(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653367
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】短縮された中間チューブを有する3重チューブショックアブソーバー
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20141218BHJP
B60G 17/08 20060101ALI20141218BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F16F9/34
B60G17/08
F16F9/32 H
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-549179(P2011-549179)
(86)(22)【出願日】2010年1月26日
(65)【公表番号】特表2012-516983(P2012-516983A)
(43)【公表日】2012年7月26日
(86)【国際出願番号】US2010022054
(87)【国際公開番号】WO2010090902
(87)【国際公開日】20100812
【審査請求日】2012年7月26日
(31)【優先権主張番号】12/366,106
(32)【優先日】2009年2月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァチク,マーク
(72)【発明者】
【氏名】パースマン,ヨハン
【審査官】
柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−010010(JP,A)
【文献】
特開平11−287281(JP,A)
【文献】
特開平09−264364(JP,A)
【文献】
特開平09−100864(JP,A)
【文献】
特開平11−063076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F9/00−9/58
B60G 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーキングチャンバーを形成する一体型の圧力チューブと、
前記ワーキングチャンバーを、上部ワーキングチャンバーと下部ワーキングチャンバーとに分割する、前記圧力チューブ内にスライド可能に配置された、軸方向に可動なピストンアセンブリと、
前記ピストンアセンブリに取り付けられたピストンロッドと、
前記圧力チューブの周囲に配置された予備チューブと、
前記圧力チューブと前記予備チューブとの間に配置された一体型の中間チューブと、
前記中間チューブと前記圧力チューブとの間に中間チャンバーの存在が規定され、
前記中間チューブと前記予備チューブとの間に予備チャンバーの存在が規定され、
前記下部ワーキングチャンバーと前記予備チャンバーとの間に配置されたベースバルブアセンブリと、
前記中間チャンバーと連結される単一の流入口と、前記予備チャンバーと連結される排出口とを有し、ショックアブソーバーの圧縮行程および延伸行程の両方の行程において、前記ショックアブソーバー内の流体の流れが、前記中間チャンバーから前記単一の流入口へと方向付けられるように、前記中間チャンバーと前記単一の流入口とが連結されている、前記予備チューブに取り付けられた制御バルブアセンブリと、
前記圧力チューブと前記中間チューブとに直接嵌合しており、前記予備チューブに嵌合していないチューブリングと、
前記圧力チューブ、前記予備チューブ、および前記中間チューブのそれぞれと嵌合しているロッドガイドアセンブリと、を含み、
前記チューブリングは、
前記予備チャンバーから前記中間チャンバーを分離し、
前記ベースバルブアセンブリと、前記圧力チューブおよび前記中間チューブの両方との間の前記軸方向における隙間を規定するために、前記ベースバルブアセンブリから離間した位置において、前記圧力チューブと前記中間チューブとに嵌合しており、
前記下部ワーキングチャンバーを前記予備チャンバーから分離するために、前記隙間に亘っている部材であり、
前記中間チューブおよび前記圧力チューブは、前記ロッドガイドアセンブリと前記チューブリングとの間において延伸していることを特徴とするショックアブソーバー。
【請求項2】
前記チューブリングは、前記制御バルブアセンブリの前記流入口と前記ベースバルブアセンブリとの間の位置において、前記圧力チューブおよび前記中間チューブの両方に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバー。
【請求項3】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項2に記載のショックアブソーバー。
【請求項4】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項3に記載のショックアブソーバー。
【請求項5】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバー。
【請求項6】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項5に記載のショックアブソーバー。
【請求項7】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバー。
【請求項8】
前記チューブリングは、前記中間チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバー。
【請求項9】
前記チューブリングは、前記制御バルブアセンブリの前記流入口と前記ベースバルブアセンブリとの間の位置において、前記圧力チューブおよび前記中間チューブの両方に嵌合していることを特徴とする請求項8に記載のショックアブソーバー。
【請求項10】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項9に記載のショックアブソーバー。
【請求項11】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項10に記載のショックアブソーバー。
【請求項12】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項8に記載のショックアブソーバー。
【請求項13】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項12に記載のショックアブソーバー。
【請求項14】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項8に記載のショックアブソーバー。
【請求項15】
ワーキングチャンバーを形成する一体型の圧力チューブと、
前記ワーキングチャンバーを、上部ワーキングチャンバーと下部ワーキングチャンバーとに分割する、前記圧力チューブ内にスライド可能に配置された、軸方向に可動なピストンアセンブリと、
前記ピストンアセンブリに取り付けられたピストンロッドと、
前記圧力チューブの周囲に配置された予備チューブと、
前記圧力チューブと前記予備チューブとの間に配置された一体型の中間チューブと、
前記中間チューブと前記圧力チューブとの間に中間チャンバーの存在が規定され、
前記中間チューブと前記予備チューブとの間に予備チャンバーの存在が規定され、
前記下部ワーキングチャンバーと前記予備チャンバーとの間に配置されたベースバルブアセンブリと、
中間チャンバーと連結される単一の流入口と、前記予備チャンバーと連結される排出口とを有し、ショックアブソーバーの圧縮行程および延伸行程の両方の行程において、前記ショックアブソーバー内の流体の流れが、前記中間チャンバーから前記単一の流入口へと方向付けられるように、前記中間チャンバーと前記単一の流入口とが連結されている、前記予備チューブに取り付けられた制御バルブアセンブリと、
前記圧力チューブと前記中間チューブとの間に配置されたチューブリングと、
前記圧力チューブ、前記予備チューブ、および前記中間チューブのそれぞれと直接嵌合しているロッドガイドアセンブリと、を含み、
前記チューブリングは、
前記予備チャンバーから前記中間チャンバーを分離し、
前記ベースバルブアセンブリと、前記圧力チューブおよび前記中間チューブの両方との間の前記軸方向における隙間を規定するために、前記制御バルブアセンブリの前記流入口と前記ベースバルブアセンブリとの間の位置において、前記中間チューブおよび前記圧力チューブに嵌合しており、
前記チューブリングは、前記下部ワーキングチャンバーを前記予備チャンバーから分離するために、上記隙間に亘っている部材であり、
前記中間チューブおよび前記圧力チューブは、前記ロッドガイドアセンブリと前記チューブリングとの間において延伸していることを特徴とするショックアブソーバー。
【請求項16】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合されていることを特徴とする請求項15に記載のショックアブソーバー。
【請求項17】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項16に記載のショックアブソーバー。
【請求項18】
前記チューブリングは、前記圧力チューブおよび前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項15に記載のショックアブソーバー。
【請求項19】
前記チューブリングは、前記中間チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項15に記載のショックアブソーバー。
【請求項20】
前記チューブリングは、前記圧力チューブの末端部に嵌合していることを特徴とする請求項19に記載のショックアブソーバー。
【請求項21】
前記チューブリングは、前記圧力チューブと前記ベースバルブアセンブリとの間に延伸していることを特徴とする請求項20に記載のショックアブソーバー。
【請求項22】
前記チューブリングは、前記圧力チューブおよび前記ベースバルブアセンブリの間に延伸していることを特徴とする請求項19に記載のショックアブソーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車に用いられるサスペンションシステムなどのサスペンションシステムにおいての使用に適した油圧ダンパーまたはショックアブソーバーに関するものである。より具体的には、本開示は、圧力チューブと予備チューブとの間に配置されている中間チューブを有する油圧ダンパーまたはショックアブソーバーに関するものである。中間チューブは、流体の流れに悪影響を与えることなく、予備チューブの直径を縮小可能とするために、圧力チューブより短縮されている。
【背景技術】
【0002】
この項目での記載は、本開示に関する背景技術の情報を提供しているにすぎず、先行技術を構成するものではない。
【0003】
従来の油圧ダンパーまたはショックアブソーバーは、車両のバネ上質量系またはバネ下質量系のアタッチメントとして、その一端に適用されるシリンダーを備えている。ピストンは、シリンダーの内部を2つの流体チャンバーに分離するように、スライド可能に配置されている。ピストンロッドは、ピストンに接続され、シリンダーの一端から延伸しており、車両のバネ上質量系またはバネ下質量系の他の部材のアタッチメントとして適用されている。ダンピング負荷を生成するための、ショックアブソーバーによるシリンダーに対するピストンの延伸行程の間、第一バルブシステムは、一般にピストン機能に組み込まれる。ダンピング負荷を生成するための、ショックアブソーバーによるシリンダーに対するピストンの圧縮行程の間、第2バルブシステムは、一般にモノチューブ設計のピストンと、デュアルチューブ設計機能のベースバルブアセンブリとに組み込まれる。
【0004】
様々なタイプの調整メカニズムが、バネ上質量系またはバネ下質量系の変位速度および/または幅に関するダンピング力を発生させるために開発されている。これらの調整メカニズムは、主に、通常の安定した状態での車両の走行中における、比較的小さいまたは低いダンピング特性と、延伸サスペンションの動きを必要とする車両の操縦中における、比較的大きいまたは高いダンピング特性と、を提供するために開発されている。通常の安定した状態での車両の走行は、車両のバネ下質量系の小さな振動、または細かい振動を伴うので、これらの小さな振動からバネ上質量系を切り離すために、サスペンションシステムの穏やかな乗り心地(soft ride)または低いダンピング特性を必要とする。例として、ターンまたはブレーキングの操縦中に、車両のバネ上質量系は、比較的低速な動きあるいは振動、および/または大きな動きあるいは振動を受けようとする。これらの動きあるいは振動は、バネ上質量系を支持し、車両に対して安定したハンドリング特性を提供するために、サスペンションシステムの堅い乗り心地(firm ride)または高いダンピング特性を必要とする。ショックアブソーバーのダンピング率に対するこれらの調整メカニズムは、バネ下質量系から高振動数/小さな振幅の励振を切り離し、さらに、バネ上質量系の低振動数または大きな振幅の原因となるような車両の操縦中には、サスペンションシステムに必要となるダンピングまたは堅い乗り心地を提供することにより、円滑で安定感のある乗り心地を与えるという利点を提供する。これらのダンピング特性は、通常、外付けの制御バルブによって制御される。外付けの制御バルブは、アフターサービスまたは交換の際に容易に取り外すことができるという点で有利である。
【発明の概要】
【0005】
本開示に係るショックアブソーバーは、ワーキングチャンバーの存在を規定する圧力チューブを含む。ピストンは、ワーキングチャンバー内の圧力チューブにスライド可能に配置され、ワーキングチャンバーを、上部ワーキングチャンバーと下部ワーキングチャンバーとに分割している。予備チューブは、圧力チューブを取り囲み、予備チャンバーの存在を規定するものである。中間チューブは、予備チューブと圧力チューブとの間に配置され、中間チャンバーの存在を規定するものである。外部制御バルブは、予備チューブと中間チューブとに固定されている。制御バルブの流入口には、中間チャンバーが連結されており、制御バルブの排出口には、予備チャンバーが連結されている。制御バルブは、ダンパーまたはショックアブソーバーのダンピング特性を制御する、ダンパーまたはショックアブソーバーの様々な流量圧力特性を生じさせる。様々な流量圧力特性は、制御バルブに供給される流れの関数である。
【0006】
中間チャンバーは、圧力チューブよりも短くなるように設計されることにより、サスペンションシステムのナックルまたは別のコンポーネントと結合するといったパッケージングの問題に対して、予備チューブの直径を縮小することを可能にする。リングは、短縮された中間チューブを受け入れるための圧力チューブに取り付けられている。
【0007】
更なる適用範囲は、本明細書に記載された説明から明らかになるであろう。その説明および具体例は、実例を示す目的のみを意味するものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではないと理解されるべきである。
【0008】
本明細書に記載された図面は、例示のみを目的としており、何らかの方法で本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係るショックアブソーバーを備えた自動車の車両を示している。
【
図2】
図2は、
図1に示すショックアブソーバーのうちの1つを示す側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すショックアブソーバーの下端部を拡大した側面断面図である。
【
図4】
図4は、開示された別の実施形態に係るショックアブソーバーの下端部を拡大した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、本質的に単なる例示に過ぎず、本開示、適用、または用途を限定するものではない。ここでは図面を参照するものとし、当該図面においては、複数の図面を通じて、同様のコンポーネントには同様の参照番号が付されている。
図1には、本開示に従って、ショックアブソーバーを有するサスペンションシステムを搭載している車両が図示されており、当該車両には参照番号10が付されている。
【0011】
車両10は、リアサスペンション12と、フロントサスペンション14と、ボディ16とを備えている。リアサスペンション12は、1組のリアホイール18を動作可能に支持するために適用された、横方向に延伸するリアアスクルアセンブリ(図示せず)を有している。リアアスクルは、1組のショックアブソーバー20と1組のバネ22とによって、ボディ16に取り付けられている。同様に、フロントサスペンション14は、1組のフロントホイール24を動作可能に支持するために、横方向に延伸するフロントアスクルアセンブリ(図示せず)を有している。フロントアスクルアセンブリは、1組のショックアブソーバー26と1組のバネ28とによって、ボディ16に取り付けられている。ショックアブソーバー20および26は、車両10のバネ上部分(すなわち、ボディ16)に対するバネ下部分(すなわち、フロントおよびリアサスペンション12、14)の相対的な動きを減衰させるために機能する。フロントおよびリアアスクルアセンブリを有する乗用車としての車両10が示されているが、これに限らず、ショックアブソーバー20および26は、他のタイプの車両または他のタイプのアプリケーションにおいて使用されてもよい。これらの車両およびアプリケーションは、独立していないフロントおよび/またはリアサスペンションを含む車両、独立したフロントおよび/またはリアサスペンションを含む車両、または従来から公知の他のサスペンションシステムを含む。さらに、本明細書中で使用されている“ショックアブソーバー”という用語は、一般にダンパーと称されているので、マクファーソンストラットおよび従来から公知の他のダンパーを含む。
【0012】
図2を参照すれば、ショックアブソーバー20が更に詳細に図示されている。
図2は、ショックアブソーバー20のみを示すものであるが、ショックアブソーバー26にも、後述のショックアブソーバー20の制御バルブ設計が含まれるものと理解されるべきである。ショックアブソーバー26は、車両10のバネ上質量系またはバネ下質量系に接続されるときの適用方法において、ショックアブソーバー20と異なっているのみである。ショックアブソーバー20は、圧力チューブ30、ピストンアセンブリ32、ピストンロッド34、予備チューブ36、ベースバルブアセンブリ38、中間チューブ40および外付け制御バルブ42から構成されている。
【0013】
圧力チューブ30は、ワーキングチャンバー44の存在を規定するものである。ピストンアセンブリ32は、圧力チューブ30内にスライド可能に配置され、ワーキングチャンバー44を、上部ワーキングチャンバー46と下部ワーキングチャンバー48とに分割している。シールは、ピストンアセンブリ32と圧力チューブ30との間に配置され、過度の摩擦力を生じさせないだけではなく、下部ワーキングチャンバー48から上部ワーキングチャンバー46を封止することなしに、圧力チューブ30に対する滑らかな動作を可能としている。ピストンロッド34は、ピストンアセンブリ32に取り付けられており、上部ワーキングチャンバー46と、圧力チューブ30の上端部に接している上部ロッドガイドアセンブリ50とを貫通して延伸している。シーリングシステムは、上部ロッドガイド50と予備チューブ36とピストンロッド34との境界面を封止している。ピストンアセンブリ32と反対側のピストンロッド34の他端は、車両10のバネ上質量系に固定されるように適用されている。ピストンロッド34が、上部ワーキングチャンバー46のみを貫通し、下部ワーキングチャンバー48を貫通して延伸していないため、ピストンアセンブリ32の圧力チューブ30に対する伸縮動作は、上部ワーキングチャンバー46において排出される流量と、下部ワーキングチャンバー48において排出される流量との差分の要因となる。排出される流量の差分は“ロッド容量”として知られており、延伸動作中、流体は、ベースバルブアセンブリ38を貫流する。圧力チューブ30に対するピストンアセンブリ32の圧縮動作中、ピストンアセンブリ32内でのバルブ調節により、下部ワーキングチャンバー48から上部ワーキングチャンバー46に流体が流れるのを可能とし、流量の“ロッド容量”が、後述のように、制御バルブ42を貫流する。
【0014】
予備チューブ36は、圧力チューブ30を取り囲み、チューブ30および36の間に位置する流体予備チャンバー52を規定するものである。予備チューブ36の下端部は、ベースカップ54によって閉じられている。ベースカップ54は、ショックアブソーバー20の下部にあり、車両10のバネ下質量系に接続されるように適用される。予備チューブ36の上端部は、上部ロッドガイドアセンブリ50に取り付けられている。ベースバルブアセンブリ38は、予備チャンバー52から下部ワーキングチャンバー48に流れる流体を制御するために、下部ワーキングチャンバー48と予備チャンバー52との間に配置されている。ショックアブソーバー20が長さ方向に延伸する時、追加の流量は、“ロッド容量”の原理により、下部ワーキングチャンバー48内に必要とされる。したがって、後述のように、流体は、予備チャンバー52からベースバルブアセンブリ38を介して、下部ワーキングチャンバー48に流れる。ショックアブソーバー20が長さ方向に収縮する時、過剰な流体は、“ロッド容量”の原理により、下部ワーキングチャンバー48から除去される必要がある。したがって、後述のように、流体は、下部ワーキングチャンバー48から制御バルブ42を介して、予備チャンバー52に流れる。
【0015】
ピストンアセンブリ32は、ピストン本体60と、圧縮バルブアセンブリ62と、延伸バルブアセンブリ64とから構成されている。ナット66は、圧縮バルブアセンブリと、ピストン本体60と、延伸バルブアセンブリ64とを、ピストンロッド34に固定するために取り付けられる。ピストン本体60は、複数の圧縮通路68と複数の延伸通路70との存在を規定するものである。ベースバルブアセンブリ38は、バルブ本体72と、延伸バルブアセンブリ74と、圧縮バルブアセンブリ76とから構成されている。バルブ本体72は、複数の延伸通路78と複数の圧縮通路80とを規定するものである。
【0016】
圧縮行程中、下部ワーキングチャンバー48内の流体は、流体圧力が圧縮バルブアセンブリ62に反作用を生じさせることにより、加圧される。圧縮バルブアセンブリ62は、下部ワーキングチャンバー48と上部ワーキングチャンバー46との間でチェックバルブとして機能する。圧縮行程中のショックアブソーバー20のダンピング特性は、制御バルブ42単独で、または、後述のようにベースバルブアセンブリ38とともに動作する制御バルブ42によって制御される。制御バルブ42は、後述のように、圧縮行程中は、“ロッド容量”の原理により、下部ワーキングチャンバー48から、制御バルブ42および予備チャンバー52を介して、上部ワーキングチャンバー46に流れる流体を制御する。圧縮バルブアセンブリ76は、圧縮行程中、下部ワーキングチャンバー48から圧縮通路80を介して予備チャンバー52に流れる液体を制御する。圧縮バルブアセンブリ76は、安全油圧リリーフバルブとして設計されてもよく、制御バルブ42または圧縮バルブアセンブリとともに動作するダンピングバルブは、ベースバルブアセンブリ38から取り外されてもよい。延伸行程中、圧縮通路68は、圧縮バルブアセンブリ62によって閉じられている。
【0017】
延伸行程中、上部ワーキングチャンバー46内の流体は、流体圧力が延伸バルブアセンブリ64に反作用を生じさせることにより、加圧される。延伸バルブアセンブリ64は、上部ワーキングチャンバー46内の流体圧力が所定の制限を越えたときに開く安全油圧リリーフバルブとして、または、後述するように、ダンピングカーブの形状を変化させるために、制御バルブ42とともに動作する典型的な圧力バルブとして、設計されている。延伸行程中のショックアブソーバー20のダンピング特性は、制御バルブ42単独で、または、後述するように、延伸バルブアセンブリ64とともに動作する制御バルブ42によって制御される。制御バルブ42は、上部ワーキングチャンバー46から制御バルブ42を介して予備チャンバー52に流れる流体を制御する。延伸行程中に下部ワーキングチャンバー48に戻される流体は、ベースバルブアセンブリ38を介して流れる。下部ワーキングチャンバー48の流体圧力は、延伸バルブアセンブリ74を開いて予備チャンバー52内に流体圧力が生じることにより減圧され、予備チャンバー52から延伸通路78を介して下部ワーキングチャンバー48に流体が流れることを可能にする。延伸バルブアセンブリ74は、予備チャンバー52と下部ワーキングチャンバー48との間でチェックバルブとして機能する。延伸動作中のショックアブソーバー20のダンピング特性は、制御バルブ42単独で、または、後述するように、コントロールバルブ42とともに動作する延伸バルブアセンブリ64によって制御される。
【0018】
中間チューブ40は、その上端部で上部ロッドガイドアセンブリ50に嵌合し、その反対側の端部では、圧力チューブ30に取り付けられている第3チューブリング82に嵌合している。中間チャンバー84は、中間チューブ40と圧力チューブ30との間にその存在が規定されている。上部ロッドガイドアセンブリ50の内部には、上部ワーキングチャンバー46と中間チャンバー84とを流体を介して接合するために、通路86が形成されている。
【0019】
図3を参照すれば、制御バルブ42が更に詳細に図示されている。制御バルブ42は、アタッチメント金具90と、バルブアセンブリ94と、ソレノイドバルブアセンブリ96と、外部筐体98とから構成されている。アタッチメント金具90は、流路102と一列に配される流入路100の存在を規定するものである。流路102は、中間チャンバー84と制御バルブ42との間で流体が流れるように、中間チューブ40を貫通して延伸している。アタッチメント金具90は、中間チューブ40に取り付けられたカラー104内に、軸方向に受け入れられる。Oリングは、アタッチメント金具90とカラー104との間の境界面を封止している。カラー104は、中間チューブ40とは区別可能な部品であることが好ましく、溶接によって、または従来から公知の他のあらゆる手段によって、中間チューブ40上に取り付けられている。
【0020】
アタッチメント金具90、バルブアセンブリ94、およびソレノイドバルブアセンブリ96は、全て外部筐体98内に配置されており、外部筐体98は、溶接によって、または従来から公知の他のあらゆる手段によって、予備チューブ36に取り付けられている。バルブアセンブリ94は、バルブシート106を含み、ソレノイドバルブアセンブリ96は、バルブ本体アセンブリ108を含む。バルブシート106は、流入路100から流体を受ける軸穴110の存在を規定するものである。バルブ本体アセンブリ108は、軸穴112の存在を規定するものである。バルブ本体アセンブリがバルブシート106から離されている場合、環状ラジアル流路114は、予備チューブ36を介して形成されている流路122を介して、予備チャンバー52に連結されるリターン流路120と連結される。アタッチメントプレート124は、アタッチメント金具90と、外部筐体98内にある制御バルブ42の残りの構成部材との位置を決定するために、外部筐体98に固定されている。
【0021】
図2および
図3を参照して、制御バルブ42が、単独でショックアブソーバー20のダンピング負荷を制御する時の、ショックアブソーバー20の動作について説明する。反発または延伸行程中、圧縮バルブアセンブリ62は、複数の圧縮通路68を閉じ、上部ワーキングチャンバー46内の流体圧力を増加させる。流体は、通路86を介して、中間チャンバー84に押し出され、流路102、アタッチメント金具90の流入路100、そして軸穴110を介してバルブアセンブリ94に達する。
【0022】
ショックアブソーバー20のより高い流量ダンピング特性は、バルブアセンブリ94およびソレノイドバルブアセンブリ96の構成によって決定される。したがって、バルブアセンブリ94およびソレノイドバルブアセンブリ96は、ソレノイドバルブアセンブリ96に供給される信号によって制御される所定のダンピング機能を提供するように構成されている。所定のダンピング機能は、車両10の運転状態に基づいて、ソフトダンピング機能からファームダンピング機能の間であればいずれであってもよい。ピストン低速時には、制御バルブ42は、閉じたままであり、流体は、ピストンアセンブリ32およびベースバルブアセンブリ38内に構成される排水路を流れる。したがって、ショックアブソーバー20は、典型的なデュアルチューブダンパーと同様の動作を行う。ピストン高速時には、流量が増加することにより、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126に対する流体圧力は、バルブシート106から、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126を切り離す。そして、流体は、ラジアル通路114を介して、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126とバルブシート106との間を流れ、リターン流路120および流路122を介して、予備チャンバー52内に流れる。流体圧力は、バルブシート106からバルブ本体アセンブリ108のプランジャー126を切り離すために必要であり、ソレノイドバルブアセンブリ96によって決められる。ピストンアセンブリ32の反発または延伸動作は、下部ワーキングチャンバー48内に低圧力を生じさせる。延伸バルブアセンブリ74が開くと、流体を、予備チャンバー52から下部ワーキングチャンバー48に流すことが可能になる。
【0023】
圧縮行程中、圧縮バルブアセンブリ62が開くと、流体を、下部ワーキングチャンバー48から上部ワーキングチャンバー46に流すことが可能になる。“ロッド容量”の原理により、上部ワーキングチャンバー46内の流体は、上部ワーキングチャンバー46から、通路86を介して中間チャンバー84に流れ込み、流路102、アタッチメント金具90の流入路100を介し、後述するようにソフトバルブアセンブリ92を介して、バルブアセンブリ94に達する。
【0024】
延伸または反発行程と同様に、ショックアブソーバー20のダンピング特性は、バルブアセンブリ94およびソレノイドバルブアセンブリ96によって決定される。このため、バルブアセンブリ94およびソレノイドアセンブリ96は、ソレノイドバルブアセンブリ96に供給される信号によって制御される所定のダンピング機能を提供するように構成されている。所定のダンピング機能は、車両10の運転状態に基づいて、ソフトダンピング機能からファームダンピング機能の間であればいずれであってもよい。ピストン低速時には、制御バルブ42は、閉じたままであり、流体は、ピストンアセンブリ32およびベースバルブアセンブリ38内に構成される排水路を流れる。したがって、ショックアブソーバー20は、典型的なデュアルチューブダンパーと同様の動作を行う。ピストン高速時には、流量が増加することにより、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126に対する流体圧力は、バルブシート106から、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126を切り離す。そして、流体は、ラジアル通路114を介して、バルブ本体アセンブリ108のプランジャー126とバルブシート106との間を流れ、リターン流路120および流路122を介して、予備チャンバー52内に流れる。流体圧力は、バルブシート106からバルブ本体アセンブリ108のプランジャー126を切り離すために必要であり、ソレノイドバルブアセンブリ96によって決められる。このように、延伸行程および圧縮行程の両行程に対するダンピング特性は、制御バルブ42と同様の方法によって制御される。
【0025】
制御バルブ42のみでショックアブソーバー20のダンピング負荷を制御する場合、延伸バルブアセンブリ64および圧縮バルブアセンブリ76は、油圧リリーフバルブとして設計されるか、またはアセンブリから取り除かれる。延伸バルブアセンブリ64および圧縮バルブアセンブリ76は、特定の流体圧力で動作するダンピングバルブとして、制御バルブ42ととともに動作するショックアブソーバー20のダンピング特性に寄与するように設計される。
【0026】
図3を参照すれば、第3チューブリング82を使用した中間チューブ40のアタッチメントが図示されている。中間チューブ40が、アタッチメント金具90へと延伸するだけで、流入路100を、中間チャンバー84に連結することが可能となる。第3チューブリング82は、流入路100と連結するように中間チャンバー84を取り付けるために、アタッチメント金具90よりも下に配置されている。また、第3チューブリング82は、中間チャンバー84を、予備チャンバー52から分離させている。
【0027】
中間チューブを含むいくつかの従来技術の設計においては、中間チューブは、ベースバルブアセンブリまでずっと延伸していた。ショックアブソーバーが、サスペンションシステムのナックル内に組み立てられているとき、ナックルは、デュアルチューブショックアブソーバーの予備チューブ径である予備チューブの特定の直径にあわせて設計されている。デュアルチューブショックアブソーバーを3重チューブショックアブソーバーに置き換えるとき、予備チューブの直径を同一にすることが好ましいが、3重チューブの設計では、中間チューブを収容するために、より大きな直径の予備チューブが必要となる。予備チューブの下端部の直径を局所的に小さくすることも可能であるが、その縮小幅は限定される。なぜなら、予備チャンバーからベースバルブアセンブリに流れる油圧流体は、中間チューブの存在によって阻止されるか、または厳しく制限されるためである。車両のパッケージングを考慮すれば、通常、ナックル内で取り付け穴のサイズを大きくするという選択肢をとることはできない。
【0028】
本開示において、中間チューブ40は、アタッチメント金具90の位置を通るようにのみ延伸し、ベースバルブアセンブリ38までずっと延伸するものではない。これにより、中間チューブ40を収容するための予備チューブ36の直径をより大きくすることが可能となる。さらに、サスペンションシステムと適切に結合させるために、バルブアセンブリ38に隣接する予備チューブ36の下端部の直径を、デュアルチューブショックアブソーバーの予備チューブの直径と同程度の直径にまで、局所的に縮小することができる。このように、予備チューブ36の直径を局所的に縮小させることにより、予備チャンバー52からベースバルブアセンブリ38へ流れる流体を厳しく制限することなく、予備チューブ36をナックルと結合させることが可能となる。
【0029】
図4を参照すれば、ショックアブソーバー200の下端部が図示されている。ショックアブソーバー200は、圧力チューブ30が、圧力チューブ230によって置き換えられ、第3チューブリング82が、第3チューブリング282に置き換えられていることを除き、ショックアブソーバー20と同一である。したがって、上述のショックアブソーバー20および
図2の説明は、圧力チューブ230と、ベースバルブアセンブリ38と、第3チューブリング282との間の境界面を除き、ショックアブソーバー220に適用される。
【0030】
図4に示されるように、第3チューブリング282は、ベースバルブアセンブリ38から圧力チューブ230まで延伸している。これにより、圧力チューブ230を圧力チューブ30よりも短くすることが可能となる。圧力チューブ30は、ピストンアセンブリ32の全圧縮動作に対応できるだけの十分な長さを必要としている。第3チューブリング282の直径は、縮小された直径を有するベースバルブアセンブリ38と結合するために、縮小される。ベースバルブアセンブリ38は、ベースバルブアセンブリ38を通る流路の同一性を維持しながら、その直径を縮小してもよい。この方法では、第3チューブリング282と予備チューブ36との間の流路を大きくすることができる。第3チューブリング282は、圧力チューブ230と結合する段部284の存在を規定するものである。また、第3チューブ282は、予備チャンバー52を、中間チャンバー84と、ベースバルブアセンブリ38のバルブ本体72に結合している環状エクステンション288とから分離するために、圧力チューブ230と中間チューブ40との間に配置され、かつこれらに結合している段部284から延伸する環状リング286の存在を規定するものである。
【0031】
上記の実施形態の説明は、例示および説明することを目的として記載されているが、本発明を網羅すること、または限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般的なものであっても、その特定の実施形態に限定されるものではない。しかし、これらの要素または特徴は、特に図示または記載されていなくても、選択された実施形態において、適用でき、互換性があり、そして使用することができる。また、同一のものは、多くの方法において変更することができる。そのような変更は、本発明からの逸脱とみなされるものではない。そして、そのようなすべての改変は、本発明の範囲に含まれることを意図するものである。