特許第5652900号(P5652900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652900
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   E04H1/02
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2007-129410(P2007-129410)
(22)【出願日】2007年5月15日
(65)【公開番号】特開2008-285825(P2008-285825A)
(43)【公開日】2008年11月27日
【審査請求日】2010年4月8日
【審判番号】不服2013-823(P2013-823/J1)
【審判請求日】2013年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105625
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 清暢
(72)【発明者】
【氏名】山本 博朗
【合議体】
【審判長】 本郷 徹
【審判官】 竹村 真一郎
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−82782(JP,A)
【文献】 特開2007−23652(JP,A)
【文献】 特開昭59−89942(JP,A)
【文献】 特開平3−180644(JP,A)
【文献】 特開昭59−89949(JP,A)
【文献】 特開2001−311232(JP,A)
【文献】 特開2003−13617(JP,A)
【文献】 特開平10−238146(JP,A)
【文献】 特開2004−100373(JP,A)
【文献】 特開2004−100376(JP,A)
【文献】 特開2005−351032(JP,A)
【文献】 特開2002−147034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階の一部の部屋が天井高の高い高天井部屋4となっている建物において、
前記高天井部屋4の天井は、上階に設けられたスキップ床29の下面で構成されており、
前記高天井部屋4と平面的に隣接する上階の部屋18の床が、前記高天井部屋4の天井より低くなっており、
前記上階の部屋18を挟んで、前記高天井部屋4と対向する位置に上階の外壁から奥まってバルコニー17が設けられており、
前記高天井部屋4の天井と、前記上階の部屋18の床との間にある壁の少なくとも一部が、通風可能でかつ透光可能な通風透光壁20となっており、
前記上階の部屋18とバルコニー17との間の壁に設けられた窓19aが前記通風透光壁20と対向しており、
前記通風透光壁20は、開口部21aが設けられた壁本体21と、この壁本体の開口部21aにはめ込まれたガラス板22とを備え、ガラス板の左右の縁部と、開口部の両方の縁部との間に所定幅の隙間24,24が設けられていることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下階の一部の部屋が天井高の高い高天井部屋となっている建物に関する。
【背景技術】
【0002】
1階の一部の部屋が天井高の高い高天井部屋となっている建物の一例として特許文献1に記載のものが知られている。
この特許文献1に記載の建物は、建物内の2階部分の部屋に隣接して、階下の吹抜け部分が設けられ、その吹抜け部分の直上部には屋根が設けられ、吹抜け部分の屋根上面が前記部屋の天井面より低い位置に設けられ、部屋と吹抜け部分の境界部分の壁面で吹抜け部分の屋根上面より上方には開口部が設けられているものである。
このような建物によれば、部屋と吹抜け部分の境界部分で収納室の屋根面より上方の壁面部分に開口部が設けられることにより、部屋内の吹抜けを設けた壁面側であっても、開口部より採光を行うことができるとともに、部屋内の効率的な換気を行うことができる。
【特許文献1】特開2007−92429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような建物では、2階部屋と、1階の吹抜け部を有する部屋(天井高の高い高天井部屋)との間における通風や採光は全く考慮されていないので、例えば、高天井部屋の上部に滞留した空気を排気し難いという問題がある。特に夏季においては温度の高い空気は上部に滞留するので、この空気を排気したいという要望がある。
また、一般的に2階は1階より採光し易く、明るいので、この2階の光を1階に採り入れたいという要望もある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、下階の一部の部屋が天井高の高い高天井部屋となっている建物において、上階の部屋と、下階の高天井部屋との間において通風や採光を確保できる建物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明は下階の一部の部屋が天井高の高い高天井部屋4となっている建物において、前記高天井部屋4の天井は、上階に設けられたスキップ床29の下面で構成されており、前記高天井部屋4と平面的に隣接する上階の部屋18の床が、前記高天井部屋4の天井より低くなっており、前記上階の部屋18を挟んで、前記高天井部屋4と対向する位置に上階の外壁から奥まってバルコニー17が設けられており、前記高天井部屋4の天井と、前記上階の部屋18の床との間にある壁の少なくとも一部が、通風可能でかつ透光可能な通風透光壁20となっており、前記上階の部屋18とバルコニー17との間の壁に設けられた窓19aが前記通風透光壁20と対向しており、前記通風透光壁20は、開口部21aが設けられた壁本体21と、この壁本体の開口部21aにはめ込まれたガラス板22とを備え、ガラス板の左右の縁部と、開口部の両方の縁部との間に所定幅の隙間24,24が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高天井部屋と平面的に隣接する上階の部屋の床が、前記高天井部屋の天井より低くなっており、前記高天井部屋の天井と、前記上階の部屋の床との間にある壁が、通風可能でかつ透光可能な通風透光壁であるので、この通風透光壁を通して上階の部屋と、下階の高天井部屋との間において通風や採光を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の建物は、2.5階建ての住宅であり、2階の上に、2階床より半階高いスキップ床が設けられてなるものである。
1階の間取りは以下のようになっている。すなわち、図5に示すように、建物の南側の中央部より若干東側には、玄関1が建物の南側の外壁から奥まって設けられており、この玄関1の北側にホール2が設けられている。ホール2の西側にはキッチン3が設けられており、このキッチン3の南側にダイニングルーム4がキッチン3と連続して設けられている。ダイニングルーム4の東側には、リビングルーム5がダイニングルーム4と連続して設けられている。
【0017】
ダイニングルーム4は、天井高の高い高天井部屋4となっており、その上方には2階の床が設けられている。キッチン3とリビングルーム5の天井は、ダイニングルーム4の天井より低くなっており、これらキッチン3とリビングルーム5の上方には、中間階の床が設けられている。
リビングルーム5の東側の壁には、地窓6が設けられており、この地窓6は玄関ポーチ1aに面している。
【0018】
キッチン3の北側には、洗面室7と浴室8とが東西に隣接して設けられており、洗面室7には、ホール2から出入りできるようになっている。また、ホール2には階段9が1階の床と中間階の床との間に設けられており、階段9の北側にはエレベータ室10が1階の床から中間階の床を抜け、さらに2階の床を抜けて2階の天井まで延びて設けられている。このエレベータ室10にエレベータ10aが設けられており、該エレベータ10aは1階、中間階、2階のそれぞれで開閉するようになっている。
ホール3の北側には、土間11が設けられており、この土間11は1階の収納室12に隣接している。
【0019】
収納室12は天井高が0.9〜1.4m程度の低天井室であり、土間11と収納室12とを仕切る壁には、収納室12用の出入口が形成されている。この出入口の高さも0.9〜1.4m程度である。収納室12の床の一部12aは土間11の床と連続して面一となっているが、収納室の床の他部12bは一段高くなっており、ホール2の床と面一となっている。
また、玄関1の東側には土間13が収納室12の南側に隣接して設けられている。この土間13は例えば工房として使用されるもので、この土間13と収納室12とを仕切る壁には、収納室12用の出入口が形成されている。この出入口の高さは0.9〜1.4m程度である。また、土間13には玄関1および玄関ポーチ1aの双方から出入できるようになっている。
また、前記ホール2の東側には、階段14が1階の床と中間階の床との間に設けられている。
さらに、収納室12の北側には、階段15が1階の床と中間階の床との間に設けられている。この階段15が設けられる階段室は1階の内部とは壁によって仕切られており、外部から出入するようになっている。
【0020】
2階の間取りは以下のようになっている。すなわち、図6に示すように、2階のほぼ中央部にホール16が設けられており、このホール16に前記階段9の下り口が設けられている。ホール16の南側には、バルコニー17と部屋(上階の部屋)18とが東西に隣接して設けられている。バルコニー17は2階の南側の外壁から奥まって設けられたものであり、その上方には屋根はなく開放されている。バルコニー17と部屋18とを仕切る壁には、バルコニー17と部屋18とを行き来可能とするサッシ窓19aが設けられており、このサッシ窓19aの上方には高窓19bが設けられている(図3参照)。
また、部屋18は天井高の高い高天井部屋となっており、この部屋18の天井は2.5階にあるスキップ床29上の天井とほぼ等しい高さとなっている。
さらに、バルコニー17とホール16とを仕切る壁には、バルコニー17とホール16とを行き来可能とするサッシ窓19cが設けられており、このサッシ窓19cの上方には高窓19dが設けられている(図1参照)。なお、ホール16も天井高の高い高天井部屋となっており、このホール16の天井は2.5階にあるスキップ床29上の天井とほぼ等しい高さとなっている。
前記部屋18は1階の高天井部屋であるダイニングルーム4と平面的に隣接しており、図1に示すように、該部屋18の床は、ダイニングルーム4の床より低くなっている。ダイニングルーム4の天井と、部屋18の床との間にある壁は、通風透光壁20となっている。
【0021】
前記通風透光壁20は以下のように構成されている。すなわち、図4に示すように、通風透光壁20は、開口部21aが設けられた壁本体21と、この壁本体21の開口部21aにはめ込まれたガラス板22と、同開口部21にaにはめ込まれた面格子23とによって構成されている。
開口部21aは長方形状に形成されており、この開口部21aの内周面のうち、内側(部屋18側に、ガラス板22がはめ込まれており、外側に面格子23がはめ込まれている。ガラス板22はその横寸法が開口部21aの横寸法より短く形成された透明なものであり、したがって、該ガラス板22の左右側の縁部と、開口部21aの左右側の縁部との間には所定幅の隙間24,24が設けられている。面格子23はその縦横の寸法が開口部21aの縦横の寸法とほぼ等しく形成されたものであり、したがって、面格子23は開口部21aにピッタリとはめ込まれている。面格子23は木製のものであり、ガラス板22と所定間隔をあけてはめ込まれている。したがって、空気は前記隙間24,24、面格子23とガラス板22との間の隙間、面格子23に形成されている多数の貫通部を通して、部屋18とダイニングルーム4との間を流通できるようになっている。
また、前記通風透光壁20は、前記サッシ窓19aは対向しており、これによって、サッシ窓19aから部屋18に入り込む光を通風透光壁20を通して1階のダイニングルーム4に導くことができる。
【0022】
前記ホール16の北側には部屋27が設けられており、この部屋27の西側には収納室28が設けられている。この収納室28は、2階の床上にスキップ床29を設け、このスキップ床29と2階の床との間に設けられたものであり、天井高が0.9〜1.4m程度になっている。収納室28と部屋27とを仕切る壁には、出入口30が設けられている。
また、ホール16の西側には収納室31が前記収納室28の南側に隣接して設けられている。この収納室31もスキップ床29と2階の床との間に設けられたものであり、天井高が0.9〜1.4m程度になっている。収納室31とホール16とを仕切る壁には、出入口32が設けられている。また、前記収納室28とホール16とを仕切る壁には、出入口33が設けられている。
【0023】
また、前記バルコニー17の東側には、部屋33が設けられており、この部屋33の北側には部屋34が設けられている。部屋33と部屋34はそれより西側にある部屋等からある程度独立している。すなわち、部屋34は部屋27やホール16とは壁35によって完全に仕切られており、部屋33はバルコニー17に隣接している。そして部屋33にはキッチンが設置されており、該部屋33はLDKとして使用される。部屋33内には階段ホール33aが設けられており、この階段ホール33aと前記ホール16と仕切る壁に出入口が設けられている。
また、前記部屋34は1階の収納室12上に設けられているので、部屋33より半階ほど低くなっており、該部屋34には前記階段14の途中の踊り場14aに面している出入口34aから出入するようになっている。また、部屋34には前記階段15を通って出入できるようになっている。
【0024】
2.5階の間取りは以下のようになっている。すなわち図7に示すように、建物内の西側には、主寝室として使用される部屋37が設けられている。また、部屋37の東側には洗面室38が設けられている。これら部屋37および洗面室38は、1階のダイニングルーム4と2階の収納室31と収納室28の上にあるスキップ床29上に設けられている。
部屋37には2階のホール16から階段40を上って、その階段40の下り口から出入りするようになっている。階段40は2階の床とスキップ床29との間に設けられている。
また、部屋37と2階の部屋18の上部とを仕切る壁には開口部が設けられており、この開口部にはガラス板41がはめ込まれている。したがって、部屋37から部屋18を見ることができる。なお、ガラス板41の内側(部屋37側)には、面格子で構成された引戸が設けられている。
【0025】
建物内の東側には、部屋43と水回り系の部屋44とが南北に隣接して設けられており、この水回り系の部屋44には部屋43から出入りするようになっている。水回り系の部屋44は洗面室兼トイレと浴室とを備えている。部屋43の南側には階段45の下り口が設けられており、この下り口から部屋43に出入りするようになっている。また、部屋43と水回り系の部屋44とは、前記部屋34上に設けられており、部屋44の床は前記部屋37の床より若干低くなっている。
【0026】
また、建物の屋根には複数の天窓が設けられている。すなわち、図2および図3に示すように、天窓46a,46bは2階のホール16の上方に設けられており、2階のほぼ中央にあるホール16への採光を確保するものである。天窓46cは部屋33への採光を確保するものである。天窓46dは階段45,14への採光を確保するものである。
【0027】
本実施の形態によれば、1階の高天井部屋であるダイニングルーム4の天井と、2階の部屋18の床との間にある壁が、通風可能でかつ透光可能な通風透光壁20であるので、この通風透光壁18を通して2階の部屋18と、1階のダイニングルーム4との間において通風や採光を確保できる。
特に夏季は高天井部屋であるダイニングルーム14の上部に滞留する空気を、通風透光壁20を通して、2階の部屋18に排気できる。部屋18へ排気された空気は該部屋18に隣接しているバルコニー17に排気できる。
【0028】
また、通風透光壁20が、開口部21aが設けられた壁本体21と、この壁本体21の開口部21aにはめ込まれたガラス板22とを備え、ガラス板22の縁部と、開口部21aの縁部との間に所定幅の隙間24,24が設けられているので、ガラス板22によって採光を確保でき、隙間24,24によって通風を確保できる。
さらに、2階の部屋18に隣接して、バルコニー17が設けられており、このバルコニー17と2階の部屋18との間にあるサッシ窓19aが、通風透光壁20と対向配置されているので、バルコニー17からサッシ窓19aを通して2階の部屋18に採光でき、この部屋18から通風透光壁20を通して下階のダイニングルーム4に採光できるので、建物の外側からダイニングルーム4に容易に採光できる。
また、1階のダイニングルーム4の上部に滞留した空気が通風透光壁20を通して2階の部屋18に抜け、さらに、サッシ窓19aから外部に抜けるので、1階のダイニングルーム4の上部に滞留した空気を建物の外部に容易に排気できる。
【0029】
また、2階の部屋18が天井高の高い高天井部屋となっており、この高天井部屋18とバルコニー17とを仕切る壁の上部に高窓19bが設けられているので、建物の外側から高窓19bを通して部屋18へ採光できるので、採光量を多くできる。
また、1階のダイニングルーム4の上部から通風透光壁20を通して2階の部屋18に抜けた空気を高窓19bを通して容易に排気できる。
さらに、2階の床上に、スキップ床29が設けられており、このスキップ床29と2階の床との間に天井高が0.9〜1.4mの収納空間28,31が設けられているので、収納空間28,31が2階の床から出入可能となり、使い勝手のよい収納空間となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る建物の一例を示すもので、建物をその南側の壁面と平行でかつダイニングルームを通る面で切断した縦断面図である。
図2】同、建物をその南側の壁面と平行でかつキッチンを通る面で切断した縦断面図である。
図3】同、建物をその東側の壁面と平行でかつ玄関を通る面で切断した縦断面図である。
図4】同、通風透光壁を示す正面図である。
図5】同、建物の1階の平面図である。
図6】同、建物の2階の平面図である。
図7】同、建物の2.5階の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
4 ダイニングルーム(高天井部屋)
17 バルコニー
18 部屋(上階の部屋)
19a サッシ窓(窓)
19b 高窓
20 通風透光壁
21 壁本体
21a 開口部
22 ガラス板
24 隙間
28,31 収納室
29 スキップ床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7