特許第5653527号(P5653527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653527
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】梱包構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20141218BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20141218BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20141218BHJP
   B65D 25/10 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H01M2/10 L
   B65D77/26 D
   B65D85/00 P
   B65D25/10
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-531088(P2013-531088)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2012005402
(87)【国際公開番号】WO2013031194
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2013年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-189807(P2011-189807)
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000106715
【氏名又は名称】ザ・パック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 修二
(72)【発明者】
【氏名】重元 亮二
(72)【発明者】
【氏名】宮田 恭介
(72)【発明者】
【氏名】福田 武
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−161872(JP,U)
【文献】 実開平05−003119(JP,U)
【文献】 特開2001−338628(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/101782(WO,A1)
【文献】 特開2000−173567(JP,A)
【文献】 特開2008−270460(JP,A)
【文献】 実開昭59−082961(JP,U)
【文献】 特開2004−220869(JP,A)
【文献】 実公昭49−043701(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
B65D 67/02
B65D 25/10
B65D 77/26
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱状の電池を梱包する梱包構造であって、
底板と該底板の外縁に配置された側面板とを有する収容ケースと、
前記底板の直上に配置され、前記収容ケースに固定される第1トレイと、
前記第1トレイの上方に配置される第2トレイと
を用い、
前記第1トレイは、前記電池の一方の端部がはまり込む第1凹部を複数備え、該第1凹部の底側が前記底板に相対するように前記収容ケースに固定されており、
前記第2トレイは、前記電池の他方の端部がはまり込む第2凹部を複数備えており、
前記複数の電池は、前記第1トレイの前記第1凹部に前記一方の端部がはめ込まれ、前記他方の端部が前記第2トレイの前記第2凹部にはめ込まれ、隣り合う前記電池同士が離間された状態で保持されており、
前記第1凹部の底側は、はめ込まれた前記電池の前記一方の端部の角部とは離間するように、前記角部に相対する部分が前記第1凹部からさらに一段窪んだ窪みを備えている、梱包構造。
【請求項2】
前記第1凹部の深さは、柱状の前記電池の高さの5%以上50%以下である、請求項1に記載されている梱包構造。
【請求項3】
前記第2トレイの上に被せられる押さえ部材をさらに用いている、請求項1又は2に記載されている梱包構造。
【請求項4】
前記電池の他方の端部の電極端子は凸形状を有しており、
前記他方の端部がはまり込む前記第2凹部には、前記他方の端部がはまり込んだ際に前記電極端子とは離間した状態を保つ窪みが設けられている、請求項1から3のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【請求項5】
前記第1凹部は、開口部から底に向かって窄まっていくテーパ形状を有している、請求項1から4のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【請求項6】
前記テーパ形状のテーパ角は、1度以上20度以下である、請求項5に記載されている梱包構造。
【請求項7】
前記第2凹部は、開口部から底に向かって窄まっていくテーパ形状を有している、請求項1から6のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【請求項8】
前記第2凹部の前記テーパ形状のテーパ角は、1度以上20度以下である、請求項7に記載されている梱包構造。
【請求項9】
前記第1トレイと前記第2トレイとの間の距離は、柱状の前記電池の高さの30%以上90%以下である、請求項1から8のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【請求項10】
前記収容ケースは矩形箱形であって段ボールからなり、
前記段ボールの中芯のフルートは、前記収容ケースの矩形の辺に対して斜めに延びている、請求項1から9のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【請求項11】
前記第1トレイ及び前記第2トレイは、防錆剤を添加したプラスチックからなっている、請求項1から10のいずれか一つに記載されている梱包構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梱包構造に関し、特に複数の柱状の電池を梱包する梱包構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は種々の電子機器の電源として広く使用されている。電池の種類としては、乾電池に代表される一次電池や、充放電を繰り返し行うことが可能な二次電池がある。これらの電池には円柱形、角柱形、シート状など様々な形状があるが、柱状の電池が最も多い。
【0003】
近年、省資源や省エネルギーの観点から、繰り返し使用できるニッケル水素、ニッケルカドミウムやリチウムイオンなどの二次電池への需要が高まっている。中でもリチウムイオン二次電池は、軽量でありながら、起電力が高く、高エネルギー密度であるという特徴を有しているため、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラ、ノート型パソコンなどの様々な種類の携帯型電子機器や移動体通信機器の駆動用電源としての需要が拡大している。リチウムイオン二次電池には種々の形状があるが、円筒形の規格化された電池が大量に生産されており、例えば、18650型、17670型、18500型、17500型、16340型、14500型という名称の円筒形の規格がある。
【0004】
リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度であるため、短絡すると大きな熱が発生してしまう。従って、リチウムイオン二次電池の輸送においては厳しく規制されており、隣りの電池と接触して短絡してしまうことを避けるため、電池同士を確実に離間させておいたり各電池を絶縁材で個別に包装したりして梱包していた(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−193691号公報
【特許文献2】特開2002−75308号公報
【特許文献3】実開昭58−161872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術では、有底面を有する収納部材の中に電池高さの半分よりも高い隔壁部材を入れて、隔壁部材で仕切られた空間に電池を入れているが、このような構造では輸送中に電池ががたつかないように、隔壁部材により電池を固定する必要がある。そのため、隔壁部材と電池とが密着するように隔壁部材を配置する必要があり、隔壁部材で仕切られた空間に電池を挿入する際に力を入れて挿入しなければならないため、梱包を行うのに時間がかかってしまう。また、電池を取り出す際にも同様に時間がかかってしまう。そして隔壁部材が多量に必要になるため、梱包材料のコストが大きくなってしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示されている技術では、ICR18650のリチウムイオン二次電池を3直5列に並べてSafety Unit基板に接続して組電池とし、この組電池をポリエチレン袋、段ボールの個装パットによって包んで個装パックとし、さらに個装パックを複数重ねて段ボール箱に梱包するということを行っている。そのため、梱包の手間が非常にかかって長時間の梱包作業となり、また多量のSafety Unit基板、ポリエチレン袋、段ボールの個装パットが必要になり、梱包コストが大きくなるとともに梱包重量が大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の柱状の電池の梱包及び取り出しを短時間で行うことができ、梱包コストが小さく、クリーンな状態で電池を保持できる梱包構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の梱包構造は、複数の柱状の電池を梱包する梱包構造であって、底板と該底板の外縁に配置された側面板とを有する収容ケースと、前記底板の直上に配置され、前記収容ケースに固定される第1トレイと、前記第1トレイの上方に配置される第2トレイとを用い、前記第1トレイは、前記電池の一方の端部がはまり込む第1凹部を複数備え、該第1凹部の底側が前記底板に相対するように前記収容ケースに固定されており、前記第2トレイは、前記電池の他方の端部がはまり込む第2凹部を複数備えており、前記複数の電池は、前記第1トレイの前記第1凹部に前記一方の端部がはめ込まれ、前記他方の端部が前記第2トレイの前記第2凹部にはめ込まれ、隣り合う前記電池同士が離間された状態で保持されている構成を備えており、前記第1凹部の底側は、はめ込まれた前記電池の前記一方の端部の角部とは離間するように、前記角部に相対する部分が前記第1凹部からさらに一段窪んだ窪みを備えている。すなわち、複数の電池が、互いに離間した状態で2つのトレイの間に挟まれて保持され、梱包されている梱包構造である。一方の端部とは、柱状の上側又は下側の端部のことである。
【0010】
ある実施形態では、前記第1凹部の深さは、柱状の前記電池の高さの5%以上50%以下である。
【0011】
ある実施形態では、前記第2トレイの上に被せられる押さえ部材をさらに用いている。
【0012】
ある実施形態では、前記電池の他方の端部の電極端子は凸形状を有しており、前記他方の端部がはまり込む前記第2凹部には、前記他方の端部がはまり込んだ際に前記電極端子とは離間した状態を保つ窪みが設けられている。
【0013】
ある実施形態では、前記第1凹部は、開口部から底に向かって窄まっていくテーパ形状を有している。前記テーパ形状のテーパ角は、1度以上20度以下であることが好ましい。
【0014】
ある実施形態では、前記第2凹部は、開口部から底に向かって窄まっていくテーパ形状を有している。前記第2凹部の前記テーパ形状のテーパ角は、1度以上20度以下であることが好ましい。
【0015】
ある実施形態では、前記第1トレイと前記第2トレイとの間の距離は、柱状の前記電池の高さの30%以上90%以下である。第1トレイと第2トレイとの間の距離は、第1凹部の開口縁から第2凹部の開口縁までの距離である。
【0016】
ある実施形態では、前記収容ケースは矩形箱形であって段ボールからなり、前記段ボールの中芯のフルートは、前記収容ケースの矩形の辺に対して斜めに延びている。
【0017】
ある実施形態では、前記第1トレイ及び前記第2トレイは、防錆剤を添加したプラスチックからなっている。
【発明の効果】
【0018】
複数の電池が、第1トレイの第1凹部に一方の端部がはめ込まれ、他方の端部が第2トレイの第2凹部にはめ込まれて、隣り合う電池同士が離間された状態で保持されている構造であり且つ第1凹部の底側は、はめ込まれた電池の一方の端部の角部とは離間するように、角部に相対する部分が外方へ突き出しているので、梱包作業が容易であり、第1トレイと第2トレイとで電池を挟み込んで隣り合う電池同士の接触を確実に防止することができるとともに電池角部によって第1トレイが削られて削り粉が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は実施形態に係る収容ケースの斜視図である。
図2図2は実施形態に係る第1トレイの斜視図である。
図3図3は実施形態に係る第2トレイの斜視図である。
図4図4は実施形態に係る梱包構造の内部を示した模式的な図である。
図5図5は第1凹部の近辺の拡大断面図である。
図6図6は第2凹部の近辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について説明する前に本発明に思い至った経緯に関して以下に述べる。
【0021】
特許文献3には、リチウムイオン二次電池が開発される前の技術である乾電池用の包装用緩衝装置が開示されている。乾電池はリチウムイオン二次電池に比べて電池電圧が半分未満であり、また特許文献3に開示されているのは約30年前の梱包技術であるため、このままの包装用緩衝装置をリチウムイオン二次電池の梱包に用いると様々な問題が発生することが判明した。中でも、緩衝装置から取り出した電池を電源パックに入れて電池の電極端子を電源パックの端子に溶接すると、溶接部分の接触不良が発生することが大きな問題として浮上した。本願発明者らはこれらの問題を調査し、解決方法を種々検討して本願発明を想到するに至った。
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0023】
(実施形態1)
実施形態1に係る梱包構造は、18650円筒型のリチウムイオン二次電池(直径18mm、高さ65mm)を複数梱包するものである。この電池は円柱形状で、一方の端部は負極であり、他方の端部は正極であって、正極は円形の端面の中央部分に突出している凸形状を有している。
【0024】
本実施形態に使用される収容ケースを図1に示す。この収容ケース10は段ボールからなっており、矩形の底板14の外縁に、4つの側面板12が底板14に対して垂直に配置されている。即ち、収容ケース10は蓋のない箱形のケースであり、互いに平行な一対の側面板12の底板14近くに溝部15が形成されている。側面板12の底板14から高さは、電池の高さとほぼ同じである。
【0025】
収容ケース10を形成している段ボールは、中芯のフルートが底板14および側面板12の各辺に対して斜めに延びている。そのため、梱包後にこの梱包構造を落下させた場合、収容ケース10のいずれの側面から落下しても衝撃に対する強度はほぼ同じとなり、落下に対して特に弱い側面は存しない。
【0026】
本実施形態に使用される第1トレイを図2に示す。第1トレイ20は矩形のポリプロピレン板に、多数の窪みである第1凹部22,22,…を形成したものである。第1トレイ20は、収容ケース10の底板14の上におかれ、側辺から突き出した2つの爪部25,25が収容ケース10の溝部15に填り込み、それによって収容ケース10に固定される。また、第1凹部22,22,…の底が収容ケース10の底板14に面するように第1トレイ20は収容ケース10内に配置されている。なお、第1トレイ20は、防錆剤を練り込んだポリプロピレンシートを材料として真空成形により作製される。
【0027】
本実施形態に使用される第2トレイを図3に示す。第2トレイ30も第1トレイ20と同様に、矩形のポリプロピレン板に、多数の窪みである第2凹部32,32,…を形成したものである。第2トレイ30はこの後に説明するように、第1トレイ20に複数の電池の一方の端部をはめ込んだ後で、第1トレイ20の上方に配置されて、それから電池の他方の端部が第2凹部32,32,…にはめ込まれる。なお、第2トレイ30も第1トレイ20と同様に、防錆剤を練り込んだポリプロピレンシートを材料として真空成形により作製される。
【0028】
図4は、本実施形態の梱包構造を、収容ケース10の一つの側面板12を外して内部が見えるようにして示した図である。収容ケース10内に置かれて固定された第1トレイ20の第1凹部22,22,…には複数の電池40,40,…の一方の端部(負極側)がはめ込まれている。それにより複数の電池40,40,…は隣の電池40とは離間して(側面同士がある程度の距離をもって離れて)並んで立っている。
【0029】
電池40,40,…の上側となった他方の端部(正極側)に対しては、第2トレイ30の第2凹部32,32,…がはまり込む。このように電池40の両端が第1凹部22と第2凹部32とにはめ込まれ、これにより電池40は第1トレイ20と第2トレイ30とによって固定・保持されている。このようにして複数の電池40,40,…は隣の電池40とは離間した状態で固定・保持されている。そして、第2トレイ30の上には段ボールからなる押さえ部材50が載せられて第2トレイ30を押さえ込んでいる。この押さえ部材50が収容ケース10に固定されて第2トレイ30も収容ケース10に対して固定されることになる。
【0030】
本実施形態では、まず収容ケース10を用意するところから梱包が始まる。収容ケース10に第1トレイ20を入れて固定する。第1トレイ20は、第1凹部22の底側が収容ケース10の底板14に向くように置かれ、爪部25が溝部15に差し込まれて収容ケース10に対して固定される。
【0031】
それから複数の電池40,40,…の一方の端部(負極側)を第1トレイ20の第1凹部22,22,…にはめ込んでいく。電池40は第1凹部22にはめ込まれて、鉛直に立った状態で保持される。
【0032】
全ての電池40,40,…がはめ込まれたら、電池40,40,…の他方の端部(正極側)に第2トレイ30を載せて、正極側端部を第2凹部32,32,…にはめ込んでいく。これにより、隣り合う電池40、40同士が離間して保持される。
【0033】
それから第2トレイ30の上に押さえ部材50を載せ、押さえ部材50と収容ケース10とを固定する。
【0034】
ここで第1凹部22の深さは電池40の高さに対して5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましい。
【0035】
第1凹部22の深さが電池40の高さの5%未満であると、第1凹部22に電池40をはめ込んだ後に電池40を鉛直に保てないことがあり、第2トレイ30を電池40に載せる際に電池40の上側端部が第2凹部32にはまりこまないことが生じるおそれがある。第1凹部22の深さが電池40の高さの10%以上であると、第1凹部22に電池をはめ込んだ状態で確実に電池40を鉛直に保つことができ、より好ましい。
【0036】
第1凹部22の深さが電池40の高さの50%を越えると、電池40を第1凹部22にはめ込む作業に時間がかかりすぎるおそれがあったり、逆に電池40を第1凹部22から取り出すのに余分な手間がかかるおそれがある。また電池40側面にロット番号などを印字すると、第1凹部22の深さが大きい場合には印字部が第1凹部22と擦れあって印字された情報が読み取れなくなるおそれがある。第1凹部22の深さが電池40の高さの30%以下であれば電池40の出し入れを容易に行うことができる。
【0037】
第1トレイ20と第2トレイ30との間の距離は、電池40の高さの30%以上90%以下である。この距離が電池40の高さの30%未満であると、梱包された電池40を取り出すのに時間がかかるおそれがある。この距離が電池40の高さの90%を超えると、梱包時に振動や衝撃を受けると電池40を保持できなくて、隣り合う電池40同士が接触してしまうおそれがある。
【0038】
隣り合う電池40間の最短距離は電池40径の5%以上50%以下が好ましい。5%未満であると、振動や衝撃により隣り合う電池40同士が接触してしまうおそれがあり、50%を越えると電池の梱包密度が下がり、梱包コスト、輸送コストが大きくなる。
【0039】
次に、第1凹部22の部分を拡大した断面を図5に示す。第1凹部22は底面(円形)部分の径が電池40径よりも若干大きく、底面から開口部に行くに連れて径が大きくなっていくテーパ形状を有している。逆に言えば開口部から底面に向けて窄まっている形状となっている。このようなテーパ形状であるため、第1凹部22に電池40をはめ込みやすく、また第1凹部22から電池40を取り出しやすい。
【0040】
このテーパ角は1度以上20度以下であることが好ましい。テーパ角が1度未満であると第1凹部22に電池40をはめ込みにくく、また抜き取りにくくなり、作業時間が増えるおそれがある。テーパ角が20度を超えると、電池40を確実に保持できなくなるおそれがあり、梱包された状態で電池40ががたついたり、衝撃が加わると隣り合う電池40同士が接触したりするおそれがある。
【0041】
また、第2凹部32も第1凹部22と同様のテーパ形状を有している。第2凹部32のテーパ角も第1凹部22と同様1度以上20度以下であることが好ましい。このようなテーパ形状を有していることにより、電池40にはまりこんだ第2トレイ30を上方へ取り外すときに容易に取り外しが行える。
【0042】
また、第1凹部22の底面外周部分は、外方(下側)に向かって突き出した、あるいは凹部からさらに一段窪んだ窪み23を備えている。これにより、第1凹部22に電池40をはめ込んだ際に、第1凹部22の底面外周部分は電池40の角部と離間して非接触の状態となる。この窪み23がない場合、電池40が梱包された状態で輸送されると、電池40の角部と第1凹部22の底面外周近辺とが輸送時の振動によって擦れあって第1トレイ20が削り取られてしまう。そして削り粉が電池40の電極(底面側の負極)に付着し、この電池40を使用する際に接触不良の原因になるおそれがある。本実施形態のように、窪み23があれば輸送時に削り粉が生じることは大きく抑制され、電池40の接触不良はほとんど生じない。すなわち、電池40の端子部分は本実施形態の梱包構造に保持された状態で常にクリーンに保たれることになる。この点が特許文献3に開示されている技術と本実施形態との大きな違いである。特に、特許文献3では電池を挟持固定する緩衝部材を、故紙等を溶液化して真空形成手段により形成しているので、紙の繊維が容易に電池に付着しやすい。
【0043】
次に、第2凹部32の部分を拡大した断面を図6に示す。第2凹部32も第1凹部22と同様に、底面から開口部に行くに連れて径が大きくなっていくテーパ形状を有している。これにより第2トレイ30を電池40に容易にはめ込むことができ、取り去る際も容易に取り去ることができる。
【0044】
また、電池40の正極側端部において突出した正極端子41に対応する端子用窪み35が第2凹部32の底面の中央部に形成されている。端子用窪み35の側面部37及び底面部36は正極端子41と非接触の状態を保つことができるように形成されている。即ち、端子用窪み35の深さは正極端子41の高さよりも大きく、端子用窪み35の径は正極端子41の径よりも大きい。従って、第2凹部32の底面の周縁部分34が電池40の正極側の上面周縁部に接触したときに、正極端子41は第2トレイ30と接触することがなく、輸送時に振動が加わっても、第2トレイ30からの削り粉が正極端子41に付着することはない。このため、電池40を電子機器等に電源として使用した際に、削り粉起因の接触不良・導通不良を防ぐことができる。
【0045】
本実施形態の梱包構造では、複数の柱状の電池40の上下をトレイで挟み込んで固定するので、隣り合う電池40同士の隙間に接触を防ぐための部材を入れる必要がなく、その分コストを低減できる。そして輸送時に電池の電極部分をクリーンに保つことができる。また、特許文献1に開示されている隔壁部材を使用していないので、電池40を第1トレイ20の第1凹部22にはめ込む作業が容易にできて、自動化・機械化も容易にできる。また、特許文献1、2の梱包構造に比べて梱包材料の種類と量が少なくても複数の電池40,40,…を互いに接触することがないように確実に保持でき、小さな梱包コストで安全に輸送をすることができる。また、開梱作業も容易に行える。また、第1トレイ20、第2トレイ30が防錆剤を練り込んだ合成樹脂からできているため、電池40の保管・輸送の際に電池40が錆びてしまうことを防止できる。
【0046】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。例えば一つの梱包構造に梱包される電池の種類や数は特に限定されないし、収容ケースの材料や形状も特に限定されない。
【0047】
梱包される電池はリチウムイオン二次電池が好ましいが、リチウムイオン二次電池に限定されずどのような種類の電池でもよく、形状が円柱形や角柱形など、柱状であればよい。電池は、側面に絶縁性の外装チューブを取り付けてあるものでもよいし、外装チューブがないものでもよい。外装チューブがなくても隣の電池との接触が確実に防止されるので、安全に保管、輸送を行える。
【0048】
収容ケースの側面板は、4面全てに存している必要はない。少なくとも平行な一対の側面板があればよい。収容ケースの側面板がない側面部分は、緩衝材や外側ケース等により覆われていれば、電池の保護が行われる。
【0049】
第1トレイ、第2トレイはポリプロピレン以外のプラスチックから作製してもよいし、紙や金属等の他の材料から作製してもよい。ただ、紙を用いた場合は紙粉が発生するおそれが大きく、金属は絶縁性を確保する手間がかかるので、紙や金属よりはプラスチックの方が好ましい。また、金属シートの表面にプラスチックフィルムをラミネートした材料など、複合材料を用いてもよい。
【0050】
梱包される電池は、正極が収容ケースの底板側へ向くように並べられてもよいし、全ての電池において収容ケースの底板側へ一方の極だけが向くのではなく、ある電池は正極が、別の電池は負極が向いていても構わない。
【0051】
第1トレイの一部にマーキングを施して、そのマーキングを基点として1本1本の電池の位置を特定することもできる。これにより梱包される電池の1本1本を特定することができる。従って、各電池の電池特性を梱包前に記録しておけば、特定の電池特性を有する電池が必要となったときに、梱包された中のどの電池が必要な電池であるのかがすぐに判明し、その電池を取り出すことができる。梱包されている各電池の電池特性などを梱包の外面に記載しておいてもよい。マーキングは印刷であっても良いし、トレイの一部を切り欠いたり、トレイの一部の形状を変える(例えば突起を作る)等、どのような手段を用いてもよい。また、第2トレイの方にマーキングを設けてもよい。
【0052】
第1トレイや第2トレイの一部に突起等を設けておいてもよい。これにより、複数のトレイを重ねて置いてもこの突起等により上下のトレイ間に隙間ができ、トレイを一つだけ取り出すことが容易に行える。
【0053】
また、第1トレイと第2トレイとを同じ形状にしてもよい。例えば、底部外周の窪みと正極端子用窪みの両方を備えた凹部を有しているトレイとすればよい。これにより、トレイを一種類だけにすることができ、梱包コストを低減させることが可能になる。
【0054】
電池の配置は、実施形態のように正方形の格子状以外に、六角形の格子状や長方形の格子状であってもよい。
【0055】
収容ケースの外側を外装ケースによりさらに梱包を行ってもよい。その時、押さえ部材を外装ケースの一部としてもよい。外装ケースを段ボールで形成した場合は、収容ケースと同様に中芯のフルートが底板および側面板の各辺に対して斜めに延びている状態であると、梱包後の落下に対して、どの面が落下面となってもほぼ同じ耐落下強度を示すことになるので好ましい。
【0056】
第1トレイの爪部およびそれに対応した収容ケース側面板の溝部の個数は、実施形態1のような2個に限定されない。第1トレイの対向する2辺にそれぞれ複数個の爪部を設けると、第1トレイがより収容ケースに固定される。また、第1トレイの4辺全てに爪部を設けて、収容ケースの4つの側面板に溝部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明に係る梱包構造は、簡単な構造で複数の電池を互いに非接触状態で保持することができるので、二次電池の保管・輸送用の梱包構造等として有用である。
【符号の説明】
【0058】
10 収容ケース
12 側面板
14 底板
20 第1トレイ
22 第1凹部
30 第2トレイ
32 第2凹部
40 電池
50 押さえ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6