(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御信号は、前記直流電圧が所定値以上の場合、前記直流電圧の変動にかかわらず、前記交流電源から前記電力変換部への交流電流の流れを禁止するように出力される、
請求項1に記載の射出成形機。
前記制御信号は、前記インバータから前記コンデンサへの電力の回生が終了した時に前記直流電圧が前記コンデンサの許容最大電圧に対して所定の比率を示す値となるように出力される、
請求項1に記載の射出成形機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る射出成形機の一例の要部構成を示す図である。
【0020】
射出成形機は、本例では電動式射出成形機であり、射出用のサーボモータ40Aを備える。射出用のサーボモータ40Aの回転はボールネジ2に伝えられる。ボールネジ2の回転により前後進するナット3はプレッシャプレート4に固定されている。プレッシャプレート4は、ベースフレーム(図示せず。)に固定されたガイドバー5、6に沿って移動可能である。プレッシャプレート4の前後進運動は、ベアリング7、ロードセル8、射出軸9を介してスクリュ50に伝えられる。スクリュ50は、加熱シリンダ51内に回転可能に、かつ軸方向に移動可能に配置されている。加熱シリンダ51におけるスクリュ50の後部には、樹脂供給用のホッパ52が設けられている。射出軸9には、ベルトやプーリ等の連結部材53を介してスクリュ回転用のサーボモータ40Bの回転運動が伝達される。すなわち、スクリュ回転用のサーボモータ40Bにより射出軸9が回転駆動されることにより、スクリュ50が回転する。
【0021】
可塑化/計量工程においては、加熱シリンダ51の中をスクリュ50が回転しながら後退することにより、スクリュ50の前部、すなわち加熱シリンダ51のノズル51−1側に溶融樹脂が貯えられる。射出工程においては、スクリュ50の前方に貯えられた溶融樹脂を金型内に充填し、加圧することにより成形が行われる。この時、樹脂を押す力がロードセル8により反力として検出される。つまり、スクリュ前部における樹脂圧力が検出される。検出された圧力は、ロードセル増幅器55により増幅され、制御手段として機能するコントローラ56(制御装置)に入力される。また、保圧工程では、金型内に充填した樹脂が所定の圧力に保たれる。
【0022】
プレッシャプレート4には、スクリュ50の移動量を検出するための位置検出器57が取り付けられている。位置検出器57の検出信号は増幅器58により増幅されてコントローラ56に入力される。この検出信号は、スクリュ50の移動速度を検出するために使用されてもよい。
【0023】
サーボモータ40A、40Bにはそれぞれ、回転数を検出するためのエンコーダ41A、41Bが備えられている。エンコーダ41A、41Bで検出された回転数はそれぞれコントローラ56に入力される。
【0024】
サーボモータ40Cは、型開閉用のサーボモータであり、サーボモータ40Dは、成形品突出し(エジェクタ)用のサーボモータである。サーボモータ40Cは、例えばトグルリンク(図示せず。)を駆動して型開閉を実現する。また、サーボモータ40Dは、例えばボールネジ機構を介してエジェクタロッド(図示せず)を移動させることで成形品突出しを実現する。サーボモータ40C、40Dにはそれぞれ、回転数を検出するためのエンコーダ41C、41Dが備えられている。エンコーダ41C、41Dで検出された回転数はそれぞれコントローラ56に入力される。
【0025】
コントローラ56は、マイクロコンピュータを中心に構成されており、例えば、CPU、制御プログラム等を格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。
【0026】
コントローラ56は、複数の各工程に応じた電流(トルク)指令をサーボモータ40A〜40Dのそれぞれに送る。例えば、コントローラ56は、サーボモータ40Bの回転数を制御して可塑化/計量工程を実現する。また、コントローラ56は、サーボモータ40Aの回転数を制御して射出工程及び保圧工程を実現する。同様に、コントローラ56は、サーボモータ40Cの回転数を制御して型開工程及び型閉工程を実現する。さらに、コントローラ56は、サーボモータ40Dの回転数を制御して成形品突出し工程を実現する。
【0027】
ユーザインターフェース35は、型開閉工程、射出工程等の各成形工程のそれぞれに対して、成形条件を設定可能な入力設定部を備える。また、ユーザインターフェース35は、後述の消費電力算出のために、型開閉工程、射出工程等の各成形工程のそれぞれに対して成形条件を入力する入力部を備える。その他、ユーザインターフェース35は、ユーザからの各種指示を入力する入力部を備えると共に、ユーザに対して各種情報を出力する出力部(例えば表示部)を備える。
【0028】
射出成形機における射出成形の1サイクルは、典型的には、金型を閉じる型閉工程と、金型を締め付ける型締め工程と、金型のスプル(図示せず)にノズル51−1を押しつけるノズルタッチ工程と、加熱シリンダ51内のスクリュ50を前進させて、スクリュ50前方に溜まった溶融材料を金型キャビティ(図示せず)内に射出する射出工程と、その後、気泡、ヒケの発生を抑制するために保持圧力をしばらくかける保圧工程と、金型キャビティ内に充填された溶融材料が冷却されて固まるまでの間の時間に次のサイクルのために、スクリュ50を回転させて、樹脂を溶融しながら加熱シリンダ51の前方にため込む可塑化/計量工程と、固化された成形品を金型から取り出すために、金型を開く型開工程と、成形品を金型に設けられた突出しピン(図示せず)によって押し出す成形品突出し工程とからなる。
【0029】
電源回生コンバータ10は、交流電源20の交流電力を直流電力に変換するための装置であり、例えば、交流電源20と複数のインバータ部30A、30B、・・・(以下、集合的に「インバータ部30」とも称する。「モータ40」並びに後述の「電力変換部31」及び「コンデンサ32」についても同様である。)との間に接続される。
【0030】
交流電源20は、例えば、商用の3相交流電源であり、電源回生コンバータ10に対して交流電流を供給する。
【0031】
インバータ部30はそれぞれ、電源回生コンバータ10が出力する直流電力を交流電力に変換しその交流電力を各種負荷に供給するための装置であり、例えば、交流電力と直流電力とを双方向に変換可能なスイッチング素子で構成される電力変換部31(31A、31B、・・・)と、コンデンサ32(32A、32B、・・・)とを備えたサーボカードであり、モータ40(40A、40B、・・・)のそれぞれに交流電流を供給する。本実施例では、インバータ部30Aが射出用のサーボモータ40Aに接続され、インバータ部30Bがスクリュ回転用のサーボモータ40Bに接続され、インバータ部30Cが型開閉用のサーボモータ40Cに接続され、インバータ部30Dがエジェクタ用のサーボモータ40Dに接続される。なお、電源回生コンバータ10は、単一のインバータ部30のみに接続される構成であってもよい。
【0032】
図2は、本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される電源回生コンバータ10の構成例を示す機能ブロック図である。
【0033】
電源回生コンバータ10は、電力変換部11、ACリアクトル12、交流電流検出部13、DCリンクコンデンサ14、直流電圧検出部15、及び交流電流制御部16を含む。
【0034】
電力変換部11は、交流電力と直流電力とを双方向に変換可能な装置であり、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されるスイッチング素子である。
【0035】
具体的には、電力変換部11は、後述の交流電流制御部16が出力する制御信号に応じて、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、DCリンクコンデンサ14における直流電力から交流電源20における交流電力への変換動作(電源回生運転)を行い、その電源回生運転における、交流電源20と電力変換部11との間の交流電力(交流電流)、及び、DCリンクコンデンサ14と電力変換部11との間の直流電力(直流電圧)の大きさを制御する。なお、電力変換部11は、ダイオード整流により、交流電力からDCリンクコンデンサ14における直流電力への変換動作(力行運転)を行うものとする。
【0036】
ACリアクトル12は、巻線を利用した受動素子であり、例えばその一機能として、電源回生運転の際に、電源回生コンバータ10から交流電源20に流れる高調波電流を抑制する。
【0037】
交流電流検出部13は、電力変換部11と交流電源20との間を流れる交流電流の大きさを検出するための装置であり、その検出値を後述の交流電流制御部16に対して出力する。なお、交流電流検出部13は、所定周期で交流電流の値を検出し且つ出力するものとし、所定周期で検出されたそれら検出値のそれぞれを所定時間に亘ってRAM等の記憶媒体に記憶保持するものとする。また、本実施例において、この交流電流は、電源回生コンバータ10から交流電源20への流れが正値で表され、交流電源20から電源回生コンバータ10への流れが負値で表されるものとする。
【0038】
DCリンクコンデンサ14は、インバータ部30との間でやり取りする直流電力を蓄積するためのコンデンサであり、電源回生コンバータ10によって、所定の電圧値(例えば、交流電源20における電源電圧の波高値であり、以下「充電電圧」とする。)を維持するように交流電源20から電力が供給される。
【0039】
直流電圧検出部15は、DCリンクコンデンサ14における直流電圧を検出するための装置であり、その検出値を後述の交流電流制御部16に対して出力する。なお、直流電圧検出部15は、所定周期で直流電圧の値を検出し且つ出力するものとし、所定周期で検出されたそれら検出値のそれぞれを所定時間に亘ってRAM等の記憶媒体に記憶保持するものとする。
【0040】
交流電流制御部16は、電力変換部11と交流電源20との間の交流電流の向き及び大きさを制御するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only
Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータであって、交流電流指令算出部160、ゼロ電流指令出力部161、回生開始電圧記憶部162、演算部163、出力切換部164、演算部165、及び制御信号出力部166のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各部に対応する処理をCPUに実行させ、所望の交流電流の向き及び大きさを実現するための制御信号を電力変換部11に対して出力する。
【0041】
また、交流電流制御部16は、上述の各部をアナログ回路、デジタル回路、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、FPAA(Field
Programmable Analog Array)等を用いてハードウェアで構成するようにしてもよい。
【0042】
なお、交流電流制御部16は、本実施例において、電源回生コンバータ10に搭載される機能要素として構成されるが、コントローラ56(
図1参照。)に搭載される機能要素として構成されてもよい。
【0043】
交流電流指令算出部160は、直流電圧検出部15が検出したDCリンクコンデンサ14における直流電圧の時間的な変動に応じた交流電流指令値を算出するための要素である。
【0044】
図3は、交流電流指令算出部160の詳細を示す機能ブロック図であり、交流電流指令算出部160は、直流電圧差分算出部1600、制御ゲイン乗算部1601、及びリミッタ部1602を含む。
【0045】
具体的には、交流電流指令算出部160は、直流電圧差分算出部1600により、直流電圧検出部15が検出した直流電圧の一制御周期前の値V
PRV(例えばRAMに記憶されている。なお、値V
PRVは、複数制御周期前の値であってもよい。)と今回検出した値V
CRTとの間の差分ΔV(増分又は減分である。)を算出し、算出したΔVに対応する交流電流の値A
DIFFを、交流電流検出部13が検出した交流電流の一制御周期前の値A
PRV(例えばRAMに記憶されている。なお、値A
PRVは、複数制御周期前の値であってもよい。)に加算して交流電流指令値A
TMPを算出し、算出した交流電流指令値A
TMPを制御ゲイン乗算部1601に対して出力する。
【0046】
その後、交流電流指令算出部160は、制御ゲイン乗算部1601により、交流電流指令値A
TMPに対して、差分ΔVの符号(正負)や大きさに応じた所定の制御ゲインを乗算し、制御ゲインを乗算した後の交流電流指令値A
TMPをリミッタ部1602に対して出力する。
【0047】
その後、交流電流指令算出部160は、リミッタ部1602により、交流電流指令値A
TMPと許容最小値A
MINとを比較し、且つ、交流電流指令値A
TMPと許容最大値A
MAXとを比較し、交流電流指令値A
TMPを許容最小値A
MINと許容最大値A
MAXとの間に制限しながら、交流電流指令値A
TMPを目標交流電流指令値A
TGTとして出力切換部164に対して出力する。
【0048】
また、許容最小値A
MINは、例えば値ゼロに設定されるものとする。なお、本実施例において、負値を有する交流電流は、交流電源20から電源回生コンバータ10へ(力行方向へ)流れる交流電流を表し、正値を有する交流電流は、電源回生コンバータ10から交流電源20へ(回生方向へ)流れる交流電流を表すものとする。この場合、許容最小値A
MINを値ゼロとすることで、交流電流制御部16は、交流電流の向きを回生方向のみに制限することができ、力行運転を禁止することができる。
【0049】
また、許容最大値A
MAXは、例えば、電源回生コンバータ10の許容最大交流電流以下の交流電流値、又は、モータ40からの電力の回生が終了したときにDCリンクコンデンサ14の直流電圧がDCリンクコンデンサ14の許容最大直流電圧に対して所定の比率(例えば、90%である。)を示す値となるように算出される交流電流値に設定されるものとする。
【0050】
なお、許容最小値A
MIN及び許容最大値A
MAXは共に、NVRAMやROM等の不揮発性の記憶媒体に予め記憶されており、書き換え可能であってもよく、書き換え不能であってもよい。
【0051】
ゼロ電流指令出力部161は、現に実行されている電源回生運転を停止させる、或いは、電源回生運転を開始させないようにするための交流電流指令値を出力する要素であり、例えば、交流電流指令値A
0(値ゼロ)を目標交流電流指令値A
TGTとして出力切換部164に対して出力する。
【0052】
回生開始電圧記憶部162は、電源回生運転の開始の可否を判断するためのDCリンクコンデンサ14の直流電圧の値(回生開始電圧)を記憶するための要素であり、例えば、NVRAMやROM等の不揮発性の記憶媒体に設定される記憶領域であって、書き換え可能であってもよく、書き換え不能であってもよい。なお、回生開始電圧は、例えば、交流電源20における電源電圧の波高値よりも僅かに高い値に設定される。モータ40からの電力がDCリンクコンデンサ14(DCリンクコンデンサ14は、通常、その波高値に等しい充電電圧を有する。)に回生される際に電源回生運転をできるだけ早期に開始させるためである。
【0053】
演算部163は、直流電圧検出部15が検出したDCリンクコンデンサ14の現在の直流電圧の値V
CRTと回生開始電圧記憶部162が記憶する回生開始電圧との間の差を算出するための要素であり、例えば、回生開始電圧から現在の直流電圧の値V
CRTを差し引いた値を出力切換部164に対して出力する。
【0054】
出力切換部164は、DCリンクコンデンサ14の現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧以上の場合に、交流電流指令算出部160が出力する目標交流電流指令値A
TGTを出力し、一方で、DCリンクコンデンサ14の現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧未満の場合に、ゼロ電流指令出力部161が出力する目標交流電流指令値A
TGTを出力するようにその出力を切り換える要素である。
【0055】
具体的には、出力切換部164は、演算部163の出力値が負値の場合(現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧以上の場合)、交流電流指令算出部160からの目標交流電流指令値A
TGTを演算部165に対して出力し、一方で、演算部163の出力値が正値の場合(現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧未満の場合)、ゼロ電流指令出力部161からの目標交流電流指令値A
TGTを演算部165に対して出力する。
【0056】
演算部165は、交流電流検出部13が検出した現在の交流電流の値A
CRTと出力切換部164が出力する目標交流電流指令値A
TGTとの間の差分ΔA(増分又は減分である。)を算出するための要素であり、例えば、目標交流電流指令値A
TGTから現在の交流電流の値A
CRTを差し引いた値ΔAを制御信号出力部166に対して出力する。
【0057】
制御信号出力部166は、例えばPI制御により、演算部165から受けた値ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力し、目標交流電流指令値A
TGTが示す交流電流が電力変換部11と交流電源20との間で実際に流れるようにする。
【0058】
次に、
図4を参照しながら、モータ電力、電源回生電力、及び直流電圧の時間的推移について説明する。
【0059】
図4(A)は、モータ電力(電力変換部11とモータ40のそれぞれとの間でやり取りされる電力を合計したものである。)及び電源回生電力(電源回生コンバータ10から交流電源20に戻される電力であり、説明を分かり易くするため、DCリンクコンデンサ14に充電される電力は省略している。)の時間的推移を示す図であり、時間軸(横軸)より上が力行状態を示し、時間軸(横軸)より下が回生状態を示す(以下、時間軸の上の領域を「力行領域」とし、時間軸の下の領域を「回生領域」とする。)。
【0060】
また、
図4(B)は、DCリンクコンデンサ14における直流電圧の時間的推移を示す図であり、その時間軸(横軸)が
図4(A)と共通するものとする。
【0061】
モータ電力、電源回生電力、及び直流電圧の時間的推移は、縦軸に平行な複数の点線によって複数の段階に分けられており、段階(I)は、電源回生コンバータ10が停止している状態に対応し、段階(II)は、電源回生コンバータ10が電源回生運転の実行を開始した後の状態に対応する。
【0062】
また、段階(III)は、モータ40から回生される電力(交流電流)が、電源回生コンバータ10から交流電源20へ流すことのできる許容最大電力(交流電流)を超過した後の電源回生運転の状態に対応し、段階(IV)は、モータ40から回生される電力(交流電流)が、再び許容最大電力(交流電流)未満となった後の電源回生運転の状態に対応する。
【0063】
更に、段階(V)は、モータ40から回生される電力(交流電流)がゼロになった後の停止状態(力行運転及び電源回生運転が共に実行されていない状態)に対応し、段階(VI)は、モータ40の駆動が開始された後の力行運転の状態に対応する。
【0064】
段階(I)において、電源回生コンバータ10は、直流電圧検出部15が検出した現在の直流電圧の値V
CRTが充電電圧未満となった場合、交流電源20からの電力をDCリンクコンデンサ14に供給し直流電圧の値を充電電圧の値まで引き上げるようにする。
【0065】
また、電源回生コンバータ10は、モータ40から電力が回生される場合であっても、現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧未満となっているときには、交流電流制御部16のゼロ電流指令出力部161により、交流電流指令値A
0(値ゼロ)を目標交流電流指令値A
TGTとして出力し、制御信号出力部166により、その目標交流電流指令値A
TGTと交流電流検出部13が検出した現在の交流電流の値A
CRTとの間の差ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力して電源回生運転が開始されないようにしながらモータ40からの電力をDCリンクコンデンサ14に蓄えるようにする。
【0066】
その結果、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧は、充電電圧未満となった場合には充電電圧のレベルまで引き上げられ、また、
図4(A)の破線で示されるモータ電力が回生領域に至った場合には、そのモータ電力に応じた割合で上昇することとなる。
【0067】
その後、段階(II)において、電源回生コンバータ10は、現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧以上となった場合に、交流電流制御部16の交流電流指令算出部160により、一制御周期前に検出した直流電圧の値V
PREと今回検出した直流電圧の値V
CRTとの間の差分ΔVを算出してその差分ΔVを打ち消すべく(ゼロにすべく)その差分ΔVに応じた目標交流電流指令値A
TGTを出力し、制御信号出力部166により、その目標交流電流指令値A
TGTと交流電流検出部13が検出する現在の交流電流の値A
CRTとの間の差ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力する。
【0068】
その結果、
図4(A)の実線で示される電源回生電力は、破線で示されるモータ電力と共に回生領域において増大し(
図4(A)の下方に推移し)、モータ40からDCリンクコンデンサ14に回生される電力がそのまま交流電源20に回生されることとなり、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧は、回生開始電圧の値のままで推移することとなる。
【0069】
なお、
図4(B)の二点鎖線は、電源回生運転を実施しない場合における直流電圧の推移を示す。
【0070】
その後、段階(III)において、電源回生コンバータ10は、電源回生コンバータ10から交流電源20に流れる交流電流が許容最大値A
MAXに達すると、交流電流指令算出部160が算出する目標交流電流指令値A
TGTを許容最大値A
MAXに設定し、電源回生コンバータ10から交流電源20に流れる交流電流を制限することによって、モータ40からDCリンクコンデンサ14に回生される電力P1のうち、交流電源20に戻さない電力P3であり、モータ40からDCリンクコンデンサ14に回生される電力P1と電源回生コンバータ10から交流電源20に回生される電力P2(P2<P1)との間の差に相当する電力P3(=P1−P2)をDCリンクコンデンサ14に蓄えるようにする。
【0071】
その結果、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧は、
図4(A)の実線で示される(許容最大値A
MAXに対応する許容最大電力で一定に推移する)電源回生電力と破線で示されるモータ電力との間の差に応じた割合で上昇する。
【0072】
その後、段階(IV)において、電源回生コンバータ10は、電力P1が減少した結果、電源回生コンバータ10から交流電源20に流れる交流電流を許容最大値A
MAX以下としながらも電力P1の全てを交流電源20に回生させることができる状態に復帰した場合、段階(II)における動作と同様に、交流電流指令算出部160により、差分ΔVを打ち消すべく(ゼロにすべく)その差分ΔVに応じた目標交流電流指令値A
TGTを出力し、制御信号出力部166により、その目標交流電流指令値A
TGTと交流電流検出部13が検出する現在の交流電流の値A
CRTとの間の差ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力する。
【0073】
その結果、
図4(A)の実線で示される電源回生電力は、破線で示されるモータ電力と共に回生領域において減少し(
図4(A)の上方に推移し)、モータ40からDCリンクコンデンサ14に回生される電力P1がそのまま交流電源20に回生されることとなり、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧は、一定値のままで推移することとなる。
【0074】
その後、段階(V)において、電源回生コンバータ10は、電力P1がゼロになった後も、段階(II)及び(IV)における動作と同様に、交流電流指令算出部160により、差分ΔVを打ち消すべく(ゼロにすべく)その差分ΔVに応じた目標交流電流指令値A
TGTを出力し、制御信号出力部166により、その目標交流電流指令値A
TGTと交流電流検出部13が検出する現在の交流電流の値A
CRTとの間の差ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力する。
【0075】
その結果、
図4(A)の実線で示される電源回生電力は、破線で示されるモータ電力と共にゼロのまま横軸上を推移し、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧も一定値のままで推移することとなる。
【0076】
その後、段階(VI)において、電源回生コンバータ10は、モータ40の駆動が再開されると、これまでと同様に交流電流指令算出部160により差分ΔVを算出するが、この場合、差分ΔV、及びその差分ΔVに応じた目標交流電流指令値A
TGTは負値となるため、交流電流制御部16は、交流電流指令算出部160により、許容最小値A
MIN(値ゼロ)を目標交流電流指令値A
TGTとして出力し、制御信号出力部166により、その目標交流電流指令値A
TGT(値ゼロ)と交流電流検出部13が検出する現在の交流電流の値A
CRTとの間の差ΔAに応じた制御信号を電力変換部11に対して出力する。すなわち、電源回生コンバータ10は、力行運転及び電源回生運転の双方を禁止することとなる。
【0077】
その結果、
図4(B)の一点鎖線で示される直流電圧は、
図4(A)で示される力行領域におけるモータ電力の値の上昇につれて減少することとなる。
【0078】
次に、
図5を参照しながら、電源回生コンバータ10が電力変換部11の動作を制御する処理(以下、「電力変換制御処理」とする。)について説明する。なお、
図5は、電力変換制御処理の流れを示すフローチャートであり、電源回生コンバータ10は、所定周期で繰り返しこの処理を実行するものとする。
【0079】
最初に、交流電流制御部16は、直流電圧検出部15が検出したDCリンクコンデンサ14における現在の直流電圧の値V
CRTを取得し(ステップS1)、取得した値をRAMに記憶する。
【0080】
その後、交流電流制御部16は、直流電圧検出部15が検出した現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧記憶部162に記憶された回生開始電圧以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0081】
具体的には、交流電流制御部16は、演算部163により、回生開始電圧から現在の直流電圧の値V
CRTを減算し、その減算結果を出力切換部164に対して出力する。出力切換部164は、その減算結果が負値であれば、現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧以上であると判定する。
【0082】
現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧未満であると判定された場合(ステップS2のNO)、交流電流制御部16は、出力切換部164により、ゼロ電流指令出力部161が出力する交流電流指令値A
0(例えば、値ゼロである。)を目標交流電流指令値A
TGTとして設定する(ステップS3)。電源回生運転を開始させないようにするためである。
【0083】
一方、現在の直流電圧の値V
CRTが回生開始電圧以上であると判定された場合(ステップS2のYES)、交流電流制御部16は、交流電流指令算出部160により、現在の直流電圧の値V
CRTからRAMに記憶された一制御周期前の直流電圧の値V
PRV(一制御周期前の値が存在しない場合には充電電圧の値を使用する。なお、値V
PRVは、複数制御周期前の値であってもよい。)を減算して差分ΔVを算出する(ステップS4)。
【0084】
その後、交流電流制御部16は、交流電流指令算出部160により、交流電流検出部13が検出した一制御周期前の交流電流の値A
PRV(一制御周期前の値が存在しない場合には値ゼロを使用する。なお、値A
PRVは、複数制御周期前の値であってもよい。)に、その差分ΔVに対応する交流電流の値を加算して交流電流指令値A
TMPを算出する(ステップS5)。
【0085】
その後、交流電流制御部16は、交流電流指令算出部160により、算出した交流電流指令値A
TMPが許容最小値A
MIN以下であるか否かを判定し(ステップS6)、許容最小値A
MIN以下であれば(ステップS6のYES)、交流電流指令値A
TMPを許容最小値A
MINで置き換え(ステップS7)、許容最小値A
MINを上回るものであれば(ステップS6のNO)、交流電流指令値A
TMPをそのまま採用する。
【0086】
その後、交流電流制御部16は、交流電流指令算出部160により、算出した交流電流指令値A
TMPが許容最大値A
MAX以上であるか否かを判定し(ステップS8)、許容最大値A
MAX以上であれば(ステップS8のYES)交流電流指令値A
TMPを許容最大値A
MAXで置き換え(ステップS9)、許容最大値A
MAXを下回るものであれば(ステップS8のNO)、交流電流指令値A
TMPをそのまま採用する。なお、ステップS6〜S7の処理と、ステップS8〜S9の処理は順不同であり、同時に実行されてもよい。
【0087】
その後、交流電流制御部16は、交流電流指令値A
TMPを目標交流電流指令値A
TGTに設定する(ステップS10)。
【0088】
出力切換部164により交流電流指令値A
0又は交流電流指令値A
TMPを目標交流電流指令値A
TGTに設定した後、交流電流制御部16は、交流電流検出部13が検出した電力変換部11と交流電源20との間における現在の交流電流の値A
CRTを取得し(ステップS11)、取得した値A
CRTをRAMに記憶する。
【0089】
その後、交流電流制御部16は、演算部165により、目標交流電流指令値A
TGTから現在の交流電圧の値A
CRTを減算して差分ΔAを算出し(ステップS12)、制御信号出力部166により、その差分ΔAに対応する制御信号を生成し、生成した制御信号を電力変換部11に対して出力する(ステップS13)。
【0090】
その制御信号を受けた電力変換部11は、電源回生コンバータ10から交流電源20に流れる交流電流の値が目標交流電流指令値A
TGTとなるように、スイッチング素子を切り換え、また、PWM制御におけるパルス幅のデューティサイクルを変化させるようにする。
【0091】
上述のような流れにより、電源回生コンバータ10は、電力変換部11の動作を制御することができる。
【0092】
以上の構成により、電源回生コンバータ10は、モータ40からDCリンクコンデンサ14への回生により増加したDCリンクコンデンサ14における電力の増分を交流電源20に回生するため、DCリンクコンデンサ14から交流電源20に回生した電力をその直後に再び取り出すといった無駄な電力のやり取りを防止することができ、電源回生運転をより効率的に実行することができる。
【0093】
また、電源回生コンバータ10は、モータ40からDCリンクコンデンサ14への回生により増加したDCリンクコンデンサ14における電力の増分を交流電源20に回生するため、回生開始電圧を比較的低めに設定したとしても(例えば充電電圧より僅かに高い値に設定したとしても)、DCリンクコンデンサ14の直流電圧が一旦回生開始電圧を超えた直後に回生停止電圧を下回るのを防止することができるので、チャタリングを防止するために回生開始電圧を高めに設定する必要もなく、電源回生運転をより早期に開始させることができる。
【0094】
また、電源回生コンバータ10は、DCリンクコンデンサ14における直流電圧の増加を打ち消すように電力変換部11を制御するので、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生電力が小さい段階で電源回生運転を開始させることができ、DCリンクコンデンサ14の直流電圧が早期にその許容最大電圧に達するのを防止しながら、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生電力が増大した後もインバータ部30が発生させた電力を確実に交流電源20又はDCリンクコンデンサ14に回生することができる。
【0095】
また、電源回生コンバータ10は、DCリンクコンデンサ14における直流電圧が減少しないようにしながら、その直流電圧の増分を打ち消すように電力変換部11を制御するので、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生電力が減少する場合であってもDCリンクコンデンサ14の直流電圧のレベルを維持し、且つ、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生が終了した時点で電源回生運転を停止させ、DCリンクコンデンサ14に蓄えられた電力を不必要に交流電源20に回生するのを防止することができる。
【0096】
このように、電源回生コンバータ10は、電源回生電力が許容最大電力に達するまでは、DCリンクコンデンサ14の直流電圧の増分を打ち消すように電力変換部11を制御し、電源回生電力が許容最大電力に達した後は、超過分(電力P3)をDCリンクコンデンサ14に蓄え、更にその後、電源回生電力が許容最大電力を再び下回った後は、DCリンクコンデンサ14の直流電圧が減少しないようにしながらその増分を打ち消すように電力変換部11を制御するので、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生が終了した時点でDCリンクコンデンサ14に所定の電力を残すことができる。
【0097】
また、電源回生コンバータ10は、その許容最大電力として所定の交流電流値(インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生が終了した時点でDCリンクコンデンサ14の直流電圧がDCリンクコンデンサ14の許容最大直流電圧に対して所定の比率を示す値(目標値)となるように算出される値である。)を設定することにより、インバータ部30からDCリンクコンデンサ14への回生が終了した時点におけるDCリンクコンデンサ14の直流電圧をその目標値とすることができる。
【0098】
また、電源回生コンバータ10は、DCリンクコンデンサ14の直流電圧が十分であるにもかかわらず、力行運転(交流電源20から電源回生コンバータ10への電力供給)が実行されてしまうのを防止するので、電力変換部11と交流電源20との間の不必要な電力のやり取りを更に低減させることができる。
【0099】
また、電源回生コンバータ10は、電力変換部11と交流電源20との間を流れる交流電流と、DCリンクコンデンサ14の直流電圧とを監視しながら電力変換部11を制御するため、複数のモータ40のそれぞれの動作状態を詳細に把握することなく電力変換部11を制御することができる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0101】
例えば、上述の実施例において、電源回生コンバータ10は、回生領域におけるモータ電力が許容最大電力以上となった場合に、電源回生電力をその許容最大電力で推移させながら、余剰電力をDCリンクコンデンサ14に蓄えるようにするが、その回生領域においてその許容最大電力より小さい電力レベルで電源回生電力を推移させながら、より大きな余剰電力をDCリンクコンデンサ14に蓄えるようにしてもよい。これにより、電源回生コンバータ10は、DCリンクコンデンサ14の直流電圧の増加をより早期に開始させ、モータ40からの回生が終了した時点におけるDCリンクコンデンサ14の直流電圧をより高いレベルにもっていくことができる。
【0102】
また、電源回生コンバータ10は、射出成形機のサイクルパターンに基づいて電源回生運転の内容を設定するようにしてもよい。具体的には、電源回生コンバータ10は、例えば、可塑化/計量工程、ノズルタッチ工程、射出工程、保圧工程、型開工程、型閉工程、成形品突出し工程等の射出成形機における各種工程毎に、電源回生運転の際の許容最大電力、回生開始電圧、充電電圧、許容最小値A
MIN、許容最大値A
MAX、交流電流指令値A
0等を設定するようにしてもよい。
【0103】
また、本願は、2010年6月23日に出願した日本国特許出願2010−142640号に基づく優先権を主張するものであり同日本国出願の全内容を本願に参照により援用する。