【実施例1】
【0033】
図1に示す実施例は、前記第1の発明の防水面構造の一例であり、略平坦状の防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0034】
〔下地処理〕
まず、既存下地を清掃し、劣化した既設防水層8を撤去(取り合い部300mm程度)し、当該部分に樹脂モルタルにて下地処理面9Aを施工した。
ここで用いられる樹脂モルタルは、特にその組成を限定するものではなく、公知の材料を用いて公知の手段にて施工することができ、劣化した既存下地に細かな亀裂が生じていてもそこに浸入して強度を向上する役割を果たす。
【0035】
〔目地加工〕
幅5mm×深さ50mm程度の目地91を下地処理面9Aに欠きこんだ。これは、シーリング92を入れることで、塗膜防水部とシート防水部から万が一浸水した場合に他方側への雨水の回り込みを遮る(絶縁する)ことを目的とするものである。
そして、前記目地91内に、ウレタン系シーリング92を充填した。
ここで用いられる充填材(92)は、ウレタン系に限定されるものではなく、例えば後述する塗膜防水部2Aに用いられる樹脂塗料20を流用してもよい。
【0036】
〔シート防水部の施工〕
前記下地処理面9Aの前記目地91の右方側に、エポキシ系接着剤7を塗布し、その上から不織布積層防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12Felt」)10を貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧してシート防水部3Aを形成した。この不織布積層防水シート10は、塩ビ系の樹脂層にガラス繊維基布を積層した構成の防水シートの裏面側に不織布を積層してなる構成であって、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が殆ど無いという利点をも有している。
ここで用いられる接着剤は、特に限定するものではなく、例えば後述する塗膜防水部2Aに用いられる樹脂塗料20を流用してもよい。
そして、不織布積層防水シート10は、裏面側に不織布が積層された構成であるため、この不織布中に接着剤7が含浸されて、下地処理面9Aに強固に敷設される。
【0037】
〔塗膜防水部の施工〕
前記下地処理面9A上の、前記シート防水部3Aの左方側にウレタンプライマーを塗布した後、二液型樹脂塗料20を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Aとし、塗工後1日以上養生を行った。
ここで用いられるプライマーは、特に限定するものではなく、下地及び樹脂塗料に応じて適宜に選択して用いればよい。
【0038】
〔各防水部の接合部分の施工〕
前記塗膜防水部2Aを施工し、樹脂塗料20が乾かないうちに(流動性を失う前に)、前記不織布積層防水シート10を敷設し、不織布を樹脂塗料20中に含浸させた。
さらに、敷設した不織布積層防水シート10の端部を覆うように樹脂塗料20を施工(追加補充)した。この重ね部分を2aで図示した。
そして、施工後1日以上養生を行った。
【0039】
こうして施工された
図1の防水面構造は、塗膜防水部2Aとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Aの樹脂塗料20中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
【0040】
また、図示実施例の防水面構造には、目地91が形成されているため、既存防水層8との絶縁が図られる。すなわちこの目地91により、仮に雨水浸入があったとしても、互いに遮ることができる。
【0041】
図2に示す実施例は、前記第2の発明の防水面構造の一例であり、支柱設置台のような異形突出部を備える防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0042】
〔下地処理〕
前記
図1の実施例と同様に下地処理面9Bを施工した。
【0043】
〔塗膜防水部の施工(その1)〕
支柱Xが設置される上段部分から段差を介して下段までの下地処理面9B上に二液型樹脂塗料21を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Bとした。
【0044】
〔不織布積層防水シートの施工〕
前記下地処理面9Bの下段部分における塗膜防水部2Bが乾かないうちに(流動性を失う前に)、不織布積層防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12Felt」)10を幅100mm程度に貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧し、不織布を樹脂塗料21中に含浸させた。この不織布積層防水シート10は、前記
図1の実施例でも使用したので、説明を省略する。
【0045】
〔塗膜防水部の施工(その2)〕
前記不織布積層防水シート10の段差に近い端縁を覆うように樹脂塗料21を施工(追加補充)して前記塗膜防水部2Bと連結した。この重ね部分を2bで図示した。そして、施工後1日以上養生を行った。
【0046】
〔シート防水部の施工〕
前記不織布積層防水シート10の外側(図面左側)に位置する下地処理面9Bに、ニトリルゴム系接着剤(元旦ビューティ工業社製「サーナコル2170」)を用いて防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12」)30を敷設し、シート防水部3Bを形成した。この防水シート30は、前記不織布積層防水シート10と同様に塩ビ系の樹脂層にガラス繊維基布を積層した構成を有するため、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が殆ど無いという利点をも有している。
そして、前記防水シート30の端部を、前記不織布積層防水シート10の端部の上面に沿わせ、熱融着にて固定した。なお、図中、301は熱融着部分を示す。
【0047】
こうして施工された
図2の防水面構造は、シート防水部3Bと塗膜防水部2Bとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Bの樹脂塗料21中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
そして、不織布積層防水シート10が、シート防水部3Bと塗膜防水層2Bとの接着部分を形成し、両防水部3B,2Bが直接接触していないので、従来の防水構造のように両防水部3B,2Bの伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
【0048】
また、図示実施例の防水面構造は、シート防水部3Bと不織布積層防水シート10とが熱溶着にて接合されているので、例えば接着剤を塗布したり固定具を打ち込む等の別途の材料並びに操作を必要とせず、容易に接合することができる。
【0049】
図3に示す実施例は、前記第2の発明の防水面構造の一例であり、略平坦状の防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0050】
〔下地処理〕
前記
図1の実施例と同様に下地処理面9Cを施工した。
【0051】
〔目地加工〕
幅5mm×深さ50mm程度の目地93を下地処理面9Cに欠きこんだ。そして、前記目地93内に、充填材94として樹脂モルタルを充填した。
【0052】
〔支持部材の施工〕
先端(係止部61)を下方へ折り下げた支持部材(元旦ビューティ工業社製「サーナメタル」)6を、前記目地93及びその右側に向かって下地処理面9Cにビス止め固定(ビス62)した。この支持部材6は、亜鉛メッキ鋼板の表面に塩ビ系樹脂層が積層されている構成である。
【0053】
〔シート防水部の施工〕
前記支持部材6の図面右側に位置する下地処理面9C上に絶縁材(元旦ビューティ工業社製「サーナフェルト」)51を敷き込み、その上面に、防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフS327-12」)32を敷設し、シート防水部3Cを形成した。この防水シート32は、塩ビ系の樹脂層にポリクロスを補強布として積層した構成であって、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が少ないという利点をも有している。なお、この防水シート32の端部は、前記支持部材6の上面に臨ませて熱融着にて固定した。図中、321は、防水シート32の熱融着部分を示す。
【0054】
〔塗膜防水部の施工(その1)〕
前記支持部材6と目地93の取り合いに、ウレタン系シーリング95を塗布し、続いて図面左側に位置する下地処理面9Cに絶縁材(元旦ビューティ工業社製「サーナフェルト」)52を敷設した。
前記絶縁材52の図面左側には、プライマーを塗布した後、二液型樹脂塗料20を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Cとした。
【0055】
〔不織布積層防水シートの施工〕
前記塗膜防水部2Cの樹脂塗料20が乾かないうちに(流動性を失う前に)、不織布積層防水シート10を幅100mmに貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧し、不織布を樹脂塗料20中に含浸させた。この不織布積層防水シート10は、前記
図1実施例でも使用したので、説明を省略する。
【0056】
〔塗膜防水部の施工(その2)〕
前記不織布積層防水シート10の左側端縁を覆う(幅50mm以上重ねる)ように樹脂塗料20を施工(追加補充)して前記塗膜防水部2Cと連結した。この重ね部分を2cで図示した。そして、施工後1日以上養生を行った。
【0057】
〔増張シートの施工〕
前記シート防水部3Cと前記不織布積層防水シート10との取り合い部に、増張シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフS327-12」)40を貼り付け、シート端部は熱融着にて固定した。この増張シート40は、前記防水シート32と同じものであり、塩ビ系の樹脂層にポリクロスを補強布として積層した構成で、表層側には熱融着でき、伸縮変形(寸法変化)が少ないという利点を有している。なお、図中、401,402は増張シート40の熱融着部分を示す。
【0058】
こうして施工された
図3の防水面構造は、シート防水部3Cと塗膜防水部2Cとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Cの樹脂塗料20中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
そして、不織布積層防水シート10が、シート防水部3Cと塗膜防水層2Cとの接着部分を形成し、両防水部3C,2Cが直接接触していないので、従来の防水構造のように両防水部3C,2Cの伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
【0059】
また、図示実施例の防水面構造には、目地93が形成され、該目地部93に支持部材6の係止部61が係止しているため、目地93が両防水部10,3Cの万が一の雨水浸入を互いに遮る絶縁溝となる。さらに、支持部材6が下地処理面9Cに係止してズレ動くことがないため、シート防水部3Cにてたるみやしわが生じてもそれらの伸縮の影響が不織布積層防水シート10に影響することがない。
【0060】
さらに、図示実施例の防水面構造では、増張シート40でシート防水部3Cを構成する防水シート30と、塗膜防水層2Cと接続された不織布積層防水シート10を熱融着したので、異種の防水層3C,2Cの接合ができ、増張シート40は浮かし張りであるため、互いの防水層3C,2Cの動きを吸収する絶縁工法となる。