特許第5653075号(P5653075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5653075-前面パネル装置 図000002
  • 特許5653075-前面パネル装置 図000003
  • 特許5653075-前面パネル装置 図000004
  • 特許5653075-前面パネル装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653075
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】前面パネル装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/02 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   G11B33/02 503Q
   G11B33/02 503W
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-119537(P2010-119537)
(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公開番号】特開2011-248946(P2011-248946A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2013年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 康司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 公徳
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273029(JP,A)
【文献】 特開2004−110923(JP,A)
【文献】 特開2000−076838(JP,A)
【文献】 特開2002−104088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部または下端部に設けられた回動支軸を支点として開閉方向に回転可能な表示パネルと、一端部が前記回動支軸から上下方向に離れた位置で前記表示パネルに回動可能に連結され、この表示パネルの開閉動作に連動して前後進する付勢レバーと、この付勢レバーの他端部に連結されて該付勢レバーの前後進動作に連動して回転する駆動ギヤと、この駆動ギヤに噛合して回転する中継ギヤと、前記表示パネルの前記回動支軸を昇降可能に支持する支点昇降手段とを備え、
前記支点昇降手段が前記中継ギヤに連結されており、前記駆動ギヤが前記表示パネルの開閉動作に連動して回転すると共に、この駆動ギヤに連動して前記中継ギヤが回転することにより、この中継ギヤが前記支点昇降手段を駆動して前記回動支軸を昇降させるように構成したことを特徴とする前面パネル装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記付勢レバーを前進方向に弾性付勢するばね部材と、この付勢レバーの前進力に抗して前記表示パネルを閉状態にロック/ロック解除するロック機構とを備えていることを特徴とする前面パネル装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記駆動ギヤに回転レバーが設けられており、前記付勢レバーの前記表示パネルと逆側の端部が前記回転レバーに回動可能に連結されていることを特徴とする前面パネル装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記回動支軸が前記表示パネルの上端部に設けられており、この表示パネルの開動作に連動して前記支点昇降手段が前記回動支軸を下降させるように構成したことを特徴とする前面パネル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記支点昇降手段が前記中継ギヤに噛合して昇降可能なラック部材であり、このラック部材が前記回動支軸に連結されていることを特徴とする前面パネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な表示パネルを備えた前面パネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用の音響機器等においては、液晶表示装置(LCD)等の表示画面が配設された表示パネルを機器本体の前面に配置し、通常は表示パネルで覆われているメディア挿入口等を必要時だけ露出させるようにした前面パネル装置が広く採用されている。この種の前面パネル装置では、可動ノーズと称される表示パネルが全閉状態と全開状態との間で回転移動できるようになっており、通常時は表示画面の画像を見るために、表示パネルは起立姿勢の全閉状態に保持されている。また、表示パネルに覆われているメディア挿入口等を露出させる場合は、モータの駆動力等によって表示パネルを開方向へ回転移動させるようになっている。
【0003】
従来より、このような前面パネル装置においては、表示パネルの下端部の左右両側に回動支点を設けたものと、表示パネルの上端部の左右両側に回動支点を設けたものが知られている。回動支点が表示パネルの下端部に設けられている場合は、開動作時に表示パネルの上端部が前倒するように下向きに回転移動し、閉動作時に前倒した表示パネルが起立するように上向きに回転移動する(例えば、特許文献1参照)。これとは逆に回動支点が表示パネルの上端部に設けられている場合は、開動作時に表示パネルの下端部が迫り出すように上向きに回転移動し、閉動作時に開状態の表示パネルが下向きに回転移動する(例えば、特許文献2参照)。いずれの場合においても、液晶表示装置等を内蔵する表示パネルは相応の厚みを有する部材であるため、その回動支点を固定したまま表示パネルを回転移動させると、回動支点側の端部が表示パネルを包囲する周辺部材と干渉を起こす可能性がある。
【0004】
このような理由により、通常は、表示パネルの回動支点側の端部とこれに隣接する周辺部材との間に比較的広い隙間を確保することにより、表示パネルの開閉動作時に懸念される周辺部材との干渉を回避するようにしている。例えば、表示パネルの回動支点側の端部とこれに隣接する周辺部材のうちの一方または双方に面取り形状部を設けておけば、両者間に手前側は幅広で奥側は幅狭な隙間(凹陥部)を画成できるため、かかる幅広な隙間によって表示パネルと周辺部材との干渉を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−273029号公報
【特許文献2】特開平4−265081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したように表示パネルの回動支点側の端部とこれに隣接する周辺部材との間に幅広な隙間が露出していると、この隙間が不自然な凹陥部として目立って外観を損ねるという問題があった。特に、前面パネル装置が搭乗者の目線に対して下方位置に存するインパネ等に組み込まれており、その表示パネルの回動支点が上端部に設けられている場合、インパネ等の周辺部材と表示パネルの上端部との間に存する幅広な隙間が斜め上方から搭乗者に目視されやすくなるため、車内装飾の意匠性が大きく損なわれることになる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、表示パネルと周辺部材との干渉を回避しつつ意匠性を高めることができる前面パネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の前面パネル装置は、上端部または下端部に設けられた回動支軸を支点として開閉方向に回転可能な表示パネルと、一端部が前記回動支軸から上下方向に離れた位置で前記表示パネルに回動可能に連結され、この表示パネルの開閉動作に連動して前後進する付勢レバーと、この付勢レバーの他端部に連結されて該付勢レバーの前後進動作に連動して回転する駆動ギヤと、この駆動ギヤに噛合して回転する中継ギヤと、前記表示パネルの前記回動支軸を昇降可能に支持する支点昇降手段とを備え、前記支点昇降手段が前記中継ギヤに連結されており、前記駆動ギヤが前記表示パネルの開閉動作に連動して回転すると共に、この駆動ギヤに連動して前記中継ギヤが回転することにより、この中継ギヤが前記支点昇降手段を駆動して前記回動支軸を昇降させるように構成した。
【0009】
このように構成された前面パネル装置では、駆動ギヤの一方向への回転動作ならびに付勢レバーの前進動作と表示パネルの開動作とを連動させることができると共に、駆動ギヤに回転駆動される中継ギヤが支点昇降手段を駆動することによって、表示パネルの回動支軸を所望方向へ下降あるいは上昇させることができるため、表示パネルの開動作時にその回動支軸側の端部が隣接する周辺部材と干渉する虞がなくなる。すなわち、表示パネルの上端部に回動支軸が設けられている場合には、表示パネルの開動作に連動して支点昇降手段が回動支軸を下降させることによって、表示パネルの上端部をこれに隣接する周辺部材から離隔させることができる。また、表示パネルの下端部に回動支軸が設けられている場合には、その開動作に連動して支点昇降手段が回動支軸を上昇させることによって、表示パネルの下端部をこれに隣接する周辺部材から離隔させることができる。そして、開状態の表示パネルを手動操作で閉方向へ回転移動させるときには、かかる閉動作に連動して付勢レバーの後退動作および駆動ギヤの他方向への回転動作が行われると共に、駆動ギヤに回転駆動される中継ギヤが支点昇降手段を駆動して、表示パネルの回動支軸を前記所望方向とは逆方向へ上昇あるいは下降させることができるため、表示パネルが元の閉状態へ復帰する過程で回動支軸側の端部が隣接する周辺部材と干渉する虞もない。したがって、閉状態において表示パネルの回動支軸側の端部と周辺部材との間の隙間を狭く設定しておくことが可能となり、幅広な隙間に起因する意匠性の悪化を防止することができる。また、表示パネルの開閉動作にモータが不要となり動力伝達機構も複雑にならないため、安価な前面パネル装置を実現することができる。
【0010】
上記の構成において、付勢レバーを前進方向に弾性付勢するばね部材と、この付勢レバーの前進力に抗して表示パネルを閉状態にロック/ロック解除するロック機構とを備えていると、このロック機構に対してロック解除操作を行うことにより、表示パネルをばね部材の付勢力で開方向へ回転移動させることができる。そのため、モータを省略した安価な構成であるにもかかわらず、表示パネルの開動作を手動によらず自動的に行うことができ、操作性が良好な前面パネル装置を実現できる。この場合において、駆動ギヤに回転レバーが設けられており、付勢レバーの表示パネルと逆側の端部がこの回転レバーに回動可能に連結されていると、駆動ギヤを大径化しなくても、駆動ギヤの回動と付勢レバーの前後進とを連動させることができるため、前面パネル装置の小型化が図りやすくなる。
【0011】
また、上記の構成において、支点昇降手段が中継ギヤに噛合して昇降可能なラック部材であり、このラック部材が表示パネルの回動支軸に連結されていると、中継ギヤの回動に伴ってラック部材を精度よく昇降させることができるため、表示パネルの開閉動作に伴って回動支軸を所望の経路に沿って昇降させやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前面パネル装置によれば、駆動ギヤの一方向への回転動作ならびに付勢レバーの前進動作と表示パネルの開動作とを連動させることができると共に、駆動ギヤに回転駆動される中継ギヤが支点昇降手段を駆動することによって、表示パネルの回動支軸を所望方向へ下降あるいは上昇させることができるため、表示パネルの開動作時にその回動支軸側の端部が隣接する周辺部材と干渉する虞がなくなる。また、表示パネルが元の閉状態へ復帰する過程でも、その回動支軸側の端部が隣接する周辺部材と干渉する虞はない。したがって、閉状態において表示パネルの回動支軸側の端部と周辺部材との間の隙間を狭く設定しておくことが可能となり、かかる隙間を不自然に広くして外観を損ねることがなくなり、表示パネルに隣接する周辺部材(例えばインパネ等)のデザインも制約されなくなる。また、表示パネルの開閉動作にモータが不要となり動力伝達機構も複雑にならないため、安価な前面パネル装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施形態例に係る前面パネル装置の表示パネルを閉じた状態を示す外観図である。
図2図1の表示パネルを開いた状態を示す外観図である。
図3図1に対応する全閉状態の前面パネル装置の内部構造を示す説明図である。
図4図2に対応する全開状態の前面パネル装置の内部構造を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態例に係る前面パネル装置について図1図4を参照しつつ説明するこれらの図に示す前面パネル装置1は車室内のインパネ(インストルメント・パネル)に設けられた凹所に組み込まれて使用されるものであり、図2に示すように、前面パネル装置1の表示パネル2を開くことによって収納部3を露出させることが可能になっている。この収納部3には例えば図示せぬ音響機器等の本体装置を組み込むことが可能であり、あるいは収納部3を単なる収納スペースとして利用することも可能である。表示パネル2を包囲する周辺部材20は前面パネル装置1の外装体やエスカッション等として機能する部材であり、この周辺部材20はインパネの外表面に一体的に露出するようになっている。周辺部材20には、表示パネル2用の配置スペースの下側に複数の操作体取付部21が配設されており、これらの操作体取付部21に操作ノブ等の操作体(図示せず)が配置されるようになっている。
【0016】
前面パネル装置1は、開閉方向に回転移動可能な表示パネル2と、表示パネル2の開閉動作に連動する動力伝達機構4と、これら表示パネル2および動力伝達機構4を支持するシャーシ5と、表示パネル2を全閉状態に保持可能なロック機構6とによって主に構成されている。なお、動力伝達機構4は収納部3の左右両側にそれぞれ配設されているが、両者はほぼ同一構造となっているため片側の動力伝達機構4についてのみ説明する。
【0017】
図1に示すように、表示パネル2には液晶表示装置(LCD)が内蔵されており、この液晶表示装置の表示画面2aは表示パネル2の中央部に露出している。また、表示パネル2の下部中央付近にはプッシュ操作可能な操作釦2bが配設されており、この操作釦2bは図示せぬばね部材によって突出方向へ弾性付勢されている。操作釦2bの背面側には係合フック2cが突設されており、収納部3の開口端の下縁部には係合フック2cと係脱可能な係合凹所3aが設けられている。そして、表示パネル2の閉動作に伴って係合フック2cが係合凹所3a内へ押し込まれると、係合フック2cが係合凹所3aに掛止して表示パネル2は閉状態にロックされるが、この状態で操作釦2bがユーザによってプッシュ操作されると、係合フック2cが係合凹所3aから外れて表示パネル2はロック解除状態となる。図3図4に示すように、表示パネル2の上端部の左右両側には回動支軸2dが設けられており、表示パネル2はこれら回動支軸2dを支点として上向き回転(図3における時計回り)の開動作と下向き回転(図4における反時計回り)の閉動作とが可能になっている。また、この表示パネル2は後述する動力伝達機構4を介してシャーシ5に支持されており、具体的には、表示パネル2の裏面側の両側中央部が動力伝達機構4の付勢レバー7に支持されると共に、表示パネル2の上端側の回動支軸2dが動力伝達機構4のラック部材11に支持されている。
【0018】
表示パネル2の開動作は動力伝達機構4によって行われるが、表示パネル2の閉動作は手動によって行われる。そして、表示パネル2が図1図3に示す全閉状態にあるとき、係合フック2cが係合凹所3aに掛止されているため、表示パネル2は開動作が阻止されて全閉状態に保持(ロック)されている。また、かかる全閉状態で操作釦2bがプッシュ操作されると、係合フック2cが係合凹所3aから離脱して表示パネル2はロック解除され、動力伝達機構4がこの表示パネル2を開方向へ回転移動させるようになっている。つまり、操作釦2bと係合フック2cと係合凹所3aとによってロック機構6が構成されており、このロック機構6によって全閉状態の表示パネル2のロック/ロック解除が行われるようになっている。
【0019】
図3図4に示すように、シャーシ5には、直線状に延びる第1ガイド溝5aおよび第2ガイド溝5bと、円弧状に延びる第3ガイド溝5cとが設けられている。第1ガイド溝5aは上下方向に若干傾いて延在しており、この第1ガイド溝5aに表示パネル2の回動支軸2dが摺動自在に挿入されている。第2ガイド溝5bは上下方向に延在しており、この第2ガイド溝5bに動力伝達機構4のラック部材11のガイドピンが摺動自在に挿入されている。また、第3ガイド溝5cには動力伝達機構4の支持レバー13のガイドピンが摺動自在に挿入されている。
【0020】
動力伝達機構4は、一端部7aが表示パネル2の裏面側に回動可能に連結されて前後進可能な付勢レバー7と、シャーシ5に回転可能に軸支された駆動ギヤ8と、この駆動ギヤ8に突設されて付勢レバー7の他端部7bに回転可能に連結された回転レバー9と、シャーシ5に回転可能に軸支されて駆動ギヤ8に噛合する中継ギヤ10と、この中継ギヤ10に噛合すると共に表示パネル2の回動支軸2dを支持している昇降可能なラック部材11と、回転レバー9を介して駆動ギヤ8を図3の時計回り方向へ弾性付勢している駆動ばね12と、シャーシ5に回転可能に軸支されて付勢レバー7の他端部7bを支持している支持レバー13と、この支持レバー13を図3の反時計回り方向へ弾性付勢している支持ばね14とによって主に構成されている。
【0021】
駆動ばね12はトーションばねであり、図4に示すように、駆動ばね12の一方の腕部はシャーシ5のばね受け部5dに掛止され、駆動ばね12の他方の腕部は回転レバー9のばね受け部9aに掛止されている。この駆動ばね12の付勢力によって駆動ギヤ8と回転レバー9が図3の時計回りに回転すると、付勢レバー7が回転レバー9に駆動されて斜め上方へ前進していくため、付勢レバー7の一端部7aに連結された表示パネル2の開動作が行われる。ただし、付勢レバー7の前進力に抗して係合フック2cが係合凹所3aに掛止されているとき、表示パネル2は開動作が阻止されて全閉状態にロックされている。また、表示パネル2が全開状態にあるときに、この表示パネル2を手動で図4の反時計回りに回転させる閉動作が行われると、付勢レバー7が表示パネル2に駆動されて斜め下方へ後退するため、駆動ギヤ8と回転レバー9が付勢レバー7に駆動されて図4の反時計回りに回転していき、それに伴って駆動ばね12は押し撓められていく。
【0022】
前述したように、支持レバー13の図示せぬガイドピンは円弧状の第3ガイド溝5cに摺動自在に挿入されており、シャーシ5に軸支された支持レバー13は第3ガイド溝5cに沿って移動可能である。この支持レバー13は支持ばね14によって図3の反時計回り方向へ弾性付勢されており、付勢レバー7の他端部7bが支持レバー13に摺動自在に支持されている。そして、付勢レバー7が斜め上方へ前進して表示パネル2を開動作させると、支持レバー13は付勢レバー7の他端部7bを支持したまま図3の反時計回りに回転していく。また、表示パネル2の閉動作に伴って付勢レバー7が斜め下方へ後退すると、支持レバー13は付勢レバー7の他端部7bを支持したまま図4の時計回りに回転していく。なお、支持ばね14の付勢力は付勢レバー7を前進させるのに若干寄与しているが、付勢レバー7を前進させる駆動力はほとんど駆動ばね12の付勢力によって生じている。
【0023】
中継ギヤ10は駆動ギヤ8と噛合しているため、駆動ギヤ8が正逆いずれか一方向へ回転すると、中継ギヤ10は駆動ギヤ8と逆向きに回転駆動される。また、中継ギヤ10にラック部材11の歯部が噛合しており、このラック部材11は第2ガイド溝5bに案内されて上下動可能なガイドピンを有している。そのため、駆動ギヤ8が回転すると、ラック部材11は中継ギヤ10に駆動されて上下方向に昇降する。すなわち、表示パネル2の開動作時には駆動ギヤ8が図3の時計回りに回転するため、中継ギヤ10は同図の反時計回りに回転してラック部材11を下降させる。また、表示パネル2の閉動作時には駆動ギヤ8が図4の反時計回りに回転するため、中継ギヤ10が同図の時計回りに回転してラック部材11を上昇させる。
【0024】
ラック部材11の上端近傍にはくの字状に屈曲したガイド孔11aが設けられており、表示パネル2の回動支軸2dがガイド孔11aを貫通してラック部材11に支持されている。したがって、このラック部材11は、中継ギヤ10に駆動されて回動支軸2dを昇降させる支点昇降手段として機能する。表示パネル2の回動支軸2dはガイド孔11aに沿って摺動自在であるが、この回動支軸2dは第1ガイド溝5aにも摺動自在に挿入されているため、ラック部材11の高さ位置に応じて回動支軸2dの位置は一義的に決定される。つまり、ラック部材11が下降するときには、回動支軸2dはラック部材11に駆動されつつ第1ガイド溝5aに沿って下降し、これとは逆にラック部材11が上昇するときには、回動支軸2dはラック部材11に駆動されつつ第1ガイド溝5aに沿って上昇するようになっている。その際、回動支軸2dはガイド孔11a内を摺動しながら第1ガイド溝5aに沿って移動するため、ラック部材11の昇降動作と回動支軸2dの昇降動作とを滑らかに連動させることができる。
【0025】
次に、このように構成された前面パネル装置1の動作について説明する。図1図3に示すように、この前面パネル装置1は収納部3を覆う全閉状態のときにはほぼ起立姿勢に保持されており、搭乗者の目線に対して斜め下方位置で正対するようになっているため、表示パネル2の表示画面2aが搭乗者から見やすくなっている。また、かかる全閉状態の表示パネル2はロック機構6によって開動作が阻止されているため、不用意に表示パネル2が開いてしまう虞はない。
【0026】
表示パネル2を全閉状態から全開状態へ移行させる場合には、ユーザが操作釦2bをプッシュ操作して係合フック2cを係合凹所3aから離脱させることにより、表示パネル2をロック解除する。これにより、駆動ばね12の付勢力で駆動ギヤ8と回転レバー9が図3の時計回りに回転し、付勢レバー7が回転レバー9に駆動されて斜め上方へ前進するため、この付勢レバー7に駆動されて表示パネル2は開動作を開始する。また、駆動ギヤ8に噛合している中継ギヤ10が図3の反時計回りに回転してラック部材11を下降させるため、表示パネル2の回動支軸2dが第1ガイド溝5aに沿って下降していく。このように回動支軸2dを下降させながら表示パネル2の開動作が行われるため、表示パネル2の上方に近接する周辺部材20の隣接部20aに対して回動支軸2dは徐々に離隔することになり、よって表示パネル2と隣接部20aの干渉を懸念することなく表示パネル2を全開位置まで回転移動させるこができる。
【0027】
図2図4は表示パネル2を全開させた状態を示しており、この全開状態において付勢レバー7は最も前進した位置にある。また、かかる表示パネル2の全開状態において、回転レバー9と支持レバー13はそれぞれ回転角度が最大になっており、ラック部材11は最も下方に位置している。そして、かかる全開状態の表示パネル2を閉じる場合には、ユーザが手動で表示パネル2を閉方向へ押し下げればよい。すなわち、表示パネル2が閉方向へ回転移動して係合フック2cが係合凹所3a内へ入り込むと、この係合フック2cが係合凹所3aに掛止されるため、表示パネル2は図1図3に示す全閉状態に保持(ロック)される。また、閉動作中の表示パネル2は付勢レバー7を駆動して斜め下方へ後退させるため、回転レバー9を介して駆動ギヤ8が図4の反時計回りに回転駆動され、それに伴って駆動ばね12が押し撓められていくと共に、支持レバー13が図4の時計回りに回転駆動されて支持ばね14が押し撓められていく。また、駆動ギヤ8に噛合している中継ギヤ10が図4の時計回りに回転してラック部材11を上昇させるため、表示パネル2の回動支軸2dが第1ガイド溝5aに沿って上昇していく。この場合、周辺部材20の隣接部20aに対して回動支軸2dは十分に離隔した位置から徐々に接近していくので、表示パネル2と隣接部20aの干渉を懸念することなく表示パネル2を全閉位置まで回転移動させることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態例に係る前面パネル装置1は、駆動ギヤ8の一方向への回転動作ならびに付勢レバー7の前進動作と表示パネル2の開動作とを連動させることができると共に、駆動ギヤ8に回転駆動される中継ギヤ10がラック部材11を駆動することによって、表示パネル2の回動支軸2dを周辺部材20の隣接部20aから離隔する向きに移動(下降)させることができるため、全閉状態にある表示パネル2が全開状態に向かって回転移動する開動作時に、表示パネル2の回動支軸2d側の端部(上端部)が隣接部20aと干渉する虞はない。また、表示パネル2が全開状態から元の全閉状態へ復帰する過程でも、表示パネル2の回動支軸2d側の端部が周辺部材20の隣接部20aと干渉する虞はない。したがって、全閉状態において表示パネル2の回動支軸2d側の端部と周辺部材20の隣接部20aとの間の隙間を狭く設定しておくことができる(図1参照)。その結果、該隙間が斜め上方から搭乗者に目視されても目立たなくなって外観が良くなり、かつ、表示パネル2に隣接する周辺部材20のデザインも制約されなくなり、車内装飾の意匠性を向上させることができる。また、表示パネル2の開閉動作にモータが不要となり、動力伝達機構4も複雑な構造にはならないため、この前面パネル装置1は安価に製造することができる。
【0029】
また、本実施形態例に係る前面パネル装置1では、駆動ばね12が駆動ギヤ8を弾性付勢して付勢レバー7を前進させることができると共に、この付勢レバー7の前進力に抗して表示パネル2を全閉状態に保持可能なロック機構6を備えているため、このロック機構6に対してユーザがロック解除操作を行うことにより、表示パネル2を駆動ばね12の付勢力で開方向へ回転移動させることができる。それゆえ、モータを省略した安価な構成でありながら、表示パネル2の開動作を手動によらず自動的に行うことができ、操作性が良好な前面パネル装置となっている。しかも、この前面パネル装置1は、駆動ギヤ8に一体化された回転レバー9が付勢レバー7の他端部7bに回転可能に連結されているため、駆動ギヤ8をそれほど大径化しなくても、駆動ギヤ8の回動と付勢レバー7の前後進とを連動させることができ、前面パネル装置1の小型化が図りやすくなっている。
【0030】
なお、上記の実施形態例では、表示パネル2の開動作を駆動ばね12の付勢力で自動的に行うようにしているが、表示パネル2の閉動作だけでなく開動作も手動で行うように構成することも可能であり、その場合は駆動ばね12を省略すればよい。また、支点昇降手段がラック部材11ではない構成にすることも可能であるが、中継ギヤ10に噛合するラック部材11が表示パネル2の回動支軸2dを支持していると、中継ギヤ10の回動に伴ってラック部材11を精度よく昇降させることができるため、表示パネル2の開閉動作に伴って回動支軸2dを所望の経路に沿って昇降させやすくなる。
【0031】
また、上記の実施形態例では、表示パネル2の上端側に回動支軸2dを設けることにより、開動作時に表示パネル2が上向きに回転移動する前面パネル装置について説明したが、表示パネルの下端側に回動支軸を設けることにより、開動作時に表示パネルが下向きに回転移動する前面パネル装置であっても、本発明を適用することによって同様の効果が期待できる。すなわち、前面パネル装置がユーザの目線に対して上方位置に設置され、かつ表示パネルの下端側に回動支軸が設けられている場合、表示パネルの下端部とその下側の周辺部材との間の隙間が広いと目立ってしまう。そこで、この場合は、表示パネルの開動作に連動して回動支軸を上昇させることのできる動力伝達機構を採用し、表示パネルの下端部とそれに隣接する周辺部材との干渉を回避することによって、両者間の隙間を狭く設定することができる。なお、この場合の動力伝達機構は、図3図4に示す動力伝達機構4を上下逆転させたような構造でよい。
【符号の説明】
【0035】
1,15 前面パネル装置
2 表示パネル
2a 表示画面
2b 操作釦
2c 係合フック
2d 回動支軸
3 収納部
3a 係合凹所
4 動力伝達機構
5 シャーシ
5a 第1ガイド溝
5b 第2ガイド溝
6 ロック機構
7 付勢レバー
8 駆動ギヤ
9 回転レバー
10 中継ギヤ
11 ラック部材(支点昇降手段)
11a ガイド孔
12 駆動ばね(ばね部材)
13 支持レバー
16 揺動レバー(支点昇降手段)
20 周辺部材
20a 隣接部
図1
図2
図3
図4