特許第5653668号(P5653668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653668
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】防水構造、及び防水構造の改修方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/00 20060101AFI20141218BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   E04D5/00 F
   E04D5/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-159725(P2010-159725)
(22)【出願日】2010年7月14日
(65)【公開番号】特開2012-21314(P2012-21314A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2013年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 敬二
(72)【発明者】
【氏名】白岩 史年
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−151574(JP,A)
【文献】 特開平10−018523(JP,A)
【文献】 特開2010−031567(JP,A)
【文献】 特開2004−204486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
E04D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に対して取り外し可能な固定具によって固定され、前記下地の略全面を覆う板材と、
前記板材の表面に広がる接着層によって前記板材に接着された防水シートと、
前記板材と前記下地との間に介装された板状の断熱材と、
を備える防水構造の改修方法であって、
前記板材を前記下地から取り外すことによって、前記下地から前記防水シートを剥がし、前記断熱材を残存させて継続使用し、新たな防水シートを設けることを特徴とする防水構造の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造、及び防水構造の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に記載のように、ベランダや陸屋根等の外部床の防水構造として、接着剤を用いて床の下地に対し防水シートを全面的に接着する密着工法があった。この工法は、下地にディスクを所定の間隔でビス固定し、このディスクに防水シートを融着(溶着)するいわゆる絶縁工法に比べて、材料費が低廉で手間もかからない点で有利である。しかし、経年後の改修(防水シートの貼り替え)時に、全面接着された既存防水シートを剥がす必要があり、多大な手間を要するというデメリットがある。
【0003】
この手間を省くために、既存防水シートを剥がさず、新規防水シートを既存防水シートに全面接着する工法をとることもある。しかし、この工法では、劣化した既存防水シートが下地から剥がれることで新規防水シートが既存防水シートもろとも剥がれてしまったり、新規防水シートが劣化した既存防水シートから剥がれてしまったりする虞がある。また、既存防水シートの凹凸を新規防水シートが拾って美観を損なう虞もある。更に、新規防水シートに含まれる可塑剤が既存防水シートに移行して、新規防水シートの劣化が早まる虞もある。このように、この工法は品質上の問題が多く好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−280835公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の密着工法による防水構造における改修時の問題を解決するためになされたものであり、改修作業を容易に行うことのできる防水構造及び防水構造の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防水構造の改修方法は、下地に対して取り外し可能な固定具によって固定され、下地の略全面を覆う板材と、板材の表面に広がる接着層によって板材に接着された防水シートと、板材と下地との間に介装された板状の断熱材と、を備える防水構造の改修方法であって、板材を下地から取り外すことによって、下地から防水シートを剥がし、断熱材を残存させて継続使用し、新たな防水シートを設けることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る防水構造の改修方法によれば、下地に対して全面接着された防水シートを剥がす場合に比して、改修作業の手間を大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、密着工法による防水構造における改修作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る防水構造を示す断面図である。
図2図1においてA1で示す部分の拡大断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る防水構造を示す断面図である。
図4図3においてA2で示す部分の拡大断面図である。
図5】本発明の第三実施形態に係る防水構造を示す断面図である。
図6図5においてA3で示す部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る防水構造、及びその改修方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
[第一実施形態]
図1及び図2を参照して、本発明の第一実施形態に係る防水構造1及びその改修方法について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る防水構造1を示す断面図である。図2は、図1においてA1で示す部分の拡大断面図である。第一実施形態に係る防水構造1は、木造建築物のベランダBL1の床に適用されている。防水構造1は、ベランダBL1の下地合板(下地)FB1の防水性を確保すると共に、改修を行いやすくすることのできる構造である。防水構造1は、下地合板FB1の上面に固定された捨て貼り板(板材)2と、捨て貼り板2の表面2aの全面にわたって形成された接着層3と、接着層3によって捨て貼り板2に固定された防水シート4とを備えて構成されている。なお、接着層3は、防水シート4に比して非常に薄く、図1においては省略されている。また、図2においては構成を理解し易くするために接着層3が実際よりも厚く示されている。
【0015】
捨て貼り板2は、下地合板FB1に対して取り外し可能に固定された板材であり、下地合板FB1の上面に配置されている。捨て貼り板2は構造用合板からなり、下地合板FB1の略全面を覆うように、ベランダBL1の面積に応じて複数枚敷かれている。捨て貼り板2は、2〜30mm程度、より好ましくは6〜12mm程度の厚さに設定することができる。捨て貼り板2としては、構造用合板の他に、例えば、普通合板、プラスチック合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、珪カル板、セメント板(フレキシブル板、大平板)などを用いることができる。
【0016】
捨て貼り板2は、下地合板FB1に対して部分的に固定され(すなわち、下地合板FB1に対して広い面積にわたって塗布された接着剤・粘着剤などによって全面的に接着する固定法ではなく)、改修時において容易に取り外し可能となっている。具体的には、捨て貼り板2は、当該捨て貼り板2を貫通して下地合板FB1に先端部が到達するようにねじ込まれた、木ビスからなる固定具6によって固定されている。この固定具6は、捨て貼り板2を複数箇所で部分的に固定している。固定具6の後端部、すなわち頭部6aは、捨て貼り板2の表面2aから突出している。改修時においては、それぞれの固定具6を引き抜くだけで、捨て貼り板2を容易に下地合板FB1から取り外すことができる。固定具6としては、他に、例えば釘やタッカーを用いることができる。
【0017】
接着層3は、捨て貼り板2の表面2aに対して防水シート4を接着するための層である。接着層3は、捨て貼り板2の表面2aに粘着剤(粘性を有し、防水シート4の伸縮等に伴う捨て貼り板2と防水シート4との相対的な変位を許容するもの)あるいは接着剤(硬化して捨て貼り板2と防水シート4との相対的な変位を許容しないもの)を塗布することによって形成される。接着層3は、捨て貼り板2の表面2aの全面に形成されており、これによって、防水シート4は、捨て貼り板2に対して全面接着されている。ただし、防水シート4の一部において接着されていない部分があることにより、略全面接着とされていてもよい。接着層3と下地合板FB1との間には捨て貼り板2が介在しているため、接着剤や粘着剤が下地合板FB1に付着することが防止される。接着層3は、100〜3000μm程度の厚さに設定することができる。接着層3を構成する粘着剤として、ネオプレンゴム系、アクリルゴム系、ブチルゴム系、シリコンゴム系、ウレタンゴム系、ゴムアスファルト系のものを用いることができる。また、接着層3を構成する接着剤として、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系のものを用いることができる。
【0018】
防水シート4は、捨て貼り板2を介して下地合板FB1の上面を覆うことによって、下地合板FB1の防水性を確保する。この防水シート4は、改修時においては、捨て貼り板2もろとも下地合板FB1から取り外すことによって、当該下地合板FB1から剥離することが可能である。防水シート4の厚さは、1〜5mm程度、より好ましくは1.5〜2.3mmに設定することができる。防水シート4として、塩ビ防水シート、アスファルト防水シート、改質アスファルト防水シート、アクリルゴム防水シート、オレフィン系防水シートなどを用いることができる。なお、防水シート4の縁部は、壁W1の溝部H1に取り付けられた鋼板APに対して溶着されている。また、溝部H1には、鋼板APに溶着された防水シート4の端縁部を巻き込んだ状態でシーリング剤Sが充填される。
【0019】
前述のとおり、固定具6の後端部、すなわち頭部6aは、捨て貼り板2の表面2aから突出している。また、防水シート4は柔軟性を有しており、固定具6の後端部である頭部6aに対応する位置において、表面4a側に突出して突出部8が形成される。この突出部8は、外側から目視あるいは手触りでその位置が確認でき、改修時において、防水シート4の上からでも固定具6の位置を把握することができる。突出部8の突出寸法は、美観を損なわない程度、あるいは防水シート4の上面に保護材を敷設する場合は敷設に支障が生じない程度の突出量とすることが好ましい。具体的には、防水シート4の表面4aの平坦な部分よりも0.5〜1.0mm程度突出していることが好ましい。
【0020】
次に、上述のような防水構造1の新築時の施工手順、及び経年後の改修作業の手順について説明する。
【0021】
まず、新築時においては、下地合板FB1の上面に捨て貼り板2を割付けて、固定具6として木ビスを捨て貼り板2及び下地合板FB1に打ち込むことによって、捨て貼り板2を下地合板FB1に固定する。次に、捨て貼り板2の表面2aに粘着剤を塗布して接着層3を形成する。塗布された粘着剤がある程度乾燥した後、防水シート4を捨て貼り板2の表面2aに貼り付ける。防水シート4同士は、溶剤溶着や熱風溶着にて接合して防水性を確保する。
【0022】
10〜30年後の防水構造1の改修時においては、防水シート4の表面4aを視認あるいは手で撫でて突出部8を探し出すことによって、固定具6の位置を確認する。確認後、突出部8の位置において防水シート4をカッターなどで切断して、固定具6の頭部6aを露出させる。その後、ドライバーなどの工具を用いて固定具6を下地合板FB1及び捨て貼り板2から抜き取る。
【0023】
固定具6を抜き取った後、捨て貼り板2の継目JLに沿って防水シート4をカッター等で切断する。これによって、防水シート4は、捨て貼り板2一枚の大きさに分割され、これらの捨て貼り板2を取り外すことによって、容易に下地合板FB1から剥離することができる。このとき、下地合板FB1に対する捨て貼り板2の固定は、固定具6による部分的なものであるので、下地合板FB1の上面には固定具6を抜き取った跡のみが所々残されるだけであり、下地合板FB1の継続的使用に全く問題はない。既存防水シート4を剥がした後、再び下地合板FB1に防水構造1を設ける。新たな防水構造1の施工は、上述の新築時における改修準備と同じ工程にて行うことができる。
【0024】
以上のように、本実施形態に係る防水構造1及びその改修方法によれば、防水シート4が、下地合板FB1に対して取り外し可能に固定された捨て貼り板2を介して、下地合板FB1を覆う構成となっている。従って、改修時においては、捨て貼り板2を下地合板FB1から取り外すだけで、下地合板FB1から防水シート4を剥がすことが可能となる。従って、下地合板FB1に対して全面接着された防水シートを剥がす場合に比して、改修作業の手間を大幅に削減することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る防水構造1において、捨て貼り板2は、固定具6によって下地合板FB1に対し部分的に固定される構成となるため、改修時においては、固定具6を抜き取るだけの作業で、捨て貼り板2及び防水シート4を容易に取り外すことが可能となる。また、防水シート4は、固定具6の頭部6aに対応する位置において突出する突出部8を有しているため、固定具6の位置を防水シートの上から容易に探し当てることが可能となる。これによって改修作業が一層容易になる。
【0026】
[第二実施形態]
図3及び図4を参照して、本発明の第二実施形態に係る防水構造100及びその改修方法について説明する。図3は、本発明の第二実施形態に係る防水構造100を示す断面図である。図4は、図3においてA2で示す部分の拡大断面図である。第二実施形態に係る防水構造100は、鉄骨造の建築物などのベランダBL2の床に適用されている点で、第一実施形態と主に相違している。このときの下地パネルFB2は、ALC(軽量気泡コンクリート)板、プレキャストコンクリート板などである。
【0027】
第二実施形態に係る防水構造100においては、具体的に、捨て貼り板2として、2〜30mm程度、より好ましくは6〜12mm程度の合板(構造用合板、普通合板)、プラスチック合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、珪カル板、セメント板(フレキシブル板、大平板)などが用いられる。また、固定具6として、ALC用釘、またはALC用のナイロンプラグ、コンクリート釘、コンクリート用ナイロンプラグ、コンクリート用アンカー金具など、下地パネルFB2の材質に適したものが適宜用いられる。また、接着層3を構成する粘着剤として、ネオプレンゴム系、アクリルゴム系、ブチルゴム系、シリコンゴム系、ウレタンゴム系、ゴムアスファルト系のものを用いることができる。また、接着層3を構成する接着剤として、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系のものを用いることができる。このような第二実施形態に係る防水構造100は、第一実施形態に係る防水構造1と同様な手順にて新築時の施工及び径年後の改修作業が行われる。
【0028】
このような鉄骨造に係る建築物に対して適用される第二実施形態に係る防水構造100及びその改修方法においても、第一実施形態に係る防水構造1及びその改修方法と同様な作用効果が得られ、改修作業を容易に行うことができる。
【0029】
[第三実施形態]
図5及び図6を参照して、本発明の第三実施形態に係る防水構造200及びその改修方法について説明する。図5は、本発明の第三実施形態に係る防水構造200を示す断面図である。図6は、図5においてA3で示す部分の拡大断面図である。第三実施形態に係る防水構造200は、下地合板FB1の上面に既存防水シート11が全面接着された既築建物のベランダBL1の床を改修する場合に適用した例である。本実施形態では、既存防水シート11は下地合板FB1から容易に剥がすことができないため、既存防水シート11をそのまま残存させておき、その上面に捨て貼り板2を敷設し、固定具6によって捨て貼り板2を固定している。その他の部分における構成は、第一実施形態に係る防水構造1と同様である。
【0030】
防水構造200の施工手順、及び経年後の改修作業の手順について説明すると、まず、改修準備時においては、下地合板FB1の上面に接着されている既存防水シート11上に捨て貼り板2を割付けて、固定具6として木ビスを捨て貼り板2、既存防水シート11及び下地合板FB1に打ち込むことによって、捨て貼り板2を既存防水シート11を介して下地合板FB1に固定する。その後、接着層3によって防水シート4を捨て貼り板2の表面2aに貼り付ける。このとき、固定具6は下地合板FB1に十分に打ち込まれているため、防水シート4及び捨て貼り板2は、既存防水シート11の下地合板FB1からの剥がれの影響をうけず、十分に下地合板FB1に固定された状態を維持できる。また、捨て貼り板2が防水シート4と既存防水シート11との間に介在しているため、既存防水シート11の凹凸が新たな防水シート4の表面に現れて美観を損なう虞がなく、防水シート4に含まれる可塑剤が既存防水シート11に移行して防水シート4の劣化が早まる虞もない。10〜30年後の防水構造200の改修時においては、捨て貼り板2及び防水シート4のみを取り外して、既存防水シート11の上面に対して再び防水構造200を設ける。
【0031】
以上のように、下地に既存防水シート11が全面接着されている第三実施形態に係る防水構造200及びその改修方法においても、第一実施形態に係る防水構造1及びその改修方法と同様な作用効果が得られ、改修作業を容易に行うことができる。また、既存防水シート11によって新たな防水シート4に悪影響が及ぶことも防止することができる。
【0032】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、下地の材質は固定具6を打ち込むことのできる材質であれば特に限定されない。また、上述の実施形態では、ベランダにおける床の防水を例にしたが、他の部位、例えば陸屋根など対しても適用することができる。また、床や陸屋根など平坦面のみならず、勾配屋根など傾斜面にも適用できる。
【0034】
また、板材が下地に直接固定される構成に限定もされず、例えば、板材と下地との間に発泡プラスチック系の板状の断熱材が介装され、板材と断熱材とを貫通する固定具にて板材と断熱材が下地に固定される構成であってもよい。この構成では、改修の際、防水シート及び板材とを取り外し、断熱材を残存させ継続使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,100,200…防水構造、2…捨て貼り板(板材)、2a…表面、3…接着層、4…防水シート、4a…表面、6…固定具、6a…頭部(外側の端部)、FB1…下地合板(下地)、FB2…下地パネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6