(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は回転軸の正転時における地盤改良装置の斜視図、
図2は回転軸の逆転時における地盤改良装置の斜視図、
図3は作動部材の斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、地盤改良装置は、駆動制御装置(図示せず)によって、昇降可能に鉛直に支持されるとともに、軸周り(水平方向)に正逆回転可能な回転軸1と、回転軸1の下端から上端へ向かって、掘削翼2と共回り防止翼3と複数の撹拌翼4,5とが、回転軸1の所定間隔おきに、水平方向に向けてそれぞれ突設されている。
【0019】
回転軸1の内部は筒状に形成され、セメントミルクなどの固化材が流れるための流路(図示せず)を備え、下端部には固化材の吐出口(図示せず)が設けられている。
【0020】
掘削翼2は、回転軸1とともに回転するように、回転軸1が回転する半径方向に向けて、回転軸1の外周面に突設されている。また、回転軸1には複数の掘削ビッド2a、2aが配設され、地盤を効率的に掘削できるようにするため、正転方向に対して前端を下方に傾斜した状態で配置されている。
【0021】
共回り防止翼3は、一対の板状部3aと湾曲部3bとをそれぞれ有し、回転軸1に固定して取り付けられた取付部1aに、回転軸1に湾曲部3b、3bを挟み込むようにして取り付け、湾曲部3bの端部から垂直に立設した立設部3c、3cをお互いにネジ止めしてつなぎ合わせ、全体として直線上になるように形成されるとともに、回転軸1に対して回転自在に構成されている。また、共回り防止翼3の翼長は、回転軸1の軸周りの径が掘削翼2による掘削径よりも大きくなるように、掘削翼2の翼長よりも長く形成されている。すなわち、共回り防止翼3は、掘削翼2よりも幅広であり、かつ、掘削時(正転時)には回転しないため、共回り防止翼3の先端部が地盤に食い込み、地盤中で静止した状態になる。そうすることにより、静止した供回り防止翼3に、掘削土、固化材又はこれらの混合物(以下、「混合土」という。)が当たり、団子状になった混合土をある程度分離することができるので、混合土が掘削翼2や撹拌翼4,5と一緒に回転する、いわゆる共回り現象を回避することができる。
【0022】
撹拌翼4、5は、回転軸1とともに回転するように、回転軸1が回転する半径方向に向けて、回転軸1の外周面に突設されていて、掘削翼2と同一方向に回転するようになっている。また、撹拌翼4、5は、その翼長が掘削翼2の翼長以下になるように板状に形成されるとともに、効率的に撹拌するために、正転方向に対して前端を下方に傾斜した状態で配設されている。
【0023】
本発明による地盤改良装置は、上記の一般的な構成に、回転軸1を逆転させたときに供回り防止翼3を逆転させる作動部材6を、掘削翼2に形成したものである。なお、特許請求の範囲に記載された発明特定事項と、本実施形態の発明特定事項との関係においては、第一翼は掘削翼2に、第二翼は供回り防止翼3にそれぞれ対応している。
【0024】
作動部材6は、掘削翼2の上面に着脱可能に取り付けられ、対向する一対の立設部61a、61aを有する基台部61と、基台部61の立設部61a、61aに回転自在に軸支された回転部62と、一端部に回転部62が配設され、他端部が回転部62の回転に伴って揺動する揺動アーム63と、揺動アーム63の他端部の移動範囲が、供回り防止翼3に係合可能な位置と、供回り防止翼3に係合しない位置とを含むように、回転部62の回転を所定の範囲内に規制する回転阻止部64,65とを有する。
【0025】
より具体的には、
図3に示すように、作動部材6は、対向する一対の立設部61a、61aを有し、掘削翼2の上面に着脱可能に取り付けられた基台部61と、基台部61の立設部61a、61aに回転自在に軸支された回転部62と、掘削土、固化材又は掘削土と固化材とが混合した混合土の土圧を受ける土圧受け面63a、63bを有し、一端部に回転部62が配設され、他端部が回転部62の回転に伴って、回転部62を中心とした回転移動によって揺動する揺動アーム63と、揺動アーム63の他端部が、回転軸1の逆転時には共回り防止翼3が回転する領域内に移動することによって共回り防止翼3に係合可能な位置から、回転軸1の正転時には供回り防止翼3が回転する領域外に移動することによって供回り防止翼3に係合しない位置までの範囲内に回転部62の回転を規制する回転阻止部64,65とを有する。
【0026】
基台部61は、略コ字状に形成され、底部とこの底部の左右端部から上方へ延設させた一対の立設部61a、61aとからなり、底部上面には凸状の係合突起部61bが形成されている。この係合突起部61bは、回転阻止部64,65とともに回転部62の回転を所定の範囲に規制する回転阻止部としての機能を有する。揺動アーム63は、上部側に切り掛け部を有した、平面視において略台形状に形成され、混合土の土圧を受ける土圧受け面63a、63bと側面部とをそれぞれ有し、側面部からは板状の土圧受け部66がそれぞれ反対方向に突設されている。また、揺動アーム63の下端部の両側面からは、回転部62、62がそれぞれ突設され、基台部61の立設部61a、61aにそれぞれ回転自在に軸支されている。回転阻止部64は、揺動アーム63の下端部から左斜め方向に傾斜した状態で一体的に突設されている。回転阻止部65は、揺動アーム63の右下端部に隣り合わせて接するようにして揺動アーム63と同一方向に向けて一体的に配設されている。したがって、揺動アーム63、回転阻止部64及び回転阻止部65は、回転部62の回転に伴って回転部62を中心とした回転移動を行う。
【0027】
回転部62は、土圧受け面63a、63bや土圧受け部66に、混合土の土圧を受けることによって回転する。回転部62が回転すると、回転阻止部64,65も回転部62を中心とした回転移動を行う。回転阻止部64,65は、係合突起部61bにそれぞれ係止することにより、回転部62の回転が停止する。その結果、回転阻止部材65が係合突起部61bに係止した状態(
図3(a))から、回転阻止部64が係合突起部61bに係止した状態(
図3(b))までの範囲内に回転部62の回転が規制される。このように所定の範囲内に回転部62の回転が規制されることによって、揺動アーム63の先端は、共回り防止翼3に係合可能となる共回り防止翼3が回転する領域内(
図2)から、共回り防止翼3が回転する領域外(
図1)までの範囲を移動する。したがって、揺動アーム63は、混合土の土圧のみによって、供回り防止翼3に係合可能な位置から係合しない位置までの範囲を移動できるようになっている。なお、この回転阻止部64,65は、基台部61の立設部61a、61aの間の空間に入り込んだ混合土を掻き分ける掻き出し部としての機能も有する。
【0028】
このように構成された地盤改良装置によって軟弱地盤を改良するには、まず、掘削しようとする地盤の地表面から、回転軸1を正転させながら降下させ、地盤を掘り進めるとともに、吐出口から固化材を吐出させながら、掘削土との撹拌を同時に行う。そして、設計深度に到達すれば、固化材の吐出を中止し、正転のまま地表付近にまで引き上げる(
図5(a)〜
図5(d)参照)。
【0029】
その際、回転軸1の正転時には、混合土が正転方向に回転しながら撹拌されつつ、掘削翼2や回転軸1の容積分が押し上げられつつ、正転方向に回転する。土圧受け面63bに回転軸1の回転方向とは逆方向(逆転方向)に混合土の土圧が加わることにより、揺動アーム63は逆転方向に対して先端が傾斜した状態(基台部61に対しては垂直に起き上がった状態)に傾倒する(
図3(a))。そして、揺動アーム63が傾倒することにより、回転阻止部65も回転移動するが、回転阻止部65が係合突起部61bに係合して回転が止まる。そのときの揺動アーム63の高さ位置は、供回り防止翼3の高さ位置よりも低いため、供回り防止翼3に係合することがないから、供回り防止翼3が回転することはない(
図2)。このように、回転軸1の正転時には、供回り防止翼3は回転軸1の回転とともには回転せず、混合土の中で静止するので、地表から掘削径Aと地盤改良装置を見た場合には、供回り防止翼3が、掘削翼2による掘削径Aから飛び出した状態となっている(
図6参照)。
【0030】
次に、もう一度、同様に回転軸1を正転方向に回転させながら降下させ、所望の深度に達すれば、回転軸1を逆転させる。そうすると、土圧受け面63aと土圧受け部66は逆方向(正転方向)の土圧を受けて、揺動アーム63は鉛直上向きに起き上がった状態(基台部61に対しては正転方向に先端が傾斜した状態)に傾倒し、回転阻止部64が係合突起部61bに係合して静止する(
図3(b))。この状態で回転軸1を逆転し続けると、揺動アーム63は供回り防止翼3に当接することにより係合し、又は混合土を介して供回り防止翼3に係合し、供回り防止翼3が回転し始める(
図1)。そうすると、掘削翼2では掘削されなかった、供回り防止翼3の翼長と掘削翼2の翼長との差分の地盤が、回転軸1の半径方向に拡大して掘削される。そして、供回り防止翼3の回転が半周以上すれば、供回り防止翼3の翼長と掘削翼2の翼長との差分と、供回り防止翼3の高さ分(回転軸1を上下動させればその移動距離分も含まれる。)の掘削径が一周分拡大し、節付き円柱体を形成することができる(
図5(e))。
【0031】
その後、回転軸1を正転に戻すと、揺動アーム63は
図3(a)の状態に戻り、供回り防止翼3の回転が静止する。
【0032】
この一連の作業を回転軸1の軸方向に所定の間隔をおいて何度か繰り返すと、複数の節部を有する円柱体を形成することができる(
図5(f))。
【0033】
なお、第1実施形態では、掘削翼2と供回り防止翼3との間には撹拌翼4が存在しないことを前提としたもので、撹拌翼4が、供回り防止翼3の下方であって、掘削翼2の上方に設けられていれば、作動部材6は掘削翼2ではなく撹拌翼4に取り付けられることになる。
【0034】
また、作動部材6又は7は、ネジ止めして着脱自在に取り付けられる必要はなく、掘削翼2に固定して取り付けられてもよい。
【0035】
なお、掘削翼2と供回り防止翼3と撹拌翼4、5とは、水平方向、すなわち回転軸1の回転半径方向に取り付けられる必要はなく、それぞれが重なり合うことがなければ、例えば平面視において、回転軸1を中心としたV字状の翼に形成されていてもよい。また、作動部材は、
図3のようなものである必要はなく、例えば、
図4のように、基台部71に
図3のような係合突起部61bを設けないで、回転阻止部74、75が基台部71の一部に係合できるようにして、揺動アーム73の移動を所定の範囲に制限させるようにしてもよい。また、請求項に記載された第二翼は、請求項に記載された要件を満たせば、供回り防止翼である必要はない。なお、これらは他の実施形態においても同様に適用されることから、以下、その説明を省略する。
【0037】
次に本発明の第2実施形態について説明するが、本第2実施形態の構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものは、各部分に同一の符号を付して構成の説明を省略し、第1実施形態と相違する点を中心に以下に説明する。
【0038】
図7は回転軸1の正転時における地盤改良装置の斜視図、
図8は回転軸1の逆転時における地盤改良装置の斜視図であり、
図9は作動部材の斜視図である。
図7及び
図8に示すように、本発明の第2実施形態では、作動部材8が撹拌翼4に取り付けられたものである。なお、特許請求の範囲に記載された発明特定事項と、本実施形態の発明特定事項との関係においては、第一翼は撹拌翼4に、第二翼は供回り防止翼3にそれぞれ対応している。
【0039】
作動部材8は、撹拌翼4の下面に着脱可能に取り付けられ、対向する一対の立設部81a、81aを有する基台部81と、立設部81a、81aに回転自在に軸支された回転部82と、一端部に回転部82が配設され、他端部が回転部82の回転に伴って、回転部82を中心とした回転移動を行う揺動アーム83と、両立設部81a、81a間に、回転部82と平行に設けられた高さの異なる回転阻止部81b、81cとを有する。
【0040】
より具体的には、
図9に示すように、作動部材8は、対向する一対の立設部81a、81aを有し、撹拌翼4の下面に着脱可能に取り付けられた基台部81と、基台部81の立設部81a、81aに回転自在に軸支された回転部82と、掘削土、固化材又は掘削土と固化材とが混合した混合土の土圧を受ける土圧受け面83a、83bを有し、一端部に回転部82が配設され、他端部が回転部82の回転に伴って、回転部82を中心とした回転移動によって揺動する揺動アーム83と、揺動アーム83の他端部が、回転軸1の逆転時には共回り防止翼3が回転する領域内に移動することによって共回り防止翼3に係合可能な位置と、回転軸1の正転時には供回り防止翼3が回転する領域外に移動することによって供回り防止翼3に係合しない位置との範囲内に回転部82の回転を規制する回転阻止部81b、81cとを有する。
【0041】
回転部82は、土圧受け面83a、83bに、混合土の土圧を受けることによって回転する。回転部82が回転すると、回転阻止部81b、81cも回転部82を中心とした回転移動を行う。揺動アーム83は、回転阻止部81b、81cにそれぞれ係止することにより、回転軸82の回転が停止する。その結果、揺動アーム83が係合突起部81bに係止した状態(
図9(a))から、揺動アーム83が係合突起部81cに係止した状態(
図9(b))までの範囲内に回転部82の回転が規制される。このように所定の範囲内に回転部82の回転が規制されることによって、揺動アーム83の先端は、共回り防止翼3に係合可能となる共回り防止翼3が回転する領域内(
図8)から、共回り防止翼3が回転する領域外(
図7)までの範囲を移動する。したがって、揺動アーム83は、混合土の土圧のみによって、供回り防止翼3に係合可能な位置から係合しない位置を移動できるようになっている。
【0042】
このように構成された地盤改良装置によって軟弱地盤を改良する工程は、第1実施形態と同様であることから、作動部材8の動作のみを説明し、その他の説明は省略する。
【0043】
回転軸1を正転させると、土圧受け面83bに回転軸1の回転方向とは逆方向(逆転方向)の混合土の土圧が加わることにより、揺動アーム83の先端は回転軸1を逆転させた方向に傾斜して起き上がり、揺動アーム83の回転部82付近の他端部は回転阻止部81bに係合して回転が止まる。そのときの揺動アーム83の高さ位置は、供回り防止翼3の高さ位置よりも高いため、供回り防止翼3に係合することがなく、供回り防止翼3が回転することはない(
図7参照)。
【0044】
一方、
図8に示すように、回転軸1を逆転させると、土圧受け面83aに逆方向(正転方向)の土圧を受けて、揺動アーム83は垂直下方に垂れ下がった状態となり、回転阻止部81cに係合して静止する。この状態で回転軸1を逆転し続けると供回り防止翼3に当接することにより係合し、又は混合土を介して係合し、供回り防止翼3が回転し始める。そうすると、掘削翼2により掘削されなかった、供回り防止翼3の翼長と掘削翼2の翼長との差分の地盤が、回転軸1の半径方向に拡大して掘削される。そして、供回り防止翼3の回転が半周以上すれば、供回り防止翼3の翼長と掘削翼2の翼長との差分と、供回り防止翼3の高さ分(回転軸1を上下動させればその移動距離分も含まれる。)だけ掘削径が一周分拡大し、節付きの円柱体を形成することができる。
【0045】
なお、作動部材は、
図9に示したものでなく、
図3又は
図4に示したものであってもよい。また、作動部材は、掘削翼2に固定して取り付けられてもよい。また、揺動アーム83には、
図3に示す土圧受け部66のような土圧受け部を設けてもよい。さらに、作動部材は、撹拌翼4の下面に取り付けられる必要はなく、中空円盤状に形成し、撹拌翼4を回り囲むようにして、撹拌翼4の先端から挿入させ、所定の位置で固定させてもよい。なお、これらは、第3実施形態においても同様に適用されることから、以下、その説明を省略する。
【0046】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明するが、本第3実施形態の構成のうち、第2実施形態の構成と同一のものは、各部分に同一の符号を付して構成の説明を省略し、第2実施形態と相違する点を中心に以下に説明する。
【0047】
図10は回転軸1の正転時における地盤改良装置の斜視図、
図11は回転軸1の逆転時における地盤改良装置の斜視図であり、これらの図に示すように、本発明の第2実施形態では、作動部材が回転軸1に取り付けられたものである。なお、特許請求の範囲に記載された発明特定事項と、本実施形態の発明特定事項との関係においては、第一翼は掘削翼2又は撹拌翼4に、第二翼は供回り防止翼3にそれぞれ対応している。
【0048】
図10、
図11に示すように、作動部材9は、撹拌翼4の翼長よりも小径な板状部材91を回転軸1の所定の位置に取付部材92により着脱可能に取り付けられるとともに、板状部材91の下面に第2実施形態における作動部材8と同一の構成のものが取り付けられたものである。したがって、第2実施形態と構成と同一のものは、各部分に同一の符号を付して構成の説明を省略する。また、このように構成された地盤改良装置によって軟弱地盤を改良する工程についても、第2実施形態と同様であることから、説明を省略する。
【0049】
なお、作動部材9の回転軸1への取付位置が供回り防止翼3と掘削翼2との中間であってもよく、その場合は、取付方向が上下逆になる。また、作動部材9は、
図10及び
図11に示したものでなく、
図3又は
図4に示したものであってもよい。
【解決手段】回転阻止部65が係合突起部61bに係合する位置から、回転阻止部64が係合突起部61bに係合する位置までの範囲内に、回転部62の回転が規制されることにより、揺動アーム63の先端は、共回り防止翼3が回転する領域の内側と外側との範囲を移動することができる。これにより、揺動アーム63は、混合土の土圧によって、供回り防止翼3に係合可能な位置から係合しない位置までの範囲内を移動することができる。