(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載されたエンジンが出力するエンジントルクによって回転されるよう適合された入力軸の回転を複数段の変速比に変速して前記車両の駆動輪に回転連結された出力軸に伝達する自動変速装置と、
クラッチアクチュエータの作動によって前記エンジンのアウトプットシャフトと前記自動変速装置の前記入力軸とを係脱するとともに前記アウトプットシャフトから前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを目標クラッチトルクに制御するクラッチと、
前記クラッチのクラッチトルクを制御する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を記憶するクラッチトルク−作動量記憶部と、
所要の目標クラッチトルクに対応する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量を前記クラッチトルク−作動量記憶部から求め前記クラッチアクチュエータを前記クラッチアクチュエータ作動量作動させて前記クラッチトルクを前記目標クラッチトルクに制御するクラッチ制御部と、
前記クラッチトルク−作動量記憶部に記憶された前記クラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を学習して補正する対応関係補正部と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出部と、
前記エンジンの出力を制御するエンジン出力制御部の作動量を検出するエンジン出力制御作動量検出部と、
前記エンジン出力制御部の各作動量における前記エンジンの回転数と前記エンジントルクとの関係に基づいて前記エンジン出力制御作動量検出部が検出したエンジン出力制御作動量と前記エンジン回転数検出部が検出したエンジン回転数とから前記エンジントルクを検出するエンジントルク検出部と、
前記自動変速装置の入力軸又は出力軸に回転連結されたモータと、を備え、
前記対応関係補正部は、
前記エンジンのアウトプットシャフトおよび前記自動変速装置の前記入力軸が完全に係合し、前記車両の車速が一定となる定常走行状態となったとき、前記エンジントルク検出部によって検出された前記エンジントルクが所定値以下の低トルクであることを検出する低トルク検出部と、
現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数を設定する学習用エンジン回転数設定部と、
前記エンジン出力制御部の現在のエンジン出力制御作動量において前記エンジントルク検出部により検出された前記学習用エンジン回転数に対応する学習用エンジントルクと等しい学習用クラッチトルクに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量を演算する学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部と、
前記クラッチアクチュエータを前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させ、前記クラッチに前記完全に係合した状態から滑りを発生させるクラッチアクチュエータ学習作動部と、
前記クラッチアクチュエータを前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させ、前記エンジン回転数検出部によって検出した実際のエンジン回転数が安定したときに前記実際のエンジン回転数と前記学習用エンジン回転数との差が許容値以下であるとき、前記クラッチトルク−作動量記憶部において、前記学習用クラッチアクチュエータ作動量に対応するクラッチトルクの値を前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させたときに前記エンジントルク検出部で検出されるエンジントルクに置き換えるクラッチトルク−作動量補正部と、
を有するハイブリッド車両の変速制御装置。
車両に搭載されたエンジンが出力するエンジントルクによって回転されるよう適合された入力軸の回転を複数段の変速比に変速して前記車両の駆動輪に回転連結された出力軸に伝達する自動変速装置と、
クラッチアクチュエータの作動によって前記エンジンのアウトプットシャフトと前記自動変速装置の前記入力軸とを係脱するとともに前記アウトプットシャフトから前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを目標クラッチトルクに制御するクラッチと、
前記クラッチのクラッチトルクを制御する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を記憶するクラッチトルク−作動量記憶部と、
所要の目標クラッチトルクに対応する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量を前記クラッチトルク−作動量記憶部から求め前記クラッチアクチュエータを前記クラッチアクチュエータ作動量作動させて前記クラッチトルクを前記目標クラッチトルクに制御するクラッチ制御部と、
前記クラッチトルク−作動量記憶部に記憶された前記クラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を学習して補正する対応関係補正部と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出部と、
前記エンジンの出力を制御するエンジン出力制御部の作動量を検出するエンジン出力制御作動量検出部と、
前記エンジン出力制御部の各作動量における前記エンジンの回転数と前記エンジントルクとの関係に基づいて前記エンジン出力制御作動量検出部が検出したエンジン出力制御作動量と前記エンジン回転数検出部が検出したエンジン回転数とから前記エンジントルクを検出するエンジントルク検出部と、
前記自動変速装置の入力軸又は出力軸に回転連結されたモータと、を備え、
前記対応関係補正部は、
前記エンジンのアウトプットシャフトおよび前記自動変速装置の前記入力軸が完全に係合し、前記車両の車速が一定となる定常走行状態となったとき、前記エンジントルク検出部によって検出された前記エンジントルクが所定値以下の低トルクであることを検出する低トルク検出部と、
現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数を設定する学習用エンジン回転数設定部と、
前記エンジン出力制御部の現在のエンジン出力制御作動量において前記エンジントルク検出部により検出された前記学習用エンジン回転数に対応する学習用エンジントルク、および当該学習用エンジントルクを中心とした上方および下方学習用エンジントルクを演算し、前記上方および下方学習用エンジントルクと等しい上方および下方学習用クラッチトルクに対応する下方および上方学習用クラッチアクチュエータ作動量を演算する学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部と、
前記エンジン回転数検出部によって検出した実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数になるまで前記クラッチに前記完全に係合した状態から滑りを発生させるクラッチアクチュエータ学習作動部と、
前記クラッチアクチュエータを下方学習用クラッチアクチュエータ作動量から上方学習用クラッチアクチュエータ作動量までの間で作動させて前記実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数で安定したときに、前記クラッチトルク−作動量記憶部において、前記実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数と等しくなったときの前記クラッチアクチュエータ作動量を、前記学習用エンジントルクと等しい学習用クラッチトルクに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量として置き換えるクラッチトルク−作動量補正部と、
を有するハイブリッド車両の変速制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に開示された従来の技術を、内燃機関とモータジェネレータ、とを備えたハイブリッド車両であって、発進時にはモータジェネレータのみによって発進するモードを有する例えばパラレルハイブリッド車両等に適用しようとした場合、発進時においては、クラッチ装置の係合操作が不要であるので、クラッチアクチュエータ作動量を学習することができない。これにより学習の機会が大幅に減少しクラッチトルクとクラッチアクチュエータ作動量の補正精度が悪化する虞がある。一般的にハイブリッド車両の場合、エンジン走行での変速時におけるクラッチ切断中には、モータジェネレータによって駆動力をアシストし、失速感等が出ないように制御される。しかし、上述したクラッチトルクとクラッチアクチュエータ作動量の補正精度の悪化によってクラッチ切断時間が意図した時間を越えて長くなると、クラッチ切断とモータジェネレータによるアシストとのタイミングが合わず、これによって失速感が発生したり、エンジンの過大な吹き上がりによる変速ショックが発生したりする虞れがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発進時以外のタイミングでクラッチアクチュエータ作動量の学習を行ない、クラッチアクチュエータ作動量の補正精度を向上させることが可能な変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係るハイブリッド車両の変速制御装置は、車両に搭載されたエンジンが出力するエンジントルクによって回転されるよう適合された入力軸の回転を複数段の変速比に変速して前記車両の駆動輪に回転連結された出力軸に伝達する自動変速装置と、クラッチアクチュエータの作動によって前記エンジンのアウトプットシャフトと前記自動変速装置の前記入力軸とを係脱するとともに前記アウトプットシャフトから前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを目標クラッチトルクに制御するクラッチと、前記クラッチのクラッチトルクを制御する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を記憶するクラッチトルク−作動量記憶部と、所要の目標クラッチトルクに対応する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量を前記クラッチトルク−作動量記憶部から求め前記クラッチアクチュエータを前記クラッチアクチュエータ作動量作動させて前記クラッチトルクを前記目標クラッチトルクに制御するクラッチ制御部と、前記クラッチトルク−作動量記憶部に記憶された前記クラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を学習して補正する対応関係補正部と、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出部と、前記エンジンの出力を制御するエンジン出力制御部の作動量を検出するエンジン出力制御作動量検出部と、前記エンジン出力制御部の各作動量における前記エンジンの回転数と前記エンジントルクとの関係に基づいて前記エンジン出力制御作動量検出部が検出したエンジン出力制御作動量と前記エンジン回転数検出部が検出したエンジン回転数とから前記エンジントルクを検出するエンジントルク検出部と、前記自動変速装置の入力軸又は出力軸に回転連結されたモータと、を備え、前記対応関係補正部は、前記エンジンのアウトプットシャフトおよび前記自動変速装置の前記入力軸が完全に係合し
、前記車両の車速が一定となる定常走行状態となったとき、前記エンジントルク検出部によって検出された前記エンジントルクが所定値以下の低トルクであることを検出する低トルク検出部と、現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数を設定する学習用エンジン回転数設定部と、前記エンジン出力制御部の現在のエンジン出力制御作動量において前記エンジントルク検出部により検出された前記学習用エンジン回転数に対応する学習用エンジントルクと等しい学習用クラッチトルクに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量を演算する学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部と、前記クラッチアクチュエータを前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させ
、前記クラッチに前記完全に係合した状態から滑りを発生させるクラッチアクチュエータ学習作動部と、前記クラッチアクチュエータを前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させ、前記エンジン回転数検出部によって検出した実際のエンジン回転数
が安定したときに前記実際のエンジン回転数と前記学習用エンジン回転数との差が許容値以下であるとき、前記クラッチトルク−作動量記憶部において、前記学習用クラッチアクチュエータ作動量に対応するクラッチトルクの値を前記学習用クラッチアクチュエータ作動量作動させたときに前記エンジントルク検出部で検出されるエンジントルクに置き換えるクラッチトルク−作動量補正部と、を有する。
【0008】
上記課題を解決するため、請求項2に係るハイブリッド車両の変速制御装置は、車両に搭載されたエンジンが出力するエンジントルクによって回転されるよう適合された入力軸の回転を複数段の変速比に変速して前記車両の駆動輪に回転連結された出力軸に伝達する自動変速装置と、クラッチアクチュエータの作動によって前記エンジンのアウトプットシャフトと前記自動変速装置の前記入力軸とを係脱するとともに前記アウトプットシャフトから前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを目標クラッチトルクに制御するクラッチと、前記クラッチのクラッチトルクを制御する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を記憶するクラッチトルク−作動量記憶部と、所要の目標クラッチトルクに対応する前記クラッチアクチュエータのクラッチアクチュエータ作動量を前記クラッチトルク−作動量記憶部から求め前記クラッチアクチュエータを前記クラッチアクチュエータ作動量作動させて前記クラッチトルクを前記目標クラッチトルクに制御するクラッチ制御部と、前記クラッチトルク−作動量記憶部に記憶された前記クラッチアクチュエータ作動量と前記クラッチトルクとの対応関係を学習して補正する対応関係補正部と、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出部と、前記エンジンの出力を制御するエンジン出力制御部の作動量を検出するエンジン出力制御作動量検出部と、前記エンジン出力制御部の各作動量における前記エンジンの回転数と前記エンジントルクとの関係に基づいて前記エンジン出力制御作動量検出部が検出したエンジン出力制御作動量と前記エンジン回転数検出部が検出したエンジン回転数とから前記エンジントルクを検出するエンジントルク検出部と、前記自動変速装置の入力軸又は出力軸に回転連結されたモータと、を備え、前記対応関係補正部は、前記エンジンのアウトプットシャフトおよび前記自動変速装置の前記入力軸が完全に係合し
、前記車両の車速が一定となる定常走行状態となったとき、前記エンジントルク検出部によって検出された前記エンジントルクが所定値以下の低トルクであることを検出する低トルク検出部と、現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数を設定する学習用エンジン回転数設定部と、前記エンジン出力制御部の現在のエンジン出力制御作動量において前記エンジントルク検出部により検出された前記学習用エンジン回転数に対応する学習用エンジントルク、および当該学習用エンジントルクを中心とした上方および下方学習用エンジントルクを演算し、前記上方および下方学習用エンジントルクと等しい上方および下方学習用クラッチトルクに対応する下方および上方学習用クラッチアクチュエータ作動量を演算する学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部と
、前記エンジン回転数検出部によって検出した実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数になるまで前記クラッチに前記完全に係合した状態から滑りを発生させるクラッチアクチュエータ学習作動部と、
前記クラッチアクチュエータを下方学習用クラッチアクチュエータ作動量から上方学習用クラッチアクチュエータ作動量まで
の間で作動させて
前記実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数で安定したときに、前記クラッチトルク−作動量記憶部において、前記
実際のエンジン回転数が前記学習用エンジン回転数と等しくなったときの前記クラッチアクチュエータ作動量を、前記学習用エンジントルクと等しい学習用クラッチトルクに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量として置き換えるクラッチトルク−作動量補正部と、を有する。
【0009】
上記課題を解決するため、請求項3に係るハイブリッド車両の変速制御装置は、請求項1または請求項2において、前記低トルク検出部が検出する前記所定値以下の低トルクの前記所定値は前記エンジントルクの最大値の1/5から1/4の間の値である。
【0010】
上記課題を解決するため、請求項4に係るハイブリッド車両の変速制御装置は、請求項2において、前記上方および下方学習用エンジントルクは前記学習用エンジントルクに対し、それぞれ20%増減された値である。
【0011】
上記課題を解決するため、請求項5に係るハイブリッド車両の変速制御装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、前記クラッチは前記エンジンのアウトプットシャフトと前記自動変速装置の前記入力軸とを係脱可能に連結し、前記モータは、前記自動変速装置の前記出力軸に回転連結されるとともに前記駆動輪にモータ減速比で回転連結されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、エンジントルクが低トルク検出部によって所定値以下の低トルクであると判定された場合において、まず、学習用エンジン回転数設定部によって現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数が設定される。次にクラッチトルク−作動量補正部によって、現在のエンジン出力制御作動量における学習用エンジン回転数に対応する学習用エンジントルクが演算される。また、該学習用エンジントルクの大きさと等しい大きさのクラッチトルクに対応するエンジントルク検出部に基づく学習用クラッチアクチュエータ作動量が演算され、該学習用クラッチアクチュエータ作動量だけクラッチアクチュエータが作動される。これによりクラッチは滑ってエンジン回転数は上昇し実際のエンジン回転数となる。この状態において、エンジン回転数検出部によって検出した実際のエンジン回転数と学習用エンジン回転数との差が許容値以下となったときに、クラッチアクチュエータ作動量とクラッチトルクとの対応関係において、学習用クラッチアクチュエータ作動量に対応するクラッチトルクの値を学習用クラッチアクチュエータ作動量だけ作動したときに検出されるエンジントルクに置き換え補正する。このように、エンジントルクの低トルク域において、エンジン回転数が学習用エンジン回転数となるようにクラッチを滑らせ学習するので、クラッチを係脱する際に変速ショック等が発生してドライバビリティーに影響を与えることがなく、クラッチの発熱も抑制しながら、良好に学習できる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、学習用エンジントルク、および当該学習用エンジントルクを中心とした上下2点の上方および下方学習用エンジントルクを演算している。そして、上方学習用エンジントルクに対応する下方学習用クラッチアクチュエータ作動量から下方学習用エンジントルクに対応する上方学習用クラッチアクチュエータ作動量に向かってクラッチアクチュエータを作動させて、学習のために設定された学習用エンジン回転数を実現させる学習用クラッチアクチュエータ作動量を導出する。その後、学習用エンジントルクに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量に基づいてクラッチアクチュエータ作動量とクラッチトルクとの対応関係を補正する。このように、学習のために設定された学習用エンジン回転数を実現させた状態で学習し、補正を行なうので精度のよい補正が行える。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、低トルク検出部が検出する所定値以下の低トルクの所定値は、エンジントルクの最大値の1/5から1/4の間の値とする。このように充分低いエンジントルク状態において、エンジン回転数が学習用エンジン回転数となるように、またはエンジントルクが学習用エンジントルクとなるようにクラッチを滑らせて学習するので、クラッチを係脱する際に変速ショック等が発生しドライバビリティーに影響を与えることがなく、クラッチの発熱も抑制しながら、さらに良好に学習できる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、上方および下方学習用エンジントルクは学習用エンジントルクに対し、それぞれ20%増減した値である。このような範囲設定によって、現在のエンジン回転数よりも僅かに大きい学習用エンジン回転数を実現させる学習用クラッチアクチュエータ作動量を前記範囲内に好適に包含することができるとともに、探索時間が長くなることを抑制している。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、クラッチはエンジンのアウトプットシャフトと自動変速装置の入力軸とを係脱可能に連結し、モータは、自動変速装置の出力軸に回転連結されるとともに駆動輪に回転連結されている、いわゆるパラレル方式のハイブリッド車両用の変速制御装置である。このように構成されるハイブリッド車両ではモータのみの駆動力によって発進することもできるので、そのときは発進時におけるクラッチアクチュエータ作動量の学習の機会が少なくなる。この場合、本発明では発進時以外の低トルク域においてクラッチアクチュエータ作動量の学習の機会を増やすことができるので安定した変速制御を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用可能なハイブリッド車両の構成を示したブロック図である。
図1に示すハイブリッド車両1は、エンジン11と、バッテリ19に蓄積された電気で駆動されるモータジェネレータ(本発明のモータに相当、以下、「MG」と称す)12とを備え、該2種類の原動機が並列に配置されて搭載され、各々の原動機によって車輪を駆動できるような構成となっている。
【0019】
また、ハイブリッド車両1は、
図1、
図2に示すエンジン11の出力軸31(本発明のアウトプットシャフトに相当)に回転連結され、出力軸31の回転数を複数の変速段の変速比によって変速する自動変速機13(本発明の自動変速装置に相当)と、エンジン11の出力軸31と自動変速機13の入力軸34との係脱を制御するとともに出力軸31から入力軸34に伝達されるクラッチトルクを目標クラッチトルクに制御するクラッチ装置30(本発明のクラッチに相当)と、
図1に示す差動装置(ディファレンシャル)14と、駆動軸15a、15bと、駆動輪16a、16bと、を備えている。
【0020】
さらに、ハイブリッド車両1は、車両全体の制御を掌るHV/ECU(Hybrid Vehicle Electronic Control Unit)21と、MG12に駆動又は回生を指令するMG/ECU22と、MG12に電力を供給するインバータ27と、エンジン11の停止、及び燃焼を制御するENG/ECU23と、自動変速機13に組み込まれたクラッチアクチュエータ17、シフトアクチュエータ18、及びセレクトアクチュエータ26と接続され、各アクチュエータ17、18、26を制御し最適な変速を行なわせしめるAMT/ECU24と、インバータ27と接続されたバッテリ19の充電状態を管理するバッテリECU25と、を備えている。MG/ECU22、ENG/ECU23、AMT/ECU24、及びバッテリECU25はHV/ECU21とCAN接続され、それぞれはHV/ECU21によって管理、及び制御されている。
【0021】
各ECU21、22、23、24、25は、それぞれ制御部(図略)を備えており、演算を行なうCPU(制御部)と、ROM、RAM及びバックアップ電源なしでデータの保持が可能なEEPROM等とを備えて構成される(いずれも図略)。制御部は、CPUによってROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。ROMは、各種制御プログラムや、これらのプログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されたメモリである。RAMは制御部での演算結果や外部から入力されるデータ等を一時的に記憶するメモリに相当し、EEPROMは記憶されたデータ等を保存する不揮発性のメモリからなる。
【0022】
制御部のCPU、ROM、RAM、及びEEPROMは、夫々バス(図略)を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース、及び出力インターフェース(いずれも図略)と接続される。
【0023】
このように構成された第1の実施形態に係るハイブリッド車両1は、発進時にMG12のみによって発進し、MG12の駆動力が不足した場合にエンジン11をエンジン11に設けられた点火用のイグニッションスイッチ73によって始動させる。これによってMG12とエンジン11との両駆動力、若しくはエンジン11のみの駆動力によって走行することができる。
【0024】
そして、エンジン11、自動変速機13、クラッチ装置30、MG12(モータジェネレータ)、HV/ECU21、及びAMT/ECU24によって本発明に係る変速制御装置2が構成される。またAMT/ECU24が有するエンジン出力制御部49、クラッチトルク−作動量記憶部51、クラッチ制御部52、対応関係補正部53、エンジン回転数検出部54、エンジン出力制御作動量検出部55、及びエンジントルク検出部56と、によって変速制御装置2が制御される。
【0025】
また、AMT/ECU24には、後述するイグニッションスイッチ73、及びエンジン回転数センサ72等の各種センサがHV/ECU21を介して接続されており、クラッチアクチュエータ17、シフトアクチュエータ18、セレクトアクチュエータ26、及びストロークセンサ67等が接続されている。そしてAMT/ECU24は、上記各種センサの検出信号を取り込み、車両状態(イグニッションスイッチ73のオン・オフ状態、エンジン回転数Ne、クラッチアクチュエータ作動量Sa等)を検知する。そして検知した車両状態及び運転者の意思に基づいて、AMT/ECU24は、クラッチアクチュエータ17、シフトアクチュエータ18、及びセレクトアクチュエータ26を駆動して変速操作を行なうとともに、クラッチアクチュエータ17のみを駆動させて本発明に係るクラッチアクチュエータ作動量Saの学習制御を行なう。
【0026】
次に変速制御装置2を構成するエンジン11と、自動変速機13と、MG12と、クラッチ装置30と、HV/ECU21と、AMT/ECU24とについて詳細に説明する。ただし、MG12は、ハイブリッド車両で一般的に使用される3相電気モータであるので詳細な説明は省略する。
【0027】
図2に示すように、エンジン11の出力軸31には、クラッチ装置30が組み付けられ、クラッチ装置30を介して出力軸31と自動変速機13の入力軸34とが接続されている。クラッチ装置30は乾式・単板式の摩擦クラッチである。
【0028】
エンジン11は、吸入空気量を調節し、エンジン11の出力を制御するエンジン出力制御部49を構成するスロットルバルブ70と、本発明に係るエンジン出力制御作動量であるスロットルバルブ70の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサ68(本発明のエンジン出力制御作動量検出部55を構成している)と、スロットルバルブ70を開閉駆動するスロットル用アクチュエータ69(本発明のエンジン出力制御部49を構成している)とを備えている。スロットルセンサ68、及びスロットル用アクチュエータ69はENG/ECU23に接続されている。そしてHV/ECU21からの指令に基づきENG/ECU23がスロットル用アクチュエータ69を制御する。またスロットルセンサ68からのスロットル開度信号がENG/ECU23に送信される。なお、
図2においてはスロットル用アクチュエータ69がスロットルバルブ70を開閉させる絵とはなっていない。しかし、
図2は模式的に描いたものであり、実際にはスロットル用アクチュエータ69がスロットルバルブ70の回転軸であるスロットルシャフト71を軸回りに回動させるよう構成されている。
【0029】
図1に示すように、エンジン11の出力軸31近傍には出力軸31の回転数を検出する非接触式のエンジン回転数センサ72が設けられている。また図略のアクセルペダルにはアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサが設けられている。そして運転者がアクセルペダル(図略)を踏み込んだり戻したりすると、アクセル開度センサからアクセル開度信号がHV/ECU21に送信され、HV/ECU21はエンジン11が作動状態である場合においては、送信されたアクセル開度信号の値に応じてENG/ECU23に指令値を送信する。ENG/ECU23は、指令値に基づきスロットル用アクチュエータ69を作動させてスロットルバルブ70を開閉弁させ、エンジン回転数センサ72によって出力軸31の回転数を監視しながらエンジン11の出力及び、エンジン回転数Neを制御する。
【0030】
なお、本実施形態においては、エンジン回転数Neは、運転者が踏み込むアクセルペダルの踏み込み量のみによって制御されるものではなく、アクセルペダルの踏み込み量とは関係なく、HV/ECU21からの要求によってもスロットル用アクチュエータ69を作動させて制御可能な構成となっている。
【0031】
次にクラッチ装置30(本発明のクラッチに相当)について説明する。クラッチ装置30は、エンジン11の出力軸31に固定されたフライホイール41、クラッチフェージング43が外周両面に固着されるとともに自動変速機13の入力軸34とスプライン連結され一体的に回転するクラッチディスク42、フライホイール41に固定されるクラッチアッセンブリであるプレッシャプレート44、ダイヤフラムスプリング45、クラッチカバー46、及び油圧ダイレクトシリンダ(コンセントリックスレーブシリンダ)47を含んで構成される。
【0032】
クラッチ装置30は、油圧ダイレクトシリンダ47、ダイヤフラムスプリング45、及びプレッシャプレート44を介して、フライホイール41に対するクラッチディスク42の圧着荷重を変化させることで、フライホイール41及びクラッチディスク42間の回転伝達量が増減可能となっており、これによってクラッチトルクTcを目標クラッチトルクに制御可能としている。目標クラッチトルクとは、車両運転状態に応じてAMT/ECU24から要求されるクラッチトルクTcである。そして、目標クラッチトルクは、AMT/ECU24が、クラッチアクチュエータ17のクラッチアクチュエータ作動量Saを
図3に示すクラッチトルク−クラッチアクチュエータ作動量マップに基づいて制御することによって実現される。具体的には、AMT/ECU24が、後述するクラッチアクチュエータ17を構成する出力ロッド64の軸方向の作動量を制御することによって実現させる。このとき出力ロッド64の作動量は、出力ロッド64の近傍に設けられた非接触式のストロークセンサ67によって検出される。本実施形態において、ストロークセンサ67はホールICによる回転角センサであり、AMT/ECU24と接続され、ストロークセンサ67によって検出されたクラッチアクチュエータ作動量SaのデータがAMT/ECU24に送信される。
【0033】
次に、クラッチアクチュエータ17について説明する。
図2に示すように、クラッチアクチュエータ17は、直流電動モータ61、減速機62、出力ホイール63、出力ロッド64、マスタシリンダ65、及びアシストスプリング66を備えて構成されている。
【0034】
減速機62は、直流電動モータ61の出力軸上に形成されたウォームギヤよりなり、出力ホイール63は減速機62を介して直流電動モ−タ61の駆動によって回動される。そして出力ホイール63の回動によって、出力ホイール63にピポットピン39によって連結された出力ロッド64が前方(
図2において左方)又は後方(
図2において右方)に移動(ストローク、進退)されてマスタシリンダ65を作動させる。そしてマスタシリンダ65の作動によって発生した油圧を、クラッチ装置30を構成する油圧ダイレクトシリンダ47に付与する。アシストスプリング66は出力ホイール63に連結されており、クラッチ装置30を切断する(クラッチを切る)方向(
図2において反時計回り)にアシスト力を発生させ、直流電動モータ61の出力(トルク)がより小さい力で出力ホイール63を回動可能なように構成されている。
【0035】
例えば、
図2に示すクラッチアクチュエータ17の初期状態では、出力ロッド64、油圧ダイレクトシリンダ47、クラッチ装置30のバネ反力(プレッシャプレート44をフライホイール41方向に付勢する力)を発生するダイヤフラムスプリング45を介して、プレッシャプレート44に圧着荷重が生じている。これによってクラッチディスク42にはフライホイール41に向かって圧着荷重が加えられフライホイール41と完全係合してエンジン11側からの回転が完全に伝達可能な状態となっている。
【0036】
一方、出力ロッド64の
図2における左方への移動によって油圧ダイレクトシリンダ47が作動されると、ダイヤフラムスプリング45の内径部が変形され、これによってプレッシャプレート44を押圧するダイヤフラムスプリング45の外径部の付勢力が弱くなり、フライホイール41に対するクラッチディスク42の圧着荷重が低減されるようになっている。そしてフライホイール41とクラッチディスク42との間には、出力ロッド64のクラッチアクチュエータ作動量Saの大きさに応じ、滑り(スリップ)が発生して、いわゆる半クラッチ状態となり、エンジン回転数Ne、およびエンジントルクTeが自動変速機13の入力軸34に前記半クラッチの状態に応じて減じて伝達される。
図3は初期状態(車両出荷状態)におけるクラッチアクチュエータ作動量Saと、該クラッチアクチュエータ作動量Sa時に自動変速機13の入力軸34に伝達されるエンジントルクTe(=クラッチトルクTc)との対応関係を示したクラッチトルクマップであり、AMT/ECU24のROMに記憶されている(クラッチトルク−作動量記憶部51に相当)。
【0037】
図3において、左端がフライホイール41とクラッチディスク42との間が完全に係合している完全係合状態を示し、右端がフライホイール41とクラッチディスク42との間が切断されて開放状態に至る点を示している。
【0038】
次に自動変速機13について説明する。自動変速機13は既存のマニュアルトランスミッションに対し、クラッチアクチュエータ17の作動によって係脱を制御されるクラッチ装置30を取り付け、変速を自動化した、いわゆるAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)である。自動変速機13は例えば前進5段・後進1段の平行軸歯車式変速機であって、入力軸34及び出力軸35を備えるとともに、複数段の変速比の変速ギヤ列を備えている。
【0039】
自動変速機13の入力軸34は、クラッチ装置30側からの動力(クラッチトルクTc)が伝達可能に連結され、出力軸35は、車両の駆動軸15a、15bに差動装置(ディファレンシャル)14を介して動力が伝達可能に連結されている(
図1参照)。これによりクラッチトルクTcは、変速段で増減され、差動装置(ディファレンシャル)14を経由して駆動軸15a、15b、及び駆動輪16a、16bに伝達されて車両を駆動させる。また、MG12の出力も同様に差動装置(ディファレンシャル)14を経由して単独で車両を駆動可能としている。
【0040】
自動変速機13には、AMT/ECU24と接続され、AMT/ECU24によって制御される変速段の切り替えを操作するための変速用アクチュエータ群(前述のクラッチアクチュエータ17、シフトアクチュエータ18、及びセレクトアクチュエータ26)が備えられている。
【0041】
AMT/ECU24は各変速段毎に設定された変速線を有している。自動変速機13の変速時には、各変速段においてエンジン回転数Ne(若しくは自動変速機の出力軸回転数)が、変速線が示す回転数に達すると、クラッチアクチュエータ17を作動させる。クラッチアクチュエータ17は、出力ロッド64を
図2において左方に移動させてマスタシリンダ65、及び油圧ダイレクトシリンダ47を作動させることによってクラッチ装置30のフライホイール41とクラッチディスク42との係合を切断する。
【0042】
次にAMT/ECU24はシフトアクチュエータ18、及びセレクトアクチュエータ26を適宜駆動して自動変速機13のギヤ列(変速段)の切替えを実施する。AMT/ECU24は、スロットル用アクチュエータ69を駆動してスロットルバルブ70を作動させ、エンジン回転数Neを変速後のギヤの変速段と、その時点での車速(または自動変速機13の出力軸回転数)とに適合したエンジン回転数Neに調整する。このとき、クラッチ装置30はクラッチアクチュエータ17を駆動することによってクラッチトルクTcを調節しエンジン回転数Neと、変速後のギヤの変速段とその時点での車速とが良好に適合できるよう半クラッチ状態を作り出すとともに、最終的にフライホイール41とクラッチディスク42とを完全係合させ変速を終了する。
【0043】
なお、上記の説明において、シフトアクチュエータ18、及びセレクトアクチュエータ26の駆動方法については公知であるので詳細な説明は省略する(特開2004−176894参照)。また、変速線、および変速線を利用しての変速段の変更手法についても公知であるので詳細な説明は省略する。
【0044】
HV/ECU21は、ハイブリッド車両1全体を統括制御し、AMT/ECU24は、変速制御装置2を構成するエンジン出力制御部49、クラッチトルク−作動量記憶部51、クラッチ制御部52、対応関係補正部53、エンジン回転数検出部54、エンジン出力制御作動量検出部55、及びエンジントルク検出部56と、を備えている(
図1参照)。
【0045】
また、前記対応関係補正部53は、低トルク検出部57と、学習用エンジン回転数設定部58と、学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77と、クラッチアクチュエータ学習作動部78と、クラッチトルク−作動量補正部60と、を備えている。AMT/ECU24は、これら各部によってクラッチ装置30のクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係を適宜、学習し補正する。(
図1、及び
図5参照)。
【0046】
クラッチトルク−作動量記憶部51は、
図3に示す、クラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係を示すクラッチトルクTc−クラッチアクチュエータ作動量SaマップをROMに記憶しているとともに、補正されたクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係を記憶する。
図3のマップは、複数の所定のクラッチトルクTcとこれに対応して演算設定されたクラッチアクチュエータ作動量Saとで規定される複数のマップ点(座標)を有し、各隣接するマップ点間が一次補間されることで形成されている。該クラッチトルクTc−クラッチアクチュエータ作動量Saマップは車両の出荷状態での特性である。このため、ハイブリッド車両1が長時間運転されると時間の経過とともにクラッチディスク42の外周両面に固着されたクラッチフェージング43の摩耗や、発熱によるμ(摩擦係数)の変化等によってクラッチトルクTc−クラッチアクチュエータ作動量Saの関係は変化してくる。
【0047】
そこで本発明においては、クラッチトルクTcとクラッチアクチュエータ作動量Saとの関係をエンジントルクTeが低トルク域で、且つ定常走行中において適宜学習し、学習結果に応じてクラッチトルクTc−クラッチアクチュエータ作動量Saの関係を補正する。具体的には、ハイブリッド車両1がMG12によって発進後、エンジン11が始動され平坦路でエンジン11により駆動されて定常走行状態となり、且つエンジントルクTeが低トルク時に、クラッチ装置30の係合を僅かにスリップさせ学習するようにした。このようにエンジントルクTeが低トルク状態時においてクラッチ装置30を僅かにスリップさせて学習するので、運転者にはショックが伝わりにくくドライバビリティーに影響を与える虞がない。
【0048】
クラッチ制御部52は車両が要求する所要の目標クラッチトルクを得るためにクラッチアクチュエータ17が制御すべきクラッチアクチュエータ作動量Saをクラッチトルク−作動量記憶部51から求める。そして求めたクラッチアクチュエータ作動量SaデータをAMT/ECU24に送信し、AMT/ECU24によってクラッチアクチュエータ17を駆動させ出力ロッド64を対応するクラッチアクチュエータ作動量Saだけ作動させ、クラッチトルクTcが目標クラッチトルクになるよう制御する。
【0049】
エンジン回転数検出部54は、エンジン11の出力軸31に設けられたエンジン回転数センサ72によってエンジン回転数Neを検出する。また、エンジン出力制御作動量検出部55はスロットルセンサ68を備え、エンジントルクTeを制御するスロットルバルブ70(エンジン出力制御部49を構成する)のスロットル開度(エンジン出力制御作動量)をスロットルセンサ68によって検出する。
【0050】
エンジントルク検出部56は、事前に準備され、HV/ECU21のROMに記憶されているエンジン出力制御作動量の各作動量である各スロットル開度におけるエンジン回転数NeとエンジントルクTeとの関係(
図6参照)に基づいて、エンジン出力制御作動量検出部55が検出したスロットル開度とエンジン回転数検出部54が検出したエンジン回転数NeとからエンジントルクTeを検出するものである。
【0051】
対応関係補正部53は、低トルク検出部57と、学習用エンジン回転数設定部58と、学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77と、クラッチアクチュエータ学習作動部78と、クラッチトルク−作動量補正部60とを有している。低トルク検出部57は、
図4の制御状態図に示すように、エンジン11が始動され、クラッチ装置30が完全係合状態(
図4左方)にあるときにおいて、まずエンジントルク検出部56によってエンジントルクTeを検出する。検出されたエンジントルクTeは低トルク検出部57によって所定のエンジントルク値(本実施形態においては、エンジン11の全開時トルクに対して5/1のエンジントルク値とする)より低いか否かを確認し、低いことが確認されると学習条件が成立したとして、制御を進める。
【0052】
また、学習用エンジン回転数設定部58は、エンジン回転数検出部54によって検出された現在のエンジン回転数Ne(=自動変速機13の入力軸回転数)よりも僅かに大きい、例えば+αrpmだけ大きい学習用エンジン回転数LNeを設定する。このときαはどのように設定してもよいが、学習用エンジン回転数LNeを得るためにクラッチ装置30を滑らせることによって、運転者にショックや、失速間等の違和感がないよう設定されることが好ましい。また学習用エンジン回転数LNeは事前に決定しておいてもよい。
【0053】
学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77は、スロットルバルブ70(エンジン出力制御部49)の現在のスロットル開度(エンジン出力制御作動量)において、
図6に示すエンジントルク検出部56に基づいて学習用エンジン回転数LNeに対応する学習用エンジントルクTebを演算する。そして該学習用エンジントルクTebと等しい学習用クラッチトルクTcaに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaを演算する。その後、クラッチアクチュエータ学習作動部78では、クラッチアクチュエータ17を学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaだけ作動させる(
図3参照)。これによって、クラッチ装置30の係合が滑りを生じ、エンジン回転数Neが上昇する。
【0054】
そして、クラッチトルク−作動量補正部60が、エンジン回転数検出部54によって検出した上昇した実際のエンジン回転数RNeと学習用エンジン回転数LNeとの差が許容値以下であることを確認する。この条件が成立したとき、クラッチトルク−作動量補正部60は、クラッチトルク−作動量記憶部51におけるクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係において、学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaに対応するクラッチトルクTcの値を、実際のエンジントルクTecに置き換えRAMに記憶し、
図3のマップを補正する。
【0055】
次に本発明に係る変速制御装置2の制御について
図5のフローチャート1に基づき説明する。ハイブリッド車両1が起動されると、フローチャート1がスタートする(ステップS10)。前述したように本実施形態においてはハイブリッド車両1の発進時には、MG12によって発進する。これにより発進時、エンジン11は始動されておらずクラッチ装置30の係合は切断されている。そして、その後、例えばMG12を駆動するバッテリ19の充電量が不足していたり、運転者がアクセルペダルを踏み込み加速を要求したりすることによってHV/ECU21がENG/ECU23に指令信号を送信し、イグニッションスイッチ73をONさせ、エンジン11が始動される。そして、この状態において、クラッチ装置30が完全係合され、ハイブリッド車両1が一定車速でエンジン11によって駆動されているか、否か、つまり定常走行中であるか、否かがステップS11によって確認される。
【0056】
そして、定常走行中でなければ学習を適切に行なうことができないので、ステップS21に移動してプログラムを終了し、ステップS10にもどる。ステップS11において、定常走行中であると判定されると、ステップS12に移動する。そして低トルク検出部57によって、エンジントルク検出部56が検出した現在のエンジントルクTeが、所定値以下であるか否かを判断する。このとき本発明に係る所定値は、エンジン11の最大エンジントルクTemax(例えば150N・m)の1/5(例えば30N・m)であるものとする。ただし、1/5に限らず1/5〜1/4の間であってもよい。最大エンジントルクTemaxの1/5〜1/4という所定値は発明者によって実験に基づき求められたものであり、使用されるエンジンによって異なる値である。そして本実施形態においては最大エンジントルクTemaxの1/5以下である場合が最も安定して学習ができる値となっている。なお、この所定値は、本発明に係るクラッチ装置30を半クラッチ状態にしたり、再び係合させたりしたときに、ドライバビリティーに影響を与えなければ、任意に設定してもよい。
【0057】
そして、現在のエンジントルクTeが最大エンジントルクTemaxの1/5以下であればステップS13に移動し、1/5を越えていればステップS21に移動してプログラムを終了し、ステップS10にもどる。
【0058】
ステップS13では、学習用エンジン回転数設定部58によって学習用エンジン回転数LNe=(現在のエンジン回転数Ne+αrpm)となるαの値を設定する。
【0059】
ステップS14(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77)では、
図6に示すエンジントルク検出部56によって学習用エンジン回転数LNeに対応する学習用エンジントルクTebを演算する。
【0060】
ステップS15(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77)では、
図3のクラッチトルク−作動量記憶部51が有するマップによって学習用エンジントルクTebと等しい学習用クラッチトルクTcaに対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaを演算する。
【0061】
ステップS16(クラッチアクチュエータ学習作動部78)では、クラッチ制御部52を用いてクラッチアクチュエータ17の出力ロッド64を学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaの手前までショックが大きくならない程度に急作動させ、実際のエンジン回転数RNe≒学習用エンジン回転数LNeとなるように学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaまでゆっくり動かして調整する。その際、学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaの手前から調整せずに、オーバーシュートさせてから調整してもよい。
【0062】
ステップS17では、学習用エンジン回転数LNeになるよう制御された実際のエンジン回転数RNeが所定時間、所定の幅で安定して保持しているか否かが判定される。所定時間、実際のエンジン回転数RNeを一定に保持していれば、精度よく学習することができるので、YでステップS18に移動する。Nの場合には学習を適切に行なうことができないのでステップS21でプログラムを終了する。なお、所定時間、及び所定の幅はどのように設定してもよい。
【0063】
ステップS18では、そのときのエンジントルクTecが安定しているか否かが確認される(
図6参照)。エンジントルクTecは
図6のグラフから演算される。このときステップS17において、実際のエンジン回転数RNeが一定に保持されていることは確認済である。よってステップS18では、エンジントルクTecの安定を確認することによって、スロットル開度が一定であるか否かを確認する。そしてエンジントルクTecが所定時間、所定の幅の中で安定していればステップS19に移動し、一定が保持されていなければプログラムを終了する。なお、所定時間、及び所定の幅はどのように設定してもよい。
【0064】
ステップS19(クラッチトルク−作動量補正部60)では、
図6に示す実際のエンジン回転数RNeと学習用エンジン回転数LNeとの差が許容値以下であるかが確認される。このとき許容値は任意に設定すればよい。そして許容値以下であればステップS20に進むとともに許容値以上であればプログラムを終了する。
【0065】
ステップS20(クラッチトルク−作動量補正部60)では、学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa(β)に対応するクラッチトルクの値Tca(学習用クラッチトルク)を安定したエンジントルクTeの値Tecに置き換えてTcbとし、
図3のクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係(マップ)を補正する。そして次回の変速時に、クラッチ装置30を作動してクラッチトルクTcの制御を行なうときに補正後データによって制御を行なうものである。
【0066】
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、エンジントルクが低トルク検出部57によって所定値(最大エンジントルクTemaxの1/5から1/4の間の値であり本実施形態においては1/5とする)以下の低トルクであると判定された場合において、まず、学習用エンジン回転数設定部58によって現在のエンジン回転数Neよりも僅かに大きい学習用エンジン回転数LNeが設定される。次に学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77によって、現在のスロットル開度(エンジン出力制御作動量)における学習用エンジン回転数LNeに対応する学習用エンジントルクTebが演算される。
【0067】
また、学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77によって学習用エンジントルクTebの大きさと等しい大きさの学習用クラッチトルクTcaに対応するエンジントルク検出部56に基づく学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaが演算される。その後、クラッチアクチュエータ学習作動部78によって学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaだけクラッチアクチュエータ17が作動される。これによりクラッチ装置30の係合部は滑ってエンジン回転数は上昇し実際のエンジン回転数RNeとなる。この状態において、実際のエンジン回転数、及びエンジントルクが安定し、且つエンジン回転数検出部54によって検出した実際のエンジン回転数と学習用エンジン回転数LNeとの差が許容値以下となったときに、クラッチアクチュエータ作動量とクラッチトルクとの対応関係において、学習用クラッチアクチュエータ作動量Saaに対応するクラッチトルクの値を前記安定したエンジントルクTecに置き換えクラッチトルクTcbとして補正する。
【0068】
このように、エンジントルクTeの低トルク域において、エンジン回転数Neが学習用エンジン回転数LNeとなるようにクラッチ装置30の係合部を滑らせ学習するので、クラッチ装置30を係脱する際に変速ショック等が発生してドライバビリティーに影響を与えることがなく、クラッチ装置30の係合部の発熱も抑制しながら、良好に学習できる。
【0069】
さらに低トルク検出部が検出する所定値以下の低トルクの所定値は、エンジントルクの最大値の1/5(1/5から1/4の間でもよい)の値である。このように充分低いエンジントルク状態において、エンジン回転数Neが学習用エンジン回転数LNeとなるように、クラッチ装置30の係合を滑らせて学習するので、さらにドライバビリティーに影響を与えることがなく、クラッチの発熱も抑制しながら、良好に学習できる。
【0070】
次に、第2の実施形態について
図8のフローチャート2および
図7、
図9に基づき説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態の学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部77、クラッチアクチュエータ学習作動部78およびクラッチトルク−作動量補正部60が一部変更された学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部87、クラッチアクチュエータ学習作動部88およびクラッチトルク−作動量補正部80が設けられているが、その変更内容についても、以下の説明内において行なう。
【0071】
第2の実施形態では、第1の実施形態のフローチャート1における、ステップS10〜ステップS12以外が変更されている。ステップS13はステップS13aに変更する。ステップS14はステップS14aおよびステップS14bに変更し、ステップS15はステップS15aおよびステップS15bに変更する。ステップS16はステップS16a〜ステップS16eに変更する。ステップS17およびステップS18は、ステップS17aおよびステップS18aに変更し、ステップS19は削除している。さらにステップS20は、ステップS20aに変更している。
【0072】
ステップS10〜ステップS12については、フローチャート1と同様の処理が実施される。そこで、フローチャート2においては、変更点について詳細に説明し、フローチャート1と同様の部分については、同じステップ符号を付すとともに、説明が必要なときのみ説明するものとする。
【0073】
まず、フローチャート1と同様に、ハイブリッド車両1が起動されると、フローチャート1がスタートする(ステップS10)。そして、フローチャート1と同様にステップS11〜ステップS12まで処理を実行する。
【0074】
ステップS13a(学習用エンジン回転数設定部58)では、学習用エンジン回転数LNe=(現在のエンジン回転数Ne+αrpm)において、α=100rpmとし、学習用エンジン回転数LNeを演算する(
図9参照)。ここで、α=100rpmは、発明者が実験を重ねて求めた値である。α=100rpmとすることで、運転者のドライバビリティーに対するフィーリングを損ねることなく、学習に適したクラッチ装置30の滑りを確実に実現させることができる。
【0075】
ステップS14a(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部87)では、
図9に示すようにマップを用いてエンジントルク検出部56によって学習用エンジン回転数LNeに対応する学習用エンジントルクTedを演算する。
【0076】
ステップS14b(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部87)では、ステップS14aで演算した学習用エンジントルクTedに1.2および0.8を乗じて上方学習用エンジントルクTed1(Ted×1.2)および下方学習用エンジントルクTed2(Ted×0.8)を演算する。つまり、学習用エンジントルクTedに、1.2および0.8を乗ずることによって、学習用エンジントルクTedに対して±20%の上下限値を設定している。
【0077】
ステップS15a(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部87)では、
図7のクラッチトルク−作動量記憶部51が有するマップによって上方学習用エンジントルクTed1と等しい上方学習用クラッチトルクTcc1に対応する下方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa1を演算する。
【0078】
ステップS15b(学習用クラッチアクチュエータ作動量演算部87)では、
図7のクラッチトルク−作動量記憶部51が有するマップによって下方学習用エンジントルクTed2と等しい下方学習用クラッチトルクTcc2に対応する上方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa2を演算する。
【0079】
ステップS16a(クラッチアクチュエータ学習作動部88)では、クラッチ制御部52を用いてクラッチアクチュエータ17の出力ロッド64を下方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa1だけ動かし停止させる。
【0080】
ステップS16b(クラッチアクチュエータ学習作動部88)では、クラッチアクチュエータ作動量Saが、上方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa2を越えていないかが確認される。越えていなければ、ステップS16cに移動する。上方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa2を越えていれば、ステップS21に移動し、プログラムを終了する。
【0081】
ステップS16c(クラッチアクチュエータ学習作動部88)では、クラッチアクチュエータ17によって所定のクラッチアクチュエータ作動量Saだけ作動したときにおける、実際のエンジン回転数と
図9に示す学習用エンジン回転数LNeとが同等と見なせる程度に一致しているか否かが確認される。そして一致しているとみなせればステップS17aに進み、一致していないときには、ステップS16dに進む。
【0082】
ステップS16d(クラッチアクチュエータ学習作動部88)では、クラッチアクチュエータ作動量Sa=Sa+γとする。このとき右項のSaは、初回においては下方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa1となる。また、γは下方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa1から少しずつ作動量を大きくしてクラッチ装置30を滑らせていき、実際のエンジン回転数を学習用エンジン回転数LNeに到達させるためのものであり、どのように設定してもよい。例えば、一回分の増加量を3mmずつ程度としてもよいし、学習用クラッチアクチュエータ作動量SaaとSabとの間を10等分した値としてもよい。また、100等分した値としてもよい。そして、ステップS16eに移動する。
【0083】
ステップS16e(クラッチアクチュエータ学習作動部88)では、ステップS16dで求めたクラッチアクチュエータ作動量Saとなるようクラッチアクチュエータ17を作動させる。実際には、下方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa1を越えた量のみ作動させればよい。そして、ステップS16bに移動し、ステップS16cにおいて、実際のエンジン回転数と学習用エンジン回転数LNeとが一致するまで、ステップS16b〜ステップS16eが繰り返し処理される。そして、ステップS16cにおいて、実際のエンジン回転数=学習用エンジン回転数LNeとなるとステップS17aに移動する。
【0084】
ステップS17aでは、学習用エンジン回転数LNeの安定が確認される。ステップS18aでは、学習用エンジントルクTedの安定が確認される。そして学習用エンジン回転数LNeおよび学習用エンジントルクTedが各々所定時間、所定の幅の中で安定していればステップS20aに移動し、安定が維持されていなければプログラムを終了する。
【0085】
ステップS20a(クラッチトルク−作動量補正部80)では、実際のエンジン回転数=学習用エンジン回転数LNeとならしめた学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa3を、学習用エンジントルクTedに対応するクラッチアクチュエータ作動量Saとして置き換え、
図7におけるクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係(マップ)を補正する(
図7中破線参照)。そして次回の変速時に、クラッチ装置30を作動させクラッチトルクTcの制御を行なうときに補正後データによって制御を行なうものである。
【0086】
このように、第2の実施形態においては、学習用エンジン回転数LNeを決定するための現在のエンジン回転数Neからの増加回転数αを、実験によって求めた学習に最適な回転数である100rpmとした。そして、学習用エンジン回転数LNeに対応する学習用エンジントルクTed、および当該学習用エンジントルクを中心とした上下2点の上方および下方学習用エンジントルクTed1、Ted2を演算している。そして、上方学習用エンジントルクTed1に対応する下方学習用方クラッチアクチュエータ作動量Saa1から下方学習用エンジントルクTed2に対応する上方学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa2に向かってクラッチアクチュエータ17を作動させて、学習のために設定された学習用エンジン回転数LNeを実現させる学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa3を探索し導出する。その後、学習用エンジントルクTed(=学習用クラッチトルクTcc)に対応する学習用クラッチアクチュエータ作動量Saa3に基づいてクラッチアクチュエータ作動量SaとクラッチトルクTcとの対応関係を補正する。このように、学習のために設定された学習用エンジン回転数LNeを実現させた状態で、学習し補正を行なうので、精度のよい補正が行える。
【0087】
また、本実施形態のハイブリッド車両1は、クラッチ装置30がエンジン11のアウトプットシャフト(出力軸31)と自動変速機13の入力軸34とを係脱可能に連結し、MG12が、自動変速機13の出力軸35に回転連結されるとともに駆動軸15a、15bを介して駆動輪16a、16bに回転連結されている、いわゆるパラレル方式のハイブリッド車両である。このように構成されるハイブリッド車両1ではMG12のみの駆動力によって発進することもできるので、そのときは発進時におけるクラッチアクチュエータ作動量Saの学習の機会が少なくなる。この場合、本発明では発進時以外の低トルク域においてクラッチアクチュエータ作動量Saの学習の機会を好適に増やすことができるので安定した変速制御を実施することができる。
【0088】
また、本実施形態では、エンジン11とMG12とが並列的な関係にあって、それぞれが独立して車両を駆動可能な構成のハイブリッド車の例を挙げて説明した。しかし、この構成に限らず、MGとエンジンとが直列に連結されMGで出力される駆動力が、差動装置(ディファレンシャル)14に伝達されるハイブリッド車や、エンジンによってのみ走行する車両のクラッチ学習制御にも適用可能である。また、A/T車にも適用可能である。