【発明の効果】
【0013】
以下の記載でより詳細に説明する通り、当該焼結粒子は熱水条件下であっても優れた耐摩耗性を有する。
【0014】
さらに、上記粒子の密度は比較的低い。粉砕機に投入することができる粒子の重量が通常には制限因子である故に、本発明の焼結粒子の密度は、有利に、多数の該粒子を投入できる事を意味している。
【0015】
さらに、上記粒子は低減されたジルコニア及びCeO
2含有量を持つ。ジルコニア及びセリウムは高価な物質であるため、所定の予算で、より多くの焼結粒子を生産すること及び多数の粒子を粉砕機中に投入することが可能である。従って、本発明の焼結粒子は非常に高い粉砕収率を得るために使用され得る。
【0016】
要するに、本発明の焼結粒子は、熱水条件下での耐摩耗性と粉砕収率の間での優れた妥協案を得ることができることを意味している。
【0017】
本発明の焼結粒子は、以下の任意的な特徴の1以上を有することもできる。
【0018】
CeO
2の上記モル量は、ZrO
2、CeO
2及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率で10.0%未満、好ましくは9.5%未満であり、及び/又は、好ましくは7.0%超、より好ましくは7.5%超、さらに好ましくは8.0%超、さらには8.5超である。
【0019】
Y
2O
3の上記モル量は、ZrO
2、CeO
2及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率で1.9%未満、1.7%未満、1.5%未満、1.2未満、及び/又は、0.7%超、更には0.8%超である。
【0020】
特定の態様において、CeO
2の上記モル量は、ZrO
2、CeO
2及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率で8.5%〜9.5%の範囲にあり、Y
2O
3の上記モル量は、ZrO
2、CeO
2及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率で0.8%〜1.2%の範囲にある。
【0021】
アルミナAl
2O
3の量は、酸化物に基づく重量百分率で15%超、さらには20%超であり、及び/又は、55%未満、さらには50%未満、さらには40%未満、あるいはさらには35%未満である。
【0022】
酸化マンガンはMnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
4、及びその混合物から選択される。好ましくは、酸化マンガンはMnO、Mn
3O
4、及びその混合物から選択される。
【0023】
酸化プラセオジムはPr
6O
11である。
【0024】
酸化銅はCuOである。
【0025】
酸化鉄はFeO、Fe
2O
3、及びその混合物から選択される。
【0026】
添加剤はCaO、MnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
4、ZnO、La
2O
3、SrO及びそれらの混合物から選択される。
【0027】
添加剤はCaO、酸化
マンガン、La
2O
3、SrO、BaO及びそれらの混合物から選択され、好ましくはCaO、MnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
4及びそれらの混合物から選択される。
【0028】
好ましくは、添加剤はCaO、MnO、Mn
3O
4及びそれらの混合物から選択される。さらに好ましくは、添加剤はCaOとMnO及び/又はMn
3O
4との混合物である。
【0029】
好ましくは、添加剤はCaO、MnO及びそれらの混合物から選択される。さらに好ましくは、添加剤はCaOとMnOの混合物である。
【0030】
添加剤の量は、酸化物に基づく重量百分率で0.3%超、0.4%超、さらには0.5%超、さらには0.6%超であり、及び/又は5%未満、さらには4%未満、さらには3%未満、さらには2.5%未満、さらには2%未満、さらには1.5%未満、さらには1%未満である。
【0031】
添加剤はCaOを含有し、CaOの量は、酸化物に基づく重量百分率で0.3%超、さらには0.4%超、さらには0.5%超であり、及び/または1.5%未満、好ましくは1%未満、さらには0.8%未満、さらには0.6%未満である。
【0032】
添加剤はCaOと、MnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
4、ZnO、La
2O
3、SrO及びそれらの混合物から選択される、特には、MnOとMn
3O
4の混合物、第二の添加剤成分を含む。上記第二の添加剤成分の量は、酸化物に基づく重量百分率で好ましくは0.1%超、0.2%超であり、及び/又は4.0%未満、好ましくは3.5%未満、さらには3.0%未満、さらには2.5%未満、さらには2.0%未満、さらには1.5%未満、さらには1.0%未満、さらには0.8%未満、さらには0.6%未満、さらには0.5%未満、あるいは0.4%未満、さらには0.3%未満である。
【0033】
La
2O
3の量は、酸化物に基づく重量百分率で5.2%未満、5.0%未満、さらには4.5%未満である。
【0034】
不純物の量は、酸化物に基づく重量百分率で1.0%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.5%未満、さらには0.3%未満である。一態様においては、不純物は酸化物によって構成されている。
【0035】
好ましくは、シリカSiO
2の量は、酸化物に基づく重量百分率で1.5%未満、1.0%未満、好ましくは0.7%未満、好ましくは0.5%未満である。
【0036】
粒子は、1320℃以上、1400℃超、1425℃超であり、及び/又は1550℃未満の温度で焼結することによって得られる。特には、それは、以下で説明する本発明に従う方法により得ることができる。
【0037】
好ましくは、本発明に従う焼結粒子の、部分的に安定化されたジルコニアグレインとアルミナグレインのセットの平均径は、3μm(マイクロメーター)未満、好ましくは2.5μm未満、さらには2μm未満、さらには1.5μm未満、さらには1μm未満、さらには0.8μm未満であり、好ましくは0.1μm超である。
【0038】
焼結粒子はビーズ状であり、好ましくは0.7超の球形度を有するビーズ状である。
【0039】
焼結粒子は細長い形状を有するグレインを有する。
【0040】
細長い形状を有するグレインの、数で80%超、90%超、さらには実質上100%が、全体的に直線で囲まれた形を有する。
【0041】
X線回折により測定された細長い形状を有するグレインの数は、好ましくは0.05%超、好ましくは0.10%超、好ましくは0.15%超、好ましくは0.20%超、好ましくは0.25%超、好ましくは0.3%超、さらには0.4%超、及び/又は、5%未満、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満である。細長い形状を有するグレインの数の測定は、本記載の残りの部分で詳述する。
【0042】
上記細長い形状を有するグレインは、元素Al及び添加剤として加えられた酸化物の金属カチオン成分(Ca、及び/又はMn、及び/又はZn、及び/又はLa、及び/又はPr、及び/又はSr、及び/又はCu、及び/又はNd、及び/又はBa、及び/又はFe)を含有する。上記細長い形状を有するグレインは元素セリウム(Ce)を含有していてもよい。それ故に、添加剤がCaO及びMnOを有する場合に、細長い形状を有するグレインは元素Al、Ca、Mn、及びCeを含有する。焼結粒子の密度は、4.8g/cm
3[グラムパー立方センチメートル]超、さらには4.9g/cm
3超であり、及び/又は、5.5g/cm
3未満、さらには5.3g/cm
3である。
【0043】
焼結粒子は、熱間静圧圧縮成形(HIP)を含まない方法を使用して製造される。
【0044】
焼結粒子は、ドリップキャスティング工程を含む方法を使用して製造される。
【0045】
本願発明は、本発明に従う焼結粒子を重量百分率で90%超、好ましくは95%超、好ましくは約100%の量で含有する粒子のセットをもまた提供する。
【0046】
本発明は、本発明に従う焼結粒子、特には焼結ビーズを製造する方法をもまた提供し、該方法は以下の順次の段階を有する。
【0047】
a)必要ならば、1以上の出発原料粉体を粉砕し、好ましくは共粉砕によって粉砕して、該粉体を混合して1.0μm未満のメジアン径を有する粒子混合物を得る。
b)上記粉体から懸濁物を調製し、懸濁物の組成は、段階f)の最後で、本発明の焼結粒子に一致する組成を有する焼結粒子を得るように適合されている。
c)懸濁物の滴を硬化して、未焼成粒子を形成する。
d)洗浄する。
e)乾燥する。
f)1300℃超の焼結温度で焼結して、焼結粒子を得る。
焼結温度は
(C’1)懸濁物が、Mn、Zn、Cu、Pr、Nd、Sr、La、Ba、またはFeの化合物を含まない、つまり焼結粒子中の添加剤がCaOである、あるいは、
(C’2)懸濁物が、段階f)の最後で得られた焼結粒子のCeO
2モル含有量がZrO
2、CeO
2、及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率で10〜11%の範囲にあるなら、1400℃超であり、好ましくは1425℃超である。
【0048】
本発明に従う方法は、以下の任意的な特徴の1以上を含み得る。
【0049】
1以上の出発原料粉体を粉砕するために段階a)を行って、好ましくは共粉砕により行って、その粉体を混合することによって、0.6μm未満、好ましくは0.5μm、好ましくは0.3μm、好ましくは0.2μmの平均径を有する粒子混合物を得ること。
【0050】
該方法は、少なくとも焼結段階の終りより前に、静圧圧縮成形を含まず、特には熱間静圧圧縮成形(HIP)を含まないこと。
【0051】
焼結温度は1550℃未満であること。
【0052】
焼結温度は1320℃以上、あるいは1400℃超、あるいは1425℃超であること。
【0053】
本発明はまた、本発明の焼結粒子を、あるいは、本発明に従う方法を使用して製造された又は製造されることができる粒子を、粉砕媒体として、特には微粉砕のための媒体として使用する方法を提供する。本発明はまた、本発明に従う焼結粒子を有する粉砕機を提供する。
【0054】
本発明はまた、粒子混合物を提供し、該粒子混合物は、ZrO
2、Al
2O
3、CeO
2、及びY
2O
3の粒子、及び任意的にCaO、及び/又は酸化
マンガン、及び/又はZnO、及び/又はLa
2O
3、及び/又は酸化プラセオジム、及び/又はSrO、及び/又は酸化銅、及び/又はNd
2O
3、及び/又はBaO、及び/又は酸化鉄の粒子、及び/又は上記酸化物の前駆体の粒子を、該粒子混合物を焼結することによって本発明に従う焼結粒子が得られるような割合で含有する。
【0055】
有利には、上記粒子混合物は出来合いである。特に、段階b)で懸濁物の製造の為に使用されてよい。
【0056】
特に、本発明に従う粒子混合物は袋に詰めこまれていてもよい。
【0057】
好ましくは、粒子混合物のメジアン径は1μm未満、好ましくは0.6μm未満、好ましくは0.5μm未満、好ましくは0.3μm未満、さらには0.2μm未満である。
【0058】
定義
用語「粒子」は、粉体中にある固体物質の一つの個体を意味する。
【0059】
用語「焼結」は、1100℃超の加熱処理による、粒子の塊の、その成分の或る部分(しかしその成分の全部ではない)の部分的な又は全体的な融合をたぶん伴う、団結、を言い表すために使用される。
【0060】
用語「ビーズ」は、球形度、つまりその最小直径に対する最大直径の比、が0.6超である粒子を意味し、該粒径度が得られた方法には関係しない。
【0061】
粒子のセットの「メジアン径」は、通常D
50と示され、上記セットの粒子を等質量の第一及び第二の集団に分割するサイズであり、上記第一及び第二の集団は、夫々、メジアン径より大きいサイズを有する粒子のみ、又はメジアン径より小さいサイズを有する粒子のみを含む。メジアン径は例えばレーザー粒度計を使用して測定されてよい。
【0062】
焼結粒子のグレインの「平均径」は、「平均リニアインターセプト」法を使用して測定される寸法である。このタイプの測定方法はASTM E1382法に記載されており、グレイン分布の関数である較正係数も適用される。
【0063】
用語「酸化
マンガン」は、
マンガンの1以上の酸化物を意味する。特には、MnO、Mn
2O
3、MnO
2、及びMn
3O
4が言及されうる。
【0064】
用語「酸化鉄」は、1以上の酸化鉄を意味する。特には、FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4が言及されうる。
【0065】
用語「酸化プラセオジム」は、プラセオジムの1以上の酸化物を意味する。特には、Pr
2O
3が言及されうる。
【0066】
用語「酸化銅」は、銅の1以上の酸化物を意味する。特には、CuO及びCu
2Oが言及されうる。
【0067】
用語「不純物」は、出発物質と一緒に必然的に導入される避けがたい成分を意味する。特には、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、酸炭化物、炭窒化物、及び金属ナトリウム族、及び、他のアルカリ、バナジウム、及びクロムに属する化合物、が不純物である。述べ得る例は、Na
2OまたはMgOである。これに対し、酸化ハフニウムは不純物とは考えられない。
【0068】
HfO
2はZrO
2から化学的に分離することができない。ジルコニアを含有する製品の化学組成において、「ZrO
2」はそれ故にこれら二つの酸化物の合計量を示す。しかし、本発明において、HfO
2は出発投入物に意図的に加えられない。このように、その酸化物はジルコニアの原料中に通常2%未満の量で常に自然に存在しているため、「HfO
2」は単に微量の酸化ハフニウムを示す。そして明確性のために、ジルコニアと微量の酸化ハフニウムの量は、互換的に「表示Zr+HfO
2」又は「ZrO
2」又は「ジルコニア含有量」であってよい。
【0069】
用語、酸化物の「前駆体」は、本発明に従う焼結粒子の製造の間に上記酸化物を供給できる成分を意味する。例えば、炭酸バリウムBaCO
3は、BaOの可能性ある前駆体である。
【0070】
用語、グレインの「形状因子」は、「F」で表わされ、グレインの最大寸法「Ga」の、寸法Gaの方向に垂直に測定された最大寸法「Pa」に対する比の逆数として使用されており、F=Pa/Gaである。これらの寸法は、焼結粒子の研磨された切片の観察の平面で測定され、該測定は従来のように当該切片の写真を使用する(
図1参照)。
【0071】
用語「細長い形状を有するグレイン」は0.4未満の形状因子Fを有するグレインを意味する。
【0072】
発明者らは本発明の製品が、添加剤の作用として、ヒボナイト型の相及び/または マグネトプランバイト型の相を含み、それらの相は細長い形状を有するグレインにのみ実質的に存在していることを確認した。それ故に、それらの相の量の測定は細長い形状を有するグレインの量を評価する手段として用いられ得る。従って、「細長い形状を有するグレインの数」は、a%として、以下の式(1)を使用して定義される。
T=100×(A
細長いグレイン)/(A
細長いグレイン+A
Al2o3+A
Zro2) (1)
【0073】
上記式中、A
細長いグレインは、
・ヒボナイト型相の<110>反射に相当するピーク(ICDDファイルNo38−0470)の、及び
・マグネトプランバイト型相の<107>反射に相当するピーク(ICDDファイルNo04−0704)の
X線回折図にて測定された面積の合計である。
【0074】
A
Al2O3は、Al
2O
3相の<012>反射に相当するピーク(ICDDファイルNo43−1484)の同じ図において測定された面積であり、24.5°〜26.5°の範囲で2θ測角領域にて測定され、理論上は25.58°の角2θに中心を置かれる。
【0075】
A
ZrO2は、ZrO
2正方晶系相の<111>反射に相当するピーク(ICDDファイルNo17−0923)の同じ図において測定された面積であり、26.5°〜31.3°の範囲で2θ測角領域にて測定され、理論上は30.19°の角2θに中心を置かれる。
【0076】
面積A
細長いグレイン、A
Al2O3及びA
ZrO2の測定は、銅X線回折管を備えるパナリティカル社製のX’パート型回折計を使用して得られた同じX線回折図にて実施された。ステップサイズは、24.5°〜26.5°及び31.3°〜33.6°の2θ測角範囲で0.008°及び600秒/ステップに、26.5°〜31.3°の2θ測角範囲で0.033°及び300秒/ステップに調整された。擬似ヴォイト関数を用いた解析処理は、ブルカー社製のTOPASソフトウエアを用いて、秒当たりカウントで表示されるピークの振幅について行われた。
【0077】
用語「ヒボナイト型相の<110>反射に相当するピーク」及び「マグネトプランバイト型相の<107>反射に相当するピーク」は、31.19°〜33.19°及び31.29°〜33.29°夫々での2θ測角範囲における最大ピークを表すために使用される。これらの範囲は32.19°及び32.29°の2θ角に中心を置かれており、純粋なヒボナイト相のピーク(ICDDファイルNo38−0470)及び純粋なマグネトプランバイト相のピーク(ICDDファイルNo04−0704)に夫々対応している。角2θについてこれら値に相対的なオフセットは、使用した添加剤の性質の函数である。添加剤の性質はまた、ヒボナイト型相の<110>反射に相当するピーク及び/またはマグネトプランバイト型相の<107>反射に相当するピークの存在を決定する。
【0078】
特に明記しない限り、製品の組成に関する百分率又は出発投与量に関する百分率は全て、酸化物に基づく重量百分率であり、CeO
2とY
2O
3の百分率は全てZrO
2、CeO
2、及びY
2O
3の合計に基づくモル百分率である。