることが困難になる。(図12(c))
二つ目は、周囲の光や被検物を照射した光が、光透過性成形体の内部で反射、散乱する際に、光透過性成形体の形状の影響で反射、散乱する光の強度が方向により不均一となるため、光透過性成形体を観察すると周囲に対して黒い部分があるように見えるため、汚れや色ムラなどと錯覚することがあるという問題である。汚れ、色ムラなどの色彩が目立たないため、光の反射、散乱によって発生した影を汚れ、色ムラなどと誤認してしまうことが問題となっていた。
【0008】
特許文献1の方法では、図8のS63、S64に示されている様にRGBの任意の2成分の差分(図8のS63においては、赤(R)と青(B))をとり、その大きさを基に色ムラ分布Fを求めている。光透過性成形体を観察した場合、色彩が目立たなくなる傾向が強いことから、RGBの各色成分はそれぞれ近接しており、任意の2成分の差分を取って求めた色ムラ分布Fは小さいものとなる。従って、特許文献1の方法で光透過性成形体を観察したとしても問題である汚れや色ムラなどを色の特徴で区別することが解決されない。
【0009】
特許文献2の方法を、図11を用いて説明する。図11は、色情報を色相(H)、色彩(S)、輝度(I)で表したとき、周方向を色相軸(H)、径方向を彩度軸(S)とし、紙面に垂直な方向を輝度軸(I)としたHSI色空間を示している。図11(1)に示されている様に画像データの各画素の色情報を上記HSI色空間上にプロットし、画素の分布の中心値(図11(1)に「△」として表示)を求め、図11(2)に示す様に画素の分布の中心値がHSI色空間の中心となる様に彩度をシフトさせる。この様に各画素の色情報をシフトさせることで図11(1)の様に色相(H)が近接して彩度が分布している(同じ色で濃淡に差がある)画像であっても色相(H)の違いとして認識できる様になり近接した色差の画像を区別することが容易になる。光透過性成形体を観察した場合、色彩が目立たなくなることが特徴であるため、各画素の色情報の分布はHSI色空間上にプロットすると中心部分に分布することになる。図11(1)に示した様に画素の分布の中心値を求めたとしても、基になる画素の色情報の分布が中心に分布しているため、図11(2)に示した色彩のシフトを行ったとしても、シフトできる量は僅かである。特許文献2の方法は、問題としている彩度の小さい色差の画像を区別することが解決できる訳ではない。
そこで、本発明の課題は光透過性成形体のような彩度の小さい画像であっても色の違いを区別することが可能な外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、前記被検査物を透過あるいは前記被検査物から反射した光を受光するカラー撮像装置と、前記カラー撮像装置で撮像された画像データを記録する記録手段と、を備えた光透過性成形品の外観検査装置において、
前記画像データは赤(R)、青(B)、緑(G)の色成分の光量値で構成された色空間データ群1で構成されており、前記色空間データ群1を色相(H)と彩度(S)を含む色成分で構成された色空間データ群2に変換する第一の変換手段と、前記画像データを構成する抽出色の領域を指定し、前記色空間データ群2の色相(H)を該抽出色の領域の値がRGBいずれかの指定した色が最大あるいは最小になるように回転させて色空間データ群3に変換する第二の変換手段と、前記色空間データ群3を赤(R)、青(B)、緑(G)の色成分の光量値で構成された色空間データ群4に変換する第三の変換手段とを備え、
前記色空間データ群4を構成する色成分の一つを選択し、選択した色成分の光量値を残りの色成分の光量値を用いて補正することを特徴とする光透過性成形品の外観検査装置である。(本明細書において使用される「色空間データ群」とは、画像データを構成しているHSI色空間、RGB色空間などの色成分で表現された画素データの集合体のことを言う。)

【0011】
次に、請求項2に記載された発明は、前記補正が、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の内、光量値が小さい成分の値を減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置である。
【0012】
また、請求項3に記載された発明は、前記補正が、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の内、光量値が大きい成分の値を減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置である。
【0013】
更に、請求項4に記載された発明は、前記補正が、前記選択した色成分の光量値を選択されていない残りの色成分の光量値の平均値を求め減算することを特徴とする請求項1に記載の光透過性成形品の外観検査装置である。
【発明の効果】
【0014】
以下に説明する通り、本発明によれば、光透明性を有するガラス・樹脂などを成型した光透過性成形品に発生した軽微な色ムラなどの部分的な変色を検出することが可能になり、外観検査のおける検査感度が安定し、品質の向上に資することができる。また、コンピュータを用いた自動検査を行うことが可能になるため、外観検査にかかる時間を短縮できることから、生産コストの低減など生産の効率化を行うことが可能となる光透過性成形品の外観検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】外観検査装置の全体構成を表す構成図
図2】外観検査装置の画像処理の手順を示すフローチャート
図3】彩度が小さい色に対して本発明を適用したときの感度分布
図4】本発明の第一の実施例の色成分の変化を説明した図
図5】本発明の第二の実施例の色成分の変化を説明した図
図6】遮光壁を取り付けた外観検査装置の計測部の概略図
図7】反射照明を取付けた外観検査装置の計測部の概略図
図8】従来の色ムラ外観検査装置の動作を説明する為のフローチャート
図9】画像処理装置に設けられた擬似カラー化処理用変換テーブルを示す模式図
図10】従来の画像処理装置におけるカラー画像の処理手順を示すフローチャート
図11】従来の画像処理装置におけるカラー画像の処理手順をHSI色空間にプロットして説明する図
図12】周辺の光により、色シミ等の色彩が不明瞭になることを説明した図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の外観検査装置の全体構成を表す構成図である。光透過性を有したガラス・樹脂を原材料として成形された被検査物Sの外観を検査するため、検査台を兼ねた拡散板3上に設置する。光源2は、拡散板3の下方に配置され、拡散板3に向けて光を放射する構成になっており、光源より放射された光Lは拡散板3を透過することで拡散光L’となり、ランダムな方向から被検査物Sを照明する。被検査物Sの上方にはカラー撮像装置1が設置されており、光源2から放射された光で照明された被検査物Sを撮影する。
【0017】
カラー撮像装置1で撮影された画像データは、本発明の画像処理を行うため画像処理装置4に転送される。画像処理装置4は、画像処理の演算を行うコンピュータ装置40とデータの出力を行うプリンタ41、データの表示を行うモニタ42と画像処理装置4の操作などを行うためのキーボード・マウス等として入力機器43より構成されている。更に、コンピュータ装置40は、カラー撮像装置1で撮影された画像データを画像処理装置4に入力する接続部であるインターフェース部40dと画像処理の演算を行うCPU40a、本発明の画像処理プログラムがインストールされたメインメモリ40bやデータ等の保管を行う補助記憶装置40cで構成されている。
【0018】
次に、本発明の画像データの処理の流れを説明する。
図2は、本発明の外観検査装置の画像処理の手順を示すフローチャートである。
画像入力S1は、カラー撮像装置1で撮影された画像データを、画像処理装置4に入力する工程である。多くの場合、画像データは画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色成分の光量値に分解された画像 立て表現される。RGBの三原色による色の表現と異なる色表現方法として、色相(H)と彩度(S)を用いた表現方法がいくつか知られており、HSI(Hue、Saturation、Intensity)色空間やHSV(Hue、Saturation、Value)色空間、HLS(Hue、Lightness、Saturation)色空間などと呼ばれているものがある。
HSI変換S2は、RGB色成分で表現された画像データを色相(H)と彩度(S)で表現された色空間に変換を行う工程である。なお、HSI変換S2は、画像データを構成する色成分の表現方法を変換するだけの等価な変換であり、人間が外観検査装置のモニタ42を通して観察する画像の色が変化する訳ではない。
【0019】
抽出色指定S3は、注目している色シミなどが確認されている領域を指定し色情報を取得する工程である。予め色シミなどの色見本が存在している場合は色見本から色を指定することもある。
選択色指定S4は、前記抽出色指定S3で指定した色を、例えばR、G、Bいずれかの指定した色に変換するか指定する工程である。
色相回転S5は、抽出した領域の色が、R(赤)G(緑)B(青)いずれかが強調して見えるように画像データ全体の色相を変化させる工程である。色相の変化量は、前記抽出色指定S3で指定した色と前記選択色指定S4で指定した色のそれぞれの色相(H)の差分になる。
RGB変換S6は、前記色相回転S5を行った後の画像データを、RBG色空間で表現された画像データに変換する工程である。
【0020】
工程S7から工程S12は、前記RGB変換S6で得られた画像データから、単色の濃淡画像を生成する工程(階調処理)である。
工程S7は、RGB色空間で表現された画像データについて、選択色のデータと選択されなかった残りの2つのデータ(非選択色1、非選択色2)に区別してコンピュータ装置40のメモリに保管する工程である。なお、説明では、選択色はG(緑)とし、残りの非選択色の大小関係はR(赤)>B(青)となっている場合について記載している。
本発明による画像処理では、階調処理の方法として3種類の補正方法を実施できる。
【0021】
第一の方法は、工程S8と工程S9に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の内大きな値をとる色の色成分の光量値の差分をとる方法である。
第二の方法は、工程S10と工程S11に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の内小さな値をとる色の色成分の光量値の差分をとる方法である。
第三の方法は、工程S12と工程S13に記載された方法であり、選択色の色成分の光量値と、非選択色の色成分の光量値の平均値を求め、差分をとる方法である。
画像データについて、上記の階調処理を行うことで選択色と非選択色の色成分の光量値の関係から単色の濃淡画像が生成され画面表示S13される。
なお、工程S9、工程S11、工程S12において、得られた結果が0より小さくなる場合は、得られた値は0になるとしている。
【0022】
本発明の検査装置を用いた場合、その画像処理によって、選択色に対してそれ以外の色がどのような階調で表現されるか示したのが図3である。図3では、選択色はG(緑)[色相120度に相当]とし、上記画像処理によって得られる階調の強さを感度として表している。なお、感度は比較する2箇所の色成分の光量値の差分のため、無単位の量である。
本発明は光透過性成形体の外観検査を目的としているため、光透過性成形体を観察したときの特徴である彩度が低い状態として、非選択色の色成分の光量値に対して、選択色の色成分の光量値が10%高い値を示す場合を例にして求めた値である。
選択色に対して、非選択色の最大値で補正した場合(工程S9)は、選択色に近い色のみが濃淡画像として現れる。これは、比較対照する箇所の色合いが似ている場合に、目的とする色のみを切り出す場合に有効である。(図3III))
これに対して、選択色に対して、非選択色の最小値で補正した場合(工程S11)は、選択色周辺の広い色相範囲の色が濃淡画像として現れる。これは、彩度が低い画像は、灰色のバックグラウンドの中に僅かに色合いが認識できるだけで、人間の目では色合いを誤認しやすい場合に類似する色を把握する場合に有効である。(図3(I))
三番目の選択色に対して、非選択色の平均値を求めて補正する場合は、上記二つの方法の中間的な性質を有しており、選択色からの色相の差異も濃淡値として表現される。(図3(II))
上記3種類の方法は、対象となる被検査物の状態に応じて選択することができる。
【0023】
図4は、本発明の第一の実施例を適用した際に、色相と階調の変化を示した図である。図4(a)の左の図は、色成分を色相と彩度で表した図であり、色相を円周方向、色彩を径方向に表している。一般的には色相環と呼ばれている図である。
図4の例では、彩度値が同じ値で、色相値が近接している3種類の色(a、b,c)に本発明を適用することにより区別する過程を示している。図4(a)の左から2番目、3番目、4番目の図は、前記3種類の色(a、b,c)について、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分で表した場合の図を示している。図4(1)について、例えば、R、G、Bの色成分がそれぞれ90、100,110のいずれかの値を採るものとすると、三色の成分が相対的に近接しているため、彩度が小さくなり視覚的には単色の濃淡の色調に僅かに色がついた色に認識される。このような色を色相環で表現すると、中心部分に分布したものとなる。なお、図4(1)及び図4(2)に示した色相環は各色の色相の違いが判るように、説明のため、色彩の値を便宜的に大きく強調して表示している。
【0024】
図4の色調と階調の変化を図2のフローチャートを用いて説明する。取得した画像から、色調の近接した三箇所を選択し、各点(a、b、c)の色情報を取得する。(図4(1)(a)〜(c))(工程S1)
各点の色情報を色相と色彩に変換し色相環に表示する。(図4(1)左図)(工程S2)
点bの色に着目し(工程S3)、点bの色を色相変換する色としてG(緑)を選択する。(工程S4)
点bの色相値とG(緑)の色相の差(θ)を求め、点bの色相が緑となるように、画像全体の色相をθだけシフトさせる。(図4(2))(工程S5)
色相変換後の各点の色情報を、R・G・Bで表す。(工程S6)(図4(2)(a’)〜(c’))
【0025】
ここで、選択色に対して、非選択色の最大値で補正する場合は、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値を比較し、大きな値の色成分の光量値を選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(図4(3))(工程S9)。
選択色に対して、非選択色の平均値で補正する場合は、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値の平均値を求め、選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(図4(4))(工程S12)。
画像全体につき、上記工程S9あるいは工程S12を繰り返し、得られた画像を表示する。(工程S13)
このように、本発明による手順により画像処理を行うことにより、着目した色に対して、一致する色が最大となり、色相が近接している場合であっても階調の濃淡の差として区別することができる。
なお、図3で説明したとおり、補正の手法を選択することにより隣接する色相の違いから得られる濃淡の階調は調整することができる。図4に示したように色相が近接している場合は、非選択色の色成分は、最大値あるいは平均値を用いて補正することが適している。
【0026】
互いに色相が近接している場合に区別する方法を説明したが、彩度が低い色については、色相の値が近接していなくても、単色の濃淡画像のように認識されるため、色の特徴を見つけることが難しい、むしろ、周辺の色との関係で視覚的な錯覚を生じ、本来とは別の色と認識してしまうこともある。
このような場合においても、発明の画像処理を行うことが有効である。
図5を用いて説明すると、取得した画像から、三箇所を選択し、各点(a、b、c)の色情報を取得する。(図5(1)(a)〜(c))(工程S1)
各点の色情報を色相と色彩に変換し色相環に表示する。(図5(1)左図)(工程S2)
点bの色に着目し(工程S3)、点bの色を色相変換する色としてG(緑)を選択する。(工程S4)
点bの色相値とG(緑)の色相の差(θ)を求め、点bの色相が緑となるように、画像全体の色相をθだけシフトさせる。(図5(2))(工程S5)
色相変換後の各点の色情報を、R・G・Bで表す。(工程S6)(図5(2)(a’)〜(c’))
ここで、選択色であるG(緑)の成分に対して、非選択色であるR(赤)とB(青)の色成分の光量値を比較し、小さな値の色成分の光量値を選択色G(緑)の色成分の光量値から引く(図5(3))(工程S11)。
画像全体につき、上記工程S11を繰り返し、得られた画像を表示する。(工程S13)
このように、本発明による手順により画像処理を行うことにより、着目した色に対して、補色にあたる色を除くことができるため、彩度が低く色の特徴を判断しづらい状態であっても、視覚的な錯覚を防止することが可能になる。
【0027】
図1の全体構成図を使って、本発明の検査方法及び検査装置について説明を行ってきたが、前述のとおり、本検査方法及び装置は、色調の微妙な差異を効率よく判定することを目的としていることから、検査機周辺の人や物の動きや、室内の照明などさまざまな光が迷光としてカラー撮像装置1に検出され、誤検出の要因となる可能性がある。
このように周辺環境による影響を防止するためには、被検査物Sやカラー撮像装置1などを覆うように図6に示すような遮光壁5を用いることが有効である。
遮光壁5を設けることにより、光源2から照射された光だけがカラー撮像装置1に捕捉されるため、迷光による誤検出を防止することができる。
また、誤検出の防止だけでなく、迷光が無くなることで検出感度が向上することが期待される。このため、より微細な色調の変化も精度よく判定することが可能になる。
【0028】
被検査物Sを照射する光源2は、図1図6では被検査物Sの下方に設置され、カラー撮像装置1に対して透過照明となるように配置されている。本発明においては光源2の位置は透過照明に限定されている訳ではない。図7に示すようにカラー撮像装置1の側方に設置して反射照明としてもよい。
さらに、拡散板3が導光板の機能を持っていれば、拡散板3の側壁に光源2を設置して拡散板の側面から光を導入することで、被検査物Sの下方から拡散光L’を照射することが可能になり、図1の透過照明の場合と同じように照射することができる。
【符号の説明】
【0029】
S:被検査物
L:光源より放射された光
L’:拡散光
1:カラー撮像装置
2:光源
3:拡散板
4:画像処理装置
40:コンピュータ装置
40a:CPU
40b:メインメモリ
40c:補助記憶装置
40d:インターフェース部
41:プリンタ
42:モニタ
43:入力機器
5:遮光壁
図1
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図12