(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652476
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 2/06 20060101AFI20141218BHJP
H01M 2/04 20060101ALI20141218BHJP
H01M 2/08 20060101ALI20141218BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20141218BHJP
H01M 2/30 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
H01M2/06 A
H01M2/04 A
H01M2/08 A
H01M10/0566
H01M2/30 D
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-535052(P2012-535052)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2011071480
(87)【国際公開番号】WO2012039423
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2010-210416(P2010-210416)
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100173657
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】釘野 智史
(72)【発明者】
【氏名】三代 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】新東 連
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】田中 明
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−253295(JP,A)
【文献】
特開2010−170920(JP,A)
【文献】
特開2003−86151(JP,A)
【文献】
特開2002−289156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06
H01M 2/04
H01M 2/08
H01M 2/30
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する電槽本体及び複数の端子貫通孔を有して前記電槽本体の前記開口部を密閉する蓋からなる電槽と、
前記電槽に収容される電極群及び有機電解液と、
前記電極群に電気的に接続される端子本体部と、前記端子本体部と一体に設けられて前記蓋の前記端子貫通孔を貫通するネジ付き端子部とを有し、前記端子貫通孔を貫通した前記ネジ付き端子部にナットが締め付けられて前記蓋に対して固定される複数の電極端子と、
前記ネジ付き端子部に嵌合されて前記蓋と前記ナットとの間に配置された第1のガスケットと、
前記ネジ付き端子部の周囲を囲むように前記端子本体部の上に配置され、前記電極端子の前記端子本体部と前記電槽の前記蓋との間に配置された第2のガスケットと、
前記第2のガスケットの内側において、前記ネジ付き端子部の周囲を囲むように前記端子本体部の上に配置され、前記電極端子の前記端子本体部と前記電槽の前記蓋との間で圧縮された状態になっている環状の弾性体と、
少なくとも前記環状の弾性体と、前記ネジ付き端子部と、前記端子本体部とにより囲まれた環状の凹部に充填された樹脂材料が硬化して形成された充填樹脂部とを備え、
前記蓋と前記電極端子の前記端子本体部のそれぞれに階段状の溝が形成され、前記階段状の溝に、前記環状の弾性体及び前記第2のガスケットが配置されており、
前記蓋に形成された前記階段状の溝は、前記端子本体部と対向する前記蓋の裏面部分において、前記端子貫通孔と同心的に形成された第1の蓋側環状段部と、前記第1の蓋側環状段部と同心的に且つ前記第1の蓋側環状段部と連続するように形成された第2の蓋側環状段部とからなり、
前記端子本体部に形成された前記階段状の溝は、前記ネジ付き端子部が前記端子貫通孔に嵌合された状態において、前記ネジ付き端子部と同心的に形成されて前記第1の蓋側環状段部と対向する第1の端子側環状段部と、前記第1の端子側環状段部と同心的に且つ前記第1の端子側環状段部と連続するように形成された前記第2の蓋側環状段部と対向する第2の端子側環状段部とからなり、
前記第1の蓋側環状段部と前記第1の端子側環状段部との間に前記環状の弾性体が配置されており、
前記第2の蓋側環状段部と前記第2の端子側環状段部との間に前記第2のガスケットが配置されており、
前記第2のガスケットが前記環状の弾性体が径方向外側に位置ずれすることを防いでいることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記第2のガスケットが弾性材料により形成されており、前記第2のガスケットと前記弾性体とが一体に形成されている請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記第1のガスケットは、前記端子貫通孔と前記ネジ付き端子部との間に形成された環状の凹部に嵌合される嵌合部を備えている請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記第1のガスケットの前記嵌合部には、前記環状の凹部に前記樹脂材料を導入する通路が形成されている請求項3に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記樹脂材料がエポキシ樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記環状の弾性体が、ゴム系材料であることを特徴とする請求項1または5に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記ゴム系材料が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記環状の弾性体の外側に、前記端子本体部と前記蓋との間に配置された前記第2のガスケットを有していることを特徴とする請求項5に記載の非水電解液二次電池。
【請求項9】
前記第2のガスケットが、樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項8記載の非水電解液二次電池。
【請求項10】
前記第2のガスケットが、ゴムガスケット、合成樹脂ガスケット、セミメタリックガスケット、膨張黒鉛ガスケットから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記充填樹脂部が、1液または2液の混合樹脂材料を硬化させて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項12】
前記環状の弾性体と前記第2のガスケットが一体に形成されている請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項13】
前記環状の弾性体が前記第2のガスケットと接触している請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に係り、特に密閉度が高いことが要求されるリチウムイオン電池等の非水電解液二次電池のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電気機器、特にパソコン等のコードレス化やポータブル化に伴って、駆動用電源である電池に対する小型化、軽量化、高エネルギー密度化が要求されている。特にリチウムイオン電池等の非水電解液二次電池は、高いエネルギー密度を持ち、これらの要求に対し、主力製品として期待されている。
【0003】
また、非水電解液二次電池としては、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した電極体を有する角型構造のものや、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した積層体を捲回した電極体を有する円筒型構造のものがある。いずれの構造の電極体も非水電解液と共に電槽または電池ケースに収納されている。ただし電槽の外形形状は電極体として捲回電極体を使用した場合であっても角型構造となってもかまわない。
【0004】
さらに、非水電解液二次電池では、電極体からの電流の取り出しは、正極板及び負極板にそれぞれ接続される正極集電体及び負極集電体を介して行われている。即ち、電極体の端部に集電体を固定し、正極集電体及び負極集電体と接続されて導通される正極端子及び負極端子を、電槽の蓋に形成した端子引出孔(端子貫通孔)より電槽の外に突出させている。この端子引出孔のシール構造として例えば、ネジ付き端子部を有する電極端子が電槽の端子引出孔に電槽の内側から挿通された状態において、蓋の端子引出孔が形成された部分の周囲の内壁面と電極端子の端子本体部との間に、シール部材(例えばガスケット)が挟まれ、電槽の外側に突出した電極端子のネジ付き端子部のネジ部にワッシャとガスケットを介してナットを締め付けることにより、電極端子を電槽の外側に引き上げて、蓋の内壁面と電極端子の端子本体部との間でシール部材を圧縮するように構成されたものがある(例えば、特許文献1,2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−77999号公報
【特許文献2】特開2009−134985号公報
【特許文献3】特開2009−252719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2及び3では、シール部材の圧縮量がナットの締め付けの程度に大きく依存している。そのため、電池製造時には適切なシール部材圧縮量が得られるようにナットを締め付けてあっても、その後にナットが緩むとシール部材の圧縮量が不足して、シール性能が低下してしまうという問題が発生することが懸念される。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく、電池使用開始後であってもシール性能の低下を極力低減できるシール構造を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の非水電解液二次電池は、開口部を有する電槽本体と電槽本体の開口部を密閉する蓋とからなる電槽と、電槽に収容される電極群及び有機電解液と、複数の電極端子とを有する。電極端子は、電極群に電気的に接続される端子本体部と、端子本体部と一体に設けられて蓋を貫通するネジ付き端子部とを有し、蓋を貫通したネジ付き端子部にナットが締め付けられて蓋に対して固定される。本発明では、電極端子の端子本体部と電槽の蓋との間に圧縮された状態で配置された弾性体とを備えている。圧縮された弾性体は、電極端子の端子本体部に対して蓋から離れる方向の力を付与する。この力は、ネジ付き端子部を電槽内部方向に引き付ける力となり、ナットの緩み発生を抑制する。
【0009】
特に、弾性体は、ゴム系材料により形成されたものが好ましい。ゴム系材料としては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。このようなゴム系材料は、非水電解液と接触しても、特に溶解されることがないため、電池性能に影響を与えることがない。
【0010】
非水電解液二次電池は、弾性体の外側に、端子本体部と蓋との間に配置されたガスケットを有している。ガスケットを使用することによりナットの緩み防止を強化できる。このガスケットは、樹脂材料により形成されているものが好ましい。具体的なガスケット用の樹脂材料としては、ゴムガスケット、合成樹脂ガスケット、セミメタリックガスケット、膨張黒鉛ガスケットから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。このような樹脂材料も、非水電解液と接触しても、特に溶解されることがないため、電池性能に影響を与えることがない。
【0011】
蓋、端子本体部及び弾性体で囲まれる凹部に充填された樹脂材料が硬化して形成された充填樹脂部をさらに備えていてもよい。このような充填樹脂部を設けると、弾性体が凹部内に延びて弾性体の効果が低下するのを防止できる上、充填樹脂部もシール効果を発揮するため、シール性能を高めることができる。
【0012】
蓋と電極端子の端子本体部のそれぞれに階段状の溝が形成され、階段状の溝に、弾性体及びガスケットを配置することができる。このようにすると弾性体とガスケットとを確実に位置決めすることができる。
【0013】
弾性体はネジ付き端子部の周囲を囲むように環状を呈しているのが好ましい。またガスケットはネジ付き端子部の周囲を囲むように環状を呈しているのが好ましい。そして蓋に形成された階段状の溝は、端子本体部と対向する蓋の裏面部分において、端子貫通孔と同心的に形成された第1の蓋側環状段部と、第1の蓋側環状段部と同心的に且つ第1の蓋側環状段部と連続するように形成された第2の蓋側環状段部とから構成できる。また端子本体部に形成された階段状の溝は、ネジ付き端子部が端子貫通孔に嵌合された状態において、ネジ付き端子部と同心的に形成されて第1の蓋側環状段部と対向する第1の端子側環状段部と、第1の端子
側環状段部と同心的に且つ第1の端子側環状段部と連続するように形成された第2の蓋側環状段部と対向する第2の端子側環状段部とから構成することができる。この場合、第1の蓋側環状段部と第1の端子側環状段部との間に弾性体が配置される。また第2の蓋側環状段部と第2の端子側環状段部との間にガスケットが配置される。そして第2の弾性体がガスケットと接触しているのが好ましい。このような配置関係を採用すると、位置決めとシール効果を確実なものとすることができる。
【0014】
より具体的な非水電解液二次電池では、電槽は、開口部を有する電槽本体及び複数の端子貫通孔を有して電槽本体の開口部を密閉する蓋から構成される。そして具体的な非水電解液二次電池は、電極端子のネジ付き端子部に嵌合されて蓋とナットとの間に配置された第1のガスケットと、ネジ付き端子部の周囲を囲むように端子本体部の上に配置され、電極端子の端子本体部と電槽の蓋との間に配置された第2のガスケットとを備えている。また具体的な非水電解液二次電池では、環状の弾性体が、第2のガスケットの内側において、ネジ付き端子部の周囲を囲むように端子本体部の上に配置され、電極端子の端子本体部と電槽の蓋との間で圧縮された状態になっている。このような配置構成では、環状の弾性体と第2のガスケットとが協働して、ナットの緩みを防止し且つシール性能を高めることができる。
【0015】
第2のガスケットが弾性材料により形成されている場合には、第2のガスケットと弾性体とを一体に形成することができる。このようにすると部品点数が減るだけでなく、組み立てが容易になる。
【0016】
また第1のガスケットは、端子貫通孔とネジ付き端子部との間に形成された環状の凹部に嵌合される嵌合部を備えていてもよい。このような嵌合部を第1のガスケットに設けると、環状の凹部の一部を嵌合部により埋めることができるので、樹脂材料の使用量を減らすことができる。また第1のガスケットの嵌合部には、環状の凹部に前記樹脂材料を導入する通路が形成されているのが好ましい。このような通路があれば、第1のガスケットを配置した後に樹脂材料を充填することができるので、樹脂材料の充填作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の非水電解液二次電池の第1の実施の形態の外観斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。
【
図4】(A)及び(B)は、それぞれ組み立て工程の一部を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。
【
図7】(A)及び(B)は、ガスケットの変形例を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。
【
図10】本発明の第4の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。但し、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的位置等は、特に特定的な記載がない限り、本発明の技術的範囲を実施の形態に限定するものではなく、単なる説明のための例に過ぎない。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の非水電解液二次電池の第1の実施の形態の外観斜視図であり、
図2は端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。なお
図2においては、後述する電極端子3及びナット8については、断面にしていない。また
図3には、
図2の端子取付構造部の分解断面図を示している。
図1において符号1は、ステンレス製の開口部を有する電槽本体を示しており、符号2は電槽本体1の開口部を密閉するステンレス製の蓋を示している。本実施の形態では、電槽本体1と蓋2とにより電槽が構成されている。電槽中には、電極群及び有機電解液が収容されている。電槽本体1及び蓋2の材質は、ステンレスに限定されるものではなく、耐電解液性を有する他の金属、例えば、アルミニウムまたはその合金等や、エポキシ樹脂等の樹脂材料でも良い。
【0020】
蓋2には、2つの端子貫通孔9が形成されている。
図2及び
図3には、1つの端子貫通孔9だけを示している。集電用の電極端子3は、アルミニウム製または銅製であり、端子貫通孔9を貫通するネジ付き端子部3Aと図示しない電極群に電気的に接続される端子本体部3Bとを一体に有している。
図3に示すように、端子本体部3Bと対向する蓋2の裏面部分には、端子貫通孔9と同心的に形成された第1の蓋側環状段部11Aと、第1の蓋側環状段部11Aと同心的に且つ第1の蓋側環状段部11Aと連続するように形成された第2の蓋側環状段部11Bとからなる階段状の溝11が形成されている。また端子金具3の端子本体部3Bには、ネジ付き端子部3Aが端子貫通孔9に嵌合された状態において、ネジ付き端子部3Aと同心的に形成されて第1の蓋側環状段部11Aと対向する第1の端子側環状段部12Aと、第1の端子
側環状段部12Aと同心的に且つ第1の端子側環状段部12Aと連続するように形成された第2の蓋側環状段部11Bと対向する第2の端子側環状段部12Bが形成されている。第1の端子側環状段部12Aと第2の端子側環状段部12Bとにより、端子本体部3Bに設けられた階段状の溝12が構成されている。
【0021】
電極端子3は、蓋2の端子貫通孔9を貫通したネジ付き端子部3Aに、ガスケット5及び金属製ワッシャ7を介してナット8が締め付けられて蓋2に対して固定される。
【0022】
電極端子3の端子本体部3Bと電槽の蓋2との間には、圧縮された状態で配置された電気絶縁材料からなる環状の弾性体4とを備えている。圧縮された弾性体4は、電極端子3の端子本体部3Bに対して蓋2から離れる方向の力を付与する。この力は、ネジ付き端子部3Aを電槽内部方向に引き付ける力となり、ナット8の緩みの発生を抑制する。また環状の弾性体4は、蓋2と電極端子3との絶縁性を確保している。また、弾性体4を圧縮することでシール性能を確保することから、弾性体4は適度な圧縮反力を持つ材料が好ましい。本実施の形態では、弾性体4をゴム系材料により形成している。ゴム系材料としては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムからなる群から選択できる。本実施の形態では、ゴム系材料としてフッ素ゴムを選択し、その形状はOリング状とした。
【0023】
弾性体4を介在させ、シール性能を確保するためには、弾性体4の位置を固定する必要がある。そこで環状の弾性体4は、第1の蓋側環状段部11Aと第1の端子側環状段部12Aとの間に配置されている。また弾性体4の圧縮時に、弾性体4が径方向外側に位置ずれすることを防ぐために、樹脂製の環状のガスケット5(第2のガスケット)を設けている。環状のガスケット5は、環状の弾性体4の外周面と接触し、蓋2の第2の蓋側環状段部11Bと電極端子3の端子本体部3Bの第2の端子側環状段部12Bの間に配置されている。本実施の形態の樹脂製のガスケット5の樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂;パーフロロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)等のポリマー材料からなる群のうち、弾性体4の圧縮によるつぶれに伴う位置ずれを防止できる硬度を持つものを採用するのが好ましい。本実施の形態では、PFAを選択し、その形状は弾性体4の外周部に配することから、円盤環状のものを使用した。
【0024】
図4(A)に示すように、樹脂製のガスケット5及び弾性体4を介して、蓋2と電極端子3の端子本体部3Bを対向させると、弾性体4の内周部と電極端子3の端子本体部3Bと蓋2の間には、凹部10ができる。この凹部10は外気と接する部分であり、水分等が浸入した場合、弾性体4のシール性能を著しく低下させると考えられる。また、この凹部10があると、弾性体4が凹部10内に入り込んで、弾性体4の位置ずれも懸念される。そのため、本実施の形態では、
図2,
図3及び
図4(B)に示すように、この凹部10に樹脂材料6´を充填して硬化させて充填樹脂部6を形成した。本実施の形態では、
図2に示すように、蓋2の上に設けたガスケット(第1のガスケット)13の内部空間にも、樹脂材料6´が入り込んでいるので、充填樹脂部6は、凹部10内だけでなく、その外側にも延びている。ナット8が締め付けられることにより、弾性体4は押し潰されて変形する。そこで、端子貫通孔9の径寸法は、弾性体4の内径寸法よりも小さくなっている。すなわち、この寸法差によって生じる空間部にも樹脂材料が回り込む必要がある。よって、充填樹脂部6を形成するための樹脂材料に求められる特性としては、粘度が高すぎないことが重要である。また充填後に硬化させる際、周囲に弾性体4及び樹脂製のガスケット5等の樹脂材料製の部品を配していることから、硬化温度は高すぎないことが重要である。
【0025】
これより、本実施の形態では、充填樹脂部6を形成するために用いる樹脂材料6´には熱硬化性の2液混合型エポキシ樹脂を使用した。この樹脂材料6´としては、本実施の形態で用いた2液混合型エポキシ樹脂に限定されるものではなく、室温付近で硬化し、好ましくは、耐電解液性を有している他の樹脂材料でも良い。弾性体4に加え、充填樹脂部6を形成することで、気密性が増すと共に、電極端子3と蓋2を直接接触しない位置に配置することが可能になった。
【0026】
充填樹脂部6を形成するための樹脂材料6´を凹部10内に充填した後、樹脂材料6´が硬化する前に、電極端子3のネジ付き端子部3Aのネジ部に樹脂製のガスケット13、金属製ワッシャ7を通し、ナット8を締める。ナット8を締めることで、電極端子3が蓋2の方向に引っ張り上げられて、弾性体4が圧縮されると、樹脂材料6´が電極端子3のネジ付き端子部3Aに沿って這い上がってくることで、樹脂材料6´はガスケット13の内部にも入り込む。そして樹脂材料6´が硬化して充填樹脂部6が形成されると、シール性能が確保される。
【0027】
本実施の形態では、樹脂製のガスケット13として、樹脂製のガスケット5と同様PFA製のものを用いた。但し、樹脂材料6´がナット8の方向に這い上がる際、電極端子3のネジ付き端子部3Aの径方向に樹脂材料6´が広がるのを防ぐため、ガスケット13としては、樹脂製のガスケット5よりも幅(径方向寸法の幅)の広いものを用いた。また、ナット8のみを締めると、樹脂製のガスケット13が変形すると考えられるため、樹脂製のガスケット13とナット8の間に金属ワッシャ7を配置した。金属ワッシャ7及びナット8にはアルミニウム合金を使用した。上記のようにナット8を締結した後、蓋2を、恒温槽に投入し、樹脂を硬化した。
【0028】
樹脂材料6´が硬化した後、蓋2について、ヘリウムリーク試験を実施し、リークの有無を確認した。電極端子3付近の締結部のリークを確認するため、ヘリウムリーク試験機の先端を蓋2の電極端子3付近に取り付け、減圧した。一定圧力まで減圧後、外部よりヘリウムガスを噴きつけ、リークがある場合にはヘリウムガスを検出できるよう試験を行った。
【0029】
上記試験の結果、上記実施の形態の構造においては、蓋2からのリークは見られなかった。本実施例では、弾性体4に加え、樹脂材料6´が凹部10を充填していることから、リークが見られなかったと考えられる。また、樹脂材料6´の充填による他の効果として、樹脂材料6´が電極端子3のネジ付き端子部3Aとナット8の間に這い上がり硬化することで、ナット8の回転止めとしての効果があると考えられる。樹脂材料6´の硬化後にトルクレンチでナット8を外す方向に回転したところ、約60Nの値を示した。これは締結時のトルクの約4倍であり、回転止めとして充分に効果があることがわかった。これにより、長期使用におけるナット8の緩み防止も期待できると考える。
【0030】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。なお
図5においては、電極端子3及びナット8については、断面にしていない。また
図6には、
図5の端子取付構造部の分解断面図を示している。第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比べて、第1のガスケット13´の形状が異なる。その他の構造は、第1の実施の形態と同じである。すなわち第2の実施の形態においては、蓋2と電極端子3の位置関係、弾性体4の材質、設置状況は第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、第1のガスケット13´が、
図6に示すように、ガスケット本体13´Aと嵌合部13´Bとを一体に備えた構造を有している。嵌合部13´Bは、端子貫通孔9とネジ付き端子部3Aとの間に形成された環状凹部に嵌合される。第1のガスケット13´は、中央に穴の開いた円板状のガスケット本体13´Aの内縁部分に、円板状のガスケット本体13´Aの厚み以上の長さを有する円筒状の嵌合部13´Bが一体に設けられた形状を有している。本実施の形態では、
図7(A)に示すように、ガスケット本体13´A及び嵌合部13´Bにそれぞれ切り欠き部14を設け、この切り欠き部14から樹脂材料6´を充填するようにしてもよい。また
図7(B)に示すように、1つのブラケット13´を2分割して得られる分割ブラケット13´Dを2個組み合わせて、第1のブラケット13´を構成してもよい。分割ブラケット13´Dは、分割ブラケット本体13´aと分割嵌合部13´bとを備えている。分割ブラケット13´Dを用いる場合には、蓋2と電極端子3との間に形成される環状の凹部10の一部に、2つの分割ブラケット13´Dの分割嵌合部13´bがそれぞれ配置される。配置された2個の分割ブラケット13´Dの分割嵌合部13´bの間に樹脂が通る通路が空くように、分割嵌合部13´bの形状寸法が定められている。この空間から樹脂材料6´が充填される。また、分割ブラケット13´Dの分割嵌合部13´bの長さは、蓋2の板厚より短い。分割ブラケットとしては、例えば、4分割など2以外の分割数でも良い。
【0031】
本実施の形態のように、ブラケット13´の嵌合部13´Bを環状の凹部10に嵌めて、しかも樹脂材料6´の充填により充填樹脂部6を形成すると、環状の弾性体4の位置を固定することができる。
【0032】
第2の実施の形態についても、第1の実施の形態の場合と同様の方法でリーク試験を実施した。その結果、第1の実施の形態と同様の真空度において、リークは確認できなかった。よって、第2の実施の形態の構造でも、リークは見られないことが確認できた。
【0033】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第3の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。なお
図8においては、電極端子3及びナット8については、断面にしていない。また
図9には、
図8の端子取付構造部の分解断面図を示している。第3の実施の形態は、第1の実施の形態と比べて、独立部品としての弾性体4が無い。本実施の形態では、第2のガスケット5´が弾性を有するガスケット材料により形成されており、第2のガスケット5´と弾性体4´とが一体に形成された構造をしている。その他の構造は、第1の実施の形態と同じである。すなわち第3の実施の形態においては、蓋2と電極端子3の位置関係、主要部の材質、設置状況は第1の実施の形態と同じである。
【0034】
本実施の形態では、弾性体4´をガスケット5´と一体に形成している。弾性体4´は、第1の蓋側環状段部11Aと第1の端子側環状段部12Aとの間に配置されており、ガスケット5´は、蓋2の第2の蓋側環状段部11Bと端子本体部3Bの第2の端子側環状段部12Bの間に配置されている。弾性体4´とガスケット5´とがこのように配置されると、弾性体4´とガスケット5´の境界部が線シールを構成する。このとき、弾性体4´を構成するガスケット5´が、弾性体4´の形状に沿って変形する柔らかい材質であると、シール部の強度が維持できず、リークが起こると考えられる。そのため、弾性体4´とガスケット5´の材質には、ある程度の硬さを有すると同時に、圧縮に対する反力が要求される。そのため、弾性体4´及びガスケット5´の材料としては、ゴム系材料ではなく、樹脂製のガスケットで採用されるポリマー系材料が適している。その中でも、本実施の形態では、パーフロロアルコキシアルカン(PFA)を選択した。弾性体4´及びガスケット5´の形状は、第1の実施の形態の樹脂製のガスケット5と同様に幅の広い円盤型とした。ガスケット材料からなる弾性体4´は、その中央部に電極端子3のネジ付き端子部3Aが貫通する貫通孔が形成されている。本実施の形態でも、弾性体4´の内周部と電極端子3の端子本体部3Bと蓋2の間に形成された環状の凹部10には樹脂材料6´が充填されて形成された充填樹脂部6が形成されている。電極端子3のネジ付き端子部3Aには樹脂製のガスケット13、金属ワッシャ7を通し、ナット8を締結している。
【0035】
本実施の形態では、締結トルクを管理し、ガスケット材料からなる弾性体4´のつぶれ量の管理が重要となる。本実施例では、弾性体4´のガスケットのつぶれ量が、元の厚みのおよそ50%となるように締結トルクを設定した。
【0036】
上記締結後の本実施の形態を第1の実施の形態と同様の方法でリーク試験を実施した。その結果、第1の実施の形態と同じ真空度におけるリーク試験において、リークは確認できなかった。よって、本実施の形態の構造でもリークは見られないことが確認できた。
【0037】
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4の実施の形態の端子シール構造を説明するために用いる非水電解液二次電池の端子取付構造部の断面図である。なお
図10においては、電極端子3及びナット8については、断面にしていない。また
図11には、
図10の端子取付構造部の分解断面図を示している。第4の実施の形態は、第3の実施の形態と同様に、第2のガスケット5´が弾性を有するガスケット材料により形成されており、第2のガスケット5´と弾性体4´とが一体に形成された構造をしている。本実施の形態では、電極端子3の端子本体部3Aに設けた第1の端子側環状段部12Aの上に環状の突部15が一体に形成されている。その他の構造は、第3の実施の形態と同じである。第3の実施の形態と同様に、ナット8を締結することで、電極端子3が引き上げられ、ガスケット材料からなる弾性体4´のガスケットを蓋2と電極端子3の段違いの部分で押しつぶすが、電極端子3の端子本体部3Aに設けた第1の端子側環状段部12Aの上に環状の突部15でも弾性体4のガスケットを圧縮することで、より確実に線シールを行うことができる。
【0038】
上記締結後の本実施の形態を第1の実施の形態と同様の方法でリーク試験を実施した。その結果、第1の実施の形態と同じ真空度におけるリーク試験において、リークは確認できなかった。よって、本実施の形態の構造でもリークは見られないことが確認できた。
【符号の説明】
【0039】
1 電槽本体
2 蓋
3 電極端子
4 弾性体
5,5´ ガスケット
6 充填樹脂部
6´樹脂材料
7 金属ワッシャ
8 ナット
9 端子貫通孔
10 凹部