(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸気タービンを利用して所定の電力で発電を行う発電部と、前記発電部において利用される蒸気を復水する復水器と、取水口から取水された冷却水を前記復水器に送水し、前記復水器において熱交換が行われた冷却水を放水口から放水する冷却水送水部とを備えた発電所における発電部の発電出力制御システムであって、
前記取水口から取水されて、前記冷却水送水部により前記復水器に送水される冷却水の取水温度を測定する取水温度測定部と、
前記冷却水送水部により前記復水器から送水されて、前記放水口から放水される冷却水の放水温度を測定する放水温度測定部と、
前記取水温度測定部により測定された取水温度と前記放水温度測定部により測定された放水温度との温度差を算出する温度差算出部と、
前記取水温度測定部により測定される取水温度の変化量を、潮位の変動の影響を受ける取水温度の急激な温度変化に対応し得る所定の時間間隔で算出する温度変化算出部と、
前記温度差算出部により算出される温度差が第1の値に到達した場合に、前記温度変化算出部により算出される変化量が所定の変化量をよりも低下しているかを判定する判定部と、
前記温度変化算出部により算出される変化量が所定の変化量よりも低下していないと前記判定部により判定された場合に、前記発電部の発電出力を抑制する発電制御部と、
前記温度変化算出部により算出される変化量が所定の変化量よりも低下していると前記判定部により判定された場合に、前記発電部の発電出力を抑制するときの取水温度と放水温度との温度差を第1の値よりも大きな第2の値に設定する設定部と、を備え、
前記発電制御部は、前記設定部により第2の値が設定された状態で、前記温度差算出部により算出される温度差が第2の値を超えた場合に、前記発電部の発電出力を抑制する
ことを特徴とする発電部の発電出力制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る発電部の発電出力制御システム(以下、発電出力制御システム1という。)について説明する。発電出力制御システム1は、発電所100において利用されるシステムであるため、まず、発電所100について説明する。
図1は、発電所100に備えられた発電出力制御システム1の一実施形態について説明するための図である。
【0013】
発電所100は、発電部10と、復水器13と、冷却水送水部15と、発電出力制御システム1とを備える。発電部10は、蒸気タービン11を利用して所定の出力で発電を行う。発電部10は、蒸気タービン11と、蒸気タービン11を利用することにより発電を行う発電機12とを備える。復水器13は、蒸気タービン11において利用される蒸気を復水する。
【0014】
冷却水送水部15は、取水口16から取水された冷却水(ここでは海水)を復水器13に送水し、復水器13において熱交換が行われた冷却水を放水口17から放水する。具体的には、冷却水送水部15は、取水口16と復水器13とを接続すると共に、復水器13と放水口17とを接続する送水管18を備える。送水管18には、動翼(図示せず)を備える循環ポンプ19が配置される。動翼は、開度が0%から100%の間で遷移可能とされている。動翼の開度が100%の場合には、循環ポンプ19は、最大流量の冷却水を送水する。動翼の開度は、制御部30による自動制御により、又は手動制御により調整することができる。
【0015】
発電出力制御システム1は、取水温度測定部20と、放水温度測定部21と、温度差算出部31と、温度変化算出部32と、判定部33と、設定部34と、発電制御部35と、逆洗制御部36とを備える。なお、温度差算出部31と、温度変化算出部32と、判定部33と、設定部34と、発電制御部35と、逆洗制御部36とは、制御部30に備えられる。制御部30は、演算装置(CPU)や、所定のソフトウェアを記憶する記憶装置等を備えるコンピュータ等から構成される。
【0016】
取水温度測定部20は、取水口16から取水されて、冷却水送水部15により復水器13に送水される冷却水の取水温度を測定する温度センサである。放水温度測定部21は、冷却水送水部15により復水器13から送水されて、放水口17から放水される冷却水の放水温度を測定する温度センサである。温度差算出部31は、取水温度測定部20により測定された取水温度と放水温度測定部21により測定された放水温度との温度差を算出する。
【0017】
温度変化算出部32は、取水温度測定部により測定される取水温度の変化量を算出する。温度変化算出部32は、例えば、取水温度測定部20において測定された冷却水の取水温度と、前回測定された冷却水の取水温度との差を算出することに基づいて、取水温度の変化量を得る。
【0018】
判定部33は、温度差算出部31により算出される温度差が第1の値に到達した場合に、前記温度変化算出部により算出される変化量が所定の変化量をよりも低下しているかを判定する。すなわち、判定部33は、後述するように、取水温度測定部20において測定される温度が急激に低下しているかを判定する。第1の値は、適宜設定されればよく、一例として6.8℃に設定される。
【0019】
設定部34は、温度変化算出部32により算出される変化量が所定の変化量をよりも低下していると判定部33により判定された場合に、発電部10の発電出力を抑制するときの取水温度と放水温度との温度差を第1の値よりも大きな第2の値に設定する。第2の値は、適宜設定されればよく、一例として7.4℃に設定される。
【0020】
発電制御部35は、温度変化算出部32により算出される変化量が所定の変化量よりも低下していないと判定部33により判定された場合に、発電部10の発電出力を抑制する。また、発電制御部35は、設定部34により第2の値が設定された状態で、温度差算出部31により算出される温度差が第2の値を超えた場合に、発電部10の発電出力を抑制する。発電制御部35は、例えば、蒸気タービン11への蒸気の流入量を少なくすることに基づいて、発電出力を抑制する。
【0021】
また、発電制御部35は、設定部34により第2の値が設定され、温度変化算出部32により算出される変化量が所定の変化量をよりも低下していると判定部33により判定されてから所定の時間経過した場合に、温度差算出部31により算出される温度差が低下しないときには、発電部10の発電出力を抑制する。所定の時間は、取水口16から取水された冷却水が復水器13を通過して、放水口17から放水されるまでの時間に応じて適宜設定され、一例として30分に設定される。すなわち、冷却水の取水温度が急激に低下した場合、その冷却水が復水器13を通過して放水口17まで放水されるまでに時間がかかる。このため、冷却水の取水温度が急激に低下して、所定の時間経過しない場合には、温度差算出部31により算出される温度差は、冷却水の取水温度が急激に低下する前の温度差に比べて上昇する。冷却水の取水温度が急激に低下してから所定の時間経過した場合には、取水温度が低下した冷却水が復水器13を通過して放水口17から放水されるので、冷却水の放水温度は低下する。したがって、温度差算出部31により算出される温度差は、所定の時間経過する前に比べて低下する。ところが、何らかの理由により、所定の時間を経過しても、温度差算出部31により算出される温度が低下しない場合には、発電制御部35は、発電部10の発電出力を抑制する。これにより、放水温度が低下することに基づいて、温度差算出部31により算出される温度差は低下する。
【0022】
逆洗制御部36は、温度差算出部31により算出される温度差が上記の第1の値を超える前に復水器13の逆洗を行う。逆洗は、復水器13の細管(図示せず)に付着した海洋生物等を除去して、細管内を冷却水が円滑に流れるようにするために行われる。
図2は、復水器13及び冷却水送水部15の詳細(一例)について説明するための図である。ここで、
図2(A)は、復水処理時について説明するための図である。また、
図2(B)は、逆洗処理時について説明するための図である。冷却水送水部15は、逆洗制御部36による制御に基づいて冷却水の流れる向きを切り替える逆洗弁18eを備える。逆洗弁18eには、取水口16と連通させる第1送水管18aと、復水器13の一方の端部13a側と連通させる第2送水管18bと、復水器13の他方の端部13b側と連通させる第3送水管18cと、放水口17と連通させる第4送水管18dとが接続される。
図2(A)に示すように、復水器13において復水処理を行う場合には、第1送水管18aと第2送水管18bとを接続すると共に、第3送水管18cと第4送水管18dとを接続するように、逆洗弁18eは逆洗制御部36により制御される。これにより、復水器13には、一方の端部13a側から他方の端部13b側に冷却水が流れる。一方、
図2(B)に示すように、復水器13の逆洗処理を行う場合には、第1送水管18aと第3送水管18cとを接続すると共に、第2送水管18bと第4送水管18dとを接続するように、逆洗弁18eは逆洗制御部36により制御される。これにより、復水器13には、他方の端部13b側から一方の端部13a側に冷却水が流れる。
【0023】
次に、取水温度測定部20において測定される取水温度の変動について説明する。
図3は、夏季における、潮位、取水温度及び放水温度の一例について説明するための図である。ここで、
図3の縦軸は、取水温度測定部20及び放水温度測定部21において測定される冷却水(ここでは海水)の温度[℃]を示す。また、横軸は、時刻を示す。
【0024】
実線Aは、潮位の変動を示し、点A1において干潮となり、点A2において満潮となる。
実線Bは、取水温度測定部20において測定される取水温度を示す。取水温度は、潮位が干潮から満潮に遷移する間のB1において、急激な低下を示している。取水温度の急激な低下は、次のような理由によるものである。すなわち、夏季では、海の表層部の水温が高い一方、中層部や底層部の水温が表層部よりも低い。そして冷却水の取水温度は、干潮時には表層部の海水が取水口16に多く流入するため高くなるが、潮が満ちてきた時には中層部や底層部の海水が取水口16に流入するため低下する。したがって、干潮から満潮に遷移する場合には、取水口16に中層部や底層部の海水が流入するため、取水温度は急激に低下する。なお、所定の時間tで所定の温度Tを低下した場合に、取水温度の急激な低下が発生したとすればよい。ここで、所定の時間tは、適宜設定される時間であり、一例としては30分である。また、所定の温度Tは、適宜設定される温度であり、一例としては1℃である。
【0025】
実線Cは、放水温度測定部21において測定される放水温度を示す。放水温度は、取水温度の急激な低下が発生してから約30分経過したC1において、急激な低下を示している。これは、取水口16から取水された低温の冷却水が復水器13を通過して放水口17から放水されたためである。
【0026】
なお、取水温度の急激な低下は、冬季においても発生する。すなわち、冬季では、海の表層部の水温が低い一方、中層部や底層部の水温が表層部よりも高い。そして冷却水の取水温度は、満潮時には中層部や底層部の海水が取水口16に流入するため高くなるが、潮が引いた時には表層部の海水が取水口16に流入するため低下する。したがって、満潮から干潮に遷移する場合には、取水口16に表層部の海水が流入するため、取水温度は急激に低下する。
【0027】
次に、発電出力制御システム1の動作について説明する。
図4は、発電出力制御システム1の動作について説明するための第1のフローチャートである。
図5は、発電出力制御システム1の動作について説明するための第2のフローチャートである。
【0028】
図4に示すステップS101において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)は第1の値(例えば、6.8℃)に到達したかを判断する。なお、取放水口の温度差は、温度差算出部により算出される。取放水口の温度差が第1の値に到達した場合(Yes)には、ステップS102に進む。取放水口の温度差が第1の値に到達していない場合(No)には、ステップS101の判断を再度行う。
【0029】
ステップS102において、制御部30は、循環ポンプ19の動翼の開度が100%か否かを判断する。動翼の開度が100%未満の場合には、ステップS103に進む。動翼の開度が100%の場合には、ステップS105に進む。
【0030】
ステップS103において、オペレータが操作盤(図示せず)を操作して循環ポンプ19の動翼の開度を100%に設定したことに基づいて、制御部30は、動翼の開度が100%になるよう動翼(循環ポンプ19)を制御する。
【0031】
ステップS104において、制御部30は、ステップS103の制御を行ってから予め決められた時間(例えば、20分)経過させる。ステップS104の処理の後は、ステップS101に進む。
【0032】
ステップS102において循環ポンプ19の開度が100%であると判断された場合、ステップS105において、判定部33は、温度変化算出部32による取水温度の変化量の算出結果に基づいて、取水温度の動向を確認する。すなわち、判定部33は、取水温度が低下している(急激に低下している)か否かを判断する。取水温度の急激な低下現象がある場合には、ステップS106に進む。取水温度の急激な低下現象がない場合には、ステップS113に進む。
【0033】
ステップS106において、設定部34は、発電部10の発電出力を抑制するときの取水温度と放水温度との温度差を第2の値に設定する。
【0034】
ステップS107において、制御部30は、取水温度と放水温度との温度差が設定部34により設定された第2の値(例えば、7.4℃)を超えたか否かを判断する。温度差が第2の値を超過していない場合には、ステップS108に進む。温度差が第2の値を超過した場合には、ステップS113に進む。
【0035】
ステップS108において、制御部30は、取水温度の低下が始まってから予め決められた時間(例えば、30分)経過させる。
【0036】
ステップS109において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)が低下したか否かを判断する。取放水口の温度差が低下している場合には、ステップS110に進む。取放水口の温度差が低下していない場合には、ステップS113に進む。
【0037】
ステップS110において、制御部30は、予め決められた時間(例えば、15分)経過させる。
【0038】
ステップS111において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)が予め設定された温度(例えば、6.5℃)を超えるか否かを判断する。取放水口の温度差が6.5℃以下の場合には、ステップS112に進む。取放水口の温度差が6.5℃を超える場合には、ステップS113に進む。
【0039】
ステップS112において、制御部30は、予め決められた時間(例えば、30分)経過させる。ステップS112の処理の後は、
図5に示すステップS207に進む。
【0040】
ステップS113において、発電制御部35は、発電部10の発電出力を現状よりも50MW降下させる。
【0041】
ステップS114において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)が予め設定された温度(例えば、6.5℃)を超えるか否かを判断する。取放水口の温度差が6.5℃以下の場合には、
図5に示すステップS201に進む。取放水口の温度差が6.5℃を超える場合には、ステップS113に進む。
【0042】
次に、
図5に示すステップS201において、逆洗制御部36は、復水器13の逆洗処理を行うよう制御する。
【0043】
ステップS202において、制御部30は、予め決められた時間(例えば、30分)経過させる。
【0044】
ステップS203において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)が予め設定された温度(例えば、6.0℃)を超えるか否かを判断する。取放水口の温度差が6.0℃以下の場合には、ステップS204に進む。取放水口の温度差が6.0℃を超える場合には、ステップS201に進む。
【0045】
ステップS204において、制御部30は、発電出力の下降の有無(ステップS113の処理が行われているか否か)を判断する。発電出力の下降がされている場合(有)には、ステップS205に進む。発電出力の下降がされていない場合(無)には、ステップS207に進む。
【0046】
ステップS205において、発電制御部35は、発電部10の発電出力を現状よりも50MW上昇させる。
【0047】
ステップS206において、制御部30は、予め決められた時間(例えば、30分)経過させる。
【0048】
ステップS207において、オペレータが操作盤(図示せず)を操作して循環ポンプ19動翼の開度を90%に設定したことに基づいて、制御部30は、動翼の開度が90%になるよう動翼(循環ポンプ19)を制御する。
【0049】
ステップS208において、制御部30は、予め決められた時間(例えば、20分)経過させる。
【0050】
ステップS209において、制御部30は、取放水口の温度差(取水温度と放水温度との温度差)が予め設定された温度(例えば、6.2℃)を超えるか否かを判断する。取放水口の温度差が6.2℃以下の場合には、ステップS210に進む。取放水口の温度差が6.2℃を超える場合には、
図4に示すステップS103に進む。
【0051】
ステップS210において、制御部30は、循環ポンプ19の動翼の開度を制御部30により自動制御するように設定する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の発電出力制御システム1によれば、以下の効果が奏される。
すなわち、本実施形態の発電出力制御システム1は、判定部33により取水温度が低下していると判定された場合には、発電制御部35により発電出力の抑制を実行するときの温度差を第1の値よりも大きな第2の値に設定し、温度差算出部31により算出される温度差が第2の値を超えると発電部10の発電出力を抑制するので、不要な発電出力の抑制を回避して、効率よく発電を行うことができる。
【0053】
また、発電出力制御システム1は、温度差算出部31により算出される温度差が第1の値を超える前に復水器13の逆洗を行うので、取水温度と放水温度との温度差の上昇を緩和することができ、不要な発電出力の抑制を回避して、効率よく発電を行うことができる。