(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
(全体構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器全体を示す斜視図である。
図1において、加熱調理器の本体1は上面を開口した箱状の筐体2を備える。筐体2の上側には、ほぼ額縁形状の筐体上枠3が着脱自在に配置される。筐体上枠3の中央にはトッププレート4が配置され、トッププレート4よりも背面側には吸排気口カバー5が配置され、トッププレート4よりも手前側には操作部6aが配置されている。吸排気口カバー5は通気性があり、冷却風の吸気及び排気や調理室11の排気の気流がスムースに通過する。
【0014】
筐体2の内部には、ほぼ箱状の調理室11が設けられており、この調理室11の前面開口を開閉する扉として、筐体2の前面側の中央に調理室扉7が設けられている。調理室扉7は引出し可能に構成されており、調理室扉7を引き出しあるいは押し込むようスライドさせることで、調理室11内に被加熱物を出し入れすることができる。また、調理室扉7は、調理室11内や調理室11自身の清掃等のメンテナンスのため、本体1から着脱可能となっている。
【0015】
また、筐体2の前面側であって調理室扉7の両側には、操作部6bが設けられている。以降の説明において、トッププレート4に設けられた操作部6aと、調理室扉7の両側に設けられた操作部6bとを合わせて、操作部6と称する場合がある。
【0016】
トッププレート4には、鍋等の被加熱物を載置する大まかな位置を示す、右載置部8、中央載置部9、左載置部10の3か所の載置部が印刷等により設けられている。また、トッププレート4には、本体1の動作状態を報知し、また、操作部6からの入力・操作内容等を表示する表示部14が設けられている。表示部14は、各種発光素子や、液晶画面、EL(Electro Luminescence)画面等の表示画面を含んでいる。
【0017】
なお、本実施の形態1で示す調理室11及び操作部6の配置は一例であり、これに限るものではない。例えば、調理室11を筐体2の左右いずれかの側面に寄せて配置してもよいし、操作部6を左右いずれかの側面に寄せて配置してもよい。また、操作部6aと操作部6bのいずれか一方のみ設けてもよい。
【0018】
図2は、誘導加熱調理器のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
図2において、筐体上枠3の背面側の中央に筐体排気口3a、左右に筐体吸気口3bが開口している。筐体排気口3aは、筐体2の内部に形成された冷却風排気風路28に接続されており、この筐体排気口3aから冷却風の排気が行われる。また、冷却風排気風路28内には、調理室11からの排気の通路である調理室排気風路29が配置されている。調理室11からの排気は、調理室排気風路29を介して筐体排気口3aより行われる。なお、誘導加熱調理器の通常の使用状態では、
図1で示したように、筐体排気口3a及び筐体吸気口3bは、吸排気口カバー5で覆われている。
【0019】
トッププレート4の右載置部8と左載置部10の下方であって、筐体2の内部には、それぞれ誘導加熱コイルユニット18が配置されている。誘導加熱コイルユニット18は、誘導加熱コイル19を備えている。なお、以降の説明において、右載置部8に設けられた誘導加熱コイルユニット18と左載置部10に設けられた誘導加熱コイルユニット18とを区別せず、「誘導加熱コイルユニット18」、「誘導加熱コイル19」のように記載する。
また、トッププレート4の中央載置部9の下方であって、筐体2の内部には、ラジエントヒータ20が配置されている。
誘導加熱コイルユニット18及びラジエントヒータ20は、トッププレート4上に載置される鍋などの被加熱物の加熱に使用される。本実施の形態1では、誘導加熱コイルユニット18が、本発明の本体加熱手段に相当する。
【0020】
筐体2の内部において、誘導加熱コイルユニット18及びラジエントヒータ20の下方には、調理室収納部21が区画形成され、この調理室収納部21の内部に調理室11が配置される。
【0021】
(冷却風路と基板ケースユニットの構成)
図3は、誘導加熱調理器の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、及び右載置部8の下方の誘導加熱コイルユニット18を取り外した状態の本体1の斜視図である。また、
図4は、右側の基板ケースユニット22の斜視図を示す。左右の基板ケースユニット22の構成はほぼ対称であって主要部は同様の構成であるので、ここでは、右側の基板ケースユニット22を用いて説明する。
【0022】
図3に示すように、調理室収納部21の両側には、それぞれ、基板ケースユニット22が配置されている。この基板ケースユニット22の内部には、
図4に示すように、冷却ファン26(本体冷却ファン)と、電子回路基板12が納められている。
【0023】
電子回路基板12には、制御手段30、記憶手段31、タイマ32、インバータ回路34、ラジエントヒータ20を駆動する駆動回路20a、冷却ファン26を駆動する駆動回路26a、上方加熱手段38を駆動する駆動回路38a、インバータ回路107(いずれも後述の
図11参照)などを実現する電気回路・電子回路が実装されている。なお、本実施の形態1において、電子回路基板12は本体1の左右にそれぞれ配置される基板ケースユニット22内に配置されているが、これに限るものではなく、必要な回路が機能するよう基板を筐体2内に配置すればよい。電子回路基板12には、発熱を伴い冷却が必要な被冷却物となる部品も含まれ、冷却効率を高めるためのヒートシンク(冷却フィン)を備えるものもある。
【0024】
基板ケースユニット22は、背面側上部に基板ケース吸込口23が設けられ、前面側上部に基板ケース上部吹出口24が設けられている。また、
図4において左側、すなわち基板ケースユニット22が筐体2に設置されたときに調理室収納部21に近接する側の下部には、基板ケース下部吹出口25が設けられている。基板ケースユニット22は、基板ケース吸込口23から前面側上部の基板ケース上部吹出口24、基板ケース下部吹出口25に至る概密閉された風路として形成されている。
【0025】
また、
図3に示すように、両側の誘導加熱コイルユニット18の下方には、それぞれ、チャンバ27が配置されている。チャンバ27の基板ケースユニット22側の側面には、空気の流入口27aが設けられており、この流入口27aには基板ケース上部吹出口24が接続される。また、チャンバ27の上面には、複数の吹出口27bが設けられている。
【0026】
基板ケースユニット22を筐体2に設置すると、基板ケース上部吹出口24は、チャンバ27の流入口27aに接続される。また、基板ケース吸込口23は、筐体吸気口3bに接続される。
【0027】
このような構成において、冷却ファン26の駆動により筐体吸気口3b(
図1参照)から吸い込まれた冷却風は、基板ケース吸込口23から基板ケースユニット22内に流入する。基板ケースユニット22内に流入した冷却風は、電子回路基板12等を冷却しつつ基板ケースユニット22内を通過し、分流される。分流した一方の冷却風は、基板ケース上部吹出口24に接続された流入口27aを介してチャンバ27に流入する。チャンバ27に流入した冷却風は、チャンバ27上面の吹出口27bより吹き出され、上方に配置される誘導加熱コイルユニット18を冷却した後、冷却風排気風路28へ流入する。冷却風排気風路28に流入した冷却風の多くは、筐体排気口3aから筐体2の外部へ排気されるが、冷却風排気風路28は調理室収納部21と同一の空間であるため、調理室11の周囲は冷却風の圧力により高い圧力となり、冷却風の一部は、調理室11内へ流入した後に調理室排気風路29より排気される。
【0028】
また、基板ケースユニット22内で分流される冷却風のもう一方は、基板ケース下部吹出口25から調理室冷却風流入口35(後述の
図5、
図6等参照)に接続され、送風される。
【0029】
(調理室の構成)
図5は、調理室11の外観を示す斜視図である。調理室11背面には、調理室排気風路29が設けられている。調理室排気風路29は調理室11と連通しており、調理室11内で調理時に発生する煙等が排気されるときの排気用通路である。
【0030】
調理室11の天井部である調理室上面43には、調理室11内の被加熱物の温度を検知する温度検知手段として、赤外線検知ユニット36が配置されている。なお、赤外線検知ユニット36については
図9以降で後述する。
【0031】
また、調理室11には、調理室扉7の開閉状態を検知する扉開閉検知手段(
図5には図示せず。
図11参照。)が設けられている。扉開閉検知手段98は、調理室扉7のスライドによる開閉を検知し、検知した情報を電子回路基板12に実装される制御回路へ接続・伝達する。調理室扉7の開閉の検知は、調理室扉7内に磁石を内蔵しておき、調理室扉7がスライドして閉じた時に本体側に設けた磁気検知手段が調理室扉の磁気を検知して、調理室扉7が閉まっていることを検知する。但し、この検知手段は一例であり、光・超音波・電波等の反射や遮断を検知する非接触の検知手段やメカニカルスイッチ等の接触式・機械式の検知手段を用いてもよく、調理室扉7の開閉が検知できる手段を備えていれば検知手段によらず本発明の効果は得られる。
【0032】
調理室11の左右両側の側面には、調理室冷却風流入口35が設けられている。調理室冷却風流入口35は、調理室11の本体左右に配置される基板ケースユニット22の基板ケース下部吹出口25に接続される。そして、基板ケースユニット22の基板ケース下部吹出口25から吹き出される冷却風は、調理室冷却風流入口35を介して調理室11内に流入する。
【0033】
図6は、調理室上面43、調理室扉7、及び付帯部品を取り外した状態の調理室11の斜視図である。
図6に示すように、調理室11の上方には、上方加熱手段38が配置されている。上方加熱手段38は、抵抗発熱体であるシーズヒータを用いている。なお、本実施の形態1においては、上方加熱手段38としてシーズヒータを用いているが、遠赤外線ヒータやフラットヒータで天板を加熱手段としてもよい。また、誘導加熱コイルで天板や抵抗発熱体を発熱させて上方加熱手段38としてもよく、調理室の空間を加熱できる手段であればこれに限るものではない。
【0034】
調理室11の下方には、耐熱絶縁板39が配置されている。耐熱絶縁板39は、セラミックプレートや結晶化ガラス等の耐熱性があり、誘導加熱コイル109(
図7参照)からの磁束を妨げない素材により形成される。
【0035】
耐熱絶縁板39の前方と概同一平面には、冷却風流出口44が配置されている。冷却風流出口44は、耐熱絶縁板39の上方空間(後述する調理空間11a)と下方空間(後述する底部空間45)とを連通させる開口部である。
【0036】
調理室11の内面には、複数の温度センサ37a(
図6では1つの温度センサ37aのみ図示)が設けられている。温度センサ37aは、調理室11内の温度を検知し、検知情報を、電子回路基板12に実装される制御手段30へ出力する。温度センサ37aとしては、白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対等が用いられる。
【0037】
また、調理室11の内面の両側面には、調理室11の手前側から奥側に亘ってスライドレール42aが配置されている。スライドレール42aは、調理室扉7を支持し、開閉時に調理室扉7を案内する。
【0038】
調理室11の背面側の壁には、調理室排気口41が設けられている。調理室排気口41には、調理室排気風路29が接続されている。調理室11内の空気は、調理室排気口41を介して調理室排気風路29を通り、外部に排気される。
【0039】
図7は、調理室上面43、調理室扉7、付帯部品、上方加熱手段38、及び耐熱絶縁板39を取り外した状態の調理室11の斜視図である。
図6で示した耐熱絶縁板39の下方には、底部空間45が設けられている。すなわち、耐熱絶縁板39により上下に区画されて、調理室11には上下2つの空間が形成されている。なお、以降の説明では便宜上、調理室11内の空間を、底部空間45とその上方空間である調理空間11aに分けて説明する場合がある。底部空間45は、耐熱絶縁板39と調理室11の底板とに挟まれた空間であり、本発明の下部区画室に相当する。
【0040】
底部空間45には、調理室11の下方加熱手段として、誘導加熱コイル109を備えた誘導加熱コイルユニット108が配置されている。誘導加熱コイルユニット108の中央には、温度センサ37bが設けられている。温度センサ37bは、耐熱絶縁板39の下面に接触するよう配置されている。温度センサ37bは、検知した温度の情報を、電子回路基板12に実装される制御回路へ出力する。温度センサ37bとしては、白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対等が用いられる。
【0041】
底部空間45は、調理室冷却風流入口35と冷却風流出口44とに連通しており、概密閉な風路を形成している。底部空間45の幅は、配置される誘導加熱コイルユニット108よりも若干大きく、誘導加熱コイルユニット108を収納可能であるとともに、冷却風が誘導加熱コイルユニット108の左右を冷却しつつ通過可能な幅方向の寸法である。また、底部空間45の上下方向の高さは、誘導加熱コイル109の上面に冷却風が接触するように、耐熱絶縁板39との間に通風可能な隙間を設けるとともに、下面にも冷却風が接触するよう誘導加熱コイルユニット108の下方に開口を設けている。これにより、誘導加熱コイルユニット108の上部と下部に通風可能として、誘導加熱コイルの内外周の端部を冷却可能にしている。このような構成において、冷却ファン26の駆動によって調理室11の両側面の調理室冷却風流入口35から流入した冷却風は、調理室冷却風流入口35から中央部への向かって進むダクト35aを経て底部空間45に進入し、底部空間45の後方から前方へ誘導加熱コイルユニット108を冷却しながら流れる。誘導加熱コイルユニット108を冷却して温度が上昇した冷却風は、冷却風流出口44より調理空間11aに流入する。
【0042】
図8は、調理室扉7と波調理プレート46の分解斜視図である。調理室扉7の調理室11側の外周部には、パッキン等の気密部材47が配置されている。調理室扉7が閉められた状態では、調理室11前面開口部の外周に気密部材47が接触して、調理室扉7との隙間からの調理室11内の空気の漏れを抑制する。
【0043】
調理室扉7の調理室11側には、一対のスライドレール42bが設けられている。スライドレール42bは、調理室11側に設けられたスライドレール42aに着脱自在に係合支持される。調理室扉7を引き出すと、スライドレール42aに案内されてスライドレール42bがスライドし、調理室扉7を調理室11から取り出すことができるようになっており、洗浄等のメンテナンスが容易な構造である。
【0044】
一対のスライドレール42bの間には、額縁状の支持部材48が取り付けられている。この支持部材48の上端部には、波調理プレート46等の調理機材が上方から係止され支持される。調理機材は、支持部材48によりスライドレール42bに支持され、さらにこのスライドレール42bは調理室11に設けられたスライドレール42aに支持されることとなる。本実施の形態1では、支持部材48、スライドレール42a、42bが、本発明の調理機材を支持する支持機構に相当する。
【0045】
波調理プレート46は、本実施の形態1に係る調理機材の一例であり、底面が波形に加工された調理皿である。波調理プレート46は、誘導加熱可能な素材で形成され、例えば、鉄、ステンレス、カーボン含有率90%以上の炭素材、導電材料としてSi(シリコン)またはFeSi(フェロシリコン)を含有するセラミック素材等が用いられる。波調理プレート46は、本発明の誘導加熱可能な調理皿に相当する。
波調理プレート46の上面前側には、貯水可能な凹部である貯水部49が設けられており、スチーム調理時のスチームを発生させるための水を貯水可能な構成としている。
【0046】
スチーム調理を行う際には、波調理プレート46の貯水部49に水を貯めた状態で、波調理プレート46を調理室11内に収納する。そして、波調理プレート46の下方に位置する誘導加熱コイル109の誘導加熱により、波調理プレート46を発熱させて貯水部49内の水を加熱し、水蒸気を発生させる。これにより、各種蒸し料理を行うことができる。さらに、上方加熱手段38による加熱を行うことで、発生した水蒸気を過熱水蒸気にし、この過熱水蒸気により被調理物を加熱することもできる。
【0047】
また、波調理プレート46の上面の外周部は、中央よりも高い壁面46aが設けられ、この壁面46aで波調理プレート46の外周が囲まれている。壁面46aにより、波調理プレート46上面での調理で生成される汁気等の液体が、波調理プレート46外へ流出するのを抑制できる。
【0048】
図9は、調理室11のほぼ中央における本体1の側面断面図を示す。
図9は、調理室扉7が閉じられた状態を示しており、調理機材として波調理プレート46を用いる例を示している。
この状態においては、波調理プレート46の底面は、耐熱絶縁板39の上面と接触しており、誘導加熱コイル109からの距離が可能な範囲で最短となるよう配置される。波調理プレート46が耐熱絶縁板39の上面と接触することで、耐熱絶縁板39の下面に接触するよう配置された誘導加熱コイルユニット108の温度センサ37bが、耐熱絶縁板39の伝熱を介して波調理プレート46底面の温度を検知可能になっている。
また、調理室11の側面と背面に設けられた温度センサ37aは、調理室11内の温度を検知する。
【0049】
調理室11の調理室扉7側(
図9において図面右側)の上部であって、調理室収納部21内には、赤外線検知ユニット36が設けられている。調理室上面43の調理室扉7側(
図9において図面右側)には開口部43aが設けられており、この開口部43aに臨むようにして、赤外線検知ユニット36が配置されている。赤外線検知ユニット36は、調理室上面43に設けられた開口部43aより、波調理プレート46に載置される被調理物から放射される赤外線の量を検知し、検知した赤外線量に基づいて被調理物の温度を検知している。
【0050】
なお、本実施の形態1においては、赤外線検知ユニット36を用いて被調理物の温度を検知しているが、側面及び背面に設けた温度センサ37aと、誘導加熱コイルユニット108に設けた温度センサ37bで検知した温度に基づいて、被調理物の温度を算出することも可能である。したがって、赤外線検知ユニット36は調理制御に求められる温度検知の精度により、必要な場合に搭載すればよく、赤外線検知ユニット36を設けなくともよい。
【0051】
調理室排気口41の後方であって、調理室排気風路29の水平部29aには、触媒体40が配置されている。触媒体40には、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Mn(マンガン)のいずれかが添着されており、触媒体40を排気が通過するときに、油煙や臭気成分等の物質を吸着して酸化分解を行い、排気に含まれる汚染物質の一部を浄化する。
【0052】
調理室排気風路29の垂直部29bの底面には、開口部29cが設けられている。開口部29cは、基板ケースユニット22と連通している。したがって、冷却ファン26からの送風の一部がこの開口部29cより流入して、開口部29cはノズルとして機能し、エゼクタ効果によって、調理室11内の空気を調理室排気口41から調理室排気風路29側へ誘引する。
【0053】
なお、本実施の形態1においては、冷却ファン26からの送風でエゼクタ効果により調理室11内の空気を誘引しているが、誘引性能を高めるために専用の送風機を用いて送風を行ってもよいし、排気ファンを設けてファンで調理室11内の空気を直接吸引してもよい。
また、調理室11内には、冷却風流出口44が設けられており、誘導加熱コイルユニット108の冷却後の気流が流入して調理空間11a内部の圧力が高くなることから、この圧力を用いての排気も可能である。この場合は、調理室排気風路29底面の開口部29cは不要となる。
このように、調理室排気風路29により適切な風量の排気が行われ、調理室11内での調理が良好に行えるとともに、煙等の排気が前面扉部から漏れてユーザーが不快感を伴うようなことがない排気が確保される排気手段であれば、排気手段の具体的な構成によらず同様の機能・効果は得られる。
【0054】
図10は、調理室扉7が一部開いた状態の調理室11の中央側面断面図を示す。
スライドレール42a、42bは、耐熱絶縁板39の上面に対して、調理室11背面側が近く、前面側が遠くなる方向の傾斜(すなわち、調理室11の前面側から背面側に向けて徐々に下降する傾斜)で、調理室11の側面に取り付けられている。
図9に示したように、調理室扉7が閉じた状態では、波調理プレート46は耐熱絶縁板39上面と接触する。しかし、調理室扉7が引き出されて開き始めると、スライドレール42aの前面側が耐熱絶縁板39上面から離れる方向に配置されていることから、波調理プレート46等の調理機材の底面は耐熱絶縁板39の上面から離れ、隙間が生じる。すなわち、調理室扉7を引き出しあるいは押し込む途中の過程においては、耐熱絶縁板39と波調理プレート46との間に隙間が生じた状態となる。これにより、耐熱絶縁板39と波調理プレート46の擦れによる磨耗や損傷を抑制することができ、また、調理室扉7をスライド開閉する際に、スムースに移動可能である。
【0055】
スライドレール42a、42bは傾斜しているため、調理室扉7が開かれた状態においては、重力により調理室扉7が閉まる方向へ移動する力が働く。しかし、スライドレールの摩擦係数を適切に設定する、あるいは停止時のロック機構を設けることにより、調理室扉7が自然に閉まってしまうことを回避できる。
【0056】
なお、本実施の形態1においては、耐熱絶縁板39上面を水平に設けるとともに、スライドレール42a、42bを前面側が上昇する傾斜で設けた。しかし、スライドレール42a、42bを水平に設け、耐熱絶縁板39の上面と波調理プレート46の底面の前面側が下降する傾斜となるようにして設け、調理室扉7が閉じられたときに耐熱絶縁板39の上面と波調理プレート46の底面とが接触するように配置してもよい。このようにしても、同様の効果は得られる。
【0057】
また、ここでは、波調理プレート46を例に説明したが、支持部材48に係止される他の調理機材(後述する)においても同様に、調理室扉7が閉じた状態で調理機材の底面が耐熱絶縁板39上面に接触し、開閉動作時には接触しないという同様の効果が得られる。
【0058】
(機能構成)
図11は、実施の形態1に係る本体1の主要部の機能ブロック図である。
図11に示すように、制御手段30は、記憶手段31とタイマ32とを備えている。記憶手段31には、制御手段30が実行する制御シーケンスの制御プログラムが格納されている。制御手段30は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0059】
操作部6には、調理モードを設定するための調理モード設定手段16と、加熱条件設定手段17とを備える。調理モード設定手段16及び加熱条件設定手段17により設定された情報は、制御手段30に出力される。なお、調理モード設定手段16及び加熱条件設定手段17の具体的な構成例については後述する。
また、表示手段15は、本実施の形態1では
図1で示した表示部14に相当する。制御手段30は、誘導加熱調理器の状態やユーザーに対する報知情報などを、この表示手段15により表示させる。
【0060】
右載置部8、中央載置部9、左載置部10では、それぞれトッププレート4に載置された被加熱物13を加熱手段により加熱することができる。本実施の形態1では、右載置部8と左載置部10の加熱手段として誘導加熱コイル19を備え、誘導加熱コイル19に高周波電流を流す駆動回路としてインバータ回路34を備える。インバータ回路34より数十kHz、数百Vの電圧が誘導加熱コイル19に印加され、誘導加熱コイル19に電流が流れる。電流が流れることにより、誘導加熱コイル19から磁力線が発生し、誘導加熱コイル19の概上方に載置される鍋等の被加熱物13に渦電流が生じ、被加熱物13自体が発熱し加熱調理が行われる。また、右載置部8、左載置部10に載置された鍋などの被加熱物13の温度を検知する温度検知手段50aを備える。温度検知手段50aは、例えば誘導加熱コイル19の近傍に設置された赤外線センサ等で構成される。温度検知手段50aの検知情報は、制御手段30に出力される。制御手段30は、操作部6にて設定された情報と、温度検知手段50aからの温度情報に基づいて、記憶手段31に格納された制御シーケンスによりインバータ回路34を制御する。
【0061】
また、中央載置部9の加熱手段として、ラジエントヒータ20を備え、このラジエントヒータ20を駆動する駆動回路20aを備える。制御手段30は、操作部6にて設定された加熱に関する条件に基づいて、駆動回路20aを制御する。
【0062】
次に、調理室11の加熱手段について説明する。調理室11の上方加熱手段38を駆動するための駆動回路として、駆動回路38aを備える。また、調理室11の下方加熱手段である誘導加熱コイル109を駆動するための駆動回路として、インバータ回路107を備える。また、調理室11内の被加熱物または空気温度を検出するための温度検知手段50bと、調理室11内に載置された被加熱物13の底面温度を検知する温度検知手段50cとを備える。本実施の形態1では、温度検知手段50bとして、複数の温度センサ37a及び赤外線検知ユニット36を備え、温度検知手段50cとして、誘導加熱コイルユニット108の中央に設けられた温度センサ37bを備えている(
図9等参照)。
【0063】
制御手段30は、操作部6での設定情報に基づいて、駆動回路38a及びインバータ回路107を制御して調理室11内での被加熱物13の加熱を行う。なお、調理室11内での加熱動作についての詳細は後述する。
【0064】
また、冷却ファン26を駆動させるための回路として、駆動回路26aを備える。制御手段30は、駆動回路26aを制御して、冷却ファン26を動作させる。また、調理室11の調理室扉7の開閉状態を検知する扉開閉検知手段98を備える。扉開閉検知手段98の検知情報は制御手段30に出力され、制御手段30は、例えば調理室扉7が開いている場合には、その情報を表示手段15に出力する、あるいは調理室扉7が開いた状態では調理室11内の加熱を行わない等の適切な制御を行う。
【0065】
なお、インバータ回路34、駆動回路20a、駆動回路26a、駆動回路38a、インバータ回路107は、本実施の形態1では、電子回路基板12に実装される。
【0066】
(操作部、表示部の表示例)
図12は、トッププレート4の手前側に設けられた操作部6aと、表示部14の表示の一例を示す図である。なお、本実施に形態1では、筐体上枠3に設けられた操作部6a及び表示部14の例を示すが、これらの配置はこれに限るものではない。ユーザーが操作・認識可能であれば配置はこれに限るものではなく、本体1前面やリモートコントローラーを用いて本体外に設けてもよい。
【0067】
操作部6aの調理モードキー51と料理メニューキー52は、調理モード設定手段16の一部を構成する。調理機材キー53、自動/手動キー54、スチームキー55、仕上り/火力/温度+キー56、仕上り/火力/温度−キー57、時間+キー58、及び時間−キー59は、加熱条件設定手段17の一部を構成する。スタート/停止キー60は、調理モード設定手段16及び加熱条件設定手段17により設定されたモード及び条件で、加熱の開始を指示するとともに、加熱を停止させるためのキーである。
【0068】
表示部14には、各種設定可能な項目名や設定内容が表示されており、選択された項目名を示す印として、マーカー70a、70b、70c、70d、70e、70fが表示される。
【0069】
調理モードキー51が操作(タッチまたは押す)されると、調理モード表示61のマーカー70aを移動させて、調理モードを「グリル」、「オーブン」、「フライパン」、「煮物 炊飯」、「あたため」から選択する。キーを操作することでマーカー70aは下方へ移動し、最下部まで到達すると最上部へ移動する。このようにマーカー70aを移動させ、マーカー70aの位置により調理モードの選択を行う。
図12では、「煮物 炊飯」が選択されている。
【0070】
料理メニューキー52が操作されると、料理メニュー表示62のマーカー70bが右の項目に移動する。料理メニュー表示62は、調理モード表示61の各項目の右側に、その調理モードに対応する料理メニューが表示されている。マーカー70bの上下方向の位置は、調理モード表示61における調理モードの選択に合わせて移動する。
図12では、調理モードとして「煮物 炊飯」が選択されていることから、料理メニューキー52を操作することで「おでん・ポトフ」、「カレー・シチュー」、「肉じゃが」、「ロールキャベツ」、「白米」、「玄米」のようにマーカー70bが移動し、マーカー70bは右端の項目まで移動すると、左端の項目へ移動する。
図12では、「おでん・ポトフ」が選択されている。
【0071】
調理機材キー53(調理機材選択手段)が操作されると、調理機材表示63のマーカー70cが右方向の項目へ移動し、右端まで移動すると下段の左端に移動し、最下段の右端に移動すると最上段の左端へ移動する。マーカー70cはすべての項目を移動するわけではなく、料理メニュー表示62で選択されている料理メニューに応じて、調理室11内で使用可能な調理機材にのみ移動する。すなわち、料理メニューにより調理室11内で使用不可能な調理機材に対しては、調理機材キー53を操作してもマーカー70cが移動せず、使用可能な次の項目へマーカー70cが移動するので、料理メニューにより使用不可能な調理機材を選択することはできない。
図12のように、料理メニューとして「おでん・ポトフ」が選択されている場合は、調理機材は「専用容器 専用受皿」、「IH用容器 受皿」、「非IH用容器 平調理プレート」が選択可能であり、マーカー70cは、この3項目を移動する。
図12では、「専用容器 専用受皿」が選択されている。
【0072】
自動/手動キー54が操作されると、自動/手動表示64のマーカー70dが移動して、「自動」と「手動」のいずれかが選択される。「手動」の場合は、調理モードとして「あたため」が選択されている場合を除き、仕上り/火力/温度+キー56及び仕上り/火力温度−キー57による仕上り/火力/温度の設定、時間+キー58及び時間−キー59による調理時間の設定、及び、スチームキー55によるスチーム有無の設定が可能である。ユーザーは、「手動」の場合は、これらのキーを操作して各条件を設定し、調理を行うことができる。なお、「手動」の場合には、料理メニュー表示62のマーカー70bは表示されない。「自動」においては、料理メニュー表示62でマーカー70が囲うメニュー項目に応じて、制御手段30が各条件を自動的に設定する。なお、「自動」と「手動」のいずれの設定により調理を行う場合であっても、調理機材キー53による調理機材の設定が可能である。
【0073】
スチームキー55を操作すると、スチームの有無を選択可能な場合、スチーム表示65のマーカー70eが、「有」と「無」とを移動する。料理メニューによってスチームの有無が指定できない場合には、スチームキー55を操作できない。スチームの有無の選択が可能な場合は、マーカー70eが点滅することで、ユーザーにスチーム選択が可能であることを認識させる。
【0074】
仕上り/火力/温度+キー56、仕上り/火力/温度−キー57は、自動調理においては「仕上り」の設定を行う。手動調理において、調理モードが「グリル」、「フライパン」、「煮物 炊飯」の場合には「火力」の設定を行い、調理モードが「オーブン」の場合には「温度」の設定を行うことができる。
【0075】
仕上り/火力表示67においては、仕上り/火力/温度+キー56が操作されると、仕上り/火力表示67のマーカー70fは「強」側へ移動し、仕上り/火力/温度−キー57を操作すると仕上り/火力表示67のマーカー70fは「弱」側へ移動する。
【0076】
設定温度表示66においては、仕上り/火力/温度+キー56が操作されると、設定温度表示66は、オーブン調理の温度範囲である60〜320℃の範囲で10℃ずつ上昇するよう表示を更新し、仕上り/火力/温度−キー57が操作されると、設定温度表示66は10℃ずつ低下するよう表示を更新する。
【0077】
時間+キー58、時間−キー59が操作されると、手動調理において調理時間を設定でき、時間表示68に表示される。時間+キー58を操作すると時間表示68は1分ずつ増加し、時間−キー59を操作すると1分ずつ低下するよう表示が更新される。なお、時間表示68が「00」の状態になると、連続運転を行う。自動運転時は、凡その調理の残り時間が時間表示68に表示される。
【0078】
スタート/停止キー60が操作されると、設定された条件により調理が開始される。また、調理動作中にスタート/停止キー60が操作されると、調理は停止される。動作状態は動作状態表示69に表示される。
【0079】
図12の動作状態表示69は、「おでん・ポトフ」を自動調理で煮込み調理中に、専用容器76からふきこぼれるエラーを赤外線検知ユニット36が検知して調理を自動停止した状態を例示しており、「ふきこぼれ 調理停止」と表示されている。
動作状態表示69には、「前面扉閉め忘れ」といった報知や、「余熱中」、「適温」、「調理中」、「調理終了」等の動作状態が必要に応じて表示される。
【0080】
ここで、波調理プレート46を調理機材として使用する場合を例に、各種調理モードでの調理例を説明する。本実施の形態1では、調理モードとして、調理方法により分類される「グリル」、「オーブン」、「フライパン」、及び「煮物 炊飯」と、「あたため」の5種類の調理モードを備えている。本実施の形態1では、波調理プレート46は、これら調理モードのうち「グリル」、「オーブン」、「フライパン」、「あたため」の調理機材として選択可能であるが、このほか多くの調理モードに対応できる。
【0081】
「グリル」においては、被調理物である魚等の食材を波調理プレート46に直接載置して調理を行う。「グリル」においては、誘導加熱コイル109駆動により波調理プレート46を発熱させるとともに、上方加熱手段38を動作させ、波調理プレート46上の被調理物を直接的に加熱する。このようにすることで、加熱効率を高め、小電力かつ短時間での加熱が可能になり、低消費電力で調理できる。被調理物を載置する波調理プレート46上面の凹凸により、調理時に食材から生成される油や汁気を凹部に溜めることができるので、食材の油や汁気によるベタつきや煮たような調理効果となることを抑制して、パリッとした食感や良好な調理効果・仕上りとしている。
【0082】
「オーブン」においては、グラタン皿やアルミホイル等の調理容器に食材を収納し、この調理容器を波調理プレート46に載置して加熱を行う。「オーブン」においては、誘導加熱コイル109の駆動により、波調理プレート46を介して調理容器へ熱伝導させるとともに、空気からの熱伝達により調理を行う。波調理プレート46は、調理容器へ熱伝導させるための加熱源としても機能するが、調理室11内の空気の加熱にも効果を発揮する。すなわち、例えばパイプ状のヒータと異なり、波調理プレート46は広い電熱面積を有するので、効率よく周囲の空気を加熱することができる。このため、調理室11内の温度ムラを少なくして比較的均一に加熱調理することができる。
【0083】
「フライパン」においては、下方は波調理プレート46の誘導加熱により、上方加熱手段38からの輻射と調理室11内の空気からの熱伝達が行われる。すなわち、上下両面からの加熱が可能である。通常のフライパン調理では被調理物をひっくり返すユーザーの調理作業が必要であるが、調理室11内での「フライパン」調理は、このような調理作業が不要となる。また、調理室11の側面・背面に配置される温度センサ37aから検出される調理時の温度変化や、上方に配置される赤外線検知ユニット36により検出する被調理物の表面温度と、記憶手段31に格納された制御シーケンスに基づき、制御手段30は、タイマ32による調理時間を含めた上方加熱手段38や誘導加熱コイル109の制御を行い、フライパン調理の自動調理(
図12の料理メニュー表示62参照)を行う。
【0084】
「あたため」は、再加熱調理の自動調理メニューのくくりであり、調理モードは「グリル」、「オーブン」、「フライパン」調理のいずれかと同様の調理となる。したがって、波調理プレート46を調理機材として使用する場合は、上記と同様の調理となる。
【0085】
また、波調理プレート46の上面前側には、貯水部49が設けられており、スチーム調理時のスチームを発生させるための水を貯水可能としている。この貯水部49に水を貯めた状態で、「グリル」、「オーブン」、「フライパン」調理のいずれかと組み合わせ、スチーム調理を行うことができる。
【0086】
次に、本実施の形態1に係る調理機材の例と、これを用いた加熱調理例について説明する。
【0087】
(焼網 波調理プレート)
図13は、調理機材表示63の「焼網 波調理プレート」を選択した場合に使用する調理機材111を示す。
「焼網 波調理プレート」の調理機材111は、波調理プレート46と、その上に載置される焼網72とを組み合わせて構成される。焼網72の上に被調理物を載置して、調理室11で調理を行う。
【0088】
図14は、
図13の調理機材111を収納した状態の調理室11の中央側面断面図である。波調理プレート46と焼網72とを組み合わせた調理機材111は、主にグリル調理に用いられ、魚の姿焼きや切身・干物、つけ焼き、とり肉などの被調理物が焼網72上に載置されて調理される。
【0089】
被調理物の上面は、上方加熱手段38の発熱により輻射加熱される。また、被調理物の下面は、波調理プレート46が下方の誘導加熱コイル109の誘導加熱で発熱することにより輻射加熱される。また、上方加熱手段38と波調理プレート46の発熱は、調理室11内の空気に伝達されて調理室11内の温度を上昇させ、高温となった空気を介した熱伝達により、被調理物が加熱調理される。
【0090】
同様の加熱は、
図9に示す波調理プレート46のみでも可能であるが、調理の仕上りは異なる。すなわち、調理機材111では、焼網72上に被調理物を載置するので、被調理物の下面が調理機材に接触する面積が少なくなり、被調理物下面のベタツキを抑制でき、よりパリッとした食感とすることができる。
【0091】
本実施の形態1では、制御手段30は、料理メニュー表示62で同一の項目(例えば「姿焼き」)が選択されている場合でも、調理機材表示63で選択される項目(調理機材)によって異なる調理制御が行われる。すなわち、制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された制御シーケンスを選択し、その制御シーケンスに従って加熱制御を行う。このため、例えば「姿焼き」が選択されている場合において、調理機材が波調理プレート46のみの場合と、調理機材が波調理プレート46と焼網72の組み合わせの場合とでは、異なる調理制御が行われる。
【0092】
調理機材が波調理プレート46のみの場合は、波調理プレート46上に被調理物を載置することから、焦げ付きを抑制する温度制御を行う。また、波調理プレート46表面から被調理物に直接熱伝導するので、少ない発熱で短い時間で調理する制御となる。
一方、調理機材が波調理プレート46と焼網72との組み合わせの場合は、被調理物は波調理プレート46と接触せず間接的な加熱となることから、比較的大きな発熱と長い時間での調理制御となる。また、波調理プレート46は加熱源として機能するとともに、受皿としても機能し、被調理物から流れ出た油分を保持する。このため、油分の発火温度よりも低い温度になるよう、耐熱絶縁板39の下面に接触する温度センサ37bの検知温度に基づいて、制御手段30により火力が制御される。
【0093】
波調理プレート46のみの調理か、波調理プレート46と焼網72を組み合わせた調理かは、ユーザーの食の嗜好により選択されればよい。調理後の清掃・メンテナンスにおけるユーザーの負荷は、波調理プレート46と焼網72とを組み合わせて用いた方が増えるが、このことを含め、どちらの調理機材を用いるかは各ユーザーが判断すればよい。このように、複数の加熱方法(調理機材)に対応し、選択可能とすることで、多くのユーザーのニーズを充足することができる。他の調理機材の選択においても同様の効果は得られる。
【0094】
(焼網 受皿 ヒータ)
図15は、調理機材表示63の「焼網 受皿 ヒータ」を選択した場合に使用する調理機材112を示す。
「焼網 受皿 ヒータ」の調理機材112は、焼網72、受皿73、及びヒータ74を組み合わせて構成される。受皿73の上にヒータ74を載置するとともに、焼網72がヒータ74の上に位置するようにして焼網72を受皿73の上に載置し、この焼網72上に被調理物を載置して、調理室11で調理を行う。
【0095】
図16は、
図15の調理機材112収納した状態の調理室11の中央側面断面図である。焼網72、受皿73、ヒータ74を組み合わせた調理機材112は、主にグリル調理に用いられ、魚の姿焼きや切身・干物、つけ焼き、とり肉などが調理される。
【0096】
焼網72は、被調理物を載置する調理台であり、少ない接触面積で被調理物を支えることで、下方の発熱体(ヒータ74)からの輻射を遮る量を少なくし、輻射熱をより多く被調理物に到達させる。また、焼網72の網目により、調理時に被調理物から生ずる汁気・油分を下方の受皿73にスムースに流すことができる。
【0097】
受皿73は、セラミック等の耐熱性と電気絶縁性のある素材で形成され、下方の誘導加熱コイル109からの磁束を上方に減衰少なく通過させる。なお、受皿73は、本発明の誘導加熱されない受皿に相当する。
【0098】
ヒータ74は、電磁誘導可能な素材で一体的に形成され、一つのループとして構成されている。ヒータ74は、受皿73に接する下部74aと、受皿73から離れた上部74bとでは、電気抵抗が異なる。下部74aは抵抗値が低く発熱しにくく、上部74bは発熱に適した抵抗値を持たせてある。下方の誘導加熱コイル109によってヒータ74の下部74aに誘導起電力を生じさせ、その電流を抵抗の高いヒータ74の上部74bに流すことにより、ヒータ74を抵抗発熱体として機能させ、加熱源としている。なお、ヒータ74は、本発明の誘導加熱可能な閉回路線材に相当する。
【0099】
このような構成の調理機材112を用いて加熱する際には、被調理物の上面は上方加熱手段38の発熱により輻射加熱され、下面はヒータ74の上部が発熱することにより輻射加熱される。また、上方加熱手段38とヒータ74の発熱は、調理室11内の空気に伝達されて調理室11内の温度を上昇させ、高温となった空気を介した熱伝達により、被調理物は加熱調理される。
【0100】
制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された調理シーケンスを選択し、調理シーケンスに従って加熱制御を行う。したがって、調理機材表示63の「焼網 受皿 ヒータ」が選択された場合は、ヒータへの給電・加熱に適切な制御シーケンスが記憶手段31から選択されて加熱制御が行われる。
【0101】
グリル調理は、
図9に示す波調理プレート46や
図13に示す焼網72と波調理プレート46の組み合わせでも可能であるが、調理効果・仕上りは異なる。
波調理プレート46を用いる場合は、波調理プレート46に被調理物からの油分が溜まることから、発火を抑えるため、制御手段30は加熱温度を低めに制御する。
一方、ヒータ74は受皿73に接しない上部のみを発熱させるため、制御手段30は波調理プレート46のみの場合より比較的高温に加熱制御し、より短時間での調理ができる。このため、被調理物の表面を素早く加熱することが可能となり、よりパリッとした調理効果・仕上りを得ることができる。
【0102】
焼網72と波調理プレート46により構成される調理機材111に比べ、調理機材112はヒータ74の分だけ清掃・メンテナンスの手間は増えるといえる。しかし、従来の加熱調理器のようにヒータ74を調理室11から容易に取り外せない構造と比べると、調理機材112は、ヒータ74を調理室11から取り出してメンテナンスができるので、メンテナンス性はよい。
【0103】
(焼網 受皿 遠赤ヒータ)
図17は、調理機材表示63の「焼網 受皿 遠赤ヒータ」を選択した場合に使用する調理機材113を示す。
「焼網 受皿 遠赤ヒータ」の調理機材113は、焼網72、受皿73、及び遠赤ヒータ75を組み合わせて構成される。受皿73の上に遠赤ヒータ75を載置するとともに、焼網72上に被調理物を載置して調理室11で調理を行う。
【0104】
図18は、調理機材表示63の「焼網 受皿遠赤ヒータ」の調理機材113を用いて調理を行う場合の調理室11の中央側面断面図を示す。
焼網72、受皿73、遠赤ヒータ75を組み合わせた調理機材113は、主にグリル調理に用いられ、魚の姿焼きや切身・干物、つけ焼き、とり肉などが調理される。
【0105】
遠赤ヒータ75は、耐熱性と電気絶縁性のある素材で形成される本体75aと、本体75aの上部に設けられた遠赤セラミックヒータ75bと、本体75aの下部に内蔵された受電コイル75cとを備えている。遠赤セラミックヒータ75bと受電コイル75cは、少なくとも一つの閉回路を構成するよう、電気的に接続されている。本実施の形態1では、本体75aは平たい環状に構成されており、この本体75aの環状とほぼ同軸に受電コイル75cが巻き回されて内蔵されている。また、遠赤セラミックヒータ75bは、本実施の形態1では2本設けられている。
【0106】
このような構成において、誘導加熱コイル109に高周波電流を供給することにより、誘導加熱コイル109を給電コイルとして機能させ、その磁束により受電コイル75cに誘導起電力を生じさせ、その電力を遠赤セラミックヒータ75bに通して抵抗発熱体として発熱させる。これにより、遠赤セラミックヒータ75bの表面から遠赤外線を放射させる。
【0107】
制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された調理シーケンスを選択し、調理シーケンスに従って加熱制御を行う。したがって、調理機材表示63の「焼網 受皿 遠赤ヒータ」が選択された場合は、受電コイル75cへ給電するのに適切な制御シーケンスが記憶手段31から選択されて加熱制御が行われる。
【0108】
被調理物の上面は上方加熱手段38の発熱により輻射加熱され、下面は遠赤セラミックヒータ75bが発熱することにより遠赤外線で輻射加熱される。また、上方加熱手段38と遠赤セラミックヒータ75bの発熱は、調理室11内の空気に伝達されて調理室11内の温度を上昇させ、高温となった空気を介した熱伝達により、被調理物は加熱調理される。
【0109】
グリル調理は、
図9、
図13、
図15に示す調理機材の構成においても可能であるが、調理効果・仕上りは異なる。
遠赤セラミックヒータ75bを用いることで、遠赤外線調理効果を得ることができ、より短時間で被調理物の表面を加熱することができる。このため、外はパリッと中はジューシーといった調理効果・仕上りを得ることができる。
なお、シーズヒータ等の表面に遠赤外線放射体を塗布したものであっても、初期的には遠赤外線効果は得られる。しかし、被調理物からの汁気や油分・塩分等の付着による腐食・劣化や、ヒータ素材と赤外線放射体の熱膨張係数の違いと調理に伴うヒートサイクルによる機械的なストレスとに基づく剥離等により、長期的に持続して遠赤外線調理効果を得ることは難しい。また、前述のヒータ74においても、異なる素材を一体的にループ状に形成することは困難である。
しかし、この遠赤ヒータ75は、遠赤セラミックヒータ75bと受電コイル75cを分離して接続することで遠赤外線調理を可能としている。受電コイル75cを独立させることで給電効率が高まり、より省エネとなり消費電力量を低減することができる。
また、遠赤ヒータ75を容易に調理室11から取り出すことができるので、清掃性・メンテナンスが容易に行え、長期的に安定して使用できるとともに衛生性も確保される。
【0110】
(専用容器 専用受皿)
図19は、調理機材表示63の「専用容器 専用受皿」を選択した場合に使用する調理機材114を示す。
「専用容器 専用受皿」の調理機材114は、専用容器76と専用受皿77とを組み合わせて構成される。専用容器76内に被調理物を収納して、この専用容器76を専用受皿77の上に載置して、調理室11で調理を行う。
【0111】
専用受皿77の底面中央には、開口部77aが設けられており、この開口部77aに専用容器76が概隙間なく係止される。係止する開口部77aには、専用容器76と概隙間なく接触する形状の凸部77bが外周に亘って設けられている。
【0112】
図20は、調理機材表示63の「専用容器 専用受皿」の調理機材114を用いて調理を行う場合の調理室11の中央側面断面図を示す。
専用容器76、専用受皿77を組み合わせた調理機材114は、主に調理モード表示61の「煮物 炊飯」調理モードに用い、料理メニュー表示62の「おでん・ポトフ」等の煮物や「白米」の炊飯等に用いられる。
【0113】
専用容器76は、電磁誘導可能な素材で形成され、専用受皿77に係止される。専用受皿77は、スライドレール42bに取り付けられた支持部材48に係止される。したがって、専用受皿77と専用容器76は、調理室扉7の閉動作に合わせて調理室11に収納される。収納動作時は、スライドレール42aが傾斜して取り付けられているために専用容器76の底面は耐熱絶縁板39の上面は離れており擦れることなく移動するが、スライドレール42aの傾斜により収納されるとともに両者の距離は近づき、収納完了時(調理室扉7を閉じたとき)には、専用容器76の底面は耐熱絶縁板39の上面と接触する。
【0114】
専用容器76の底面と耐熱絶縁板39の上面とが接触することにより、下方の誘導加熱コイル109との距離は最短となり、加熱効率が高まる。また、耐熱絶縁板39の上面と専用容器76の底面とが接触することにより、下方の温度センサ37bは、耐熱絶縁板39を介して専用容器76の底面の温度を応答性良く検知することができる。
【0115】
なお、専用受皿77は、セラミック等の耐熱性と電気絶縁性のある素材で形成されており、専用容器76の誘導加熱を妨げることはない。
【0116】
調理室11内の煮込み調理においては、専用容器76の底部は誘導加熱コイル109により誘導加熱され、上方は上方加熱手段38の発熱により輻射加熱される。また、専用容器76の周囲は、加熱された調理室11内の空気からの熱伝達により加熱される。
【0117】
制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された調理シーケンスを選択し、調理シーケンスに従って加熱制御を行う。したがって、調理機材表示63の「専用容器 専用受皿」が選択された場合は、専用容器76の加熱に適切な制御シーケンスや、専用容器76表面の放射率に応じた赤外線検知ユニット36の検出値に基づく温度算出手段が選択される。
【0118】
調理開始から沸騰までの間は、高い出力で加熱されるが、沸騰した後の煮込みの過程では、焦げ付きを抑えるため、専用容器76の底面及び調理室内の空気温度は120℃以下になるよう制御手段30により制御される。例えば、トッププレート4の載置部に鍋等を載置して加熱する場合には、鍋の底面から加熱を行うだけであるため、鍋内部の被調理物に加熱ムラが生じて均一な調理効果を得られないことがあり得る。しかし、本実施の形態1では、周囲の空気からの熱伝達によって専用容器76全体が加熱され、比較的均一な調理効果を得ることができる。
【0119】
また、専用容器76の温度検知は、底面においては誘導加熱コイルユニット108に設けられた温度センサ37b、上面と側面においては上方の赤外線検知ユニット36及び背面・側面の温度センサ37aの検出値と、タイマ32からの時間情報による空気温度の変化・投入火力からの算出値が、温度検知の情報として用いられる。
例えば、トッププレート4の載置部に鍋等を載置して加熱する場合には、鍋等の底面の温度を検知するだけであるので、調理容器の温度ムラの検出が困難であった。しかし、本実施の形態1によれば、専用容器76の上面及び側面の温度検出が可能となり、さらには周囲の空気温度の情報も得ることができ、より精度の高い温度検知が行える。これにより、例えば専用容器76の底面と側面に温度ムラが生じる場合は、上方加熱手段38と誘導加熱コイル109の出力を制御することにより、加熱ムラを軽減する制御ができる。
【0120】
沸騰状態の検出においても同様に、上方の赤外線検知ユニット36による上面・側面の温度検出データを用いて判定している。また、背面・側面の温度センサ37aの検出値と、タイマ32からの時間情報による空気温度の変化・投入火力からのデータで沸騰を推測してもよい。本実施の形態においては赤外線検知ユニット36を用いているが、沸騰を検知する手段として、湿度センサや蒸気センサを用いてもよいし、背面・側面の温度センサ37aの検出値とタイマ32からの時間情報による空気温度の変化・投入火力からのデータで沸騰を推測してもよい。例えば、トッププレート4の載置部での調理では鍋等の底面からの温度情報のみでは、このような沸騰検出も困難である。
【0121】
また、赤外線検知ユニット36は、専用容器76の表面温度の変化を検知することができるため、内部の被調理物である液体が吹き出して専用容器76の表面の温度が低下する現象を捉え、これより専用容器76からのふきこぼれを検知してもよい。そして、ふきこぼれを検知した場合には、調理動作を停止するとともに動作状態表示69に「ふきこぼれ 調理停止」の表示を行い、安全性の確保とふきこぼれによる清掃の手間を軽減している。
【0122】
(IH用容器 受皿)
図21は、調理機材表示63の「IH用容器 受皿」が選択された場合に使用する調理機材115を示す。
「IH用容器 受皿」の調理機材115は、IH用容器78と受皿73とを組み合わせて構成される。IH用容器78内に被調理物を収納し、このIH用容器78を受皿73の上に載置して、調理室11で調理を行う。
【0123】
IH用容器78は、誘導加熱可能な市販の鍋等の調理容器であって、受皿73に載置した状態で調理室11内に収納できる大きさであるとともに、その上面も耐熱性のある素材で構成されているものであればよく、
図21に示すIH用容器78に限定するものではない。
【0124】
図22は、調理機材表示63の「IH用容器 受皿」の調理機材115を用いて調理を行う場合の調理室11の中央側面断面図を示す。
IH用容器78を受皿73に載置して調理室11に収納すると、受皿73の底面と耐熱絶縁板39の上面は接触する。これにより、IH用容器78の底面と下方の誘導加熱コイル109との距離は最短となり、加熱効率が高まる。また、耐熱絶縁板39の上面とIH用容器78の底面とが接触することにより、下方の温度センサ37bは、耐熱絶縁板39と受皿73とを介してIH用容器78の底面の温度を検知することができる。
【0125】
専用容器76と専用受皿77との組み合わせである調理機材114と比較すると、調理機材114は耐熱絶縁板39に調理容器である専用容器76が直接接触するのに対し、調理機材115は受皿73がIH用容器78の間に挿入される。このため、誘導加熱コイル109とIH用容器78との距離が広がって加熱効率が低下することや、温度センサ37bは受皿を介して温度検知するため応答性が低下することが考えられる。しかし、市販の誘導加熱可能な調理容器に対応することで、ユーザーが所有する既存の調理容器を使用可能となり、調理容器による調理効果・仕上りの違いによる選択肢を広げることができ、より多様なユーザーニーズに対応することができる。
【0126】
制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された調理シーケンスを選択し、調理シーケンスに従って加熱制御を行う。したがって、調理機材表示63の「IH用容器 受皿」が選択された場合は、IH用容器78と受皿73の加熱に適切な専用の制御シーケンスが選択される。この専用の制御シーケンスは、耐熱絶縁板39とIH用容器78との間に受皿73が介在するという調理機材の違いに起因した加熱効率や、温度センサ37bによる応答性・精度に対応した制御シーケンスとなっている。
【0127】
また、IH用容器78と受皿73の組み合わせである調理機材115を用いる場合の調理モードは、前述の調理機材114(専用容器76と専用受皿77の組み合わせ)と同様である。なお、調理モードに対応する料理メニューは、調理機材114(専用容器76と専用受皿77の組み合わせ)に専用のものもある。また、同一の調理モード及び料理メニューであれば、調理機材115を用いる場合と調理機材114を用いる場合とで使用する加熱手段は同じであり、また、調理動作や温度検知の仕組み等も同様である。
【0128】
(非IH用容器 平調理プレート)
図23は、調理機材表示63の「非IH用容器 平調理プレート」が選択された場合に使用する調理機材116を示す。
「非IH用容器 平調理プレート」の調理機材116は、非IH用容器79、平調理プレート71を組み合わせて構成される。非IH用容器79内に被調理物を収納し、この非IH用容器79を平調理プレート71の上に載置して、調理室11で調理を行う。
【0129】
非IH用容器79は、誘導加熱可能が不可能な例えば市販の土鍋等の調理容器等であって、平調理プレート71に載置した状態で調理室11に収納できる大きさであるとともに、上面も耐熱性のある素材で構成しているものであればよく、
図23に示す非IH用容器79に限定するものではない。
【0130】
平調理プレート71は、誘導加熱可能な素材で形成され、例えば、鉄、ステンレス、カーボン含有率90%以上の炭素材、導電材料としてSi(シリコン)またはFeSi(フェロシリコン)を含有するセラミック素材等が用いられる。平調理プレート71は、本発明の誘導加熱可能な調理皿に相当する。
【0131】
図24は、調理機材表示63の「非IH用容器 平調理プレート」の調理機材116を用いて調理を行う場合の調理室11の中央側面断面図を示す。
非IH用容器79を平調理プレート71に載置して調理室11に収納すると、平調理プレート71の底面と耐熱絶縁板39の上面は接触する。これにより、平調理プレート71の底面と下方の誘導加熱コイル109との距離が最短となり、加熱効率が高まる。また、耐熱絶縁板39の上面と平調理プレート71の底面とが接触することにより、下方の温度センサ37bは、平調理プレート71の底面の温度を検知することができる。そして、非IH用容器79の温度は、平調理プレート71の温度に基づいて算出される。
【0132】
制御手段30は、料理メニュー表示62で選択された料理メニューと、調理機材表示63で選択された調理機材の組み合わせに基づいて、記憶手段31に格納された調理シーケンスを選択し、調理シーケンスに従って加熱制御を行う。したがって、調理機材表示63の「非IH用容器 平調理プレート」が選択された場合は、非IH用容器79を平調理プレート71の加熱に適切な制御シーケンスが選択される。この専用の制御シーケンスは、耐熱絶縁板39とIH用容器78との間に受皿73が介在するという調理機材の違いに起因した加熱効率を考慮した制御シーケンスとなっている。また、上記したように、温度センサ37bの応答性・精度に対応した温度算出を行う。
【0133】
専用容器76と専用受皿77との組み合わせである調理機材114と比較すると、調理機材116では、平調理プレート71を誘導加熱コイル109で誘導加熱して発熱させ、その発熱により非IH用容器79を加熱する。このため、専用容器76が直接発熱して内部の被調理物を加熱するのと比較すると加熱効率は低下すること、平調理プレート71の温度検知により非IH用容器79の温度を算出するため温度の検知精度が低下することが考えられる。しかし、誘導加熱不可能な様々な市販の調理容器に対応することができ、ユーザーの食の嗜好により調理容器による調理効果・仕上りの違いによる選択肢を広げることができ、より多様なユーザーニーズに対応することができる。
【0134】
また、IH用容器78と受皿73の組み合わせである調理機材116を用いる場合の調理モードは、前述の調理機材114(専用容器76と専用受皿77の組み合わせ)と同様である。なお、調理モードに対応する料理メニューは、調理機材114(専用容器76と専用受皿77の組み合わせ)に専用のものもある。
また、同一の調理モード・料理メニューであれば、調理機材116を用いる場合と調理機材114を用いる場合とで使用する加熱手段は同じである。
【0135】
(全体動作)
次に、この誘導加熱調理器の全体的な動作概要を説明する。誘導加熱調理器は、操作部6に対してユーザーからの操作を受けると、電子回路基板12に実装された制御手段30の制御により、加熱調理を行う。具体的には、制御手段30は、加熱対象となる加熱口の誘導加熱コイル19やラジエントヒータ20を駆動し、トッププレート4に載置された鍋などの被加熱物を加熱する。また、調理室11での加熱調理の操作が行われると、制御手段30は、調理室11の上方加熱手段38や誘導加熱コイル109を駆動し、加熱調理を行う。
【0136】
調理室11においては、調理モードとして「グリル」、「オーブン」、「フライパン」、「あたため」を備え、調理モード設定手段16により設定される。制御手段30は、設定された調理モードに対応する制御シーケンスを記憶手段31から呼び出し、その制御シーケンスにより調理制御を行う。設定された調理モードに基づいて調理動作を行うことは、上記した通りである。
【0137】
各調理モードにおいては、「自動」と「手動」のいずれか選択された条件で加熱調理を行う。「手動」の場合は、加熱条件設定手段17により設定された調理機材や仕上りなどの加熱条件に基づいて、制御シーケンスが記憶手段31より呼び出され、この制御シーケンスに従って制御手段30が加熱制御を行う。また、「自動」の場合は、調理モード設定手段16により選択された料理メニューと、加熱条件設定手段17により設定された火力または仕上りと、調理機材とに基づいて、制御シーケンスが記憶手段31より呼び出され、この制御シーケンスに従って制御手段30が加熱制御を行う。「手動」と「自動」のいずれが設定された場合でも加熱条件設定手段17による調理機材の設定が可能であり、
図8、
図13〜
図24で説明した通り、使用する調理機材に対応した制御シーケンスが記憶手段31より呼び出され、制御手段30が調理機材に対応した加熱制御を行う。なお、加熱条件設定手段17の設定については、
図12で説明した通りである。
【0138】
以上のように本実施の形態1によれば、調理室11の下方には高周波電流を流して加熱する誘導加熱コイル109を備えた。そして、調理機材として、誘導加熱可能な調理皿である波調理プレート46または平調理プレート71、誘導加熱可能な専用容器76、誘導加熱可能な受皿である平調理プレート71と非IH用容器79、誘導加熱可能な受皿である波調理プレート46と焼網72、誘導加熱されない受皿73と誘導加熱可能なIH用容器78、誘導加熱されない受皿73と誘導加熱可能な閉回路線材のヒータ74と焼網72、及び、誘導加熱されない受皿73と受電部である受電コイル75cとそれに接続される抵抗発熱体である遠赤セラミックヒータ75bを備える遠赤ヒータ75と焼網72、のいずれかを調理室内に収納して調理を行うことができる。このように、食材等を載置する調理機材の少なくとも一部を、下方加熱手段によって直接発熱させることができるので、応答性に優れ、調理開始時の昇温速度が速く、調理時間の短縮に繋がる。また、火力制御の応答性が良くきめ細かな調理制御が行えるので、良好な調理効果を得ることができ、また、間接加熱に比べてエネルギーロスを低減できるので消費電力量の低下に繋がり、省エネルギー化と環境負荷低減に資する。
【0139】
また、調理室11内に上方加熱手段38を備え、設定された条件に基づいて上方加熱手段38と誘導加熱コイル109の両方で加熱する構成とした。このため、調理室11内の被加熱物を比較的均一に加熱できる。したがって、加熱ムラの少ない良好な調理効果を得ることができる。
【0140】
また、複数の調理機材に対応し、使用する調理機材を選択する調理機材キー53を設け、制御手段30は、選択された調理機材に基づいて記憶手段31に格納された制御シーケンスにより加熱制御を行う。このように、複数の調理機材に対応できるので、調理機材に応じた調理効果・仕上りが得られる。したがって、ユーザーの多様な食の嗜好を充足させることができ、また、清掃・メンテナンスの軽減の効果を得られる、多機能な誘導加熱調理器とすることができる。
【0141】
また、調理機材として、誘導加熱可能なものや誘導加熱されない受皿を組み合わせることができる。このため、同じ調理モードや料理メニューであっても、調理機材を変えることで異なる調理効果が得られ、多様なユーザーの嗜好に応じることができる高機能の誘導加熱調理器とすることができる。
【0142】
また、波調理プレート46、平調理プレート71、専用容器76、IH用容器78においては、誘導加熱により直接発熱して被調理物である食材を加熱することから加熱効率が高まり、短時間で調理が可能になるとともに消費電力量が低減でき高性能で環境負荷の低い誘導加熱調理器とすることができる。
【0143】
また、波調理プレート46、平調理プレート71においては、誘導加熱による発熱により載置された被加熱物である食材は下方からフライパンと同様な調理効果が得られる。これに加え、上方加熱手段38からの輻射と室内空気を介しての伝熱により、輻射による受熱部と空気接触部は加熱される。したがって、フライパン調理でありながら、ユーザーが被調理物を裏返すなどの操作をしなくても被加熱物全体が加熱調理されユーザーの調理作業が不要となり家事労働が軽減され高機能の誘導加熱調理器とすることができる。
【0144】
また、専用容器76、IH用容器78、非IH用容器79においては、誘導加熱により容器底面が直接発熱して内部の被調理物である食材を加熱するとともに、上方加熱手段38からの輻射と室内空気を介しての伝熱により容器の上面・側面が加熱されることから、内部の被調理物は加熱ムラ少なく調理され比較的均一な調理効果・仕上りが得られることから高い調理性能の誘導加熱調理器とすることができる。
【0145】
また、調理室扉7は、スライドレール42aの軌道に従って開閉するとともに、収納される調理機材は開閉動作に伴い調理室扉7と一体的に移動する。そして、調理室扉7が開いた状態において調理機材は調理室11外へ着脱可能である。また、調理室扉7が閉じた状態において調理機材である波調理プレート46、平調理プレート71、専用容器76、受皿73の底面は、スライドレール42の軌道により下方の誘導加熱コイル109と最短となる所定の間隔で配置される。このため、調理機材が着脱自在なことにより調理の作業性と清掃性・メンテナンス性が向上するという効果を得ることができる。また、誘導加熱コイル109と誘導加熱コイル109により誘導加熱される調理機材とが最短となる所定の間隔で配置されることで、加熱効率が高まる。このように、清潔性を保つことができて長期間使用可能であるとともに、省エネであって環境負荷の低い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0146】
また、調理室11の調理空間11aの底面を耐熱絶縁板39で形成するととともに、耐熱絶縁板39の下面には温度検知手段50である温度センサ37bを備えた。そして、調理室扉7を閉じた状態においては、波調理プレート46、平調理プレート71、専用容器76、受皿73の底面は、耐熱絶縁板39の上面に接触するように構成した。このため、温度センサ37bは、耐熱絶縁板39を介した熱伝導により、耐熱絶縁板39上面に接触する調理機材の温度を検知することかできる。さらに、検知した温度に基づいて、誘導加熱コイル109の火力を制御して調理機材の温度制御を行うので、適切な調理効果・仕上りが得られるとともに、焦げ付きやふきこぼれを抑制する制御ができる。
【0147】
また、調理室扉7の開閉動作中には、波調理プレート46、平調理プレート71、専用容器76、受皿73の底面は、スライドレール42a、42bの軌道により、耐熱絶縁板39の上面に接触しない。このため、耐熱絶縁板39と調理機材底面との不要な磨耗が抑制され、耐熱絶縁板39と調理機材の破損が軽減され、長期間使用が可能になる。また、調理室扉7の開閉動作をスムースに行うことができ、調理作業性が向上する。このように、調理性能が高く、長寿命で作業性の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0148】
また、誘導加熱可能な調理皿である波調理プレート46に貯水部49を設け、貯水部49に貯水した状態で加熱調理が可能な構成とした。そして、下方の誘導加熱コイル109の誘導加熱により波調理プレート46を発熱させて貯水部49内の水を加熱し、水蒸気を発生させるとともに、この水蒸気を上方加熱手段38で加熱して過熱水蒸気にして調理を行うようにした。
このように、誘導加熱により波調理プレート46を発熱させて水を加熱するので、加熱効率が高まり短時間で水蒸気を発生させることができる。したがって、調理時間を短縮できるとともに消費電力量を低減できる。
また、過熱水蒸気により加熱を行えるので、過熱水蒸気の効果で被調理物である食材の表面に水蒸気が凝縮し、この凝縮熱により短時間で被調理物の表面温度を昇温させることができる。したがって、調理時間を短縮することができる。
さらに、中華まんや餃子などの蒸し調理が行え、料理メニューの種類を増やすことができる。
このように、省エネでの短時間調理が行え、調理メニューの多い高機能の誘導加熱調理器とすることができる。
【0149】
また、耐熱絶縁板39の底面と誘導加熱コイル109の上面との間には、通風可能な隙間を設けるとともに、誘導加熱コイル109が配置される底部空間45には、冷却風の流入口である調理室冷却風流入口35と流出口である冷却風流出口44とを設けた。また、調理室冷却風流入口35は冷却ファン26に接続されるよう構成した。そして、冷却ファン26を駆動させると、調理室冷却風流入口35が冷却風流出口44よりも高い圧力となり圧力差が生じることから、調理室冷却風流入口35から冷却風流出口44に向かう気流が生じて、冷却風が底部空間45を流れる。したがって、本実施の形態1によれば、冷却風により調理室11内の誘導加熱コイル109を効果的に冷却することができる。
【0150】
一般に、誘導加熱コイルは、高周波電流が流れることによる誘導加熱コイル109の自己発熱や、調理室11内の空気や調理機材の熱の耐熱絶縁板39を介した熱流入により、誘導加熱コイル109は高温となり、コイル表面を覆う絶縁体は劣化しうる。また、誘導加熱コイルユニット108を構成する部品も同じく熱により軟化等が生じうる。このようにコイル表面の絶縁体の劣化や構成部品の軟化等が生じると、機能が損なわれてしまう。
しかし、本実施の形態1によれば、冷却風により効果的に誘導加熱コイル109を冷却することができるので、温度上昇による劣化を抑制できる。これにより、安定的な調理動作を確保することができるとともに、部品・製品の劣化速度を抑えることができ、信頼性・安全性が高く長寿命な誘導加熱調理器とすることができる。
【0151】
また、電子回路基板12やトッププレート4下方の誘導加熱コイル19を冷却する冷却ファン26を備えた。そして、冷却ファン26により生成される気流を、調理室冷却風流入口35を介して底部空間45内の誘導加熱コイル109に通風させる構成とした。このため、調理室11用の冷却ファンを設ける必要がなく、部品コスト・組み立てコストが不要で低コストに誘導加熱調理器を製造できる。また、調理室11用の冷却ファンを設ける必要がないので、軽量化・省スペース化により、実装効率を高くすることができる。このように、軽量で実装効率の高い安価な誘導加熱調理器とすることができる。
【0152】
また、底部空間45に誘導加熱コイル109を配置して、流出口である冷却風流出口44からの排気を調理室11の調理空間11aに流入させる構成とした。
ここで、冷却風流出口44から調理空間11aに流入する空気の温度は、誘導加熱コイル109を冷却した後の空気であることから、室温よりも高い温度となっている。
したがって、誘導加熱コイル109を冷却したことにより高温となった排気を、調理室11の調理空間11aに流入させることで、誘導加熱コイル109冷却時の廃熱が、調理空間11a内で利用される。このため、調理空間11aにおける加熱効率を高めることができるので、調理時間が短縮でき、消費電力量を低減することもできる。このように、調理性能が高く環境負荷が低い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0153】
また、調理室11に赤外線検知ユニット36を設け、調理室11内の被加熱物の温度の検出を行う構成とした。そして、温度検知結果に基づいて、制御手段30により加熱手段である上方加熱手段38や誘導加熱コイル109を制御するようにした。このように、波調理プレート46や平調理プレート71上に載置される被調理物である食材の温度や、専用容器76・IH用容器78・非IH用容器79などの調理容器の上面や側面の温度を検知するので、食材の表面温度により調理制御や調理終了判定の精度を向上させることができる。また、調理容器の温度ムラを検知して、制御手段30が上方加熱手段38や誘導加熱コイル109を制御することにより、調理容器内の温度ムラを抑制することのできる加熱制御を行うことができる。このようにすることで、ムラの少ない良好な調理効果・仕上りを得ることができる。このように、高度な調理制御と高い調理性能の誘導加熱調理器とすることができる。
【0154】
また、操作部6に調理モードを選択するための調理モードキー51と、調理機材を選択するための調理機材キー53を設けた。そして、制御手段30は、選択された調理モードと調理機材とに応じた制御シーケンスを記憶手段31から呼び出し、耐熱絶縁板39の温度センサ37b、調理室11壁面の温度センサ37a、赤外線検知ユニット36のいずれかまたはすべての検知温度に基づいて、調理室11の上方加熱手段38と誘導加熱コイル109の出力を制御するようにした。このため、制御手段30は、選択された調理モードや調理機材に応じて、各種検知温度をフィードバックし、温度制御を含めた調理制御を行うことが可能となる。例えば、「グリル」調理モードの料理メニューであれば、輻射による調理の比重が高く輻射による伝熱を主にコントロールする制御を行うことができる。また、例えば、「オーブン」調理モードの料理メニューであれば、空気を介した熱伝達による比重が高く調理室11内の空気温度を主にコントロールする制御とすることができる。このように、調理モードに応じた適切な調理制御を行うことで良好な調理効果・仕上りが得られるので、調理性能の高い誘導加熱調理器とすることができる。
【0155】
また、調理モードとして「フライパン」調理モードを設け、調理モードキー51にて「フライパン」調理モードを選択可能とした。そして、「フライパン」調理モードが選択された場合には、制御手段30は、記憶手段31に格納されたフライパン調理の制御シーケンスを呼び出し、この制御シーケンスにより加熱制御を行うようにした。フライパン調理の制御シーケンスにおいては、波調理プレート46または平調理プレート71の下方の誘導加熱コイル109による加熱と、上方加熱手段38による加熱とを行うこととした。このため、下方からの熱と、上方加熱手段38からの輻射と、調理室11内の空気からの熱伝達とにより、フライパン調理にて両面調理を行うことができる。このため、加熱中にユーザーが被調理物を裏返すことなく両面加熱を行うことができ、ユーザーの調理作業を軽減することができる。
また、調理室11の側面・背面に配置される温度センサ37aから検出される調理時の温度変化や、上方に配置される赤外線検知ユニット36により検出する被調理物の表面温度より、制御手段30は、上方加熱手段38や誘導加熱コイル109の制御を行うようにした。また、制御手段30は、タイマ32による調理時間の制御も行うようにした。このため、温度検知手段50の情報に基づいて制御手段30が底面の焦げ付きを抑制する温度制御を行うことで、良好な調理効果を得ることができる。このように、ユーザーの家事労働を軽減できるとともに、フライパン調理が可能な高機能な誘導加熱調理器を得ることができる。
【0156】
また、調理モードとして「煮物 炊飯」調理モードを設け、調理モードキー51にて「煮物 炊飯」調理モードを選択可能とした。そして、「煮物 炊飯」調理モードが選択された場合には、制御手段30は、記憶手段31に格納された煮物・炊飯調理の制御シーケンスを呼び出し、この制御シーケンスにより加熱制御を行うようにした。煮物・炊飯調理の制御シーケンスにおいては、誘導加熱コイル109による加熱と、上方加熱手段38による加熱とを行うこととした。このため、下方からの熱と、上方加熱手段38からの輻射と、調理室11内の空気からの熱伝達とにより、容器の下面のみならず、上面及び側面からも加熱することができる。したがって、煮物・炊飯調理においては、容器全体からの加熱により、加熱ムラが軽減できるとともに、短時間調理が行える。
また、温度センサ37a、温度センサ37b、及び赤外線検知ユニット36により、調理室11内の温度、調理容器の底面、上面、側面等の温度を検知して、制御手段30がこれらの検知結果に基づいて加熱手段を制御して温度制御を行う。制御手段30は、加熱ムラをさらに抑制する制御や、焦げ付きふきこぼれを抑制する煮物・炊飯に適した温度制御を行うことで、良好な調理効果を比較的均一に得ることができる。このように、良好な煮物・炊飯調理が行える高機能な誘導加熱調理器とすることができる。
【0157】
また、赤外線検知ユニット36を設け、赤外線検知ユニット36により専用容器76、IH用容器78、非IH用容器79の表面温度の変化を検知する構成とした。そして、制御手段30は、調理容器内部の被調理物である液体等が吹き出して調理容器の表面の温度が低下する現象を捉え、調理容器からのふきこぼれと判定すると、調理動作を停止するようにした。このため、ふきこぼれの拡大を抑制でき、安全性を高めることができるとともに、ふきこぼれによる調理室11内部の清掃の手間を軽減することができる。また、ふきこぼれと判定した場合には、動作状態表示69に「ふきこぼれ 調理停止」の表示を行うようにしたので、ユーザーにふきこぼれの発生を報知でき、ユーザーに適切な対応を促すことができる。このように、安全性の確保とふきこぼれによる清掃の手間を軽減することから、安全性が高く省メンテナンスの誘導加熱調理器とすることができる。
【0158】
また、温度センサ37aと赤外線検知ユニット36により調理室11内の温度や被調理物の温度を検知して、検知結果に基づいて加熱制御を行う。このため、調理機材の底面温度のみを検知する従来技術と比較して、よりきめ細かな調理制御や自動調理が可能となり、高い調理性能と多様な調理機能を実現できる。
【0159】
実施の形態2.
図1、
図25〜
図35を用いて、実施の形態2を説明する。本実施の形態2では、調理室11の構成の一部が前述の実施の形態1と異なる。本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0160】
(全体構成)
図25は、実施の形態2に係るトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
実施の形態1では、中央載置部9の下方にはラジエントヒータ20が配置されていたが、本実施の形態2においては、誘導加熱コイル19を備えた誘導加熱コイルユニット18が配置されている。なお、本実施の形態2では、右載置部8、中央載置部9、及び左載置部10に設けられた3つの誘導加熱コイル19が、本発明の本体加熱手段に相当する。
また、実施の形態1で設けた調理室排気風路29に代えて、調理室排気風路129が設けられている。
【0161】
(調理室と吸排気の構成)
図26は、実施の形態2に係る調理室11の斜視図である。
図26に示すように、調理室排気風路129は、調理室11の背面に設けられたファンケーシング82に接続されている。なお、調理室排気風路129は、筐体上枠3の筐体吸気口3bに接続される構成については実施の形態1の調理室排気風路29と同様である。
【0162】
図27は、実施の形態2に係る、調理室上面43と、付帯部品を取り外した状態の調理室11の斜視図である。
図27に示すように、調理室11の背面には、実施の形態1で示した調理室排気口41を備えていない。しかし、調理室11の背面の中央には、調理室吸気口83が設けられ、背面の中央上部とその左右には、調理室吹出口84が設けられている。調理室吸気口83は、調理室11内に調理機材が収容されたときに、調理機材の近傍に位置するように設けられている。
【0163】
図28は、実施の形態2に係る、調理室上面43と付帯部品と上方加熱手段38と耐熱絶縁板39とを取り外した状態の、調理室11の斜視図である。
図28に示すように、底部空間45には誘導加熱コイルユニット108が配置され、実施の形態1で説明したものと同様の冷却風路が形成されている。
【0164】
また、調理室11の両側面には、実施の形態1で示したスライドレール42aに代えて、スライドレール142aが取り付けられている。スライドレール142aは、耐熱絶縁板39の上面と平行に取り付けられている点が、実施の形態1のスライドレール42aと異なる。また、スライドレール142aの上側には、スライドレール142aの長手方向に沿うようにして、溝部を形成するスライドガイド85が設けられている。
【0165】
図29は、実施の形態2に係る調理室扉7と付帯部品の斜視図である。
調理室扉7には、スライドレール142bが固定されている。
スライドレール142bと支持部材48には、両者を縦方向に接続する前リンク86と後リンク87とが取り付けられている。スライドレール142b、支持部材48、前リンク86、及び後リンク87は、全体として平行四辺形の四節リンクを構成している。これらの接続部分においては、回転軸により回転自在に接合されている。後リンク87の上部には、支持部材48の外方向に向かって突出するガイドピン88が設けられている。このガイドピン88は、
図28で示したスライドガイド85の溝部に挿入される。また、ガイドピン88には、回転自在なローラーが設けられている。ガイドピン88がスライドガイド85内を移動する際には、このローラーが回転することで、スライドガイド85とガイドピン88との摩擦を軽減し、摺動性を高めている。
【0166】
また、実施の形態1と同様に、調理室扉7の調理室11側の外周部には、気密部材47が配置されている。調理室扉7が閉められた状態では、調理室11前面開口部の外周に気密部材47が接触して、調理室扉7と調理室11内からの空気の漏れを抑制する構成となっている。
【0167】
図30は、実施の形態2に係るファンケーシング82と調理室排気風路129と付帯部品の斜視図である。また、
図31は、実施の形態2のファンケーシング82と付帯部品の背面側の斜視図である。
ファンケーシング82内には、調理室ファン89が設けられている。調理室ファン89には、遠心ファンが用いられている。この遠心ファンである調理室ファン89の吸込口近傍は、調理室吸気口83(
図28、
図29参照)の背面側に位置するよう配置される。ファンケーシング82と調理室11の背面は概密閉に接合されており、風路としても機能する。
【0168】
ファンケーシング82の背面には、駆動手段90が備えられている。駆動手段90は電誘導モーター等の電動機が用いられ、その回転軸はファンケーシング82内の調理室ファン89に接合されている。駆動手段90が動作することにより、回転軸を介して調理室ファン89が回転する。
また、ファンケーシング82の背面には、ファンケーシング排気口91が設けられている。
図30に示すように、このファンケーシング排気口91は調理室排気風路129と連通するようにして配置される。このため、調理室ファン89が吸引した調理室11内の空気の一部は、ファンケーシング排気口91を介して調理室排気風路129に流入し、本体1外へ排気される。
【0169】
図32は、実施の形態2に係る本体1の主要部の機能ブロック図である。
中央載置部9下方の誘導加熱コイル19と調理室11下方の誘導加熱コイル109の下方を駆動するインバータ回路134は、少なくとも一部の回路を共用しており、排他的に使用される。誘導加熱コイル19と誘導加熱コイル109の特性の違いにより、共振コンデンサ等の一部回路は共用されず、駆動する誘導加熱コイル(誘導加熱コイル19または誘導加熱コイル109)により切り替えられる。誘導加熱コイル19と誘導加熱コイル109は、制御手段30に制御されて時分割で駆動される。
【0170】
また、本実施の形態2では調理室ファン89を備えており、この調理室ファン89を駆動するための回路として駆動回路89aが設けられている。駆動回路89aは、制御手段30により制御される。
【0171】
(操作部、表示部の構成)
図33は、トッププレート4の手前側に設けられた操作部6aと、表示部14の表示の一例を示す図である。
操作部6の操作と操作に伴う動作は基本的に実施の形態1と同じであるが、本実施の形態2では、コンベクションキー92が設けられるとともに、コンベクション表示93が設けられている点が、実施の形態1と異なる。コンベクションキー92は、調理室ファン89の動作の有無を設定するための入力手段である。
【0172】
コンベクションキー92を操作すると、コンベクション表示93のマーカー70gが「入」、「切」の順に移動し、マーカー70gの位置の項目を選択することができる。このコンベクションキー92は、調理室ファン89の入り/切りの動作を選択するための選択手段である。
【0173】
コンベクション表示93の「入」の加熱条件では、調理室ファン89は動作・回転して、調理室11内に循環による気流を生じさせる。また、コンベクション表示93の「切」の加熱条件では、調理室ファン89は停止して動作せず循環による気流を生じず、実施の形態1と同様となる。
自動調理においては、調理モードと料理メニューにより、コンベクションの入り切りが固定されるものと選択可能なものがある。コンベクションの入り切りを選択可能な場合には、マーカー70gを点滅させるので、ユーザーに識別させることができる。また、手動調理においては、どの調理モードであってもコンベクションの入り切りが選択できる。
【0174】
図34は、実施の形態2の本体1の側面断面図を示す。
図35は、実施の形態2に係る、調理室扉7が一部開いた状態の調理室11の側面断面図を示す。
調理室扉7が閉じられた状態においては、支持部材48に係止される調理機材の底面が耐熱絶縁板39の上面に接して収納されるよう、支持部材48は下降している。すなわち、前リンク86と後リンク87がほぼ垂直に向き、スライドレール142bにより支持部材48が吊り下げられた状態となっている。
【0175】
スライドガイド85の溝の背面端は上昇方向に曲げられており、後リンク87のガイドピン88は、この形状に沿って移動する。このため、スライドレール142bと支持部材48は前リンク86と後リンク87による四節リンクが動作して支持部材48は平行に下降する。
【0176】
図35に示すように、調理室扉7が閉まった状態から調理室扉7を引き出し始めると、調理室扉7とともに支持部材48が移動する。そして、後リンク87のガイドピン88は、支持部材48の後端部に追随するようにして、スライドガイド85の溝の傾斜する形状に沿って移動する。このため、調理室扉7が開いた状態においては、前リンク86と後リンク87は傾き、支持部材48は係止される調理機材の底面が耐熱絶縁板39の上面から離れて開閉動作するよう上昇している。このようにすることで、スライドレール42と支持部材48は前リンク86と後リンク87による四節リンクが動作して支持部材48は平行に上昇して耐熱絶縁板39の上面との隙間を生じさせる。
【0177】
また、
図34に示すように、調理室11の調理室吸気口83の背面側(
図34において図面左側)には、遠心式のファンである調理室ファン89が配置される。また、調理室11の背面であって、調理室ファン89の上方に、調理室吹出口84が位置している。
【0178】
このように構成された実施の形態2の調理室11は、コンベクション表示93に「切」と表示されている場合には、調理室ファン89は動作せず、実施の形態1と同様の調理動作を行うことができ、また、同様の効果を得ることができる。
【0179】
これに加え、実施の形態2においては、コンベクション表示93に「入」と表示されている場合には、調理室11における加熱調理中に調理室ファン89を動作させて以下に示す動作を実現する。
【0180】
ここで、
図27、
図28、
図34を参照して、本実施の形態2における調理室11の空気の循環動作について説明する。
まず、調理室11と調理室扉7との間は、気密部材47によって空気の漏れが抑制されている。このため、調理室ファン89を動作させると、調理室吸気口83から調理室11内の空気がファンケーシング82内の調理室ファン89側に吸い込まれ、吸い込まれた空気は、調理室ファン89の遠心方向に吹き出される。この吹き出された空気の一部は、調理室ファン89の上方に吹き出され、その気流の一部が分流されて、調理室ファン89の上方に位置する調理室吹出口84(
図34参照)から調理室11内へと吹き出される。すなわち、調理室11内の空気が、調理室吸気口83から調理室11外へ出て、再び調理室吹出口84から調理室11内へ戻るという空気の循環が発生する。このような気流が発生することで、調理室11内の高温の空気がいったん外部へ出た後、調理室11内に戻ることとなり、高温の空気から被加熱物である調理容器や食材への熱伝達が促進される。このため、加熱効率が向上してより短時間での調理が可能となる。
【0181】
また、調理室ファン89から分流された気流のうち他の一部(すなわち、調理室吹出口84から調理室11内へ戻らない気流)は、ファンケーシング排気口91から調理室排気風路129に流入して、触媒体40にて排気成分の一部を浄化して汚れが軽減された後、本体1外へ排気される。このようにすることで、よりスムースに調理室11からの排気を行うことができる。
【0182】
なお、調理室ファン89が停止した状態においても、冷却ファン26からの冷却風が冷却風流出口44より調理室11内に流入すると、その圧力により、調理室吸気口83や調理室吹出口84から調理室11内の空気が押し出される。この押し出された空気は、ファンケーシング82を通過し、ファンケーシング排気口91を介して調理室排気風路29に流入して本体1外へ排気される。このように、調理室ファン89が停止した状態であっても、調理室11内の排気を行うことができる。
【0183】
なお、本実施の形態2では、調理室扉7のスライド開閉手段として、スライドレール142a、142b、スライドガイド85、前リンク86、後リンク87、ガイドピン88を設けた。このようにしても、調理室扉7が閉じた状態において、調理室11に収納された状態の調理機材の底面を耐熱絶縁板39に接触させることができる。したがって、実施の形態1と同様に、調理機材の底面が耐熱絶縁板39に接触することにより加熱効率を高めることができ、また、接触による伝熱で温度検知をする動作を実現でき、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0184】
また、実施の形態1で用いた調理機材111〜調理機材116は、本実施の形態2においても使用可能であり、同様の調理動作を実現でき、同様の効果を得ることができる。
【0185】
以上のように本実施の形態2によれば、調理室11内の空気の少なくとも一部を循環させる調理室空気循環手段として調理室ファン89と、駆動手段90と、調理室吸気口83と、調理室吹出口84とを備え、調理室扉7と本体1の隙間の少なくとも一部に気密保持手段である気密部材47を備えた。そして、誘導加熱可能な平調理プレート71や波調理プレートの近傍に、調理室空気循環手段の流入口である調理室吸気口83を設けた。このようにすることで、調理室吸気口83から流入する気流を、誘導加熱された平調理プレート71や波調理プレート46などの調理機材へ接触させて加熱し、この加熱した空気を吸引することができる。このため、誘導加熱により短時間で昇温された気流を、平調理プレート71や波調理プレート46などに接触させて加熱することができる。平調理プレート71や波調理プレート46は、パイプ状のヒータ等よりも表面積が広いので、このような表面積の広い物に気流を接触させることで、空気温度を効率よく短時間で上昇させることができる。そして、この高温化した空気の熱が被調理物に接触することで、被調理物を加熱することができる。
【0186】
また、調理室ファン89の駆動に伴う調理空間11aの空気の循環により、平調理プレート71や波調理プレート46に載置される調理食材や、専用容器76・IH用容器78・非IH用容器79の表面への熱伝達が促進される。このため、さらに短時間での調理が可能になる。
また、調理室ファン89の駆動により、調理室11の調理空間11aの空気が撹拌され、不均一な温度分布が緩和される。このため、加熱ムラが軽減されて調理効果・仕上りの均一化が促進される。
このように、短時間調理や良好な調理効果・仕上りが得られ、また、高性能であるとともに省エネで環境負荷の低い誘導加熱調理器とすることができる。
【0187】
また、トッププレート4の中央載置部9下方の誘導加熱コイル19と調理室11下方の誘導加熱コイル109の駆動手段を構成するインバータ回路134の少なくとも一部の回路を共用する構成とした。これにより、部品点数・回路面積を削減でき、部品コスト・組み立てコストを低減することができる。また、回路の共用により省スペース化でき、他の機能部品を実装することも可能となるので、安価で実装効率に優れた多機能の誘導加熱調理器を得ることができる。
【0188】
実施の形態3.
図1、
図36〜
図45を用いて、実施の形態3を説明する。本実施の形態3では、調理室11の構成の一部が前述の実施の形態2と異なる。本実施の形態3では、実施の形態2との相違点を中心に説明する。
【0189】
(全体構成)
図36は、実施の形態3に係るトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
本実施の形態3においては、実施の形態2で設けた調理室排気風路129に代えて、実施の形態1で示した調理室排気風路29が設けられている。
【0190】
(調理室の構成)
図37は、実施の形態3の調理室11の斜視図である
前述の実施の形態2においては、調理室排気風路129は調理室11背面に設けられたファンケーシング82に接続されていたが、本実施の形態3においては、調理室11背面のファンケーシング82とは異なる部分において、調理室11の背面に直接接続されている。
【0191】
図38は、実施の形態3の調理室11の調理室上面43と付帯部品を取り外した状態の斜視図である。
図38に示すように、調理室11背面には、実施の形態2では設けられていなかった調理室排気口41が、左上方背面に設けられている。この調理室排気口41は、実施の形態1と同様に、調理室排気風路29に接続されている。冷却風流出口44から調理室11へ流入する冷却風により、調理室11内の空気は、調理室排気口41から調理室排気風路29へ押し出され、本体1外へ排出される。
【0192】
調理室11の背面右角には、赤外線検知ユニット236aが配置されている。赤外線検知ユニット236aは、調理室11内に載置される被調理物から放射される赤外線の量を検知し、検知した赤外線量に基づいて被調理物の温度を検知している。
【0193】
調理室11の底面に配置された耐熱絶縁板39には、窓部94が設けられている。そして、この窓部94の下方にも、赤外線検知ユニット236bが配置されている(
図39参照)。窓部94は、窓部94の上方に収納される調理機材底面から放射される赤外線の少なくとも一部を透過している。なお、耐熱絶縁板39全体が、赤外線の少なくとも一部を透過する構成であれば、窓部94は設けなくともよい。
【0194】
調理室11の両側面に設けられたスライドレール242aは、耐熱絶縁板39と概平行に設置されている。なお、実施の形態2で設けたスライドガイド85は設けられていない。
【0195】
図39は、実施の形態3の調理室11の調理室上面43と付帯部品と上方加熱手段38と耐熱絶縁板39を取り外した状態の斜視図である。
底部空間45に誘導加熱コイルユニット108が配置され、冷却のための風路が形成されている点は、実施の形態2と同様である。しかし、冷却のための風路は一部変更されており、右側面の調理室冷却風流入口35から上方に向かう風路121が設けられ、その風路121内に、赤外線検知ユニット236aが配置されている。
【0196】
また、誘導加熱コイルユニット108の中心部には、実施の形態2において設けられていた温度センサ37bに代えて、実施の形態3では赤外線検知ユニット236bが配置されている。
【0197】
図40は、実施の形態3の調理室上面43と付帯部品と上方加熱手段38を取り外した状態の、調理室11の背面側からの斜視図である。
ファンケーシング82の背面には、駆動手段90が備えられている。駆動手段90は電誘導モーター等の電動機が用いられ、その回転軸はファンケーシング82内の調理室ファン89に接合されている。駆動手段90が動作することにより、回転軸を介して調理室ファン89を回転させる点は、実施の形態2と同様である。
【0198】
図41は、実施の形態3の受皿273と調理室扉7と付帯部品の斜視図である。
調理室扉7には、スライドレール242bが、調理室扉7の扉面に対して概垂直に取り付けられている。スライドレール242bは、調理室11に設けられた一対のスライドレール242aに係合支持され、スライドレール242aに案内されて摺動する。
また、支持部材48は、スライドレール242bに接合されている。支持部材48が受皿73などの調理機材を係止する構成は、前述の実施の形態2と同様である。
【0199】
実施の形態3の受皿273は、調理室11に収納された時に誘導加熱コイルユニット108に設けられた赤外線検知ユニット236bの上方となる位置に、窓部273aが設けられている。この窓部273aは、受皿273の上方に載置されるIH用容器78底面や焼網72上の食材底面から放射される赤外線の少なくとも一部を透過する。なお、受皿273全体が窓部273aと同様に赤外線の少なくとも一部を透過する構成であれば、窓部273aは設けなくともよい。
【0200】
図42は、実施の形態3の本体1の側面断面図を示す。
調理室扉7が閉じた状態においては、支持部材48に係止された調理機材の底面と、耐熱絶縁板39の上面との間には、隙間がある状態である。スライドレール242aは耐熱絶縁板39の上面と平行に取り付けられており、調理室扉7の開閉動作中においても、調理機材の底面と耐熱絶縁板39の上面との隙間が保たれる。このため、調理機材の底面と耐熱絶縁板39の上面は擦れることがない。
【0201】
底部空間45に配置される誘導加熱コイル109は、調理室冷却風流入口35から流入して冷却風流出口44へ流れる気流が上面・下面等の表面に接触することで冷却する。また、この気流は、底部空間45の底面と誘導加熱コイルユニット108の下面との隙間より赤外線検知ユニット236bが配置される空間に流入、流出して、通過する際に赤外線検知ユニット236bを冷却する。
【0202】
また、調理室上面43に配置される赤外線検知ユニット36が配置される調理室収納部21は、冷却風排気風路28と繋がった空間である。このため、チャンバ27の吹出口27bより吹き出された冷却風が、冷却風排気風路28とつながった調理室収納部21にも流入して圧力は高くなる。したがって、赤外線検知ユニット36と調理室上面43の隙間から調理室上面43の赤外線を透過させるための開口部43aから調理室11へ流入する気流を形成することができる。そして、この気流により赤外線検知ユニット36を冷却するとともに、赤外線検知ユニット36の赤外線を透過して検知するための窓部が調理室11内の煙等の接触による汚れを軽減している。
【0203】
図43は、実施の形態3の調理室11の背面右角に設けられた赤外線検知ユニット236a部分の上面断面図を示す。
赤外線検知ユニット236aの底面には、開口部131が設けられている。この開口部131を介して、下方に位置する調理室冷却風流入口35から流入した冷却風が赤外線検知ユニット236aの内部へ流入する。流入した冷却風は、内部の基板や赤外線センサを冷却した後、赤外線検知ユニット236aの側面に設けられた、赤外線を赤外線センサへ入射するための開口132から流出する。このように、開口部131から冷却風を流入させるとともに開口132から流出させることで、赤外線検知ユニット236a内部の冷却と、赤外線センサへの調理室11内の煙等の汚れの接触を抑制している。
【0204】
また、赤外線検知ユニット236aの調理室11内側の壁面と調理室11側面の間には、通風可能な隙間が設けられており、下方の調理室冷却風流入口35から流入した冷却風が流入する。流入した冷却風は調理室11側面の赤外線を赤外線センサへ入射するための開口132から流出する。これにより、赤外線検知ユニット236aの冷却するとともに、開口132を介して調理室11内の煙等の汚れが赤外線センサに接触するのを抑制している。
【0205】
このように、調理室11に設けられた赤外線検知ユニット236aと赤外線検知ユニット36は、それぞれ、冷却と汚れ防止を冷却風を用いて行うことができる。このため、温度変化が軽減や汚れの抑制により温度検知の精度が高まるとともに、構成する部品の熱劣化が抑えられ故障のリスクを軽減できるとともに長寿命とすることができる。
【0206】
図44は、受皿73とIH用容器78を収納した状態の調理室11の側面断面図を示す。
前述の実施の形態2においては、IH用容器78底面の温度は、受皿73と耐熱絶縁板39の接触による熱電導を介して温度センサ37で検知していたが、本実施の形態3では、赤外線検知ユニット236bにより、IH用容器78底面から放射される赤外線量を検知して、非接触で温度検知を行う。受皿273と耐熱絶縁板39には、それぞれ窓部273aと窓部94とを設けることで、調理容器底面から放射される赤外線の少なくとも一部を透過させ、赤外線検知ユニット236bによる温度検知を可能としている。
【0207】
このように、本実施の形態3では、赤外線検知ユニット236bにより非接触で調理機材の底面温度を検知するので、受皿273等の調理容器の底面と耐熱絶縁板39の上面を接触させるための機構・構造が不要となる。したがって、製造コストの低コスト化が可能となるとともに、シンプルな構造であるために信頼性が向上し、故障等を軽減できる。
【0208】
また、
図44には、調理室11上方に配置される赤外線検知ユニット36の検知領域を二点鎖線で示している。赤外線検知ユニット36は、8領域の検知領域を持っている。赤外線検知ユニット36は、受皿273等に載置される調理容器(
図44の例ではIH用容器78)の上面から側面にかけての領域を、検知領域としており、この検知領域の温度検知が可能である。調理容器として波調理プレート46や焼網72の上が用いられる場合には、その上に載置される食材等が検知領域に含まれ、これらの温度検知を行うことができる。
【0209】
図45は、調理室11の受皿73と、IH用容器78を収納した状態の調理室11の側面に配置される赤外線検知ユニット236aと、誘導加熱コイル109の中心を通る断面図である。
側面に配置される赤外線検知ユニット236aは、8領域の検知領域を持つ。
図45では、二点鎖線により、それぞれの検知領域を図示している。赤外線検知ユニット236aは、調理容器が載置可能な範囲における、調理容器の側面から底面にかけて温度検知を可能としている。容器の底面部Rの下方まで検知領域であり、調理容器底面の温度を検知する。
【0210】
図44に示したように、赤外線検知ユニット36の検知領域は、大まかには調理容器の上面から側面にかけての領域であって、調理容器の底面部Rの下方は検知領域ではなくこの領域の温度検知を行わない。しかし、調理容器の底面部Rの下方は、赤外線検知ユニット236aにより温度検知される。
【0211】
すなわち、本実施の形態3では、調理室11の側面に設けられた赤外線検知ユニット236aにより、調理容器側面から底面にかけての温度検知を行う。また、誘導加熱コイルユニット108に設けられた赤外線検知ユニット236bにより、調理容器底面の温度検知を行う。これらの温度検知データを併せて用いることで、調理容器の温度検知の精度が向上する。そして、制御手段30は、このようにして精度よく検知した温度に基づいて、調理容器底面の温度が120℃以下に保たれるよう焦げ付きを抑制する制御を行う際には、その精度が向上する。
【0212】
なお、本実施の形態3においては、赤外線検知ユニット36と赤外線検知ユニット236aを設けて調理容器の側面から底面にかけての温度を検知するが、求められる精度が確保できれば、どちらか一方のみ配置してもよい。
【0213】
このように構成された実施の形態3の調理室11は、実施の形態2と同様の調理動作を行うことができ、また、同様の効果を得ることができる。
これに加え、実施の形態3においては、調理室排気口41を設け、調理室排気口41を調理室排気風路29を接続して調理室11の排気を行うようにした。このため、実施の形態2のように調理室ファン89の動作により排気経路が変動することなく、安定した排気を行うことができる。したがって、調理室11内の食材の煙による変色などが抑制され、良好な調理効果・仕上りが得られる。
【0214】
また、実施の形態2で用いた調理機材は、本実施の形態3においても使用可能であり、同様の調理動作を実現でき、同様の効果を得ることができる。
【0215】
以上のように本実施の形態3によれば、調理室11に赤外線検知ユニット36、236a、236bを設け、調理室11内の被加熱物の温度の検出を行う。そして、検知した温度に基づいて、制御手段30により上方加熱手段38や誘導加熱コイル19を制御することで、調理ムラが軽減され良好な調理効果を得ることができる。
【0216】
また、調理容器の底部の温度を検知する温度検知手段として、非接触の温度検知手段である赤外線検知ユニット236bを設けたので、調理容器の底面を耐熱絶縁板39の上面に接触させることが不要となる。したがって、調理室扉7の開閉構造が簡素化でき、安価で信頼性の高い誘導加熱調理器とすることができる。
【0217】
実施の形態4.
図1、
図46〜
図52を用いて、実施の形態4を説明する。本実施の形態4では、左載置部10下方の誘導加熱コイルユニット18aと、調理室11に関する構成の一部が、前述の実施の形態2と異なる。本実施の形態3では、実施の形態2との相違点を中心に説明する。
【0218】
(全体構成)
図46は、実施の形態4の本体1のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
本実施の形態4においては、実施の形態2で左載置部10の下方に設けた誘導加熱コイルユニット18に代えて、誘導加熱コイルユニット18aが設けられている。誘導加熱コイルユニット18aは、第1誘導加熱コイル95と、第2誘導加熱コイル96という複数の誘導加熱コイルを備えている。本実施の形態4では、第1誘導加熱コイル95、第2誘導加熱コイル96、及び誘導加熱コイル19が、本発明の本体加熱手段に相当する。
【0219】
(基板ケースユニットの構成)
図47は実施の形態4の基板ケースユニット22の斜視図である。
基板ケースユニット22aは、背面側上部の基板ケース吸込口23と前面側上部の基板ケース上部吹出口24を備えて概密閉の風路を形成しており、冷却ファン26と被冷却物である電子回路基板を備えるという点は実施の形態2と同じである。しかし、基板ケースユニット22aは、実施の形態2の基板ケースユニット22において設けられていた基板ケース下部吹出口25を備えていないという点で、実施の形態2と異なる。
【0220】
(調理室の構成)
図48は、実施の形態4の調理室11の斜視図である。
前述の実施の形態2においては、調理室11の両側面に調理室冷却風流入口35が設けられていが、本実施の形態4においては調理室冷却風流入口35が設けられていない。
【0221】
図49は、実施の形態4の調理室11の調理室上面43と付帯部品を取り外した状態の斜視図である。
調理室扉7の開閉機構であるスライドレール42aの配置は、実施の形態2とは異なるが、構成・動作・効果とも実施の形態1と同様である。
また、実施の形態2においては、調理室11の前側底面に冷却風流出口44が設けられていたが、実施の形態4においては設けられない。
【0222】
調理室11底部前面には、調理室冷却風吸込口97が設けられている。調理室扉7が閉じられると、調理室扉7の内側外周部に設けられた気密部材47により調理室11の内部と外部とに空間が隔てられるが、調理室冷却風吸込口97は、調理室扉7が閉じられた状態において調理室11の外側に配置される。調理室冷却風吸込口97は、本体1の外部から冷却風の空気を吸気可能である。
【0223】
図50は、実施の形態4の調理室11の調理室上面43と付帯部品と上方加熱手段38と耐熱絶縁板39を取り外した状態の斜視図である。
図50に示すように、底部空間45に誘導加熱コイルユニット108が配置されている。また、耐熱絶縁板39(
図50には図示せず。
図49参照)が設置されることにより、調理室冷却風吸込口97から調理室吸気口83の下部に向かって概密閉される風路が形成される。
【0224】
また、調理室11背面の調理室吸気口83の下部分は、延長通路280により底部空間45に接続(連通)されている。延長通路280は、耐熱絶縁板39の後端部から上方に向かって延び、調理室吸気口83の下部分を覆っている。このような延長通路280により調理室吸気口83の下部分と底部空間45とが連通し、調理室吸気口83から底部空間45内の空気を吸引可能に構成されている。
【0225】
図51は、実施の形態4の本体1の側面断面図を示す。
調理室11の背面には、ファンケーシング82が設けられ、内部に調理室ファン89が内蔵され、またファンケーシング82の背面に駆動手段90である電動機が配置された構成は、実施の形態2と同様である。しかし、調理室ファン89の動作による気流の流れは、以下のように一部異なる。
【0226】
調理室ファン89の動作により、調理室吸気口83から調理室ファン89へ空気が吸引される。このとき吸引される空気の一部は調理室11内の空気であるが、調理室吸気口83は底部空間45と連通していることから、吸引される空気の一部は底部空間45の空気である。すなわち、調理室ファン89の動作により、調理室吸気口83から調理室11内の空気及び底部空間45内の空気が吸引される。
【0227】
底部空間45の空気が吸引されることで、調理室冷却風吸込口97から本体1外の比較的室温に近い低温の空気が底部空間45内に吸引され、この低温の空気により、底部空間45の内部に配置された誘導加熱コイル109が冷却される。誘導加熱コイル109を冷却した後の温まった空気は、調理室ファン89に吸引された後、ファンケーシング82内に吹き出され、調理室11内から吸引された空気と混合しながら、一部は調理室吹出口84から調理室11内へ吹き出され、一部はファンケーシング排気口91より調理室排気風路29へ流入して触媒体40で空気の汚れの一部を分解・浄化された後、本体1外へ排気される。
【0228】
図52は、実施の形態4に係る本体1主要部の機能ブロック図である。
左載置部10に設けられた第2誘導加熱コイル96と、調理室11下方の誘導加熱コイル109を駆動するインバータ回路234は、少なくとも一部の回路を共用しており、時分割で排他的に使用される。第2誘導加熱コイル96と誘導加熱コイル109の特性の違いにより、共振コンデンサ等の一部回路は共用されず、駆動する誘導加熱コイルにより切り替えられる。
【0229】
このように構成された実施の形態4の調理室11は、実施の形態2と同様の調理動作を行うことができ、また、同様の効果を得ることができる。
【0230】
また、実施の形態2で用いた調理機材は実施の形態4においても使用可能であり、同様の調理動作・効果が得られる。
また、調理室扉7のスライドレール42a、42bによる開閉機構の構成・動作・効果は実施の形態1と同様である。
【0231】
以上のように本実施の形態4によれば、調理室11の空気循環手段である調理室ファン89の駆動により、調理室冷却風吸込口97から底部空間45内に吸い込まれ調理室吸気口83へと至る気流を生成した。そしてこの気流を底部空間45内の誘導加熱コイル109に接触させた。このため、調理室11用の誘導加熱コイル109用の冷却ファンが不要になるとともに、調理室11外の冷却ファン26からの冷却風を導入するための風路や基板ケースユニット22との接続が不要となる。このように、調理室11に、冷却に伴う部品・風路が構成されるので、構造が簡素となり、低コストで製造できる。また、部材同士の接続等による風路の気密性の低下など、劣化・故障のリスクが軽減されて、安価で信頼性の高い誘導加熱調理器とすることができる。
【0232】
また、誘導加熱コイル109を配置した底部空間45内を通過した空気を、調理室ファン89により吸引して、調理室吹出口84より調理室11に流入させた。このようにすることで、誘導加熱コイル109を冷却して温まった空気を調理室11に流入させることができる。このため、調理室11内の加熱効率が高めることができ、短時間・省エネ調理ができるとともに、排熱が利用されるので省エネに資する。このように、高い調理性能が得られるとともに、消費電力量が低く環境負荷の低い誘導加熱調理器とすることができる。