(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653350
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】抵抗差による技法により硬膜穿刺を防止しながら硬膜外腔を探知する装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20141218BHJP
A61M 5/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
A61M5/14 485B
A61M5/00 331Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-514203(P2011-514203)
(86)(22)【出願日】2009年6月12日
(65)【公表番号】特表2011-524779(P2011-524779A)
(43)【公表日】2011年9月8日
(86)【国際出願番号】IN2009000340
(87)【国際公開番号】WO2009153807
(87)【国際公開日】20091223
【審査請求日】2012年5月11日
(31)【優先権主張番号】1491/CHE/2008
(32)【優先日】2008年6月19日
(33)【優先権主張国】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510332992
【氏名又は名称】ベティ,ラヴィンダー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】ベティ,ラヴィンダー
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04414983(US,A)
【文献】
国際公開第2007/093051(WO,A1)
【文献】
米国特許第05205828(US,A)
【文献】
特開昭52−131685(JP,A)
【文献】
特表平9−501338(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/111859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの壁(6、4)内の硬膜外腔(5)を探知する装置であって、
シリンジピストン(15)を含むシリンジであって、前記シリンジピストン(15)は、抵抗差によって前記硬膜外腔(5)への前記シリンジピストン(15)の前進時に第1のシリンジバレル(7)内に収容されている空気又は流体を放出するために、前記第1のシリンジバレル(7)内で摺動可能である、シリンジと、
針カニューレ(8)のハブに取り付けられた前記第1のシリンジバレル(7)と、
前記シリンジを包囲すると共に、前記シリンジピストン(15)の後側に単に接続されるフレーム(14)と、
前記フレーム(14)の前部に取り付けられ、前記フレームの前記シリンジピストンの後側への前記接続のみによって前記シリンジピストンに接続されると共に、前記針カニューレ(8)のハブの近くに配置された、ウイング(13)と、を備える、装置。
【請求項2】
前記フレーム(14)は、第2のシリンジバレル(16)であり、前記第2のシリンジバレル(16)は、前記第1のシリンジバレル(7)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
穿孔弾性リング(24)が前記針カニューレ(8)に取り付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬膜外腔探知(locating)装置であって、同時に脊椎動物の脊柱での硬膜穿刺を防止する硬膜外腔探知装置に関し、より詳細には、特定の薬剤を注入するプロセスにおいて、また、同じ目的でカテーテルを通すために、空気又は生理食塩水を硬膜外腔に注入することによって麻酔科医が適切に探知することを可能にする現在知られている硬膜外腔探知システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
医療行為では、治療法、麻酔法及び診断法に硬膜外腔の確認が必要とされる。
【0003】
現在用いられている技法は高レベルな手技及び器用さに依存し、専門訓練を要する。これらの技法はとりたてて技術的な困難さ又は複雑さに関わるものではない。
【0004】
従来の方法では、空気又は食塩水を硬膜外腔に注入することによって硬膜外腔を探知する際に麻酔科医は自身の技量を用いる。麻酔科医は、該腔を探知している間、患者が適正な姿勢のままでいることを確実にする。脊柱において、硬膜外針は、その先端がちょうど棘間靭帯の深部に入った時点で所定位置に保持される。生理食塩水又は空気で充填されたシリンジが針のハブにしっかり取着される。硬膜外針はそのシャフト又はウイングを針のハブに取り付けた状態に保持したまま前進する。手によるピストン押圧によって一定圧力がシリンジ内に形成される。硬膜外針の先端が硬膜外腔に入ると、麻酔科医は、抵抗(friction)の急な消失を感じるため、加圧した生理食塩水を注入して硬膜外腔の位置を確認することができる。この方法を
図1により示す。
【0005】
この方法の主な不都合点は、腔を確定するのに時間がより長くかかり、技術的により多くを要求することである。
【0006】
この不都合点を解消するために、発明及び採用されてきた幾つかの方法又は装置がある。その際、発明者は各自、より単純な技術を有し、ユーザーフレンドリーであり、最新式である、自身の装置及び方法を特許請求している。
【0007】
従来技術に言及するために、本発明者は以下のような利用可能な発明及び装置を簡潔に記載する。
【0008】
特許文献1(Maan Hasan他)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明による装置は、加圧に適応するダイアフラムを有する。このダイアフラムは装置が加圧されると外方に膨張する。また、装置は針を接続するようになっている。幾つかの実施形態では、装置は空気又は食塩水で加圧されている。幾つかの他の実施形態では、装置は加圧流体の注入用の注入ポートを有する。この装置は
図2に示す。
【0009】
特許文献2(James F. Fitzgibbons他)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明による硬膜外腔探知装置は、第1の端及び第2の端、並びにそこへ延びる長手方向通路を備え、この第1の端はルアー・アセンブリに結合可能(coupleable)であり、また、この装置は、一端が本体部の他端に結合されていると共にもう一方の端がその上に1本又は複数本の手の指によって圧力をかけられることを可能にするように露呈している折り畳み式のベローズ室を備え、このベローズ室内の正圧によりベローズ室の形状の一体性が維持され、ベローズ室内の負圧又は無圧によりベローズ室の形状の折り畳みが促され、したがって、ルアー・アセンブリに結合されている針による硬膜外腔の探知が示され、ベローズ室の形状が折り畳むため、ベローズ室内の圧力の消失が1本又は複数本の手の指によって感知される。この装置は
図3に示す。
【0010】
特許文献3(Ian Y Yang他)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、一方向弁を介して正圧にすることができると共に圧力インジケーターで例示されるシリンジが硬膜外針と共に使用されるように設計され、正圧の消失が起こると硬膜外腔を確認して硬膜穿刺を防ぐ。長手方向ボアのある加圧用プランジャーを有するこの発明のシリンジハウジングが、該シリンジハウジングから圧力室にのみ空気を流入させる一方向弁を介して圧力室に接続される。針は針接続装置により圧力室に気密に接続される。圧力室に接続された圧力インジケーターは、針が硬膜外腔に入ったときの正圧の消失を客観的に示す。針からの正圧空気により硬膜を針の先からのけて、硬膜穿刺を防止する。この装置は
図4に示す。
【0011】
特許文献4(Antonio E. Martinez他)は、硬膜上腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、装置は、支持体及び管によって構成されるカニューレからなる。支持体内には軸方向にスリーブを取り巻き、支持体の後部に位置する磁石がある。カテーテルが患者の背中に挿入されて硬膜上腔に到達したとき、その減圧状態が圧力センサーによって検知され、磁石及び警報が作動する。この装置は
図5に示す。
【0012】
特許文献5(Bhupendra C, Patel)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、針アセンブリの針と連通する閉じた腔を画定している可撓性膜を有する針アセンブリを用いて、患者の体内にある硬膜外腔を探知する方法であって、硬膜外腔に隣接する針アセンブリの先端を位置決めするステップと、患者の体内での針アセンブリの先端の位置を確かめるために、可撓性膜が針アセンブリに対して内方に曲がるのか又は外方に曲がるのかを判断しながらアセンブリを体内に前進させるステップとを含む。この装置は
図6に示す。
【0013】
特許文献6(Bryan Vincent E.他)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、組織に対して最小限の損傷で組織を把持、保持、安定化及び選択的に解放するシステムが開示されている。このシステムはさらに、硬膜外腔への侵入を伝達する装置を含むことができる。遠位先端に末端ポートを囲む環状表面と、この環状表面からある角度で突出する、組織を把持及び制御する少なくとも1つのバーブとを有する管状部材が設けられている。各バーブは、管部材がその長手方向軸の周りを回転する場合に組織を把持するように構成された、鋭い縁部を有して形成されている。このシステムの一実施態様は、環状表面の周りに間隔を空けられている、複数の一方向のバーブを含む。このシステムはさらに、カニューレ等の管状部材が組織に直面して貫通したときの視覚的及び触覚的な指標を提供する、インジケーター機構を含むことができる。このシステムは、硬膜外カテーテル若しくは硬膜下カテーテル又はあらゆる種類のパッチの適切な配置を容易にする。この装置は
図7に示す。
【0014】
特許文献7(Federick C. Houghton)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、複合型硬麻/脊麻針の長さを可変に調整する調整装置及び該装置を実施する方法が開示されている。一変形形態では、調整装置は、硬麻針と脊麻針との各々が別個に嵌合され得る一対の実質的に同心状に配設された摺動部材を特徴とする。脊麻針に選択的に係合するばね部材が設けられている。ばね部材は、硬麻針を固定している摺動部材に固定されている一端と、ユーザーによって操作可能な自由端と、固定端と自由端との間に設けられ、脊麻針が貫通している少なくとも一つの通路又は孔とを有している。施術者のばね部材の作動によって、孔が脊麻針を係止し又は自由な摺動を許容するように構成されている。ばね部材の作動によって、施術者は、摺動部材間の軸方向の動きを制御することができ、それによって硬麻針に対する脊麻針の伸長長さを調整することができる。摺動部材は脊麻針と硬麻針との様々な組合せに対応する様々な形状又は寸法で構成されてもよい。この装置は、脊麻針若しくは硬麻針の一方若しくは双方と予め組み立てられて提供されてもよく、又は、脊麻針、硬麻針又はそれらの双方が別個に供給されて用いられてもよい。この装置は
図8に示す。
【0015】
特許文献8(Kedem Dan)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、スタイレットの後端が、シリンジ内にある変位可能なピストンに接続される。予め選択された分離箇所の2つの固定点間を移動するように制限されているピストンが、ラッチによってその後位置に固定される。ピストンを前方に付勢する手段が設けられている。この発明の別の実施形態によれば、装置はばねによって前方ピストンを付勢ピストンに接続することによって達成される。付勢ピストンは2つの位置の1つに設定することができる。後位置はばねを圧縮しない。前位置はばねを張り、変位可能なピストンを前方に付勢する。この発明の別の好適な実施形態では、スタイレットは全く使用されない。むしろ、針にカテーテル、好ましくは盲端型のカテーテルが備わっており、このカテーテルは針の先端から延び、変位可能なピストン及び付勢ピストンの双方を介して、シリンジの後端に出ている。針は前述のように挿入される。しかしながら、硬膜外腔に到達すると、変位可能なピストンが前方に急に移動し(jumps)、カテーテルの前先端を硬膜外腔組織に穿通させることでカテーテルの先端近くで孔が生じ、これらの孔が麻酔液の注入に即座に利用可能となる。この装置は
図9に示す。
【0016】
特許文献9(Ziko Abdul Rahman Osman)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、装置は、シリンジ容器の端に嵌合するローター収容室を備え、シリンジ針がこの収容室の端から突出すると共に、収容室を介してシリンジ容器と流体連通する。使用の際、針の先端が患者の硬膜外腔に入ったときにこの先端で受ける負圧が針を介して収容室に伝達され、ローターを回転させる。この回転は収容室の透明壁を通じて目視可能であるため、回転が見られるとすぐに施術者には硬膜外腔が見つかったことが分かる。使用の際、針が一端から突出すると共に、他端がシリンジ容器に嵌合する、ローター収容室から構成されるこの装置は、自封ユニットとして製造されてもよく、又は、シリンジ容器の固有の延長部を形成し、初めからシリンジ容器の一部として構成されてもよい。この装置は
図10に示す。
【0017】
特許文献10(Yuste Pascual Jose)は、硬膜外腔を探知する装置の作用及び構成を教示している。この発明によれば、硬膜外腔(epidural, peridural, or extradural spaces)を探知する装置は、種々の解剖学的構造を通る際に生じる様々な圧力を急な低下が起こるまで監視し、その急な低下により、硬膜外腔に到達したことを確かめることを可能にするように、連続した流れを与えることが可能な輸液ポンプによる等張生理食塩水溶液の注入用の針又はトロカールを備える。用途は、診断目的、鎮痛目的又は麻酔目的の化学薬品/医薬品の投与のための、硬膜外腔の探知である。この装置は
図11に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7,175,608号
【特許文献2】米国特許第6,773,417号
【特許文献3】米国特許第5,902,273号
【特許文献4】米国特許第4,919,653号
【特許文献5】米国特許第4,175,567号
【特許文献6】国際公開第05004947号
【特許文献7】メキシコ国出願公開特許第9603835号
【特許文献8】米国特許第5,205,828号
【特許文献9】英国特許出願公開第2226496号
【特許文献10】スペイン国特許出願公開第8706023号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
開示されている上記の発明のいずれにおいても、針のさらなる前進を止めることに対処していない。硬膜外腔に到達したら、手によるさらなる前進は手で止めねばならない。この止め方は、いかなる若干の慣性による手の前進も針をさらに移動させる可能性があり、場合によっては硬膜穿刺を引き起こすため、安全性の考慮がない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書において本発明者によって特許請求される本発明は、慣性によるさらなる手の前進があっても、硬膜外腔の確認後に針の前進を止める自動の方法を有する。
【0021】
本発明はシリンジ中の流体の加圧を可能にし、この加圧により、針の先端での抵抗差により硬膜外腔への針の刺入点で空気又は生理食塩水の自動注入をもたらし、それによって、空気又は生理食塩水を硬膜外腔に自動的に注入させる。
【0022】
本発明の主要な利点は、硬膜外腔の正確な探知、及び、それと同時に行われる、不慮の硬膜穿刺の防止である。本発明の他の目的は、人間工学的であり、経済的に費用効果的な、安全な技法である。
【0023】
本発明の概要は、本発明が抵抗差による技法に基づいて構成されており、空気又は生理食塩水を注入する試みにおいて、たった1箇所に、すなわちシリンジのピストンに一定圧力を加えるという利点を有することである。これにより、2つの段階的な動作、すなわち、同時に行われる、靭帯を穿通する針の前進、及び、流体が入ったシリンジ内での圧力形成と、その後に同時に行われ硬膜をさらに押しのける空気又は生理食塩水の注入、及び、針のハブのより近くに特別な方法で設置されているウイングを保持しているシリンジのピストンへの手による連続した押圧があっても針のさらなる移動の停止とが得られる。
【0024】
本発明の基本的な目的は、抵抗差による技法により硬膜外腔を探知することである。本発明の他の目的は、不慮の硬膜穿刺を減らすことである。他の所望の目的は、複雑性を減らすことである。本発明のさらなる目的は、装置の説明によって分かり、この目的は本発明の一部(part and parcel)を成す。
【0025】
次に本発明を、添付図面を参照して説明する。図面中、同様の参照符号は概して、異なる図を通して同じ部品を指す。また、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、代わりに本発明の技法を例示することに概して主眼が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来技法による2段階の硬膜外腔探知を示す図である。1は針のゆっくりとした前進を与えるのに用いる手を示す。2はピストンを押すのに用いる手を示す。3は圧縮された気泡を有する生理食塩水である。
図1の図面Aは針の先端が靭帯にあることを示し、
図1の図面Bは針の先端が硬膜外腔にあり、それを確認するために空気又は生理食塩水の注入することを示す。
【
図2】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図3】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図4】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図5】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図6】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図7】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図8】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図9】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図10】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図11】本明細書における従来技術として参照される装置を示す図である。
【
図12】硬膜外腔の構造を示す図である。4は硬膜嚢であり、5は硬膜外腔であり、6は靭帯である。
【
図13】抵抗差による技法の段階1を示す図であり、7はシリンジのバレルであり、8は硬膜外針であり、9は装置の移動方向であり、10は手により一定の力を加える場所及び方向である。
【
図14】抵抗差による技法の段階2を示す図であり、11はピストンの独立した前進であり、12は硬膜外腔への空気又は流体の射出である。13はハブのより近くの針の本体を覆って移動する別個のブロックに配置されたウイングである。14はウイングブロックをピストンに接続するフレームである。15はピストンである。
【
図15】抵抗差による同じ技法を用いて硬膜外腔を探知する装置の人間工学的に変更された別の設計を示す図である。この設計におけるウイングのブロックは、必要とされる場合に針の後退及び装置の方向変更に適している。
【
図16】シリンジ及びピストンのリムをトリミングすると共にシリンジ及びピストンの双方をより大きなシリンジの中空バレルで包囲することによって、硬膜外腔を探知する抵抗差を引き出す技法の実用的な方法を示す図である。16は大きな方のシリンジのバレルである。大きな方のシリンジのリムはハンドグリップ用のウイングとして働く。17は大きな方のシリンジのリムである。この設計は、実際の装置が製造され、さらなる設計が行われるまで、抵抗差を引き出すのに有用である。
【
図17】リバースピストン法(reverse piston method)に作用する設計を示す図であり、このリバースピストン法は、硬膜外腔を探知する抵抗差による技法の人間工学的及び実用的な別の変更形態である。プロトタイプは、穿孔部が針のハブの周りに取り付けられているピストンヘッドを示す。流体で充填した後に閉じられたバレルが、針とピストンヘッドとのこの組合せに対して覆うように遮蔽される。これはより人間工学的な利点を有する。実際の装置を製造する際、気密蓋で覆われたバレルの前部に充填ポートを組み入れることができる。これもまた人間工学的な利点を有し、ピストンのハンドルの必要性に応じて短くカットされる。必要とされる場合、この設計において示されているバレルのリムの代わりにウイングを組み入れることができる。18は針のハブに取り付けられた穿孔ピストンヘッドである。19は逆バレルである。
【
図18】硬膜外腔を探知する抵抗差による技法のリバースピストン法によって硬膜外腔を探知する装置のほぼ最終的な設計を示す図である。この変更形態では、穿孔ピストンヘッドが取り付けられている針は、バレルの前部に取り付けられている任意の2つのウイングを含む部材のようなスリーブを有する。20はウイングである。21はバレルの前部である。22はバレルの後部であり、この後部はねじ切り又はラッチによってその前部に接続される。
【
図19】ウイングのブロックがバレルの前部に取り付けられている針を示す
図18において述べた装置の前部材だけを示す図である。針ハブの周りに取り付けられたピストンヘッドに穿孔があることでスタイレットの配置が可能となる。23はスタイレットである。硬膜外腔の探知後、バレルの後部を外し、カテーテルをこの穿孔を通じて挿入することができる。
【
図20】針を覆うスリーブとして組み入れられている、ピンポイント穴付き弾性リングを示す図であり、この弾性リングは皮膚への針の刺入点まで調整される。24は弾性リングである。これは、靭帯が比較的柔らかい小児患者に追加抵抗を与える際に有用であると思われる。
【
図21】硬い壁に付随している任意の他の中空の腔を探知する抵抗差による技法の適用を示す図である。ここでは、ハブが穿孔ピストンヘッドと一緒に取り付けられているキャニュレイテッドスクリューを針の代わりに用いる。ハンドグリップ付きバレルがピストンヘッドの外表面にラッチされる。中空スクリューの先端を骨に刺入することで流体を射出させる。この結果、ラッチが外れる。25はハンドグリップであり、26はラッチである。この設計は、特定の状況で骨髄腔に流体を付与するために骨穿孔する際に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の好適な実施形態を、技法及び装置構成を理解するために添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
硬膜外腔を探知する装置のプロトタイプが
図13及び
図14に示されており、ここでは7はシリンジのバレルであり、15はバレル7の内部のシリンジのピストンであり、8は針8に取り付けられているのではなく針のハブ近くに配置されているウイングであり、14はウイングをピストンの後側に接続するフレームであり、このピストンの後側で手により加えられるウイング上の前進力が伝達される。10はピストンにかかる前進力であり、この前進力は、針の先端が靭帯6にあるときに初めに装置全体を移動させる(
図13の9)。針先端が硬膜外腔に通じると、針及びバレルの移動は靭帯が与える抵抗によって止まる。5は硬膜外腔であり、この硬膜外腔に針先端が通じ、針から流体を射出する。
【0029】
本発明は、主として自動式であって麻酔科医の裁量及び判断への依存がはるかに少ない方法で、硬膜外腔における硬膜外針の先端の適切な配置を容易にする装置を提供することによって、現在知られている硬膜外針の探知インジケーター構造の欠点に首尾よく対処する。本発明による装置の使用は、硬膜外麻酔における使用に限定されないことに留意されたい。むしろ、本発明による
図21の装置は、骨のような硬い壁に付随する中空の腔の探知が望まれる場合はいつでも、また、脊柱の骨化した靭帯及び脊柱の骨の壁を介して硬膜外腔を探知するために用いられてもよい。説明の目的で、本発明の装置はもっぱら硬膜外麻酔におけるその用途に関連してのみ以下に説明する。
【0030】
基本的な抵抗差による技法の説明にあたり、ここでは硬膜外腔を探知する装置(device or apparatus)の構成、発展及び用途を図面(figures and drawings)と共に記載する。
【0031】
バレル7中に空気又は生理食塩水を収容しているシリンジが、硬膜外針8に取り付けられ且つ固定され、脊柱靭帯6の深部に挿入される。針のハブ近くに配置されているウイング13によって、一定圧力10がピストン15の後側に加えられる。これらのウイングは針8に取り付けられるのではなく針のハブの近くに配置され、フレーム14を形成する延長部によってピストン15に接続される。これにより、装置全体の前進9を生じさせ、バレルの流体含量中に高圧を発生させることで、初めに針8を前進させて靭帯6に穿通させる。針8の先端が硬膜外腔5に通じると、抵抗の消失により流体12が強制的に射出され、硬膜襄4を押しのける。同時に、この瞬時の針8と靭帯6との間の相対的に高い抵抗が「ひっかかり(catch)」を与え、針8の先端のさらなる前進を止めることで硬膜4を穿刺から保護する。これが抵抗差による技法の基本である。
【0032】
本発明の装置の実施にあたり、装置は抵抗差による技法に基づいて作用する。一定圧力10がウイング13によってピストン15に加えられると、針8の先端を通る流体の通路対する抵抗は、針8の先端が靭帯6にあるときに最大となり、硬膜外腔5にちょうど入ったときに最小となる。第1の例では、針8が靭帯6にあるときに抵抗が最大となることにより、針8を前進させて靭帯6に穿通させる。針8の先端が硬膜外腔5に通じると、抵抗が最小となることにより、空気又は生理食塩水(流体)12を前方へ射出させる。
【0033】
針が硬膜外腔に通じると、バレル内でのピストン移動の抵抗が、靭帯を通る針の表面が受ける抵抗よりも小さくなる。その時点で、ピストンの後側での連続した押圧により流体射出が起こり、針の移動が止まる。これにより不慮の硬膜穿刺が防止される。
【0034】
装置の他の変形形態は添付の対応する図に示す。特に関係するのは、取り付けられた穿孔ピストンヘッドを針ハブ自体が有するリバースピストン法である。これは、余分なピストンシャフトを必要としないため、効果的な人間工学的であると共に経済的であり、また、ピストンヘッドの穿孔が、硬膜外腔を探知した時点でバレルを外した後に硬膜外カテーテルを通すことを可能とする。
【0035】
装置に任意に組み入れられる別の付加的な部材は弾性ピンホールリングであり、この弾性ピンホールリングは皮膚への針の刺入点まで調整される硬膜外針を取り囲む。これにより、棘間靭帯がより柔らかい小児患者において付加的な抵抗が与えられる。
【0036】
本発明の態様のそれぞれの特徴は全て、必要な変更を加えて他の態様全てに適用される。特許請求されている本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、本明細書に記載したものの変形形態、変更形態及び他の実施態様が当業者に想起されるであろう。本発明の同じ部材は、本明細書に添付の線画図面中、で
図14〜
図21に示すような代替的な設計で配置変更されてもよい。
【0037】
したがって、本発明は、先行の例示的な実施形態によって規定されるのではなく、添付の特許請求の精神及び範囲によって規定されるものとする。