(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653476
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】タービンダイアフラム構成
(51)【国際特許分類】
F01D 9/04 20060101AFI20141218BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20141218BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20141218BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20141218BHJP
F01D 25/28 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F01D9/04
F01D9/02 104
F01D11/02
F01D25/00 X
F01D25/28 B
F01D25/28 Z
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-92869(P2013-92869)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-227980(P2013-227980A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2013年7月10日
(31)【優先権主張番号】12165618.5
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンガス ロバート ブラミット−ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】カヌ ミストリー
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン クリフォード ロード
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第0945597(EP,A1)
【文献】
特開2003−97218(JP,A)
【文献】
特開2008−144687(JP,A)
【文献】
特開2006−125282(JP,A)
【文献】
特開2002−47901(JP,A)
【文献】
特開2010−270717(JP,A)
【文献】
特表2008−534837(JP,A)
【文献】
特開2005−171783(JP,A)
【文献】
特開2005−146896(JP,A)
【文献】
特開2006−329195(JP,A)
【文献】
特開平5−171901(JP,A)
【文献】
特開昭59−51197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/04
F01D 9/02
F01D 11/02
F01D 25/00
F01D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流タービンダイアフラム(10)であって、
(a)半径方向内側ダイアフラムリング(12)と、
(b)半径方向外側ダイアフラムリング(14)と、
(c)前記半径方向内側ダイアフラムリング及び前記半径方向外側ダイアフラムリングの間に配置された複数の静止ブレードユニット(16)であって、各静止ブレードユニットは、
・食違い角(θ)を有する翼部分(161)と、
・半径方向内側ダイアフラムリング(12)に係合する半径方向内側プラットフォーム部分(162)と、
・半径方向外側ダイアフラムリング(14)に係合する半径方向外側プラットフォーム部分(163)とを有する、静止ブレードユニット(16)と、を備え、
(i)半径方向内側ダイアフラムリング(12)には、半径方向内側プラットフォーム部分(162)を半径方向内側ダイアフラムリング(12)に保持するために働くブレードユニット保持手段(124)が設けられており、
(ii)半径方向外側プラットフォーム部分(163)は、前記翼部分(161)の食違い角(θ)と一致する方向に延在しており、
(iii)半径方向外側ダイアフラムリング(14)の内周面には、周方向に角度間隔を置いて配置されかつ食違い角と一致するように方向付けられている複数のブレードユニット保持手段(147)が設けられており、それぞれのブレードユニット保持手段は、前記静止ブレードユニットの対応する半径方向外側プラットフォーム部分(163)に対して相補的な形状及び向きを有し、これにより、半径方向外側プラットフォーム部分(163)を半径方向外側ダイアフラムリング(14)に保持し、
前記半径方向内側プラットフォーム部分(162)は前記半径方向内側ダイアフラムリング(12)の周方向に延びており、前記半径方向外側プラットフォーム部分(163)は、前記半径方向内側プラットフォーム部分(162)の概して横方向でかつ前記翼部分(161)の前記食違い角(θ)に近い角度で延びており、これにより、前記軸流タービンダイアフラムが完全に組み立てられると、前記半径方向内側プラットフォーム部分(162)と、前記半径方向外側プラットフォーム部分(163)とは、前記半径方向内側ダイアフラムリング(12)と、前記半径方向外側ダイアフラムリング(14)とにそれぞれ互いに有効にクロスキー結合され、これにより、ダイアフラム構造内でそれぞれの前記静止ブレードユニット(16)を安定させることを特徴とする、軸流タービンダイアフラム(10)。
【請求項2】
軸流タービンダイアフラム(10)の半径方向外側ポート壁部は、半径方向外側ダイアフラムリング(14)の内周面の露出した部分(149)と周方向で交互に位置する、静止ブレードユニット(16)の細長い半径方向外側プラットフォーム部分(163)を有する、請求項1記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項3】
静止ブレードユニット(16)の半径方向内側プラットフォーム部分(162)は、軸流タービンダイアフラム(10)の周方向に延在しており、半径方向内側ダイアフラムリング(12)の外周面には、静止ブレードユニットの半径方向内側プラットフォーム部分に対して相補的な形状及び向きのブレードユニット保持手段(124)が設けられており、これにより、半径方向内側プラットフォーム部分は半径方向内側ダイアフラムリングに保持される、請求項1又は2記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項4】
軸流タービンダイアフラム(10)の半径方向内側ポート壁部は、静止ブレードユニット(16)の細長い半径方向内側プラットフォーム部分(162)を含み、該半径方向内側プラットフォーム部分(162)の側方に、軸方向で互いに反対の側において、半径方向内側ダイアフラムリング(12)の外周面の複数の部分(126)が位置する、請求項3記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項5】
細長い半径方向内側プラットフォーム部分(162)の互いに対面する端部は、半径方向内側ダイアフラムリング(12)のブレードユニット保持手段(124)に挿入されたときに互いに当接し、これにより、半径方向内側プラットフォーム部分(162)が、周方向で軸流タービンダイアフラム(10)の内側ポート壁部に沿って連続的に延びる、請求項3又は4記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項6】
静止ブレードユニット(16)の半径方向内側プラットフォーム部分(162)及び半径方向外側プラットフォーム部分(163)は、アンダカット又は凹部形状を備えた半径方向横断面を有するスロット又は溝の形式のブレードユニット保持手段(124,147)に嵌合するよう成形された半径方向横断面を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項7】
静止ブレードユニット(16)の半径方向内側プラットフォーム部分(162)は、横断面がT字形であり、T字の横棒が、T字の縦棒の半径方向内方に位置している、請求項6記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項8】
静止ブレードユニット(16)の半径方向外側プラットフォーム部分(163)は、横断面がT字形であり、T字の横棒が、T字の縦棒の半径方向外方に位置している、請求項6又は7記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項9】
半径方向内側ダイアフラムリング(12)及び半径方向外側ダイアフラムリング(14)はそれぞれ、少なくとも2つのセグメント(121,140,141)を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項10】
半径方向内側ダイアフラムリング(12)は、少なくとも4つのセグメントを含む偶数のセグメント(121)を有する、請求項9記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項11】
半径方向外側ダイアフラムリング(14)のセグメント(140,141)は、半径方向外側ダイアフラムリングの直径方向で互いに反対側において、接合平面(J)上で互いに結合される、請求項9又は10記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項12】
半径方向外側ダイアフラムリング(14)のセグメント(140,141)は、静止ブレードユニット(16)の翼の食違い角と一致するスカーフ角(θ)を成す接合平面(J)上で互いに結合される、請求項9から11までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項13】
半径方向外側ダイアフラムリング(14)のセグメント(140,141)は、ボルト継手(18)によって互いに結合される、請求項9から12までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項14】
静止ブレードユニット(16)の半径方向外側プラットフォーム部分(163)及び/又は半径方向外側ダイアフラムリング(14)のブレードユニット保持手段(147)には、軸流タービンダイアフラム(10)の前後における差圧の影響による保持手段(147)に対する半径方向外側プラットフォーム部分(163)の移動に対抗するよう働く停止手段(166,148)が設けられている、請求項1から13までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項15】
半径方向内側ダイアフラムリング(12)の半径方向内側は、シール(127)として構成されているか、又はシールを保持するよう構成されており、このようなシールは、軸流タービンダイアフラム(10)の比較的高圧の側と比較的低圧の側との間の漏れを制限するよう働く、請求項1から14までのいずれか1項記載の軸流タービンダイアフラム。
【請求項16】
請求項9記載の軸流タービンダイアフラムを組み立てる方法であって、
(a)静止ブレードユニット(16)の半径方向外側プラットフォーム部分(163)を、半径方向外側ダイアフラムリングのセグメントの内周面に設けられたブレードユニット保持手段(147)内へ滑り込ませることによって、静止ブレードユニット(16)を半径方向外側ダイアフラムリング(14)のセグメント(141,142)に取り付けるステップであって、これにより、半径方向外側ダイアフラムリングの複数のセグメントを形成し、このような各セグメントは、セグメントに取り付けられた複数の静止ブレードユニット(16)を有する、ステップと、
(b)ブレードユニット保持手段(124)を静止ブレードユニット(16)の半径方向内側プラットフォーム部分(162)上へ滑り嵌めることによって、半径方向内側ダイアフラムリング(12)のセグメント(121)を、半径方向外側ダイアフラムリング(14)のセグメント(140,142)に前記のように取り付けられた静止ブレードユニット(16)の半径方向内側プラットフォーム部分(162)に取り付けるステップであって、これにより、複数の静止ブレードユニット(16)と、該複数の静止ブレードユニット(16)に取り付けられた半径方向内側ダイアフラムリングの少なくとも1つのセグメントとを有する、前記半径方向外側ダイアフラムリング(14)の前記複数のセグメントを形成する、ステップと、
(c)前記静止ブレードユニット(16)と、該静止ブレードユニット(16)に取り付けられた半径方向内側ダイアフラムリング(12)のセグメント(121)とを備えた、前記半径方向外側ダイアフラムリング(14)の別個のセグメント(140,141)を互いに接合することによって、軸流タービンダイアフラム(10)の組立てを完了するステップと、を含むことを特徴とする、請求項9記載の軸流タービンダイアフラムを組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン用のダイアフラムの構成、特に、軸流蒸気タービンにおけるダイアフラムの新規の構造及び組立てプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンダイアフラムを構成する公知の形式は、静止ガイドブレードの環を内側リングと外側リングとの間に取り付けることである。このような各ブレードは、翼部分が内側プラットフォームと外側プラットフォームとの間に延びているブレードユニットを含み、このブレードユニットは1つの構成部材として機械加工される。これは、"プラットフォーム"型構成として知られる。各プラットフォームは、ブレードユニットの環が組み立てられたときに、内側プラットフォームが組み合わさって内側ポート壁部を形成しかつ外側プラットフォームが組み合わさって外側ポート壁部を形成するように、円筒のセグメントの形態を成している。内側プラットフォームは、内側リングに溶接される。内側リングは、タービンブレードを保持し、かつ内側リングとタービンのロータ軸との間で作用するラビリンスシールのようなシーリング配列のための取付部を提供する。外側プラットフォームは、外側リングに溶接され、外側リングは、ダイアフラムに支持及び剛性を提供する。内側及び外側リングのそれぞれは、2つの半円形の半部を含む。半部は、ダイアフラムの主軸線を含みかつブレードユニットの間を通過する平面に沿って、接合され、これにより、ダイアフラム全体を、ターボ機械のロータの周囲への組付けのために2つの部材に分離することができる。
【0003】
HP又はIP蒸気タービンダイアフラム用の既存のプラットフォーム構成は、概して、厚い金属プレートから切断されるか、又は鍛造されるか、又は棒材から成形された中実の内側及び外側リングを含む。大型タービンにおけるこのようなリングは、タービンの軸方向及び半径方向におけるかなりの寸法、例えば100mm〜200mmを有するので、ダイアフラムの構成部材を溶接するコストは、大型蒸気タービンの工場渡し価格における大きな要因である。なぜならば、特に、所要の深溶け込み溶接がダイアフラムの製造のための高度な専門家溶接機器を必要とするからである。さらに、溶接は、ダイアフラムにおける冶金学的欠陥の可能な発生源であり、溶接プロセスによって生ぜしめられたダイアフラムにおける応力を緩和するために、ダイアフラムを熱処理することも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、ダイアフラムの組立てにおける溶接又はその他の金属溶融技術の必要性を完全に排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
最も広い態様において、本開示は、軸流タービンダイアフラムであって、
(a)半径方向内側ダイアフラムリングと、
(b)半径方向外側ダイアフラムリングと、
(c)内側及び外側リングの間に配置された複数の静止ブレードユニットであって、各ブレードユニットは、
食違い角を有する翼部分と、
半径方向内側リングに係合する半径方向内側プラットフォーム部分と、
半径方向外側リングに係合する半径方向外側プラットフォーム部分と、を含む複数の静止ブレードユニットとを含み、
(i)半径方向内側リングには、内側プラットフォーム部分を内側リングに保持するために働くブレードユニット保持手段が設けられており、
(ii)外側プラットフォーム部分は、翼の食違い角と一致した方向に延在しており、
(iii)半径方向外側リングの内周面には、複数のブレードユニット保持手段が設けられており、このような各手段は、静止ブレードユニットの対応する外側プラットフォーム部分に対して相補的な形状及び向きを有し、かつ外側プラットフォーム部分を半径方向外側リングに保持するように働く、軸流タービンダイアフラムを提供する。
【0006】
半径方向外側ダイアフラムリングは、その構造の一部として、ブレードユニットの半径方向外側プラットフォーム部分を有することに注意すべきである。つまり、本概念は、ダイアフラムの半径方向外側ポート壁部が、半径方向外側プラットフォーム部分を含み、周方向で、外側ダイアフラムリングの内周の露出した部分と交互に位置する、ダイアフラム構造を提供する。
【0007】
前記構成は、ダイアフラムの構成部材が、機械的手段のみによって組み立てられかつ互いに保持されることを可能にする。すなわち、溶接又はその他の金属溶融技術を用いることなく、ダイアフラムを構成することができる。
【0008】
好適な実施の形態において、ブレードユニットの半径方向内側プラットフォーム部分は、タービンダイアフラムの周方向に延在しており、半径方向内側リングの外周には、静止ブレードユニットの内側プラットフォーム部分に対して相補的な形状及び向きのブレードユニット保持手段が設けられており、内側プラットフォーム部分は半径方向内側リングに保持される。これにより、この実施の形態において、半径方向内側ダイアフラムリングは、その構造の一部として、ブレードユニットの半径方向内側プラットフォーム部分を含む。つまり、ダイアフラムの半径方向内側ポート壁部は、半径方向内側プラットフォーム部分を含み、この半径方向内側プラットフォームの側方に、軸方向で互いに反対の側(流入側及び流出側)において、内側ダイアフラムリングの外周の露出した部分が位置する。
【0009】
好適な構成は、ダイアフラムの構成部材が、その構成部材の機械的なインターロッキングのみによって組み立てられかつ互いに保持されることを可能にする。
【0010】
空力的な平滑性を維持するために、半径方向内側の延在するプラットフォーム部分の対面する端部は、プラットフォーム部分が周方向でダイアフラムの内側ポート壁部に沿って連続的に延びるように、好適には、内側リングのブレードユニット保持手段に挿入された時に互いに当接させられるべきである。
【0011】
明らかに、寸法及び表面仕上げに関して、ブレードユニットのプラットフォーム部分と、内側及び外側リングのブレード保持手段とは、過剰な空力的な抗力損失を回避するためにダイアフラムの内側及び外側ポート壁部が十分に滑らかとなるように、正確に製造されかつ互いに精密に合致させられるべきである。
【0012】
ブレードユニットを内側及び外側ダイアフラムリングに適切に固定するために、ブレードユニットの半径方向内側プラットフォーム部分及び半径方向外側プラットフォーム部分は、あり溝のようなアンダカット又は凹部形状を備えた半径方向横断面を有するスロット又は溝の形態のブレードユニット保持手段に嵌合するように成形された、半径方向横断面を有する。好適な実施の形態において、ブレードユニットの半径方向内側及び外側プラットフォーム部分は、横断面がT字形である。内側プラットフォーム部分の場合、T字の横棒が、T字の縦棒の半径方向内方に位置決めされるのに対し、外側プラットフォーム部分の場合、T字の横棒がT字の縦棒の半径方向外方に位置決めされる。
【0013】
半径方向内側及び外側のダイアフラムリングは、それぞれ少なくとも2つのセグメントを含む。好適には、内側ダイアフラムリングは、少なくとも4つのセグメントを含む偶数のセグメントを有し、外側ダイアフラムリングは、好適には、2つのセグメントとして構成されている。これらの2つのセグメントは、組立て時に、外側ダイアフラムリングの直径方向で互いに反対側における接合平面において互いに結合される。接合平面が外側ダイアフラムリングにおけるブレードユニット保持手段を通過するのを回避するために、接合平面は、翼の食違い角と同じか又はこれに極めて近いスカーフ角(そぎ落とし角)でピッチングされている。
【0014】
外側ダイアフラムリングのセグメントは、ボルト継手によって互いに結合される。
【0015】
好適には、ブレードユニットの半径方向外側のプラットフォーム部分、又は外側リングのブレードユニット保持手段、又はこれらの両方には、ダイアフラムの両側における差圧の影響による保持手段に対するプラットフォーム部分の移動に対抗するように働く停止手段が設けられている。
【0016】
本概念の別の態様は、以下の説明及び添付の請求項を検討することから明らかになるであろう。
【0017】
ここに開示された概念の実施の形態を添付の図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは、本概念の1つの実施の形態の三次元斜視図であり、組立ての初期段階におけるHP又はIP蒸気タービンダイアフラムの外側リングの下側半分を示している。
図1Bは、
図1Aの一部の拡大図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の蒸気タービンダイアフラムへ組み付ける準備ができたブレードユニットの圧力面の三次元斜視図である。
図2Bは、
図2Aのブレードユニットの負圧面の図である。
【
図3】
図3Aは、HP又はIP蒸気タービンダイアフラムの組立てにおける別の段階を示す図である。
図3Bは、
図3Aの一部の拡大図である。
【
図4】HP又はIP蒸気タービンダイアフラムの組立てにおける別の段階を示す図である。
【
図5】HP又はIP蒸気タービンダイアフラムの組立てにおける別の段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
蒸気タービンダイアフラムは、通常、その構成部材を互いに溶接することにより構成されるが、本概念によれば、
図1A、
図3A、
図4及び
図5は、溶接、又はその他の融着又は接着による金属接合技術を用いることなく構成された高圧蒸気タービンダイアフラム10を示す。まず、主軸線X−Xを有する組み立てられた後のダイアフラムを示す
図5を参照すると、ダイアフラム10は、半径方向内側のダイアフラムリング12と、半径方向外側のダイアフラムリング14と、内側及び外側のリングの間に配置された静止ブレードユニット16の環状の配列とを有する。例示された実施の形態は、大型蒸気タービンのために従来使用されるより頑丈なタイプの構成と比較して、内側のダイアフラムリング12の半径方向厚さが著しく減少された、半径方向でコンパクトなタイプの構成を有するダイアフラムである。実際、以下の説明から明らかになるように、例示された実施の形態の内側のダイアフラムリング12は、有効に、静止ブレードユニット16の全ての内側プラットフォームポート壁面の一部である。しかしながら、ここで検討される概念は、例示されたものよりも半径方向で厚い又は内側プラットフォーム面の一部を形成しない内側リングを有するダイアフラムにも適用可能である。
【0021】
タービンへのダイアフラムの組立てを可能にするために、外側リング14は、2つのセグメント、つまり上側半部141と、下側半部142とで構成されている。2つのセグメントは、接合平面Jにおいて互いに結合される。もちろん、外側リング14のセグメントの数は、ダイアフラム10の費用対効果の高い製造及び組立てのための要求にしたがって設計者により選択される。例示した実施の形態において、接合平面Jはスカーフ角θを有する。すなわち、接合平面は、後述のように、アセンブリの軸方向と一致した状態からずれるように傾斜させられている(軸方向は、ダイアフラムの主軸線X−Xに関して規定される)。接合部は、外側リング14の直径方向で互いに反対側における符号18においてボルト締結される。
【0022】
図1Aに戻ると、ボルト案内スペーサ181,182が、外側ダイアフラムリング14の下側半部142の平らな接合面143,144に設けられた穴183に挿入するために準備された状態で示されている。各ボルト案内スペーサ181,182は、基本的に、ボルト継手18のボルトを通過させるための穴と、穴183への押しばめを可能にする外径とを有する、ダウエルピンから成る。ボルト案内スペーサ181,182は、接合面のスカーフ角度が存在することにより必要となる。
【0023】
図4に示すように、平らな各接合面143,144は、外側リング14の上側半部141に設けられた、相補的に傾斜させられた平らな接合面145,146と係合し、各ボルト案内スペーサ181,182の突出した部分は、外側リング14の上側半部141に設けられた、相補的に寸法決めされた穴184に嵌合する。外側リング14の上側半部141の外周は、リングの接線方向に延びる穴へのボルト185の挿入を可能にするために、リング14の互いに反対側における符号150において特別に凹まされている。各ボルト185の遠位端部186のみにねじ山が設けられており、このねじ山は、外側リング14の下側半部142に設けられた各穴183の、相補的にねじ山が設けられた部分に螺合する。
【0024】
タービンに据え付けられると、外側リングの下側の半部(ひいてはダイアフラム全体)は、技術分野において公知のように、クロスキー位置決め手段140によって、周囲のタービンケーシング(図示せず)内に支持される。
【0025】
再び
図1Aを参照すると、ブレードユニット16は、外側リング14の下側半部142への挿入の準備がなされた状態で示されている。各ブレードユニットは、翼部分161と、半径方向内側リング12に係合する内側プラットフォーム部分162と、半径方向外側リング14に係合する外側プラットフォーム部分163とを有する。溶接、又はその他の融着又は接着剤による金属接合技術を利用することなくダイアフラムの構成部材の相互ロッキングを可能にするために、内側プラットフォーム部分162は内側リング12の周方向に延びているのに対し、外側プラットフォーム部分163は、内側プラットフォーム部分の概して横方向でかつブレード翼の食違い角と一致する方向に延びている。したがって、ダイアフラムが完全に組み立てられると、内側及び外側のプラットフォーム部分162,163は、内側及び外側リング12及び14それぞれにおいて互いに対して有効にクロスキー結合(噛み合い結合)され、これにより、ダイアフラム構造内でブレードユニット16を安定させる。
【0026】
静止ブレードユニット16の外側プラットフォーム部分163を外側リング14と係合した状態に保持するために、半径方向外側リングの内周面には、周方向に角度間隔を置いて配置されたスロットの形式のブレードユニット保持手段147が設けられており、各スロット147は、静止ブレードユニット16の対応する外側プラットフォーム部分163に対して相補的な形状を成している。例示した実施の形態において、外側プラットフォーム部分163は、
図2Aにより明確に示したように、横断面がT字形である。
図1Bからより明確に分かるように、スロット147もT字形であり、T字形の各プラットフォーム部分163は、半径方向外側リング14の内周面における同様のT字形のスロット147に嵌合する。
【0027】
スロット147と、静止ブレードユニット16の外側プラットフォーム部分163とは、横断面がT字形以外、例えばブレードユニットをインターロッキング形式で確実に保持するあり溝状又はその他のアンダカット又は凹部形状であってもよいことを理解すべきである。スロット147と、静止ブレードユニット16の外側プラットフォーム部分163とは、翼161の食違い角と一致する又はそれに近くなるように方向づけられていることも認められるべきである。これにより、平らな接合面143〜146は、接合平面J(
図5)が外側リング14におけるいずれのスロット147も通過しないように、食違い角と同じ又はそれに近い角度で傾斜されていなければならない。
【0028】
図1及び
図5を参照すると、完全に構成されたダイアフラムが、機能するタービンの一部分となった場合、翼161のエッジ164は、ダイアフラムの蒸気入口側における前縁となり、エッジ165は、ダイアフラムの蒸気出口側における後縁となる。これにより、軸方向で翼161の前縁から後縁までダイアフラムの前後で圧力降下が生じる。ダイアフラムの入口側と出口側との間の差圧の影響により静止ブレードユニット16の外側プラットフォーム部分163がスロット147において移動することを防止するために、各外側プラットフォーム部分163の入口端部に、停止手段166が設けられている。例示した実施の形態において、停止手段166は段部として形成されており、この段部は、プラットフォーム部分163の他の部分から半径方向外方へ突出しており、スロット147の入口端部に切り込まれた合致する相補的な段部148(
図1B)に嵌合する。択一的な停止手段、例えばスロット147の出口端部における段部を用いることができ、この段部は、スロットの半径方向外側部分から半径方向内方へ突出しており、外側プラットフォーム部分163の出口端部に切り込まれた合致する相補的な段部に嵌合する。
【0029】
図5の検討に戻ると、外側リング14は、上側の半リング141及び下側の半リング142として形成された2つのセグメントを有するのに対し、内側リング12は、それぞれ90°の円弧である4つのセグメント、すなわち、内側リングの上側半部122における2つのセグメント121と、内側リングの下側半部123における2つのセグメント121とを有する。例示した実施の形態においては、内側リング12は、組立てを容易にするために4つのセグメントから形成されているが、内側リングが、2つのセグメント、すなわち上側半部122及び下側半部123のみを有することも可能である。内側リング12のセグメントの数は、設計者の任意であり、ダイアフラム10の費用対効果の高い製造及び組立てのための要求に一致する。
【0030】
ここで
図3Aを参照すると、内側リング12のセグメント121は、静止ブレードユニット16の組み立てられた半リングの内側プラットフォーム部分162への取付けの準備がなされた状態で示されている。各セグメント121は、セグメントの外周面に設けられた周方向に延びたスロット124として形成されたブレードユニット保持手段を有する。内側プラットフォーム部分162へのセグメント121の取付けは、セグメント121に設けられたスロット124を、静止ブレードユニット16の内側プラットフォーム部分162に滑り嵌めることにより達せられ、スロット124の形状は内側プラットフォーム部分162に対して相補的である。例示した実施の形態において、内側プラットフォーム部分162の横断面は、
図2A及び
図2Bにより明瞭に示したようにT字形であり、これにより、T字形の各プラットフォーム部分162は、内側リング12の外周面に設けられたT字形スロット124の内側に嵌合する。スロット124は、
図3Bにより明瞭に示されている。
【0031】
スロット124と、静止ブレードユニット16の内側プラットフォーム部分162とは、横断面がT字形以外、例えば、ブレードユニットをインターロッキング形式で確実に保持するあり溝状又はその他のアンダカット又は凹部形状であってもよいことを理解すべきである。
【0032】
図3Bの半径方向でコンパクトな実施の形態において、半径方向内側リング12の各セグメント121の半径方向内側は、ダイアフラムがタービンに組み付けられたときにロータに対して直接にシールするためのラビリンスシール127として構成されており、このシールは、ダイアフラムの比較的高圧の側と比較的低圧の側との間の漏れを制限するために必要である。しかしながら、半径方向でよりコンパクトでない構成においては、内側リング12よりも半径方向で厚い内側リング20の断片的な半径方向断面を示した
図6に概略的に示したように、半径方向内側のダイアフラムリングの半径方向内側が、別個のシールを保持するように構成された周方向に延びた凹所を有するのが一般的であり、これにより、別個に形成されたラビリンスシール22の複数のセグメントを、半径方向内側において機械加工されたあり溝状のスロット201又はその他のアンダカット又は凹部形状に支持することができる。内側リング20の半径方向外側は、前述のように、静止ブレードユニット16の内側プラットフォーム部分162によって係合される。当該技術分野において公知のように、ブラシシール又はリーフシールのようなその他のタイプのシールがラビリンスシールに代用されてよい、及び/又はシールがスロット201にばね取付けされるよう構成されてよい。これにより、シールを、内側リング20と、シールが作用するロータ面(図示せず)との間の間隙の変化に対して自動的に調節することができる。
【0033】
蒸気タービンダイアフラム用の従来の形式のプラットフォーム構成では、ブレードユニットは、翼と、内側及び外側のプラットフォームとを完備した1つの構成部材として機械加工される。これにより、プラットフォームがそれぞれの内側及び外側リングに溶接されるとき、内側プラットフォームは組み合わさって内側ポート壁部を形成し、外側プラットフォームは組み合わさって外側ポート壁部を形成する。プラットフォーム構成の本概念は、内側及び外側のブレードプラットフォームが、内側及び外側のダイアフラムリング12,14に設けられた相補的な形状のブレード保持手段124,147に保持される延在した取付手段162,163に減じられるという点において、従来の形式と区別される。組み立てられたダイアフラム10において、ブレードユニット16の半径方向外側プラットフォーム部分163は、ブレード翼161の食違い角と合致する方向に延在するのに対し、ブレードユニット16の半径方向内側プラットフォーム部分162は、内側リング12の周方向に延在する。
図5に示された本概念の実施の形態において、ダイアフラムの半径方向外側ポート壁部は、周方向で互いに交互に位置する、外側ダイアフラムリング14の内周面の露出した部分149と、ブレードユニット16の半径方向外側の延在したプラットフォーム部分163とを含む。対照的に、ダイアフラム10の半径方向内側ポート壁部は、ブレードユニット16の半径方向内側の延在したプラットフォーム部分162を含み、このプラットフォーム部分162の側方に、軸方向で互いに反対の側(流入側及び流出側)において、内側ダイアフラムリング12の外周の露出した部分126(
図3Bも参照)が位置する。延在したプラットフォーム部分162の端部は、内側リング12に挿入されたときに互いに当接し、これにより、内側ダイアフラムリング12の露出した部分126と同様に、プラットフォーム部分162は周方向で内側ポート壁部に沿って連続的に延びる。
【0034】
ダイアフラムの内側及び外側のポート壁部は、過剰な空力的抵抗損失を回避するために十分に滑らかであることが重要であり、このために、ブレードユニットのプラットフォーム部分と、内側及び外側のリングのブレード保持手段とは、寸法及び表面仕上げに関して、正確に製造されかつ互いに精密に合致させられるべきである。
【0035】
ダイアフラム10の組立ての手順をここで図面を参照して説明する。
【0036】
(a)ダイアフラム10の個々の構成部材は、組立ての前に最終的な形状に製造される。
【0037】
(b)外側ダイアフラムリング14の下側半部142について
図1Aに示したように、静止ブレードユニット16は、ブレードユニットの外側プラットフォーム部分163を外側リングの内周面におけるスロット147内へ完全に滑り込ませることによって、外側リング14の上側及び下側の半部に取り付けられる。
【0038】
(c)外側リング14内へのブレードユニット16の挿入の前又は後に、外側ダイアフラムリング14の下側半部142(又は上側半部141)に設けられた穴183に、ボルト案内スペーサ181,182が挿入されてよい。
【0039】
(d)外側リング14の下側半部142について
図3Aに示したように、全ての静止ブレードユニット16が半リングのうちの一方に取り付けられると、内側プラットフォーム部分162は、周方向に延びた連続的な軌道を形成し、内側リング12のセグメント121を収容する準備がなされる。したがって、組立ての次の段階は、セグメントの外周面に設けられたT字形スロット124をブレードユニット16のT字形の内側プラットフォーム部分162上に滑り嵌めることによって内側ダイアフラムリング12の4つのセグメント121をブレードユニット16に取り付けることである。内側リングの下側及び上側の半部がブレードユニット16の内側プラットフォーム部分162に取り付けられると、内側プラットフォーム部分162に対するセグメント121の摺動は、セグメントの端部に回転防止停止手段(図示せず)を挿入することによって防止される。このような停止手段は、例えば、スロット124の端部における段部を含み、この段部は、
図3Aに示したセグメント121が内側プラットフォーム部分162に完全に押し込まれると、ダイアフラムの上半部と下半部との間の接合部に最も近いプラットフォーム部分の端面167に対して当接する。
【0040】
(e)ダイアフラム10の上半部と下半部との両方を互いに独立して組み立てた後、これらは、ボルト案内スペーサ181,182上に外側リング14の上半部141に設けられた穴184を摺動させ、次いで、ボルト185を穴184に挿入し、ボルトを、中空のボルト案内スペーサを通って外側リング14の下半部142に設けられた穴183内へ通過させ、最後にボルトを穴183の底部ねじ山付部分(図示せず)に完全に深く螺入させることによって、
図4に示したように接合させることができる。
【0041】
(f)
図5は、ボルト185を取り外すことによって、タービンへの組み付けのために2つの半部に容易に分割することができる、完全に組み立てられたダイアフラム10を示す。
【0042】
ここで提案された概念の採用は以下の利点を提供する。
・ダイアフラムの組立てにおける溶接又はその他の金属溶融技術の必要性が完全に排除され、その結果、コストが節約され、製造時間が短縮される。
・溶接の排除は、ダイアフラムの構造に生じ得る欠陥原因を排除する。
・ダイアフラムの組立てにおいて通常使用される溶接の種類は、通常、高度で高価なレーザ又は電子ビーム溶接機器を必要とする深溶け込み溶接を含む。したがって、溶接の排除は、タービンダイアフラムの組立てのための製造設備の選択においてより多くの選択肢を提供する。
【0043】
上記実施の形態は、全くの例として説明されており、添付の請求項の範囲において変更を行うことができる。つまり、請求項の広さ及び範囲は、上述の典型的な実施の形態に限定されるべきでない。請求項及び図面を含む明細書に開示された各特徴は、そうでないことが明らかに述べられない限り、同一、同等又は類似の目的を果たす択一的な特徴によって置き換えられてよい。
【0044】
例えば、静止ブレードユニットの半径方向内側プラットフォーム部分が、上述のようなインターロッキング配列の代わりにボルト又は同様のものによって内側ダイアフラムリングに対して保持されるようなダイアフラム組立を想定するができる。
【0045】
文脈が明らかにそうでないことを要求しない限り、説明及び請求項を通じて、"含む"、"含んでいる"及び同様の用語は、排他的又は網羅的な意味とは反対に包括的な意味、すなわち"含むが、限定されない"という意味に解釈すべきである。
【符号の説明】
【0046】
10 タービンダイアフラム
12 内側ダイアフラムリング
121 内側ダイアフラムリングセグメント
122 内側ダイアフラムリングの上側半部
123 内側ダイアフラムリングの下側半部
124 ブレードユニット保持手段(周方向スロット)
126 内側ダイアフラムリングの外周面−露出した部分
127 ラビリンスシール
14 外側ダイアフラムリング
140 クロスキー位置決め手段
141 外側ダイアフラムリングの上側半部
142 外側ダイアフラムリングの下側半部
143〜146 平らな接合面
147 ブレードユニット保持手段(スロット)
148 停止手段(段部)
149 外側ダイアフラムリングの内周面−露出した部分
150 凹部
16 ブレードユニット
161 ブレードユニットの翼部分
162 ブレードユニットの内側プラットフォーム部分
163 ブレードユニットの外側プラットフォーム部分
164 翼前縁
165 翼後縁
166 停止手段(段部)
18 ボルト継手
181,182 ボルト案内スペーサ
183,184 穴
185 ボルト
186 ボルト端部ねじ山付部分
20 内側リング
201 あり溝状のスロット
22 ラビリンスシール
J 外側ダイアフラムリングの接合平面
X−X ダイアフラム主軸線
θ 接合平面スカーフ角/翼の食違い角