特許第5652754号(P5652754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652754
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】防水面構造、及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20141218BHJP
   E04D 7/00 20060101ALI20141218BHJP
   E04D 5/10 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   E04D5/14 U
   E04D7/00 F
   E04D5/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-63435(P2009-63435)
(22)【出願日】2009年3月16日
(65)【公開番号】特開2010-216134(P2010-216134A)
(43)【公開日】2010年9月30日
【審査請求日】2012年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509075697
【氏名又は名称】東宝地所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 潮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅善
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正敏
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−256778(JP,A)
【文献】 特開2007−247341(JP,A)
【文献】 特開2002−364297(JP,A)
【文献】 特開平09−041584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/14
E04D 5/00
E04D 5/10
E04D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の表面に形成する塗膜防水部の端縁に、防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを配置させ、不織布積層防水シート中の不織布が塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸されて塗膜防水部と接合していることを特徴とする防水面構造。
【請求項2】
下地の表面に形成するシート防水部と塗膜防水部とが、少なくとも防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを介在させて接続してなり、不織布積層防水シート中の不織布が塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸されて塗膜防水部と接合していることを特徴とする防水面構造。
【請求項3】
シート防水部と不織布積層防水シートとは、熱溶着にて接合されていることを特徴とする請求項2に記載の防水面構造。
【請求項4】
シート防水部と不織布積層防水シートとを、下地への係止部を有する支持部材を介して接続すると共に、シート防水部を構成する防水シートと同じ増張シートを積層することを特徴とする請求項2に記載の防水面構造。
【請求項5】
下地に、塗膜防水部を施工する工程と、防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを敷設してシート防水部を施工する工程と、前記不織布積層防水シート中の不織布を塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸させて塗膜防水部と接合させる工程とを含むことを特徴とする防水面構造の施工方法。
【請求項6】
下地に、シート防水部を施工する工程と、塗膜防水部を施工する工程と、防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シート中の不織布を塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸させて塗膜防水部と接合させる工程とを含むことを特徴とする防水面構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に且つ確実にシート防水部と塗膜防水部とを接合することができる防水面構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルの屋上や家屋の屋根などには、各種の防水施工が施されており、特に平坦面の施工に好適で、広い面積への施工を機械固定などにより容易に行うことができるなシート防水工法と、例えば支柱設置台のような異形突出部を含む施工面へも吹き付け塗工などにより容易に施工できる塗膜防水工法とが適宜に併用されるケースが多かった。
そして、これらの各工法にて施工されるシート防水部と塗膜防水部とを接合する場合には、一般的にはプライマーなどを使用して接合していたが、その接着(接合)部分には異種防水層の異なる伸縮応力が作用するため、短期間で接着(接合)部分の塗膜防水層が破損して早期漏水していた。
【0003】
例えば特許文献1〜4には、支柱設置台のような膨脹・収縮の少ない部分に塗膜防水を施し、それ以外の陸屋根等にシート防水を施す方法が提案されている。
特許文献1には、異形突出部の表面全体、及び周辺の陸屋根に、繊維下地シートを被せ、ついでその表面に合成樹脂製塗料を塗布して塗膜防水層を形成し、周辺部において防水層を、接合片および固定具によって押え止めると共に、異形突出部以外に張設されたシート防水層の防水シートの端部を、前記接合片の上面に接合する方法が記載されている。
また、特許文献2には、異形突出部の周辺に接合片を固定具によって固定し、異形突出部以外に張設されたシート防水層の防水シートの端部を、接合片の上面に接合し、異形突出部の表面全体、及びその周辺に繊維シートを被せ、該繊維シートに合成樹脂製防水塗料を塗布、含浸せしめて塗膜防水層を形成すると共に該塗膜防水層の裾部分を、合成樹脂防水塗膜自体の接着力により防水シートの端部の上面に接合する方法が記載されている。
また、特許文献3には、異形突出部の周壁に筒状体を嵌め被せ、該筒状体の内側に合成樹脂製防水塗料を流し込んで固化させて防水層を形成し、異形突出部以外に張設されたシート防水層の防水シートに、防水用筒状体の外面に沿って立ち上がる延長部を設けて、この防水シート延長部を筒状体の外面に接合する方法が記載されている。
また、特許文献4には、異形突出部の下端側面に下方固定板を、上端側面に上方固定板周設して防水シートを接合し、異形突出部の天端に合成樹脂製塗膜用防水材を流し入れて固化させる方法が記載されている。
また、特許文献5には、コンクリート躯体面に樹脂コート鋼鈑をビスで直接固定し、その樹脂コート鋼鈑を覆うように防水シートの端部を溶着してシート防水部を形成した後、そのシート防水部の近傍のコンクリート躯体面に、エポキシ系耐水接着剤により不織布を接着すると共に、その不織布と樹脂コート鋼鈑を跨ぐように補強クロスを設けると共に、その補強クロス上にウレタン塗膜防水材、さらにフッ素系保護塗料を塗布し、補強クロス−ウレタン塗膜防水材−フッ素系保護塗料からなる防水部でシート防水部の端部を覆う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−42119号公報
【特許文献2】特開平6−42120号公報
【特許文献3】特開平6−42121号公報
【特許文献4】特開平10−252232号公報
【特許文献5】特許第3488824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の方法は、接合片及び固定具によって塗膜防水層を固定し、前記接合片の上面にシート防水層を接合するものであって、接合片はその明細書中の記載(段落0012)より合成樹脂板や金属板等の板材に過ぎないので、シート防水層の伸縮によって剥離が生ずるものであった。
また、前記特許文献2に記載の方法は、前記接合片の上面にシート防水層を接合し、さらにその上面に塗膜防水層を接合するものであって、シート防水層の下面でも上面でも剥離が生ずるものであった。
また、前記特許文献3,4に記載の方法は、異形突出部の側周にて筒状にシート防水層を形成して異形突出部の頂部に塗膜防水層を形成する構成であるため、支柱設置台のような異形突出部に限定され、しかも筒状内面に塗膜防水部を形成する樹脂塗料を流し込んでいるに過ぎないため、その接着面に亀裂が発生する恐れがあった。
さらに、前記特許文献5に記載の方法は、シート防水層と塗膜防水層との接合部分に形成される防水層の構成材料が補強クロス−ウレタン塗膜防水材−フッ素系保護塗料と多いため、施工が面倒であるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、前述のような問題を解消でき、容易に且つ確実にシート防水部と塗膜防水部とを接合することができる防水面構造、及びその施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、第1の発明として、下地の表面に形成する塗膜防水部の端縁に、防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを配置させ、不織布積層防水シート中の不織布が塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸されて塗膜防水部と接合していることを特徴とする防水面構造に関するものである。
【0008】
さらに、本発明は、第2の発明として、下地の表面に形成するシート防水部と塗膜防水部とが、少なくとも防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを介在させて接続してなり、不織布積層防水シート中の不織布が塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸されて塗膜防水部と接合していることを特徴とする防水面構造も提案するものである。
【0009】
このように、本発明は、塗膜防水部との接合に不織布積層防水シートを用いることを特徴とするものであって、前記第1の発明は、不織布積層防水シート自体がシート防水部を形成する態様であり、前記第2の発明では、不織布積層防水シートは、シート防水部と塗膜防水層との接着部分を形成する態様である。そして、この第2の発明におけるシート防水層を形成する防水シートは、裏面側に不織布を積層している必要はない。
【0011】
また、本発明は、前記第2の発明の防水面構造において、シート防水部と不織布積層防水シートとは、熱溶着にて接合されていることを特徴とする防水面構造も提案するものである。
【0012】
また、本発明は、前記第2の発明の防水面構造において、シート防水部と不織布積層防水シートとは、下地への係止部を有する支持部材を介して接続されていることを特徴とする防水面構造も提案するものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記第1の発明の防水面構造を施工する方法であって、下地に、塗膜防水部を施工する工程と、不織布積層防水シートを敷設してシート防水部を施工する工程と、前記不織布積層防水シート中の不織布を塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸させて塗膜防水部と接合させる工程とを含むことを特徴とする防水面構造の施工方法も提案するものである。
【0014】
さらに、本発明は、前記第2の発明の防水面構造を施工する方法であって、下地に、シート防水部を施工する工程と、塗膜防水部を施工する工程と、不織布積層防水シート中の不織布を塗膜防水部との接着性に優れたものか、塗膜防水部を形成する樹脂である接着剤中に含浸させて塗膜防水部と接合させる工程とを含むことを特徴とする防水面構造の施工方法も提案するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の前記第1の発明の防水面構造は、塗膜防水部との接合に不織布積層防水シートを用い、不織布積層防水シート中の不織布が接着剤中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られるものとなる。
【0016】
本発明の前記第2の発明の防水面構造は、不織布積層防水シートが、シート防水部と塗膜防水層との接着部分を形成し、両防水部が直接接触していないので、両防水部の伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
【0017】
また、不織布積層防水シート中の不織布が塗膜防水部の樹脂中に含浸されて接合している場合、塗膜防水部の樹脂が接着剤の役割を果たすため、別途に接着剤を準備したり塗布する必要がない。
【0018】
また、前記第2の発明において、シート防水部と不織布積層防水シートとが熱溶着にて接合されている場合、例えば接着剤を塗布したり固定具を打ち込む等の別途の材料並びに操作を必要とせず、容易に接合することができる。
【0019】
また、前記第2の発明において、シート防水部と不織布積層防水シートとが下地への係止部を有する支持部材を介して接続されている場合、支持部材が下地に係止するため、シート防水部にてたるみやしわが生じてもそれらの影響が塗膜防水部との接合に影響することがない。
【0020】
本発明の第1の発明の防水面構造の施工方法は、不織布積層防水シートを敷設してシート防水部を施工すると共に前記不織布積層防水シート中の不織布を接着剤中に含浸させて塗膜防水部と接合させるので、特殊な材料や装置を必要とすることがなく、容易にシート防水部と塗膜防水部とを接合することができる。
【0021】
本発明の第2の発明の防水面構造の施工方法は、広幅の平坦面にはシート防水部を施工し、例えば支柱設置台を含む施工面には塗膜防水部を施工し、その間の接続部分にのみ不織布積層防水シートを敷設すればよいので、各防水工法の利点を効率的に発揮させ、コストや労力を低減して容易に且つ確実にシート防水部と塗膜防水部とを接合することができる。
したがって、本発明の防水面構造は、各種の既設又は新設の建築物の防水屋根として好適に利用でき、例えばマンションやビル等の陸屋根或いは緩勾配の屋根に施工される防水(床)屋上としても、或いは防水性能に優れた緑化構造の下地としても、或いはその他の各種建築物等の通常屋根としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の防水面構造の一実施例を示す断面図である。
図2】本発明の防水面構造の他の一実施例を示す断面図である。
図3】本発明の防水面構造の他の一実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の防水面構造は、塗膜防水部との接合に防水シートの裏面側に不織布を積層してなる不織布積層防水シートを用いることを特徴とするものであり、前記第1の発明は、不織布積層防水シート自体がシート防水部を形成する態様であり、前記第2の発明では、不織布積層防水シートは、シート防水部と塗膜防水層との接着部分を形成する態様である。
【0024】
不織布積層防水シートは、前述のように防水シートの裏面側に不織布を積層してなる構成であって、防水シートを構成するプラスチックや合成ゴムなどと不織布とが物理的に一体化された構成であり、既に市販されているので、それを用いてもよい。
【0025】
シート防水部は、防水シートを敷設して施工されるものであり、この防水シートとしては、厚さ1.2mm〜2.5mm程度の塩ビ系(ポリ塩化ビニル(PVC)製)のプラスチックシート材やゴムシートなどが広く用いられており、表層部分と裏層部分とが異なる材料からなるシートも用いられている。特に塩ビ系の防水シートは、熱風溶接機などで熱融着して接合できるため、施工性に優れたものである。この塩ビ等の樹脂層に不織布(フェルト層)を積層したものが前記不織布積層防水シートであるが、他にもポリクロス、ガラス繊維基布等の芯体又は補強体を積層した構成の複合防水シートを用いてもよい。これらの複合防水シートは、平面方向に対する伸縮変形(寸法変化)が殆ど無く、物理的応力、特に平面方向の引伸及び厚み方向の圧縮に対する耐性が高いという利点がある。
【0026】
塗膜防水部は、液状の樹脂塗剤の塗布、吹き付けにより形成された防水皮膜であって、刷毛塗りやスプレー吹き付けにて容易に狭い場所や設備基礎回りなどの施工が極めて容易であるという利点がある。また、使用する樹脂塗剤も自由に選択できるため、下地との密着性にも優れている。
【0027】
そして、本発明の第1の発明では、塗膜防水部との接合に前記不織布積層防水シートを用い、不織布積層防水シート中の不織布が接着剤中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
この接着剤としては、塗膜防水部との接着性に優れたものであれば特に限定するものではなく、塗膜防水部を形成する樹脂でもよい。この場合、塗膜防水部が乾く以前に含浸させるようにしてもよいし、塗膜防水部を加熱して熱溶融させて含浸させるようにしてもよく、前者は、不織布積層防水シートを配設した後に塗膜防水部を形成する場合に相当し、後者は、塗膜防水部が形成された後に不織布積層防水シートを配設する場合に相当する態様である。
【0028】
また、本発明の第2の発明では、前記不織布積層防水シートが、シート防水部と塗膜防水層との接着部分を形成し、両防水部が直接接触していないので、両防水部の伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
そして、広幅の平坦面にはシート防水部を施工し、例えば支柱設置台を含む施工面には塗膜防水部を施工し、その間の接続部分にのみ不織布積層防水シートを敷設すればよいので、各防水工法の利点を効率的に発揮させ、コストや労力を低減して容易に且つ確実にシート防水部と塗膜防水部とを接合することができる。
【0029】
また、シート防水部と不織布積層防水シートとが下地への係止部を有する支持部材を介して接続されている場合、下地に設けた目地部が両防水部の万が一の雨水浸入を互いに遮る絶縁溝となる。さらに、支持部材が下地に係止してズレ動くことがないため、シート防水部にてたるみやしわが生じてもそれらの伸縮の影響が不織布積層防水シートに影響することがない。
【0030】
前記支持部材は、例えば金属製の成型材でもプラスチック製の成型材でもよい。
また、前記支持部材は、シート防水部のズレ防止の効果を果たすが、塗膜防水部のズレ防止を目的にして、塗膜防水部の裏面に位置する下地に目地加工を施し、該目地に樹脂塗料を充填してもほぼ同様の効果が得られる。
【0031】
前記下地は、新設、既設を問わず、さらに新設の場合も、RC、木造、鉄骨等を限定するものではなく、既設屋根の場合も防水屋根、金属、瓦等、様々な既設屋根に対応することができる。また、下地表面上に発泡断熱材(ポリスチレン等)を配したものであってもよい。
【0032】
また、本発明の第1の発明の防水面構造の施工方法においても、第2の発明の防水面構造の施工方法においても、各防水部を施工する工程は、何れを先に行っても同時に行ってもよく、対象となる下地の構造や施工しようとする防水面構造の構成によって適宜に行えばよい。
【実施例1】
【0033】
図1に示す実施例は、前記第1の発明の防水面構造の一例であり、略平坦状の防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0034】
〔下地処理〕
まず、既存下地を清掃し、劣化した既設防水層8を撤去(取り合い部300mm程度)し、当該部分に樹脂モルタルにて下地処理面9Aを施工した。
ここで用いられる樹脂モルタルは、特にその組成を限定するものではなく、公知の材料を用いて公知の手段にて施工することができ、劣化した既存下地に細かな亀裂が生じていてもそこに浸入して強度を向上する役割を果たす。
【0035】
〔目地加工〕
幅5mm×深さ50mm程度の目地91を下地処理面9Aに欠きこんだ。これは、シーリング92を入れることで、塗膜防水部とシート防水部から万が一浸水した場合に他方側への雨水の回り込みを遮る(絶縁する)ことを目的とするものである。
そして、前記目地91内に、ウレタン系シーリング92を充填した。
ここで用いられる充填材(92)は、ウレタン系に限定されるものではなく、例えば後述する塗膜防水部2Aに用いられる樹脂塗料20を流用してもよい。
【0036】
〔シート防水部の施工〕
前記下地処理面9Aの前記目地91の右方側に、エポキシ系接着剤7を塗布し、その上から不織布積層防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12Felt」)10を貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧してシート防水部3Aを形成した。この不織布積層防水シート10は、塩ビ系の樹脂層にガラス繊維基布を積層した構成の防水シートの裏面側に不織布を積層してなる構成であって、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が殆ど無いという利点をも有している。
ここで用いられる接着剤は、特に限定するものではなく、例えば後述する塗膜防水部2Aに用いられる樹脂塗料20を流用してもよい。
そして、不織布積層防水シート10は、裏面側に不織布が積層された構成であるため、この不織布中に接着剤7が含浸されて、下地処理面9Aに強固に敷設される。
【0037】
〔塗膜防水部の施工〕
前記下地処理面9A上の、前記シート防水部3Aの左方側にウレタンプライマーを塗布した後、二液型樹脂塗料20を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Aとし、塗工後1日以上養生を行った。
ここで用いられるプライマーは、特に限定するものではなく、下地及び樹脂塗料に応じて適宜に選択して用いればよい。
【0038】
〔各防水部の接合部分の施工〕
前記塗膜防水部2Aを施工し、樹脂塗料20が乾かないうちに(流動性を失う前に)、前記不織布積層防水シート10を敷設し、不織布を樹脂塗料20中に含浸させた。
さらに、敷設した不織布積層防水シート10の端部を覆うように樹脂塗料20を施工(追加補充)した。この重ね部分を2aで図示した。
そして、施工後1日以上養生を行った。
【0039】
こうして施工された図1の防水面構造は、塗膜防水部2Aとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Aの樹脂塗料20中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
【0040】
また、図示実施例の防水面構造には、目地91が形成されているため、既存防水層8との絶縁が図られる。すなわちこの目地91により、仮に雨水浸入があったとしても、互いに遮ることができる。
【0041】
図2に示す実施例は、前記第2の発明の防水面構造の一例であり、支柱設置台のような異形突出部を備える防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0042】
〔下地処理〕
前記図1の実施例と同様に下地処理面9Bを施工した。
【0043】
〔塗膜防水部の施工(その1)〕
支柱Xが設置される上段部分から段差を介して下段までの下地処理面9B上に二液型樹脂塗料21を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Bとした。
【0044】
〔不織布積層防水シートの施工〕
前記下地処理面9Bの下段部分における塗膜防水部2Bが乾かないうちに(流動性を失う前に)、不織布積層防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12Felt」)10を幅100mm程度に貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧し、不織布を樹脂塗料21中に含浸させた。この不織布積層防水シート10は、前記図1の実施例でも使用したので、説明を省略する。
【0045】
〔塗膜防水部の施工(その2)〕
前記不織布積層防水シート10の段差に近い端縁を覆うように樹脂塗料21を施工(追加補充)して前記塗膜防水部2Bと連結した。この重ね部分を2bで図示した。そして、施工後1日以上養生を行った。
【0046】
〔シート防水部の施工〕
前記不織布積層防水シート10の外側(図面左側)に位置する下地処理面9Bに、ニトリルゴム系接着剤(元旦ビューティ工業社製「サーナコル2170」)を用いて防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフG410-12」)30を敷設し、シート防水部3Bを形成した。この防水シート30は、前記不織布積層防水シート10と同様に塩ビ系の樹脂層にガラス繊維基布を積層した構成を有するため、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が殆ど無いという利点をも有している。
そして、前記防水シート30の端部を、前記不織布積層防水シート10の端部の上面に沿わせ、熱融着にて固定した。なお、図中、301は熱融着部分を示す。
【0047】
こうして施工された図2の防水面構造は、シート防水部3Bと塗膜防水部2Bとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Bの樹脂塗料21中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
そして、不織布積層防水シート10が、シート防水部3Bと塗膜防水層2Bとの接着部分を形成し、両防水部3B,2Bが直接接触していないので、従来の防水構造のように両防水部3B,2Bの伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
【0048】
また、図示実施例の防水面構造は、シート防水部3Bと不織布積層防水シート10とが熱溶着にて接合されているので、例えば接着剤を塗布したり固定具を打ち込む等の別途の材料並びに操作を必要とせず、容易に接合することができる。
【0049】
図3に示す実施例は、前記第2の発明の防水面構造の一例であり、略平坦状の防水面構造を施工(既存防水の改修)する一例を示す。
【0050】
〔下地処理〕
前記図1の実施例と同様に下地処理面9Cを施工した。
【0051】
〔目地加工〕
幅5mm×深さ50mm程度の目地93を下地処理面9Cに欠きこんだ。そして、前記目地93内に、充填材94として樹脂モルタルを充填した。
【0052】
〔支持部材の施工〕
先端(係止部61)を下方へ折り下げた支持部材(元旦ビューティ工業社製「サーナメタル」)6を、前記目地93及びその右側に向かって下地処理面9Cにビス止め固定(ビス62)した。この支持部材6は、亜鉛メッキ鋼板の表面に塩ビ系樹脂層が積層されている構成である。
【0053】
〔シート防水部の施工〕
前記支持部材6の図面右側に位置する下地処理面9C上に絶縁材(元旦ビューティ工業社製「サーナフェルト」)51を敷き込み、その上面に、防水シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフS327-12」)32を敷設し、シート防水部3Cを形成した。この防水シート32は、塩ビ系の樹脂層にポリクロスを補強布として積層した構成であって、表層側には熱融着できるという特性を有し、また伸縮変形(寸法変化)が少ないという利点をも有している。なお、この防水シート32の端部は、前記支持部材6の上面に臨ませて熱融着にて固定した。図中、321は、防水シート32の熱融着部分を示す。
【0054】
〔塗膜防水部の施工(その1)〕
前記支持部材6と目地93の取り合いに、ウレタン系シーリング95を塗布し、続いて図面左側に位置する下地処理面9Cに絶縁材(元旦ビューティ工業社製「サーナフェルト」)52を敷設した。
前記絶縁材52の図面左側には、プライマーを塗布した後、二液型樹脂塗料20を所定の乾燥塗膜になるように施工して塗膜防水部2Cとした。
【0055】
〔不織布積層防水シートの施工〕
前記塗膜防水部2Cの樹脂塗料20が乾かないうちに(流動性を失う前に)、不織布積層防水シート10を幅100mmに貼り付け、貼り付けた部分を十分に填圧し、不織布を樹脂塗料20中に含浸させた。この不織布積層防水シート10は、前記図1実施例でも使用したので、説明を省略する。
【0056】
〔塗膜防水部の施工(その2)〕
前記不織布積層防水シート10の左側端縁を覆う(幅50mm以上重ねる)ように樹脂塗料20を施工(追加補充)して前記塗膜防水部2Cと連結した。この重ね部分を2cで図示した。そして、施工後1日以上養生を行った。
【0057】
〔増張シートの施工〕
前記シート防水部3Cと前記不織布積層防水シート10との取り合い部に、増張シート(元旦ビューティ工業社製「元旦サーナルーフS327-12」)40を貼り付け、シート端部は熱融着にて固定した。この増張シート40は、前記防水シート32と同じものであり、塩ビ系の樹脂層にポリクロスを補強布として積層した構成で、表層側には熱融着でき、伸縮変形(寸法変化)が少ないという利点を有している。なお、図中、401,402は増張シート40の熱融着部分を示す。
【0058】
こうして施工された図3の防水面構造は、シート防水部3Cと塗膜防水部2Cとの接合に不織布積層防水シート10を用い、不織布積層防水シート10中の不織布が塗膜防水部2Cの樹脂塗料20中に含浸されるため、物理的な接合状態が形成され、強固な防水面構造が得られる。
そして、不織布積層防水シート10が、シート防水部3Cと塗膜防水層2Cとの接着部分を形成し、両防水部3C,2Cが直接接触していないので、従来の防水構造のように両防水部3C,2Cの伸縮の相違が剥離を引き起こすことがない。
【0059】
また、図示実施例の防水面構造には、目地93が形成され、該目地部93に支持部材6の係止部61が係止しているため、目地93が両防水部10,3Cの万が一の雨水浸入を互いに遮る絶縁溝となる。さらに、支持部材6が下地処理面9Cに係止してズレ動くことがないため、シート防水部3Cにてたるみやしわが生じてもそれらの伸縮の影響が不織布積層防水シート10に影響することがない。
【0060】
さらに、図示実施例の防水面構造では、増張シート40でシート防水部3Cを構成する防水シート30と、塗膜防水層2Cと接続された不織布積層防水シート10を熱融着したので、異種の防水層3C,2Cの接合ができ、増張シート40は浮かし張りであるため、互いの防水層3C,2Cの動きを吸収する絶縁工法となる。
【符号の説明】
【0061】
10 不織布積層防水シート
2A〜2C 塗膜防水部
2a〜2c 重ね部分
20,21 樹脂塗料
3A〜3C シート防水部
30,32 防水シート
301,321 熱融着部分
40 増張シート
51,52 絶縁材
6 支持部材
61 係止部
7 接着剤
8 既設防水層
9A〜9C 下地処理面
91,93 目地
92,94 充填材
図1
図2
図3