(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653605
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いたシ−ル部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20141218BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20141218BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20141218BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20141218BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F16J15/10 Y
C08L15/00
C08K3/04
C08L23/16
C09K3/10 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-233640(P2009-233640)
(22)【出願日】2009年10月7日
(65)【公開番号】特開2011-79974(P2011-79974A)
(43)【公開日】2011年4月21日
【審査請求日】2012年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下浦 斉
(72)【発明者】
【氏名】二口 和督
(72)【発明者】
【氏名】奥田 智昭
(72)【発明者】
【氏名】笈田 弘紀
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−124951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
C08K 3/04
C08L 15/00
C08L 23/16
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
POE(ポリオールエステル)冷凍機油およびHFC134aが混在して使用される冷凍機システムの冷媒シールに使用されるシール部材であって、該シール部材は、水素化ニトリルゴム:エチレンプロピレンゴムが質量比で40:60〜90:10のゴムポリマーと充填剤と架橋剤を含有したゴム組成物を成形して得られるゴム成形物から成り、かつ該ゴム成形物の伸び100%時の引張応力M100値が8.0MPa以上となるゴム成形物を用いることを特徴とする、シール部材。
【請求項2】
前記充填剤がカーボンブラックであり、該カーボンブラックが前記ゴムポリマー100質量部に対して、55〜150質量部含有しているゴム組成物を成形して成ることを特徴とする請求項1記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いたシ−ル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、環境負荷が懸念される化学物質に関する使用規制、排出制限が検討され注目されている。カーエアコン等の冷凍機システムに使用される冷凍サイクル用冷媒に関しても例外ではなく、オゾン層破壊への影響を考慮し冷媒ガスとして用いられている代替フロンガスも地球温暖化への影響が懸念され、今後規制強化が予定されている。
【0003】
このような冷凍機システムに用いられる冷凍機用シールにおけるゴム成形物は、基本的には、硬さ、伸び、引張強さなどに優れ、圧縮永久ひずみが小さく、かつ冷凍機用シ−ルとして良好な冷媒シール特性を有することが要求される。特に昨今の環境問題対策として、冷凍機用シールからの冷媒漏れ量を大幅に削減することが求められている。密封する対象物が漏れないまたは漏れが少ない(透過性が小さい)こと、密封する対象物である冷媒による膨潤が小さく、ゴム成形物内に浸透した冷媒ガスが膨張することによるブリスタ(亀裂)が発生しないこと(耐ブリスタ性)も要求される。冷媒としてはオゾン破壊係数が0であるHFC134a(CH
2FCF
3)などのフルオロ炭化水素が用いられ、シ−ル部材におけるゴム組成物は、上述したHFC134aなどのフルオロ炭化水素に対し、耐性を備えることと、共に使用されるPAG(ポリアルキレングリコ−ル)、POE(ポリオ−ルエステル)の冷凍機油に対する体積変化率が抑制された材料が要求される。
【0004】
上述した冷凍機用シールに用いられるゴム組成物として、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムが知られているが、耐ブリスタ性と透過性の点から、依然として問題が残っている。また、フロンガスに対する耐ブリスタ性と耐透過性が比較的良好なゴム材料として、エチレンプロピレンゴムが検討されてきているが、耐冷凍機油性に劣るエチレンプロピレンゴムも冷媒機用シール部材のゴム組成物としては未だ問題がある。
【0005】
そこで、水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴムと有機過酸化物加硫系のゴム組成物が研究され、特許文献1、特許文献2に記載されたゴム組成物は特定のムーニー粘度のエチレンプロピレンゴムを用いることにより耐ブリスタ性あるいはフロンガスバリア性が改善されると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−77911号公報
【特許文献2】特開2002−212362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、HFC134a冷媒、冷凍機油
(POE油)に対する体積変化率がいずれも小さく、かつ水素化ニトリルゴム単体使用の場合と比較してHFC134aの透過量が低減されており、HFC134aに対する耐ブリスタ性が優れたシール部
材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) POE(ポリオールエステル)冷凍機油およびHFC134aが混在して使用される冷凍機システムの冷媒シールに使用されるシール部材であって、該シール部材は、水素化ニトリルゴム:エチレンプロピレンゴムが質量比で40:60〜90:10のゴムポリマーと充填剤と架橋剤を含有したゴム組成物を成形して得られるゴム成形物から成り、かつ該ゴム成形物の伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa以上となるゴム成形物を用いることを特徴とする、シール部材。
(2) (1)に記載の充填剤がカーボンブラックであり、該カーボンブラックが前記ゴムポリマー100質量部に対して、55〜150質量部含有しているゴム組成物を成形して成ることを特徴とする(1)記載のシール部材。
【0009】
ゴムポリマーは異なる種類の有機ポリマーを混合したものであり、本発明では水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴムを混合したものをいう。ゴム組成物は前記ゴムポリマーと充填剤と架橋剤を含有したものをいう。ゴム成形物はゴム組成物を成形して得られるものをいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゴム組成物を成形して得られるゴム成形物を用いることで、冷媒HFC134a、PAG冷凍機油、POE冷凍機油の両冷凍機油に対する体積変化率(JIS K 6258準拠)がいずれも+10%以下で優れた耐性を有する。さらに、冷媒HFC134aの透過量は、水素化ニトリルゴム単体使用の場合より大幅に低減されており、冷媒HFC134aに対し優れた耐ブリスタ性を有している。前記ゴム組成物はシール材料として、優れた成形物を作製し得るものであり、耐フロン用ゴム成形物の伸び100%時の引張応力M
100値を測定することにより品質管理を容易にすることができる。また水素化ニトリルゴム単体使用の場合と同等な機械特性を有しているため、高コストの水素化ニトリルゴムの割合をおさえたコストダウン対応の材料としても期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴムと充填剤と架橋剤からなる。ゴムポリマーの水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴムの混合比は、[1]耐冷凍機油(POE油)の150℃での体積変化率の点から、水素化ニトリルゴムがゴムポリマー100質量部に対して40質量部以上含まれていることが好ましい。水素化ニトリルゴムが40質量部未満では、エチレンプロピレンゴムの耐油性の弱点が現われ、POE油に対する体積変化率が+10%を越えてしまう。[2]フロンガス透過性の観点より、エチレンプロピレンゴムがゴムポリマー100質量部に対し10質量部〜80質量部配合することで、ゴムポリマーが水素化ニトリルゴム単独の場合のフロンガスの透過量を1.0とした相対比で0.8〜0.4とフロンガス透過量を低減することができる。[1]耐冷凍機油性と[2]フロンガス透過性の観点より、ゴムポリマーの水素化ニトリルゴムの含有量はゴムポリマー100質量部に対して40質量部以上、好ましくは40〜90質量部であり、さらに好ましくは40〜80質量部である。
【0012】
本発明に用いられる水素化ニトリルゴムとしては、不飽和ニトリル−共役ジエン共重合ゴムの共役ジエン単位の一部または全部を水素化したもの、不飽和ニトリル−共役ジエン−エチレン性不飽和モノマー三元重合体ゴムおよびこのゴムの共役ジエン単位の一部または全部を水素化したもの、不飽和ニトリル−エチレン性不飽和モノマー系共重合体ゴム等である。具体的にはブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、イソプレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、イソプレン−アクリロニトリル共重合ゴムなどを水素化したもの、ブタジエン−メチルアクリレート−アクリロニトリル共重合ゴム、ブチルアクリレート−エトキシエチルアクリレート−ビニルクロロアセテート−アクリロニトリル共重合ゴム、ブチルアクリレート−エトキシエチルアクリレート−ビニルノルボルネン−アクリロニトリル共重合ゴムなどが挙げられる。水素化ニトリルゴムは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの水素化ニトリルゴムは一般に市販されているものをそのまま用いることができ、特に限定されない。
【0013】
本発明に用いられるエチレンプロピレンゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、または少量の第三成分ジエンを含むエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムがあげられ、一般に市販されているものをそのまま用いることができ、特に限定されない。使用されるジエンモノマーとしては、例えばエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどが挙げられ、その含有量は特に限定されない。
【0014】
本発明に用いられる充填剤はカーボンブラック、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、けい酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどであり、一般にゴムで使用されるものであれば特に限定はない。カーボンブラックを例としてあげると、HAFカ−ボンブラック、MAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、GPFカーボンブラックなどのファーネスカーボンブラックや、FTカーボンブラック、MTカーボンブラックなどのサーマルカーボンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックの含有量はゴムポリマー100質量部に対して、55〜150質量部である。詳細にはファーネスカーボンブラックの場合はゴムポリマー100質量部に対し、55〜120質量部含有し、サーマルカーボンブラックではゴムポリマー100質量部に対し、80〜150質量部含有した組成物が好ましい。ファーネスカーボンブラック120質量部またはサーマルカーボンブラック150質量部より多いゴム組成物は硬くなり、伸びが小さくなるなど機械的特性が劣る。ファーネスカーボンブラック55質量部未満、サーマルカーボンブラック80質量部未満では伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPaを満たさないため、ブリスタが発生する。またカーボンブラックのファーネスカーボンブラックとサーマルカーボンブラックと比較すると、一定の圧縮量(つぶししろ)を与え、その反発力によって油や冷媒をシールするOリングを考慮すると、長期シール性の品質面より圧縮永久ひずみ特性に優れるサーマルカーボンブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、単独または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明における架橋剤は公知の物を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパ−オキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が好適に使用される。上述架橋剤は単独または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤はゴム組成物100質量部に対して、2〜10質量部が好ましく、より好ましくは4〜8質量部である。2質量部未満では架橋後の成形物の機械特性および圧縮永久ひずみ特性が低下する傾向にあり、10質量部を越えると、機械的特性、特に伸びが低下し、成形物の硬化の問題が生ずる傾向がある。
【0016】
また本発明のゴム組成物は、架橋助剤を含有してもよい。例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌネート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、1,2−ポリブタジエンなどの多官能性化合物が例示される。添加量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜調整する。
【0017】
また本発明のゴム組成物は、必要に応じて公知の可塑剤、老化防止剤、潤滑剤、金属酸化物などを含有するものであってもよく、添加量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜調整する。
【0018】
また本発明のシール材は、配合されたゴム組成物を成形して得られるゴム成形物を有する。該ゴム成形物は従来公知のインタミックス、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機あるいはオープンロールなどを用いてゴム組成物を混練した後、射出成形機、圧縮成形機、押出成形機などを用いて所望の形状にて、150〜250℃で3〜60分間、加熱・加圧成形(一次加硫)し、必要に応じて100〜200℃で1〜24時間の二次加硫を行うことで得られる。シール材の形状は特に限定されず、Oリング、パッキン、シート、金属や他材料と組み合わせたものなどその目的に応じて適宜選ばれる。また大きさも特に限定はなく、目的に応じ適宜選ばれる。
【0019】
このようにして得られたゴム成形物は、次の試験方法を使用し確認を行った。
【0020】
(硬さ試験)
JIS K 6253に規定される測定方法にしたがってデュロメータ硬さ(タイプA)試験をおこなった。
【0021】
(引張試験:引張強さ、破断時伸び、伸び100%時の引張応力)
JIS K 6251に規定される測定方法にしたがって試験をおこなった。
【0022】
(圧縮永久ひずみ試験)
JIS K 6262に規定される測定方法にしたがって試験をおこなった。(加熱条件:150℃、70時間)厚さ12.5±0.5mmの試験片を圧縮冶具にて25%圧縮し、加熱処理後の圧縮永久ひずみを求めた。
【0023】
(HFC134a浸漬試験)
JIS K 6258に規定される測定方法にしたがって試験をおこなった。HFC134a浸漬試験はHFC134a中に70℃で70時間浸漬した後、体積変化率を求めた。体積変化率が+10%を越えるとシール部材が溝からはみ出して漏れが生じる恐れがあるので、体積変化率+10%以下を○とした。+10%を越える値は×とした。
【0024】
(冷凍機油浸漬試験)
JIS K 6258に規定される測定方法にしたがって試験をおこなった。冷凍機油はPAG油およびPOE油を用い、それぞれに150℃で70時間浸漬した後、体積変化率を求めた。前述のHFC134a浸漬試験と同様、体積変化率が+10%以下を○、+10%を越える値は×とした。
【0025】
(HFC134aガス透過性試験)
Oリング形状の供試体を作成し、フランジタイプの溝に装着し、フランジの内側に所定量のHFC134aを封入して40℃の恒温槽内に静置した。Oリングを通過して外部回収容器に溜まった気体を採取し、ガスクロマトグラフィ−で計量した結果より単位時間当たりのHFC134a透過量を算出し、水素化ニトリルゴム単体使用の場合(比較例7)の透過量を1とした場合の相対比で結果を示した。
【0026】
(耐ブリスタ性試験(HFC134a))
供試体をHFC134a中に25℃で24時間浸漬した後、150℃の恒温槽に1時間静置し、取出し冷却後、供試体表面に発生したブリスタ(亀裂)状況を目視にて評価した。供試体表面に亀裂のないものを○、亀裂のあるものを×とした。
【0027】
本発明のゴム組成物を成形して得られるゴム成形物は、伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa以上であればHFC134aのブリスタの発生を抑制できる。HFC134aガス透過量についても、本発明のゴム成形物のOリングは水素化ニトリルゴム単体使用の場合のOリング(比較例7)と比較して、20%〜50%低減ができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は次の実施例に制限されるものではない。
【0029】
ゴム組成物の基本配合を次に示す。
・ 水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴムを所定の混合比で混合したゴムポリマー 100質量部
・ 充填剤(サーマルカーボンブラック、ファーネスカーボンブラック)
・ 架橋剤(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン)
・ 架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート:4質量部)
・ 金属酸化物(酸化亜鉛:3質量部)、
・ 老化防止剤(4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン:1質量部)
・ 可塑剤(トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル):8質量部)、
を表1の配合量で配合した。
【0030】
各成分をオープンロールにて混練し、混練物を175℃、10分間の加熱プレス成形機による1次加硫および150℃、4時間の恒温槽中加熱による2次加硫を行い、試験用試料を作製した。
【0031】
実施例1〜4、比較例1、2は表1に示す水素化ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴム(ムーニー粘度ML1+4(100℃)90)の各々の混合比率で、その他の添加する配合剤の量を固定し試験用試料を作製し測定した。
【0032】
実施例5〜7、比較例3、4は表1に示す通り、充填剤サーマルカーボンブラックの量を変え、その他の配合剤の量を固定し試験用試料を作製し測定した。
【0033】
実施例8はムーニー粘度ML1+4(100℃)の異なるエチレンプロピレンゴムを用いたゴム組成物であり、ムーニー粘度ML1+4(100℃)40値の共重合ゴムを用いて試験用試料を作製し測定した。
【0034】
実施例9、10と比較例5は表1に示す通り、充填剤をファーネスカーボンブラックに変え、その他の配合剤の量を固定し試験用試料を作製し測定した。
【0035】
比較例6は表1に示す通り、実施例3の架橋剤の量を減らし、その他の配合剤の量を固定し試験用試料を作製し測定した。
【0036】
比較例7は表1に示す通り、ゴムポリマーは水素化ニトリルゴム単独でその他の添加する配合剤の量を固定し試験用試料を作製し測定した。
【0037】
POE油に対する体積変化率は、水素化ニトリルゴムがゴムポリマー100質量部に対して40質量部以上では+10%以下であることが確認できる。また充填剤サーマルカーボンブラックの量を変量させた組成物(実施例3、5〜7、比較例3、4)の結果から、伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa未満であると、HFC134aガスのブリスタの発生が生じることがわかる。充填剤の種類をファーネスカーボンブラックに置換えた組成物(実施例9、10、比較例5)についても、同様に伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa未満の組成物はブリスタが発生していることが確認でき、また架橋剤、架橋助剤の量を少なくした比較例6でも、伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa未満であり、同様にブリスタが発生している。またムーニー粘度の異なるエチレンプロピレンゴムを用いた実施例8の結果から、ムーニー粘度値に関係なく、伸び100%時の引張応力M
100値が8.0MPa以上であればブリスタの発生を抑えることができる。
【0038】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のゴム組成物を成形して得られるゴム成形物を有するシール材は、水素化ニトリルゴム単体使用の場合と同等な機械特性を有し、フロン系冷媒(HFC134a)、冷凍機油(PAG油、POE油)に対する優れた耐性を有し、水素化ニトリルゴム単体使用の場合よりHFC134aの透過量が小さく、HFC134aに対するブリスタを抑制したシール材として好適に用いることができる。フロン用ゴム成形物の品質管理も伸び100%時の引張応力M
100値で管理が容易にできる。