特許第5653472号(P5653472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653472
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】インクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20141218BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20141218BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20141218BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20141218BHJP
【FI】
   H01L31/06 400
   H01L31/04 422
   C01G19/00 A
   C09D11/00
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-75855(P2013-75855)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2013-214748(P2013-214748A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年5月10日
(31)【優先権主張番号】13/437,921
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313011272
【氏名又は名称】新日光能源科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】廖 曰淳
(72)【発明者】
【氏名】楊 豐瑜
(72)【発明者】
【氏名】丁 晴
【審査官】 濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−192542(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065994(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/135622(WO,A1)
【文献】 特開2011−88808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
C09D 11
H01L 31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク製造するための方法であり、
金属イオンを含む溶液及び金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップと、
金属カルコゲニドナノ粒子を形成するステップと、
前記金属カルコゲニドナノ粒子と前記金属イオンを含む溶液及び金属錯体イオンを含む溶液を混合して、第1の溶液を形成するステップを含み
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族又は第IV族からなる群から選択され
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオンを含む溶液及び前記金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップ及び前記インクとしての前記第1の溶液を形成するステップ、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合に、少なくとも1回繰り返される、方法。
【請求項2】
記カルコゲニド半導体材料が、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記金属イオンを含む溶液及び前記金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップが、溶媒系に金属を溶解するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒系に溶解する金属が、金属フレーク、金属粒子及び金属ナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
らに、ナトリウムを前記第1の溶液に添加するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
溶媒系に溶解する金属が、亜鉛、銅及びスズからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
溶媒系に溶解する金属が、銅、インジウム及びガリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
記溶媒系が、水、水酸化アンモニウム、ヒドロキシルアミン及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
記金属カルコゲニドナノ粒子を形成するステップがカルコゲン源と、金属イオン及び金属錯体イオンと混合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記カルコゲン源が、硫化物化合物及びセレン化物化合物から選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
記カルコゲン源が、チオアセタミド、チオウレア、セレノウレア、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属硫化物又はアルカリ金属セレン化物、セレン、硫黄、アルキルスルフィド、アルキルセレニド及びジフェニルスルフィドから選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法
【請求項12】
記金属カルコゲニドナノ粒子形成するステップが第3の溶液に金属塩を溶解するステップと、第4の溶液にカルコゲン源を溶解するステップと、前記第3の溶液と前記第4の溶液を混合して、前記金属カルコゲニドナノ粒子を形成するための前記第4の溶液を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
記カルコゲン源が、スルフィド含有化合物及びセレニド含有化合物から選択される少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
記カルコゲン源が、チオアセタミド、チオウレア、セレノウレア、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属スルフィド又はアルカリ金属セレニド、セレン、硫黄、アルキルスルフィド、アルキルセレニド及びジフェニルスルフィドから選択される少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
記金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップが金属イオンを形成するために金属塩を溶解するステップと、カルコゲン含有リガンドを形成するステップと、前記金属イオンと前記カルコゲン含有リガンドとを混合するするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
記金属塩が、スズ塩、銅塩、亜鉛塩、ゲルマニウム塩、インジウム塩及びガリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
記カルコゲン含有リガンドが、チオウレア、チオアセタミド及び硫化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
らにナトリウムを前記第1の溶液に添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
記第1の溶液が、水、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年9月16日出願の発明の名称「インク組成物及びその製造方法」の米国特許出願第13/234158号に関連し、これらは2011年5月6日出願の発明の名称「CZTS膜の製造方法及び関連する電子装置の製造方法」の米国仮特許出願第61/483062号に基づく利益を主張するものである。前記これらの先行する出願の前記開示内容は、参照されて本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
太陽電池装置は、地球上のエネルギー枯渇により注目を集めてきている。前記太陽電池装置は大きく、結晶性シリコン太陽電池及び薄膜太陽電池に分けられる。結晶性シリコン太陽電池は、確立された製造技術及び高効率により、太陽電池装置の主流となっている。しかし結晶性シリコン太陽電池はその高い材料及び製造コストのためになお汎用されるに至っていない。薄膜太陽電池は、ガラス基板などの非シリコン基板上に光吸収層を形成することで製造される。ガラス基板は資源が枯渇する恐れはなく、その価格も結晶性シリコン太陽電池で使用されるシリコンウェハに比較すると安価である。従って、薄膜太陽電池は結晶性シリコン太陽電池の代替物として考えられている。
【0003】
薄膜太陽電池はさらに、光吸収層の材料により、アモルファスシリコン、多結晶性シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化銅インジウムガリウム(CIS又はCIGS)、色素感受性膜(DSC)及びその他の有機膜に分類され得る。これらの薄膜のうち、CIGS太陽電池は、変換効率20%に到達し、これは結晶性シリコン太陽電池に匹敵する。
【0004】
前記4元系半導体CuZnSn(S、Se)(CZTS)は、CIGSに類似の結晶構造を持つ新しい太陽電池材料であり、その低コスト、資源が豊富であること、非毒性であることから注目を集めている。CZTS膜の従来の製造方法は真空環境下で処理される。Ito及びNakazawaは、CZTS薄膜を原子ビームスパッタリングによりステンレス・スチール上に形成させた。Katagiriらは、CZTS薄膜をRF源共スパッタリング、続いて気相硫黄化又は電子ビーム気相前駆体をイオウ化することで製造し、得られたCZTS太陽電池の変換効率は6.77%であった。
【0005】
前記の通り、CZTS太陽電池の従来の製造方法は、通常真空プロセスを用いる。しかし真空プロセスは一般的には非常に高価であり、CZTS太陽電池のコストが上がることとなる。従って、真空装置を必要としない溶液プロセスが、製造コストを低減するために望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011016283号明細書
【特許文献2】国際公開第2011066205号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20110097496号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20100096015号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20110206599号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20120061628号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20060054506号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20040033345号明細書
【特許文献9】国際公開第2011065994号明細書
【特許文献10】国際公開第2010135667号明細書
【特許文献11】国際公開第2012000594号明細書
【特許文献12】特開2007269589号明細書
【特許文献13】国際公開第2009/137637号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第2 305 600号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第2 040 305号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2008/0280030号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2010/0200043号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2010/0224247号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2011/0034640号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2009/0218550号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2012/0220066号明細書
【特許文献22】米国特許第7306823号明細書
【特許文献23】米国特許第7494841号明細書
【特許文献24】米国特許第6126740号明細書
【特許文献25】米国特許第7964481号明細書
【特許文献26】米国特許第7094651号明細書
【特許文献27】米国特許第8、168、090号明細書
【特許文献28】米国特許第6127202号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hironori Katagiri et al.、 “Preparation and evaluation of Cu2ZnSnS4 thin films by sulfurization of E−B evaporated precursors”、 1997、 pages 407−414、 Solar Energy Materials and Solar Cells 49.
【非特許文献2】Qijie Guo et al.、 “Synthesis of Cu2ZnSnS4 Nanocrystal Ink and Its Use for Solar Cells”、 2009/07/31、 pages 11672−11673、 VOL. 131、 NO.33、 J. AM. CHEM. SOC. COMMUNICATIONS.
【非特許文献3】Joachim Paier et al.、 “Cu2ZnSnS4 as a potential photovoltaic material: A hybrid Hartree−Fock density functional theory study”、 2009/03/25、 pages 115126−1〜115126−8、 PHYSICAL REVIEW B 79.
【非特許文献4】Qijie Guo et al.、 “Fabrication of 7.2% Efficient CZTSSe Solar Cells Using CZTS Nanocrystals”、 2010/11/19、 pages 17384〜17386、 VOL. 132、 NO. 49、 J. AM. CHEM. SOC. COMMUNICATIONS.
【非特許文献5】Shiyou Chen et al.、 “Intrinsic point defects and complexes in the quaternary kesterite semiconductor Cu2ZnSnS4”、 2010/06/08、 pages 245204−1〜245204−10、 PHYSICAL REVIEW B 81.
【非特許文献6】Shiyou Chen et al.、 “Compositional dependence of structural and electronic properties of Cu2ZnSn(S、Se)4 alloys for thin film solar cells”、 2011/03/01、 pages 125201−1〜125201−5、 PHYSICAL REVIEW B 83.
【非特許文献7】David B. Mitzi et al.、 “The path towards a high−performance solution−processed kesterite solar cell”、 2011/01/17、 pages 1421〜1436、 Solar Energy Materials & Solar Cells 95.
【非特許文献8】Shannon C. Riha et al.、 “Photoelectrochemical Characterization of Nanocrystalline Thin−Film Cu2ZnSnS4 Photocathodes”、 2010/12/31、 pages 58〜66、 VOL. 3、 NO.1、 ACS Applied Materials & Interfaces.
【非特許文献9】Grayson M. Ford et al.、 “Earth Abundant Element Cu2Zn(Sn1−xGex)S4 Nanocrystals for Tunable Band Gap Solar Cells: 6.8% Efficient Device Fabrication”、 2011/04/28、 pages 2626〜2629、 CHEMISTRY OF MATERIALS.
【非特許文献10】Tsuyoshi Maeda et al.、 “First Principles Calculations of Defect Formation in In−Free Photovoltaic Semiconductors Cu2ZnSnS4 and Cu2ZnSnSe4”、 2011/04/20、 pages 04DP07−1〜04DP07−6、 Japanese Journal of Applied Physics 50.
【非特許文献11】J.P. Leitao et al.、 “Study of optical and structural properties of Cu2ZnSnS4 thin films”、 2010/12/25、 pages 7390〜7393、 Thin Solid Films 519.
【非特許文献12】Xiuying Wang et al.、 “A facile and general approach to polynary semiconductor nanocrystals via a modified two−phase method”、 2011/04/21、 cover page + pages 1〜8、 Nanotechnology 22.
【非特許文献13】Wooseok Ki et al.、 “Earth−Abundant Element Photovoltaics Directly from Soluble Precursors with High Yield Using a Non−Toxic Solvent”、 2011/08/10、 pages 732〜735、 ADVANCED ENERGY MATERIALS.
【非特許文献14】Mahaprasad Kar et al.、 “Formation Pathway of CulnSe2 Nanocrystals for Solar Cells”、 2011/09/01、 pages 17239〜17247、 JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY.
【非特許文献15】A Nagoya et al.、 “Frist−principles study of Cu2ZnSnS4 and the related band offsets for photovoltaic applications”、 2011/09/19、 cover page + pages 1〜6、 JOURNAL OF PHYSICS: CONDENSED MATTER 23.
【非特許文献16】Manuel J. Romero et al.、 “Comparative study of the luminescence and intrinsic point defects in the kesterite Cu2ZnSnS4 and chalcopyrite Cu(In、Ga)Se2 thin films used in photovoltaic applications”、 2011/10/24、 pages 165324−1〜165324−5、 PHYSICAL REVIEW B 84.
【非特許文献17】M. Bar et al.、 “Cliff−like conduction band offset and KCN−induced recombination barrier enhancement at the CdS/Cu2ZnSnS4 thin−film solar cell heterojunction”、 2011/11/29、 cover page + pages 222105−1〜222105−3、 APPLIED PHYSICS LETTERS 99.
【非特許文献18】P.M.P. Salome et al.、 “The influence of hydrogen in the incorporation of Zn during the growth of Cu2ZnSnS4 thin films”、 2011/08/26、 pages 3482〜3489、 Solar Energy Materials & Solar Cells 95.
【非特許文献19】Richard Haight et al.、 “Band alignment at the Cu2ZnSn(SxSe1−x)4/CdS interface”、 2011/06/21、 cover page + page 253502−1〜253502−3、 APPLIED PHYSICS LETTERS 98.
【非特許文献20】Optical and Photochemical Properties of Nonstoichiometric Cadmium Sulfide Nanoparticles: Surface Modification with Copper(II) Ions、 Isarov et al、 Langmuir、 1997、 13 (12)、 pp 3142−3149.
【非特許文献21】Compressibility of zinc sulfide nanoparticles、 Gilbert et al.、 Physical Review B、 vol. 74、 Issue 11、 id. 115405、 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクを製造するための方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記方法は金属イオン及を含む溶液び金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップと、金属カルコゲニドナノ粒子を形成するステップと、前記金属カルコゲニドナノ粒子と前記金属イオンを含む溶液及び金属錯体イオンを含む溶液を混合して第1の溶液を形成するステップを含み、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族又は第IV族からなる群から選択され前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオンを含む溶液及び前記金属錯体イオンを含む溶液を形成するステップ及び前記インクとしての前記第1の溶液を形成するステップを、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合に、少なくとも1回繰り返される、方法である。
【0010】
本出願の前記及び他の課題、構成及びその他の利点について、以下の詳細な説明を添付図面と共に考慮することでより明確に理解されるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本出願の実施態様によるカルコゲニド半導体膜を形成するためのインクの製造を示すフローチャートである。
図2図2は、電気二重層理論を示す模式図である。
図3図3は、実施例1の、分散された金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
図4図4は、電気二重層で被覆された複数の金属カルコゲニドナノ粒子であって実施例1のインクに分散された粒子の拡大図である。
図5図5は、本出願の実施態様によるカルコゲニド半導体膜製造のフローチャートである。
図6図6は実施例1のインクを用いたCZTS膜のXRD分析図である。
図7図7は実施例2のインクを用いたCZTS膜のXRD分析図である。
図8図8は実施例3のインクを用いたCZTS膜のXRD分析図である。
図9図9は実施例6のインクを用いたCZTS膜のXRD分析図である。
図10図10は実施例7のインクを用いたCZTS膜のXRD分析図である。
図11図11は、本出願の実施態様による太陽電池装置製造のためのフローチャートである。
図12図12は、図11で示される方法で形成される太陽電池装置の模式図である。
図13図13は、実施例7のインクを用いたCZTS膜で製造された太陽電池装置のJ−V図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
次の定義はここで使用される用語の理解を容易にするために与えられており、本開示の範囲を限定するためではない。
【0013】
「カルコゲニド」とは周期律表の第VIA族元素を意味する。好ましくは、用語「カルコゲニド」は、硫黄及びセレンを意味する。
【0014】
「カルコゲニド化合物」は、周期律表の第VIA族元素を少なくとも含む化合物を意味する。
【0015】
「カルコゲニド半導体膜」は広い意味で、2元、3元及び4元系カルコゲニド化合物半導体材料を意味する。前記2元系化合物半導体材料は、第IV−VI族化合物半導体材料を含む。前記3元系カルコゲニド化合物半導体材料は、第I−III−VI族化合物半導体材料を含む。前記4元系カルコゲニド化合物半導体材料は、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を含む。
【0016】
「第IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IVA族元素及び第VI族元素からなる化合物半導体材料、例えば硫化スズ(SnS)を意味する。
【0017】
「第I−III−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IB族元素、第IIIA族元素及び第VIA族元素からなる化合物半導体材料、例えばCIS又はCIGSを意味する。
【0018】
「第I−II−IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IB族元素、第IIB族元素、第IVA族元素及び第VIA族元素からなる化合物半導体材料、例えばCZTSを意味する。
【0019】
「CIS」とは広い意味で、第I−III−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CIS]とは式:例えばCuIn(Se1−x(ここで0<x<1)のセレン化銅インジウム化合物を意味する。用語「CIS」はさらに、部分化学量論的、例えばCuIn(Se0.650.35のセレン化銅インジウム化合物を含む。
【0020】
「CZTS」は広い意味で、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CZTS」は、式:例えばCu(Zn1−bSn)(Se1−c(ここで0<a<1、0<b<1、0≦c≦1)のセレン化銅インジウム化合物を意味する。用語「CZTS」はさらに、銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物の部分的化学量論的化合物例えばCu1.94Zn0.63Sn1.3を含む。さらに、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料は、I−II−IV−IV−VI族化合物半導体材料(銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物など)、及びI−II−IV−IV−VI−VI化合物半導体材料(銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物セレン化物など)を含む。
【0021】
{CIGS」は広い意味で、I−III−VI化合物半導体材料を意味する。本出願の1つの実施態様では、「CIGS」は銅インジウムガリウムセレン化合物を意味し、例えば式CuInGa1−xSe(ここで0<x<1)である化合物である。用語「CIGS」はさらに、銅インジウムガリウムセレン化物である部分的化学量論化合物、例えばCu0.9In0.7Ga0.3Seを含む。
【0022】
「インク」とは、半導体膜を形成することができる前駆体を含む溶液を意味する。用語「インク」はまた「前駆体溶液」又は「前駆体インク」を意味する。
【0023】
「金属カルコゲニド」とは、金属と周期律表の第VI族元素からなる化合物を意味する。好ましくは用語「金属カルコゲニド」とは、2元系、3元系及び4元系金属カルコゲニド化合物を意味する。
【0024】
「リガンド」とは、ある中心金属イオンを囲む分子又はイオンを意味する。
リガンドは、前記中心金属イオンへ化学結合及び物理的相互作用を含む結合を形成して金属錯体イオンを形成し得る。
【0025】
「カルコゲン含有リガンド」とは周期律表の第VI族の元素を少なくとも1つ含むリガンドを意味する。
【0026】
「カルコゲン含有金属錯体イオン」とは、カルコゲン含有リガンドを含む金属錯体イオンを意味する。
【0027】
「カルコゲン源」とは、金属と金属カルコゲニドを形成する化合物を意味する。
【0028】
「ナノ粒子」とは、直径が約2nmから2000nmの範囲である粒子を意味する。
【0029】
カルコゲニド半導体膜製造のためのインクの製造
図1は、本出願の実施態様によるカルコゲニド半導体膜形成のためのインクの製造フローチャートである。
【0030】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子形成のステップ110を含む。金属カルコゲニドナノ粒子は1種類だけの金属カルコゲニドナノ粒子を含むか、又は1以上の種類の金属カルコゲニドナノ粒子を含み得る。例えば、前記金属カルコゲニドナノ粒子は複数のスズ硫化物ナノ粒子を含む。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、スズ硫化物ナノ粒子と銅硫化物ナノ粒子を含む。前記金属カルコゲニドナノ粒子は、多元系金属カルコゲニドナノ粒子であって、銅スズ硫化物ナノ粒子を含み得る。または、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、それぞれが少なくとも2つのカルコゲニドからなるナノ粒子を含み得る。例えば、前記少なくとも2つの金属カルコゲニドが、スズカルコゲニド、亜鉛カルコゲニド、銅カルコゲニド、インジウム及びガリウムカルコゲニドからなる群から選択される。
【0031】
金属カルコゲニドナノ粒子製造のプロセスは:水などの溶媒中に金属塩を溶解させて第1の水溶液を形成し、水中にカルコゲン源を溶解して第2の溶液を形成し、及び前記第1の溶液と第2の溶液を混合して金属カルコゲニドナノ粒子を形成することを含む。前記プロセスはさらに、前記混合溶液のpHを調節するステップ、撹拌ステップ又は加熱ステップを含み得る。実施態様により、前記混合反応溶液はpH値を約7から約14へ調節する。前記金属カルコゲニドナノ粒子は粒子サイズが、約2nmから約2000nmの範囲である。
【0032】
前記金属塩は、周期律表の第IB族、第IIB族、第IIIB族及び第IVA族元素からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。特に、前記金属は、スズ(Sn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びガリウム(Ga)からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。前記金属塩は、例えば、塩化スズ、硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム又は塩化インジウムであり得る。
【0033】
前記カルコゲン源は、前記溶液中に硫化物イオンやセレン化物イオンを生成することができる単一の又は混合前駆体を含み、及び、例えばチオアセタミド、チオウレア、セレノウレア、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属硫化物又はアルカリ金属セレン化物、セレン、硫黄、アルキルスルフィド、アルキルセレニド及びジフェニルスルフィドなどのスルフィド含有又はセレニド含有化合物を含む。
【0034】
前記金属カルコゲニドナノ粒子は、例えば、スズ硫化物(Sn−S)、銅硫化物(Cu−S)、亜鉛硫化物(Zn−S)、インジウム硫化物(In−S)、ガリウム硫化物(Ga−S)、スズセレニド(Sn−Se)、銅セレニド(Cu−Se)、亜鉛セレニド(Zn−Se)、インジウムセレニド(In−Se)、ガリウムセレニド(Ga−Se)、銅スズ硫化物(Cu−Sn−S)、銅亜鉛硫化物(Cu−Zn−S)、亜鉛スズ硫化物(Zn−Sn−S)、銅インジウム硫化物(Cu−In−S)、銅ガリウム硫化物(Cu−Ga−S)、銅インジウムガリウム硫化物(Cu−In−Ga−S)、銅スズセレニド(Cu−Sn−Se)、銅亜鉛セレニド(Cu−Zn−Se)、亜鉛スズセレニド(Zn−Sn−Se).、銅インジウムセレニド(Cu−In−Se)、銅ガリウムセレニド(Cu−Ga−Se)及び銅インジウムガリウムセレニド(Cu−In−Ga−Se)を含む。ここでハイフン(「−」、例えばCu−SやCu−Sn−Sなど)は、前記式が、これらの元素の全ての可能な組み合わせを含むことを意味し、例えば「Cu−S]にはCuS及びCuSが含まれる。金属及びカルコゲンの前記化学量論は、厳密なモル比から変動することができ、例えば1:1や2:1などである。さらに、部分的化学量論、例えばCu1.8Sも含まれる。
【0035】
ステップ120は、金属イオン及び/又は金属錯体イオン形成を含む。ステップ120では、金属イオン及び金属錯体イオンのいずれか又は両方を製造することができる。前記金属イオンは銅イオンなどの1種類だけで形成され得る。他の例では、金属イオンは1種以上の金属イオン、例えば銅イオン及び全イオンを含み得る。同様に前記金属錯体イオンは1種以上の金属錯体イオンを含み得る。前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属は、周期律表の第IB、族、第IIB族、第IIIB族及び第IVA族からなる群から選択される。
【0036】
前記金属イオンは、水などの溶媒に金属塩を溶解して製造され得る。
【0037】
前記金属錯体イオンは、水中に金属塩を溶解させて第1の水溶液中に金属イオンを形成させ、水中にリガンドを溶解させて第2の水溶液を形成し、及び前記第1の水溶液と第2の水溶液を混合して金属錯体イオンを形成させる。例えば前記金属錯体イオンは、カルコゲン含有金属錯体イオンとして形成され得る。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属イオンとカルコゲン含有リガンドとを混合することで形成され得る。前記カルコゲン含有リガンドは、例えば、チオアセタミド、チオウレア又は硫化アンモニウムを含む。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属−チオウレアイオン、金属−チオアセタミドイオン又は金属−硫化アンモニウムイオンを含む。
【0038】
例えば、前記金属イオンは、銅イオン、スズイオン、亜鉛イオン、ゲルマニウムイオン、インジウムインジウム又はガリウムイオンを含む。前記金属錯体イオンは、銅−チオウレアイオン、スズ−チオウレアイオン、ゲルマニウム−チオウレアイオン、銅−チオアセタミドイオン、スズ−チオアセタミドイオン、ゲルマニウム−チオアセタミドイオン、インジウム−チオアセタミドイオン、ガリウム−チオアセタミドイオン、インジウム−チオアセタミドイオン及びガリウム−チオアセタミドイオンを含む。
【0039】
前記金属カルコゲニドナノ粒子は、前記インク中に約1%(重量/体積)から約80%(重量/体積)の量で存在する。前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンは、前記インク中に約0.5%(重量/体積)から約80%(重量/体積)の量で存在する。
【0040】
ステップ130は、前記金属カルコゲニドナノ粒子と前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンとの混合を含む。
【0041】
留意すべきことは、ステップ110は、ステップ120の前、後、又は同時に実施され得るということである。即ち、前記金属カルコゲニドナノ粒子は最初に製造されその後前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが製造され得る。他の例では、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンは最初に製造され、その後前記金属カルコゲニドナノ粒子が製造され得る。
他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが同じステップで製造される。
【0042】
前記のとおり、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び/又は金属錯体イオンの両方が1以上の金属を含み得る。カルコゲニド半導体膜形成のためのインクを製造するために、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属インク及び/又は金属錯体イオンの金属は、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含むべきである。例えば、前記カルコゲニド半導体材料は、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物からなる群から選択される。例えば、CZTS膜を製造するための前記インクを製造するために、少なくとも3つの金属、即ち周期律表の少なくとも1つの第IB族元素、少なくとも1つの第IIB族元素、少なくとも1つの第IVA族元素である。実施態様により、前記少なくとも3つの金属はそれぞれ、ステップ110及び120で使用され、全てがステップ130の結果得られる溶液中に含まれ得る。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンはそれぞれが1種類のみの金属を含み得る。従って、ステップ130で得られる溶液中には2つの金属のみが含まれることとなる。従って、前記方法はステップ140を含み、これにより前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンの金属が、カルコゲニド半導体材料の全ての金属を含んでいるかどうかを決定することができる。前記全ての金属が含まれていない場合、前記ステップが繰り返される。例えば、金属イオン及び/又は金属錯体イオンを形成するステップ120が繰り返されて前記インク中に第3の金属を含ませる。他の例では、金属カルコゲニドナノ粒子形成のステップ110が繰り返されて前記インクに前記第3の金属を含ませる。
【0043】
ステップ150でインクが形成される。
【0044】
前記プロセスで、水が溶媒として使用される。しかし他の例では、アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はアミンなどの極性溶媒を含む。アルコールの例は、メチルアルコール、エタノール又はイソプロピルアルコールを含む。
【0045】
又はある実施例では、ステップ120及びステップ130は数回繰り返されて、より多くの金属イオン及び/又は金属錯体イオンを加えることが可能である。
【0046】
本出願のインクの特徴を説明するために、電気二重層の理論を簡単に説明する。図2は、電気二重層の模式図である。図2では、ナノ粒子210が溶媒220に懸濁されている。前記ナノ粒子210は負に帯電した表面230を持つ。従って、陽イオン240が、前記ナノ粒子210の負に荷電された表面230上に静電力で吸着される。前記陽イオン240の一部分は緻密に前記負に帯電した表面230に吸着され、固定(スターン)層250と命名されており、一方前記陽イオン240の一部分は拡散層260と命名される減少濃度を有する層で固定層250を囲む。前記固定層250及び前記拡散層260は電気二重層270を構成する。前記ナノ粒子210が前記電気二重層270で囲まれることから、ナノ粒子210は他のナノ粒子210から、電気二重層270で生じる静電的反発力で弾かれる。従って、前記ナノ粒子210は前記溶液220中に懸濁されることが可能となる。
【0047】
同様に、この実施態様では、前記金属カルコゲニドナノ粒子はまた、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンで覆われ、従って前記溶媒中に懸濁され得る。従って、前記インクはよく懸濁された粒子であり、カルコゲニド半導体膜形成に使用できる。
【0048】
以下CZTS膜及びCIGS膜の形成のためのインクの製造についていくつかの実施例を説明する。
【実施例】
【0049】
実施例1
CZTS膜形成のためのインクの製造
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:5mmolの塩化スズを25mLのHOに溶解して水溶液(A1)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mLのHOに溶解して水溶液(B1)を形成した。前記水溶液(A1)と(B1)を混合して反応溶液(C1)を形成した。前記反応溶液(C1)に12mLの30%NHOHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。前記得られた茶黒色沈殿を集めて、スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を準備した。
【0050】
金属錯体イオンの製造:7mmolの硝酸銅を5mLのHOに溶解して水溶液(D1)を形成した。10mmolのチオアセタミドを、5mLのHOに溶解して水溶液(E1)を形成した。前記水溶液(D1)と(E1)を混合して反応溶液(F1)を形成した。前記反応溶液(F1)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオンを形成した。
【0051】
前記集めたスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を反応溶液(F1)と混合して混合溶液(G1)を形成した。
【0052】
金属イオンの製造:4.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのHOに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H1)を形成した。
【0053】
前記水溶液(H1)を前記混合溶液(G1)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0054】
図3は、実施例1の懸濁されたスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子の拡大図である。
図3に示されるように、前記スズ−硫化物(Sn−S)ナノ粒子310は負に帯電した表面320を持つ。前記銅チオアセタミドイオン330及び亜鉛イオン340は共に正に帯電され、前記スズ硫化物(SnS)ナノ粒子310の負に帯電された表面320に静電力で吸着される。
【0055】
図4を参照して、実施例1のインク中に懸濁された、複数の電気二重層で覆われた金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。図4で、複数のスズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410が前記溶媒420中に懸濁されている。前記SnSナノ粒子410のそれぞれは負に帯電した外部表面430を持つ。又は、銅チオアセタミドイオン440と亜鉛イオン450がインク420中に形成される。前記正に帯電した銅チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450は、前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410の前記負に帯電した外部表面430へ吸着される。前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410のそれぞれは、正イオンに囲まれており、これらはお互いに反発する。従って、前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子410は、前記溶媒420内で分散され懸濁される。
【0056】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子は銅チオアセタミド及び亜鉛イオンで覆われ、4元系化合物半導体CZTS(CuZnSnS)の4元素、即ち銅、亜鉛、スズ及び硫黄が前記SnSナノ粒子とお互い近接している。従って、前記インクは、銅、全、スズ及び硫黄のよく混合されたものとなるCZTS膜を形成するために使用され得る。
【0057】
実施例2
CZTS膜形成のためのインクの製造
本例は実施例1と、前記インク内に形成された2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が存在することで異なり、即ち1つはSnSナノ粒子とCu錯体/イオン、他方はZnSナノ粒子である。
【0058】
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:5mmolの塩化スズを40mLのHOに溶解して水溶液(A2)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mLのHOに溶解して水溶液(B2)を形成した。前記水溶液(A2)と(B2)を混合して反応溶液(C2)を形成した。前記反応溶液(C2)に10mLの30%NHOHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。その後前記スズ硫化物ナノ粒子が茶黒色沈殿として反応溶液(C2)中に沈殿した。
【0059】
金属錯体イオンの製造:7mmolの硝酸銅を5mLのHOに溶解して水溶液(D2)を形成した。5mmolのチオアセタミドを、5mLのHOに溶解して水溶液(E2)を形成した。前記水溶液(D2)と(E2)を混合して反応溶液(F2)を形成した。前記反応溶液(F2)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0060】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F2)と混合して混合溶液(G2)を形成した。
【0061】
金属イオンの製造:4.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのHOに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H2)を形成した。
【0062】
前記混合溶液(G2)を前記水溶液(H2)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(I2)を形成した。
【0063】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの形成:29mmolの前記硫化アンモニウムを混合溶液(I2)に添加し、一晩撹拌してインクを形成した。
【0064】
実施例3
CZTS膜の形成のためのインクの製造
本例は実施例2と、前記2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が、異なる金属イオン及び/又は金属錯体イオンの組成であることで異なる。
【0065】
金属カルコゲニドナノ粒子の製造:2.5mmolの塩化スズを25mLのHOに溶解して水溶液(A3)を形成した。2mmolのチオアセタミドを25mLのHOに溶解して水溶液(B3)を形成した。前記水溶液(A3)と(B3)を混合して反応溶液(C3)を形成した。反応溶液(C3)に10mLの30%NHOHを添加して、65℃で1.5時間撹拌した。その後スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子が茶黒色沈殿として前記反応溶液(C3)中に沈殿した。
【0066】
金属錯体イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を5mLのHOに溶解して水溶液(D3)を形成した。3mmolのチオアセタミドを、5mLのHOに溶解して水溶液(E3)を形成した。前記水溶液(D3)と(E3)を混合して反応溶液(F3)を形成した。前記反応溶液(F3)は0.5時間室温で撹拌して銅チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0067】
前記スズ硫化物(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F3)と混合して混合溶液(G3)を形成した。
【0068】
金属イオンの製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を、5mLのHOに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H3)を形成した。22mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(H3)に溶解して反応溶液(I3)を形成した。
【0069】
前記混合溶液(G3)を水溶液(I3)と混合し、インクを形成した。
【0070】
実施例4
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例1と、ナノ粒子が前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に形成される点で異なる。
【0071】
ナノ粒子前駆体の製造:2.5mmolのスズ硫化物(Sn−S)及び2mmolの硫黄(S)を5mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A4)を形成した。
【0072】
金属錯体イオン及び金属イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を2mLのHOに溶解し水溶液(B4)を形成した。前記水溶液(D4)と前記水溶液(C4)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D4)を形成した。
【0073】
前記水溶液(A4)を反応溶液(D4)と混合して前記混合溶液(E4)を形成した。
【0074】
金属イオンの製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を2mLのHOに溶解して水溶液(F4)を形成した。
【0075】
前記混合溶液(E4)を前記水溶液(F4)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0076】
実施例5
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例4と、銅チオウレア錯体イオンが前記インク中に形成される点で異なる。
【0077】
ナノ粒子前駆体の製造:2.5mmolのスズ硫化物を5mLの40〜50%のチオウレア水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A5)を形成した。
【0078】
金属錯体イオン及び金属イオンの製造:3.8mmolの硝酸銅を5mLのHOに溶解し水溶液(B5)を形成した。5.9mmolのチオウレアを5mLのHOに溶解し水溶液(C5)を形成した。前記水溶液(B5)と前記水溶液(C5)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D5)を形成した。
【0079】
前記水溶液(A5)を前記反応溶液(D5)と混合して混合溶液(E5)を形成した。
【0080】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の製造:2.8mmolの硝酸亜鉛を2mLのHOに溶解して水溶液(F5)を形成した。33mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(F5)に溶解して反応溶液(G5)を形成した。
【0081】
前記混合溶液(E5)を前記反応溶液(G5)と混合して一晩撹拌してインクを形成した。
【0082】
実施例6
CZTS膜形成のためのインクの製造
この例は実施例1と、金属イオン及び/又は金属錯体イオンが、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成前に製造される点で異なる。
【0083】
第1の金属イオンの製造:1.07mmolの塩化スズを2mLのHOに溶解して5分間撹拌して水溶液(A6)を形成した。
【0084】
第2の金属イオンの製造:1.31mmolの硝酸亜鉛を2mLのHOに溶解して水溶液(B6)を形成した。
【0085】
前記水溶液(A6)を前記水溶液(B6)と混合して15分間撹拌して水溶液(C6)を形成した。
【0086】
金属錯体イオンの製造:1.7mmolの硝酸銅を1.5mLのHOに溶解して水溶液(D6)を形成した。3mmmolのチオウレアを3mLのHOに溶解して水溶液(E6)を形成した。前記水溶液(D6)と前記水溶液(E6)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F6)を形成した。
【0087】
前記水溶液(C6)を前記反応溶液(F6)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G6)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G6)は約60℃で撹拌され得る。
【0088】
金属カルコゲニドナノ粒子の添加とインク:1.5mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を前記混合溶液(G6)に添加し一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0089】
実施例7
CZTS膜の形成のためのインクの製造
この例は実施例6と、セレンがインクに含まれる点で異なる。
【0090】
第1の金属イオンの製造:1.07mmolの塩化スズを2mLのHOに溶解して5分間撹拌して水溶液(A7)を形成した。
【0091】
第2の金属イオンの製造:1.31mmolの硝酸亜鉛を2mLのHOに溶解して水溶液(B7)を形成した。
【0092】
前記水溶液(A7)を前記水溶液(B7)と混合して15分間撹拌して水溶液(C7)を形成した。
【0093】
金属錯体イオンの製造:1.7mmolの硝酸銅を1.5mLのHOに溶解して水溶液(D7)を形成した。
3mmmolのチオウレアを3mLのHOに溶解して水溶液(E7)を形成した。前記水溶液(D7)と前記水溶液(E7)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F7)を形成した。
【0094】
前記水溶液(C7)を前記反応溶液(F7)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G7)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G7)は約60℃で撹拌され得る。
【0095】
金属カルコゲニドナノ粒子、金属錯体イオン及びインクの製造:0.1gのセレン(Se)粉末を1mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液に溶解して水溶液(H7)を形成した。前記水溶液(H7)を前記混合溶液(G7)に加えて一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0096】
実施例8
CZTS膜の形成のためのインクの製造
第1の金属イオンの製造:1.29mmolの塩化スズ(SnCl)を、1.5mLの水に溶解して、2分間撹拌して水溶液(A8)を形成した。
【0097】
第2の金属イオン/金属錯体イオンの製造:1.38mmolの金属亜鉛を2.4mLの24%水酸化アンモニウムに添加し、30分間撹拌し、その後0.1mLの50重量%のヒドロキシルアミンを添加して一晩撹拌して水溶液(B8)を形成した。
【0098】
第3の金属イオンの製造:1.53mmolのCu(NOを、1.0mLのHOに溶解して水溶液(C8)を形成した。
【0099】
カルコゲン源の製造:5.91mmolのチオウレアを、2mLのHOに溶解して水溶液(D8)を形成した。
【0100】
カルコゲニド含有金属錯体イオンの製造:前記水溶液(A8)と前記水溶液(D8)を混合して、90℃で2分間撹拌して反応溶液(E8)を形成した。次に、前記水溶液(C8)を前記反応溶液(E8)と混合し、90℃で2分間撹拌して混合溶液(F8)を形成した。さらに、前記水溶液(B8)を前記反応溶液(F8)と混合し、90℃で10分間撹拌して混合溶液(G8)を形成した。
【0101】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの製造:1.8mLの40〜44%の硫化アンモニウム水溶液を、前記混合溶液(G8)に室温で混合し、さらに30分間超音波処理してインク(H8)を製造した。場合により、0.4mLの1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を室温で前記インク(H8)に添加し、その後30分間超音波処理するか、一晩撹拌することが可能である。
【0102】
この例は、金属源として金属塩ではなく金属粉末を使用する方法を開示するものである。即ち、金属亜鉛粉末が水酸化アンモニウムとヒドロキシルアミン溶液中に溶解して、亜鉛イオンと亜鉛錯体イオンを形成する。この例では、亜鉛金属粉末のみ金属源として使用されている。しかし銅粉末及び/又はスズ粉末もまた使用され得る。又は、前記金属粉末は、限定されるものではないが、金属フレーク、金属ナノ粒子及び金属粒子などのあらゆる金属の形状が含まれる。
【0103】
この例では、亜鉛金属が、水酸化アンモニウム及びヒドロキシルアミンを含む溶媒系に溶解された。本出願では、「溶媒系」とは、水などの単一溶媒、又は水とアンモニアなどの混合溶液も意味する。他の例では、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物がまた前記溶媒系に含まれ得る。
【0104】
実施例1から5では、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン/金属錯体イオンが別々に製造された。しかし、実施例6から8では、金属カルコゲニドナノ粒子は、硫化アンモニウムを、前記金属錯体イオンを含む前記混合溶液(G6、G7及びG8)に添加されることで形成された。実施例6から8では、最初に製造された金属イオン/金属錯体イオンが、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成へ導入され得る。即ち、金属イオン/金属錯体イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子は、別々に製造することは必要ではない。
【0105】
さらに、ナトリウムが、CZTS膜の成長において顆粒サイズを改善するために前記インク内に添加され得る。
【0106】
実施例9
CIGS膜の形成のためのインクの製造
第1の金属イオンの製造:0.5mmolの硝酸ガリウムを2mLのHOに溶解して水溶液(A9)を形成した。
【0107】
第2の金属イオンの製造:0.5mmolの塩化インジウムを2mLのHOに溶解して水溶液(B9)を形成した。
【0108】
前記水溶液(A9)を前記水溶液(B9)と混合して15分間撹拌して水溶液(C9)を形成した。
【0109】
金属錯体イオンの製造:1.0mmolの硝酸銅を2mLのHOに溶解して水溶液(D9)を形成した。5.9mmolのチオウレアを5mLのHOに溶解して水溶液(E9)を形成した。前記水溶液(D9)と前記水溶液(E9)を混合して室温で20分間撹拌して反応溶液(F9)を形成した。
【0110】
前記水溶液(C9)を前記反応溶液(F9)と混合して10分間撹拌して混合溶液(G9)を形成した。ある実施態様では、前記混合溶液(G9)は約60℃で撹拌され得る。
【0111】
金属カルコゲニドナノ粒子とインクの製造:1.6mLの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を、前記混合溶液(G9)へ加えて一晩撹拌するか30分間超音波処理してインクを形成した。
【0112】
前駆体溶液を用いるカルコゲニド半導体膜の製造
図5を参照して、本出願の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜の製造のフローチャートが示される。
【0113】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオンおよび金属錯体イオンの少なくとも1つを含む前駆体溶液の製造のステップ510を含む。前記前駆体溶液は図1に示されるプロセスで製造され得る。
【0114】
ステップ520は、基板上に前記前駆体の液体層を形成するために前記基板上に前記前駆体溶液をコーティングすることを含む。前記コーティング方法は、限定されるものでないが、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、カーテンコーティング、スライドコーティング、スプレー、スリットキャスティング、メニスカスコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、フレキソグラフ印刷又はグラビア印刷が含まれる。前記基板には、ガラス基板などの剛性又は金属箔やプラスチック基板などのフレキシブルなものが含まれる。ある実施態様では、前記基板は前記前駆体溶液のコーティングの前にモリブデン(Mo)層が形成される。
【0115】
ステップ530は前記前駆体溶液の液体層を乾燥して前駆体膜を形成することを含む。前記乾燥プロセスの際に、溶媒が蒸発で除去される。前記乾燥方法は、例えば、前記基板を加熱炉、オーブン内又はホットプレート上に置いて実施され得る。CZTS膜の前記前駆体溶液が使用される場合には、前記乾燥プロセスは、約25℃から600℃、好ましくは350℃から480℃の温度で実施され得る。最も好ましくは前記乾燥温度は約425℃である。前記コーティング及び感想ステップは1回以上繰り返すことができ、例えば約3回から約6回である。得られる前駆体膜は、例えば約1〜5000nmの厚さを含む。
【0116】
ステップ540は前記前駆体膜を熱処置して前記カルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記CZTSの前記前駆体膜の熱処理温度は約300℃から700℃であり、好ましくは480℃から650℃である。最も好ましくは、前記温度が約540℃である。この例では、前記熱処理プロセスは、約540℃で10分間で実施され得る。ある実施態様では、前記熱処理プロセスは、硫黄蒸気を含む雰囲気下で実施され得る。
【0117】
実施例1から実施例3及び実施例6、実施例7で製造されたインクが、CZTS膜を製造するための前駆体溶液として使用された。前記CZTS膜は、図6から図10に示されるように、XRD分析によりケステライト型構造を持つことが確認された。
【0118】
太陽電池装置の製造
図11は、本出願の1つの実施態様による太陽電池装置の製造のフローチャートである。図12はまた、図11で示される方法で形成される太陽電池装置の模式図である。
【0119】
前記方法は、基板1200上に底部電極層1210を形成するステップ1110を含む。例えば、前記基板1200は、ガラス、金属箔及びプラスチックからなる群から選択される材料を含む。前記底部電極層1210は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)及びインジウムスズ酸化物(ITO)からなる群から選択される。この実施態様では、Mo層1210がスパッタリングで基板1200上に形成される。
【0120】
ステップ1120は、前駆体溶液を用いて前記底部層1210上にカルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記前駆体溶液は図1で示されるプロセスで製造され得る。この実施態様では、CZTS膜は、前記カルコゲニド半導体膜1220として形成される。前記Mo層1210上に形成された前記CZTS膜1220は、約0.6μmから約6μmの厚さを含む。
【0121】
ステップ1130は、前記カルコゲニド半導体膜1220上にバッファ層1230を形成することを含む。前記バッファ層は、n−型半導体層また、p−型半導体層などの半導体層を含む。例えば、前記バッファ層は、硫化カドミウム(CdS)、Zn(O、OH、S)、硫化インジウム(In)、硫化亜鉛(ZnS)及び亜鉛マグネシウム酸化物(ZnMg1−xO)からなる群から選択される。この実施態様で、CdS層1230は、前記CZTS膜1220上のn−型半導体層として形成される。前記CdS膜1230は、化学的蒸着方法で形成され得る。この実施態様では、前記CdS膜1230の厚さは、例えば約20nmから約150nmであり得る。
【0122】
ステップ1140は、前記バッファ層1230上に上部電極1240を形成することを含む。前記上部電極は透明導電性層を含む。例えば、上部電極層1240は、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ホウ素ドープ亜鉛酸化物(B−ZnO)、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(Al−ZnO)、ガリウムドープ亜鉛酸化物(Ga−ZnO)及びアンチモンスズ酸化物(ATO)からなる群から選択される。この実施態様では、約100nmの厚さの亜鉛酸化物(ZnO)膜、及び約130nmの厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)膜が、前記バッファ層1230上に前記上部電極層1240として形成される。前記ZnO膜及びITO膜の製造方法は、例えばスパッタリングであり得る。
【0123】
ステップ1150は、前記上部電極層1240上の金属コンタクト1250を形成することを含む。Ni/Al金属コンタクト1250の形成方法は、例えば、電子ビーム蒸着であり得る。
【0124】
ステップ1160は前記基板1200上に反射防止膜1260を形成することを含む。例えば前記反射防止膜は、フッ化マグネシウム(MgF)、シリコン酸化物(SiO)、シリコン窒化物(Si)及びニオブ酸化物(NbO)からなる群から選択される。この実施態様で、MgF膜1260は、反射防止膜として前記基板上に形成される。前記MgF膜は、例えば、電子ビーム蒸着により形成され得る。この実施態様で、前記フッ化マグネシウム(MgF)膜の厚さは例えば、110nmであり得る。
【0125】
図13は、実施例7のインクで形成されたCZTS膜を有する太陽電池装置のJ−V図である。前記装置は、1.5AM標準照射条件で、開放回路電圧(VOC)=450mV、フィルファクタ(FF)=40.9%及び短絡回路電流密度(JSC)=14.8mA/cmの条件で測地して電力変換効率が2.7%であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13