【実施例】
【0049】
実施例1
CZTS膜形成のためのインクの製造
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:5mmolの塩化スズを25mLのH
2Oに溶解して水溶液(A1)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mLのH
2Oに溶解して水溶液(B1)を形成した。前記水溶液(A1)と(B1)を混合して反応溶液(C1)を形成した。前記反応溶液(C1)に12mLの30%NH
4OHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。前記得られた茶黒色沈殿を集めて、スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を準備した。
【0050】
金属錯体イオンの製造:7mmolの硝酸銅を5mLのH
2Oに溶解して水溶液(D1)を形成した。10mmolのチオアセタミドを、5mLのH
2Oに溶解して水溶液(E1)を形成した。前記水溶液(D1)と(E1)を混合して反応溶液(F1)を形成した。前記反応溶液(F1)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオンを形成した。
【0051】
前記集めたスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を反応溶液(F1)と混合して混合溶液(G1)を形成した。
【0052】
金属イオンの製造:4.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのH
2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H1)を形成した。
【0053】
前記水溶液(H1)を前記混合溶液(G1)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0054】
図3は、実施例1の懸濁されたスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子の拡大図である。
図3に示されるように、前記スズ−硫化物(Sn−S)ナノ粒子310は負に帯電した表面320を持つ。前記銅チオアセタミドイオン330及び亜鉛イオン340は共に正に帯電され、前記スズ硫化物(SnS)ナノ粒子310の負に帯電された表面320に静電力で吸着される。
【0055】
図4を参照して、実施例1のインク中に懸濁された、複数の電気二重層で覆われた金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
図4で、複数のスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410が前記溶媒420中に懸濁されている。前記SnSナノ粒子410のそれぞれは負に帯電した外部表面430を持つ。又は、銅チオアセタミドイオン440と亜鉛イオン450がインク420中に形成される。前記正に帯電した銅チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450は、前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410の前記負に帯電した外部表面430へ吸着される。前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410のそれぞれは、正イオンに囲まれており、これらはお互いに反発する。従って、前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410は、前記溶媒420内で分散され懸濁される。
【0056】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子は銅チオアセタミド及び亜鉛イオンで覆われ、4元系化合物半導体CZTS(Cu
2ZnSnS
4)の4元素、即ち銅、亜鉛、スズ及び硫黄が前記SnSナノ粒子とお互い近接している。従って、前記インクは、銅、全、スズ及び硫黄のよく混合されたものとなるCZTS膜を形成するために使用され得る。
【0057】
実施例2
CZTS膜形成のためのインクの製造
本例は実施例1と、前記インク内に形成された2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が存在することで異なり、即ち1つはSnSナノ粒子とCu錯体/イオン、他方はZnSナノ粒子である。
【0058】
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:5mmolの塩化スズを40mLのH
2Oに溶解して水溶液(A2)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mLのH
2Oに溶解して水溶液(B2)を形成した。前記水溶液(A2)と(B2)を混合して反応溶液(C2)を形成した。前記反応溶液(C2)に10mLの30%NH
4OHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。その後前記スズ硫化物ナノ粒子が茶黒色沈殿として反応溶液(C2)中に沈殿した。
【0059】
金属錯体イオンの製造:7mmolの硝酸銅を5mLのH
2Oに溶解して水溶液(D2)を形成した。5mmolのチオアセタミドを、5mLのH
2Oに溶解して水溶液(E2)を形成した。前記水溶液(D2)と(E2)を混合して反応溶液(F2)を形成した。前記反応溶液(F2)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0060】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F2)と混合して混合溶液(G2)を形成した。
【0061】
金属イオンの製造:4.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのH
2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H2)を形成した。
【0062】
前記混合溶液(G2)を前記水溶液(H2)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(I2)を形成した。
【0063】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの形成:29mmolの前記硫化アンモニウムを混合溶液(I2)に添加し、一晩撹拌してインクを形成した。
【0064】
実施例3
CZTS膜の形成のためのインクの製造
本例は実施例2と、前記2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が、異なる金属イオン及び/又は金属錯体イオンの組成であることで異なる。
【0065】
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:2.5mmolの塩化スズを25mLのH
2Oに溶解して水溶液(A3)を形成した。2mmolのチオアセタミドを25mLのH
2Oに溶解して水溶液(B3)を形成した。前記水溶液(A3)と(B3)を混合して反応溶液(C3)を形成した。反応溶液(C3)に10mLの30%NH
4OHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。その後スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子が茶黒色沈殿として前記反応溶液(C3)中に沈殿した。
【0066】
金属錯体イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を5mLのH
2Oに溶解して水溶液(D3)を形成した。3mmolのチオアセタミドを、5mLのH
2Oに溶解して水溶液(E3)を形成した。前記水溶液(D3)と(E3)を混合して反応溶液(F3)を形成した。前記反応溶液(F3)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0067】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F3)と混合して混合溶液(G3)を形成した。
【0068】
金属イオンの製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのH
2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H3)を形成した。22mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(H3)に溶解して反応溶液(I3)を形成した。
【0069】
前記混合溶液(G3)を水溶液(I3)と混合し、インクを形成した。
【0070】
実施例4
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例1と、ナノ粒子が前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に形成される点で異なる。
【0071】
ナノ粒子前駆体の製造:2.5mmolのスズ硫化物(Sn−S)及び2mmolの硫黄(S)を5mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A4)を形成した。
【0072】
金属錯体イオン及び金属イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を2mLのH
2Oに溶解し水溶液(B4)を形成した。前記水溶液(D4)と前記水溶液(C4)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D4)を形成した。
【0073】
前記水溶液(A4)を反応溶液(D4)と混合して前記混合溶液(E4)を形成した。
【0074】
金属イオンの製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を2mLのH
2Oに溶解して水溶液(F4)を形成した。
【0075】
前記混合溶液(E4)を前記水溶液(F4)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0076】
実施例5
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例4と、銅チオウレア錯体イオンが前記インク中に形成される点で異なる。
【0077】
ナノ粒子前駆体の製造:2.5mmolのスズ硫化物を5mLの40〜50%のチオウレア水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A5)を形成した。
【0078】
金属錯体イオン及び金属イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を5mLのH
2Oに溶解し水溶液(B5)を形成した。5.9mmolのチオウレアを5mLのH
2Oに溶解し水溶液(C5)を形成した。前記水溶液(B5)と前記水溶液(C5)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D5)を形成した。
【0079】
前記水溶液(A5)を前記反応溶液(D5)と混合して混合溶液(E5)を形成した。
【0080】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を2mLのH
2Oに溶解して水溶液(F5)を形成した。33mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(F5)に溶解して反応溶液(G5)を形成した。
【0081】
前記混合溶液(E5)を前記反応溶液(G5)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0082】
実施例6
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例1と、金属イオン及び/又は金属錯体イオンが、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成前に製造される点で異なる。
【0083】
第1の金属イオンの製造:1.07mmolの塩化スズを2mLのH
2Oに溶解して5分間撹拌して水溶液(A6)を形成した。
【0084】
第2の金属イオンの製造:1.31mmolの硝酸亜鉛を2mLのH
2Oに溶解して水溶液(B6)を形成した。
【0085】
前記水溶液(A6)を前記水溶液(B6)と混合して15分間撹拌して水溶液(C6)を形成した。
【0086】
金属錯体イオンの製造:1.7mmolの硝酸銅を1.5mLのH
2Oに溶解して水溶液(D6)を形成した。3mmmolのチオウレアを3mLのH
2Oに溶解して水溶液(E6)を形成した。前記水溶液(D6)と前記水溶液(E6)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F6)を形成した。
【0087】
前記水溶液(C6)を前記反応溶液(F6)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G6)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G6)は約60℃で撹拌され得る。
【0088】
金属カルコゲニドナノ粒子の添加とインク:1.5mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を前記混合溶液(G6)に添加し一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0089】
実施例7
CZTS膜の形成のためのインクの製造
この例は実施例6と、セレンがインクに含まれる点で異なる。
【0090】
第1の金属イオンの製造:1.07mmolの塩化スズを2mLのH
2Oに溶解して5分間撹拌して水溶液(A7)を形成した。
【0091】
第2の金属イオンの製造:1.31mmolの硝酸亜鉛を2mLのH
2Oに溶解して水溶液(B7)を形成した。
【0092】
前記水溶液(A7)を前記水溶液(B7)と混合して15分間撹拌して水溶液(C7)を形成した。
【0093】
金属錯体イオンの製造:1.7mmolの硝酸銅を1.5mLのH
2Oに溶解して水溶液(D7)を形成した。
3mmmolのチオウレアを3mLのH
2Oに溶解して水溶液(E7)を形成した。前記水溶液(D7)と前記水溶液(E7)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F7)を形成した。
【0094】
前記水溶液(C7)を前記反応溶液(F7)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G7)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G7)は約60℃で撹拌され得る。
【0095】
金属カルコゲニドナノ粒子、金属錯体イオン及びインクの製造:0.1gのセレン(Se)粉末を1mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液に溶解して水溶液(H7)を形成した。前記水溶液(H7)を前記混合溶液(G7)に加えて一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0096】
実施例8
CZTS膜の形成のためのインクの製造
第1の金属イオンの製造:1.29mmolの塩化スズ(SnCl
2)を、1.5mLの水に溶解して、2分間撹拌して水溶液(A8)を形成した。
【0097】
第2の金属イオン/金属錯体イオンの製造:1.38mmolの金属亜鉛を2.4mLの24%水酸化アンモニウムに添加し、30分間撹拌し、その後0.1mLの50重量%のヒドロキシルアミンを添加して一晩撹拌して水溶液(B8)を形成した。
【0098】
第3の金属イオンの製造:1.53mmolのCu(NO
3)
2を、1.0mLのH
2Oに溶解して水溶液(C8)を形成した。
【0099】
カルコゲン源の製造:5.91mmolのチオウレアを、2mLのH
2Oに溶解して水溶液(D8)を形成した。
【0100】
カルコゲニド含有金属錯体イオンの製造:前記水溶液(A8)と前記水溶液(D8)を混合して、90℃で2分間撹拌して反応溶液(E8)を形成した。次に、前記水溶液(C8)を前記反応溶液(E8)と混合し、90℃で2分間撹拌して混合溶液(F8)を形成した。さらに、前記水溶液(B8)を前記反応溶液(F8)と混合し、90℃で10分間撹拌して混合溶液(G8)を形成した。
【0101】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの製造:1.8mLの40〜44%の硫化アンモニウム水溶液を、前記混合溶液(G8)に室温で混合し、さらに30分間超音波処理してインク(H8)を製造した。場合により、0.4mLの1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を室温で前記インク(H8)に添加し、その後30分間超音波処理するか、一晩撹拌することが可能である。
【0102】
この例は、金属源として金属塩ではなく金属粉末を使用する方法を開示するものである。即ち、金属亜鉛粉末が水酸化アンモニウムとヒドロキシルアミン溶液中に溶解して、亜鉛イオンと亜鉛錯体イオンを形成する。この例では、亜鉛金属粉末のみ金属源として使用されている。しかし銅粉末及び/又はスズ粉末もまた使用され得る。又は、前記金属粉末は、限定されるものではないが、金属フレーク、金属ナノ粒子及び金属粒子などのあらゆる金属の形状が含まれる。
【0103】
この例では、亜鉛金属が、水酸化アンモニウム及びヒドロキシルアミンを含む溶媒系に溶解された。本出願では、「溶媒系」とは、水などの単一溶媒、又は水とアンモニアなどの混合溶液も意味する。他の例では、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物がまた前記溶媒系に含まれ得る。
【0104】
実施例1から5では、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン/金属錯体イオンが別々に製造された。しかし、実施例6から8では、金属カルコゲニドナノ粒子は、硫化アンモニウムを、前記金属錯体イオンを含む前記混合溶液(G6、G7及びG8)に添加されることで形成された。実施例6から8では、最初に製造された金属イオン/金属錯体イオンが、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成へ導入され得る。即ち、金属イオン/金属錯体イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子は、別々に製造することは必要ではない。
【0105】
さらに、ナトリウムが、CZTS膜の成長において顆粒サイズを改善するために前記インク内に添加され得る。
【0106】
実施例9
CIGS膜の形成のためのインクの製造
第1の金属イオンの製造:0.5mmolの硝酸ガリウムを2mLのH
2Oに溶解して水溶液(A9)を形成した。
【0107】
第2の金属イオンの製造:0.5mmolの塩化インジウムを2mLのH
2Oに溶解して水溶液(B9)を形成した。
【0108】
前記水溶液(A9)を前記水溶液(B9)と混合して15分間撹拌して水溶液(C9)を形成した。
【0109】
金属錯体イオンの製造:1.0mmolの硝酸銅を2mLのH
2Oに溶解して水溶液(D9)を形成した。5.9mmolのチオウレアを5mLのH
2Oに溶解して水溶液(E9)を形成した。前記水溶液(D9)と前記水溶液(E9)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F9)を形成した。
【0110】
前記水溶液(C9)を前記反応溶液(F9)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G9)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G9)は約60℃で撹拌され得る。
【0111】
金属カルコゲニドナノ粒子とインクの製造:1.6mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を、前記混合溶液(G9)へ加えて一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0112】
前駆体溶液を用いるカルコゲニド半導体膜の製造
図5を参照して、本出願の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜の製造のフローチャートが示される。
【0113】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオンおよび金属錯体イオンの少なくとも1つを含む前駆体溶液の製造のステップ510を含む。前記前駆体溶液は
図1に示されるプロセスで製造され得る。
【0114】
ステップ520は、基板上に前記前駆体の液体層を形成するために前記基板上に前記前駆体溶液をコーティングすることを含む。前記コーティング方法は、限定されるものでないが、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、カーテンコーティング、スライドコーティング、スプレー、スリットキャスティング、メニスカスコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、フレキソグラフ印刷又はグラビア印刷が含まれる。前記基板には、ガラス基板などの剛性又は金属箔やプラスチック基板などのフレキシブルなものが含まれる。ある実施態様では、前記基板は前記前駆体溶液のコーティングの前にモリブデン(Mo)層が形成される。
【0115】
ステップ530は前記前駆体溶液の液体層を乾燥して前駆体膜を形成することを含む。前記乾燥プロセスの際に、溶媒が蒸発で除去される。前記乾燥方法は、例えば、前記基板を加熱炉、オーブン内又はホットプレート上に置いて実施され得る。CZTS膜の前記前駆体溶液が使用される場合には、前記乾燥プロセスは、約25℃から600℃、好ましくは350℃から480℃の温度で実施され得る。最も好ましくは前記乾燥温度は約425℃である。前記コーティング及び感想ステップは1回以上繰り返すことができ、例えば約3回から約6回である。得られる前駆体膜は、例えば約1〜5000nmの厚さを含む。
【0116】
ステップ540は前記前駆体膜を熱処置して前記カルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記CZTSの前記前駆体膜の熱処理温度は約300℃から700℃であり、好ましくは480℃から650℃である。最も好ましくは、前記温度が約540℃である。この例では、前記熱処理プロセスは、約540℃で10分間で実施され得る。ある実施態様では、前記熱処理プロセスは、硫黄蒸気を含む雰囲気下で実施され得る。
【0117】
実施例1から実施例3及び実施例6、実施例7で製造されたインクが、CZTS膜を製造するための前駆体溶液として使用された。前記CZTS膜は、
図6から
図10に示されるように、XRD分析によりケステライト型構造を持つことが確認された。
【0118】
太陽電池装置の製造
図11は、本出願の1つの実施態様による太陽電池装置の製造のフローチャートである。
図12はまた、
図11で示される方法で形成される太陽電池装置の模式図である。
【0119】
前記方法は、基板1200上に底部電極層1210を形成するステップ1110を含む。例えば、前記基板1200は、ガラス、金属箔及びプラスチックからなる群から選択される材料を含む。前記底部電極層1210は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)及びインジウムスズ酸化物(ITO)からなる群から選択される。この実施態様では、Mo層1210がスパッタリングで基板1200上に形成される。
【0120】
ステップ1120は、前駆体溶液を用いて前記底部層1210上にカルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記前駆体溶液は
図1で示されるプロセスで製造され得る。この実施態様では、CZTS膜は、前記カルコゲニド半導体膜1220として形成される。前記Mo層1210上に形成された前記CZTS膜1220は、約0.6μmから約6μmの厚さを含む。
【0121】
ステップ1130は、前記カルコゲニド半導体膜1220上にバッファ層1230を形成することを含む。前記バッファ層は、n−型半導体層また、p−型半導体層などの半導体層を含む。例えば、前記バッファ層は、硫化カドミウム(CdS)、Zn(O、OH、S)、硫化インジウム(In
2S
3)、硫化亜鉛(ZnS)及び亜鉛マグネシウム酸化物(Zn
xMg
1−xO)からなる群から選択される。この実施態様で、CdS層1230は、前記CZTS膜1220上のn−型半導体層として形成される。前記CdS膜1230は、化学的蒸着方法で形成され得る。この実施態様では、前記CdS膜1230の厚さは、例えば約20nmから約150nmであり得る。
【0122】
ステップ1140は、前記バッファ層1230上に上部電極1240を形成することを含む。前記上部電極は透明導電性層を含む。例えば、上部電極層1240は、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ホウ素ドープ亜鉛酸化物(B−ZnO)、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(Al−ZnO)、ガリウムドープ亜鉛酸化物(Ga−ZnO)及びアンチモンスズ酸化物(ATO)からなる群から選択される。この実施態様では、約100nmの厚さの亜鉛酸化物(ZnO)膜、及び約130nmの厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)膜が、前記バッファ層1230上に前記上部電極層1240として形成される。前記ZnO膜及びITO膜の製造方法は、例えばスパッタリングであり得る。
【0123】
ステップ1150は、前記上部電極層1240上の金属コンタクト1250を形成することを含む。Ni/Al金属コンタクト1250の形成方法は、例えば、電子ビーム蒸着であり得る。
【0124】
ステップ1160は前記基板1200上に反射防止膜1260を形成することを含む。例えば前記反射防止膜は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、シリコン酸化物(SiO
2)、シリコン窒化物(Si
3N
4)及びニオブ酸化物(NbO
x)からなる群から選択される。この実施態様で、MgF
2膜1260は、反射防止膜として前記基板上に形成される。前記MgF
2膜は、例えば、電子ビーム蒸着により形成され得る。この実施態様で、前記フッ化マグネシウム(MgF
2)膜の厚さは例えば、110nmであり得る。
【0125】
図13は、実施例7のインクで形成されたCZTS膜を有する太陽電池装置のJ−V図である。前記装置は、1.5AM標準照射条件で、開放回路電圧(V
OC)=450mV、フィルファクタ(FF)=40.9%及び短絡回路電流密度(J
SC)=14.8mA/cm
2の条件で測地して電力変換効率が2.7%であった。