特許第5653752号(P5653752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアンの特許一覧

特許5653752アルミナ及び酸化クロムに基づく焼結生成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653752
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】アルミナ及び酸化クロムに基づく焼結生成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/101 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   C04B35/10 F
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-515647(P2010-515647)
(86)(22)【出願日】2008年7月10日
(65)【公表番号】特表2011-527276(P2011-527276A)
(43)【公表日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2008052783
(87)【国際公開番号】WO2009007933
(87)【国際公開日】20090115
【審査請求日】2011年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】506426269
【氏名又は名称】サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・シッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエン・フォーケード
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−208863(JP,A)
【文献】 特開2003−089574(JP,A)
【文献】 特開平11−310452(JP,A)
【文献】 特開2001−316172(JP,A)
【文献】 特開平06−088278(JP,A)
【文献】 特開昭54−043909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.00g/cmより大きい見掛け密度を示し、1500℃で250Ω・cmを超える、100Hzの周波数で測定された電気抵抗率を有し、酸化物に基づく重量百分率として全体を100%として以下の平均化学組成を有する焼結生成物:
Al:100%までの補足数、
16%≦Cr≦29.5%、
Cr/TiO重量比が16を超えて35未満であるような量のTiO
他の化学種:≦1%。
【請求項2】
Cr/TiO重量比が21を超えて35未満であるような量のTiOを有する、請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
26を超えるCr/TiO重量比を有する、請求項1または2に記載の生成物。
【請求項4】
32未満であるCr/TiO重量比を有する、請求項1から3の何れか一項に記載の生成物。
【請求項5】
30未満であるCr/TiO重量比を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の生成物。
【請求項6】
前記アルミナ(Al)含有量が65%を超え、及び/又は、
前記酸化クロム(Cr)含有量が20%を超え、及び/又は、
前記酸化チタン(TiO)含有量が0.4%を超える、請求項1から5の何れか一項に記載の生成物。
【請求項7】
前記アルミナ(Al)含有量が69%を超え、及び/又は、
前記酸化クロム(Cr)含有量が26%を超え、及び/又は、
前記酸化チタン(TiO)含有量が0.9%を超える、請求項1から6の何れか一項に記載の生成物。
【請求項8】
前記アルミナ(Al)含有量が80%未満であり、及び/又は、
前記酸化チタン(TiO)含有量が2%未満である、請求項1から7の何れか一項に記載の生成物。
【請求項9】
前記アルミナ(Al)含有量が75%未満であり、及び/又は、
前記酸化チタン(TiO)含有量が1.5%未満である、請求項1から8の何れか一項に記載の生成物。
【請求項10】
950℃で35000Ω・cmを超え、100Hzの周波数で測定された電気抵抗率、及び/又は、120またはそれを超えるイーガラスに対する耐食性指数Icを有する、請求項1から9の何れか一項に記載の生成物。
【請求項11】
1500℃で500Ω・cmを超え、及び/又は、950℃で50000Ω・cmを超える、100Hzの周波数で測定された電気抵抗率、及び/又は、250またはそれを超えるイーガラスに対する耐食性指数Icを有する、請求項1から10の何れか一項に記載の生成物。
【請求項12】
5kgを超える質量を有するブロックの形態である、請求項1から11の何れか一項に記載の生成物。
【請求項13】
前記酸化物Fe、SiO及びMgOの総含有量が0.4%未満である、請求項1から12の何れか一項に記載の生成物。
【請求項14】
電極ブッシングブロックと、電解セルの要素と、溶融イーガラス及び/又はイーガラスより抵抗が大きい溶融ガラスと接触をもたらし得るガラス炉の領域の要素と、から選択され、請求項1から13の何れか一項に記載の焼結生成物で作られる耐火要素。
【請求項15】
(a)出発材料を混合して出発混合物を生成する段階であって、前記使用される出発材料のメジアン径が、100μm未満であり、前記出発混合物が、請求項1から14の何れか一項に記載の焼結生成物を得るように決定される段階と、
(b)静水圧プレス成形を行って前記出発混合物からグリーン体を形成する段階と、
(c)前記グリーン体を焼結して焼結生成物を得る段階と、
を備える、焼結生成物の製造方法。
【請求項16】
前記静水圧プレス成形が、100MPaを超える圧力で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記出発混合物が、前記出発混合物の乾燥重量に基づく重量百分率としてシャモットの少なくとも10%であって30%未満を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥した出発混合物が、50μm未満のメジアン粒径を示す粉末で構成される、請求項15から17の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ及び酸化クロムから製造される新規な焼結生成物、それらの製造方法、並びに、特にガラス炉及び電解セルにおけるそれらの使用方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
耐火生成物は、溶融鋳造生成物及び焼結生成物を含む。
【0003】
焼結生成物と対称的に、溶融鋳造生成物は、通常、結晶粒子のマトリクスを満たす相当な量の粒間のガラス相を含む。従って、焼結生成物及び溶融鋳造生成物の各々の用途においてそれらが遭遇する問題、並びに、それらを解決するために使用される技術的な解決法は異なる。さらに、製造方法間にも実質的な差異があるので、溶融鋳造製造物を製造するために生み出される組成は、本質的に焼結生成物を製造するために使用することが推測的にできず、また反対も真である。
【0004】
焼結生成物は、適切な出発材料を混合し、次いでグリーン混合物を形成し、及び、結果として得られたグリーン体を、グリーン体を焼結するために十分な時間及び温度で焼成することによって得られる。
【0005】
焼結生成物は、それらの化学組成に依存して多様な産業を対象とする。
【0006】
焼却炉との関連で、例えば米国特許US−A−6,352,951は、ジルコニアも含有する、アルミナ及びクロムに基づくブロックを開示している。
【0007】
ガラス炉との関連で、US−A−4,823,359は、スラグ及び溶融ガラスに対する良好な耐食性及び浸食性を有する、アルミナ及びクロムで構成される被覆を開示している。酸化チタンは言及されておらず、また電気抵抗率も言及されていない。
【0008】
一特定の実施形態において、“電極ブッシングブロック”という呼ばれる耐火ブロックは、ガラスを溶融するための電気炉の電極を支持する。従って、それが接触をもたらす溶融ガラスによる耐食に効果的に抵抗することができるだけではなく、それは、漏れ電流の量を低下させるために、一般的に1450℃から1500℃の範囲の動作温度で高い電気抵抗率も有しなければならない。従って、電極付近での耐火材料の急速な劣化、特に電極ブッシングブロックを構成する耐火材料の劣化は避けられない。
【0009】
高い溶融温度及び従ってより高い電気エネルギーを必要とする、非常に高い品質のガラスの現在の進歩は、ガラス炉における耐火性生物、及び、特に電極ブッシングブロックとして使用される生成物における要求を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,352,951号明細書
【特許文献2】米国特許第4,823,359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、溶融ガラスに対する良好な耐食性、及び、特に約1500℃の温度における高い電気抵抗率を有する新規な耐火生成物に対する要求がある。
本発明は、この要求を満足することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、好ましくは4.00g/cmより大きい見掛け密度を示し、酸化物に基づく重量百分率として全体を100%として以下の平均化学組成を有する焼結生成物:
61.8≦Al≦98.3、より一般的には、Al:100%までの補足数、
1.6%≦Cr≦35%、好ましくは、16%≦Cr、及び/又は、Cr≦29.5%、
Cr/TiO重量比が16を超え、好ましくは35未満であるような量の、0.1%≦TiO≦2.2%、
他の化学種:≦1%。
【0013】
予想外に、本発明者は、Cr/TiO重量比を修正することが、注目すべき性能、特に、溶融ガラスに対する耐食性と約1500℃の温度における電気抵抗率との間に非常に良好な妥協点をもたらすことができることを見出した。
【0014】
従って、本発明の生成物は、好ましくは、16.2を越え、好ましくは17を超え、さらに好ましくは19を超え、21を超え又は24を超え、26または28さえも超え、及び/又は、32未満であり、好ましくは30未満であるCr/TiO重量比を有する。約28.5のCr/TiO重量比が最適であることが分かる。
【0015】
従って、本発明の生成物は、特に、それが、強化ガラス(イーガラス)及び電子ガラスなどの溶融ガラスと接触をもたらすものである場合、電極ブッシングブロックとしての用途に非常に相応しい。
【0016】
好ましくは、本発明の生成物は、以下の任意の特徴の1つ又はそれ以上も示す:
・アルミナAlの含有量は、61.8%またはそれを超え、63%を超え、好ましくは65%を超え、より好ましくは69%を超え、及び/又は、98.3%またはそれ未満であり、80%未満であり、好ましくは75%未満である。より好ましくは、アルミナ含有量は、約70%であり、考えられる実施形態であれば何でも、アルミナは、Cr、TiO及び“他の化学種”の、100%までの補足数である。
・酸化クロムCrの含有量は、20%を超え、好ましくは24%を超え、より好ましくは26を超え、及び/又は、33%未満であり、好ましくは30%未満である;この含有量は、好ましくは29.5%未満であり、変形例として、29%未満であり、又は28%未満でさえあり得る。
・好ましくは、0.1%≦TiO、及び/又は、TiO≦2.2%.
・酸化チタンTiOの含有量は、0.15%を超え、好ましくは0.2%を超え、より好ましくは0.4%を超え、より好ましくは0.46%を超え、より好ましくは0.54%を超え、さらに好ましくは0.9%を超え、及び/又は、2%未満であり、好ましくは1.5%未満であり、より好ましくは約1%未満である。
・開放気孔率は、0.5%未満であり、好ましくは0.1%未満である。
・焼結生成物は、4g/cm(グラム/立方センチメートル)を超える見掛け密度を有する。
・焼結生成物は、1500℃において100Hz(ヘルツ)で測定される、250Ω・cm(オームセンチメートル)を超える、好ましくは500Ω・cmを超える電気抵抗率を有する。
・焼結生成物は、950℃において100Hzで測定される、30000Ω・cmを超える、好ましくは35000Ω・cmを超える、より好ましくは40000Ω・cmを超える、または50000Ω・cmさえ超える電気抵抗率を有する。
・焼結生成物は、以下の試験で定義され、120又はそれを超え、好ましくは250を超える、イーガラスに対する耐食性の指数Icを有する。
・焼結生成物は、好ましくは5kg(キログラム)、より好ましくは10kgを超える質量を有するブロックの形態である。
・焼結生成物は、単相を示し、前記相は、固溶体の酸化クロム−アルミナである。
【0017】
また、本発明は、以下の段階を備える焼結生成物の製造方法:
(a)出発材料を混合して出発混合物を生成する段階、
(b)前記出発混合物からグリーン体を形成する段階、
(c)前記グリーン体を焼結して前記焼結生成物を得る段階;
前記方法は、前記生成物が本発明に従うように出発混合物が決定されるという点において注目に値する。
【0018】
また、好ましくは、本発明の方法は、以下の任意の特徴の1つ又はそれ以上を示す:
・使用される出発材料のメジアン径は、100μm(マイクロメートル)未満、好ましくは50μm未満である。
・出発混合物は、出発混合物の乾燥重量に基づく重量百分率としてシャモットの少なくとも10%であって30%未満を含む。
・成形は、静水圧プレス成形によって行われる。
【0019】
また、本発明は、本発明の方法によって製造される又は製造されることができる生成物を提供する。
【0020】
最後に、本発明は、以下における本発明による方法を用いて製造される又は製造されることができる、本発明に従う耐火生成物の使用方法を提供する:
・ガラス炉、特に、溶融ガラス、特に1500℃において100Hzの周波数で20Ω・cmから30Ω・cmのオーダーの電気抵抗率を有するガラス、特にイーガラス、及び/又は、イーガラスより抵抗が大きいガラスと接触をもたらし得る炉の領域、
・特にアルミニウムの製造用の電解炉において、及び、特に生成物が電解液浴と接触をもたらし得る領域において、1500℃において100Hzの周波数で250Ω・cmを超える、好ましくは300Ω。・cmを超える、より好ましくは500Ω・cmを超える電気抵抗率を有することが望まれる用途。
【0021】
従って、本発明は、特に“電極ブッシングブロック”としての又は電解セルとしてのこのような生成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0023】
“不純物”という用語は、出発材料と共に必然的に導入される不可避的な構成要素またはこれらの構成要素との反応に起因する不可避的な構成要素を意味する。この不純物は、必要な構成要素ではなく、単に許容されるものである。
【0024】
“一時的”という用語は、“焼結中に生成物から除去されること”を意味する。
【0025】
グレインまたは粒子の“大きさ”という用語は、その最も大きな寸法dM及びその最も小さな寸法dmの平均:(dM/dm)/2を示すものとする。
【0026】
通常、粒子の混合物またはグレインの集合物の“メジアン粒径またはメジアングレイン径”という用語は、その混合物の粒子またはその集合体のグレインを、数が等しくなるように第1及び第2の集団に分ける大きさであって、前記第1及び第2の集団が、それぞれメジアン径より大きい又は小さいものである大きさを有する粒子またはグレインのみを含むような大きさである。
【0027】
イーガラス(E glass)は、米国規格ASTM D-578-05,“ガラスファイバーストランドに対する標準仕様”に従って、以下の化学分析を有する(重量百分率において):
・B:0−10%、
・CaO:16−20%、
・Al:12−16%、
・SiO:52−62%、
・MgO:0−5%、
・アルカリ酸化物:0−2%、
・TiO:0−1.5%、
・Fe:0.05−0.8%、
・フッ素:0−1%。
【0028】
特に言及がない限り、全ての百分率は、焼結生成物について述べた際には酸化物に基づく重量百分率であり、出発混合物について述べた際には出発混合物の乾燥重量に基づく重量百分率である。
【0029】
本発明による生成物は、上記の段階(a)から(c)を用いて生成される。
【0030】
これらの段階は、一般的であるが、段階(a)において、出発混合物は、重量によるCr/TiO比に課される制約に適合しながら、段階(c)の終了時に得られる焼結生成物が、上記のような本発明の範囲内、特に好ましい範囲内にあるAl、Cr及びTiO含有量を有するように、当業者に周知の方式で決定される。
【0031】
現在の研究の状況では、重量%によるCr/TiO比は、50未満、好ましくは35未満、さらに好ましくは32未満、より好ましくは30未満であるべきである。
【0032】
これらの条件に適合することによって、耐食性及び電気抵抗率が改善される。
【0033】
アルミナは、“100%までの補足数”である。従って、1.6%≦Cr≦35%、0.1%≦TiO≦2.2%、及び、“他の化学種”:≦1%の場合、61.8%≦Al≦98.3%となる。
【0034】
0.1%の最小量のTiOは、有用な技術的効果を得るために必要であると考えられる。
【0035】
好ましくは、出発混合物は、酸化物に基づく重量百分率として、焼結生成物中の“他の化学種”、すなわち、Al、Cr及びTiO以外の化学種の量が、1.0%未満、好ましくは0.7%未満、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.2%未満であるように決定される。
【0036】
好ましくは、“他の化学種”は、不純物によって構成され、すなわち、Al、Cr及びTiO以外の化学種は、焼結生成物の組成を修正する目的で出発混合物に導入されない。酸化物に基づく重量百分率として、焼結生成物の1.0%未満の量では、不純物の存在は、得られる結果物を実質的に修正しないと推測される。好ましくは、不純物の総量は、酸化物に基づく重量百分率として、0.7%未満、より好ましくは0.5%未満である。
【0037】
特に、不純物は、Fe、SiO、MgO、CaO、及び、NaOなどのアルカリ酸化物を含む。
【0038】
好ましくは、出発混合物は、焼結生成物において、酸化物に基づく重量百分率として、酸化物Fe+SiO+MgO+CaO+“アルカリ酸化物”が、0.7%未満であり、0.5%未満でさえあり、または、0.4%未満であるように決定される。好ましくは、酸化物Fe+SiO+MgOの総含有量は、0.7%未満であり、0.5%未満でさえあり、または0.4%未満である。
【0039】
好ましくは、出発混合物は、焼結生成物において、酸化物に基づく重量百分率として、酸化物Fe、SiO、MgO、CaO及びNaOの少なくとも1つの含有量、及び、好ましくは酸化物Fe、SiO、MgO、CaO及びNaOの各々の含有量は、0.5%未満であり、好ましくは0.4%未満であり、好ましくは0.2未満であり、0.1%未満であり、好ましくは0.08%未満であるように決定される。特に、好ましくはFe<0.2%、Fe<0.1%、より好ましくはFe<0.08%である。
【0040】
また、出発混合物は、酸化物が、好ましくは焼結生成物の重量で99.9%を超える値を示し、好ましくは焼結生成物の重量の略100%の値を示すように選択される。
【0041】
好ましくは、乾燥した出発混合物は、100μm未満、好ましくは50μm未満のメジアン径を有する粉末で構成される。好ましくは、使用される出発材料自体は、100μm未満、好ましくは50μm未満のメジアン径を有する。従って、焼結段階中におけるその部分の緻密化は、有利に改善される。
【0042】
特に、10μm未満、または5μm未満でさえあり得るメジアン径を有するアルミナ、酸化クロム及び酸化チタン粉末を用いて高い密度が得られ得る。
【0043】
また、出発混合物は、好ましくはシャモットの少なくとも10%であって30%未満を含み得る。シャモット粒子の構造は、グリーン体の形成中における圧縮を有利に改善する。
【0044】
焼結生成物が重量による所望の平均化学組成を有するように量り分けられる出発材料に加えて、従来通りに、出発混合物は、通常の脱凝集剤及び/又は結合剤、例えばリン酸を含み得る。
【0045】
段階(b)において、段階(a)において調製された混合物は、鋳型に流し込まれ、次いでグリーン体を生成するために形付けられる。
【0046】
好ましくは、型の構造は、得られる焼結生成物が、5kg(キログラム)を超える、好ましくは10kgを超える質量を有するブロックの形態になるようなものである。前記ブロックは、想定される用途に相応しく、特に電極ブッシングブロックを構成するために相応しい。
【0047】
例として、成形は、静水圧プレス成形、鋳込みスリップ、一軸加圧成形、ゲル鋳込み、振動鋳込み、または、これらの技術の組み合わせの結果であり得る。
【0048】
好ましくは、それは、100MPa(メガパスカル)より大きい圧力における静水圧プレス成形によって生じる。この技術は、より反応的な焼結をもたらし、密度の高い生成物をもたらし得る。従って、焼結生成物の開放気孔率は、0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり得る。それらの見掛け密度は、4.00g/cm、すなわち、249.7pcfより大きいものであり得る。
【0049】
グリーン体は、段階(c)において焼結される。
【0050】
焼結は、好ましくは大気圧下において還元または酸化雰囲気で、好ましくは1400℃から1700℃の範囲の温度で行われる。
【0051】
焼結後に、本発明による焼結生成物が得られる。
【0052】
有利には、焼結生成物は、1500℃において以下に定義された試験に従った、120を超える、好ましくは200を超える、より好ましくは250を超える、または260を超える場合もある、強化繊維用ガラス(Eタイプのガラス)に対する耐食性の指数Icを有する。
【0053】
また、焼結生成物は、1500℃において100Hzの周波数で測定された、250Ω・cmを超える、好ましくは300Ω・cmを超える、または、500Ω・cmを超える場合さえある電気抵抗率を有する。好ましい実施においては、この抵抗率は、260を超える又は280を超える場合さえある指数Icを有して、600Ω・cmを超え又は650Ω・cmを超え、あるいは、230を超える指数Icを有して1000Ω・cmを超え得る。
【0054】
20%から30%のCrを含む、又は、20%から29.5%の間のCrである出発混合物から生成物が生成される場合、及び、Cr/TiO重量比が19より大きい場合に、優れた性能が得られる。
【0055】
以下の非限定的な実施例は、本発明を示す目的で与えられる。
【0056】
これらの実施例において、以下の出発材料が使用された:与えられる百分率は、重量百分率である:
・約3μmのメジアン粒径を有するアルミナ;
・約99.5%のCrを含有し、2.8μmのメジアン粒径を有する酸化クロム;
・約95%のTiOを含有し、2.3μmのメジアン粒径を有する酸化チタン。
【0057】
焼結耐火ブロックは、上記の段階(a)から(c)に従って調製された。
【0058】
段階(b)において、混合物は、100mm(ミリメートル)×100mmの寸法及び約150mmの高さを有するグリーン体を形成するために、静水圧プレス成形によって成形された。
【0059】
段階(c)において、次いで、グリーン体は、大気圧下において、20h(時間)の一定温度段階を用いて1550℃の焼結温度において還元雰囲気で焼結された。
【0060】
耐食性を測定するために、22mmの直径及び100mmの高さの生成物の円筒棒の形態の試料が取り出され、1500℃まで加熱された、強化繊維用の溶融イーガラス(E glass)の浴に浸された試料を回転することからなる試験を経た。試料キャリアの軸における回転速度は、6rpm(回転/分)であった(この回転速度は、ガラス炉で観察される最大値より4または5倍大きい値に近い直線速度に相当する。従って、このような速度は、耐食界面が頻繁に新しくされることを可能にし、従って、その試験をより挑戦的な状態にする。)。試験時間は、48時間であった。この期間の終わりに、耐食した試料の残っている体積が各々の試料において決定された。比較生成物(実施例1)の耐食した試料の残っている体積は、比較用の基準として選択された。耐食した比較試料の残っている体積に対する耐食した試料の残っている体積の比に100を掛けたものが、比較生成物の耐食抵抗と比較した試験試料の耐食抵抗における値として与えられた。“Ic”は、このように定義され、表1及び特許請求の範囲に示された耐食指数を表す。
【0061】
従って、100を超える値は、比較生成物の損失より、耐食による小さな損失を表す。従って、対象となる生成物は、比較試料より、溶融ガラスによって良好な耐食性を有する。100未満の値は、比較生成物の耐食損失より高い耐食損失を表す。従って、対象となる生成物は、比較試料の耐食性より低い、溶融ガラスによる耐食性を有する。耐食抵抗は、耐食指数Icが120またはそれを超える場合に、特に満足がいくものであったと考えられた(試料1に基づいて)。
【0062】
このように製造されたブロックの様々な実施例において、30mmの直径及び30mmの高さの生成物の円筒棒が取り出され、Ω・cmで以下の表1に“R”で示される電気抵抗率の測定を行うために、1500℃(または1400℃)において100ヘルツの周波数で1ボルトの電位差にさらされた。電気抵抗率は、1500℃においてRが250Ω・cmまたはそれを超える場合に、特に満足がいくものであったと考えられた。
【0063】
実施例1は、比較生成物であるが、Saint-Gobain SEFPRO社によって販売された生成物ZS1300であった。それは、65.9%のジルコニウム、32.1%のシリカ、1.2%の酸化チタン及び0.3%のアルミナを含有するジルコンベースの生成物である。それは、電極炉の炉辺において現在最も広く使用される生成物である。
【0064】
様々な試験生成物の平均化学組成及び試験結果が表1に示される(酸化物に基づく重量百分率)。総不純物含有量は、表1に示されない:しかしながら、それは、0.6%未満であった。
【0065】
【表1】
【0066】
表1並びに実施例3、4、7及び8の比較は、Cr/TiO重量比が16より大きいという条件で、120より大きいIcの値及び250Ω・cmより大きいR(1500℃において)を得ることができることを示す。しかしながら、実施例7から10は、29.5%を超えるCrにおいて、Rの値がかなり低下することを示す。また、実施例11及び12は、Cr/TiO重量比が、16を超えるべきであり、Cr含有量が好ましくは29.5%未満であるべきであるが、Cr/TiO重量比が、非常に高い導電率、特に1500℃において500Ω・cmを超える電気抵抗率をもたらすためには、好ましくは35未満であるべきであることを示す。
【0067】
本発明によれば、最適な結果は、生成物4及び6で得られ、生成物6が最も好ましい。従って、本発明の生成物の好ましい特徴は、生成物4及び6に対応する。
【0068】
従って、本発明の生成物は、比較生成物より高い温度で使用することができる。従って、生産性及び/又はガラス品質を増加するために、ガラス製造温度は、有利には増加することができる。
【0069】
本発明の生成物は、高い電気抵抗率を有する耐火生成物を必要とするあらゆる他の用途に有利に使用することができる。特に、このような生成物は、特に溶融氷晶石の浴の溶液中におけるアルミナの電解によるアルミニウムの製造において、電解セルを構成するために有用であり得る。
【0070】
セルは、側壁及び底部を含み得る。底部は、耐火底部ブロック及びカソードブロックから構成され、絶縁ブロックが下部にある。側壁は、金属膜または金属ケースによって囲われた耐火側壁ブロックで形成され、それは、多かれ少なかれ絶縁される。
【0071】
電解セルに含まれる電解液浴は、通常、底部ブロック、カソードブロック及び少なくとも幾つかの側壁ブロックと接触する。従って、前記ブロックは、950℃に達し得る温度にさらされる。
【0072】
従って、950℃において本発明の実施例5及び8の電気抵抗率は、950℃におけることを除いて上記手順を用いて窒化珪素(Si)のマトリクスと結合した炭化珪素(SiC)に基づく比較ブロックの電気抵抗率と比較した。
【0073】
950℃における実施例5の電気抵抗率は、50500Ω・cmであり、実施例8の電気抵抗率は、35615Ω・cmであり、一方、比較ブロックの電気抵抗率は、6000Ω・cmであった。
【0074】
氷晶石浴(NaAlF+AlF+Al+CaF)に対する耐食性は、25×25mmの断面を有する比較ブロック並びに実施例5及び8の試料を、溶融氷晶石浴において1030℃に22時間保持することによって決定された。実施例5及び8からの試料は、比較ブロックの耐食体積(耐食に起因する体積の減少)の多くて半分である耐食体積を有した。
【0075】
従って、本発明の耐火生成物は、電解セルにおける使用、特に、このようなセルの側壁及び/又は耐火生成物が溶融氷晶石と接触をもたらし得る領域の要素として、特にアルミニウムにおいて、非常に相応しい。
【0076】
非限定的で例示的な実施例によって記載され提供された実施形態に本発明が限定されないことは、明らかである。