(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653417
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】車輪速度センサの監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/88 20060101AFI20141218BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T8/171 A
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-509365(P2012-509365)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2011055734
(87)【国際公開番号】WO2011125412
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2012年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-86230(P2010-86230)
(32)【優先日】2010年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊作
【審査官】
中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−327474(JP,A)
【文献】
特開2008−254733(JP,A)
【文献】
特開2004−314795(JP,A)
【文献】
特開2008−213512(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0024838(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/88
B60T 8/171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車に用いる車輪速度センサの監視装置において、
前記自動二輪車は、1つの車輪の車輪速度を検出する1つの車輪速度センサと、前記1つの車輪の車輪速度から車体速度を求めると共に前記1つの車輪の車輪速度を用いて前記1つの車輪のABS制御を行う制御部と、車体の状態を表示する表示部とを備えており、
前記制御部は、前記自動二輪車の初発進時に前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知し、
前記制御部は、前記自動二輪車の初発進後に、前記1つの車輪速度センサをモニタして、前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知すると共に、ABSの動作を禁止することを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
前記制御部は、点灯、点滅、又は点灯若しくは点滅の表示色の変更の何れか一つにより前記表示部を作動することを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車輪速度センサの監視装置において、
前記所定の最低速度は、0乃至7Km/hの間であることを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車輪速度センサの監視装置において、
前記制御部は、車体の状態に関わる追加信号が停車状態を示すか否かを判定して、前記追加信号が停車状態を示す場合には、前記初発進後に前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が前記所定の最低速度以下であっても、前記表示部が前記所定の最低速度以下であることを報知しないことを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車輪速度センサの監視装置において、
初発進時にモニタされる前記所定の最低速度が、第1の最低速度であり、初発進後にモニタされる前記所定の最低速度が、前記第1の最低速度と異なる第2の最低速度であることを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車輪速度センサの監視装置において、
前記第1の最低速度は、第2の最低速度以上である、車輪速度センサの監視装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車輪速度センサの監視装置において、
前記表示部は、ABSの警告灯であることを特徴とする車輪速度センサの監視装置。
【請求項8】
自動二輪車に用いる車輪速度センサの監視方法において、
前記自動二輪車は、1つの車輪の車輪速度を検出する1つの車輪速度センサと、前記1つの車輪の車輪速度から車体速度を求めると共に前記1つの車輪の車輪速度を用いて前記1つの車輪のABS制御を行う制御部と、車体の状態を表示する表示部とを備えており、
前記監視方法は、前記自動二輪車の初発進時に前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知するステップと、
前記自動二輪車の初発進後に、前記1つの車輪速度センサをモニタして、前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知すると共にABSの動作を禁止するステップを含むことを特徴とする監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の監視方法において、
前記監視方法は、点灯、点滅、又は点灯若しくは点滅の表示色の変更の何れか一つにより前記表示部を作動するステップを含むことを特徴とする監視方法。
【請求項10】
請求項8に記載の監視方法において、
前記所定の最低速度は、0乃至7Km/hの間であることを特徴とする監視方法。
【請求項11】
請求項8に記載の車輪速度センサの監視方法において、前記監視方法は、
車体の状態に関わる追加信号が停車状態を示すか否かを判定するステップと、
前記追加信号が停車状態を示す場合には、前記初発進後に前記車体速度又は前記1つの車輪の車輪速度が前記所定の最低速度以下であっても、前記表示部が前記所定の最低速度以下であることを報知しないステップと、を含むことを特徴とする監視方法。
【請求項12】
請求項8に記載の車輪速度センサの監視方法において、
初発進時にモニタされる前記所定の最低速度が、第1の最低速度であり、初発進後にモニタされる前記所定の最低速度が、前記第1の最低速度と異なる第2の最低速度であることを特徴とする監視方法。
【請求項13】
請求項12に記載の車輪速度センサの監視方法において、
前記第1の最低速度は、第2の最低速度以上である監視方法。
【請求項14】
請求項8に記載の監視方法において、
前記表示部は、ABSの警告灯であることを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される速度センサの監視装置及び方法に関し、より詳細には、自動二輪車に搭載される車輪速度センサの監視装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアンチロックブレーキシステム(ABS)は、特許文献1に示すように、複数の車輪速度センサを備えており、これらのセンサの出力を相互に比較することにより車輪速度をモニタして、モニタされた車輪速度に応じてABSが作動される。
【0003】
また、特許文献2の
図1に示されるような1チャンネルABSは、ABS制御がなされる1つの車輪に1つの車輪速度センサのみを備えている。
【0004】
しかしながら、このような1つの車輪速度センサしか持たない1チャンネルABSにおいては、車輪速度センサの故障等の際に、車両の電子制御ユニット(ECU)による検知や運転者に対する報知が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−327474号公報
【特許文献2】特開2008−254733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1チャンネルABSにおいて、1つの車輪速度センサのみを備える場合に、車輪速度センサからの出力がなくなった場合には、ECUは車両が停止中なのかそれとも速度センサが異常なのかを判断できない。そのために、初発進時に車輪速度が正常であると確認できた後でも、停止時には運転者は異常の発生を認識することができない。このような異常な状態で走行して、車輪がスリップするような状態になったとしても、ABSは作動しないこととなる。
【0007】
そこで、本発明は、このようなABSおいて、初発進時に車輪速度が正常であると確認できた後でも、車輪速度センサの故障の可能性を監視し、これを運転者に警告又は報知することができる監視装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、自動二輪車に用いる車輪速度センサの監視装置において、前記自動二輪車は、1つの車輪の車輪速度を検出する車輪速度センサと、前記車輪速度から車体速度を求めると共に前記車輪速度を用いて前記車輪のABS制御を行う制御部と、車体の状態を表示する表示部とを備えており、前記制御部は、前記車体速度又は前記車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知する。前記制御部は、点灯、点滅、又は点灯若しくは点滅の表示色の変更の何れか一つにより前記表示部を作動する。前記所定の最低速度は、0乃至7Km/hの間である。前記制御部は、前記自動二輪車の初発進の後に、前記車輪速度センサをモニタして、前記車体速度又は前記車輪速度が前記所定の最低速度以下か否かを判定する。前記制御部は、車体の状態に関わる追加信号が停車状態を示すか否かを判定して、前記追加信号が停車状態を示す場合には、前記初発進後に前記車体速度又は前記車輪速度が前記所定の最低速度以下であっても、前記表示部が前記所定の最低速度以下であることを報知しない。前記監視装置において、初発進時にモニタされる前記所定の最低速度が、第1の最低速度であり、初発進後にモニタされる前記所定の最低速度が、前記第1の最低速度と異なる第2の最低速度である。前記第1の最低速度は、第2の最低速度以上である。前記表示部は、ABSの警告灯である。
【0009】
さらに、本発明は、自動二輪車に用いる車輪速度センサの監視方法において、前記自動二輪車は、1つの車輪の車輪速度を検出する車輪速度センサと、前記車輪速度から車体速度を求めると共に前記車輪速度を用いて前記車輪のABS制御を行う制御部と、車体の状態を表示する表示部とを備えており、前記監視方法は、前記車体速度又は前記車輪速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知するステップを含む。前記監視方法は、点灯、点滅、又は点灯若しくは点滅の表示色の変更の何れか一つにより前記表示部を作動するステップを含む。前記所定の最低速度は、0乃至7Km/hの間である。前記監視方法は、前記自動二輪車の初発進の後に、前記車輪速度センサをモニタするステップと、前記車体速度又は前記車輪速度が前記所定の最低速度以下か否かを判定するステップと、を含む。前記監視方法は、車体の状態に関わる追加信号が停車状態を示すか否かを判定するステップと、前記追加信号が停車状態を示す場合には、前記初発進後に前記車体速度又は前記車輪速度が前記所定の最低速度以下であっても、前記表示部が前記所定の最低速度以下であることを報知しないステップと、を含む。前記監視方法において、初発進時にモニタされる前記所定の最低速度が、第1の最低速度であり、初発進後にモニタされる前記所定の最低速度が、前記第1の最低速度と異なる第2の最低速度である。前記第1の最低速度は、第2の最低速度以上である。前記表示部は、ABSの警告灯である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置や方法によれば、モニタ用の車輪速度センサもしくは車体速度情報が不要になり、1つの車輪速度センサのみを備える場合であっても、運転者が車輪速度センサの異常等の可能性やABSの不作動を認識可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の監視装置に係るブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態の監視装置に係るフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態の監視装置において、(a)車輪速度に対する時間変化を表すグラフであり、(b)イグニッションのオンオフに対する時間変化を表すグラフであり、(c)警告灯のオンオフに対する時間変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の車輪速度センサの監視装置及び方法は、初発進時に車輪速度が正常であると確認できた後でも、後述の停止状態に警告ランプを点灯又は点滅させて運転者に警告又は報知を行うものである。以下、本発明の車輪速度センサの監視装置及び方法を自動二輪車に適用した実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1のブロック図を用いて、本実施形態の監視装置を構成する電子制御ユニット(ECU)10を説明する。ECU10には、1つの車輪速度センサ2、電磁弁4、モータ6、警告灯8が接続されている。車輪速度センサ2は、ABS制御が行われる前輪又は後輪(不図示)に設けられて、車輪回転速度に基づく信号を出力する。電磁弁4は液圧回路内に複数設けられており、ABS作動時にECU10からの制御信号に基づき開閉する。モータ6は、ABS作動時にECU10からの制御信号に基づき液圧回路内の作動液を加圧する。警告灯(表示部)8は、ECU10からの制御信号に基づき、点灯、点滅、又は点灯若しくは点滅の表示色の変更、の何れか一つの動作を行って、異常等を運転者に報知する。
【0014】
また、ECU10内には、車輪速度演算部12、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14、ABS演算制御部16がそれぞれ設けられている。
【0015】
車輪速度演算部12は、車輪速度センサ2が出力した速度信号に基づいて、車輪速度を演算する。ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、車輪速度演算部12が求めた車輪速度に基づき、ABSの作動の許可を判断すると共に、警告灯の駆動表示状態を決定する。ABS演算制御部16は、ABSの作動状態を演算する。さらに、液圧駆動制御部18は、ABS演算制御部16の指令に基づき、液圧回路の電磁弁4やモータ6の駆動を制御する。
【0016】
図2のフローチャートに基づき、本実施形態に係る監視装置及び方法の動作を説明する。自動二輪車のイグニッションがオンになると、ステップS201で車輪速度センサ2が起動して、ステップ202で車輪速度センサ2が信号をECU10に出力する。ステップS203で、車輪速度演算部12は、入力した信号に基づき車輪速度を演算し、さらに車輪速度に基づき車体速度も演算する。
【0017】
次いで、ステップS204で、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、車輪速度が初発進モニタ実施用最低速度V
1 min以下か否かを判定して、V
1 min以下である場合にはステップS208に移行し、V
1 min以下でない場合にはステップS205に移行する。なお、初発進モニタ実施用最低速度以下とは、車輪速度センサ2からの信号に基づいて演算された車体速度が実質的にゼロとみなせるような場合である。初発進モニタ実施用最低速度としては、例えば、1〜7km/hの間で定めることができ、好ましくは5km/hとすることができる。
【0018】
ステップS205で、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、初発進モニタを未実施から否かを判定し、未実施の場合にはステップS208に移行し、未実施でない場合、即ち実施済みの場合にはステップS206に移行する。
【0019】
ステップS206で、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、警告灯駆動演算を行って、ステップS207で警告灯を消灯し、ステップS210に移行する。なお、ステップS207の状態は、通常の走行状態である。一方、ステップS208で、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、警告灯駆動演算を行って、ステップS209で警告灯を点灯又は点滅する。ステップS209では、現実の停止状態か、又は車両が走行しているのに停止状態と判断されていることを意味する。
【0020】
ステップS207で警告灯を消灯した後、車両は走行状態となり、ステップS210で車輪速度が走行用最低速度V
min以下か否かを判定する。なお、走行用最低速度以下とは、車輪速度センサ2からの信号に基づいて演算された車体速度が実質的にゼロとみなせるような場合である。走行用最低速度としては、例えば、1〜7km/hの間で定めることができ、好ましくは3km/hとすることができる。なお、V
1 minとV
minとの関係について、V
1 min≧V
minとすることが好ましい。その理由として、初発進時は、システム自体の動作確認、例えば、車輪速度以外にもバルブやポンプモータの駆動による確認も行われるため、初発進モニタ実施用最低速度V
1 minがあまりに低いと、バルブやモータの駆動音や振動が気になったり、またエンジン回転数が低すぎて供給電圧が不十分であるために低電圧の誤検出が起こる可能性がある。これらを防止するために、V
minと比較してある程度大きなV
1 minが設定される。
【0021】
ステップS210で車輪速度が走行用最低速度V
min以下でない場合には、ステップS210に戻り、ステップS210で車輪速度が走行用最低速度V
min以下の場合には、ステップS211に移行する。ステップS211で、ABS許可判断及び警告灯駆動演算部14は、警告灯駆動演算を行って、ステップS212で警告灯を点灯又は点滅する。ステップS212では、現実の停止状態か、又は車両が走行しているのに停止状態と判断されていることを意味する。
【0022】
図3のグラフに基づき、本実施形態の監視装置及び方法の動作時の状態を説明する。
図3(a)は車輪速度センサからの信号から演算される車輪速度の時間変化を表す。
図3(b)は、イグニッションのオンオフ状態の時間変化を表す。
図3(c)は警告灯のオンオフ(点灯、消灯)状態の時間変化を表す。
【0023】
図3の時間T1は、初発進前の停止状態、即ち、車両の停車時にエンジンが停止していて発進のためにイグニッションがオンされた状態であり、警告灯は点灯している。したがって、車輪速度センサの車輪速度は停車状態を表す0である。時間T2までは、時間T1から連続して警告灯はオン状態であり、車輪速度は初発進モニタ実施用最低速度V
1 min以下であるが、実際に車両は低速で動き出している。時間T2では車両が加速し車体速度が速度V
1 minより大きくなると、初発進モニタが実施され、正常であれば警告灯は消灯する。時間T2から時間T3の間で、車輪速度が一端上昇してその後低下していき、走行用最低速度V
min以下になると警告灯が点灯又は点滅する。時間T3から時間T4の間は、例えば信号待ちで停車しているような状態であり、イグニッションはオンであり且つ車両は停止している。車両が停止しているため、車輪速度は走行用最低速度V
min以下であり警告灯は点灯又は点滅する。そして、時間T4においては、車両が再度発進して車輪速度がV
minより大きくなると、警告灯が消灯する。時間T4から時間5は走行状態であり、警告灯の消灯が維持される。そして、時間T5で車輪速度が走行用最低速度V
min以下になると、警告灯が点灯又は点滅する。もしこの状態で、車輪速度センサの故障等により、演算される車輪速度が走行用最低速度V
min以下であると、車両が現実に走行していても警告灯は連続して点灯又は点滅が維持される。
【0024】
本発明の監視装置は、初発進で車輪速度センサが正常であることが確認でき、警告灯を消灯したとしても、その後車輪速度センサから信号が出力されなくなった場合には、常に警告灯を点灯又は点滅する。初発進で車輪速度センサが正常であることが確認できたとしても、その後の停車時には再びABSの警告灯を点灯又は消灯させて(ABSの動作を禁止し)運転者に警告を行う。再発進後に再び車輪速度センサが正常であることが確認できたら(所定の最低速度を超える速度が出力されたら)、再び警告灯を消灯させてABSの作動を可能とする。
【0025】
なお、本発明においては、通常の警告灯を用いてもよく、専用の警告灯を設けてもよい。警告灯として、ABSの作動表示灯を点灯、点滅、表示色の変更させてもよい。さらに、ABS以外からの車輪速度等の追加速度情報の入力があり、その情報が有効かつ停車状態を示している場合には、停車時に再点灯または点滅等させないようにしてもよい。他の追加速度情報としては、車輪の軸の回転速度、スピードメータ用信号、駆動系の信号(エンジン回転数、クラッチが接続された状態でのクラッチ信号)を用いることができる。
【0026】
ABS制御中の場合は、車輪速度が走行用最低速度以下である状態がある一定時間(例えば、1〜2秒)以上の場合に前記表示部で報知するようにしても良い。
【0027】
車体速度は車輪速度から演算されるが、車輪速度演算用のフィルターまたは車輪速度の変化量勾配制限を設けており、ABS制御中は一般的にフィルター等は強めに設定される。よって、本発明が適用される1チャンネルABS(ABS制御がなされる1つの車輪に1つの車輪速度センサのみを備える)を有する自走二輪車において、特にABS制御中は、車体速度=車輪速度とはならない場合が生じる。車体速度が所定の最低速度以下であることを前記表示部で報知とすることにより、特に低い速度でのABS制御中、車輪にスリップが生じて、短時間、最低速度以下となっても車体速度が最低速度よりも高ければ前記表示部で報知しないようにできる。したがって、本発明は、車輪速度依存、車体速度依存の夫々にメリットがある。
【0028】
なお、警告灯8による警告表示のオプションとしては、(1)最低速度V
1 min及び/又はV
min以下でABS警告灯を点滅させ、故障判断時に点灯へ切り換える、(2)最低速度V
1 min及び/又はV
min以下と、ABSの故障時とでABSの警告灯8の色を変える、(3)ABSの警告灯8以外に、最低速度V
1 min及び/又はV
min以下の場合の表示灯等の表示手段を別途設ける。
【0029】
なお、特許請求の範囲に記載の「所定の最低速度」とは、初発進進モニタ実施用最低速度V
1 min及び/又は走行用最低速度V
minを意味する。
【符号の説明】
【0030】
2 車輪速度センサ
4 電磁弁
6 モータ
8 警告灯
10 ECU(監視装置)
12 車輪速度演算部
14 ABS許可判断及び警告灯駆動演算部
16 ABS演算制御部
18 液圧駆動制御部