(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1及び第2の周波数の変調送信信号を含む、周波数の異なる3以上の周波数の送信信号を使用して、第1及び第2のグループを含む3以上のグループの精密距離候補値から距離測定値が定められる請求項2に記載の距離測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、時間を使用した粗距離測定の精度の制約を受けない距離測定装置及び距離測定方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による距離測定装置は、クロック周波数をf
1とする第1の擬似ランダム信号を発生する第1の擬似ランダム信号発生部と、第1の擬似ランダム信号と同一パターンで、前記クロック周波数f
1より、わずかな周波数だけ低いf
2をクロック周波数とする第2の擬似ランダム信号を発生する第2の擬似ランダム信号発生部と、第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号とを乗算する第1の乗算器と、第1の周波数の搬送波を発生する第1の搬送波発生部と、第1の擬似ランダム信号により第1の周波数の搬送波を変調する第1の変調部と、変調された第1の周波数の搬送波を第1の周波数の変調送信信号として対象物に向けて送信する第1の送信部と、前記対象物から反射された、第1の周波数の変調送信信号を、第1の周波数の受信信号として受信する第1の受信部と、第1の周波数の変調受信信号を求めるように第1の周波数の受信信号と第2の擬似ランダムとを乗算する第2の乗算器と、第1の周波数の搬送波の一部を受け取り、互いに位相が直交する2成分である第1のI信号と第1のQ信号とを出力する第1のハイブリッド結合器と、第2の乗算器の出力信号と第1のI信号とを乗算する第3の乗算器と、第2の乗算器の出力信号と第1のQ信号とを乗算する第4の乗算器と、第1の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第1のローパスフィルタと、第3の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第2のローパスフィルタと、第4の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第3のローパスフィルタと、第2及び第3のローパスフィルタの出力信号をそれぞれ個別に2乗演算する第1及び第2の2乗器と、第1及び第2の2乗器の出力信号を加算する加算器と、第1のローパスフィルタの出力信号の最大振幅値を検出した時に第1のパルスを発生する第1のパルス発生部と、前記加算器の出力信号の最大振幅値を検出した時に第2のパルスを発生する第2のパルス発生部と、第1のパルスの発生時刻から第2のパルスの発生時刻までの時間を測定する時間測定部と、を備える。
【0006】
本発明による距離測定装置は、第2及び第3のローパスフィルタの出力から、第1の周波数の変調受信信号の位相を検出する第1の位相検出部と、第1の周波数よりも低い第2の周波数の搬送波を発生する第2の搬送波発生部と、第1の擬似ランダム信号により第2の周波数の搬送波を変調する第2の変調部と、変調された第2の周波数の搬送波を第2の周波数の変調送信信号として対象物に向けて送信する第2の送信部と、前記対象物から反射された、第2の周波数の変調送信信号を第2の周波数の受信信号として受信する第2の受信部と、第2の周波数の変調受信信号を求めるように第2の周波数の受信信号と第2の擬似ランダムとを乗算する第5の乗算器と、第2の周波数の搬送波の一部を受け取り、互いに位相が直交する2成分である第2のI信号と第21のQ信号とを出力する第2のハイブリッド結合器と、第5の乗算器の出力信号と第2のI信号とを乗算する第6の乗算器と、第5の乗算器の出力信号と第2のQ信号とを乗算する第7の乗算器と、第6の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第4のローパスフィルタと、第7の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第5のローパスフィルタと、第4及び第5のローパスフィルタの出力から、第2の周波数の変調受信信号の位相を検出する第2の位相検出部と、前記時間測定部、第1の位相検出部及び第2の位相検出部の出力から、前記対象物までの距離を演算する距離演算部と、をさらに備える。
【0007】
本発明による距離測定装置は、第1の周波数の変調受信信号の位相を検出する第1の位相検出部の他に、第1の周波数よりも低い第2の周波数の変調受信信号の位相を検出する第2の位相検出部を備えているので、2以上の波長の電磁波を使用した位相検出を実施することができる。したがって、本発明による距離測定装置は、時間測定部の測定精度の制約を受けることなく、高精度の距離測定を実施することができる。
【0008】
本発明による距離測定方法は、クロック周波数をf
1とする第1の擬似ランダム信号、及び第1の擬似ランダム信号と同一パターンで、前記クロック周波数f
1より、わずかな周波数だけ低いf
2をクロック周波数とする第2の擬似ランダム信号を発生させるステップと、第1の周波数の搬送波を第1の擬似ランダム信号により変調した、第1の周波数の変調送信信号及び第1の周波数よりも低い第2の搬送波を第1の擬似ランダム信号により変調した、第2の周波数の変調送信信号を、対象物に向けて送信するステップと、前記対象物から反射された、第1及び第2の周波数の変調送信信号を第1及び第2の周波数の受信信号として受信するステップと、受信した第1及び第2の周波数の受信信号と第2の擬似ランダムとを乗算して第1及び第2の周波数の変調受信信号を求めるステップと、第1及び第2の周波数の変調受信信号と、第1及び第2の周波数の搬送波の、互いに位相が直交する2成分である第I信号及びQ信号と、を乗算し、第1及び第2の周波数の変調受信信号のI成分及びQ成分を求めるステップと、第1の周波数の変調受信信号のI成分及びQ成分の、二乗和信号を求めるステップと、第1の擬似ランダム信号及び第2の擬似ランダム信号の乗算値のピーク値が検出された時刻から前記二乗和信号のピーク値が検出された時刻までの時間から、前記対象物までの粗距離測定値を求めるステップと、を含む。本発明による距離測定方法は、第1及び第2の周波数の変調受信信号のI成分及びQ成分から、第1及び第2の周波数の変調受信信号の第1及び第2の位相測定値を求めるステップと、基準距離、予め求めた、前記基準距離に対応する第2の周波数の変調信号の第2の基準位相測定値、及び第2の位相測定値から求めた、第2のグループの複数の精密距離候補値の内、前記粗距離測定値に最も近い精密距離候補値を代表値とするステップと、前記基準距離、予め求めた、前記基準距離に対応する第1の周波数の変調信号の第1の基準位相測定値、及び第1の位相測定値から求めた、第1のグループの複数の精密距離候補値の内、前記代表値に最も近い精密距離候補値を距離測定値とするステップと、をさらに含む。また、位相による精密距離測定に使用される複数の周波数の信号に関し、最も低い周波数に対応する最も長い波長の1/4が、粗距離測定の精度よりも大きくなるように定め、隣接する2周波数の高い方の周波数に対応する波長の1/4が、隣接する2周波数の低い方の周波数の信号を使用した位相測定による距離測定精度よりも大きくなるように定めている。
【0009】
本発明による距離測定方法は、上述のように、位相による精密距離測定に複数の周波数の信号を使用し、これらの複数の周波数の信号に関し、最も低い周波数に対応する最も長い波長の1/4が、粗距離測定の精度よりも大きくなるように定め、隣接する2周波数の高い方の周波数に対応する波長の1/4が、隣接する2周波数の低い方の周波数の信号を使用した位相測定による距離測定精度よりも大きくなるように定めている。
【0010】
したがって、本発明による距離測定方法によれば、粗距離測定の精度の制約を受けることなく、より高精度の距離測定が実現できる。
【0011】
本発明の一実施形態による距離測定方法においては、第1及び第2の周波数の変調送信信号を含む、周波数の異なる3以上の周波数の送信信号を使用して、第1及び第2のグループを含む3以上のグループの精密距離候補値から距離測定値が定められる。
【0012】
本実施形態による距離測定方法においては、位相による精密距離測定に3以上の異なる周波数の信号を使用し、これらの3以上の異なる周波数の信号に関し、最も低い周波数に対応する最も長い波長の1/4が、粗距離測定の精度よりも大きくなるように定め、隣接する2周波数の高い方の周波数に対応する波長の1/4が、隣接する2周波数の低い方の周波数の信号を使用した位相測定による距離測定精度よりも大きくなるように定めている。
【0013】
したがって、本実施形態による距離測定方法によれば、3以上の周波数の信号を使用することにより、2種類の周波数の信号を使用する場合よりもさらに高精度の距離測定を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による距離測定装置は、対象物に対して電磁波(たとえば、マイクロ波)の信号を送信し、対象物に反射された信号を受信して、電磁波が対象物まで往復する時間を測定し、またその間の位相の変化(位相差)を検出し、上記の時間を使用して粗距離測定を実施し、上記の位相差を使用して精密距離測定を実施し、これらを組み合わせて最終的な距離測定値を求める装置である。
【0016】
最初に、時間による距離測定の原理を説明する。
【0017】
第1の擬似ランダム信号のクロック周波数をf
1、第2の擬似ランダム信号のクロック周波数をf
2とし、各擬似ランダム信号の繰り返しパターンは同一とする。ここでf
1>f
2とする。
【0018】
送信される第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号との相関をとって得られる基準信号が最大値となる周期をT
Bとすると、このT
B間に含まれる第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号の波数の差がちょうど第1及び第2の擬似ランダム信号の繰り返しパターンの1周期の波数Nになる。
【0019】
すなわち、
T
B・f
1=T
B・f
2+N
である。上記を整理するとT
Bは次式で与えられる。
T
B =N/(f
1−f
2) (1)
【0020】
すなわち、2つのクロック周波数の差が小さいほど、基準信号が最大値となる周期T
Bは大きくなる。
【0021】
具体的に、第1及び第2の擬似ランダム信号を、同一繰り返しパターンの7ビットのM系列信号M
1及びM
2とする。第1及び第2の擬似ランダム信号の繰り返しパターンの1周期の波数Nは2
7−1=127である。f
1=100.004MHZ 、f
2=99.996MHZ とすると、T
B=15.875msとなる。
【0022】
図1は、第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号との相関をとって得られる基準信号を説明するための図である。
図1(a)は、第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号との相関をとった結果の信号を示す図である。
図1(a)の横軸は時間を表し、縦軸は信号の大きさを表す。具体的に、縦軸の値の+Eは、両信号の相関が1であること、すなわち両信号が同じであることを示し、縦軸の値の−Eは、両信号の相関が0である、すなわち両信号が異なることを示す。
図1(a)のR1で示す時間領域において、両信号の位相は一致していないので、両信号の相関はランダムに0または1となる。
図1(a)のR2で示す時間領域において、両信号の位相は一致しているので、両信号の相関は、一定の時間にわたり1となる。
図1(b)は、
図1(a)に示す信号をローパスフィルタに通した結果の信号を示す図である。この信号が基準信号である。
図1(a)のR1で示す時間領域に対応する
図1(b)の領域において基準信号は0であるが、
図1(a)のR2で示す時間領域に対応する
図1(b)の領域において基準信号は最大値を示す。
【0023】
つぎに、距離測定装置によって、第1の擬似ランダム信号で変調された送信信号が対象物へ送信され、対象物で反射され、受信信号として受信されるまでの伝播時間をτとする。この受信信号を第2の擬似ランダム信号で復調し、コヒーレント検波して得られる対象物検出信号のパルス状信号が発生する時刻を、基準信号のパルス状信号発生時刻から計測した時間差をT
Dとすると、T
D間に発生する第2の擬似ランダム信号の波数は、T
D間に発生する第1の擬似ランダム信号の波数より、τ時間に発生する第1の擬似ランダム信号の波数だけ少ないので、次式が成立する。
T
D・f
2=T
D・f
1−τ・f
1
【0024】
上式を整理するとT
Dは次式で与えられる。
T
D=τ・f
1/(f
1 −f
2) (2)
【0025】
すなわち、伝播時間τは、f
1 /(f
1−f
2)倍だけ時間的に拡大され、あるいは低速化されたT
D として計測される。この計測時間の拡大されることにより、本発明は本質的に短距離測定に適した距離測定装置であるといえる。
【0026】
具体的に、f
1=100,004MHz,f
2=99,996MHzであるので、伝播時間τは、12,500倍に拡大され次式が得られる。
T
D=12,500・τ (3)
時間T
Dは上記基準信号の周期T
Bごとに得られる。
【0027】
図2は、対象物検出信号と基準信号との関係を示す図である。基準信号は、周期T
Bごとに発生する。対象物検出信号は、基準信号から、測定装置及び対象物間の信号伝播時間τによって定まるT
Dだけ遅れて発生する。
【0028】
ここで伝播時間τは、搬送波である電磁波の伝播速度をv、距離測定装置から対象物までの距離をxとするとτ=2x/vであるから、この式を式(2)へ代入して次式が得られる。
x=(f
1−f
2)・v・T
D/(2f
1) (4)
したがって、時間差T
Dを測定し、その測定値を式(4)へ代入することにより、距離xを計算することができる。
【0029】
つぎに、位相による距離測定の原理を説明する。
【0030】
距離測定装置から対象物までの距離をx、送信信号と受信信号との位相差をθ、搬送波である電磁波の波長をλとすると、次式が成立する。
【数1】
この式を変形して、次式が得られる。
【数2】
このようにして位相差を求めることにより、距離測定装置から対象物までの距離xを求めることができる。
【0031】
ここで、(-π、π)の間の位相差をθ’で表し、正の整数をnで表すと次式が得られる。
【数3】
通常の方法で位相を測定する場合には、(-π、π)の間の位相差θ’が測定される。(-π、π)の間の位相差θ’を測定しても、式(5)から距離の絶対値を求めることはできない。したがって、一般的には、対象物の基準位置を定め、基準位置に対応する距離及び位相を求め、(-π、π)の範囲内で基準位置からの位相差を測定することにより、基準位置からの距離を求める方法が実施される。たとえば、基準位置に対応する距離を求める場合に、上述した時間による距離測定が実施される。
【0032】
上記の時間による距離測定及び位相による距離測定は、公知の方法である。本発明の特徴的な構成については、後で詳細に説明する。
【0033】
つぎに、本発明の一実施形態による距離測定装置の構成を説明する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による距離測定装置の構成を示す図である。本発明の一実施形態による距離測定装置は、4個の部分、部分A、部分B、部分C及び部分Dを含む。部分Aは、対象物検出信号の発生時刻と、基準信号の発生時刻との時間差T
Dを求める部分である。部分Bは、第1の周波数を使用して位相を検出する部分である。部分Cは、第1の周波数よりも低い第2の周波数の搬送波を使用して位相を検出する部分である。部分Dは、部分A、部分B及び部分Cの出力を組み合わせて距離測定値を求める部分である。
【0035】
部分Aは、基準信号を生成する部分と、第1の周波数の変調送信信号を生成する部分と、第1の周波数の変調受信信号を求める部分と、対象物検出信号を求める部分と、対象物検出信号の発生時刻と、基準信号の発生時刻との時間差T
Dを求める部分と、を含む。本実施形態において、第1の周波数は、10GHzである。時間差T
Dを求める部分は、
図3の時間計測部(時間測定部)139である。
【0036】
基準信号を生成する部分は、クロック周波数をf
1とする第1の擬似ランダム信号擬似ランダム信号を発生する第1の擬似ランダム信号発生器101と、第1の擬似ランダム信号と同一パターンで、前記クロック周波数f
1より、わずかな周波数だけ低いf
2をクロック周波数とする第2の擬似ランダム信号を発生する第2の擬似ランダム信号発生器103と、第1の擬似ランダム信号と第2の擬似ランダム信号とを乗算する第1の乗算器105と、第1の乗算器の出力信号を低域濾波処理する第1のローパスフィルタ123と、第1のローパスフィルタ123の出力信号の最大振幅値を検出した時に第1のパルスを発生する第1のパルス発生器(最大値検出器)135と、を含む。上記第1のパルスが、基準信号である(
図2)。
【0037】
第1の周波数の変調送信信号を生成する部分は、第1の周波数(10GHz)の搬送波を発生する第1の搬送波発生器107と、第1の搬送波発生器107の出力を分配する分配器108と、第1の擬似ランダム信号により第1の周波数の搬送波を変調する第1の変調器109と、変調された第1の周波数の搬送波を第1の周波数の変調送信信号として対象物第Oに向けて送信する第1の送信器111と、を含む。第1の送信機は、第1の送信アンテナT1を備えている。
【0038】
第1の周波数の変調受信信号を求める部分は、対象物Oから反射された、第1の周波数の変調送信信号を、第1の周波数の受信信号として受信する第1の受信器113と、第1の周波数の変調受信信号を求めるように第1の周波数の受信信号と第2の擬似ランダムとを乗算する第2の乗算器115と、第2の乗算器115の出力を分配する分配器120と、を含む。第1の受信器113は、第1の受信アンテナR1を備えている。
【0039】
対象物検出信号を求める部分は、第1の周波数の搬送波の一部を受け取り、互いに位相が直交する2成分である第1のI信号と第1のQ信号とを出力する第1のハイブリッド結合器117と、第2の乗算器115の出力信号と第1のI信号とを乗算する第3の乗算器119と、第2の乗算器115の出力信号と第1のQ信号とを乗算する第4の乗算器121と、第3の乗算器119の出力信号を低域濾波処理する第2のローパスフィルタ125と、第4の乗算器121の出力信号を低域濾波処理する第3のローパスフィルタ127と、第2のローパスフィルタ125の出力信号を2乗演算する第1の2乗器129と、第3のローパスフィルタ127の出力信号を2乗演算する第2の2乗器131と、第1及び第2の2乗器の出力信号を加算する加算器133と、加算器133の出力信号の最大振幅値を検出した時に第2のパルスを発生する第2のパルス発生器(最大値検出器)137と、を含む。上記第2のパルスが対象物検出信号である(
図2)。
【0040】
第1の周波数の変調受信信号の位相を検出する部分である部分Bは、第1の位相検出部141である。第1の位相検出部141は、第2のローパスフィルタ125の出力信号を監視し、時間
【数4】
における最大値をI’とする。ここで、
【数5】
は、搬送波の第1の周波数である。同様に、第3のローパスフィルタ127の出力信号を監視し、同じ時間における最大値をQ’とする。変調受信信号の位相θは、以下の式によって求められる。
【数6】
ここで、I’及びQ’の符合を考慮することにより、-π及びπの間の位相を求めることができる。
【0041】
部分Cは、第2の周波数の変調送信信号を生成する部分と、第2の周波数の変調受信信号を求める部分と、第2の周波数の変調受信信号の位相を検出する部分と、を含む。本実施形態において、第2の周波数は、2GHzである。
【0042】
第2の周波数の変調送信信号を生成する部分は、第2の周波数(2GHz)の搬送波を発生する第2の搬送波発生器143と、第2の搬送波発生器143の出力を分配する分配器144と、第1の擬似ランダム信号により第2の周波数の搬送波を変調する第2の変調器145と、変調された第2の周波数の搬送波を第2の周波数の変調送信信号として対象物に向けて送信する第2の送信器147と、を含む。第2の送信器147は、第2の送信アンテナT2を備えている。
【0043】
第2の周波数の変調受信信号を求める部分は、対象物から反射された、第2の周波数の変調送信信号を、第2の周波数の受信信号として受信する第2の受信器149と、第2の周波数の変調受信信号を求めるように第2の周波数の受信信号と第2の擬似ランダムとを乗算する第5の乗算器151と、第5の乗算器151の出力を分配する分配器156と、を含む。第2の受信器149は、第2の受信アンテナR2を備えている。
【0044】
第2の周波数の変調受信信号の位相を検出する部分は、第2の周波数の搬送波の一部を受け取り、互いに位相が直交する2成分である第2のI信号と第2のQ信号とを出力する第2のハイブリッド結合器153と、第5の乗算器151の出力信号と第2のI信号とを乗算する第6の乗算器155と、第5の乗算器151の出力信号と第2のQ信号とを乗算する第7の乗算器157と、第6の乗算器155の出力信号を低域濾波処理する第4のローパスフィルタ159と、第7の乗算器157の出力信号を低域濾波処理する第5のローパスフィルタ161と、第2の位相検出部163と、を含む。
【0045】
第2の位相検出部163は、第4のローパスフィルタ159の出力信号を監視し、時間
【数7】
における最大値をI’とする。ここで、
【数8】
は、搬送波の第2の周波数である。同様に、第5のローパスフィルタ161の出力信号を監視し、同じ時間における最大値をQ’とする。変調受信信号の位相θは、以下の式によって求められる。
【数9】
ここで、I’及びQ’の符合を考慮することにより、-π及びπの間の位相を求めることができる。
【0046】
部分A、部分B及び部分Cの出力を組み合わせて距離測定値を求める部分Dは、距離演算部165である。
【0047】
つぎに、本発明の一実施形態による距離測定方法について説明する。上述のように、距離測定は、基準信号の周期T
Bごとに実施することができる。上述の例では、T
B=15.875msである。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態による距離測定方法を説明するための流れ図である。
【0049】
表1は、本実施形態の距離測定方法を説明するための数値例を示す表である。表1において、測定IQ値は、部分Aによって得られた時間差T
Dから求まる粗距離測定値に相当する。測定IQ値は、種々の要因による測定誤差のため実距離に対してばらついている。理論角度は、実距離と後で説明する基準距離との差に対応する理論上の位相の値である。測定角度は、第1または第2の周波数を使用して検出された位相の値に相当する。
【0050】
本実施形態において、第1の周波数は10GHz、第1の周波数に対応する第1の波長は30mm、第2の周波数は2GHz、第2の周波数に対応する第2の波長は150mmである。
【表1】
【0051】
以下の
図4の各ステップは、部分D(
図3の距離演算部165)によって実施される。
【0052】
図4のステップS010において、基準距離に配置された測定対象物の距離測定が実施され、第1及び第2の周波数の変調受信信号の第1及び第2の位相測定値が求められる。基準距離に対応する、第1及び第2の位相測定値は、第1及び第2の位相基準値として、
図3には図示しない記憶装置に記憶させる。
【0053】
表1において、基準距離は150mmである。基準距離に対応する第1の位相測定値は40度であり、基準距離に対応する第2の位相測定値は160度である。
【0054】
図4のステップS020において、測定対象物の距離測定が実施される。すなわち、粗距離測定値、第1及び第2の位相測定値が求められる。
【0055】
表1において、実距離165mmに対して、粗距離測定値140mm、第1の位相測定値35度及び第2の位相測定値240度が求められる。
【0056】
図4のステップS030において、第2の位相基準値及び第2の位相測定値から第2のグループの精密距離候補値が求められる。
【0057】
ここで、第2の波長は150mmであるので、式(5)の角度の単位をラジアンから度に変更すると、以下の式が得られる。
【数10】
ここで、Δxは、精密距離候補値の、基準距離からの偏差を表す。
【0058】
表1において、第2の位相基準値は160度であり、第2の位相測定値は240度である。したがって、位相差は80度である。この値を式(6)のθ’に代入すると、
【数11】
となる。基準距離は、150mmであるので、第2のグループの精密距離候補値は、
91.67mm、166.67mm、241.67mm
を含む。
【0059】
図4のステップS040において、第2のグループの精密距離候補値の中で、粗距離測定値に最も近い値を第2のグループの代表値とする。
【0060】
表1において、粗距離測定値は140mmであるので、第2のグループの代表値は166.67mmとなる。
【0061】
図4のステップS050において、第1の位相基準値及び第1の位相測定値から第1のグループの精密距離候補値が求められる。
【0062】
ここで、第1の波長は30mmであるので、式(5)の角度の単位をラジアンから度に変更すると、以下の式が得られる。
【数12】
【0063】
表1において、第1の位相基準値は40度であり、第2の位相測定値は35度である。したがって、位相差は−5度である。この値を式(7)のθ’に代入すると、
【数13】
となる。基準距離は、150mmであるので、第1のグループの精密距離候補値は、
149.79mm、164.79mm、179.79mm
を含む。
【0064】
図4のステップS060において、第1のグループの精密距離候補値の中で、第2のグループの代表値に最も近い値を距離測定値とする。
【0065】
表1において、第2のグループの代表値は166.67mmであるので、距離測定値は、164.79mmとなる。
【0066】
第2の周波数の信号を使用した場合に、位相1度当たりの測定距離は、式(6)から0.21mmである。他方、第1の周波数の信号を使用した場合に、位相1度当たりの測定距離は、式(7)から0.04mmである。このように、第1の周波数を使用した場合の測定距離精度は、第2の周波数を使用した場合の測定距離精度の5倍となる。
【0067】
また、第2の周波数の信号を使用した場合に、第2のグループの精密距離候補値の間の間隔は、75mm(第2の波長の1/2)である。他方、第1の周波数の信号を使用した場合に、第1のグループの精密距離候補値の間の間隔は、15mm(第1の波長の1/2)である。
【0068】
ここで、式(5)及び式(6)から、第2の波長の1/4は、第2のグループの精密距離候補値の間の間隔の1/2に相当する。したがって、一般的に、複数の周波数の信号を使用して位相による精密距離測定を実施する場合に、最も低い周波数に対応する最も長い波長の1/4(本例では、第2の波長の1/4である37.5mm)が、粗距離測定の精度よりも大きくなるように設定すべきである。このように設定することにより、
図4のステップS040において、粗距離測定値に基づいて、第2のグループの精密距離候補値の中から第2のグループの代表値を選択することが可能になる。留意すべき点は、最も低い周波数に対応する最も長い波長は、粗距離測定の精度によって制約されている点である。
【0069】
また、式(5)及び式(7)から、第1の波長の1/4は、第1のグループの精密距離候補値の間の間隔の1/2に相当する。したがって、一般的に、複数の周波数の信号を使用して位相による精密距離測定を実施する場合に、隣接する2周波数の高い方の周波数(第1の周波数である10GHz)に対応する波長の1/4(本例では、第1の波長の1/4である7.5mm)が、隣接する2周波数の低い方の周波数(第2の周波数である2GHz)を使用した場合の位相測定による距離測定精度よりも大きくなるように設定すべきである。このように設定することにより、
図4のステップS060において、第2のグループの代表値に基づいて、第1のグループの精密距離候補値の中から距離測定値を選択することが可能になる。留意すべき点は、複数の周波数を使用することにより、精密距離測定の精度は、粗距離測定の精度による制約を受けないようにすることができる点である。
【0070】
上記において二つの周波数を使用する方法を説明した。一般的には、上記の隣接する2周波数の関係を満たすようにしながら、3以上周波数を使用して距離測定を実施してもよい。理論的には、上記の隣接する2周波数の関係を満たすようにしながら、使用する電磁波の周波数を徐々に増加させてゆくことにより、精密距離測定の精度を制約なしに向上させることができる。
【0071】
図5は、本発明の実施形態による距離測定方法による測定結果を示す図である。
図5の横軸は測定対象物までの距離を表す。
図5の縦軸は、距離の測定値(左目盛)及び測定誤差(右目盛)を表す。
図5のA1は、距離の測定値を示し、
図5のA2は、測定誤差を示す。
図5からわかるように測定誤差は、距離に対して周期的に変化している。この周期は、第1の周波数(10GHz)の波長(30mm)の1/2である。測定誤差の振幅の大きさは、第1の周波数の搬送波を使用した位相演算の誤差に対応する。
【0072】
本発明によれば、時間による距離測定とともに、複数の周波数の搬送波を使用して位相による距離測定を行うことにより、測定対象物までの距離の絶対値を高い精度で得ることができる。また、上述した所定の方法によって複数の周波数の搬送波を組み合わせて使用することにより、時間による距離測定(粗距離測定)の精度の制約を受けずに、高い測定精度を実現することができる。