(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653459
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】水性環境における化学物質の感知
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20141218BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20141218BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
G01N21/27 B
G01N21/33
G01N21/64 Z
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-554985(P2012-554985)
(86)(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公表番号】特表2013-520679(P2013-520679A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】US2010053663
(87)【国際公開番号】WO2011109046
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2012年8月24日
(31)【優先権主張番号】12/715,373
(32)【優先日】2010年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509348786
【氏名又は名称】エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109586
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】スヨング,エンジェル
【審査官】
遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−234693(JP,A)
【文献】
特開2000−241313(JP,A)
【文献】
特開2000−226468(JP,A)
【文献】
特開2008−241305(JP,A)
【文献】
特開2003−344289(JP,A)
【文献】
特表2009−520947(JP,A)
【文献】
特表2009−520188(JP,A)
【文献】
特表2008−538618(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0039693(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0221014(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0265811(US,A1)
【文献】
L. De Stefano, M. De Stefano, I. Rea, L. Moretti, A. Bismuto, P. Maddalena, I. Rendina,"Optical characterisaion of biological nano-porous silica structures",Proceedings of SPIE,2005年,第5925巻,p.59250S−1〜59250S−5
【文献】
Luca De Stefano, Ivo Rendina, Mario De Stefano, Alfredo Bismuto and Pasqualino Maddalena,"Marine diatoms as optical chemical sensors",Applied Physics Letters,米国,American Institute of Physics,2005年,第87巻,p.233902−1〜233902−3
【文献】
L. De Stefano, L. Rotiroti, M. De Stefano, A. Lamberti, S. Lettieri, A. Setaro, P. Maddalena,"Marine diatoms as optical biosensors",Biosensors and Bioelectronics,Elsevier B. V.,2009年,第24巻,p.1580−1584
【文献】
A. Bismuto, A. Setaro, P. Maddalena, L. De Stefano, M. De Stefano,"Marine diatoms as optical chemical sensors: A time-resolved study",Sensors and Actuators B,Elsevier B. V.,2008年,第130巻,p.396−399
【文献】
Stefano Lettieri, Antonio Setaro, Luca De Stefano, Mario De Stefano, and Paqualino Maddalena,"The Gas-Detection Properties of Light-Emitting Diatoms",Advanced Functional Materials,ドイツ,WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA,2008年,第18巻,p.1257−1264
【文献】
L. De Stefano, P. Maddalena, L. Moretti, I. Rea, I. Rendina, E. De Tommasi, V. Mocella, M. De Stefano ,"Nano-biosilica from marine diatoms: A brand new material for photonic applications",Superlattices and Microstructures,Elsevier Ltd.,2009年,第46巻,p.84−89
【文献】
John Parkinson and Richard Gordon,"Beyond micromachining: the potential of diatoms",NANOTECHNOLOGY,Elsevier Science,1999年 5月,第17巻,p.190−196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17 − 21/74
G01N 31/00 − 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光を生成するように構成されたレーザダイオードと、
前記発光を受光しかつ前記発光の少なくとも一部を反射光として反射するように構成されている、複数の珪藻被殻を有するフォトニックシリカのアレイであって、前記反射光が、少なくとも一部では水性環境からの1種または複数の揮発性有機化学物質と前記複数の珪藻被殻との相互作用によって決定されるように適合されているフォトニックシリカのアレイと、
前記反射光の少なくとも一部を受光しかつ取り込むように構成された受光器と、
を含む、水性環境で1種または複数の揮発性有機化学物質を感知するためのシステム。
【請求項2】
前記レーザダイオードが第1のポートに収容され、前記フォトニックシリカのアレイが第2のポートに収容され、前記受光器が第3のポートに収容され、
前記第1のポート、前記第2のポート、および前記第3のポートが、光サーキュレータとして動作するように協働して構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記発光が、前記フォトニックシリカのアレイから所望のフォトルミネセンスをもたらすように構成された波長を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記発光が、約300ナノメートルから約400ナノメートルの範囲の波長を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記反射光が、約300ナノメートルから約700ナノメートルの範囲の波長を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記フォトニックシリカのアレイが、1種または複数の珪藻から培養される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の珪藻被殻が複数の細孔を含み、個々の細孔は、所定の物質に接触すると変化し得る直径を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記所定の物質には硫酸ニッケルが含まれる、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記フォトニックシリカのアレイが結合される光ファイバをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1種または複数の揮発性有機化学物質が、キシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ピリジン、アルコール、テトラクロロエタン、および/またはクロロベンゼンの1種または複数を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記フォトニックシリカのアレイに動作可能に結合され、前記フォトニックシリカのアレイ上での前記1種または複数の揮発性有機化学物質の濃度が増加するように構成された、疎水性ポリマー膜をさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記疎水性ポリマー膜が、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン)、シリコーン、可塑化PVC、ブタジエンコポリマー、および/またはフルオロポリマーの1種または複数を含む、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記レーザダイオードが、インジウムガリウムアルミニウムヒ素(InGaAlAs)ダイオード、インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)ダイオード、および/またはガリウムヒ素(GaAs)ダイオードの1種または複数を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記受光器により受光される前に前記反射光をフィルタリングするように構成された光フィルタをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記フォトニックシリカのアレイに動作可能に結合された湿度センサをさらに含み、前記湿度センサが、湿度の量を検出するように構成され、かつ少なくとも一部では検出された前記湿度の量に基づいて前記フォトニックシリカのアレイに較正値を提供するようにさらに構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
レーザダイオードを含む第1のポート、複数の珪藻被殻を含むフォトニックシリカのアレイを含む第2のポート、および受光器を含む第3のポートを含む光サーキュレータによって、水性環境で1種または複数の揮発性有機化学物質を感知する方法であって、
前記第1のポートからの発光を受光すること、
少なくとも一部では前記水性環境中の1種または複数の揮発性有機化学物質と前記複数の珪藻被殻との相互作用によってもたらされる反射光を生成するように、前記受光した発光の少なくとも一部を反射すること、および
前記反射光を前記第2のポートから前記第3のポートに伝送すること、
を含む方法。
【請求項17】
前記反射光をフィルタリングして、フィルタリングされた反射光を生成すること、および
前記フィルタリングされた反射光を前記第3のポートに伝送すること、
をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反射光を前記第2のポートから受光すること、
前記反射光の強度、波長、および/または周波数の1つまたは複数を決定すること、および
少なくとも一部では前記反射光の前記強度、前記波長、および/または前記周波数の1つまたは複数に基づいて、前記1種または複数の揮発性有機化学物質の存在および/または不在を確認すること、
をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
1種または複数の揮発性有機化学物質の既知の周波数、前記1種または複数の揮発性有機化学物質の既知の波長、および/または前記1種または複数の揮発性有機化学物質の既知の強度の1つまたは複数に関する、揮発性有機化学物質情報を記憶するように構成されたデータベースと、
発光を生成するように構成されたレーザダイオードと、
複数の珪藻被殻を有しており、前記発光を受光し、前記発光の少なくとも一部を反射光として反射させ、かつ前記反射光を伝送するように構成されたフォトニックシリカのアレイであって、前記反射光は、少なくとも一部では、前記複数の珪藻被殻の周りに提供された1種または複数の揮発性有機化学物質の相互作用によって決定されるものである、フォトニックシリカのアレイと、
前記反射光の少なくとも一部を受光し、
前記反射光の強度、前記反射光の波長、および/または前記反射光の周波数の1つまたは複数を測定し、
前記反射光の前記測定された強度、前記測定された波長、および/または前記測定された周波数の1つまたは複数と、前記データベースに記録された前記揮発性有機化学物質情報とを比較し、かつ
少なくとも一部では、前記反射光の前記測定された強度、前記測定された波長、および/または前記測定された周波数と、前記データベースに記憶された前記揮発性有機化学物質情報との比較に基づいて、前記1種または複数の揮発性有機化学物質の存在および/または不在の1つまたは複数を検出する、
ように構成された受光器と、
を含む、水性環境で1種または複数の揮発性有機化学物質を感知するためのシステム。
【請求項20】
前記1種または複数の揮発性有機化学物質には、キシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ピリジン、アルコール、テトラクロロエタン、および/またはクロロベンゼンの1種または複数が含まれ、
前記レーザダイオードには、インジウムガリウムアルミニウムヒ素(InGaAlAs)ダイオード、インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)ダイオード、および/またはガリウム/ヒ素(GaAs)ダイオードの1種または複数が含まれる、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
コンピュータ可読命令が記憶されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記コンピュータ可読命令が、
請求項1記載のシステムによって受光された前記反射光の強度、波長、および/または周波数の1つまたは複数を表す信号を受け取ること、
前記反射光の前記強度、前記波長、および/または前記周波数の1つまたは複数を表す信号の少なくとも一部と、1つまたは複数の揮発性有機化学物質データベースに記憶された揮発性有機化学物質情報とを比較すること、かつ
少なくとも一部では、前記反射光の前記強度、前記波長、および/または前記周波数を表す信号の少なくとも一部と、前記1つまたは複数の揮発性有機化学物質データベースに記憶された前記揮発性有機化学物質情報との比較に基づいて、前記1種または複数の揮発性有機化学物質の存在および/または不在の1つまたは複数を検出すること、
を含む、
コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項22】
前記コンピュータ可読命令が、
少なくとも一部では、前記反射光の前記強度、前記波長、および/または前記周波数を表す信号の少なくとも一部と、前記1つまたは複数の揮発性有機化学物質データベースに記憶された前記揮発性有機化学物質情報との比較に基づいて、前記1種または複数の揮発性有機化学物質の1種または複数を同定すること、
をさらに含む、
請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、水性環境における化学物質の感知に関し、より詳細には、水性環境中に芳香族化学物質の存在または不在を検出することに関する。
【発明の概要】
【0002】
水性環境で化学物質を感知するための技法について、概略的に記述する。これらの様々な技法は、デバイス、システム、方法、および/またはコンピュータプログラム製品の一部として利用することができる。
【0003】
デバイスまたはシステムのいくつかの例示的な実施形態は、レーザダイオード、フォトニックシリカのアレイ、および/または受光器の1つまたは複数を含むことができる。レーザダイオードは、放射光が生成されるように構成することができる。フォトニックシリカのアレイは、複数の植物被殻(frustules)を有することができる。フォトニックシリカのアレイは、放射光を受光しかつ放射光の少なくとも一部を反射光として反射するように構成することができる。反射光は、水性環境からの1種または複数の芳香族化学物質と複数の植物被殻との相互作用によって少なくとも部分的に決定されるように、適合することができる。受光器は、反射光の少なくとも一部を受光し取り込むように構成することができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、光サーキュレータにより水性環境で1種または複数の芳香族化学物質を感知する方法が、概略的に記述される。いくつかの光サーキュレータは、レーザダイオードを含む第1のポート、複数の植物被殻を含むフォトニックシリカのアレイを含む第2のポート、および/または受光器を含む第3のポートを含むことができる。いくつかの例示的な方法は、第1のポートから放射光を受光することを含むことができる。いくつかの例示的な方法は、受光された放射光の少なくとも一部を反射させて反射光を生成することをさらに含むことができ、この反射光は、水性環境中の1種または複数の芳香族化学物質と複数の植物被殻との相互作用によって少なくとも部分的に生成されるものである。いくつかの例示的な実施形態は、反射光を第2のポートから第3のポートに伝送することをさらに含むことができる。
【0005】
いくつかの実施形態では、水性環境中の1種または複数の芳香族化学物質を感知するためのシステムについて、概略的に記述される。いくつかの例示的な実施形態は、データベース、レーザダイオード、フォトニックシリカのアレイ、および受光器の1つまたは複数を含むことができる。データベースは、1種もしくは複数の芳香族化学物質の既知の周波数、1種もしくは複数の芳香族化学物質の既知の波長、および/または1種もしくは複数の芳香族化学物質の既知の強度に関する芳香族化学物質の情報を、記憶するように構成することができる。レーザダイオードは、放射光を生成するように構成することができる。フォトニックシリカのアレイは、複数の植物被殻を有することができ、このフォトニックシリカのアレイは、放射光を受光し、放射光の少なくとも一部を反射光として反射させ、反射光を伝送するように構成されている。反射光は、複数の植物被殻付近で提供された1種または複数の芳香族化学物質の相互作用によって少なくとも部分的に決定することができる。受光器は、反射光の少なくとも一部を受光し、反射光の強度、反射光の波長、および/または反射光の周波数を測定するように構成することができる。受光器は、反射光の測定された強度、測定された波長、および/または測定された周波数の1つまたは複数を、データベースに記憶された芳香族化学物質情報と比較するように構成することもできる。受光器はさらに、反射光の測定された強度、測定された波長、および/または測定された周波数とデータベースに記憶された芳香族化学物質情報との比較に少なくとも部分的に基づいて、1種または複数の芳香族化学物質の存在および/または不在を検出するように構成することができる。
【0006】
いくつかの追加の実施形態では、コンピュータプログラム製品について概略的に記述される。例示的な実施形態は、コンピュータ可読命令が記憶された信号担持媒体を含むことができ、コンピュータ可読命令は、1つまたは複数の処理装置によって実行されたときに、コンピューティングプラットフォームが光の強度、光の波長、および/または光の周波数を表す信号を受け取ることを、動作可能にする。他の命令によれば、コンピューティングプラットフォームは、光の強度、波長、および/または周波数を表す信号の少なくとも一部と、1つまたは複数の芳香族化学物質データベースに記憶された芳香族化学物質情報とを比較することが可能になる。さらにその他の命令によれば、コンピューティングプラットフォームは、光の強度、波長、および/または周波数を表す信号の少なくとも一部と、1つまたは複数の芳香族データベースに記憶された芳香族化学物質情報との比較に少なくとも部分的に基づいて、1種または複数の芳香族化学物質の存在および/または不在を検出することが可能になる。
【0007】
前述の概要は、単なる例示であり、いかなる方法によっても限定しようとするものではない。上述の例示的な態様、実施形態、および特徴に加え、さらなる態様、実施形態、および特徴は、図面および下記の詳細な記述を参照することによって明らかになろう。
【0008】
本開示の前述のまたはその他の特徴は、添付される図面と併せて解釈される以下の記述および添付される特許請求の範囲から、より十分に明らかになろう。これらの図面はこの開示によるいくつかの実施形態しか示しておらず、したがってその範囲を限定すると見なされないことを理解して、この開示は、添付図面の使用を通してさらなる特定性および詳細と共に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成されている、芳香族化学物質を感知するための、いくつかの例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図2】本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成されている、芳香族化学物質を感知するための、いくつかの例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成されている、芳香族化学物質を感知するための、いくつかの追加の例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成されている、例示的なコンピュータプログラム製品のブロック図である。
【
図5】本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成されている、芳香族化学物質感知を実装するように構成することができる、例示的なコンピューティングデバイスを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の詳細な記述では、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。図面において、同様の記号は、他に文脈が記述しない限り同様の構成要素を典型的には示す。詳細な記述、図面、および請求項に記述される例示的な実施形態は、限定を意味するものではない。本明細書に提示される対象の精神または範囲から逸脱することなく、その他の実施形態を利用してもよく、その他の変更を行ってもよい。本明細書に概略的に記述されかつ図に例示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で構成し、置換し、組み合わせ、設計することができ、その全てが明示的に企図されかつ本開示の部分をなすことが、容易に理解されよう。
【0011】
この開示は、とりわけ、水性環境での化学物質の感知、より詳細には水性環境での芳香族化学物質の存在または不在の検出に関する方法、システム、デバイス、および/または装置を対象とする。
【0012】
本開示は、水性環境での化学汚染物質を分析するための既存の分析方法(例えば、ガスクロマトグラフィおよび/または質量分析法)は、費用がかかりかつ/または手間がかかる可能性があると考える。さらに、分析結果は、サンプリングが行われてから数日または数週間遅れる可能性がある。そのような遅れがあると、即時のフィードバックおよび/または化学汚染物質の実時間モニタリングができなくなる可能性がある。いくつかの分析方法は、化学汚染物質を識別しかつ/または分析するための、様々なセンサの大きなネットワークを含むことができる。しかし、センサのそのような大きなネットワークは、酸素および硝酸化合物のモニタリングシステムに限定される可能性がある。これらの分析方法は、水性の系および環境で、特に貯蔵タンク(地下または地上タンクを含む)の下に位置付けられた流出液放出ポイントおよび帯水層付近での既知の化学物質(例えば、有機溶媒)の実時間モニタリングを提供することができない。
【0013】
本開示は、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境における揮発性有機化学物質(または芳香族化学物質)をモニタリングするためのセンサを、培養した珪藻からのフォトニックシリカ植物被殻のアレイを使用して構成することができると考える。いくつかの例示的な実施形態では、本開示は、問題となっている化学物質の詳細が既知であると考えられかつ溶媒が求核的である(例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ピリジン、および/またはアルコール)と考えられるときの、工業流出液中の化学物質をモニタリングするための方法について記述する。例示的な実施形態(またはその部分)は、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境の内部および/または付近で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、センサは、芳香族化学物質を伴いかつ/または含む、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境に、少なくとも部分的に接触していてもよい。いくつかの実施形態では、感知システムの一部のみ(例えば、フォトニックシリカのアレイ)が、芳香族化学物質を伴いかつ/または含む、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境に接触していてもよい。
【0014】
光サーキュレータは、光を一方向に、すなわちポート1からポート2に、次いでポート2からポート3に進行させることができる、3ポートデバイス(例えば、ポート1、ポート2、およびポート3を含む)と記述することができる。例示的な光サーキュレータでは、任意の方向に反射するポート2から放出された光を、ポート3に向けることができる。光サーキュレータは、例えば、拡張通信システムおよび光ファイバセンサの適用例で使用してもよい。
【0015】
図1は、本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成された、芳香族化学物質を感知するためのいくつかの例示的なシステムを示すブロック図である。いくつかの実施例では、光サーキュレータ100は、ポート1 110、ポート2 120、およびポート3 130を含むことができる。ポート1 110は、放射光(emitted light)を生成するように構成されたレーザダイオードを含むことができる。ポート2 120は、複数の植物被殻を有するフォトニックシリカのアレイ115を含むことができる。フォトニックシリカのアレイ115は、放射光を受光し、放射光の少なくとも一部を反射光として反射するように構成されていてもよい。反射光は、芳香族化学物質と複数の植物被殻との相互作用によって少なくとも部分的に決定することができる。ポート3 130は、反射光の少なくとも一部を受光し取り込むように構成された受光器を含むことができる。
【0016】
記述される実施例では、ポート1 110、ポート2 120、および/またはポート3 130は、目下開示されている対象の概略的なステージを表すことができ、光サーキュレータに限定しなくてもよい。具体的には、ポート1 110は、光伝送ステージに対応させることができ、ポート2 120は、光ホスティングステージ(例えば、フォトニックシリカのアレイを存在させてもよい)に対応させることができ、ポート3 130は、受光または光収集ステージに対応させることができる。
【0017】
図1に示されるように、ポート1 110に位置付けられたレーザダイオード105などの発光デバイスは、ポート2 120に光を伝送するように構成することができる。レーザダイオード105は、約300ナノメートル(nm)から約400nmの範囲の波長を有していてもよく、インジウムガリウムアルミニウムヒ素(InGaAlAs)ダイオード、インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)ダイオード、および/またはガリウムヒ素(GaAs)ダイオードを含むことができる。異なる波長および化学的性質を有するその他のレーザも、いくつかの例示的な実施形態で使用することができる。いくつかの実施例では、レーザダイオードは、フォトニックシリカのアレイから所望のフォトルミネセンスを得るために光を放出するよう適合させることができる。
【0018】
いくつかの実施例では、ポート2 120は、フォトニックシリカのアレイ115を含むことができる。例示的なフォトニックシリカのアレイ115は、厚さ方向に1からP層のいずれかの場所で、N×M次元のマトリックスに構成されていてもよい(N、M、およびPは、任意の数値にすることができる)。いくつかの実施例では、フォトニックシリカのアレイ115を、珪藻および/または珪藻材料から培養し構成してもよい。珪藻の外部、または植物被殻は、フォトニックシリカのアレイ115を含むことができる材料として、単離してもよい。いくつかの実施例では、植物被殻は、前述のマトリックスへと自己組織化することができる。
【0019】
フォトニックシリカのアレイ115は、水性環境中の芳香族化学物質140の濃度を実質的に高めることができる疎水性ポリマー膜135と併せて実現することができる。疎水性ポリマー膜135は、フォトニックシリカのアレイ115上で芳香族化学物質140を濃縮するメカニズムとして働くことができる。疎水性ポリマー膜135は、フォトニックシリカのアレイ115に芳香族化学物質140を通しながら水が浸透しないようにすることができる。このように、芳香族化学物質140は疎水性ポリマー膜135に浸透し、フォトニックシリカのアレイ115に到達することができる。フォトニックシリカのアレイ115に到達すると、芳香族化学物質140は、光に対するフォトニックシリカのアレイ115の感受性を変えることができる。いくつかの実施例では、ポリマー膜135は、フォトニックシリカのアレイ115が水性環境に置かれた場合にフォトニックシリカのアレイ115を取り囲みかつ/または包み込むことができる。これにより、芳香族化学物質140の存在または不在のより容易な検出が可能になる。疎水性ポリマー膜135は、とりわけポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン)、シリコーン、可塑化PVC、ブタジエンコポリマー、および/またはフルオロポリマー材料を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施例では、レーザダイオード105がフォトニックシリカのアレイ115に当たる光を放出する場合、フォトニックシリカのアレイ115の上および/または周りに存続し得る芳香族化学物質140は、レーザダイオード105からの発光を反射させることができる。いくつかの実施例では、反射光は、約300nmから約700nmの範囲の波長の光を含むことができる。芳香族化学物質140とフォトニックシリカのアレイ115との相互作用の結果、そのような反射は、通常なされると考えられるよりも強化することができる。
【0021】
一般に、フォトルミネセンスは、物質が光子(例えば、電磁放射線)を吸収するプロセス、さらには光子を放射するプロセスであってもよい。フォトニックシリカのアレイ115のフォトルミネセンスは、植物被殻の性質(例えば、植物被殻の孔径など)の関数であってもよい。いくつかの実施例では、所定の化学物質(例えば、硫酸ニッケル)を、植物被殻の細孔サイズを変化させるのに使用することができる。例えば、植物被殻の孔径の変更には、検出される芳香族化学物質140のタイプに応じて細孔をより大きくまたはより小さくすることを含めることができる。いくつかの芳香族化学物質は、その他の芳香族化学物質よりも、(1種または複数の)ある特定の孔径でさらに大きなフォトルミネセンスをもたらすことができる。例示的な芳香族化学物質140は、とりわけキシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ピリジン、アルコール、テトラクロロエタン、またはクロロベンゼンを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施例では、環境湿度によって、フォトルミネセンスのピーク振幅が得られる波長(さらには周波数)がシフトされる可能性がある。湿度センサ145は、この湿度センサ145が湿度の量を検出することができるように、フォトニックシリカのアレイ115に結合されてもよい。この構成は、湿度レベルによって引き起こされる波長シフトの予測を支援することができる。システム100は、湿度センサ145により観察される湿度に応じて較正することができる。このように、フォトルミネセンスは、(湿度センサ145により測定される)湿度の関数として、受光器125によって決定することができる。
【0023】
いくつかの実施例では、レーザダイオード105からの放射光は、フォトニックシリカのアレイ115から反射し、次いで第3のポート、ポート3 130の受光器125により取り込むことができる。光フィルタ150は、ポート2 120とポート3との間の伝送路に配置することができる。このように、受光器125は、所定の波長(または波長範囲)を有する反射光を受光するように適合させることができる。(フィルタリングされた、またはフィルタリングされていない)反射光の強度、波長、および/または周波数は、ある芳香族化学物質140が存在する証拠として解釈することができる。例えば、レーザダイオード105が強度Xおよび周波数Yの光を放出し、かつフォトニックシリカのアレイ115が強度Zおよび周波数Wでこの光を反射することがわかっている場合、この強度Zおよび周波数Wのデータは、芳香族化学物質Uの存在または不在を示すことができる。いくつかの実施例では、湿度および/またはフィルタリングの任意の影響を考慮に入れることができる。
【0024】
システム100は、芳香族化学物質に関連した既知の強度、波長、および/または周波数に関する芳香族化学物質情報を記憶するように構成することができる、データベース155を含むことができる。例えば、芳香族化学物質情報は、化学物質Uが強度Zおよび波長Wに対応することを示すことができ、したがって芳香族化学物質(例えば、キシレン)を識別することができる。いくつかの実施形態では、データベース155は、ポート2 120および/またはポート3 130に動作可能に結合することができる。したがって、システム100は、システム100を配備することができる環境(例えば、水性環境)で、化学物質(有害でありまたはそうでないもの)の存在または不在を識別するのに役立てることができる。いくつかの実施例では、ポート2 120(フォトニックシリカのアレイ115を含む)は、内部に芳香族化学物質を有する、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境に実質的に接触させて構成することができる。そのような実施例では、ポート1 110(レーザダイオード105を含む)およびポート3 130(受光器125を含む)が離れて位置付けられ(例えば、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境に接触していない)、さらになおポート2 120に連絡するよう構成することができる。そのような実施例では、フォトニックシリカのアレイは、流出液、帯水層、水域、および/またはその他の水性環境に曝されていてもよい(疎水性ポリマー膜135を経て)。いくつかの実施例では、ポート1 110、ポート2 120、およびポート3 130は、水性環境に接触するよう(またはその他の方法で曝されるよう)構成することができる。
【0025】
図2は、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、光サーキュレータによって芳香族化学物質を感知するいくつかの例示的な方法200を示すフローチャートである。例示的な方法200は、ブロック210、220、および/または230により示されるように、操作、機能、または動作の1つまたは複数を含むことができる。方法200では、光サーキュレータは、レーザダイオードを含む第1のポート、複数の植物被殻を含むフォトニックシリカのアレイを含む第2のポート、および受光器を含む第3のポートを含むことができる。
【0026】
処理は、ブロック210で開始することができ、第1のポートからの放射光を受光することを含むことができる。ブロック210の後に、ブロック220が続くことができる。ブロック220は、受光した放射光の少なくとも一部を反射させて反射光を生成することを含むことができる。反射光は、芳香族化学物質と複数の珪藻被殻との相互作用によって少なくとも部分的に生成することができる。ブロック220の後に、ブロック230が続くことができる。ブロック230で、反射光は、第2のポートから伝送することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法200は、反射光をフィルタリングして、フィルタリングされた反射光を生成し、フィルタリングされた反射光を第3のポートに伝送することを含むことができる。いくつかのその他の実施形態では、方法200は、反射光を第2のポートから受光し、反射光の強度、波長、および/または周波数を決定し、(1種または複数の)芳香族化学物質の存在および/または不在を識別することを含むことができる。(1種または複数の)芳香族化学物質の存在および/または不在を識別することは、反射光の強度、波長、および/または周波数の1つまたは複数に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0028】
図3は、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、芳香族化学物質を感知するいくつかの追加の例示的な方法300を示すフローチャートである。例示的な方法300は、ブロック310、320、330、340、350、360、370、380、および/または390により示される操作、機能、または動作の1つまたは複数を含むことができる。
【0029】
処理は、ブロック310で開始することができ、光ファイバについて、珪藻の受け入れを受容できるように準備する、または「官能基化する(functionalized)」ことができる。ブロック310の後に、ブロック320および/またはブロック330を続けることができる。
【0030】
ブロック320で、光ファイバは、光ファイバを取り囲むよう人工海水および珪酸ナトリウム(Na2SiO3)の溶液を調製することによって珪藻を受け入れるように構成することができる。いくつかの実施形態では、人工海水は、天然に生ずる海水をシミュレートすることが意図される、溶解した無機塩および/またはビタミンの水性溶液であってもよい。
【0031】
ブロック330で、所望の電子特性を実現するために、不純物を、光ファイバおよび/または光ファイバを取り囲む溶液に導入してもよい。これは、硫酸ニッケル、またはゲルマニウムなどを添加することを含むことができる。ブロック330の後に、ブロック340を続けることができる。
【0032】
ブロック340で、官能基化された光ファイバを海水および珪酸ナトリウム溶液に浸漬し、珪藻を培養することができる。ブロック340の後にブロック350を続けることができる。
【0033】
ブロック350で、珪藻培養がなされた光ファイバを溶液から取り出し、リンスし、アニールすることができる。いくつかの実施例では、珪藻はここでマトリックスに構成されており、外部植物被殻が収集されている。所望の寸法のマトリックスに構成された植物被殻は、
図1を参照しながら先に記述されたフォトニックシリカのアレイ115として働くことができる。ブロック350の後に、ブロック360を続けることができる。
【0034】
ブロック360で、植物被殻が存在している光ファイバを、光サーキュレータのポート2 120に動作可能に結合することができる。ブロック360の後に、ブロック370を続けることができる。
【0035】
ブロック370で、疎水性膜層を、フォトニックシリカのアレイ115と芳香族化学物質140との間に配置することができる。ブロック370の後に、ブロック380を続けることができる。
【0036】
ブロック380で、光(約300nmから約400nmの範囲の波長を有することができる)をポート1 110から伝送することができる。ブロック380の後に、ブロック390を続けることができる。
【0037】
ブロック390で、光はフォトニックシリカのアレイ115に当たり、反射光、またはフォトルミネセンス(約300nmから約700nmの範囲の波長を有することができる)は、ポート3 130の受光器125によって受光されかつ/または取り込まれてもよい。波長および/または強度のシフトが観察された場合、それは、少なくとも一部では、フォトニックシリカのアレイ115の特性および/または環境湿度に起因すると考えられる。本開示は、約533.4nmの波長を有する空気から反射された光に比べ、例えばキシレンは、約557.1nmの波長を有する光を反射させると考える。また、キシレンから反射された光の強度は、空気の場合よりも大きい。同様にピリジンは、約533.4nmの波長を有する空気から反射された光に比べ、約538.1nmで光を反射する。さらに、ピリジンから反射した光の強度は、空気の場合よりも大きい。波長および/または強度のそのようなシフトは、とりわけキシレンおよび/またはピリジンなどの芳香族化学物質140の存在および/または不在を示すことができる。
【0038】
図4は、本明細書に記述される少なくともいくつかの実施形態により構成された、例示的なコンピュータプログラム製品400のブロック図を示す。いくつかの実施例では、
図4に示されるように、コンピュータプログラム製品400は、機械可読命令404を含むことができる信号担持媒体402を含むことができる。命令404は、光の強度、光の波長、および/または光の周波数を表す信号を受け取るように適合させることができる。命令404は、信号の少なくとも一部と、(1つまたは複数の)芳香族化学物質データベースに記憶された芳香族化学物質情報とを比較するように適合させてもよい。さらに命令404は、信号と(1つまたは複数の)芳香族データベースに記憶された芳香族化学物質情報との比較に少なくとも部分的に基づいて、芳香族化学物質の存在および/または不在を検出するように適合させてもよい。いくつかの実施例では、命令は、反射光のピーク強度および/または波長を測定しかつ/またはモニタするように、適合させることができる。命令は、反射光のピーク強度および/または波長と、既知の化学物質に関する反射光のピーク強度および/または波長とを比較するように、さらに適合させることができる。いくつかの実施例では、既知の化学物質(例えば、特徴付けられているような化学物質)に関する反射光のそのようなピーク強度および/または波長は、予め決定することができ、反射光のピーク強度および/または波長を探索しかつ既知の化学物質に関する反射光のピーク強度および/または波長と比較するための(1つまたは複数の)芳香族化学物質データベースに記憶させることができる。このように、既知の化学物質の存在および/または不在は、(1つまたは複数の)芳香族データベースに記憶された芳香族化学物質情報を有する任意の既知の化学物質に関して決定することができる。
【0039】
同様に
図4に示されるように、いくつかの実施例では、コンピュータ製品400は、コンピュータ可読媒体406、記録可能媒体408、および通信媒体410の1つまたは複数を含むことができる。これらの要素を囲む破線ボックスは、信号担持媒体402に含まれるがそれに限定されない異なるタイプの媒体を示す。これらのタイプの媒体は、論理により実行されるように命令404を分散させることができる。コンピュータ可読媒体406および記録可能媒体408には、フレキシブルディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリなどを含めることができるが、これらに限定するものではない。通信媒体410には、デジタルおよび/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンクなど)を含めることができるが、これらに限定するものではない。
【0040】
図5は、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、芳香族化学物質感知を実装するように構成することができる例示的なコンピューティングデバイスを示すブロック図である。非常に基本的な構成501において、コンピューティングデバイス500は、1つまたは複数のプロセッサ510およびシステムメモリ520を典型的には含むことができる。メモリバス530は、プロセッサ510とシステムメモリ520との間で通信するのに使用することができる。
【0041】
所望の構成に応じて、プロセッサ510は、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ(μC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない任意のタイプのものにすることができる。プロセッサ510は、レベル1のキャッシュ511およびレベル2のキャッシュ512などの1つまたは複数のレベルのキャッシング、プロセッサコア513、およびレジスタ514を含むことができる。プロセッサコア513は、論理演算装置(ALU)、浮動小数点演算装置(FPU)、デジタル信号プロセッシングコア(DSPコア)、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。メモリコントローラ515は、プロセッサ510と共に使用することもでき、またはいくつかの実現例では、メモリコントローラ515をプロセッサ510の内部部品とすることができる。
【0042】
所望の構成に応じて、システムメモリ520は、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない任意のタイプのものにすることができる。システムメモリ520は、オペレーティングシステム521、1つまたは複数のアプリケーション522、およびプログラムデータ524を典型的には含む。アプリケーション522は、水性環境で芳香族化学物質を感知するように構成することができる芳香族化学物質感知アルゴリズム523を、含むことができる。プログラムデータ524は、芳香族化学物質を感知するのに役立てることができる、1つまたは複数の芳香族化学物質感知データベース525(芳香族化学物質情報526を含むことができる)を含むことができる。いくつかの実施形態では、アプリケーション522は、水性環境中に存在しかつ/または存在しない1種または複数の芳香族化学物質を本明細書に記述される技法に従い決定しかつ/または識別することができるように、オペレーティングシステム521上でプログラムデータ524と共に動作するよう構成することができる。
【0043】
コンピューティングデバイス500は、追加の特徴または機能性と、基本構成501と任意の必要とされるデバイスおよびインターフェースとの間の通信を容易にする追加のインターフェースとを有することができる。例えば、バス/インターフェースコントローラ540は、ストレージインターフェースバス541を介した基本構成501と1つまたは複数のデータ記憶装置550との間の通信を容易にするために使用することができる。データ記憶装置550は、取外し式記憶装置551、非取外し式記憶装置552、またはこれらの組合せとすることができる。取外し式記憶装置および非取外し式記憶装置の例には、いくつか例を挙げると、フレキシブルディスクドライブおよびハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスクデバイス、コンパクトディスク(CD)ドライブまたはデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブなどの光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、およびテープドライブが含まれる。例示的なコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータなど、情報を記憶するための任意の方法または技術で実現される、揮発性および不揮発性の、取外し式および非取外し式媒体を含むことができる。
【0044】
システムメモリ520、取外し式ストレージ551、および非取外し式ストレージ552は、全て、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)またはその他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気記憶装置、または所望の情報を記憶させるのに使用することができかつコンピューティングデバイス500によりアクセスすることができる任意のその他の媒体が含まれるが、これらに限定するものではない。任意のそのようなコンピュータ記憶媒体は、デバイス500の一部にすることができる。
【0045】
コンピューティングデバイス500は、様々なインターフェースデバイス(例えば、出力インターフェース、周辺インターフェース、および通信インターフェース)からバス/インターフェースコントローラ540を介した基本構成501への通信を容易にするための、インターフェースバス542を含むこともできる。例示的な出力デバイス560は、1つまたは複数のA/Vポート563を介してディスプレーまたはスピーカーなどの様々な外部デバイスと通信するように構成することができる、グラフィック処理ユニット561およびオーディオ処理ユニット562を含む。例示的な周辺インターフェース570は、1つまたは複数のI/Oポート573を介して入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイスなど)またはその他の周辺デバイス(例えば、プリンタ、スキャナなど)などの外部デバイスと通信するように構成することができる、シリアルインターフェースコントローラ571またはパラレルインターフェースコントローラ572を含む。例示的な通信装置580は、1つまたは複数の通信ポート582を介したネットワーク通信上での1つまたは複数のその他のコンピューティングデバイス590との通信を容易にするよう構成することができる、ネットワークコントローラ581を含む。通信接続は、通信媒体の一例である。通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または被変調データ信号におけるその他のデータ、例えば搬送波またはその他の移送メカニズムなどによって典型的には実施することができ、任意の情報送達媒体を含む。「被変調データ信号」は、信号中で情報を符号化するようにその特性の1つまたは複数が設定または変更された信号とすることができる。例として、限定するものではないが、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体と、音響、無線周波数(RF)、赤外線(IR)、およびその他の無線媒体などの、無線媒体とを含むことができる。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体は、記憶媒体および通信媒体の両方を含むことができる。
【0046】
コンピューティングデバイス500は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルメディアプレーヤデバイス、ワイヤレスウェブ閲覧(web−watch)デバイス、パーソナルヘッドセットデバイス、特定用途向けデバイス、または上述の機能のいずれかを含むハイブリッドデバイスなど、スモールフォームファクタポータブル(またはモバイル)電子デバイスの一部として実現することができる。コンピューティングデバイス500は、ラップトップコンピュータおよび非ラップトップコンピュータの両方の構成を含むパーソナルコンピュータとして実現することもできる。
【0047】
本明細書に記載された主題は、様々なコンポーネントをしばしば例示しており、これらのコンポーネントは、他の様々なコンポーネントに包含されるか、または他の様々なコンポーネントに接続される。そのように図示されたアーキテクチャは、単に例にすぎず、実際には、同じ機能を実現する多くの他のアーキテクチャが実装可能であることが理解されよう。概念的な意味で、同じ機能を実現するコンポーネントの任意の構成は、所望の機能が実現されるように効果的に「関連付け」される。したがって、特定の機能を実現するために組み合わされた、本明細書における任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャまたは中間のコンポーネントにかかわらず、所望の機能が実現されるように、お互いに「関連付け」されていると見ることができる。同様に、そのように関連付けされた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に接続」または「動作可能に結合」されていると見なすこともでき、そのように関連付け可能な任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に結合できる」と見なすこともできる。動作可能に結合できる場合の具体例には、物理的にかみ合わせ可能な、および/もしくは物理的に相互作用するコンポーネント、ならびに/またはワイヤレスに相互作用可能な、および/もしくはワイヤレスに相互作用するコンポーネント、ならびに/または論理的に相互作用する、および/もしくは論理的に相互作用可能なコンポーネントが含まれるが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書における実質的に全ての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0049】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む発明に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、通常、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、通常、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、通常、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0050】
様々な態様および実施形態について本明細書に開示してきたが、その他の態様および実施形態が当業者に明らかになろう。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、例示を目的とし、限定しようとするものではなく、真の範囲および精神は下記の特許請求の範囲によって示される。