特許第5652912号(P5652912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652912
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】触媒反応塔
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20141218BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   B01D53/36 BZAB
   B01J8/02 E
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-261291(P2010-261291)
(22)【出願日】2010年11月24日
(65)【公開番号】特開2012-110819(P2012-110819A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】絹川 徹
(72)【発明者】
【氏名】北村 裕次
(72)【発明者】
【氏名】岩田 龍久
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200496(JP,A)
【文献】 特開平08−126817(JP,A)
【文献】 特開2009−293619(JP,A)
【文献】 特開2007−100510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/36
B01J 8/00− 8/46
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応塔本体内に触媒を内蔵し、触媒と接触するように、廃棄物ガス化溶融炉で生成した可燃性ガスを燃焼室に導入して燃焼させ温度調整及び除塵後の排ガスを通す触媒反応経路を有する触媒反応塔において、触媒と接触しないようにガスを通すバイパス経路を反応塔本体内に設け、設備立上げ時の燃焼室の昇温時と、燃焼室の昇温時以外の通常運転時とで、触媒反応経路の入口となる開口部とバイパス経路の入口となる開口部とを選択的に開閉するガス切替機構を設けたことを特徴とする触媒反応塔。
【請求項2】
バイパス経路が、反応塔本体内において触媒反応経路に挟まれるか又は囲まれるように設けられている請求項1に触媒反応塔。
【請求項3】
バイパス経路が、反応塔本体内の中央に設けられている請求項1又は2に記載の触媒反応塔。
【請求項4】
バイパス経路がスリット状に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の触媒反応塔。
【請求項5】
ス切替機構が触媒反応経路の入口となる開口部とバイパス経路の入口となる開口部とを選択的に開閉するフラップ板を有し、前記フラップ板が前記各開口部を閉じた状態において、前記フラップ板は前記各開口部のガス流れの上流側に位置する請求項1〜4のいずれかに記載の触媒反応塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒反応を利用してガス中の有害物質を分解、除去する触媒反応塔に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物ガス化溶融処理設備等における排ガス処理では、排ガスを触媒反応塔に通し、触媒反応塔内の触媒の活性を利用して排ガス中の有害物質を分解、除去している。
【0003】
触媒反応塔の使用形態を図4に示す廃棄物ガス化溶融処理設備を例に説明する。廃棄物ガス化溶融設備においては、廃棄物をガス化溶融炉1でガス化、溶融し、ガス化により生成した可燃性ガスを燃焼室2に導入して燃焼させる。次いで、燃焼後の高温の排ガスをボイラ3に送って熱回収を行う。さらに、排ガス温度調節器4で熱回収後の排ガスの温度調節を行ったのち、バグフィルタ5で除塵する。そして、誘引通風機6によって排ガスの圧力を上げたうえで、排ガス再加熱器7を経て触媒反応塔8に通ガスする。触媒反応塔8において触媒活性により排ガス中のダイオキシンや窒素酸化物等の有害物質を分解、除去し、煙突9より放散する。
【0004】
このような廃棄物ガス化溶融処理設備において、その立ち上げ時の燃焼室2の昇温は、灯油及び重油炊きバーナを用いて行われ、その排ガスは各装置を経由し煙突9より放散される。この昇温期間中は廃棄物処理は行っていないため、排ガス中には有害物質は殆ど含まれていない。
【0005】
しかし、バーナの燃焼不良が起こると炭化水素ガスが発生し、後段の各装置へ炭化水素ガスを含んだ排ガスが流れていくこととなる。その後段の装置の一つに触媒反応塔8があり、その内部には触媒が充填されている。触媒には炭化水素ガスを吸着する性質があり、吸着量が多くなると活性作用により触媒上で炭化水素ガスが燃焼し触媒が焼損する。
【0006】
このため、従来の触媒反応塔8には、図4に示すようにバイパスダクト10を設け、燃焼室2の昇温時、その排ガスは触媒反応塔8を通さずバイパスダクト10側に流すようにしている(例えば特許文献1)。
【0007】
図5は、従来の触媒反応塔8周りの構成を示し、(a)は通常運転時、(b)はバイパスダクト使用時を示す。バイパスダクト10は燃焼室2の昇温時のみの使用であるため、通常運転時はバイパス弁10aを閉じており、バイパス弁10a付近にはガス滞留部(図5(a)において10bで示す部分)ができる。このガス滞留部10bでは放熱によりガス温度が低下し腐食(排ガス中の酸性成分(HCl、SOx等)による低温腐食)が起こる。この腐食が進むとバイパス弁10aの破孔が起き、通常運転時にもかかわらず排ガスの一部がバイパスダクト10を経由して煙突からそのまま放散され、ダイオキシン等の有害物質の規制値を守れないなどのトラブルにつながる。なお、図5において8aは通ガス弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−248321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、バイパス経路に低温腐食が起きることを防止できる触媒反応塔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、反応塔本体内に触媒を内蔵し、触媒と接触するように、廃棄物ガス化溶融炉で生成した可燃性ガスを燃焼室に導入して燃焼させ温度調整及び除塵後の排ガスを通す触媒反応経路を有する触媒反応塔において、触媒と接触しないようにガスを通すバイパス経路を反応塔本体内に設け、設備立上げ時の燃焼室の昇温時と、燃焼室の昇温時以外の通常運転時とで、触媒反応経路の入口となる開口部とバイパス経路の入口となる開口部とを選択的に開閉するガス切替機構を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、バイパス経路を反応塔本体内に設けているので、通常運転時にバイパス経路は、同じく反応塔本体内に設けた触媒反応経路を流れるガスにより加温されるので、低温腐食が起きることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の触媒反応塔の一実施例を示す一部破断斜視図である。
図2】本発明におけるガス切替機構の一例を示し、(a)は縦断面図、(b)は底面図、(c)は(a)のA−A矢視図、(d)は(a)のB−B矢視図である。
図3】ガス切替機構の他の例を示す。
図4】廃棄物ガス化溶融処理設備の一般的な設備構成を示す。
図5】従来の触媒反応塔周りの構成を示し、(a)は通常運転時、(b)はバイパスダクト使用時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の触媒反応塔の一実施例を示す一部破断斜視図である。同図に示す触媒反応塔80は、図4に示した廃棄物ガス化溶融処理設備において使用される。
【0015】
図1に示す触媒反応塔80は、その反応塔本体81内に触媒82を内蔵し、この触媒82と接触するように排ガスを通す触媒反応経路83を有する。触媒反応経路83は通ガス方向(上方向)に沿って平行に2つ設けられており、これらの触媒反応経路83に挟まれるようにバイパスダクト84が設けられている。バイパスダクト84は反応塔本体81の中央に位置してスリット状をなし、触媒と接触しないように排ガスを通すバイパス経路を構成する。そして、反応塔本体81の入側(下側)には、触媒反応経路82とバイパス経路(バイパスダクト84)とを切り替えるガス切替機構85が設けられている。
【0016】
図2はガス切替機構85の一例を示し、(a)は縦断面図、(b)は底面図、(c)は(a)のA−A矢視図、(d)は(a)のB−B矢視図である。
【0017】
図2に示すガス切替機構85は、一対のフラップ板85aを有する。フラップ板85aは、触媒反応経路83の入口となる開口部83aとバイパスダクト84の入口となる開口部84aとを選択的に開閉する。そして、フラップ板85aが各開口部83a,84aを閉じた状態において、フラップ板85aは各開口部83a,84aのガス流れの上流側に位置する。
【0018】
このような構成とすることで、触媒圧損分の差圧を利用してガス切替機構85のシール性を向上させることができる。すなわち、触媒反応塔80には図4で説明したように誘引通風機6によって加圧された排ガスが供給されるが、触媒反応塔80内を通過することにより圧損が発生し、結果として、触媒反応塔80の出側では入側より圧力が低くなる(差圧1〜2kPa程度)。したがって、例えばフラップ板85aが開口部84aを閉じた状態において、フラップ板85aは開口部84aのガス流れの上流側に位置するようにすることで、フラップ板85aには、上述の圧損による圧力差分の押圧力が作用する。よって、シール性が向上する。
【0019】
図3はガス切替機構85の他の例を示す。図3に示すガス切替機構85はバタフライ弁85bを使用したものである。このバタフライ弁85bが、触媒反応経路83の入口となる開口部83aとバイパスダクト84の入口となる開口部84aとを選択的に開閉する。
【0020】
なお、ガス切替機構85は、図2及び3の構成には限定されず、要するに触媒反応経路とバイパス経路とを切り替えることができるものであればよい。
【0021】
以上説明したように本発明では、バイパス経路となるバイパスダクト84を反応塔本体81内に設けているので、通常運転時にバイパスダクト84は、同じく反応塔本体81内に設けた触媒反応経路83を流れる排ガスにより加温されるので、低温腐食が起きることを防止できる。とくに本実施例のように、バイパスダクト84を反応塔本体81の中央にスリット状にして配置し、このバイパスダクト84が触媒反応経路83に挟まれるようにすることで、バイパスダクト84を触媒反応経路83によってより確実に加温することができ、低温腐食を確実に防止できる。バイパスダクト84を触媒反応経路83で挟む代わりに囲むようにすることによっても、本実施例と同様の効果を奏することができる。
【0022】
また、本実施例において、触媒反応塔80を通過する排ガス温度は低温腐食防止の点から140℃以上とし、また、蒸気等による排ガス昇温能力又は機器耐熱性の点から210℃以下とすることが好ましい。
【0023】
さらに、ガス切替機構85部分での低温腐食を防止する点から、ガス切替機構85は、図2及び3に示したように、反応塔本体81内あるいは反応塔本体81と一体的に設けたケーシング内に配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の触媒反応塔は、廃棄物ガス化溶融処理設備の排ガス処理に限らず、触媒を用いる設備の各種のガス処理に利用可能である。とくに、腐食性成分を含有し、低温腐食が生じうるガスを処理する設備において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ガス化溶融炉
2 燃焼室
3 ボイラ
4 排ガス温度調節器
5 バグフィルタ
6 誘引通風機
7 排ガス再加熱器
8 触媒反応塔
8a 通ガス弁
9 煙突
10 バイパスダクト
10a バイパス弁
10b ガス滞留部
80 触媒反応塔
81 反応塔本体
82 触媒
83 触媒反応経路
83a 開口部
84 バイパスダクト(バイパス経路)
84a 開口部
85 ガス切替機構
85a フラップ板
85b バタフライ弁
図1
図2
図3
図4
図5