特許第5653273号(P5653273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5653273自動販売機の断熱装置および自動販売機の断熱材の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653273
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】自動販売機の断熱装置および自動販売機の断熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/10 20060101AFI20141218BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   G07F9/10 101C
   F25D23/06 T
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-73781(P2011-73781)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-208724(P2012-208724A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100100000
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】楠部 晃
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−331253(JP,A)
【文献】 特開平09−265567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/10
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品収納庫の外壁部の内側に配設される自動販売機の断熱装置であって、前記外壁部の背面の内側に配設される板状の背面断熱材と、前記外壁部の背面に隣接する外壁部の側面、天面または底面に配設される板状の隣接面断熱材と、を有し、
前記隣接面断熱材又は前記背面断熱材に、一部分が他の部分より弾性係数が小さい部分を一体形成して設け、前記隣接面断熱材と前記背面断熱材とを外壁部に組み付けた際、前記弾性係数が小さい部分が弾性変形した状態で当接している
ことを特徴とする自動販売機の断熱装置。
【請求項2】
前記弾性係数の小さい部分が前記隣接面断熱材又は前記背面断熱材から突出した1つ又は複数の突部からなることを特徴とする請求項1記載の自動販売機の断熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動販売機の断熱装置に用いられる前記突部を有する断熱材を製造する断熱材の製造方法であって、前記突部に対応する窪み部が形成された枠体内、または、中子により前記突部に対応する窪み部が形成された枠体内に、発泡性樹脂が注入されることにより、前記突部を有する断熱材を一度に一体成形することを特徴とする自動販売機の断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機の断熱装置および自動販売機の断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却商品(いわゆるコールド商品)や加温商品(いわゆるホット商品)を販売する自動販売機では、前面扉(外扉とも称せられる)を開閉自在に支持する略箱形の自動販売機本体に、商品を収納している商品収納庫が設けられており、この商品収納庫の外殻部分が断熱構造とされている。
【0003】
図23および図24は、自動販売機本体の商品収納庫が設けられている箇所を簡略的に示す平面断面図および要部拡大平面断面図であり、これらの図における、1は自動販売機本体、2は商品が収納される商品収納庫、3は商品収納庫2の外壁部、である。なお、一般には、商品収納庫2の外壁部は、自動販売機本体1の外壁部と、底面部以外の箇所(すなわち、背面、左右側面、天面)では共用されている。また、図示しないが、商品収納庫2の前面開口部が断熱構造の内扉で開閉可能とされている。
【0004】
図23に示すように、商品収納庫2の外壁部3は、前面部が開口された略箱形状の金属板から構成されており、外壁部3の各面の内側に板状の断熱材4(4A、4B、4C)が配設されることにより断熱装置が構成されている。つまり、商品収納庫2の外壁部3の背面3aの内側に板状の背面断熱材4Aが配設され、外壁部3の左側面3bの内側に板状の左側面断熱材4Bが配設され、外壁部3の右側面3cの内側に板状の右側面断熱材4Cが配設され、これらの外壁部3および断熱材4により断熱装置が構成されている。なお、商品収納庫2の外壁部3の左右前端部3d、3eは内側に屈曲され、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの前端部の配設位置を規制している。
【0005】
断熱材4は、商品収納庫2の外壁部3の大きさにほぼ対応した寸法に形成されるが、全く同一寸法を目指して断熱材4を形成すると、外壁部3や断熱材4の製造時の寸法誤差により、断熱材4が外壁部3の内側に収納できなかったり、断熱材4を圧縮しながら外壁部3の内側に収納することとなって多くの手間や時間がかかったりすることがある。したがって、このような組み付け時の作業性などを考慮して、断熱材4は外壁部3の内側の寸法よりも僅かではあるが小さく製造され、確実に、かつ容易に外壁部3の内側に収納できるよう図られる。
【0006】
このため、断熱材4(4A、4B、4C)同士を合わせる箇所(自動販売機本体1の左右奥端部)では、図22に示すように、断熱材4A、4B、4Cの間に隙間Sが発生し、このままでは、この隙間Sから商品収納庫2の熱が漏洩したり、外部からの熱が侵入したりする。これに対処する方法として、図25に示すように、従来は、左右の側面断熱材4B、4Cの後端部にスポンジPやパッキンを貼り付け、スポンジPやパッキンを圧縮変形させるように配設して隙間Sを埋めたり、図26(a)、(b)に示すように、隙間Sの内側部分にスポンジPやパッキンを貼り付けて隙間Sを覆ったりしている。
【0007】
なお、自動販売機の断熱構造が開示されている文献としては、特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−116385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図25図26(a)、(b)に示すように、スポンジPやパッキンを貼り付ける場合には、上下方向に細長くて腰がないスポンジPやパッキンを側面断熱材4B、4Cの後端部や、隙間Sに対応する箇所に真直ぐに貼り付けなければならないので、作業を行う者に熟練を要して、品質が安定しなくて断熱性能が低下したり、多くの作業時間を要して作業能率の低下を招いたりする課題があった。
【0010】
また、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、スポンジPやパッキンを剥がす作業が必要となるとともに、スポンジPやパッキンの一部が断熱材に付着して残ってしまうため、付着したスポンジPやパッキンの部分を取除く作業が必要となる場合もあり、これらの作業にも多くの作業時間を要していた。
【0011】
本発明は上記課題を解決するもので、品質が安定しなくて断熱性能が低下したり、多くの作業時間を要して作業能率の低下を招いたりすることがない、自動販売機の断熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、商品収納庫の外壁部の内側に配設される自動販売機の断熱装置であって、前記外壁部の背面の内側に配設される板状の背面断熱材と、前記外壁部の背面に隣接する外壁部の側面、天面または底面に配設される板状の隣接面断熱材と、を有し、前記隣接面断熱材又は前記背面断熱材に、一部分が他の部分より弾性係数が小さい部分を一体形成して設け、前記隣接面断熱材と前記背面断熱材とを外壁部に組み付けた際、前記弾性係数が小さい部分が弾性変形した状態で当接していることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、商品収納庫の外壁部の内側に、背面断熱材と隣接面断熱材とを配設すると、前記隣接面断熱材の後端部と、これに対向する前記背面断熱材の端部との少なくとも一方に形成した弾性係数が小さい部分が、対向する断熱材に弾性変形した状態で当接する。これにより、断熱材同士を合わせる箇所、すなわち商品収納庫の角部での隙間が前記弾性係数が小さい部分で埋められたり塞がれたりする。この場合に、前記弾性係数が小さい部分は断熱材自体に形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、断熱材の組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができる。
【0014】
また、本発明は、前記弾性係数の小さい部分が前記隣接面断熱材又は前記背面断熱材から突出した1つ又は複数の突部からなることを特徴とする。この構成により、簡単な構成で、前記弾性係数が小さい部分をなすことができる。
【0015】
また、本発明は、上記の自動販売機の断熱装置に用いられる前記突部を有する断熱材を製造する断熱材の製造方法であって、前記突部に対応する窪み部が形成された枠体内、または、中子により前記突部に対応する窪み部が形成された枠体内に、発泡性樹脂が注入されることにより、前記突部を有する断熱材を一度に一体成形することを特徴とする。この製造方法によれば、比較的簡単な方法で、突部を有する断熱材を一度に一体成形することができて、作業能率も良好となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、前記隣接面断熱材又は前記背面断熱材の一部分が他の部分より弾性係数が小さい部分を設けることにより、断熱材同士が対向する(合わせられた)箇所、すなわち商品収納庫の角部(コーナー部)での隙間を前記弾性係数が小さい部分で良好に埋めたり塞いだりすることができて、良好な断熱性能を得ることができる。さらに、前記弾性係数が小さい部分は断熱材自体に一体形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、断熱材の組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができ、作業能率も良好となる。さらに、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、従来行っていたようなスポンジやパッキンを剥がす作業や、付着したスポンジやパッキンの部分を取除く作業も不要となり、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置(詳しくは、断熱装置を備えた自動販売機の、自動販売機本体の商品収納庫が設けられている箇所)の平面断面図である。
図2】同第1の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図3】同第1の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図4】同第1の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
図5】同第1の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の製造方法を示す要部拡大断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図7】(a)〜(c)は、それぞれ同第2の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
図8】同第2の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の製造方法を示す要部拡大断面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図10】(a)〜(c)は、それぞれ同第3の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
図11】同第3の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の製造方法を示す要部拡大断面図である。
図12】本発明の第4の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図13】(a)〜(c)は、それぞれ同第4の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
図14】同第4の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の製造方法を示す要部拡大断面図である。
図15】本発明の第5の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図16】同第5の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
図17】同第5の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の製造方法を示す要部拡大断面図である。
図18】本発明の第6の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置(詳しくは、断熱装置を備えた自動販売機の、自動販売機本体の商品収納庫が設けられている箇所)の平面断面図である。
図19】同第6の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図20】同第6の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図21】本発明の第7の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置における断熱材の平面断面図である。
図22】同第7の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図23】従来の自動販売機の断熱装置(詳しくは、従来の断熱装置を備えた自動販売機の、自動販売機本体の商品収納庫が設けられている箇所)の平面断面図である。
図24】同従来の自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図25】同従来の自動販売機の断熱装置の要部拡大平面断面図である。
図26】(a)および(b)は、それぞれ同従来の自動販売機の断熱装置における断熱材の変形例を示す要部拡大平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る自動販売機の断熱装置および自動販売機の断熱材の製造方法を図面に基づき説明する。なお、従来の自動販売機の構成要素と略同様な機能のものには同符号を付す。
【0019】
図1および図2は、本発明の実施の形態に係る断熱装置を備えた自動販売機の、自動販売機本体の商品収納庫が設けられている箇所を簡略的に示す平面断面図および要部拡大平面断面図である、これらの図における、1は自動販売機本体、2は商品が収納される商品収納庫、3は商品収納庫2の外壁部、である。なお、一般には、商品収納庫2の外壁部は、自動販売機本体1の外壁部と、底面部以外の箇所(すなわち、背面、左右側面、天面)では共用されている。また、図示しないが、商品収納庫2の前面開口部が断熱構造の内扉で開閉可能とされている。
【0020】
図1に示すように、商品収納庫2の外壁部3は、前面部が開口された略箱形状の金属板から構成されており、外壁部3の各面の内側に板状の断熱材4(4A、4B、4C)が配設されることにより断熱装置が構成されている。つまり、商品収納庫2の外壁部3の背面3aの内側に板状の背面断熱材4Aが配設され、外壁部3の左側面3bの内側に一方の隣接面断熱材としての板状の左側面断熱材4Bが配設され、外壁部3の右側面3cの内側に他方の隣接面断熱材としての板状の右側面断熱材4Cが配設され、これらの外壁部3および断熱材4により断熱装置が構成されている。なお、商品収納庫2の外壁部3の左右前端部3d、3eは内側に屈曲され、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの前端部の配設位置を規制している。また、この実施の形態では、背面断熱材4Aが、商品収納庫2の外壁部3における背面3aの全幅にわたって延びるように配設されており、左側面断熱材4Bの後端部および右側面断熱材4Cの後端部が、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に対向する姿勢で配設されている。また、各断熱材4(4A、4B、4C)は、発泡ウレタンなどの断熱性および弾性を有するなどの発泡性樹脂材などで構成されている。
【0021】
ここで、左側面断熱材4Bの後端部と右側面断熱材4Cの後端部とには、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に向けて突出して弾性変形した状態で当接する突部(左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cにおける一部分が他の部分より弾性係数が小さい部分である低弾性部の一例)5(5A)がそれぞれ一体形成されている。この実施の形態では、前記突部5Aは、内側(すなわち、左側面断熱材4Bは右側、右側面断熱材4Cは左側)ほど後方に突出する傾斜面で形成されており、左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとを外壁部3の内側に配設した際に、前記突部5Aが背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に、弾性変形した状態で当接する。
【0022】
上記構成により、商品収納庫2の外壁部3の内側に、まず背面断熱材4Aを配設し、次に隣接面断熱材としての左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとを配設すると、左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとの後端部に形成した傾斜面からなる突部5(5A)が、これに対向する背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に、圧縮されて弾性変形した密接状態で当接する。これにより、断熱材4同士を突き合わせる箇所、すなわち商品収納庫3の角部(コーナー部)での隙間の一部が突部5(5A)で埋められたり塞がれたりし、良好な断熱性を維持できる。また、この場合に、背面断熱材4Aに対して、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cは突部5(5A)、すなわち、対向部分の一部だけで当接するので、組み付け作業も容易に行うことができる。また、突部5(5A)は左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cに一体形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cの組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができる。すなわち、従来のように、断熱材にスポンジやパッキン、またはシール用の別部材などを貼り付ける場合には、作業を行う者に熟練を要して、品質が安定しなくて断熱性能が低下したり、多くの作業時間を要して作業能率の低下を招いたりする不具合があるが、本発明によればこのような不具合を発生することなく、能率よく組み付け作業を行うことができる。
【0023】
さらに、突部5(5A)は左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cに一体形成されているので、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、従来行っていたようなスポンジやパッキンを剥がす作業や、付着したスポンジやパッキンの部分を取除く作業も不要となり、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0024】
図3に示す断熱装置では、突部5Aが、内側ほど後方に突出する傾斜面で形成されている場合を述べたが、これに限るものではなく、図4に示すように、突部5Aの内側寄り部分に平坦面5aを形成したものを用いてもよい。
【0025】
また、図示しないが、商品収納庫2の外壁部3の天面部の内側に板状の天面断熱材が配設され、商品収納庫2の外壁部3の底面部の内側に板状の底面断熱材が配設されている。そして、これらも同様な構造とする(すなわち、天面断熱材や底面断熱材の後端部にも同様の構造の突部を形成する)ことにより、良好な断熱性を有する商品収納庫2を得ることができ、また、能率よく組み付け作業を行うことができ、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0026】
前記左側面断熱材4Bや右側面断熱材4C、あるいは天面断熱材や底面断熱材は以下のように製造することが好ましい。図5に簡略的に示すように、例えば、平板状の上枠7Aと、前記突部5(5A)に対応して傾斜面からなる窪み部6Aが形成された下枠8Aとからなる枠体9Aの内部に、発泡性ウレタンなどの発泡性樹脂を注入する。これにより、前記突部5(5A)を有する断熱材4B、4Cなどをそれぞれ一度に一体成形する。この製造方法によれば、比較的簡単な方法で、突部5(5A)を有する断熱材4を一度に一体成形することができて、製造工程での作業能率も良好となる。
【0027】
また、突部5の形状を傾斜面に代えて、図6に示すように、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部の内側寄り部分のみに、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に向けて突出して弾性変形した状態で当接する低弾性部としての突部(凹凸部)5(5B)をそれぞれ一体形成してもよい(第2の実施の形態)。この図6に示す断熱装置では、突部5Bが、後方に断面矩形状に突出する形状とされている。
【0028】
この構成によっても、商品収納庫2の外壁部3の内側に、背面断熱材4Aと左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとを配設すると、左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとの突部5(5B)が、これに対向する背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に、圧縮されて弾性変形した密接状態で当接する。これにより、断熱材4同士を突き合わせる箇所、すなわち商品収納庫3の角部(コーナー部)での隙間の一部が突部で埋められたり塞がれたりし、断熱性を良好に維持することができる。また、この場合に、背面断熱材4Aに対して、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cは突部5(5B)、すなわち、対向部分の一部だけで当接するので、組み付け作業も容易に行うことができる。また、突部5(5B)は左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cに一体形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cの組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができる。さらに、突部5(5B)は左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cに一体形成されているので、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、従来行っていたようなスポンジやパッキンを剥がす作業や、付着したスポンジやパッキンの部分を取除く作業も不要となり、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0029】
なお、図6に示す断熱装置の場合には、突部5Bが、断面矩形状に形成されている場合を述べたが、これに限るものではなく、図7(a)に示すように、突部5Bの先端部部分に傾斜面5bを形成したり、図7(b)に示すように、突部5Bの断面形状を傾斜形状としたり、図7(c)に示すように、突部5Bの断面形状を傾斜形状とするとともに先端部に平坦部5cを形成してもよい。
【0030】
また、図示しないが、商品収納庫2の外壁部3の天面部の内側に板状の天面断熱材が配設され、商品収納庫2の外壁部3の底面部の内側に板状の底面断熱材が配設されている。そして、これらも同様な構造とする(すなわち、天面断熱材や底面断熱材の後端部にも同様の構造の突部を形成する)ことにより、良好な断熱性を有する商品収納庫2を得ることができ、また、能率よく組み付け作業を行うことができ、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0031】
前記左側面断熱材4Bや右側面断熱材4C、あるいは天面断熱材や底面断熱材は、図8に簡略的に示すように、例えば、平板状の上枠7Bと、前記突部5(5B)に対応して傾斜面からなる窪み部6Bが形成された下枠8Bとからなる枠体9Bの内部に、発泡性ウレタンなどの発泡性樹脂を注入することにより製造する。この製造方法によれば、比較的簡単な方法で、突部5(5B)を有する断熱材4を一度に一体成形することができて、製造工程での作業能率も良好となる。
【0032】
上記の第1、第2の実施の形態では、突部5A、5Bを、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部の内側寄り部分のみに形成した場合を述べたが、これに限るものではなく、低弾性部としての突部5(5C、5D)を、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cなどの後端部の複数箇所に設けてもよい。図9に示す断熱装置では、突部5(5C)を、断熱材4である左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部の内側寄り部分と外側寄り部分との2箇所に一体形成している(第3の実施の形態)。また、図12に示す断熱装置では、突部5(5D)を、断熱材4である左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部の内側寄り部分と外側寄り部分と中間部分との3箇所に一体形成している(第4の実施の形態)。
【0033】
これらの構成によれば、断熱材同士(左側面断熱材4Bと背面断熱材4A、および右側面断熱材4Cと背面断熱材4A)が対向する箇所に、突部5A、5Bが1つだけ形成されている場合と比較して、多くの突部5C、5Dが形成されるため、断熱性能を向上させることが可能となる。
【0034】
なお、図9図12に示す断熱装置の場合には、突部5Bが、断面矩形状に形成されている場合を述べたが、これに限るものではなく、図10(a)、図13(a)に示すように、突部5C、5Dの先端部部分に左右の端部ほど突出するように傾斜面5dを形成したり、図10(b)、図13(b)に示すように、突部5C、5Dの断面形状を傾斜形状としたり、図10(c)、図13(c)に示すように、突部5C、5Dの断面形状を傾斜形状とするとともに先端部に平坦部5eを形成してもよい。
【0035】
また、図示しないが、商品収納庫2の外壁部3の天面部の内側に板状の天面断熱材が配設され、商品収納庫2の外壁部3の底面部の内側に板状の底面断熱材が配設されている。そして、これらも同様な構造とする(すなわち、天面断熱材や底面断熱材の後端部にも同様の構造の突部を形成する)ことにより、良好な断熱性を有する商品収納庫2を得ることができ、また、能率よく組み付け作業を行うことができ、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0036】
前記左側面断熱材4Bや右側面断熱材4C、あるいは天面断熱材や底面断熱材は、図11図14に簡略的に示すように、断熱材4に対応する箱型の凹部を有する下枠8Cの内部に、突部5C、5D間の窪み部分に対応する形状の中子10、11を配設した状態で、平板状の上枠7Cを組み付け、次に、これらの上枠7Cと下枠8Cとの内部に、発泡性ウレタンなどの発泡性樹脂を注入することにより製造する。この製造方法によれば、比較的簡単な方法で、突部5(5C、5D)を有する断熱材4を一度に一体成形することができて、製造工程での作業能率も良好となる。
【0037】
上記の第1〜第4の実施の形態では、突部5A〜5Dを、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cに形成した場合を述べたが、これに限るものではなく、図15図16に示すように、低弾性部としての突部5(5E)を、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部に対向する、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に、一体形成してもよい(第5の実施の形態)。
【0038】
この場合には、商品収納庫2の外壁部3の内側に、背面断熱材4Aと左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとを配設すると、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に一体形成した突部5(5E)が、左側面断熱材4Bと右側面断熱材4Cとの後端部に、圧縮されて弾性変形した密接状態で当接する。これにより、断熱材4同士を突き合わせる箇所、すなわち商品収納庫3の角部(コーナー部)での隙間の一部が突部で埋められたり塞がれたりし、断熱性を良好に維持することができる。
【0039】
また、この場合に、背面断熱材4Aに対して、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cは突部5(5E)、すなわち、対向部分の一部だけで当接するので、組み付け作業も容易に行うことができる。また、突部5(5E)は背面断熱材4Aに一体形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cの組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができる。さらに、突部5(5E)は背面断熱材4Aに一体形成されているので、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、従来行っていたようなスポンジやパッキンを剥がす作業や、付着したスポンジやパッキンの部分を取除く作業も不要となり、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0040】
なお、図15図16に示す場合には、突部5(5E)が断面半円形状とされているが、これに限るものではなく、傾斜面形状や、矩形形状など、断面で一部が圧接する形状であればよい。また、突部5(5E)を形成する位置も、図15に示すように、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分における、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部の内側寄り部分に対向する箇所に形成したり、中央部に形成したりするとよい。また、突部5(5E)の数も、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分における、左側面断熱材4Bや右側面断熱材4Cの後端部に対向する箇所において、1つ形成してもよいし、2つ以上形成してもよい。
【0041】
また、図示しないが、商品収納庫2の外壁部3の天面部の内側に板状の天面断熱材が配設され、商品収納庫2の外壁部3の底面部の内側に板状の底面断熱材が配設されている。そして、これらも同様な構造とする(すなわち、背面断熱材4Aの上端部または下端部の前面部分にも同様の構造の突部を形成する)ことにより、良好な断熱性を有する商品収納庫2を得ることができ、また、能率よく組み付け作業を行うことができ、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0042】
前記背面断熱材4Aは以下のように製造することが好ましい。図17に簡略的に示すように、例えば、平板状の上枠7Eと、前記突部5(5E)に対応した窪み部6Eが形成された下枠8Eとからなる枠体9Eの内部に、発泡性ウレタンなどの発泡性樹脂を注入する。これにより、前記突部5(5E)を有する背面断熱材4Aを一度に一体成形する。この製造方法によれば、比較的簡単な方法で、突部5(5E)を有する背面断熱材4Aを一度に一体成形することができて、製造工程での作業能率も良好となる。
【0043】
上記の第1〜第5の実施の形態では、背面断熱材4Aが、商品収納庫2の外壁部3における背面3aの全幅にわたって延びるように配設され、左側面断熱材4Bの後端部および右側面断熱材4Cの後端部が、背面断熱材4Aの左右の端部の前面部分に対向する姿勢で配設されている場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、図18図20に示すように、左側面断熱材4Bおよび右側面断熱材4Cが、商品収納庫2の外壁部3における左側面3bおよび右側面3cの全幅にわたって延びるように配設され、背面断熱材4Aの左端部と右端部とが、左側面断熱材4Bの後端部内面および右側面断熱材4Cの後端部内面に対向する姿勢で配設されていてもよい(第6の実施の形態)。
【0044】
この場合には、例えば、図18図20に示すように、背面断熱材4Aの左端部と右端部とに、左側面断熱材4Bの後端部内面および右側面断熱材4Cの後端部内面に向けて突出して弾性変形した状態で当接する低弾性部としての突部(凹凸部)5(5F)を一体形成している。なお、前記突部5Fは、図20に示すように、前寄り部分ほど左側または右側に突出する傾斜面で形成したり、断面矩形状に形成したり、矩形形状や半円形状など、断面で一部が圧接する形状であればよい。また、突部5(5F)の数も、背面断熱材4Aの左端部または右端部において、1つ形成してもよいし、2つ以上形成してもよい。また、これに代えて、左側面断熱材4Bの後端部内面および右側面断熱材4Cの後端部内面に突部(凹凸部)5を一体形成してもよい(図示せず)。
【0045】
この構成によっても、断熱材4同士を突き合わせる箇所、すなわち商品収納庫3の角部(コーナー部)での隙間の一部が突部5(5F)で埋められたり塞がれたりし、断熱性を良好に維持することができる。また、背面断熱材4Aの左端部と右端部は突部5(5F)、すなわち、対向部分の一部だけで当接するので、組み付け作業も容易に行うことができる。また、突部5(5F)は背面断熱材4Aに一体形成されているので、作業者に熟練を要したりすることがなく、また、背面断熱材4Aの組み付け作業も容易かつ短時間で行うことができる。さらに、突部5(5F)は背面断熱材4Aに一体形成されているので、自動販売機をリサイクルするための解体時等に、従来行っていたようなスポンジやパッキンを剥がす作業や、付着したスポンジやパッキンの部分を取除く作業も不要となり、リサイクルのための解体作業の作業能率も良好となる。
【0046】
また、上記第1〜第6の実施の形態では、断熱材4同士を突き合わせる箇所に、低弾性部としての突部5を形成した場合を述べたが、これに限るものではなく、図22図23に示すように、左側面断熱材4Bの後端部や右側面断熱材4Cの後端部に多数の孔11を形成したり、切欠部12を形成したりするなどして、その一部分が他の部分より弾性係数が小さい低弾性部を設け、前記隣接面断熱材と前記背面断熱材とを外壁部に組み付けた際、前記低弾性部13が弾性変形した状態で当接しているよう構成すればよい。これによっても、上記実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、断熱装置が、自動販売機の商品収納庫の外壁部の内側に配設されるものの場合を述べ、この場合は特に好適に用いることができるが、これに限るものではなく、この断熱装置の構造や製造方法を、一般の冷蔵庫の断熱装置や、ショーケースの断熱装置として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動販売機本体
2 商品収納庫
3 外壁部
3a 背面
3b 左側面
3c 右側面
4 断熱材
4A 背面断熱材
4B 左側面断熱材
4C 右側面断熱材
5(5A〜5F) 突部
6A〜6E 窪み部
7A〜7F 上枠
8A〜8F 下枠
9A〜9F 枠体
10、11 中子
図1
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