(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献2に開示されている「ディスプレイ用の蛍光体」としてのボレート材料を、中性子シンチレータとして使用することは、以下の問題より困難である。当該ボレート材料は、中性子と反応する成分の含有濃度が極めて微量であり、中性子シンチレータとして要求される性能を発揮することが出来ない。また、特許文献2に開示されている如きボレート材料は、粉体又は薄膜の状態で用いられており、透明性の無いバルク体であるため、中性子シンチレータとして厚みを増加させて、中性子の検出感度を向上させるという用途には不向きである。
【0008】
そこで、本件発明者等は、Ceをドープした酸化物結晶(YCa
4O(BO
3)
3結晶等)について、その中性子シンチレータとしての応用を試みるべく、鋭意研究を行ってきた。ところが、紫外線励起発光を用いた発光特性の評価や中性子線の模擬実験としてのα線照射下でのシンチレーション特性の評価では、中性子シンチレータとして実用化可能な程度まで酸化物結晶を得るには至らなかった。
【0009】
以上に述べてきたことから理解できるように、安価な酸化物結晶であり、中性子線に対する感度が高く、且つ、γ線に由来するバックグラウンドノイズが少なく、バルクが透明体となり、中性子シンチレータに使用可能なものが望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本件発明者等は、酸化物結晶内に存在するBに着目し、鋭意研究を行った結果、中性子線に対する感度が高く、且つ、γ線に由来するバックグラウンドノイズが少なく、中性子シンチレータとして使用可能な酸化物結晶に想到した。なお、当該酸化物結晶の中性子シンチレータとしての評価は、α線照射実験による模擬実験により評価した。以下、本件発明の概要に関して述べる。
【0011】
中性子シンチレータ用酸化物結晶: 本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、以下の(1)〜(6)のいずれかの構造式を備え、且つ、
10B含有量が0.5atom/nm
3以上であることを特徴とするボレート系酸化物結晶である。各元素に関しての詳細は後述する。なお、以下の構造式において、いずれの構造式においても、0<x<0.05であり、式(1)〜式(6)においてAEはアルカリ土類金属であり、式(1)〜式(6)において、RE及びRE’は、それぞれ相互に異なる成分の希土類元素である。
【0012】
(1) (RE
1−xRE’
x)AE
4O(BO
3)
3
(2) AE
3(RE
1−xRE’
x)(BO
3)
3
(3) AE
3(RE
1−xRE’
x)
2(BO
3)
4
(4) RE(AE
1−xRE’
x)
4O(BO
3)
3
(5) (AE
1−xRE
x)
3RE’(BO
3)
3
(6) (AE
1−xRE
x)
3RE’
2(BO
3)
4
【0013】
中性子シンチレータ: 本件発明に係る中性子シンチレータは、上述の中性子シンチレータ用酸化物結晶を用いて得られる点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、「希土類元素」、「アルカリ土類金属」、Bとしての「
10B」を同時に含有することで、中性子線に対する感度が良好で、γ線に由来するバックグラウンドノイズが少なくなる。しかも、本発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、透明性に優れているため、中性子シンチレータの厚みを増加させて、中性子の検出感度を向上させるという用途に好適である。そして、本発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、製造コストが安価で、且つ、加工性能も良好である。従って、本発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶を用いた中性子シンチレータは、安価で高品質の製品となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の形態及び中性子シンチレータの形態に関して述べる。
【0017】
中性子シンチレータ用酸化物結晶の形態: 本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、以下の(1)〜(6)のいずれかの構造式を備え、且つ、
10B含有量が0.5atom/nm
3以上であることを特徴とする。即ち、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、ボレート系酸化物結晶であって、「希土類元素(RE、RE’は相互に異なる希土類元素)」、「アルカリ土類金属(AE)」、Bとしての「
10B」を同時に含有することが主な特徴である。以下、念のために、(1)〜(6)の構造式を列挙する。なお、以下の構造式において、いずれの構造式においても、0<x<0.05であり、式(1)〜式(6)においてAEはアルカリ土類金属であり、式(1)〜式(6)において、RE及びRE’は、それぞれ相互に異なる成分の希土類元素である。
【0018】
(1) (RE
1−xRE’
x)AE
4O(BO
3)
3
(2) AE
3(RE
1−xRE’
x)(BO
3)
3
(3) AE
3(RE
1−xRE’
x)
2(BO
3)
4
(4) RE(AE
1−xRE’
x)
4O(BO
3)
3
(5) (AE
1−xRE
x)
3RE’(BO
3)
3
(6) (AE
1−xRE
x)
3RE’
2(BO
3)
4
【0019】
(1)〜(6)の構造式を備える酸化物結晶において、最も重要な元素成分であるBに関してのべる。B(ホウ素)は、中性子と反応する成分として機能する。そして、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶におけるB(ホウ素)は、「
10B」を選択的に使用する点に特徴がある。このように「
10B」を選択的に当該酸化物結晶の構成元素として用いることによって、中性子と反応した際の十分な発光量を、安定して得ることができるようになる。
【0020】
このときの本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶に対する「
10B含有量」は、中性子線の検出感度に大きく影響する。「
10B」は、ホウ素の同位体の一種であり、通常のBの中には、一定量しか存在しない。しかし、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の場合には、この「
10B含有量」が多いほど、中性子線の検出感度が向上するため好ましい。(1)〜(6)の構造式を備える酸化物結晶のストイキオメトリを満足させる範囲において、「B」としてのトータル含有量の最大値は化学量論比で定まる。この中で「B」のどの程度を、「
10B」に置き換えるかで、中性子シンチレータ用酸化物結晶として使用できるか否かが決まる。
【0021】
上述の(1)〜(6)の酸化物結晶の場合、「
10B含有量」は0.5atom/nm
3以上として用いる。当該下限値未満の「
10B含有量」の場合には、中性子シンチレータとして用いた場合に、中性子と反応した際の発光量が不十分となるからである。天然のホウ素には、
10Bと
11Bの2種類の同位体がある。
10Bの天然の同位体比は19.92%である。したがって、この下限値程度の「
10B含有量」を有する中性子シンチレータ用酸化物結晶は、製造するボレート系酸化物結晶の種類をBの構成比率の高い酸化物結晶を選択することによって、特別に
10B含有率を高めたホウ素原料を用いることなく当該ボレート系酸化物結晶を製造できるという、製造上の利点もある。更に、中性子線に対する感度を高めるためには、当該「
10B含有量」を、2atom/nm
3以上とすることがより好ましい。
【0022】
なお、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の場合、「
10B含有量」とは中性子シンチレータ用酸化物結晶1nm
3あたりに含まれるB元素の個数をいう。この「
10B含有量」は、あらかじめシンチレータの密度、シンチレータ中のB元素の質量分率、及びボロン原料の「
10B含有率」を求め、以下の数1に代入し、計算することによって算出できる。
【0024】
この
10B含有量は、上述の(1)〜(6)の構造式を備える酸化物結晶を採用するかを選択し、この酸化物結晶の製造に用いるB
2O
3等のホウ素原料の備える「
10B含有率」を調整することによって、適宜調整できる。ここで、「
10B含有率」とは、全ホウ素元素(100wt%)に対する「
10B同位体」の元素比率であって、天然のホウ素では、約19.92wt%である。
【0025】
よって、天然のホウ素原料であるB
2O
3等は、そこに含まれる「
10B含有率」を調整して用いることが好ましい。この「
10B含有率」の調整方法としては、「天然の同位体比を有する汎用原料を出発原料として用い、
10B同位体を所望の
10B含有率まで濃縮調整する方法」、「既に
10B濃度が、所望の
10B含有率以上に濃縮された濃縮原料を入手し、該濃縮原料と前記汎用原料とを混合して希釈調整する方法」のいずれを採用しても構わない。
【0026】
そして、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶が含有する「アルカリ土類金属(AE)」としては、Mg、Ca、Sr、Baの中から選択する1以上の元素成分を用いることが好ましい。これらのアルカリ土類金属元素を用いる限り、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶として、品質安定性を高め、中性子と反応した際に十分な発光量を得ることが出来るからである。ここで、「1以上の」としていることから理解できるように、Mg、Ca、Sr、Baの中から選択する限り、1種の元素成分でも、2種〜4種の元素成分を組み合わせた場合の全てを含む概念として記載している。なお、中性子シンチレータ用酸化物結晶に対する「アルカリ土類金属(AE)」の含有量は、(1)〜(6)の構造式を備える酸化物結晶の化学量論比を満足させるものであり、自ずと判断できる数値であるため、数値としての記載は省略する。
【0027】
そして、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶が含有する「希土類元素」に関して述べる。この希土類元素が、中性子線を検出したときに発光する際の発光中心となる。この希土類元素の種類に関しては、特段の限定は無く、希土類に分類される成分の殆どの使用が可能である。例えば、所望の発光波長、発光強度及び発光寿命に応じて、適宜選択使用することが可能である。しかしながら、特に、発光強度及び発光寿命を主に考えると、以下に述べる希土類元素を使用することが好ましい。なお、以下の「RE」と「RE’」と標記した希土類元素は、式(1)〜式(6)において相互に異なる種類の希土類元素を示すものであるため、両者を分別して記載している。
【0028】
本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶が含有する「希土類元素(RE)」には、Sc、Y、Gdの中から選択する1以上の希土類元素を用いることが好ましい。「希土類元素(RE)」に、これらの希土類元素を用いた酸化物結晶とすることで、中性子シンチレータとして用いたときの発光強度及び発光安定性が向上する。
【0029】
そして、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶が含有する「希土類元素(RE’)」には、Ce、Pr、Eu、Tbの中から選択する1以上の希土類元素を用いることが好ましい。上述の「希土類元素(RE)」と組み合わせて、ここに述べた「希土類元素(RE’)」を用いて得られる酸化物結晶は、中性子シンチレータとして用いたときの発光強度及び発光寿命も長くなるため好ましい。
【0030】
以上に述べてきた中性子シンチレータ用酸化物結晶は、ボレート系酸化物結晶である。そして、このボレート系酸化物結晶には、単結晶体及び多結晶体が存在する。しかし、中性子シンチレータとして用いる酸化物結晶としては、単結晶体であることが好ましい。なぜなら、多結晶体に比べて、単結晶体は、非輻射過程による発光ロスが顕著に少なく、発光強度の高い中性子シンチレータを得ることができるからである。
【0031】
また、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶(ボレート系酸化物結晶)は、無色〜僅かに着色した有色透明の範囲にある透明度を備える結晶である。このように良好な透明性を備える中性子シンチレータ用酸化物結晶であっても、良好な化学的安定性を発揮し、通常の中性子の検出使用において、短期間での性能の劣化はなく、良好な蛍光寿命を備えている。
【0032】
更に、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、良好な機械的強度を備えているため、その取り扱い性能も良好である。しかも、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶は、研削加工、研磨加工等の機械加工性も良好であり、低い加工コストで所望の形状として用いることができる。この加工を行うにあたり、公知のブレードソー、ワイヤーソー等の切断機、研削機、或いは研磨盤等を、何ら制限無く使用する事が可能ある。以下、本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の製造方法に関して、簡潔に述べておく。
【0033】
本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の製造方法に関しては、特段の限定は無い。従って、公知の結晶製造法を任意に選択することも可能であるが、「マイクロ引き下げ法」、「チョクラルスキー法」のいずれかを採用することが、得られる酸化物結晶の透明性の確保、及び、製造安定性の観点から好ましい。特に、「マイクロ引下げ法」を用いれば、酸化物結晶を中性子シンチレータ用として用いる特定の形状として直接製造することが可能で、しかも、製造時間が短時間で済むため好ましい。一方、「チョクラルスキー法」の場合には、直径が数インチの大型結晶を安価に製造することが可能であるため好ましい。
【0034】
中性子シンチレータの形態: 本件発明に係る中性子シンチレータは、上述の中性子シンチレータ用酸化物結晶を用いて得られる点に特徴を有する。そして、本件発明に係る中性子シンチレータは、光電子増倍管等の光検出器と組み合わせることによって、効率の良い中性子検出器として用いることができる。即ち、中性子線を検出した中性子シンチレータ用酸化物結晶から発せられた光(以下、「シンチレーション光」という)を、光検出器によって電気信号に変換することによって、中性子線の有無及び強度を電気信号として捉えることができる。
【0035】
本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶を用いた中性子シンチレータと光検出器とを組み合わせて使用する具体的な方法としては、例えば、光電子増倍管の光電面に、当該中性子シンチレータを光学グリース等で接着し、該光電子増倍管に高電圧を印加して、光電子増倍管より出力される電気信号を観測する方法が挙げられる。なお、上記光電子増倍管より出力される電気信号を利用して中性子線の強度等を解析する目的で、光電子増倍管の後段に増幅器や多重波高分析器等を設けても良い。
【0036】
以下、本発明の内容を実施例を挙げて、具体的に説明する。なお、本件発明が包含する技術的思想は、これらの実施例に限定解釈されるべきものでは無いことを、念のために明記しておく。
【0037】
以下、実施例に関して述べるが、実施例で用いた単結晶製造装置の概要に関して、先に述べることとする。
【0038】
使用した単結晶製造装置の概要: 本件発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶の製造には、「マイクロ引下げ法」を用い、高周波誘導加熱による雰囲気制御型マイクロ引下げ装置を用いた。このマイクロ引下げ装置は、坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する融液に接触させる種を保持する種保持具と、種保持具を下方に移動させる移動機構と、該移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する誘導加熱手段とを具備した単結晶製造装置である。
【0039】
該坩堝は、カーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、またはこれらの合金を用いて製造されたものであり、坩堝底部の外周にカーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、またはこれらの合金からなる発熱体であるアフターヒータを配置している。そして、坩堝及びアフターヒータは、誘導加熱手段の出力調整により、発熱量の調整を可能とすることによって、坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界領域の温度及びその分布の制御を可能とした。
【0040】
該坩堝を収容するチャンバーの材質にはSUS、窓材にはSiO
2を採用し、雰囲気制御を可能にするため、ロータリーポンプを具備し、ガス置換前において、チャンバー内の真空度を1×10
−3Torr以下とした。また、チャンバー内へは、付随するガスフローメータにより精密に調整された流量でAr、N
2、H
2、O
2ガス等を導入できるものを採用した。
【0041】
この装置を用いて、原料を坩堝に入れ、炉内を高真空排気した後、Arガス、ArガスとO
2ガスとの混合ガスのいずれかを炉内に導入することにより、炉内を不活性ガス雰囲気もしくは低酸素分圧雰囲気とし、高周波誘導加熱コイルに高周波電力を徐々に印加することにより坩堝を抵抗加熱して、坩堝内の原料を融解する。また、組成を均一に保つ目的及び長尺化の目的で、原料の連続チャージ用機器を用いても構わない。
【0042】
単結晶成長手順の概要: 以上に述べた単結晶製造装置を用いて、次のような手順で結晶を成長させた。種結晶を、所定の加熱速度で徐々に温度上昇させ、その先端を坩堝下端の細孔に接触させて充分に馴染ませる。十分に馴染んだら、融液温度を調整しつつ、引下げ軸を下降させることで、結晶を成長させていく。種結晶としては、特段の限定は無いが、結晶成長対象物と同等ないしは、構造及び組成ともに近いものを使用することが好ましい。また、種結晶として、結晶方位の明確なものを使用することが好ましい。そして、坩堝内の材料が全て結晶化し、融液が無くなった時点で単結晶成長を終了する。
【実施例1】
【0043】
以下、具体的実施例に関して、中性子シンチレータ用酸化物結晶の製造、中性子シンチレータの製造、中性子シンチレータ性能の評価の順で説明する。
【0044】
中性子シンチレータ用酸化物結晶の製造: 上述の「マイクロ引き下げ法」により、高周波の出力を調整しながら、0.1mm/minの速度で、ボレート系酸化物である中性子シンチレータ用酸化物結晶(Ce:YCa
4O(BO
3)
3)の単結晶の製造を行った。但し、このとき用いたホウ素原料は天然のB
2O
3であり、その
10B含有量は、19.92atom/nm
3であった。得られた当該中性子シンチレータ用酸化物結晶は、断面が4m角、長さが10mmのサイズであり、白濁及びクラックの無い良質な単結晶体であった。このCe:YCa
4O(BO
3)
3のフッ化物単結晶体の写真を
図1に示す。
【0045】
中性子シンチレータの製造: 以上のようにして得られたフッ化物単結晶体を、ダイヤモンドワイヤーを備えるワイヤーソーを用いて、15mmの長さに切断した後、研削及び鏡面研磨を行い、長さ15mm×幅2mm×厚さ1mmの形状に加工し、これを中性子シンチレータとして用いた。
【0046】
中性子シンチレータ性能の評価: 上述のようにして得られた中性子シンチレータの性能を、以下の方法によって評価した。
【0047】
まず、Edinburgh Instruments社製のFLS920を用い、
241Amを、Ce:YCa
4O(BO
3)
3で出来た当該中性子シンチレータに直接接触させることにより、α線を励起源として発光スペクトル及び蛍光寿命を測定した。
図2に、このときの発光スペクトルを示している。そして、
図3に蛍光寿命を示している。
【0048】
そして、このときに得られた減衰時定数は、32nsであった。この減衰時定数から判断する限り、本発明に係る中性子シンチレータ用酸化物結晶を用いた中性子シンチレータは、優れた時間応答特性を備えると言える。
【0049】
また、
図4に示す当該波高分布スペクトルにおいて、波高値が90〜150の領域において、シンチレーション光による明瞭なピークが確認できる。そして、このピークは、波高値20以下に見られるノイズからみて、充分に分離された位置にあり、本件発明に係る中性子シンチレータが充分な発光強度を有することが理解できる。
【実施例2】
【0050】
実施例1の原料の種類及び量を、表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の手順及び方法で本件発明に係る中性子シンチレータを得た。そして、実施例1と同様にして、当該中性子シンチレータの諸特性を評価した。その評価結果に関しては、組成と併せて、表1に掲載する。
【0051】
以下、実施例3〜実施例45に関しては、実施例2と同様であり、重複した記載となるため省略する。但し、実施例1〜実施例15の酸化物結晶組成等については表1に示し、実施例16〜実施例45の酸化物結晶組成等については表2に示す。
【0052】
【表1】
【表2】