特許第5652946号(P5652946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5652946-高周波スイッチ 図000002
  • 特許5652946-高周波スイッチ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652946
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】高周波スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/693 20060101AFI20141218BHJP
   H04B 1/44 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H03K17/693 A
   H04B1/44
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-283748(P2010-283748)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-134672(P2012-134672A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 毅
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−011320(JP,A)
【文献】 特開2008−017416(JP,A)
【文献】 特開2006−270630(JP,A)
【文献】 特開平08−070245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/693
H04B 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割複信システムに接続されて高周波信号を入力または出力する少なくとも1つの第1ポートと、
周波数分割複信システムに接続されて高周波信号を入力または出力する少なくとも1つの第2ポートと、
前記第1ポートまたは前記第2ポートを介して入出力される高周波信号を送信または受信する共通ポートと、
少なくとも1つの第1電界効果トランジスタを備え、当該第1電界効果トランジスタのゲートに接続される第1ゲート抵抗への印加電圧に応じて、前記第1ポートと前記共通ポートとの間を導通または遮断する第1シリーズスイッチと、
少なくとも1つの第2電界効果トランジスタを備え、当該第2電界効果トランジスタのゲートに接続されて前記第1ゲート抵抗よりも大きな抵抗値を有する第2ゲート抵抗への印加電圧に応じて、前記第2ポートと前記共通ポートとの間を導通または遮断する第2シリーズスイッチと、
を有する、高周波スイッチ。
【請求項2】
少なくとも1つの第3電界効果トランジスタを備え、当該第3電界効果トランジスタのゲートに接続される第3ゲート抵抗への印加電圧に応じて、前記第1ポートとグランドとの間を導通または遮断する第1シャントスイッチと、
少なくとも1つの第4電界効果トランジスタを備え、当該第4電界効果トランジスタのゲートに接続されて前記第3ゲート抵抗よりも大きな抵抗値を有する第4ゲート抵抗への印加電圧に応じて、前記第2ポートとグランドとの間を導通または遮断する第2シャントスイッチと、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の高周波スイッチ。
【請求項3】
前記共通ポートは、アンテナに接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの無線通信機器の小型化が急速に進められている。無線通信機器をより小型にする方法の一つとして、無線通信機器の消費電力を低減して無線通信機器に搭載されるバッテリをより小型のものにすることが挙げられる。無線通信機器は、内部に多数の半導体集積回路を備えており、バッテリによって供給された電力の一部はこれらの半導体集積回路で消費される。これらの半導体集積回路の中には、アンテナと送信/受信回路との間で高周波信号の伝達経路を切り替える高周波半導体スイッチ(以下、高周波スイッチと称する)がある。高周波スイッチにおける消費電力は大きくはないものの、高周波スイッチおける挿入損失は直接的に送信回路の送信パワーアンプにおける消費電力に影響する。
【0003】
高周波スイッチとしては、たとえば下記特許文献1の高周波スイッチが知られている。特許文献1の高周波スイッチでは、SOI(Silicon On Insulator)基板上に形成されたMOSFETで高周波スイッチを構成することにより高周波スイッチにおける消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−194891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の高周波スイッチでは、時分割複信システムと周波数分割複信システムとが混在したマルチモードシステムにおける挿入損失特性について十分に考慮されていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、マルチモードシステムにおいてSOI基板上に形成された高周波スイッチの挿入損失特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
本発明の高周波スイッチは、少なくとも1つの第1ポートと、少なくとも1つの第2ポートと、共通ポートと、第1シリーズスイッチと、第2シリーズスイッチと、を有する。第1ポートは、時分割複信システムに接続されて高周波信号を入力または出力する。第2ポートは、周波数分割複信システムに接続されて高周波信号を入力または出力する。共通ポートは、第1ポートまたは第2ポートを介して入出力される高周波信号を送信または受信する。第1シリーズスイッチは、少なくとも1つの第1電界効果トランジスタを備え、第1電界効果トランジスタのゲートに接続される第1ゲート抵抗への印加電圧に応じて、第1ポートと共通ポートとの間を導通または遮断する。第2シリーズスイッチは、少なくとも1つの第2電界効果トランジスタを備え、第2電界効果トランジスタのゲートに接続されて第1ゲート抵抗よりも大きな抵抗値を有する第2ゲート抵抗への印加電圧に応じて、第2ポートと共通ポートとの間を導通または遮断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高周波スイッチによれば、時分割複信システムに接続されるスイッチのスイッチング速度特性を良好に維持しつつ、周波数分割複信システムに接続されるスイッチの挿入損失特性を改善することができる。その結果、マルチモードシステムにおいて送信回路の送信パワーアンプの消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態における高周波スイッチの回路図である。
図2】本発明の第2の実施の形態における高周波スイッチの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明の高周波スイッチの実施の形態を説明する。本発明の高周波スイッチは、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、GSM(Global System for Mobile Communications)などの無線通信システムの高周波スイッチに広く適用することができる。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における高周波スイッチの回路図である。本実施の形態の高周波スイッチでは、周波数分割複信システム(以下、FDDシステムと称する)に接続されるスイッチのゲート抵抗の抵抗値を、時分割複信システム(以下、TDDシステムと称する)に接続されるスイッチのゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定する。
【0013】
図1に示すとおり、本実施の形態の高周波スイッチ100は、TDDポート10,11FDDポート20,21、共通ポート30、TDD側シリーズスイッチ40,41、およびFDD側シリーズスイッチ50,51を有する。
【0014】
TDDポート10,11は、第1ポートとして、TDDシステムからの高周波信号を入力するか、またはアンテナからの高周波信号をTDDシステムに出力するためのポートである。TDDポート10,11は、TDD側シリーズスイッチ40,41の一方の信号端子にそれぞれ接続されている。
【0015】
FDDポート20,21は、第2ポートとして、FDDシステムからの高周波信号を入力するか、またはアンテナからの高周波信号をFDDシステムに出力するためのポートである。FDDポート20,21は、FDD側シリーズスイッチ50,51の一方の信号端子にそれぞれ接続されている。
【0016】
共通ポート30は、高周波信号を送信または受信するためのポートである。共通ポート30は、TDD側シリーズスイッチ40,41の他方の信号端子およびFDD側シリーズスイッチ50,51の他方の信号端子に接続されている。
【0017】
共通ポート30は、TDDポート10,11またはFDD20,21ポートを介して入力される高周波信号を送信するか、あるいはTDDポート10,11またはFDDポート20,21を介して出力される高周波信号を受信する。
【0018】
なお、本実施の形態では、共通ポート30はアンテナに直接的に接続されている。しかしながら、共通ポート30は他の構成を介してアンテナに接続されてもよい。
【0019】
TDD側シリーズスイッチ40,41は、第1シリーズスイッチとして、TDDポート10,11と共通ポート30との間を導通または遮断する。TDD側シリーズスイッチ40は、TDDポート10と共通ポート30との間に接続されており、TDD側シリーズスイッチ41は、TDDポート11と共通ポート30との間に接続されている。
【0020】
TDD側シリーズスイッチ40,41は、それぞれ少なくとも1つの電界効果トランジスタ(以下、FETと称する)を備えており、上記FETのゲートに接続される第1ゲート抵抗への印加電圧に応じて、TDDポート10,11と共通ポート30との間を導通または遮断する。
【0021】
図1に示す本実施の形態では、TDD側シリーズスイッチ40,41は、それぞれ複数のFETを備えており、それら複数のFETのソース/ドレインが直列に接続されている。本実施の形態では、TDD側シリーズスイッチ40,41のFETは、たとえばボディコンタクト型FETである。したがって、TDD側シリーズスイッチ40,41がオンされると、TDDポート10,11を介して入力または出力される高周波信号は、TDD側シリーズスイッチ40,41の直列に接続された複数のFETを介して伝達する。なお、TDD側シリーズスイッチ40,41に備えられるFETの個数は、FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0022】
また、上記複数のFETのゲートは、TDD側シリーズスイッチ40,41をオン/オフ制御する制御端子GATE_TDD1,GATE_TDD2にそれぞれ第1ゲート抵抗Rgate_tdd1,Rgate_tdd2を介して接続されている。ここで、第1ゲート抵抗Rgate_tdd1,Rgate_tdd2は、概ね同じ抵抗値(たとえば数十KΩ程度)を有することが好ましい。制御端子GATE_TDD1,GATE_TDD2には、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0023】
さらに、上記複数のFETのボディは、抵抗を介してBODY_TDD1,BODY_TDD2にそれぞれ接続されている。BODY_TDD1,BODY_TDD2には、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0024】
FDD側シリーズスイッチ50,51は、第2シリーズスイッチとして、FDDポート20,21と共通ポート30との間を導通または遮断する。FDD側シリーズスイッチ50は、FDDポート20と共通ポート30との間に接続されており、FDD側シリーズスイッチ51は、FDDポート21と共通ポート30との間に接続されている。
【0025】
FDD側シリーズスイッチ50,51は、それぞれ少なくとも1つのFETを備えており、上記FETのゲートに接続されて上記第1ゲート抵抗よりも大きな抵抗値を有する第2ゲート抵抗への印加電圧に応じて、FDDポート20,21と共通ポート30との間を導通または遮断する。
【0026】
図1に示す本実施の形態では、FDD側シリーズスイッチ50,51は、それぞれ複数のFETを備えており、それら複数のFETのソース/ドレインが直列に接続されている。本実施の形態では、FDD側シリーズスイッチ50,51のFETは、たとえばボディコンタクト型FETである。したがって、FDD側シリーズスイッチ50,51がオンされると、FDDポート20,21を介して入力または出力される高周波信号は、FDD側シリーズスイッチ50,51の直列に接続された複数のFETを介して伝達する。なお、FDD側シリーズスイッチ50,51に備えられるFETの個数は、FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0027】
また、上記複数のFETのゲートは、FDD側シリーズスイッチ50,51をオン/オフ制御する制御端子GATE_FDD1,GATE_FDD2にそれぞれ第2ゲート抵抗Rgate_fdd1,Rgate_fdd2を介して接続されている。ここで、第2ゲート抵抗Rgate_fdd1,Rgate_fdd2は、概ね同じ抵抗値(たとえば数百KΩ程度)を有することが好ましい。制御端子GATE_FDD1,GATE_FDD2には、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0028】
さらに、上記複数のFETのボディは、抵抗を介してBODY_FDD1,BODY_FDD2にそれぞれ接続されている。BODY_FDD1,BODY_FDD2には、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0029】
以上のとおり構成される本実施の形態の高周波スイッチ100では、FDD側シリーズスイッチ50,51の第2ゲート抵抗の抵抗値がTDD側シリーズスイッチ40,41の第1ゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定される。このように構成される本実施の形態の高周波スイッチ100の作用について以下に説明する。
【0030】
本実施の形態の高周波スイッチ100は、TDDポート10,11およびFDDポート20,21のうちの1つと共通ポート30との間で高周波信号の伝達経路を確保する。
【0031】
たとえば、TDDシステムからTDDポート10に入力される高周波信号をアンテナから送信する場合、TDD側シリーズスイッチ40の制御端子GATE_TDD1に正電圧を印加して、TDD側シリーズスイッチ40をオンする。一方、TDD側シリーズスイッチ41の制御端子GATE_TDD2およびFDD側シリーズスイッチ50,51の制御端子GATE_FDD1,GATE_FDD2には負電圧を印加して、TDD側シリーズスイッチ41およびFDD側シリーズスイッチ50,51をオフする。
【0032】
その結果、TDDポート10と共通ポート30との間が導通する一方で、TDDポート11と共通ポート30およびFDDポート20,21と共通ポート30との間は遮断される。したがって、TDDポート10と共通ポート30との間で高周波信号の伝達経路が確保され、TDDシステムからTDDポート10に入力される送信信号は、共通ポート30を介してアンテナに伝達する。
【0033】
以上ではTDDポート10と共通ポート30との間で高周波信号の伝達経路を確保する場合について説明した。TDDポート11およびFDDポート20,21についても、TDD側シリーズスイッチ40,41およびFDD側シリーズスイッチ50,51をオン/オフ制御することにより、共通ポート30との間で高周波信号の伝達経路を確保することができる。したがって、TDDポート10,11およびFDDポート20,21のうちのいずれかに接続されているTDDシステムまたはFDDシステムと共通ポート30に接続されているアンテナとの間で高周波信号を送信または受信することができる。以下、TDD側シリーズスイッチ40,41およびFDD側シリーズスイッチ50,51の動作特性についてより詳しく説明する。
【0034】
一般にTDDシステムでは、通信チャネルを時間的に細かく区分し、各々の時間区分において送信または受信する。したがって、TDDシステムでは送信と受信とを高速に切り替えるため、TDD側シリーズスイッチ40,41に備えられるFETには、良好なスイッチング速度特性が要求される。
【0035】
スイッチング速度特性は、FETに接続されるゲート抵抗の抵抗値に依存する。具体的には、スイッチング速度特性は、ゲート抵抗の抵抗値とゲートの容量値とで決まる時定数が小さいほど高速になる。したがって、ゲートの容量値が一定であるとすれば、ゲート抵抗の抵抗値が小さいほどスイッチング速度は高速になる。本実施の形態では、TDD側シリーズスイッチ40,41の第1ゲート抵抗の抵抗値は、たとえば、TDDシステムの送受信の切替え速度についての仕様を満たすように設定される。
【0036】
一方、FDDシステムでは、TDDシステムのように送信と受信とを高速に切り替える必要がないので、FDDシステムにおけるスイッチング速度は、TDDシステムにおけるスイッチング速度よりも遅くすることができる。したがって、FDD側シリーズスイッチ50,51の第2ゲート抵抗の抵抗値は、TDD側シリーズスイッチ40,41の第1ゲート抵抗の抵抗値よりも大きくすることが可能である。第2ゲート抵抗の抵抗値が大きな値に設定されることにより、FETのゲート電流が小さくなるので、FDD側シリーズスイッチ50,51における挿入損失特性が改善する。その結果、送信回路の送信パワーアンプの消費電力が低減する。本実施の形態では、FDDシステムにおけるスイッチング速度の制約の範囲内で第2ゲート抵抗の抵抗値を大きく設定することにより挿入損失特性を改善している。
【0037】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
【0038】
(a)本実施の形態の高周波スイッチによれば、TDD側シリーズスイッチのスイッチング速度特性を良好に維持しつつ、FDD側シリーズスイッチの挿入損失特性を改善することができる。その結果、マルチモードシステムにおいて送信回路の送信パワーアンプの消費電力を低減することができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、FDD側シリーズスイッチの第2ゲート抵抗の抵抗値がTDD側シリーズスイッチの第1ゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定された。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に加えてTDD側シャントスイッチおよびFDD側シャントスイッチを有し、FDD側シャントスイッチの第4ゲート抵抗の抵抗値がTDD側シャントスイッチの第3ゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定される。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施の形態における高周波スイッチの回路図である。図2に示すとおり、本実施の形態の高周波スイッチ200は、TDDポート110、FDDポート120、共通ポート130、TDD側シリーズスイッチ140、FDD側シリーズスイッチ150、TDD側シャントスイッチ160、およびFDD側シャントスイッチ170を有する。
【0041】
TDDポート110、FDDポート120、共通ポート130、TDD側シリーズスイッチ140、およびFDD側シリーズスイッチ150については、第1の実施の形態と同様の構成を有するので詳しい説明を省略する。
【0042】
TDD側シャントスイッチ160は、第1シャントスイッチとして、TDDポート110とグランドとの間を導通または遮断する。TDD側シャントスイッチ160は、第1ポート110とグランドとの間に接続されている。TDD側シャントスイッチ160は、少なくとも1つのFETを備えており、上記FETのゲートに接続される第3ゲート抵抗への印加電圧に応じて、TDDポート110とグランドとの間を導通または遮断する。
【0043】
図2に示す本実施の形態では、TDD側シャントスイッチ160は、複数のFETを備え、それら複数のFETのソース/ドレインが直列に接続されている。本実施の形態では、TDD側シャントスイッチ160のFETは、たとえばボディコンタクト型FETである。したがって、TDD側シャントスイッチ160がオンされると、TDDポート110を介して入力または出力される高周波信号は、TDD側シャントスイッチ160の直列に接続された複数のFETを介してグランドに伝達する。その結果、不要な漏洩電力がグランドに吸収されるので、TDD側におけるアイソレーション特性が改善する。
【0044】
なお、TDD側シャントスイッチ160に備えられるFETの個数は、FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0045】
また、上記複数のFETのゲートは、TDD側シャントスイッチ160をオン/オフ制御する制御端子GATE_TDD_SHに第3ゲート抵抗Rgate_tdd_shを介して接続されている。ここで、第3ゲート抵抗は、第1ゲート抵抗と概ね同じ抵抗値を有することが好ましい。制御端子GATE_TDD_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0046】
さらに、上記複数のFETのボディは、抵抗を介してBODY_TDD_SHに接続されている。BODY_TDD_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0047】
FDD側シャントスイッチ170は、第2シャントスイッチとして、FDDポート120とグランドとの間を導通または遮断する。FDD側シャントスイッチ170は、第2ポート120とグランドとの間に接続されている。FDD側シャントスイッチ170は、少なくとも1つのFETを備えており、FETのゲートに接続される第4ゲート抵抗への印加電圧に応じて、FDDポート120とグランドとの間を導通または遮断する
図2に示す本実施の形態では、FDD側シャントスイッチ170は、複数のFETを備えており、それら複数のFETのソース/ドレインが直列に接続されている。本実施の形態では、FDD側シャントスイッチ170のFETは、たとえばボディコンタクト型FETである。したがって、FDD側シャントスイッチ170がオンされると、FDDポート120を介して入力または出力された高周波信号は、FDD側シャントスイッチ170の直列に接続された複数のFETを介してグランドに伝達する。その結果、不要な漏洩電力がグランドに吸収されるので、FDD側におけるアイソレーション特性が改善する。
【0048】
なお、FDD側シャントスイッチ170に備えられるFETの個数は、FETの電気的な耐圧特性を考慮して決定される。
【0049】
また、上記複数のFETのゲートは、FDD側シャントスイッチ170をオン/オフ制御する制御端子GATE_FDD_SHに第4ゲート抵抗Rgate_fdd_shを介して接続されている。ここで、第4ゲート抵抗は、第2ゲート抵抗と概ね同じ抵抗値を有することが好ましい。制御端子GATE_FDD_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0050】
さらに、上記複数のFETのボディは、抵抗を介してBODY_FDD_SHに接続されている。BODY_FDD_SHには、±数ボルト程度の電圧が印加されうる。
【0051】
以上のとおり構成される本実施の形態の高周波スイッチ200では、FDD側シリーズスイッチ150の第2ゲート抵抗の抵抗値がTDD側シリーズスイッチ140の第1ゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定され、FDD側シャントスイッチの第4ゲート抵抗の抵抗値がTDD側シャントスイッチの第3ゲート抵抗の抵抗値よりも大きく設定される。
【0052】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、第1の実施の形態における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0053】
(b)本実施の形態の高周波スイッチによれば、TDD側シャントスイッチのスイッチング速度特性を良好に維持しつつ、FDD側シャントスイッチの挿入損失特性を改善することができる。その結果、マルチモードシステムにおいて送信回路の送信パワーアンプの消費電力が低減する。
【0054】
以上のとおり、実施の形態において、本発明の高周波スイッチを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0055】
たとえば、第1の実施の形態では、高周波スイッチが2つのTDD側シリーズスイッチおよび2つのFDD側シリーズスイッチを有する場合について説明した。また、第2の実施の形態では、高周波スイッチがTDD側シリーズスイッチ、FDD側シリーズスイッチ、TDD側シャントスイッチ、およびFDD側シャントスイッチをそれぞれ1つずつ有する場合について説明した。しかしながら、高周波スイッチが有する上記スイッチの個数は限定されるものではない。
【0056】
また、第1および第2の実施の形態では、FETとしてボディコンタクト型FETを使用する場合について説明した。しかしながら、本発明は、ボディコンタクト型FETに限定されず、フローティングボディ型FETに対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10,11 TDDポート(第1ポート)、
20,21 FDDポート(第2ポート)、
30 共通ポート、
40,41 TDD側シリーズスイッチ(第1シリーズスイッチ)、
50,51 FDD側シリーズスイッチ(第2シリーズスイッチ)、
100 高周波スイッチ。
図2
図1