特許第5652681号(P5652681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5652681
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20141218BHJP
   A01D 34/82 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   A01D34/64 C
   A01D34/82
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-134417(P2013-134417)
(22)【出願日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(74)【代理人】
【識別番号】100175891
【弁理士】
【氏名又は名称】原 一敬
(72)【発明者】
【氏名】松木 悟志
(72)【発明者】
【氏名】戸田 大尊
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−70696(JP,A)
【文献】 特開2002−27814(JP,A)
【文献】 実開昭63−104233(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/412−34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアステップ(13)の下方にミッションケース(3)を設け、
このミッションケース(3)を挟んで左右側方それぞれに左右の燃料タンク(16L、16R)を設け、
このミッションケース(3)の下方であって、車体を駆動するための前輪(7、7)及び後輪(8、8)の間に芝刈機(5)を設置し、
この芝刈機(5)の昇降動作を、機体の前部に配置する左右のフロントリンク(43、43)と機体の中央部に配置する左右のミッドリンク(45、45)とからなる平行リンクで行う作業車両において、
前記ミッションケース(3)と、前記左右の燃料タンク(16L、16R)との間に、前記左右のミッドリンク(45、45)を配置し、
前記ミッドリンク(45、45)とこのミッドリンク(45、45)の前記車体との係合部(44、44)を、前記左右の燃料タンク(16L、16R)間を連通する連通パイプ(17)の上方に配置し、
前記ミッドリンク(45、45)に、下方に向けて曲折する屈曲部を設け、前記芝刈機(5)を下降位置に移動させたときに、これらのミッドリンク(45、45)と前記連通パイプ(17)とが非接触とする構成とし、
前記芝刈機(5)の上昇高さを規制する高さ規制ストッパ(36、36)を、前記係合部(44、44)よりも側方外側に設け、
前記ミッションケース(3)の前部側面に、外側方に向けて延びる左右のサイドビーム(60、60)を設け、左右のサイドビーム(60、60)には下方に向けて垂下する鉛直ブラケット(61、61)を設け、鉛直ブラケット(61、61)の下端に、ストッパサポータ(62、62)を設け、このストッパサポータ(62、62)に前記高さ規制ストッパ(36、36)を設ける構成とし、
前記鉛直ブラケット(61、61)に前記ミッドリンク(45、45)の係合部(44、44)を設け、芝刈機(5)が下降してミッドリンク(45,45)が下方に回動した場合、ミッドリンク(45,45)とストッパサポータ(62,62)とが接触することで、ミッドリンク(45,45)が前記連通パイプ(17)に接触しないように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記左右のサイドビーム(60、60)の上部に設けた孔に、マウントゴムを取り付けて作業車両のキャビン(9)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪及び後輪により駆動されるトラクタ等の作業車両であって、芝刈機等の作業機を前輪と後輪との間に備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の作業車両は、車体フレームに一対の前輪及び一対の後輪を有し、これらの前輪と後輪との間であって、フロアステップの下方に作業機としての芝刈機を備える。この芝刈機はフロントリンク(特許文献1では前リンク43)とミッドリンク(特許文献1では後リンク45)とからなる平行リンクにより昇降動作をガイドすると共に、油圧シリンダを駆動源として昇降する構成である。
【0003】
またこの作業車両は、前部にエンジンを備え、このエンジンからの動力をフロアステップの下方に備えたミッションケース(特許文献1では例えばフロント伝動ケース)内のミッションにより、後部に備えた後輪や作業機への動力を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−70696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両では、排ガス対策のためのDPF(Diesel particulate filter)をエンジン近傍に装備する必要性が高まると共に、燃料タンクの大型化の要請があり、燃料タンクをフロアステップの下方であって、ミッションケースの左右側方に備える方式が採用されている。しかし、前輪と後輪との間に芝刈機などの作業機を設置する場合には、作業機のガイドとなる平行リンクとの干渉を避けるように燃料タンクやその周辺機器を設置する必要があり、車体の幅が大きくなるという問題があった。よって、この問題を解決する作業車両を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、フロアステップ(13)の下方にミッションケース(3)を設け、
このミッションケース(3)を挟んで左右側方それぞれに左右の燃料タンク(16L、16R)を設け、
このミッションケース(3)の下方であって、車体を駆動するための前輪(7、7)及び後輪(8、8)の間に芝刈機(5)を設置し、
この芝刈機(5)の昇降動作を、機体の前部に配置する左右のフロントリンク(43、43)と機体の中央部に配置する左右のミッドリンク(45、45)とからなる平行リンクで行う作業車両において、
前記ミッションケース(3)と、前記左右の燃料タンク(16L、16R)との間に、前記左右のミッドリンク(45、45)を配置し、
前記ミッドリンク(45、45)とこのミッドリンク(45、45)の前記車体との係合部(44、44)を、前記左右の燃料タンク(16L、16R)間を連通する連通パイプ(17)の上方に配置し、
前記ミッドリンク(45、45)に、下方に向けて曲折する屈曲部を設け、前記芝刈機(5)を下降位置に移動させたときに、これらのミッドリンク(45、45)と前記連通パイプ(17)とが非接触とする構成とし、
前記芝刈機(5)の上昇高さを規制する高さ規制ストッパ(36、36)を、前記係合部(44、44)よりも側方外側に設け、
前記ミッションケース(3)の前部側面に、外側方に向けて延びる左右のサイドビーム(60、60)を設け、左右のサイドビーム(60、60)には下方に向けて垂下する鉛直ブラケット(61、61)を設け、鉛直ブラケット(61、61)の下端に、ストッパサポータ(62、62)を設け、このストッパサポータ(62、62)に前記高さ規制ストッパ(36、36)を設ける構成とし、
前記鉛直ブラケット(61、61)に前記ミッドリンク(45、45)の係合部(44、44)を設け、芝刈機(5)が下降してミッドリンク(45,45)が下方に回動した場合、ミッドリンク(45,45)とストッパサポータ(62,62)とが接触することで、ミッドリンク(45,45)が前記連通パイプ(17)に接触しないように構成したことを特徴とする作業車両である。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、前記左右のサイドビーム(60、60)の上部に設けた孔に、マウントゴムを取り付けて作業車両のキャビン(9)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
【0009】
【0010】
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ミッションケース3と、左右の燃料タンク16L、16Rとの間に、芝刈機5の昇降動作をガイドするためのミッドリンク45、45をそれぞれ配置したことにより、左右の燃料タンク16L、16Rを設けたことによる車体幅の拡張を防止でき、ミッションケース3、左右の燃料タンク16L、16R、及びミッドリンク45、45を含む平行リンクの各要素を車幅方向に対して合理的に配置することができる。よって全体の車体幅を狭くすることができる。
【0012】
また、ミッドリンク45、45の車体との係合部44、44が、左右の燃料タンク16L、16R間を連通する連通パイプ17の上方に配置したことにより、左右の燃料タンク16L、16R間の比較的下部に設置する連通パイプ17と、上下動作するミッドリンク45、45との接触を避けながら、ミッションケース3、芝刈機5及びミッドリンク45、45を含む平行リンクの各要素を車高方向に合理的に配置することができるので、全体の車高を低くすることができる。
【0013】
また、ミッドリンク45、45に、下方に向けて曲折する屈曲部を設け、芝刈機5を下降位置に移動させたときにこれらのミッドリンク45、45と連通パイプ17とが非接触とする構成であることにより、芝刈機5の必要な昇降動作ストロークを確保しながら芝刈機5の上げ高さを最大限に確保できる。そして屈曲部で連通パイプ17の上方を迂回させる構成とすることで、ミッドリンク45の前後長を短くすることができ、ミッドリンク45により作業車両の全長を長くする必要がない。
【0014】
また、高さ規制ストッパ36を、係合部44よりも側方外側に設けたことにより、高さ規制ストッパ36、36間の長さを長くできるので、高さ規制ストッパ36の一方に芝刈機5が接触して、左右のバランスを崩すことがなくなり、安定した操作が可能となる。
また、芝刈機5が下降してミッドリンク45,45が下方に回動した場合、ミッドリンク(45,45)とストッパサポータ(62,62)とが接触することで、ミッドリンク(45,45)が連通パイプ(17)に接触しない。
【0015】
請求項記載の発明によれば、左右のサイドビーム(60、60)を利用して作業車両のキャビン(9)を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態にかかる作業車両の側面図である。
図2図1の作業車両の芝刈機周辺の平面図である。
図3図1の作業車両の芝刈機周辺の側面図である。
図4図1の作業車両の芝刈機周辺の正面図である。
図5図1の作業車両の芝刈機の平面図である。
図6図1の作業車両の燃料タンク周辺の平面図である。
図7図1の作業車両の燃料タンク周辺の正面図である。
図8図1の作業車両の燃料タンク周辺の側面図である。
図9図1の作業車両の燃料タンク周辺の斜視図である。
図10図1の作業車両の係合部周辺の説明図である。
図11】第二実施形態にかかる作業車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下図面と共に説明する。なお、本明細書では乗車した作業者が車両の前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右といい、前後をそれぞれ前、後という。
【0018】
図1には、本発明の第一実施形態にかかる作業車両であるトラクタの右側面図を示す。この図で雲形部分は、本発明に関わる芝刈機周辺の部材を透視して示している。図2には図1の作業車両の芝刈機5周辺の平面図を、図3には右側面図を、図4には正面図を示す。また、図6には図1の作業車両の燃料タンク16L、16R周辺の平面図を、図7には正面図を、図8には側面図を、図9には斜視図を示す。
【0019】
本発明にかかる作業車両は、車体前部のボンネット11内に搭載したエンジン10の動力をミッションケース3内のミッションで適宜に変速して前輪軸14と後輪軸15に伝動してホイール型の前輪7と後輪8の両方あるいは後輪8のみを駆動する構成としている。作業車両の各後輪8、8の上側には、後輪8、8からの泥の飛散を防ぐための後輪フェンダー8aを配設する。この作業車両は、前部にフロントアクスルハウジング18に支架させる車体フレーム2を介してエンジン10を搭載し、このエンジン10の後方にクラッチハウジングや、ミッションケース3等を一体的に連結し、このミッションケース3の最後部にリヤアクスルハウジング4を設けて、左右両側部に後輪8を軸装する。
【0020】
車両の車体フレーム2上にはフロアステップ13を含むキャビン9を載置し、このキャビン9内に設ける操縦席19に座った作業者が中央に立設する操作ハンドル12を操作して前輪7を操向しながら走行すると共に、操縦席19の横側には、作業車両を操作制御する各種の操作レバー等を設ける。フロアステップ13の下方には、ミッションケース3を設けると共に、このミッションケース3を挟んで、ミッションケース3の左右側方にそれぞれ樹脂製の燃料タンク16L、16Rを設ける。燃料タンク16L、16Rの下部には両方の燃料タンク16L、16Rを連通させる連通パイプ17を設け、両方の燃料が同じように消費されるようにする。また、燃料タンク16L、16Rとエンジン10との間をホースで結ぶと共に、燃料タンク16L、16Rからの燃料をエンジン10に供給するためのポンプを配置し、エンジン10よりも下方となる燃料タンク16L、16Rから安定に燃料を供給する。
【0021】
本発明にかかる作業車両は、ミッションケース3の下方であって、左右の前輪7、7及び左右の後輪8,8の前後間に作業機である芝刈機5を設置する。この芝刈機5は、作業者が操縦席19で昇降レバーを操作することにより昇降し、ミッションケース3内のミッションから分岐した動力をPTO軸6に伝達し、PTO軸6はユニバーサルジョイントを通じて、芝刈機5のモーアデッキ24ヘ動力を伝達し、芝刈機5内の刈取刃を駆動して芝刈を行う。
【0022】
芝刈機5の支持機構について説明する。図1で示す如くモーアデッキ24の前端部に設けた前支持板41と、車体フレーム2の前端部に垂下状態に設けた支持板42との間に、回動自在に左右一対からなるフロントリンク43,43を設ける。
【0023】
一方芝刈機5の後端部と、車体フレーム2の前後中間部に備えた係合部44、44との間には、左右一対からなるミッドリンク45,45を回動自在に設ける。これらのフロントリンク43及びミッドリンク45により平行リンクを構成する。このように構成することにより、芝刈機5の姿勢を保持しながら、芝刈機5の昇降動作の軌跡を規定することができる。
【0024】
本発明にかかる作業車両は、ミッションケース3と燃料タンク16R、16Lとの間に、平面視でミッドリンク45、45をそれぞれ配置する。またミッドリンク45、45と、車体フレーム2との係合部44、44を、燃料タンク16L、16R間を連通する連通パイプ17の上方に位置するように構成する。更にミッドリンク45は、下方に向けて曲折する屈曲部を有する、側面視で「く」の字部分を含む形状とする。そして、芝刈機5を下降位置に移動しても、ミッドリンク45、45と連通パイプ17とが接触しない構成とする。
【0025】
ミッションケース3と、燃料タンク16L、16Rとの間に、芝刈機5の昇降動作をガイドするためのミッドリンク45、45をそれぞれ配置したことにより、即ち、従来の構成から存在するミッションケース3と燃料タンク16L、16Rとの間の狭い空間部にミッドリンク45、45を設けたことで、車体幅の拡張を防止でき、ミッションケース3、燃料タンク16L、16R、及びミッドリンク45、45を含む平行リンクの各要素を車幅方向に対して合理的に配置することができる。よって全体の車体幅が広くなるのを防止できる。
【0026】
ミッドリンク45、45の車体との係合部44、44を、燃料タンク16L、16R間を連通する連通パイプ17の上方に配置したことにより、燃料タンク16L、16R間の比較的下部に設置する連通パイプ17と、上下動作するミッドリンク45、45との接触を避けながら、ミッションケース3、芝刈機5及びミッドリンク45、45を含む平行リンクの各要素を車高方向に合理的に配置することができるので、全体の車高を低くすることができる。
【0027】
ミッドリンク45、45に、下方に向けて曲折する屈曲部を設け、芝刈機5を上昇位置に移動させたときにこれらのミッドリンク45、45と連通パイプ17とが非接触とする構成であることにより、芝刈機5の必要な昇降動作ストロークを確保しながら、芝刈機5の上昇高さを最大限に確保できる。そして、ミッドリンク45、45に、下方に向けて曲折する屈曲部を構成して、ミッドリンク45、45と芝刈機5を連結することで、ミッドリンク45の前後長を短くすることができ、ミッドリンク45により作業車両の全長を長くする必要がない。
【0028】
次に芝刈機5の上下昇降機構である芝刈機昇降リンク機構48について説明する。左右のミッドリンク45,45のうち一方(本実施形態では左側)のミッドリンク45の下端を延長し、該延長部45aと作業車両の後部に設けられたロアリンク47との間に芝刈機昇降リンク機構48を構成する。このロアリンク47は、油圧シリンダ(不図示)によって、手元の昇降操作レバー53を操作することで上下に回動する。
【0029】
前記芝刈機昇降リンク機構48は、吊下げロッド56と、中間リンク55と、牽引ロッド59と、ブラケット58と、により構成する。吊下げロッド56は、前記ミッドリンク45の延長部45aと中間リンク55との間に設け、これらの部材と回動自在に結合している。中間リンク55は「く」の字型をしており、車体フレーム2から垂下したブラケット49に「く」の字の曲折部で、上方を向けて曲折するように回動自在に結合すると共に、牽引ロッド59とも回動自在に結合している。牽引ロッド59は、補強兼用のブラケット58と回動自在に連結する。
【0030】
上記構成にすることで、芝刈作業を行う作業位置から、格納状態にある非作業位置に芝刈機5を上昇させるときは、作業者は昇降操作レバーを上昇側に操作し、ロアリンク47を上昇回動させることで、芝刈機昇降リンク機構48により連動するミッドリンク45を、係合部44を中心に回動させて、芝刈機5をその姿勢を保持したまま上昇させる。また非作業位置から作業位置に芝刈機5を下降させるときは、作業者は昇降操作レバーを下降側に操作し、ロアリンク47を下降回動させることで、芝刈機昇降リンク機構48により芝刈機5を下降させる。
【0031】
図1から図9に加えて、図10によりミッドリンク45と車体と、の係合部44周辺について説明する。図10図4のa部、即ち車体左側の係合部44周辺を拡大したものであり、図10(a)は平面図、図10(b)は右側面図、図10(c)は正面図である。
【0032】
本発明にかかる作業車両は、ミッションケース3の前部側面に、外側方に向けて延びる左右のサイドビーム60、60を結合する。このサイドビーム60には下方に向けて垂下する鉛直ブラケット61を設け、更にこの鉛直ブラケット61の下端に、高さ規制ストッパ36を固定するためのストッパサポータ62を設ける。ミッドリンク45の前部は2枚の鋼板を左右に所定の間隔を持って溶接で固定した構成であり、これら二枚の板で鉛直ブラケット61を挟み、この鉛直ブラケット61の側面に突出した軸にミッドリンク45の孔を嵌装することで、車体に対して係合部44でミッドリンク45を回動自在とする。ミッドリンク45が下方に回動した場合に、ミッドリンク45が連通パイプ17に接触する前に、ミッドリンク45とストッパサポータ62とが接触するように構成する。またサイドビーム60の上部に設けた孔には、マウントゴムを取付け、キャビン9を設ける。サイドビーム60と、ミッションケース3の後部側面に設けた後部サイドビーム63と、により燃料タンク16を設けるための燃料タンク支持部材を固定する。
【0033】
本発明にかかる作業車両には、作業機である芝刈機5の上昇高さを規制する高さ規制ストッパ36、36を、ストッパサポータ62に設ける。高さ規制ストッパ36は、雄ねじの下端に軟質ゴムを設けた構造であり、車体フレーム2を構成するサイドビーム60、60に設けたストッパサポータ62に左右対称な位置に設置する。詳細に説明すると、左右の高さ規制ストッパ36、36は、燃料タンク16L、16Rの最前部よりも後側であり、かつ左右の燃料タンク16L、16Rの互いに対向している内側の内向面よりも、更に内側に配置する。本実施形態において、「内向面」とは、燃料タンク16L、16Rが有する複数の外周面の内、左右中心を向いている面を意味し、左右中心を向いている面の内、左右中心に最も近い面だけでなく、燃料タンク16L、16Rの前部にある凹部を形成しながら左右中心を向いている面をも含む。また、左右規制ストッパ36、36は、車体フレーム2とミッドリンク45、45との回動結合部である係合部44、44よりも側方の外側に設ける。
【0034】
高さ規制ストッパ36、36を設けたことにより、燃料タンク16L、16Rと芝刈機5が接触することを防止できる。また、この高さ規制ストッパ36、36を、燃料タンク16L、16Rの最前部よりも後側であり、かつ燃料タンク16L、16Rの内向面よりも更に内側に配置したことにより、空間部を有効利用でき、また周囲が保護されることで経年変化などにより高さ規制ストッパ36の規制高さ位置が変わることがなくなり、より確実に接触を防止できる。
【0035】
高さ規制ストッパ36、36を、係合部44よりも側方外側に設けたことにより、高さ規制ストッパ36、36間の長さを長くできるので、高さ規制ストッパ36の一方に芝刈機5が接触して、左右のバランスを崩すことがなくなり、安定した操作が可能となる。
【0036】
図5には、本発明の作業車両の芝刈機5の平面図を示す。芝刈機5の内部構成は特許文献1に示すものと同じで、3つの刈刃を有し、それぞれの刈刃が鉛直な回転軸を中心に回転すると共に、PTO軸6からの動力を、伝動ベルトを通じてそれぞれの刈刃を回転させる。刈り取った芝は、排出口24aから排出される。芝刈機5のカバーは、4つのフック22・・で芝刈機5本体に固定されている。この4つのフック22・・は、上方に位置する燃料タンク16L、16Rに接触しない位置に設ける。詳しくは、燃料タンク16L、16Rを挟んで、その両側に位置するように設ける。このように設けることにより、芝刈
機5の昇降ストロークを大きくとることができる。
【0037】
図11には、第二実施形態にかかる作業車両の左側面図を示す。作業車両には、車体の前方に作業機として、ローダーを搭載可能なものがある。そのローダーは、作業車両から油圧で昇降と姿勢を制御する。第二実施形態の作業車両は、ローダーへの油圧を提供するための前方マニホールドを、車体の右側面に備える。具体的には、前方マニホールドはカバー体20から構成されており、このカバー体20の前部に、ローダーの上昇時及び下降時に作動油を供給する配管継手21、21と、ローダーのバケットの姿勢を前方向に傾ける時、又は後方向に傾けるときに作動油を供給する配管継手21、21の、4つの継手を設けている。また、前記カバー体20は、燃料フィルタを覆う構成としている。通常燃料フィルタはボンネット11内のエンジンルーム内に配置したり、エンジン10に直接取り付けたりする構成としていた。しかしながら、DPFをエンジンルーム内に配置する場合においては、燃料フィルタを別の場所に移動させなくてはならない。そこで本件においては、キャビン9内に乗降するための右ステップSRの前部に燃料フィルタを取り付ける構成としており、この燃料フィルタをカバーで覆う構成としている。
【0038】
この際、ミッションケース3の後方に位置する油圧ポンプ(不図示)から4個の配管継手21へ至る油圧ホースの配管は、ミッドリンク45と同様、ミッションケース3及び右の燃料タンク16Rとの間であって、連通パイプ17の上方を通るように配策する。このように配策することにより、芝刈機5を非作業位置に持ち上げた場合でも、油圧ホースを芝刈機5と燃料タンク16Rとにはさまれることがない。また高さ規制ストッパ36、36を係合部44、44よりも側方の外側に設けている場合、これらの油圧ホースとの干渉を少なくできる。
【符号の説明】
【0039】
1 コンパクト作業車両
3 ミッションケース
5 芝刈機
7 前輪
8 後輪
キャビン
13 フロアステップ
16L、16R 左右燃料タンク
17 連通パイプ
36 高さ規制ストッパ
43 フロントリンク
44 係合部
45 ミッドリンク
47 ロアリンク
60 サイドビーム
61 鉛直ブラケット
62 ストッパサポータ
【要約】
【課題】作業車両では、排ガス対策のためのDPFをエンジン近傍に装備する必要性が高まると共に、燃料タンクの大型化の要請があり、燃料タンクをフロアステップの下方であって、ミッションケースの左右側方に備える方式が採用されている。しかし、前輪と後輪との間に芝刈機を設置する場合には、車体幅が大きくなるという問題があった。よって、この問題を解決する作業車両を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【解決手段】芝刈機(5)の昇降動作の軌跡を、フロントリンク(43、43)とミッドリンク(45、45)とからなる平行リンクで規定した作業車両において、ミッションケース(3)と、燃料タンク(16L、16R)との間に、ミッドリンク(45、45)をそれぞれ配置したことを特徴とするコンパクト作業車両により上記問題を解決した。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11