(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653385
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】油圧シリンダ及び油圧シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20141218BHJP
F15B 15/28 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F15B15/14 370
F15B15/28 C
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-106190(P2012-106190)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-234693(P2013-234693A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2012年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】593198876
【氏名又は名称】株式会社大進商工
(74)【代理人】
【識別番号】100085648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幹人
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修
【審査官】
吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−200702(JP,U)
【文献】
実開昭60−173704(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3171858(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第2005472(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第2138703(DE,A1)
【文献】
米国特許第6439103(US,B1)
【文献】
欧州特許出願公開第1128073(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体からなるシリンダチューブの開口端部を磁性体からなるカバー部材で封止してなる油圧シリンダであって、
外径を一定としたシリンダチューブの開口端部の内周面に開口端面からテーパ面を形成し、
外周面に突設した環状帯部に連接して、一端部の外周の中間位置にテーパ面を形成したカバー部材を、前記開口端部に嵌入して両テーパ面を密接させるとともに、環状帯部を前記開口端面に係止し、
内周面に突設した段部に連接して螺子溝を刻設した中空筒状体からなる継手部材でカバー部材と前記開口端部の双方の外周面を被覆し、継手部材の螺子溝を前記開口端部の外周面に刻設した螺子溝に螺合させることにより、継手部材の段部を環状帯部に圧接させることにより前記開口端部をカバー部材で封止することを特徴とする油圧シリンダ。
【請求項2】
両テーパ面の密接によって、シリンダチューブとカバー部材の廻り止め機構を形成する請求項1記載の油圧シリンダ。
【請求項3】
両テーパ面の密接によって、シリンダチューブとカバー部材の軸芯を一致させた請求項1又は2記載の油圧シリンダ。
【請求項4】
シリンダチューブの素材としてステンレスを使用し、カバー部材の素材として鉄を使用した請求項1,2又は3記載の油圧シリンダ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の油圧シリンダを使用し、
シリンダチューブの外周面の長手方向に配置した1又は複数のセンサ取付バーと、該センサ取付バーの所定の位置に装着した1又は複数の近接センサと、シリンダピストンに装備したセンサ検知体とからなり、シリンダピストンの伸縮動作に連動してシリンダピストンに装着したセンサ検知体がシリンダチューブ内を移動し、センサ取付バーに装着した近接センサの位置を検知することによって、シリンダピストンの位置を検知することを特徴とする油圧シリンダ。
【請求項6】
センサ取付バーをシリンダチューブの周方向に位置をずらして複数設置する請求項5記載の油圧シリンダ。
【請求項7】
センサ取付バーをシリンダチューブの長手方向に複数設置する請求項5又は6記載の油圧シリンダ。
【請求項8】
近接センサを位置調節可能に装着した請求項5,6又は7記載の油圧シリンダ。
【請求項9】
センサ検知体として、シリンダピストンに装着したリング状のマグネットを使用する請求項5,6,7又は8記載の油圧シリンダ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の油圧シリンダを使用し、
シリンダチューブにシリンダチューブと同一種類の金属からなるブラケットを溶接し、該ブラケットを介して油圧ユニットをシリンダチューブに一体に装備することを特徴とする油圧シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダの有効ストロークを効率的に確保するとともに、ロッドの位置を検知することが可能な油圧シリンダ及び油圧シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダには、シリンダチューブの開口端部を封止する代表的な構造として、シリンダチューブのヘッド側のカバー部材とロッド側のカバー部材とをタイボルトにより締付固定するJIS規格(JIS B 8367外)に準拠した油圧シリンダ(以下、JIS規格油圧シリンダという)と、ヘッド側のカバー部材とロッド側のカバー部材をシリンダチューブに溶接する構造の油圧シリンダ(以下、溶接油圧シリンダという)の2種類が存在する。
【0003】
油圧シリンダは、従来から産業用機械等の機構作動部のアクチュエータとして配備されており、使い勝手を高めるために種々の提案がされている。本発明者もJIS規格油圧シリンダに油圧ユニットを一体的に結合した油圧シリンダ装置を提供している(特許文献1)。アクチュエータとしての油圧シリンダを用途に応じて制御するためには、有効ストロークを効率的に確保するとともに、シリンダチューブから伸縮動作するロッドの位置を正確に検知することが必要である。
【0004】
そのため、本発明者は油圧シリンダにおいて、伸縮動作するロッドの位置を簡潔な構造で汎用性を以て検知するために、シリンダチューブのヘッド側端部からロッド側端部までの外周面に固定されるスライドレールと、スライドレールの両端部近傍に配置された1個又は複数個の近接センサと、スライドレールに摺動自在に装着されたセンサ検知体と、シリンダチューブから伸縮動作するロッドのロッド側取付部とセンサ検知体を連結する連結杆とからなる位置検知装置を提供している(特許文献2)。
【0005】
また、シリンダチューブの長手方向の外周面に固定される検知チューブと、検知チューブの外周面に装着した近接センサを備え、検知チューブから伸縮動作するとともに、先端部がシリンダチューブから伸縮動作するロッドのロッド側取付部と連結した検知ロッドと、検知チューブ内の検知ロッドの基端部に装着した検知ピストンと、検知ピストンに装着したセンサ検知体とからなる位置検知装置も提供している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3812929号公報
【特許文献2】実用新案登録第3149287号公報
【特許文献3】実用新案登録第3171858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
JIS規格油圧シリンダは、タイボルトを使用してシリンダチューブとカバー部材を連結しているため、タイボルトを装備するための構造を必要とし、その分の部品点数が増加するとともに、ヘッド側部材とロッド側部材の支点間距離が長くなる。そのため、座屈強度を確保する必要性から、使用圧力やシリンダチューブの長さに対するシリンダの有効ストロークの効率的な確保という面において、溶接油圧シリンダより不利となる。これに対して、溶接油圧シリンダは、シリンダチューブとカバー部材の連結のためのタイボルト及びその部品を必要とせず、構造もシンプルなことから、同じ伸長ストロークであってもJIS規格油圧シリンダに比較して、ヘッド側部材とロッド側部材の支点間距離の長さを短縮することができる。そのため、座屈強度の確保の面においてJIS規格油圧シリンダより有利となり、シリンダの有効ストロークを効率的に確保することが可能である。即ち、溶接油圧シリンダは、JIS規格油圧シリンダに比較して、シリンダチューブの内径やロッド径が同じで、同出力の場合にシリンダの有効ストロークを大幅に向上させることが可能である。
【0008】
溶接油圧シリンダは、シリンダチューブとカバー部材とを溶接によって連結する構造であり、異種金属間の溶接は、溶接部の強度,品質,信頼性の面等から問題を有するため、カバー部材としてシリンダチューブと同一の素材を使用することが要求される。シリンダチューブとしては非磁性体のステンレスチューブを使用する必要があるため、必然的にカバー部材としてもステンレスを使用することとなる。よって、本来、非磁性体である必要のないカバー部材までステンレスを使用することとなり、その分コスト高となってしまう。これに対して、JIS規格油圧シリンダは溶接を必要としないため、非磁性体である必要がないカバー部材の素材として低コストの鉄を使用することができるが、前記した通りタイボルトを必須の構成とする。
【0009】
JIS規格油圧シリンダは、カバー部材に低コストの鉄を使用することができるため、溶接油圧シリンダに比較して低コスト化を実現することができるが、座屈の制約からシリンダの有効ストロークを効率的に確保することが困難である。一方、溶接油圧シリンダは、JIS規格油圧シリンダに比較して、シリンダの有効ストロークを効率的に確保することは可能であるが、カバー部材をシリンダチューブに溶接しているため、シリンダチューブと同一の素材を使用する必要があり、低コスト化の実現が困難であった。よって、両者は、それぞれ一長一短があり、双方の利点をともに充足する油圧シリンダは提供されていない。
【0010】
一方、ロッドの位置を検知することに関し、特許文献2に示す位置検知装置では、スライドレールに剥き出しのままのセンサ検知体を摺動自在に装着しているため、センサ検知体等が外部に剥き出しのまま露出している。また、スライドレール上に配置された近接センサとセンサ検知体との間にも狭小な空間部からなるクリアランスが必要である。そのため、経時経過とともに露出部分が塵埃等の影響を受けやすく、塵埃等が付着したり、空間部に挟まってしまいクリアランスが不足することが考えられ、その場合には故障や誤作動の原因となるおそれがある。また、センサ検知体が外部に露出しているため、設置場所の環境によっては、他の設置物と干渉するおそれもある。さらには、摺動部分の摩耗により精度低下や誤作動、或いは製品寿命の低下を来すおそれもある。
【0011】
また、特許文献3に示す位置検知装置では、検知チューブを使用しているため、特許文献2に示すセンサ検知体が外部に剥き出しとなっている問題は解決することができるが、
油圧シリンダとは別体の検知チューブや検知ロッド,検知ピストンを必要とし、しかも検知ロッドを油圧シリンダのロッドの伸縮と連動させる必要があり、その分の部品点数も増加し、構造が複雑となってしまう。
【0012】
そのため、本発明は油圧シリンダにおいて、油圧シリンダの有効ストロークを効率的に確保するとともに、ロッドの位置を検知することが可能な低コストでシンプルな構造の油圧シリンダ及び油圧シリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、非磁性体からなるシリンダチューブの開口端部を磁性体からなるカバー部材で封止してなる油圧シリンダであって、
外径を一定としたシリンダチューブの開口端部の内周面に
開口端面からテーパ面を形成し、外周面に突設した環状帯部に連接して、一端部の外周の中間位置にテーパ面を形成したカバー部材を
、前記開口端部に嵌入して両テーパ面を密接させるとともに、環状帯部を
前記開
口端面に係止し、内周面に突設した段部に連接して螺子溝を刻設した中空筒状体からなる継手部材でカバー部材と前記開口端部の双方の外周面を被覆し、継手部材の螺子溝を前記開口端部の外周面に刻設した螺子溝に螺合させることにより、継手部材の段部を環状帯部に圧接させることにより前記開口端部をカバー部材で封止する油圧シリンダを基本として提供する。
【0014】
そして、両テーパ面の密接によって、シリンダチューブとカバー部材の廻り止め機構を形成し、又両テーパ面の密接によって、シリンダチューブとカバー部材の軸芯を一致させ
る。また、シリンダチューブの素材としてステンレスを使用し、カバー部材の素材として鉄を使用する。
【0015】
前記した構成の油圧シリンダを使用し、シリンダチューブの外周面の長手方向に配置した1又は複数のセンサ取付バーと、該センサ取付バーの所定の位置に装着した1又は複数の近接センサと、シリンダピストンに装備したセンサ検知体とからなり、シリンダピストンの伸縮動作に連動してシリンダピストンに装着したセンサ検知体がシリンダチューブ内を移動し、センサ取付バーに装着した近接センサの位置を検知することによって、シリンダピストンの位置を検知する油圧シリンダを提供する。
【0016】
そして、センサ取付バーをシリンダチューブの周方向に位置をずらして複数設置し、センサ取付バーをシリンダチューブの長手方向に複数設置する。また、近接センサを位置調節可能に装着し、センサ検知体として、シリンダピストンに装着したリング状のマグネットを使用する。
【0017】
更に、前記した構成の油圧シリンダを使用して、シリンダチューブにシリンダチューブと同一種類の金属からなるブラケットを溶接し、該ブラケットを介して油圧ユニットをシリンダチューブに一体に装備する油圧シリンダ装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上記載した本発明によれば、シリンダチューブのヘッド側及びロッド側端部にカバー部材を固着する構造として、タイボルトを使用する必要がなく、かつ、溶接構造を採用する必要もない。そのため、油圧シリンダの有効ストロークを効率的に確保することができるとともに、カバー部材としてシリンダチューブと異なる材質の金属、具体的には鉄を使用することが可能となり、油圧シリンダの低コスト化を実現することができる。また、開口端面からテーパ面を形成したシリンダチューブの開口端部の内周面に、一端部の外周の中間位置にテーパ面を形成したカバー部材を嵌入して両テーパ面を密接させることによって、両テーパ面による廻り止め機構を形成し、シリンダチューブとカバー部材の軸芯の一致を容易に実現することができる。
【0019】
カバー部材の固着に際しては、カバー部材とシリンダチューブの開口端部の双方の外周面を継手部材で被覆し、継手部材の内周面に刻設した螺子溝をシリンダチューブの開口端部の外周面に刻設した螺子溝に螺合させる構造であるため、カバー部材の固着を容易に行うことができる。
【0020】
更に、シリンダチューブからのシリンダピストンの伸縮動作に連動して、シリンダピストンに装着したセンサ検知体がシリンダチューブ内を移動することにより、シリンダチューブの外周面に装着したセンサ取付バーの任意の位置に設置された近接センサに接近することにより、近接センサの設置された位置に対応するロッドの位置を検知することができる。また、近接センサは、シリンダチューブの外周面に設置するため、油圧シリンダの内部構造を変更することなく、又油圧シリンダの構造や使用するシリンダチューブの材質や管径等の制約を受けることもなく、既存の油圧シリンダに取り付けることができる汎用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図8】本発明にかかる検知装置を装着した油圧シリンダの全体側面図。
【
図10】センサを装着したセンサ取付バーの全体側面図。
【
図11】センサを装着したセンサ取付バーの全体斜視図。
【
図12】油圧ユニット用のブラケットを装着した油圧シリンダの全体斜視図。
【
図13】油圧ユニット用のブラケットを装着した油圧シリンダの全体側面図。
【
図14】本発明にかかる油圧シリンダ装置の全体側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明にかかる油圧シリンダ及び油圧シリンダ装置の実施形態を説明する。
図1は本発明にかかる油圧シリンダ1の全体側面図、
図2は、その中央部縦断面図、
図3は、
図2のヘッド側の要部縦断面図である。図において、油圧シリンダ1は非磁性体としてステンレス製のシリンダチューブ2の両端に位置する開口端部、即ちヘッド側の開口端部2a−1(
図4参照)とロッド側の開口端部2a−2(
図7参照)を、それぞれ磁性体としての鉄製のカバー部材3,4で封止している。
【0023】
シリンダチューブ2内にはロッド5が収納されており、ヘッド側に位置するロッド5の基端部5aは径小部として形成されている。この基端部5aにシリンダピストン6を巻装するとともに、基端部5aの外周に刻設した螺子溝5cに固定ナット7を螺合させてシリンダピストン6を固定している。8はロッド5の外周面に装備されたカラーであって、シリンダピストン6のロッド側の端面に密接して支持している。
図7に示すように、ロッド5の先端部5bはロッド側のカバー部材4から外部に延長されており、シリンダチューブ2内をシリンダピストン6が摺動移動することによって、シリンダチューブ2から伸縮動作可能である。9a,9bはシリンダピストン6のヘッド側とロッド側にそれぞれ圧油を供給するための油圧ポートである。
【0024】
本発明は、シリンダチューブ2のヘッド側の開口端部2a−1へのカバー部材3の固着構造、及びロッド側の開口端部2a−2へのカバー部材4の固着構造に特徴を有する。その構造をヘッド側のカバー部材3の固着構造を例として説明する。
図4はヘッド側のシリンダチューブ2の要部断面図である。図に示すように、
外径を一定としたシリンダチューブ2の開口端部2a−1
の内周面には、開口端面2b−1からシリンダチューブ2の軸方向に傾斜したテーパ面2c−1を形成する。また、開口端部2a−1の外周面には、開口端面2b−1から螺子溝2d−1を刻設する。
【0025】
図5はヘッド側のカバー部材3の側面図であり、カバー部材3の先端部3aの外周面において外方に傾斜したテーパ面3bを形成するとともに、先端部3aの反対方向においてテーパ面3bと連接するように、カバー部材3の外周面にテーパ面3bよりも外方に突出した環状帯部3cを突設する。このカバー部材3の先端部3aの直径は、シリンダチューブ2の内径と略同一であり、カバー部材3を先端部3aからシリンダチューブ2の開口端部2a−1に嵌入することができる。これにより、
図3に示すように、カバー部材3の環状帯部3cがシリンダチューブ2の開口端面2b−1に係合するとともに、カバー部材3のテーパ面3bとシリンダチューブ2のテーパ面2c−1が相互に密接する。
【0026】
次いで、カバー部材3のテーパ面3bとシリンダチューブ2のテーパ面2c−1を相互に密接させた状態で、カバー部材3とシリンダチューブ2の開口端部2a−1の双方の外周面を、
図6に示す継手部材10で被覆する。継手部材10は中空筒状体であり、内周面に螺子溝10aを刻設するとともに、螺子溝10aに連続して内周面に段部10bを形成している。継手部材10の内周面に刻設した螺子溝10aをシリンダチューブ2の開口端部2a−1の外周面に刻設した螺子溝2d−1に螺合させて、継手部材10の段部10bがカバー部材3の環状帯部3cに圧接するように締め付けて、シリンダチューブ2の開口端部2a−1にカバー部材3を固着する。なお、
図3において、22はカバー部材3の先端部3aの外周に装着した環状のシール部材、23はシリンダピストンの外周に装着した環状のパッキン、24はシリンダピストン6の軸受としてのウエアリングである。
【0027】
よって、シリンダチューブ2の開口端部2a−1にカバー部材3の固着を完了した状態は、
図3に示すように、シリンダチューブ2のテーパ面2c−1と、カバー部材3のテーパー面3bが密接するとともに、カバー部材3の環状帯部3cがシリンダチューブ2の開口端面2b−1に係合し、更に、継手部材10の段部10bがカバー部材3の環状帯部3cに圧接するように締め付けて、継手部材10をシリンダチューブ2の開口端部2a−1に螺合している。そのため、両テーパ面2c−1,3bの密接によって、シリンダチューブ2とカバー部材3の廻り止め機構を形成するとともに、シリンダチューブ2とカバー部材3の軸芯を一致させることができる。更に、シリンダチューブ2の開口端面2b−1にカバー部材3の環状帯部3cが係合しており、この環状帯部3cに継手部材10の段部10bが圧接することによって位置決めができる。そのため、環状帯部3cによって継手部材10の過度の締め込みや、締め付け不足を防ぐことができ、継手部材10を最適の位置に螺合することができる。
【0028】
上記説明は、ヘッド側のカバー部材3の固着構造を例として説明したが、シリンダチューブ2のロッド側の開口端部2a−2にカバー部材4を固着するにも同様の構成を採用する。そのため、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図7はロッド側の要部縦断面図であり、ヘッド側のカバー部材3と同様に、カバー部材4には、先端部4aの外周面において外方に傾斜したテーパ面4bを形成するとともに、先端部4aの反対方向においてテーパ面4bと連接するように、カバー部材4の外周面にテーパ面4bよりも外方に突出した環状帯部4cを突設する。このカバー部材4の先端部4aの直径は、シリンダチューブ2の内径と略同一であり、カバー部材4を先端部4aからロッド側の開口端部2a−2に嵌入することができる。
ロッド側の開口端部2a−2の内周面には、ヘッド側の開口端部2a−1と同様に、開口端面2b−2からシリンダチューブ2の軸方向に傾斜したテーパ面2c−2が形成されるとともに、開口端部2a−2の外周面には、開口端面2b−2から螺子溝2d−2が刻設されている。これにより、
図7に示すように、カバー部材4の環状帯部4cがシリンダチューブ2の開口端面2b−2に係合するとともに、カバー部材4のテーパ面4bとシリンダチューブ2のテーパ面2c−2が相互に密接する。なお、カバー部材4には、ロッド5が挿通され、その先端部5bが外部に延長されて、伸縮自在である。
【0030】
次に、ロッド5の位置を検知する構造について説明する。
図8は本発明にかかる検知装置を装着した油圧シリンダ1の全体側面図、
図9はセンサ取付バー11の全体斜視図、
図10は近接センサ14を装着したセンサ取付バー11の全体側面図、
図11は
図10の全体斜視図である。図において、11は所定長さのセンサ取付バーであって、シリンダチューブ2の外周面の長手方向において対向するように配置した断面U字状のセンサ取付ブラケット12に穿設された挿通口に両端部を挿通し、固定ボルト13によってセンサ取付ブラケット12と一体に固定することにより、シリンダチューブ2の長手方向に沿って延設されている。なお、センサ取付ブラケット12は非磁性体のステンレスを用い、シリンダチューブ2に溶接する。
【0031】
このセンサ取付バー11は油圧シリンダ装置の構造や使用するシリンダチューブ2の管径等による制約を受けることなく、任意の構造や径,材質を採用することができ、汎用性が高い。また、センサ取付バー11をシリンダチューブ2の周方向に位置をずらして複数設置することもでき、更にセンサ取付バー11をシリンダチューブ2の長手方向に複数設置することもできる。
【0032】
近接センサ14は非接触で検出物体が近づいたことを検出するセンサであり、図示例では磁石を用いた磁気型を使用した。その他に電磁誘導を利用した高周波発振型等があるが、どのようなタイプであっても使用可能である。図示例では、センサ取付バー11の両端部近傍に近接センサ14を配置したが、配置する場所や個数は任意であり、センサ取付バー11の任意の位置に1又は複数個の近接センサ14を位置調節自在に装着する。近接センサ14はセンサ取付バー11に位置調節自在に固定されたセンサ固定具15に脱着自在に装着する。この近接センサ14は、非接触で検出できるため、検出物体やセンサを傷めることがなく、長寿命を実現でき、水や油の飛散する悪環境下でも確実な検出をすることができるとともに、応答速度が速いという利点がある。
【0033】
そして、シリンダチューブ2内に収納したロッド5に巻装したシリンダピストン6の外周面には、リング状のマグネットからなるセンサ検知体16が埋設されている。シリンダピストン6の伸縮動作に連動してシリンダピストン6に装着したセンサ検知体16がシリンダチューブ2内を移動し、センサ取付バー11に装着した近接センサ14によって、シリンダチューブ2内のセンサ検知体16の位置、即ちシリンダピストン6の位置を検知することができる。
【0034】
前記した構成の油圧シリンダ1を使用し、シリンダチューブ2の上部外周面にシリンダチューブ2と同一種類の金属、具体的にはステンレスからなるブラケット17を溶接し(
図12,
図13参照)、このブラケット17を介して、油圧シリンダ1に圧油を供給・制御するための油タンク18,電動機19等の必要な部材を組み込んだ油圧ユニット20をシリンダチューブ2に一体に装備することにより、
図14,
図15に示す油圧シリンダ装置21を構成する。
【0035】
次に、ロッドの位置を検知する方法を説明する。油圧シリンダ1のシリンダピストン6の伸縮動作によって、シリンダピストン6に装着したセンサ検知体16がシリンダチューブ2内を移動する。このシリンダピストン6の伸縮動作により、シリンダチューブ2内のセンサ検知体16がシリンダチューブ2の外周面においてセンサ取付バー11に装着した近接センサ14に接近し、或いは離反するため、近接センサ14にセンサ検知体16が接近したことを検知することによって、ロッド5及びシリンダピストン6の位置を検知することができる。
【0036】
図示例では、センサ取付バー11の両端部に1個ずつ、合計2個の近接センサ14を設置しているため、ロッド5のストロークエンドを検知することができる。近接センサ14による制御例としては、例えば、ロッド5の縮小に連動して、センサ検知体16がシリンダチューブ2内をヘッド側の開口端部2a−1方向に移動し、リング状のマグネットからなるセンサ検知体16が近接センサ14に接近したことを検知することにより、ロッド5のヘッド側の開口端部2a−1方向のストロークエンドを検知する。次に、センサ検知体16がロッド側の開口端部2a−2方向に移動し、近接センサ14に接近したことを検知することにより、ロッド5のロッド側の開口端部2a−2方向のストロークエンドを検知する。そして、近接センサ14のセンサ取付バー11への設置位置及び設置個数は任意に設定できるため、近接センサ14の設置位置や設置個数を調節することにより、ロッド5を任意に制御することができる。
【0037】
近接センサ14の設置位置及び設置個数は任意に設定できるため、ロッド5の動作をアクチュエータとして要求される動作に連動して多段階に任意に制御することが可能となる。また、本発明は、油圧ユニット20を油圧シリンダ1と別に設置した油圧シリンダ装置に適用することも可能であり、どのような油圧シリンダ装置であっても適用することができる。更に、既存の油圧シリンダ装置にも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上記載した本発明によれば、シリンダチューブのヘッド側及びロッド側端部にカバー部材を固着する構造として、タイボルトを使用する必要がなく、かつ、溶接構造を採用する必要もない。そのため、油圧シリンダの有効ストロークを効率的に確保することができるとともに、カバー部材としてシリンダチューブと異なる材質の金属、具体的には鉄を使用することが可能となり、油圧シリンダの低コスト化を実現することができる。また、開口端面からテーパ面を形成したシリンダチューブの開口端部の内周面に、一端部の外周の中間位置にテーパ面を形成したカバー部材を嵌入して両テーパ面を密接させることによって、両テーパ面による廻り止め機構を形成し、シリンダチューブとカバー部材の軸芯の一致を容易に実現することができる。
【0039】
カバー部材の固着に際しては、カバー部材とシリンダチューブの開口端部の双方の外周面を継手部材で被覆し、継手部材の内周面に刻設した螺子溝をシリンダチューブの開口端部の外周面に刻設した螺子溝に螺合させる構造であるため、カバー部材の固着を容易に行うことができる。
【0040】
更に、シリンダチューブからのシリンダピストンの伸縮動作に連動して、シリンダピストンに装着したセンサ検知体がシリンダチューブ内を移動することにより、シリンダチューブの外周面に装着したセンサ取付バーの任意の位置に設置された近接センサに接近することにより、近接センサの設置された位置に対応するロッドの位置を検知することができる。また、近接センサは、シリンダチューブの外周面に設置するため、油圧シリンダの内部構造を変更することなく、又油圧シリンダの構造や使用するシリンダチューブの材質や管径等の制約を受けることもなく、既存の油圧シリンダに取り付けることができる汎用性を有する。
【符号の説明】
【0041】
1…油圧シリンダ
2…シリンダチューブ
2a−1…(ヘッド側の)開口端部
2b−1…(ヘッド側の)開口端面
2c−1…(ヘッド側の)テーパ面
2d−1…(ヘッド側の)螺子溝
2a−2…(ロッド側の)開口端部
2b−2…(ロッド側の)開口端面
2c−2…(ロッド側の)テーパ面
2d−2…(ロッド側の)螺子溝
3…(ヘッド側の)カバー部材
3a…(ヘッド側の)先端部
3b…(ヘッド側の)テーパ面
3c…(ヘッド側の)環状帯部
4…(ロッド側の)カバー部材
4a…(ロッド側の)先端部
4b…(ロッド側の)テーパ面
4c…(ロッド側の)環状帯部
5…ロッド
5a…基端部
5b…先端部
5c…螺子溝
6…シリンダピストン
7…固定ナット
8…カラー
9a,9b…油圧ポート
10…継手部材
10a…螺子溝
10b…段部
11…センサ取付バー
12…センサ取付ブラケット
13…固定ボルト
14…近接センサ
15…センサ固定具
16…センサ検知体
17…ブラケット
18…油タンク
19…電動機
20…油圧ユニット
21…油圧シリンダ装置