(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第2の気流分散部材は、傾斜部を有し、その傾斜部の山側を上記第2の整風板の上端部、谷側を上記第2の整風板の下端部に向けた状態で、上記第2の整風板の上端部の中央付近に設けられていることを特徴とする請求項5記載のエレベータ装置。
上記第2の気流分散部材は、傾斜部を有し、その傾斜部の山側を上記第2の整風板の下端部、谷側を上記乗りかごの上端部に向けた状態で、上記第2の整風板の下端部の中央付近に設けられていることを特徴とする請求項5記載のエレベータ装置。
上記昇降路内を上記乗りかごと逆方向に昇降動作するカウンタウェイトの上端部の上記乗りかごと対向する面と上記カウンタウェイトの下端部の上記乗りかごと対向する面のそれぞれに設けられ、上記カウンタウェイトが上記乗りかごとのすれ違うときに上記乗りかごとの対向面に流れ込む気流を分散するための厚みを有する少なくとも1つの第3の気流分散部材をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ装置。
上記昇降路内の各階の乗場に設置されたホールドアの上記乗りかごと対向する面に設けられ、上記乗りかごが狭隘部を通過するときに上記乗りかごの正面に流れ込む気流を分散するための厚みを有する少なくとも1つの第4の気流分散部材をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ装置。
上記昇降路内の各階の乗場に設置されたホールドアを支えるホールシルの上記乗りかごと対向する面に設けられ、上記乗りかごが狭隘部を通過するときに上記乗りかごの正面に流れ込む気流を分散するための厚みを有する少なくとも1つの第5の気流分散部材をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ装置。
上記第1の整風板の上下両端部の少なくとも一方の端部の上記乗りかごの正面側に設けられ、上記乗りかごが狭隘部を通過するときに上記乗りかごの正面に流れ込む気流を整流化するための気流を発生させる少なくとも1つの第1の気流発生装置をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ装置。
上記第2の整風板の上下両端部の少なくとも一方の端部の上記乗りかごの正面側に設けられ、上記乗りかごが狭隘部を通過するときに上記乗りかごの正面に流れ込む気流を整流化するための気流を発生させる少なくとも1つの第2の気流発生装置をさらに具備したことを特徴とする請求項5記載のエレベータ装置。
上記カウンタウェイトの上端部の上記乗りかごと対向する面と上記カウンタウェイトの下端部の上記乗りかごと対向する面のそれぞれに設けられ、上記カウンタウェイトが上記乗りかごとのすれ違うときに上記乗りかごとの対向面に流れ込む気流を整流化するための気流を発生させる少なくとも1つの第3の気流発生装置をさらに具備したことを特徴とする請求項10記載のエレベータ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、エレベータの走行時における空力騒音(バフ音)の発生メカニズムについて、低〜高速のエレベータを例にして詳しく説明する。
【0014】
低〜高速のエレベータでは、箱型形状を有する乗りかごの下端部の乗場側に、通称「エプロン」と呼ばれる整風板が取り付けられている。このエプロンは、乗場のホールシルとかごドアとの間の隙間から物が落下することを防止すると共に、乗りかごの正面に流れ込む気流を整流化する作用を併せ持つものである。
【0015】
このような形状を有する低〜高速のエレベータについて、走行時に発生する空力騒音をかご位置を計測しながら観測した結果を
図1に示す。
図1において、横軸は時間、縦軸は騒音の大きさを表している。乗りかごを所定速度で下降させると、エプロンの下端部分がホールシルなどの狭隘部に差し掛かった瞬間に、大きな圧力変動が生じて空力騒音が発生することが明らかになった(図中の矢印参照)。
【0016】
ここで、エレベータの走行時におけるかご周辺の空気の流れを数値流体解析(CFD:Computational Fluid Dynamics)により調べた結果を
図2,
図3に示す。図中の1は乗りかご、2はエプロン、3は昇降路内の狭隘部である。乗りかご1が下降方向に走行中に、エプロン2の下端部が狭隘部3に差し掛かったときに、エプロン2の下端部分で空気の流れが堰き止められ、急激な巻き込み流が発生する。これが大きな圧力変動を生じさせることによって空力騒音や振動が発生する。
【0017】
エレベータや自動車の走行時に発生する空力騒音は、走行によって乱された気流中に存在する渦の非定常運動に起因して発生し、走行速度の増加に伴って急激に増大する。こうした空力騒音は、流体の基礎方程式であるナビエ・ストークス方程式を変形することによって得られる波動方程式(Lighthill方程式)から求めることができる。この波動方程式を(1)式に示す。
【数1】
【0018】
上記(1)式において、cは音速、pは圧力、ρは密度、xは座標、vは速度、μは粘性係数、Fは外力、δijはクロネッガーのデルタ、TijはLighthillの音響テンソルである。なお、iは行成分を表しi=1,2,3、jは列成分を表しj=1,2,3である。
【0019】
上記(1)式をさらに変形し、次元解析を行って各項のオーダーを評価することで、空力騒音源からの放射音を次にように表すことができる。
【数2】
【0020】
上記(2)式において、音圧p=c
2ρ、ρ
0は密度の平均値、rは音源からの距離、lは渦のスケール、uは速度である。
【0021】
上記(2)式の第1項は湧き出しや吸込み流れなど気流の体積変化が伴う空力騒音が速度の4乗に比例して発生することを示している。また、第2項は高速走行時の自動車や新幹線騒音のように運動量の変化によって発生する騒音は速度の6乗に比例すること、第3項はジェットエンジンの噴射音のように流れの非定常運動による騒音は速度の8乗に比例して発生することを示している。
【0022】
低〜高速のエレベータについて、走行速度を変えながら、狭隘部通過時の騒音を計測した結果を
図4に示す。横軸は乗りかごの移動速度、縦軸は騒音の大きさを表している。
【0023】
この図から狭隘部通過時の騒音は走行速度の4乗にほぼ比例して大きくなることが分かる。このことは、狭隘部通過時の騒音が、乗りかごの先端部が狭隘部に差し掛かったときの急激な空気の流れ込みによる気流の体積変化に起因していることを示している。したがって、隘部通過時の空力騒音を低減するには、そのときの気流の体積変化つまり圧力変動を緩和させることが効果的であると考えられる。
【0024】
以下では、隘部通過時の空力騒音を低減化するための具体的な方法について詳しく説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図5は第1の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図5(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。
【0026】
本実施形態におけるエレベータ装置は、主として低速エレベータに用いられる箱型形状の乗りかご11を備える。この乗りかご11は、図示せぬ巻上機の駆動によりロープ12を介して昇降路13内を昇降動作する。
【0027】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。このエプロン16は、かごシル15の下部から垂直方向に所定の長さを持って延出されており、乗場と乗りかご11との隙間から物が落下することを防止する。また、このエプロン16は、乗りかご11の正面に流れ込む気流を整流化する
整風板としても用いられる。
【0028】
一方、昇降路13内には、各階の乗場にホールドア19を支持するためのホールシル17が設けられている。このールシル17の上にホールドア19が開閉自在に設けられている。乗りかご11が各階の乗場に着床したときに、かごドア14がホールドア19に係合して開閉動作する。なお、図中の18は昇降路13内のホールシル17によって形成される狭隘部である。
【0029】
ここで、第1の実施形態では、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に板状(平面が矩形状)の気流分散部材21が設けられている。この気流分散部材21は、狭隘部通過時に乗りかご11の正面に流れ込む気流を分散するための所定の厚みを有し、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部の中央付近に設けられる。
【0030】
なお、気流分散部材21の取付け方法としては、例えばエプロン16に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定しても良い。あるいは、気流分散部材21を嵌込み式にするなど、エプロン16に対して着脱可能な構造にしても良い。エプロン16自体に気流分散部材21のような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0031】
また、気流分散部材21の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0032】
このような気流分散部材21が設けられたエプロン16は、従来のエプロンと同様の安全機構を併せ持つのはもちろんのことである。気流分散部材21はエプロン16の下端部に設けられている。これにより、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かった際に、気流分散部材21を介して気流が分散して流れるので、エプロン16の下端部分で気流が一度に堰き止められることがなくなり、気流の体積が瞬時に圧縮されることを防ぐことができる。つまり、気流分散部材21の厚みで、エプロン16の下端部とホールシル17の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性が壊れ、その結果、気流の体積変化が緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0033】
また、気流分散部材21は、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲に設けられている。したがって、この気流分散部材21を介して気流が分散されることで、かご正面の突出物として存在するかごシル15に気流が直接ぶつかることで発生する騒音についても低減することができる。
【0034】
このように第1の実施形態によれば、エプロンの下端部に気流を分散可能な厚みを有する気流分散部材を設けておくだけの簡単な構造で、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。したがって、低〜高速のエレベータにおいて、整風カプセルや整流楔等の高価な整流装置を備えることなく、快適な走行環境を提供できる。
【0035】
なお、例えば
図6に示すように、エプロン16の下端部ではなく、中央部分に気流分散部材21を設けることも考えられるが、エプロン16の下端部では気流を堰き止めることができないため、そこから一度に入り込んで増速流が発生する可能性がある。
【0036】
また、
図7の例のように、エプロン16の下端部からかごシル15までの長さを有する気流分散部材22を設けた構成では、気流分散部材22の両縁に沿って増速流が発生するため、かごシル15にぶつかって空力騒音が発生する可能性がある。さらに、
図8の例のように、エプロン16に逆三角形状の気流分散部材23を設けた構成では、エプロン16の下端部での体積変化が生じないので、空力騒音が発生することになる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、エプロンの下端部に気流分散部材を設けたが、第2の実施形態では、エプロンの上端部に気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0038】
図9は第2の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図9(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0039】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第2の実施形態では、エプロン16の上端部に板状の気流分散部材21が設けられている。
【0040】
気流分散部材21は、上記第1の実施形態と同様に、狭隘部通過時に乗りかご11の正面に流れ込む気流を分散するための所定の厚みを有する。この気流分散部材21は、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の上端部の中央付近に設けられる。
【0041】
この気流分散部材21は、例えばエプロン16に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定されていても良いし、エプロン16に対して着脱可能な構造であっても良い。エプロン16自体に気流分散部材21のような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0042】
また、気流分散部材21の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0043】
このような構成において、エプロン16はかごドア14とは厳密には面一にはなく、かごシル15の分だけ少し間隔を空けて設置されている。このため、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かった場合に、その部分で気流が圧縮されて騒音が発生することがある。
【0044】
そこで、
図9のようにエプロン16の上端部に気流分散部材21を設けて厚みを変えておくことにより、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときに、気流分散部材21を介して気流を分散させて、気流の体積が瞬時に圧縮されることを防ぐことができる。つまり、気流分散部材21の厚みで、かごシル15の突出部分とホールシル17の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性が壊れ、その結果、気流の体積変化が緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0045】
このように第2の実施形態によれば、エプロンの上端部に気流を分散可能な厚みを有する気流分散部材を設けおくことでも、上記第1の実施形態と同様に狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、乗りかごのエプロンの下端部に楔状の気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0047】
図10は第3の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図10(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0048】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第3の実施形態では、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に楔状の気流分散部材24が設けられている。
【0049】
図11は乗りかご11のエプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24の構成を示す図である。
【0050】
気流分散部材24には所定角度で傾けた傾斜部25が形成されている。この傾斜部25の山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けた状態で、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部の中央付近に設けられる。
【0051】
この気流分散部材24は、例えばエプロン16に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定されていても良いし、エプロン16に対して着脱可能な構造であっても良い。エプロン16自体に気流分散部材24のような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0052】
また、気流分散部材24の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0053】
このような構成において、上記第1の実施形態と同様に、エプロン16の下端部に気流分散部材24を設けておくことで、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かった際に、気流分散部材24を介して気流が分散して流れる。さらに、この気流分散部材24は楔形状となっており、エプロン16の下端部から上端部に向けて下降している。したがって、この気流分散部材24の厚み部分を通過した気流が滑らかに整流されるので、急激な圧力変動が抑制されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0054】
このように第3の実施形態によれば、エプロンの下端部に楔状の気流分散部材を設けて部分的に厚みを変えることにより、狭隘部通過時の騒音をより効果的に低減することができる。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態では、エプロンの上端部に楔状の気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0056】
図12は第4の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図12(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0057】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第4の実施形態では、エプロン16の上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に楔状の気流分散部材24が設けられている。
【0058】
この気流分散部材24は、上記第3の実施形態と同様に傾斜部25を有する。ただし、この傾斜部25の向きが上記第3の実施形態とは逆である。すなわち、傾斜部25の山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けた状態で、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の上端部の中央付近に設けられる。
【0059】
この気流分散部材24は、例えばエプロン16に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定されていても良いし、エプロン16に対して着脱可能な構造であっても良い。エプロン16自体に気流分散部材24のような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0060】
また、気流分散部材24の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0061】
このような構成において、エプロン16はかごドア14とは厳密には面一にはなく、かごシル15の分だけ少し間隔を空けて設置されている。このため、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かった場合に、その部分で気流が圧縮されて騒音が発生することがある。
【0062】
そこで、
図12のようにエプロン16の上端部に気流分散部材24を設けて厚みを変えておくことにより、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かった際に、気流分散部材24を介して気流が分散して流れる。さらに、この気流分散部材24は楔形状となっており、かごドア14に向かって上昇している。したがって、この気流分散部材24の厚み部分を通過した気流がかごシル15の上に導かれて、直接ぶつかることを防ぐことができる。その結果、かごシル部分での急激な圧力変動を抑制でき、狭隘部通過時の空力騒音を低減できる。
【0063】
このように第4の実施形態によれば、エプロンの上端部に楔状の気流分散部材を設けて部分的に厚みを変えることでも、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0064】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態では、複数の溝を有する楔状の気流分散部材を用いるものである。
【0065】
図13は第5の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図13(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0066】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第5の実施形態では、エプロン16の上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に楔状の溝付き気流分散部材26が設けられている。
【0067】
図14は乗りかご11のエプロン16の上端部に設けられた溝付き気流分散部材26の構成を示す図である。
【0068】
溝付き気流分散部材26は、傾斜部27を有すると共に、その傾斜部27の表面に断面が半円筒状の溝28が昇降方向に複数形成されている。この溝付き気流分散部材26は、傾斜部27の山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けた状態で、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の上端部の中央付近に設けられる。
【0069】
この溝付き気流分散部材26は、例えばエプロン16に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定されていても良いし、エプロン16に対して着脱可能な構造であっても良い。また、気流分散部材25の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0070】
このような構成において、エプロン16の上端部に溝付き気流分散部材26を設けて厚みを変えておくことにより、上記第4の実施形態と同様に、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときの気流を分散させることができる。この場合、溝付き気流分散部材26は楔形状となっており、かごドア14に向かって上昇していると共に、その表面に溝28が形成されている。したがって、この気流分散部材24の厚み部分を通過した気流が溝28を通してかごシル15の上により滑らかに導かれる。その結果、かごシル部分での急激な圧力変動を抑制でき、狭隘部通過時の空力騒音を低減できる。
【0071】
このように第5の実施形態によれば、エプロンの上端部に楔状の溝付き気流分散部材を設けることでも、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0072】
なお、特に図示しないが、エプロンの下端部に楔状の溝付き気流分散部材を設けることでも良い。この場合、傾斜部の山側をエプロンの下端部に向け、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置することで、整流効果をより上げて、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0073】
また、傾斜部に形成された溝の形態についても、
図14のような半円筒状に限られるものではなく、例えば波板状、のこぎり波状などの他の形状であっても良い。
【0074】
さらに、上記第1、第2の実施形態で説明した板状の気流分散部材の表面に溝を形成して整流効果を上げても良い。
【0075】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
第6の実施形態では、エプロンの上下両端部(下端部と上端部)にそれぞれ楔状の気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0076】
図15は第6の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図15(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0077】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第6の実施形態では、エプロン16の下端部と上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に楔状の気流分散部材24a,24bが設けられている。
【0078】
気流分散部材24a,24bは、それぞれに傾斜部25a,25bを有する。気流分散部材24aは、傾斜部25aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置される。気流分散部材24bは、傾斜部25bの山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲に設けられている。
【0079】
なお、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24aと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材24bは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。これは、気流分散部材24aと気流分散部材24bが乗りかご11の昇降方向に繋がると、
図7で説明したように、エプロン16の下端部から気流分散部材24a,24bの両縁に沿って増速流が発生し、かごシル15にぶつかって騒音が発生する可能性があるためである。
【0080】
このような構成において、エプロン16の下端部と上端部に気流分散部材24a,24bを設けて厚みを変えておくことにより、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときと、かごシル15の突出部分が狭隘部18に差し掛かったときの両方の場合で、気流の体積が瞬時的に圧縮されることを防いで、体積変化を緩和することができる。
【0081】
また、気流分散部材24a,24bが楔状であるため、気流分散部材24a,24bの厚みを通過した気流が滑らかに流れる、これにより、圧力変動の発生をより抑制して、狭隘部通過時の騒音を低減できる。
【0082】
このように第6の実施形態によれば、エプロンの下端部と上端部の両方に楔状の気流分散部材を設けておくことにより、狭隘部通過時の騒音をさらに効果的に低減することができる。
【0083】
なお、
図15の例では、エプロンの下端部と上端部に楔状の気流分散部材を設けたが、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0084】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。
第7の実施形態では、エプロンの下端部に複数の楔状の溝付き気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0085】
図16は第7の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図16(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0086】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第7の実施形態では、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に2つの楔状の溝付き気流分散部材26a,26bが水平方向に並設されている。
【0087】
溝付き気流分散部材26aは、
図14に示したように傾斜部27aを有すると共に、その傾斜部27aの表面に断面が半円筒状の溝28aが昇降方向に複数形成されている。そして、傾斜部27aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けた状態で設置されている。溝付き気流分散部材26bについても同様であり、傾斜部27bを有すると共に、その傾斜部27bの表面に乗りかご11の昇降方向に沿って複数本の半円筒状の溝28bが形成されている。そして、傾斜部27bの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けた状態で設置されている。
【0088】
また、この溝付き気流分散部材26a,26bは、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部の中央付近に間隔を空けて配置される。
【0089】
このような構成において、エプロン16の下端部に2つの溝付き気流分散部材26a,26bを設けて厚みを変えておくことでも、乗りかご11の下降時にかごシル15の突出部分がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときの気流を分散させて、気流の体積が瞬時に圧縮されることを防ぐことができる。
【0090】
さらに、2つの溝付き気流分散部材26a,26bがエプロン16の下端部に設けられていることで、気流の分散効率が高まるので、気流の体積変化がより緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減されることになる。
【0091】
なお、
図16の例では、エプロン16の下端部に2つの溝付き気流分散部材26a,26bを設けたが、3つ以上の溝付き気流分散部材を設けることでもよく、その場合にはエプロン16の下端部での気流がより分散するので、騒音低減効果も高くなる。
【0092】
このように第7の実施形態によれば、エプロンの下端部に複数の溝付き気流分散部材を並設することにより、整流効果をより上げて、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0093】
なお、
図16の例では、エプロンの下端部に複数の溝付き気流分散部材を設けたが、エプロンの他端部である上端部に対しても同様に複数の溝付き気流分散部材を設けても良い。
【0094】
また、溝付き気流分散部材を例にして説明したが、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第3、4の実施形態で説明した楔状の気流分散部材を用いても良い。
【0095】
また、本実施形態ではかご正面方向への流路を非一様にすることが目的であり、気流分散部材の数は限定されるものではない。
【0096】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。
第8の実施形態では、エプロンの下端部と上端部の両方に複数の気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0097】
図17は第8の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図17(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0098】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。ここで、第8の実施形態では、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に3つの気流分散部材21a〜21cが所定の間隔を空けて設置され、さらに、エプロン16の上端部に2つの気流分散部材21d,21eが所定の間隔を空けて設置されている。
【0099】
エプロン16の下端部に設けられた3つの気流分散部材21a〜21cは、狭隘部通過時に乗りかご11の正面に流れ込む気流を分散するための所定の厚みを有し、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部の中央付近に設けられる。同様に、エプロン16の上端部の2つ気流分散部材21d,21eについても、狭隘部通過時に乗りかご11の正面に流れ込む気流を分散するための所定の厚みを有し、かごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の上端部の中央付近に設けられる。
【0100】
なお、上記第6の実施形態で説明したように、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材21a〜21cと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材21d,21eは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。
【0101】
このような構成において、エプロン16の下端部に気流分散部材21a〜21c、上端部に気流分散部材21d,21eを設けて、それぞれに厚みを変えておくことにより、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときと、かごシル15の突出部分が狭隘部18に差し掛かったときの両方の場合で、気流の体積が瞬時的に圧縮されることを防いで、体積変化を緩和することができる。
【0102】
また、エプロン16の下端部では3つの気流分散部材21a〜21cにより気流を分散でき、さらに、上端部でも2つの気流分散部材21d,21eにより気流を分散できるので、圧力変動の発生をより抑制して狭隘部通過時の騒音を低減できる。
【0103】
このように第8の実施形態によれば、エプロンの下端部と上端部の両方に複数の気流分散部材を設けることにより、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0104】
なお、
図17の例では、エプロンの下端部に3つの気流分散部材、エプロンの他端部である上端部に2つの気流分散部材を設けたが、これらの個数に特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。つまり、本実施形態ではかご正面方向への流路を非一様にすることが目的であり、気流分散部材の数は限定されるものではない。
【0105】
また、板状の気流分散部材を例にして説明したが、上記第3、4の実施形態で説明した楔状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0106】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。
第9の実施形態では、下降時だけでなく、上昇時の騒音も低減できるように改良した場合の一例を示すものであり、かご上端側にもエプロンと同様の整風板を設置し、そこに気流分散部材を設けて厚みを変えるようにしたものである。
【0107】
図18は第9の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図18(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0108】
箱形形状の乗りかご11の正面の上端部の乗場側の縁に、下端部のエプロン16と同様に走行中の気流を整流するための整風板31が取り付けられている。エプロン16の下端部と上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)には、上記第6の実施形態と同様に楔状の気流分散部材24a,24bが設けられており、その部分での厚みを変えている。また、整風板31の下端部と上端部に対しても、楔状の気流分散部材32a,32bが設けられており、その部分での厚みを変えている。
【0109】
気流分散部材24a,24bは、それぞれに傾斜部25a,25bを有する。気流分散部材24aは、傾斜部25aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置される。気流分散部材24bは、傾斜部25bの山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部と上端部の中央付近に設けられる。
【0110】
なお、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24aと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材24bは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。これは、気流分散部材24aと気流分散部材24bが乗りかご11の昇降方向に繋がると、
図7で説明したように、エプロン16の下端部から気流分散部材24a,24bの両縁に沿って増速流が発生し、かごシル15にぶつかって騒音が発生する可能性があるためである。
【0111】
同様に、整風板31に設置された気流分散部材32a,32bについても、それぞれに傾斜部33a,33bを有する。気流分散部材32aは、傾斜部33aの山側を整風板31の下端部、谷側を整風板31の上端部に向けて設置される。気流分散部材32bは、傾斜部33bの山側を整風板31の下端部、谷側を整風板31の上端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、整風板31の上端部と下端部の中央付近に設けられる。
【0112】
なお、整風板31の両端に設けられた気流分散部材32aと気流分散部材32bについても、互いに接触しない長さに規制されているものとする。
【0113】
このような構成によれば、乗りかご11の下降時だけなく、上昇時においても、乗りかご11の先端部がホールシル17などの狭隘部18を通過するときの気流を気流分散部材32a,32bの厚みにより分散することにより、急激な圧力変動の発生を抑制して空力騒音を低減できる。
【0114】
このように第9の実施形態によれば、乗りかごの上端部に整風板を設けると共に、その上端部と下端部の両方に気流分散部材を設けて厚みを変えることにより、上昇時における狭隘部通過時の騒音についても効果的に低減することができる。
【0115】
なお、
図18の例では、乗りかごの上端部に設けた整風板の上端部と下端部の両方に気流分散部材を設けたが、一方だけに設けることでも良いし、複数の気流分散部材を並設することでも良い。
【0116】
また、楔状の気流分散部材を例にして説明したが、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0117】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。
【0118】
上記第1〜9の実施形態では、乗りかごに気流分散部材を設置する例について説明したが、昇降路内を乗りかごと共に昇降動作するカウンタウェイトに気流分散部材を設けることでも良い。
【0119】
すなわち、カウンタウェイトと乗りかごとが高速ですれ違ったときに、乗りかごが狭隘部を通過するのと同様に、急激な圧力変動により乗りかご周りに大きな空力騒音が発生する。そこで、カウンタウェイトの先端部の乗りかごとの対向面に気流分散部材を設けて厚みを変えておくことにより、急激な圧力変動を抑えて空力騒音を低減することができる。
【0120】
以下に、具体例を図示して説明する。
図19は第10の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図19(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)はそのカウンタウェイトをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0121】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。また、カウンタウェイト41は、ロープ12の他端に取り付けられており、図示せぬ巻上機の駆動により昇降路13内を乗りかご11とは逆方向に昇降動作する。
【0122】
ここで、昇降路13の中間階付近で、カウンタウェイト41の先端部が乗りかご11に差し掛かったときに、カウンタウェイト41の先端部に局所的な剥離流れが生じ、大きな圧力変動が生じて空力騒音が発生すると共に、乗りかご11に振動を与える問題がある。
【0123】
そこで、カウンタウェイト41の上端部と下端部の乗りかご51に対向する面にそれぞれ板状の気流分散部材42a,42bを設けておく。この気流分散部材42a,42bは、上記第1、第2の実施形態で説明した気流分散部材21と同様に所定の厚みを有し、カウンタウェイト41の上端部と下端部の略中央付近に配置される。
【0124】
この気流分散部材42a,42bは、例えばカウンタウェイト41に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定されていても良いし、カウンタウェイト41に対して着脱可能な構造であっても良い。カウンタウェイト41自体に気流分散部材42a,42bのような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0125】
また、気流分散部材42a,42bの材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、カウンタウェイト41と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0126】
このような構成において、カウンタウェイト41の上端部と下端部に気流分散部材32a,32bを設けて厚みを変えておくことにより、乗りかご11とカウンタウェイト41がすれ違う際に、気流分散部材42a,42bを介して気流が分散して流れる。つまり、気流分散部材42a,42bの厚みにより、乗りかご11と対向する面に流れ込む気流が分散し、気流が一度に堰き止められることがなくなる。その結果、気流の体積変化が緩和されて、すれ違い時に発生する空力騒音や振動を低減することが可能となる。
【0127】
このように第10の実施形態によれば、カウンタウェイトの上端部と下端部に気流分散部材を設けて厚みを変えることにより、乗りかごとカウンタウェイトとのすれ違い時の騒音についても効果的に低減することができる。
【0128】
なお、
図19の例では、カウンタウェイトの上端部と下端部に1つの気流分散部材を設けたが、複数の気流分散部材を並設することでも良い。
【0129】
また、板状の気流分散部材を例にして説明したが、上記第3、4の実施形態で説明した楔状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0130】
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。
【0131】
第11の実施形態は、上記第9の実施形態と上記第10の実施形態を組み合わせたものである。すなわち、乗りかごの上端部と下端部に気流分散部材を設けると共に、カウンタウェイトの上端部と下端部に対しても気流分散部材を設けたものである。
【0132】
図20は第11の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図20(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0133】
箱形形状の乗りかご11の上端部の乗場側の縁に、下端部のエプロン16と同様の整風用の整風板31が取り付けられている。エプロン16の下端部と上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)には、上記第6の実施形態と同様に楔状の気流分散部材24a,24bが設けられており、その部分での厚みを変えている。また、整風板31の上端部と下端部に対しても、楔状の気流分散部材32a,32bが設けられており、その部分での厚みを変えている。
【0134】
気流分散部材24a,24bは、それぞれに傾斜部25a,25bを有する。気流分散部材24aは、傾斜部25aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置される。気流分散部材24bは、傾斜部25bの山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部の中央付近に設けられる。
【0135】
なお、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24aと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材24bは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。これは、気流分散部材24aと気流分散部材24bが乗りかご11の昇降方向に繋がると、
図7で説明したように、エプロン16の下端部から気流分散部材24a,24bの両縁に沿って増速流が発生し、かごシル15にぶつかって騒音が発生する可能性があるためである。
【0136】
同様に、整風板31に設置された気流分散部材32a,32bについても、それぞれに傾斜部33a,33bを有する。気流分散部材32aは、傾斜部33aの山側を整風板31の上端部、谷側を整風板31の下端部に向けて設置される。気流分散部材32bは、傾斜部33bの山側を整風板31の下端部、谷側を整風板31の上端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、整風板31の上端部の中央付近に設けられる。
【0137】
なお、整風板31の両端に設けられた気流分散部材32aと気流分散部材32bについても、互いに接触しない長さに規制されているものとする。
【0138】
一方、カウンタウェイト41の上端部と下端部の乗りかご51に対向する面に対しても、それぞれ板状の気流分散部材42a,42bが設けられる。この気流分散部材42a,42bは、上記第1、第2の実施形態で説明した気流分散部材21と同様に所定の厚みを有し、カウンタウェイト41の上端部と下端部の略中央付近に配置される。
【0139】
このような構成によれば、乗りかご11の下降時だけなく、上昇時においても、乗りかご11の先端部がホールシル17などの狭隘部18を通過するときの気流を気流分散部材32a,32bの厚みにより分散することにより、急激な圧力変動の発生を抑制して空力騒音を低減できる。
【0140】
また、乗りかご11とカウンタウェイト41がすれ違う際も、そのときにカウンタウェイト41の先端部に生じる気流を気流分散部材42a,42bの厚みにより分散することにより、急激な圧力変動の発生を抑制して空力騒音を低減できる。
【0141】
このように第11の実施形態によれば、乗りかごの上昇時および下降時における狭隘部通過時の騒音を効果的に低減できると共に、乗りかごとカウンタウェイトがすれ違うときの騒音を効果的に低減することができる。
【0142】
なお、
図20の例では、乗りかごの上端部に設けた整風板の上端部と下端部の両方に気流分散部材を設けたが、一方だけに設けることでも良いし、複数の気流分散部材を並設することでも良い。また、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0143】
カウンタウェイトの上端部と下端部についても、
図20の例では1つの気流分散部材を設けたが、複数の気流分散部材を並設することでも良い。また、上記第3、4の実施形態で説明した楔状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0144】
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態について説明する。
【0145】
第12の実施形態では、気流発生装置を併用するものである。気流発生装置として、送風機から二次元噴流を噴出させる装置や、シンセティックジェットを利用した装置などがあるが、装置の小型化と制御性を考慮すると、放電プラズマを利用した気流発生装置が最適であると考えられる。
【0146】
なお、放電プラズマを利用した気流発生装置については、特開2007−317656号公報や特開2008−1354号公報に記載されているため、ここでは基本的な構成のみを説明する。
【0147】
図21は放電プラズマを利用した気流発生装置の構成を示す図である。
【0148】
図21に示すように、気流発生装置50は、誘電体60内に埋設された第1の電極61と、この電極61と誘電体60の表面からの距離を同じにし、かつ誘電体60の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体60内に埋設された第2の電極62と、ケーブル63を介して電極61、62間に電圧を印加する放電用電源64とから構成されている。
【0149】
誘電体60としては、ガラスやポリイミドやゴムなどの電気的絶縁材料が用いられる。また、電極61、62には一般的な銅板を使用できるので、装置自体の厚みを数100μm以下で構成することが容易に可能である。
【0150】
このような構成において、放電用電源64から第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加し、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極61と第2の電極62の間に放電が起こり、電極付近に誘起流(気流)65が発生する。この誘起流65の大きさや向きは、電極61,62に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。
【0151】
また、
図22に示すように、電極61、62間に交番電圧または交流電圧を印加することで、持続的に誘起流65を発生させることが可能である。
図22の例では、電極61側に向かう誘起流(
図21では左側に向かう誘起流)と、電極62側に向かう誘起流(
図21では右側に向かう誘起流)とが対照的に発生している状態が示されている。また、それぞれに向かう流速はほぼ等しい値である。
【0152】
気流発生装置50を
図23のように構成することもできる。
【0153】
図23において、気流発生装置50は、誘電体60の表面と同一面に露出された第1の電極61と、この電極61と誘電体60の表面からの距離を異にし、かつ誘電体60の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体60内に埋設された第2の電極62と、ケーブル63を介して電極61、62間に電圧を印加する放電用電源64とから構成されている。すなわち、
図20の構成とは、第1の電極61が誘電体60の表面と同一面に露出されている点で異なる。
【0154】
このような構成において、放電用電源64によって電極61、62間に、所定値以下の周波数の交流電圧や交番電圧を印加すると、
図24に示すように、気流発生装置50の表面、すなわち、誘電体60の表面に沿って流れる方向が反転し、かつ、それぞれの方向に向かう流速が異なって振動する誘起流65を発生させることができる。
図24の例では、電極62側に向かう誘起流(
図23では右側に向かう誘起流)の向きを正の値としている。この場合、電極61側に向かう誘起流(
図23では左側に向かう誘起流)と、電極62側に向かう誘起流(
図23では右側に向かう誘起流)とが発生するが、それぞれに向かう流速が異なっている。
【0155】
また、印加する電圧値を調整することで、
図25に示すように、時間平均的に一方向に流れる誘起流65を発生させることもできる。
【0156】
なお、こうした誘起流によって翼面上の流れを加速制御できることは、下記の文献にも記述されている。また、放電を非定常に制御することで翼廻り流れに対する制御をより効果的に行えることが確認されている。
【0157】
「日本機械学会 第85期 流体工学部門講演会,No.07−16,ISSN 1348−2882,(2007),OS5−1−503」
「日本機械学会論文集(B編),74巻744号,(2008−8),論文 No.08−7006」
次に、上述した気流発生装置50を併用した場合の具体的な構成について説明する。
【0158】
図26は第12の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図26(a)は昇降路内を走行する乗りかごを側面から見た図、同図(b)はその乗りかごをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0159】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。このエプロン16の下端部と上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に楔状の気流分散部材24a,24bが設けられている。
【0160】
気流分散部材24a,24bは、それぞれに傾斜部25a,25bを有する。気流分散部材24aは、傾斜部25aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置される。気流分散部材24bは、傾斜部25bの山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、エプロン16の下端部と上端部の中央付近に設けられる。
【0161】
なお、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24aと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材24bは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。これは、気流分散部材24aと気流分散部材24bが乗りかご11の昇降方向に繋がると、
図7で説明したように、エプロン16の下端部から気流分散部材24a,24bの両縁に沿って増速流が発生し、かごシル15にぶつかって騒音が発生する可能性があるためである。
【0162】
ここで、第12の実施形態では、このような構造的な騒音低減対策とは別に、上述した放電プラズマを利用した気流発生装置50a,50bが用いられている。気流発生装置50a,50bは、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に取り付けられている。
図26(b)の例では、エプロン16の下端部の中央付近に設置された気流分散部材24aの両側に気流発生装置50a,50bが取り付けられている。
【0163】
気流発生装置50a,50bはセラミックなどの絶縁物を基盤としたモジュール構造で構成できるので、エプロン16にモジュール部分をねじ止めあるいは接着剤で簡単に固定することができる。
【0164】
また、気流発生装置50a,50bは、
図21または
図23に示したような構造を有し、乗りかご11の走行時に駆動装置51によって所定のタイミングで駆動される。所定のタイミングとは、具体的には、乗りかご11の下降時に乗りかご11の下端部(つまりエプロン16の下端部)がホールシル17などの狭隘部18を通過するときである。
【0165】
すなわち、エプロン16に設けられた気流発生装置50a,50bは、乗りかご11の下降時に気流分散部材32bの先端部がホールシル36を通過するときに駆動され、乗りかご11の移動方向とは逆方向(ここでは上昇方向)に向けて誘起流65を発生する。
【0166】
図27は気流発生装置50a,50bの制御系の構成を示したブロック図である。
【0167】
駆動装置51は、乗りかご11上に設置されており、気流発生装置50a,50bの駆動に必要な電力を供給するためのバッテリなどを備える。この駆動装置51は、制御装置52から出力される駆動信号に基づいて気流発生装置50a,50bに電力を供給して駆動する。
【0168】
また、制御装置52は、ビルの機械室などに設置されている。この制御装置52は、CPU、ROM、RAMなどを搭載したコンピュータによって構成され、所定のプログラムの起動によりエレベータ全体の運転制御を行うと共に、ここでは気流発生装置50a,50bの駆動制御を行う。なお、制御装置52と乗りかご11上の駆動装置51は、図示せぬテールコードあるいは無線により電気的に接続されている。
【0169】
かご位置検出装置53は、図示せぬパルスエンコーダから巻上機の回転に同期して出力されるパルス信号に基づいて、昇降路13内を走行中の乗りかご11の位置をリアルタイムで検出する。
【0170】
このような構成において、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときに、気流発生装置50a,50bを駆動して、乗りかご11の移動方向とは逆方向つまり上昇方向に向けて誘起流65を発生する。これにより、気流分散部材24aによる分散作用が高まり、気流の体積が瞬時的に圧縮されることを防いで、体積変化を緩和することができる。その結果、エプロン16の下端部が狭隘部18を通過するときの騒音を低減できる。
【0171】
かごシル15の突出部分が狭隘部18に差し掛かったときも同様であり、気流発生装置50a,50bから上昇方向に向けて発射される誘起流65の作用により、気流の体積が瞬時的に圧縮されることを防いで、体積変化を緩和することができる。その結果、かごシル15が狭隘部18を通過するときに発生する騒音についても低減できる。
【0172】
この場合、気流発生装置50a,50bは乗りかご11の位置に応じて間欠的に駆動することが可能であり、しかも、応答特性の良いプラズマ気流発生装置を用いているので、エプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときのタイミングで、プラズマ気流(誘起流65)を適切に発生して整流できるといった利点がある。
【0173】
このように第12の実施形態によれば、気流発生装置を併用することにより、狭隘部通過時の騒音をさらに効果的に低減することができる。
【0174】
なお、
図26の例では、エプロンの下端部と上端部に楔状の気流分散部材を設けたが、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。
【0175】
(第13の実施形態)
次に、第13の実施形態について説明する。
第13の実施形態では、乗りかごの上端部と下端部に気流分散部材と気流発生装置を設け、さらに、カウンタウェイトの上端部と下端部に対しても気流分散部材と気流発生装置を設けるようにしたものである。
【0176】
図28は第13の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図28(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)は乗りかごをA方向から見た正面図、同図(c)はカウンタウェイトをB方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0177】
箱形形状の乗りかご11の上端部の乗場側の縁に、下端部のエプロン16と同様の整風用の整風板31が取り付けられている。エプロン16の下端部と上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)には、楔状の気流分散部材24a,24bが設けられており、その部分での厚みを変えている。また、整風板31の上端部と下端部に対しても、楔状の気流分散部材32a,32bが設けられており、その部分での厚みを変えている。
【0178】
気流分散部材24a,24bは、それぞれに傾斜部25a,25bを有する。気流分散部材24aは、傾斜部25aの山側をエプロン16の下端部、谷側をエプロン16の上端部に向けて設置される。気流分散部材24bは、傾斜部25bの山側をエプロン16の上端部、谷側をエプロン16の下端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、整風板31の上端部と下端部の中央付近に設けられる。
【0179】
なお、エプロン16の下端部に設けられた気流分散部材24aと、エプロン16の上端部に設けられた気流分散部材24bは、互いに接触しない長さに規制されているものとする。これは、気流分散部材24aと気流分散部材24bが乗りかご11の昇降方向に繋がると、
図7で説明したように、エプロン16の下端部から気流分散部材24a,24bの両縁に沿って増速流が発生し、かごシル15にぶつかって騒音が発生する可能性があるためである。
【0180】
同様に、整風板31に設置された気流分散部材32a,32bについても、それぞれに傾斜部33a,33bを有する。気流分散部材32aは、傾斜部33aの山側を整風板31の上端部、谷側を整風板31の下端部に向けて設置される。気流分散部材32bは、傾斜部33bの山側を整風板31の下端部、谷側を整風板31の上端部に向けて設置される。また、それぞれにかごドア14の開閉方向の幅Wの範囲を基準にして、整風板31の上端部と下端部の中央付近に設けられる。
【0181】
なお、整風板31の両端に設けられた気流分散部材32aと気流分散部材32bについても、互いに接触しない長さに規制されているものとする。
【0182】
一方、カウンタウェイト41の上端部と下端部の乗りかご51に対向する面に対しても、それぞれ板状の気流分散部材42a,42bが設けられる。この気流分散部材42a,42bは、上記第1、第2の実施形態で説明した気流分散部材21と同様に所定の厚みを有し、カウンタウェイト41の上端部と下端部の略中央付近に配置される。
【0183】
ここで、第13の実施形態では、このような構造的な騒音低減対策とは別に、上述した放電プラズマを利用した気流発生装置50a〜50dと、同じく放電プラズマを利用した気流発生装置54a〜54dが用いられている。
【0184】
気流発生装置50a,50bは、エプロン16の下端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に取り付けられている。気流発生装置50c,50dは、整風板31の上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に取り付けられている。
図28(b)の例では、エプロン16の下端部の中央付近に設置された気流分散部材24aの両側に気流発生装置50a,50bが取り付けられ、整風板31の上端部の中央付近に設置された気流分散部材32aの両側に気流発生装置50c,50dが取り付けられている。
【0185】
気流発生装置50a〜50dはセラミックなどの絶縁物を基盤としたモジュール構造で構成できるので、エプロン16や整風板31にモジュール部分をねじ止めあるいは接着剤で簡単に固定することができる。
【0186】
また、気流発生装置50a〜50dは、
図21または
図23に示したような構造を有し、乗りかご11の走行時に駆動装置51によって所定のタイミングで駆動される。所定のタイミングとは、具体的には、乗りかご11の下降時に乗りかご11の下端部(つまりエプロン16の下端部)がホールシル17などの狭隘部18を通過するときと、乗りかご11の上昇時に乗りかご11の上端部(つまり整風板31の上端部)がホールシル17などの狭隘部18を通過するときである。
【0187】
すなわち、エプロン16に設けられた気流発生装置50a,50bは、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル36を通過するときに駆動され、乗りかご11の移動方向とは逆方向(ここでは上昇方向)に向けて誘起流65を発生する。一方、整風板31に設けられた気流発生装置50c,50dは、乗りかご11の上昇時に整風板31の上端部がホールシル36を通過するときに駆動され、乗りかご11の移動方向とは逆方向(ここでは下降方向)に向けて誘起流65を発生する。
【0188】
一方、気流発生装置54a,54bは、カウンタウェイト41の上端部の乗りかご11と対向する面に取り付けられている。気流発生装置54c,54dは、カウンタウェイト41の下端部の乗りかご11と対向する面に取り付けられている。
図28(c)の例では、カウンタウェイト41の上端部の中央付近に設置された気流分散部材42aの両側に気流発生装置54a,54bが取り付けられ、カウンタウェイト41の下端部の中央付近に設置された気流分散部材42bの両側に気流発生装置54c,54dが取り付けられている。
【0189】
気流発生装置54a〜54dはセラミックなどの絶縁物を基盤としたモジュール構造で構成できるので、カウンタウェイト41にモジュール部分をねじ止めあるいは接着剤で簡単に固定することができる。
【0190】
また、気流発生装置54a〜54dは、
図21または
図23に示したような構造を有し、乗りかご11の走行時に駆動装置51によって所定のタイミングで駆動される。所定のタイミングとは、具体的には、乗りかご11の下降時にカウンタウェイト41の上端部が乗りかご11とすれ違うときと、乗りかご11の上昇時にカウンタウェイト41の下端部が乗りかご11とすれ違うときである。
【0191】
すなわち、カウンタウェイト41の上端部に設けられた気流発生装置54a,54bは、乗りかご11の下降時にカウンタウェイト41とすれ違うときに駆動され、カウンタウェイト41の移動方向とは逆方向(ここでは下降方向)に向けて誘起流65を発生する。一方、カウンタウェイト41の下端部に設けられた気流発生装置54c,54dは、乗りかご11の上昇時にカウンタウェイト41の下端部が乗りかご11とすれ違うときに駆動され、カウンタウェイト41の移動方向とは逆方向(ここでは上昇方向)に向けて誘起流65を発生する。
【0192】
図29は気流発生装置50a〜50d,54a〜54dの制御系の構成を示したブロック図である。
【0193】
駆動装置51は、乗りかご11上に設置されており、気流発生装置50a〜50dの駆動に必要な電力を供給するためのバッテリなどを備える。この駆動装置51は、制御装置52から出力される駆動信号に基づいて気流発生装置50a〜50dに電力を供給して駆動する。
【0194】
駆動装置55は、カウンタウェイト41上に設置されており、気流発生装置54a〜54dの駆動に必要な電力を供給するためのバッテリなどを備える。この駆動装置55は、制御装置52から出力される駆動信号に基づいて気流発生装置54a〜54dに電力を供給して駆動する。
【0195】
また、制御装置52は、ビルの機械室などに設置されている。この制御装置52は、CPU、ROM、RAMなどを搭載したコンピュータによって構成され、所定のプログラムの起動によりエレベータ全体の運転制御を行うと共に、ここでは気流発生装置50a,50bの駆動制御を行う。なお、制御装置52と駆動装置51,55は、図示せぬテールコードあるいは無線により電気的に接続されている。
【0196】
かご位置検出装置53は、図示せぬパルスエンコーダから巻上機の回転に同期して出力されるパルス信号に基づいて、昇降路13内を走行中の乗りかご11の位置をリアルタイムで検出する。
【0197】
このような構成において、上記第12の実施形態と同様に、乗りかご11の下降時にエプロン16の下端部がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときに、気流発生装置50a,50bを駆動して、乗りかご11の移動方向とは逆方向つまり上昇方向に向けて誘起流65を発生することにより、気流分散部材24a,24bによる分散作用が高まり、狭隘部通過時の騒音を低減できる。
【0198】
また、乗りかご11の上昇時でも、乗りかご11の上端部(整風板31の上端部)がホールシル17などの狭隘部18に差し掛かったときに、気流発生装置50c,50dを駆動して、乗りかご11の移動方向とは逆方向つまり下降方向に向けて誘起流65を発生することにより、気流分散部材32a,32bによる分散作用が高まり、狭隘部通過時の騒音を低減できる。
【0199】
さらに、乗りかご11の下降時にカウンタウェイト41とすれ違うときに気流発生装置54a,54bを駆動して、カウンタウェイト41の移動方向とは逆方向つまり下降方向に向けて誘起流65を発生することにより、気流分散部材42aによる分散作用が高まり、すれ違い時の騒音を低減できる。
【0200】
また、乗りかご11の上昇時にカウンタウェイト41とすれ違うときには、気流発生装置54c,54dを駆動して、カウンタウェイト41の移動方向とは逆方向つまり上昇方向に向けて誘起流65を発生することにより、気流分散部材42bによる分散作用が高まり、すれ違い時の騒音を低減できる。
【0201】
このように第13の実施形態によれば、気流発生装置を併用することにより、乗りかごの上昇時および下降時における狭隘部通過時の騒音をさらに効果的に低減できると共に、乗りかごとカウンタウェイトがすれ違うときの騒音をさらに効果的に低減することができる。
【0202】
なお、
図28の例では、エプロンの下端部と上端部に楔状の気流分散部材を設けたが、上記第1、2の実施形態で説明した板状の気流分散部材や、上記第5の実施形態で説明した溝付き気流分散部材を用いても良い。また、カウンタウェイトに対しても、他の形状の気流分散部材を用いても良い。
【0203】
(第14の実施形態)
次に、第14の実施形態について説明する。
第14の実施形態では、気流分散部材をホールドアのヘッダ部分に設けたものである。すなわち、ホールドア部分は昇降路内に突出しており、エレベータの乗りかごの先端部がホールドアのヘッダ部分に差し掛かった際にも大きな空力騒音(バフ音)が発生する。そこで、ドアヘッダ部分に気流分散部材を設けることにより、ホールドアヘッダ部と乗りかごの先端部で形成される流路のかご正面方向への一様性を壊して、空力騒音の発生を抑える。
【0204】
以下に、具体例を図示して説明する。
図30は第14の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図30(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)は乗りかごとホールドアをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0205】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。また、カウンタウェイト41は、ロープ12の他端に取り付けられており、図示せぬ巻上機の駆動により乗りかご11と共に昇降路13内をつるべ式に移動する。
【0206】
また、乗場に形成されたホールシル17上には、ホールドア19が開閉自在に設けられている。乗りかご11が乗場に着床すると、かごドア14がホールドア19に係合して開閉動作する。なお、図中の71は昇降路13内に突出したホールドア19と乗りかご11の正面との間に形成される狭隘部である。
【0207】
ここで、第14の実施形態では、ホールドア19の上端部の乗りかご11と対向する面に板状の気流分散部材71が設けられている。この気流分散部材71は、所定の厚みを有し、ホールドア19の上端部の乗りかご11の対向する位置に設けられる配置される。
【0208】
なお、気流分散部材71の取付け方法としては、例えばホールドア19に対してネジ止めや接着、溶接、リベット等で固定しても良い。あるいは、気流分散部材21を嵌込み式にするなど、エプロン16に対して着脱可能な構造にしても良い。エプロン16自体に気流分散部材21のような厚みをプレス加工や、その他の方法で加工しても構わない。
【0209】
また、気流分散部材21の材料は、走行時の風力に耐えられる材料であれば、エプロン16と同じ材料であっても、違う材料であっても良い。
【0210】
このよう構成によれば、乗りかご11の下降時あるいは上昇時に乗りかご11の先端部がホールドア19の突出部などの狭隘部72に差し掛かった際に、気流分散部材71を介して気流が分散して流れるので、乗りかご11の先端部分で気流が一度に堰き止められることがなくなる。つまり、気流分散部材71の厚みで、乗りかご11の先端部とホールドア19の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性が壊れ、その結果、気流の体積変化が緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0211】
このように第14の実施形態によれば、ホールドアの上端部に気流を分散可能な厚みを有する気流分散部材を設けておくことでも、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0212】
(第15の実施形態)
次に、第15の実施形態について説明する。
ホールドアのヘッダ部分に設ける気流分散部材は1つである必要はなく、複数であっても良い。第15の実施形態では、ホールドアのヘッダ部分に2つの気流分散部材を設けたるようにしたものである。
【0213】
図31は第15の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図31(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)は乗りかごとホールドアをA方向から見た正面図である。なお、上記第14の実施形態における
図30の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0214】
第15の実施形態において、ホールドア19の上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)に、2つの板状の気流分散部材71a,71bが水平方向に並設されている。この気流分散部材71a,71bは、所定の厚みを有し、ホールドア19の上端部の中央付近に間隔を空けて配置される。
【0215】
このような構成によれば、上記第14の実施形態と同様に、乗りかご11の下降時あるいは上昇時に乗りかご11の先端部がホールドア19の突出部などの狭隘部72に差し掛かった際に、気流分散部材71a,71bを介して気流が分散して流れるので、気流が一度に堰き止められることがなくなり、乗りかご11の先端部とホールドア19の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性をより壊すことができる。その結果、気流の体積変化がさらに緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0216】
このように第15の実施形態によれば、ホールドアの上端部に気流を分散可能な厚みを有する気流分散部材を複数設けておくことで、狭隘部通過時の騒音をより効果的に低減することができる。
【0217】
なお、
図31の例では、ホールドアの上端部に2つの気流分散部材を設けたが、本実施形態ではかご正面方向への流路を非一様にすることが目的であり、気流分散部材の数は限定されるものではない。
【0218】
(第16の実施形態)
次に、第16の実施形態について説明する。
エレベータの空力騒音(バフ音)は乗りかごの先端部とホールシルとの干渉時ばかりでなく、かごシル部分とホールシル部分でも発生することは上記第2の実施形態で既に説明した通りである。第16の実施形態では、ホールシル部分に厚みを有する気流分散部材を設けて、走行時に発生する空力騒音を低減するものである。
【0219】
以下に、具体例を図示して説明する。
図32は第16の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図32(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)は乗りかごとホールドアをA方向から見た正面図である。なお、上記第1の実施形態における
図5の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0220】
乗りかご11の正面にはかごドア14が開閉自在に設けられており、そのかごドア14を支持するかごシル15の下部にエプロン16が取り付けられている。また、カウンタウェイト41は、ロープ12の他端に取り付けられており、図示せぬ巻上機の駆動により乗りかご11と共に昇降路13内をつるべ式に移動する。
【0221】
また、乗場に形成されたホールシル17上には、ホールドア19が開閉自在に設けられている。乗りかご11が乗場に着床すると、かごドア14がホールドア19に係合して開閉動作する。
【0222】
ここで、第16の実施形態では、ホールシル17の先端部の乗りかご11と対向する面に2つの板状の気流分散部材73a,73bが水平方向に並設されている。この気流分散部材73a,73bは、所定の厚みを有し、ホールシル17の先端部の乗りかご11のかごドア14と対向する面の中央付近に間隔を空けて配置される。
【0223】
このような構成によれば、乗りかご11の下降時に乗りかご11の先端部つまりエプロン16の下端部がホールシル17に差し掛かった際に、気流分散部材73a,73bを介して気流が分散して流れる。つまり、気流分散部材73a,73bの厚みで、エプロン16の下端部とホールシル17の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性が壊れ、その結果、気流の体積変化が緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0224】
なお、乗りかご11の上昇時であっても、乗りかご11の先端部がホールシル17に差し掛かった際に、気流分散部材73a,73bを介して気流が分散するので、そのときに発生する空力騒音を低減することができる。
【0225】
以上のように第16の実施形態によれば、ホールシルの先端部分に気流分散部材を設けておくことでも、乗りかごの先端がホールシルに差し掛かった際に、気流の体積が瞬時に圧縮されることを防いで、狭隘部通過時の騒音を効果的に低減することができる。
【0226】
なお、
図32の例では、ホールシルの先端部分に2つの気流分散部材を設けたが、本実施形態ではかご正面方向への流路を非一様にすることが目的であり、気流分散部材の数は限定されるものではない。
【0227】
(第17の実施形態)
次に、第17の実施形態について説明する。
第17の実施形態では、上記第15の実施形態と上記第16の実施形態を組み合わせて、ホールドアとホールシルの両方に気流分散部材を設けるようにしたものである。
【0228】
図33は第17の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、
図33(a)は昇降路内を走行する乗りかごとカウンタウェイトを側面から見た図、同図(b)は乗りかごとホールドアをA方向から見た正面図である。また、
図34はホールシルに設けた気流分散部材の形状を示す図である。なお、上記第15の実施形態における
図31の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0229】
ホールドア19の上端部の乗りかご11の正面側(昇降路13の乗場側に対向する面)には、2つの板状の気流分散部材71a,71b(
図33では気流分散部材71aのみを図示)が水平方向に並設されている。この気流分散部材71a,71bは、所定の厚みを有し、ホールドア19の上端部の中央付近に間隔を空けて配置される。
【0230】
一方、ホールシル17の先端部の乗りかご11と対向面に対しても、2つの波板状の気流分散部材74a,74bが水平方向に並設されている。この気流分散部材74a,74bは、所定の厚みを有し、ホールシル17の先端部の乗りかご11のかごドア14と対向する面の中央付近に間隔を空けて配置される。
図34に示すように、この気流分散部材74a,74bの表面には複数の半円筒の溝75が昇降方向に形成されている。
【0231】
このような構成によれば、乗りかご11の下降時あるいは上昇時に乗りかご11の先端部がホールドア19の突出部などの狭隘部72に差し掛かった際に、気流分散部材71a,71bを介して気流が分散して流れるので、気流が一度に堰き止められることがなくなり、乗りかご11の先端部とホールドア19の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性をより壊すことができる。その結果、気流の体積変化がさらに緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0232】
また、乗りかご11の先端部つまりエプロン16の下端部がホールシル17に差し掛かった際も、気流分散部材74a,74bを介して気流が分散して流れる。つまり、気流分散部材74a,74bの厚みで、エプロン16の下端部とホールシル17の突出部との間に形成されるかご正面方向への流路の一様性が壊れる。この場合、
図34に示したように、気流分散部材74a,74bの表面には複数の溝75が形成されているので、これらの溝75を介して気流がより分散されることになり、その結果、気流の体積変化が緩和されて、狭隘部通過時の空力騒音が低減される。
【0233】
このように第17の実施形態によれば、乗りかごとホールドアとの干渉で発生する空力騒音、および、乗りかごとホールシルとの干渉で発生するバ空力騒音の両方を低減して、よりいっそう快適な走行環境を提供できる。
【0234】
なお、
図33の例では、ホールドアの上端部に2つの気流分散部材を設けたが、本実施形態ではかご正面方向への流路を非一様にすることが目的であり、気流分散部材の数は限定されるものではない。
【0235】
また、気流分散部材を波板状としたが、特にこの形状に限定されるものではなく、例えばのこぎり波状などの他の形状であってもよい。
【0236】
(第18の実施形態)
次に、第18の実施形態について説明する。
【0237】
第18の実施形態では、これまでの実施形態を全て包括した例を示すものであり、乗りかご上下に厚み付き気流分散部材と気流発生装置を設け、さらに、カウンタウェイト側にも厚み付き気流分散部材と気流発生装置を設けると共に、ホールドアとホールシルにも気流分散部材を設けた構成としている。
【0238】
図35は第18の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図である。なお、各部の構成は上述した各実施形態と同様であり、ここでは同一符号を付して、その説明を省略する。
【0239】
このような構成によれば、乗りかご11の先端部がホールドア19の先端部やホールシル17に差し掛かった場合、かごシル15の部分がホールドア19の先端部やホールシル17などの狭隘部に差し掛かった場合、さらには乗りかご11とカウンタウェイト41とすれ違うタイミングにおいても、気流の体積が瞬時に圧縮されることを抑制できるので、空力騒音を低減して快適な走行環境を提供することが可能となる。
【0240】
ここで、
図36および
図37を参照して、本実施形態の効果について説明する。
【0241】
図36は乗りかごのエプロンに気流分散部材を設けた場合の騒音低減効果を示す図であり、乗りかごが下降方向に走行しているときの騒音の変化を表している。
【0242】
マルで囲んだ部分がエプロンの下端部がホールシルに差し掛かったときに発生する騒音レベルを表わす。点線は気流分散部材なしの騒音レベルである。エプロンの下端部に気流分散部材を付けて厚みを部分的に変えることで、狭隘部通過時の空力騒音が気流分散部材を取り付ける前に比べて約15%低減されることが明らかになった。
【0243】
図37は昇降路のホールシルに気流分散部材を設けた場合の騒音低減効果を示す図であり、乗りかごが下降方向に走行しているときの騒音の変化を表している。
【0244】
マルで囲んだ部分がエプロンの下端部がホールシルに差し掛かったときに発生する騒音レベルを表わす。点線は気流分散部材なしの騒音レベルである。ホールシルの先端部に気流分散部材を付けて厚みを部分的に変えることで、狭隘部通過時の空力騒音が気流分散部材を取り付ける前に比べて約30%低減されることが明らかになった。
【0245】
すなわち、両ケースともに、狭隘部での流路の断面積は気流分散部材を取り付けることによって縮小され、流路内の流速は増速されるにも関わらず、空力騒音は低減する。これは、かご正面方向に一様な流路の場合には、乗りかごの先端部が狭隘部に差し掛かった際に、かご正面全体にわたって瞬時に気流の体積変化が生じることになり、大きな空力騒音の発生に繋がるが、エプロンやホールシルなどに気流分散部材を設け、かご正面方向に流路面積を変化させた場合には、乗りかごの先端部が狭隘部に差し掛かった際にも、流路断面が凹になった部分に流れが逃げていくため、気流の体積がかご正面全体にわたって瞬時に圧縮されることにならず、単極子音源である空力騒音の発生が抑えられると考えるからである。
【0246】
本実施形態はこのような実機試験から得られた知見に基づくものであり、エプロンに厚みを有する気流分散部材を取り付け、かご正面方向に厚みの異なる形態にすることで気流分散部材がホールシルにかかる際の気流の体積変化を緩和させて、狭隘部通過時の空力騒音や振動を低減することが可能となる。
【0247】
また、同様の気流分散部材をカウンタウェイトにも設けることにより、乗りかごとカウンタウェイトがすれ違う際の空力騒音や振動を低減できるようになる。さらにプラズマ気流発生装置を併用して所定のタイミングで気流を発生させることで、気流の体積変化がさらに緩和され、よりいっそ空力騒音や振動を低減することが可能となる。また、同様の気流分散部材をホールドアヘッダ部分や、ホールシルに設けることで、騒音低減効果がより一層上がる。
【0248】
なお、本実施形態の主旨は、エレベータの乗りかごがホールシルなどの昇降路狭隘部に差し掛かった際やカウンタウェイトとすれ違う際にも、気流の体積がかご正面全体にわたって瞬時に圧縮されることが無いように、かご正面方向に厚みを変化させた気流分散部材をエレベータおよびホールドアヘッダやホールシル部などの狭隘部に備えるというものであり、既述してきた各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を適宜変形して具体化できるのはもちろんである。また、気流発生装置に関しても形状や個数や設置位置、制御方法に関しては適宜な組み合わせによって実施できるのはもちろんである。
【0249】
要するに、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。