【文献】
増田 弘昭,後藤 邦彰,折田 伸昭,「エアロゾル粒子の帯電量分布測定」,エアロゾル研究,日本エアロゾル学会,1993年12月,Vol. 8, No. 4,p. 325-332
【文献】
S. Kimoto et al.,"Aerosol Charge Neutralization by a Mixing-Type Bipolar Charger using Corona Discharge at High Pressure",Aerosol Science and Technology,2009年 6月 3日,Vol. 43, No. 9,p. 872-880
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するために、コロナ放電によって発生させたイオンを用いて前記微粒子を帯電させ、帯電に用いられた前記イオンと帯電に用いられなかった前記イオンを分離する微粒子センサにおいて、
軸線方向に延びるケーシングであって、前記被検出ガスを内部に流入させるための流入孔と、前記流入孔よりも一端側に位置し内部に流入した前記被検出ガスを外部に流出させるための流出孔とを有する導電性のケーシングと、
前記流入孔よりも他端側の位置で前記ケーシング内に収容される放電用電極であって、前記ケーシングが対極となって前記コロナ放電によって前記イオンを発生させる放電用電極と、を備え、
前記ケーシングは、前記軸線方向について前記放電用電極よりも一端側の前記ケーシング内の位置でノズル開口を形成するノズル形成部材であって、前記ノズル開口が臨むと共に前記流入孔と連通する前記ケーシング内の中間流路を負圧とすることが可能なノズル形成部材を有し、
前記微粒子センサは、さらに、
前記ケーシング内に収容され前記ケーシングが対極となる分離用電極であって、前記ノズル形成部材を貫通して配置され、前記イオンとの間で斥力を生じさせる分離用電極と、
前記ノズル形成部材と前記分離用電極との間に配置され、前記ノズル形成部材と前記分離用電極とを絶縁する第1のセラミック部材と、を備える、ことを特徴とする微粒子センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微粒子センサは、コロナ放電を発生させるための電極や、微粒子である煤に吸着したイオンと吸着しなかったイオンとを分離するための部材等を備える必要がある。このため、従来の微粒子センサは、センサ自体が複雑な構造となり、大型化する場合があった。なお、このような問題は、排ガス中の煤の量を検出するために用いられる微粒子センサに限らず、被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するために用いられる微粒子センサに共通する問題であった。
【0006】
従って本発明は、大型化を抑制できる新規な構造を有する微粒子センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[適用例1]被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するために、コロナ放電によって発生させたイオンを用いて前記微粒子を帯電させ、帯電に用いられた前記イオンと帯電に用いられなかった前記イオンを分離する微粒子センサにおいて、
軸線方向に延びるケーシングであって、前記被検出ガスを内部に流入させるための流入孔と、前記流入孔よりも一端側に位置し内部に流入した前記被検出ガスを外部に流出させるための流出孔とを有する導電性のケーシングと、
前記流入孔よりも他端側の位置で前記ケーシング内に収容される放電用電極であって、前記ケーシングが対極となって前記コロナ放電によって前記イオンを発生させる放電用電極と、を備え、
前記ケーシングは、前記軸線方向について前記放電用電極よりも一端側の前記ケーシング内の位置でノズル開口を形成するノズル形成部材であって、前記ノズル開口が臨むと共に前記流入孔と連通する前記ケーシング内の中間流路を負圧とすることが可能なノズル形成部材を有し、
前記微粒子センサは、さらに、
前記ケーシング内に収容され前記ケーシングが対極となる分離用電極であって、前記ノズル形成部材を貫通して配置され、前記イオンとの間で斥力を生じさせる分離用電極と、
前記ノズル形成部材と前記分離用電極との間に配置され、前記ノズル形成部材と前記分離用電極とを絶縁する第1のセラミック部材と、を備える、ことを特徴とする微粒子センサ。
【0008】
適用例1に記載の微粒子センサによれば、流入孔や流出孔が形成された軸線方向に延びる導電性のケーシングを電気的な対極とし、ケーシング内に放電用電極や分離用電極が配置されている。これにより、微粒子センサが大型化することを抑制できる。また、微粒子センサは、ノズル形成部材を有するため、ノズル開口の放電用電極が位置する側からノズル開口に気体が吹き付けられることで中間流路を負圧にできる。これにより、流入孔から被検出ガスをケーシングの内部に容易に取り込むことができる。さらに、ノズル形成部材を貫通して延びる分離用電極は、第1のセラミック部材によってノズル形成部材と絶縁されている。これにより、分離用電極とノズル形成部材を含むケーシングとの短絡を防止でき、微粒子センサを用いた微粒子の量の検出精度の低下を抑制できる。また、分離用電極とノズル形成部材が第1のセラミック部材によって絶縁されている。よって、この微粒子センサを内燃機関の排ガスが流通する配管といった高温環境下に装着して使用に供した場合にも、セラミックは耐熱性に優れるため、その絶縁特性を長期にわたって維持することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の微粒子センサにおいて、
前記ケーシングは、前記中間流路よりも一端側に位置する狭小流路であって、前記中間流路よりも流路断面積の小さい狭小流路を形成する導電性の狭小流路形成部材を有し、
前記分離用電極は、さらに、前記狭小流路形成部材を貫通して配置され、
前記第1のセラミック部材は、さらに、前記狭小流路形成部材と前記分離用電極との間に配置され、前記狭小流路形成部材と前記分離用電極とを絶縁する、ことを特徴とする微粒子センサ。
【0010】
適用例2に記載の微粒子センサによれば、分離用電極が狭小流路形成部材を貫通して配置される場合でも、第1のセラミック部材によって分離用電極と狭小流路形成部材とは絶縁されている。これにより、狭小流路形成部材を備える場合でも、分離用電極と狭小流路形成部材を含むケーシングとの短絡を防止でき、微粒子センサを用いた微粒子の量の検出精度の低下を抑制できる。また、中間流路よりも流路断面積の小さい狭小流路を有することで、イオンと微粒子の混合が促進され、より多くの微粒子をイオンによって帯電できる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の微粒子センサにおいて、
前記狭小流路は、前記狭小流路の内で最も流路断面積が小さい最狭小流路を含み、
前記分離用電極は、
前記最狭小流路よりも一端側に位置する一端部と、
前記狭小流路よりも一端側において屈曲し、前記一端部を前記最狭小流路に対向させる屈曲部と、を有する、ことを特徴とする微粒子センサ。
【0012】
適用例3に記載の微粒子センサによれば、分離用電極は屈曲部によって一端部が最狭小流路に対向している。これにより、最狭小流路から一端側に流れ出たイオンを、分離用電極の一端部が延びる方向に沿って流すことができる。これにより、微粒子センサを用いた微粒子の量の検出精度を向上できる。すなわち、分離用電極によって、微粒子に付着しなかったイオン(以下、「余剰イオン」とも呼ぶ。)のより多くに大きな斥力を与えることで、対極として機能するケーシングの内壁面に余剰イオンをより確実に捕捉させることができる。一方、微粒子に付着したイオン(以下、「付着イオン」とも呼ぶ)は、余剰イオンに比べ質量が大きいため、ケーシング内を流れる被検出ガスの流れによって流出孔から排出される。以上のように、余剰イオンと付着イオンとをより確実に分離できるため、微粒子の量の検出精度を向上できる。
【0013】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか一つに記載の微粒子センサにおいて、
前記ケーシングは、前記ノズル開口よりも他端側に位置し、前記放電用電極と前記分離用電極とが挿通される導電性の保持部材を有し、
前記微粒子センサは、さらに、
前記保持部材と前記放電用電極との間に位置し、前記保持部材と前記放電用電極とを絶縁する第2のセラミック部材を有し、
前記第1のセラミック部材は、さらに、前記保持部材と前記分離用電極との間に位置し、前記保持部材と前記分離用電極とを絶縁する、こと特徴とする微粒子センサ。
適用例4に記載の微粒子センサによれば、放電用電極と分離用電極とが貫通する導電性の保持部材を備える場合でも、第1と第2のセラミック部材によって放電用電極と分離用電極とがそれぞれ保持部材と絶縁されている。これにより、放電用電極や分離用電極と、保持部材を含むケーシングとの短絡を防止でき、微粒子センサを用いた微粒子の量の検出精度の低下を抑制できる。
【0014】
[適用例5]適用例1乃至適用例4のいずれか一つに記載の微粒子センサにおいて、
前記第1のセラミック部材は、内側に前記分離用電極を配置する筒状である、ことを特徴とする微粒子センサ。
適用例5に記載の微粒子センサによれば、第1のセラミック部材が筒状であるため、内側に分離用電極を配置することで、容易に分離用電極と導電性のケーシングとを分離用電極の周方向にわたって絶縁できる。
【0015】
[適用例6]適用例2又は適用例3に従属する適用例4に記載の微粒子センサにおいて、
前記第1のセラミック部材は、少なくとも前記保持部材から前記狭小流路形成部材に亘って延びる単一の部材である、ことを特徴とする微粒子センサ。
適用例6に記載の微粒子センサによれば、第1のセラミック部材を保持部材から狭小流路形成部材に亘って延びる単一の部材とすることで、単一の部材としない場合に比べ、製造工程を単純化できる。
【0016】
[適用例7]適用例6に記載の微粒子センサにおいて、
前記第1のセラミック部材は、内側に前記分離用電極を配置する筒状である、ことを特徴とする微粒子センサ。
適用例7に記載の微粒子センサによれば、第1のセラミック部材が筒状であるため、内側に分離用電極を配置することで、容易に分離用電極と導電性のケーシングとを分離用電極の周方向にわたって絶縁できる。
【0017】
[適用例8]適用例4乃至適用例7のいずれか一つに記載の微粒子センサにおいて、
前記第2のセラミック部材は、内側に前記放電用電極を配置する筒状である、ことを特徴とする微粒子センサ。
適用例8に記載の微粒子センサによれば、第2のセラミック部材が筒状であるため、内側に放電用電極を配置することで、容易に放電用電極と保持部材を含む導電性のケーシングとを放電用電極の周方向にわたって絶縁できる。
【0018】
[適用例9]適用例1乃至適用例8のいずれか一つに記載の微粒子センサにおいて、
さらに、前記ケーシング内には、前記ノズル開口の他端側から前記ノズル開口側に吹き付けられる外部からの気体を流通させる気体供給流路が形成されている、ことを特徴とする微粒子センサ。
適用例9に記載の微粒子センサによれば、気体供給流路から気体をノズル開口側に吹き付けることで、圧縮された気体が中間流路に供給され、中間流路を容易に負圧にすることができる。これにより、ガス流速等の外的影響を低減し、流入孔を介して所定量の被検出ガスをケーシング内に良好に取り込むことができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、微粒子センサ、微粒子センサの製造方法及び微粒子センサを装着した車両等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0022】
A.実施例:
図1は、本発明の実施例としての微粒子センサを搭載する車両について説明するための図である。
図1(A)は、微粒子センサを搭載する車両の概略構成図である。
図1(B)は、車両の排ガス配管415への微粒子センサの取付状態と、センサ駆動部の内部構成とを示す図である。ここで、微粒子センサにおいて、
図1(B)の紙面下側を「一端側」とも呼び、
図1(B)の紙面上側を「他端側」とも呼ぶ。
【0023】
図1(A)に示すように、この車両500は、内燃機関400と、燃料供給部410と、車両制御部420とを備える。内燃機関400は、車両500の動力源であり、例えばディーゼルエンジンによって構成することができる。燃料供給部410は、燃料配管411を介して内燃機関400に燃料を供給する。
【0024】
車両制御部420は、マイクロコンピュータによって構成することができ、車両500全体の運転状態を制御する。具体的には、車両制御部420は、内燃機関400における燃料の燃焼状態や、燃料供給部410からの燃料の供給量などを制御する。内燃機関400には、排ガス配管415が接続されており、内燃機関400からの排ガスは、排ガス配管415を介して車両500の外部へと排出される。排ガス配管415には、排ガス中に含まれる煤などの微粒子を除去するためのフィルタ装置416(例えば、DPF(Diesel particulate filter))が設けられている。
【0025】
車両500には、さらに、排ガス中の微粒子の量を検出するセンサシステム130が搭載されている。センサシステム130は、微粒子センサ100と、センサ駆動部110と、微粒子センサ100とセンサ駆動部110とを接続するケーブル120とを備える。微粒子センサ100は、排ガス配管415のフィルタ装置416より下流側に取り付けられている。
【0026】
微粒子センサ100は、コロナ放電によって発生させたイオン、より具体的には陽イオンを用いて微粒子である煤を帯電させ、帯電に用いられた陽イオン(「付着陽イオン」とも呼ぶ。)と、帯電に用いられなかった陽イオン(「余剰陽イオン」とも呼ぶ。)とを分離することで、検出信号をセンサ駆動部110に出力する。なお、微粒子センサ100の詳細は後述する。
【0027】
センサ駆動部110は、微粒子センサ100を駆動するとともに、微粒子センサ100からの検出信号に基づき排ガス中の煤の量を検出する。検出された煤量に基づき、例えば車両制御部420はフィルタ装置416の性能を診断する。例えば、検出された煤量が所定値を超えた場合には、車両制御部420は、フィルタ装置416の劣化あるいは異常を判断し、判断結果をモニターに表示等することで利用者に報知する。ここで、排ガス中の煤量は、例えば、表面積を単位としても良いし、質量を単位としても良い。あるいは、排ガス中の煤量は、煤の個数を単位としても良いし、排ガス中の煤の濃度を単位としても良い。
【0028】
図1(B)に示すように、微粒子センサ100は、軸線CL方向に延びる導電性の有底筒状のケーシング5を備える。このケーシング5の内部に後述する様々な部材が収容されている。微粒子センサ100は、一端側に位置する先端部100eが排ガス配管415内に挿入され、排ガス配管415を流れる排ガスに晒される。詳細には、微粒子センサ100の直棒状の先端部100eは、微粒子センサ100の取付部位における排ガス配管415の延伸方向に対してほぼ垂直に挿入されている。
【0029】
ケーシング5のうち、先端部100eの壁面には、被検出ガスである排ガスをケーシング5の内部に流入させるための流入孔45と、流入孔45よりも一端側に位置しケーシング5の内部に流入した排ガスを外部に流出させる流出孔35とが設けられている。流入孔45と流出孔35とが排ガスの流れの下流側を向くように、微粒子センサ100は排ガス配管415に取り付けられている。ここで、流入孔45と流出孔35とは、ケーシング5を軸線CL方向に沿って見たときに、少なくとも一部が重なり合う位置関係にある。本実施例では、流入孔45と流出孔35とは、互いに重なり合う関係にある。
【0030】
微粒子センサ100の他端側には、可撓性を有するケーブル120が接続されている。ケーブル120は、センサ駆動部110まで可撓変形しつつセンサ駆動部110へと伸びて接続される。センサ駆動部110は、センサ制御部111と、電気回路部112と、エア供給部113とを備えている。
【0031】
センサ制御部111は、マイクロコンピュータによって構成することができ、電気回路部112と、エア供給部113とを制御するとともに、微粒子センサ100を利用した検出結果を車両制御部420に送信する。
【0032】
電気回路部112は、ケーブル120に収容されている第1と第2の絶縁電線121,122を介して微粒子センサ100を駆動するための電力を供給する。また、電気回路部112は、同じくケーブル120に収容されている信号線124を介して微粒子センサ100のセンサ信号を受信するとともに、そのセンサ信号に基づく検出結果をセンサ制御部111に送信する。センサ制御部111の詳細な構成については後述する。
【0033】
エア供給部113は、ポンプ(図示は省略)を備えている。エア供給部113は、センサ制御部111からの指令に基づき、微粒子センサ100の駆動の際に用いられる高圧空気をケーブル120に収容されている空気供給管123を介して微粒子センサ100に供給する。
【0034】
次に、
図2〜
図4を用いて、微粒子センサ100の詳細構成について説明する。
図2は、微粒子センサ100の第1の断面図である。
図3は、微粒子センサ100の第2の断面図である。
図4は、微粒子センサ100の分解斜視図である。ここで、
図2および
図3は、軸線CL方向と平行な面で微粒子センサ100を切断した断面図であり、
図2は
図3の3−3断面図である。なお、
図2〜
図4には、互いに直交するXYZ軸を付している。
図2〜
図4において、Z軸正方向側を一端側、Z軸負方向側を他端側とする。
【0035】
図2に示すように、微粒子センサ100は、軸線CL方向に延びるケーシング5と、ケーブル120と、取付固定部103と、外筒105と、外筒105と取付固定部103とを接続するジョイント部104と、を備える。また、
図2及び
図3に示すように、ケーシング5の内部には、分離用電極としての第1の電極10と、放電用電極としての第2の電極20とが収納されている。
【0036】
ケーシング5は、導電性を有する複数の部材101,30,40,41,50,102が組み付けられて形成された有底筒状の部材である。具体的には、ケーシング5は他端側から一端側に向かう順に、内筒102と、イオン発生部材50と、ノズル形成部材41と、ガス帯電部材40と、狭小流路形成部材30と、微粒子センサの一端であるキャップ101とを備える。また、ケーシング5の側面には流入孔45と、流入孔45よりも一端側に位置する流出孔35とが形成されている。ケーシング5は、例えばステンレス等の金属製の部材であり、各部材101,30,40,41,50,102は溶接等により部材同士が接続されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、内筒102は、筒状の部材である。内筒102の他端側にはケーブル120が取り付けられている。内筒102は、ケーブル120の第1のシールド線SL1(後述)と電気的に接続される。即ち、内筒102は、内筒102よりも一端側に位置するケーシング5の構成部材50,41,40,30,101とケーブル120の第1のシールド線SL1との間の導電パスとして機能する。
【0038】
図2及び
図3に示すように、イオン発生部材50は、一端側に位置する筒状の中間部材51と、後端側に位置する円柱状の保持部材57とを備える。中間部材51の内部には、内部空間72が形成されている。この内部空間72には、第2の電極20の一端部21が配置されている。
【0039】
保持部材57は、主に、第1と第2の電極10,20をケーシング5内部において安定に保持するために用いられる。保持部材57には、第1と第2のパイプ挿通孔52,53(
図3)と、気体供給流路としての空気供給孔54(
図2)が形成されている。第1と第2のパイプ挿通孔52,53及び空気供給孔54は、保持部材57の他端から一端に亘って軸線CL方向にそれぞれ延びる。空気供給孔54は、ケーブル120の空気供給管123(図示せず)からの空気を内部空間72へと流入させるための流路である。
【0040】
ノズル形成部材41は、ガス帯電部材40と一体に形成されている。
図3に示すようにノズル形成部材41は、ノズル形成部材41を挟んだ位置にある二つの内部空間71,72を連通させるノズル開口42が形成されている。詳細には、ノズル開口42は、軸線CL方向について、第2の電極20の一端部21と流入孔45との間のケーシング5内の位置で軸線CL方向に開口している。ノズル開口42は、微小穴(オリフィス)である。本実施例では、内部空間72の直径は約10mmであるのに対し、ノズル開口42の直径は約0.3mmである。ノズル形成部材41は、後述するノズル開口42よりも一端側に位置する内部空間71を負圧にすることができる。具体的には、ノズル開口42よりも他端側(第2の電極20が位置する側)から大気圧以上の高圧気体(本実施例では、空気)がノズル開口42に吹き付けられることで、内部空間71に気体が噴射され内部空間71は負圧になる。また
図3に示すように、ノズル形成部材41には、ノズル開口42とは異なる位置で軸線CL方向に貫通するパイプ挿通孔43が貫通孔として形成されている。なお、ノズル形成部材41は、ガス帯電部材40と別体に構成しても良い。すなわち、ガス帯電部材40の内周面にノズル開口42とパイプ挿通孔43が形成されたノズル形成部材41の外周面を気密に固着させても良い。
【0041】
図2及び
図3に示すように、ガス帯電部材40は筒状の部材である。ガス帯電部材40の内部には、中間流路としての内部空間71が形成されている。内部空間71は、ノズル形成部材41を挟んで第2の電極20が位置する部分と対向する側に位置している。言い換えれば、内部空間71はノズル開口42が臨む(面する)ように形成されている。また、ガス帯電部材40の側面には、流入孔45が形成されている(
図2)。すなわち、流入孔45は内部空間71と連通している。より詳細には、
図2に示すように、狭小流路形成部材30の側面に形成された溝部34を介して流入孔45は内部空間71と連通している。ガス流路31を形成する狭小流路形成部材30の側面に設けられた溝部34によって、流入孔45から流入した軸線CL方向と直交する方向の排ガスの流れを、軸線CL方向に沿った流れ(詳細には、他端側に向かう流れ)に変更できる。
【0042】
図2及び
図3に示すように、狭小流路形成部材30は筒状の部材である。狭小流路形成部材30の他端側は、ガス帯電部材40の一端側の内側に挿入され取り付けられている。狭小流路形成部材30の内部には、パイプ挿通孔33と狭小流路としてのガス流路31とが、軸線CL方向に延びる互いに並列な貫通孔として形成されている(
図2)。また、狭小流路形成部材30の内部には、ガス流路31よりも一端側でガス流路31と連通する内部空間70が形成されている。狭小流路形成部材30の部分のうち、内部空間70を内部に形成する部分の側面には、流出孔35が形成されている(
図2)。なお、狭小流路形成部材30の一端側には円板状のキャップ101が取り付けられている。なお、狭小流路形成部材30とキャップ101は、詳細は後述するが、第1の電極10の対極として機能し陽イオンを捕捉する機能を有するため、「イオン捕捉部材30」とも呼ぶことができる。
【0043】
図2及び
図3に示すように、ガス流路31はベンチュリー形状である。詳細には、ガス流路31は、他端側から一端側に向かう順に、第1の流路31aと最狭小流路31cと第2の流路31bとを備える。第1の流路31aは、他端側から一端側に向かうに従って開口面積(流路断面積)が小さくなる流路である。最狭小流路31cは、ガス流路31の中で最も開口面積(流路断面積)が小さい流路である。第2の流路31bは、他端側から一端側に向かうに従って開口面積(流路断面積)が大きくなる流路である。このガス流路31の機能については後述する。また、狭小流路形成部材30のパイプ挿通孔33には、後述する第1の電極10が挿通される。
【0044】
放電用電極としての第2の電極20は、ノズル形成部材41が対極となってコロナ放電を生じさせることで陽イオンを発生させる。発生した陽イオンは、ノズル開口42を通って内部空間71に流れ、流入孔45から取り込まれた排ガス中の煤を帯電させる。
図3に示すように、第2の電極20は、軸線CL方向に延びる針状であり、ノズル開口42よりも他端側の位置でケーシング5内に収容されている。詳細には、第2の電極20は、保持部材57の第2のパイプ挿通孔53に挿通され、一端側に位置する一端部21が内部空間72内に配置され、他端側である他端部23が内筒102内に配置されている。すなわち、第2の電極20は、保持部材57を貫通してケーシング5内に配置されている。
【0045】
ここで
図3に示すように、第2の電極20と保持部材57とを絶縁するために、少なくとも第2の電極20と保持部材57との間には、第2のセラミック部材としての第2のセラミックパイプ25が配置されている。第2のセラミックパイプ25は、保持部材57を貫通し軸線CL方向に延びる単一の部材である。なお、第2のセラミックパイプ25は、アルミナ等の絶縁性のセラミックから構成されている。第2のセラミックパイプ25が第2のパイプ挿通孔53に嵌通され、第2の電極20が第2のセラミックパイプ25に嵌通されることで第2の電極20と保持部材57とが第2の電極20の周方向にわたって絶縁される。なお、第2の電極20の他端部23及び一端部21は、第2のセラミックパイプ25から露出している。
【0046】
分離用電極としての第1の電極10は、ケーシング5の構成部材である狭小流路形成部材30を対極(陰極)として、コロナ放電によって発生した陽イオンとの間で斥力を生じさせる。すなわち、第1の電極10は、微粒子センサ100が煤量を検出する際には陽極として機能する。
図3に示すように、第1の電極10は軸線CL方向に延びる針状であり、ケーシング5内に収容されている。詳細には、第1の電極10は、保持部材57の第1のパイプ挿通孔52、ノズル形成部材41のパイプ挿通孔43、狭小流路形成部材30のパイプ挿通孔33に挿通される。すなわち、第1の電極10は、保持部材57、ノズル形成部材41、及び、狭小流路形成部材30を貫通してケーシング5内に配置されている。また、第1の電極10は、最も一端側に位置する部分が内部空間70に配置され、他端側に位置する他端部13が内筒102内に配置されている。
【0047】
ここで
図3に示すように、第1の電極10と各部材57,41,30とを絶縁するために、少なくとも第1の電極10と各部材57,41,30との間には、第1のセラミック部材としての筒状の第1のセラミックパイプ15が配置されている。第1のセラミックパイプ15は軸線CL方向に延び、保持部材57、ノズル形成部材41、狭小流路形成部材30を貫通する単一の部材である。なお、第1のセラミックパイプ30は、アルミナ等の絶縁性のセラミックから構成されている。第1のセラミックパイプ15は、保持部材57の第1のパイプ挿通孔52、ノズル形成部材41のパイプ挿通孔43、狭小流路形成部材30のパイプ挿通孔33に嵌通されている。そして、第1の電極10が第1のセラミックパイプ15に嵌通されることで、ケーシング5の各部材57,41,30と第1の電極10とが第1の電極10の周方向にわたって絶縁される。
【0048】
第1の電極10の他端側に位置する他端部13及び一端側に位置する一端部11は、第1のセラミックパイプ15から露出している。第1の電極10は、最も一端側に位置する部分に屈曲部17を有する。屈曲部17によって、一端部11が180°折り返され、一端部11が最狭小流路31cに対向する。詳細には、一端部11は、最狭小流路31cに対向し、かつ、軸線CL方向に沿って配置される。一端部11は、内部空間70及び第2の流路31b内に配置されると共に、最狭小流路31cよりも一端側に配置される。
【0049】
図2及び
図3に示すように保持部材57の外周には鍔部57fが設けられている。鍔部57fは、保持部材57の外周に取り付けられる絶縁性を有する円環状の第1と第2の保持部材61,62によって狭持される。ここで、第1と第2の保持部材61,62の外側には、微粒子センサ100を排ガス配管415に固定するための取付固定部103が取り付けられる。
【0050】
図2及び
図3に示すように取付固定部103は、略円筒形状の本体部103sと、本体部103sの一端側に設けられたフランジ103fとを有している。取付固定部103の本体部103sの筒内と、保持部材57に取り付けられた第1と第2の保持部材61,62の外周とには、互いに係合し合う段部がそれぞれ形成されている。これらの段部が互いに係合し合うことにより、イオン発生部材50は取付固定部103の筒内の所定の位置で係止される。なお、取付固定部103のフランジ103fには、リング状のガスケット64がイオン発生部材50の周囲を囲むように配置される。また、第1の保持部材61の段部と取付固定部103の筒内における段部との間には板パッキン65が配置される。
【0051】
ここで、取付固定部103は導電性を有する部材(例えば、ステンレス等の金属部材)によって構成されるが、取付固定部103は、第1と第2の保持部材61,62によってイオン発生部材50と絶縁されている。また、第1の保持部材61は、フランジ103fの一端側の面よりも一端側に突出した部位を有しており、微粒子センサ100が排ガス配管415に取り付けられたときに、排ガス配管415とケーシング5とを絶縁する。
【0052】
図3に示すように、取付固定部103の他端側には、ジョイント部104がイオン発生部材50に取り付けられた第2の保持部材62を他端側から支持するように取り付けられている。ジョイント部104には、他端側から一端側に亘って軸線CL方向に延びる貫通孔104pが設けられている。この貫通孔104pには、保持部材57および内筒102が挿通される。なお、貫通孔104pの内壁面と、イオン発生部材50および内筒102の外表面との間には、空隙が形成されており、ジョイント部104とイオン発生部材50とを絶縁する。また、ジョイント部104の外周には、六角レンチなどの工具と係合させるための工具係合部104eが設けられている。
【0053】
図3に示すように導電性(例えば、ステンレス等の金属部材)の外筒105は、ジョイント部104の一端側に溶接等によって取り付けられている。外筒105は略円筒状であり、内筒102とケーブル120との連結部を内部に収容することで連結部を保護する。なお、外筒105とケーブル120との間には、ケーブル120を保護するための円環状のグロメット66が配置される。外筒105の他端側は、ケーブル120を保持するために加締められる。ここで、この加締めの際には、ケーブル120の外皮1204(後述)に切れ目を設けるとともに、外筒105の一部を、その切れ目に入り込ませる。これによって、外筒105の下端側には、ケーブル120の第2のシールド線SL2(後述)と電気的に導通する加締め部105cが形成される。また、外筒105の他端106が微粒子センサ100の他端を構成する。なお、
図4では、加締められる前の外筒105が図示されている。
【0054】
図5は、本実施例の微粒子センサ100に接続されるケーブル120の構成を示す概略断面図である。前記したとおり、ケーブル120には、第1と第2の絶縁電線121,122と、空気供給管123と、信号線124とが一体的に収容されている。より具体的には、ケーブル120は以下のような構成を有している。
【0055】
第1の絶縁電線121は、その中心に導電線である芯線1210を有している。芯線1210の外周には、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などのフッ素系樹脂による第1の樹脂被覆層1211が設けられている。第1の樹脂被覆層1211の外周には編組シールド1212が設けられ、その編組シールド1212の外周には、さらに、FEPなどのフッ素系樹脂による第2の樹脂被覆層1213が設けられている。
【0056】
第2の絶縁電線122も、第1の絶縁電線121と同様な構成を有しており、導電線である芯線1220と、その外周を被覆する第1の樹脂被覆層1221,編組シールド1222,第2の樹脂被覆層1223を有している。空気供給管123は、PTFE (ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂部材によって構成される。空気供給管123の外周は、補強部材123sによって被覆されている。補強部材123sは、編み組された金属線によって構成することができる。
【0057】
第1と第2の絶縁電線121,122と空気供給管123の補強部材123sの外周には、ガラス繊維が充填されたガラス繊維部1201が形成されている。そして、ガラス繊維部1201の外周は、第1の樹脂被覆層1202によって被覆されている。第1の樹脂被覆層1202は、PTFEなどの樹脂部材によって構成することができる。
【0058】
第1の樹脂被覆層1202の外周には、導電線が編み組された第1のシールド線SL1が配設され、第1のシールド線SL1の外側には、PTFEなどの樹脂部材によって構成された第2の樹脂被覆層1203が設けられている。第2の樹脂被覆層1203の外周には、導電線が編み組みされた第2のシールド線SL2が配設され、第2のシールド線SL2の外周は、FEPなどのフッ素系樹脂などで構成された外皮1204によって被覆されている。
【0059】
このように、このケーブル120では、第1と第2のシールド線SL1,SL2が二重で設けられている。このうち、第1のシールド線SL1は、ケーシング5と電気的に接続される。これによって、第1のシールド線SL1は、微粒子センサ100の先端部100eと電気回路部112とを接続する信号線124として機能する。一方、第2のシールド線SL2は、前記したように、外皮1204を貫通する外筒105の加締められた部分と導通する。そして、外筒105、ジョイント部104、取付固定部103、排ガス配管415を介して、車両500のシャーシ(図示せず)などと電気的に接続されることにより、接地される。
【0060】
ここで、ケーブル120には、前記したように、微粒子センサ100の駆動の際に用いられる高圧空気のための空気供給管123が収容されている。後述するように、この空気供給管123によって微粒子センサ100に供給される空気の圧力は高いほど好ましいため、空気供給管123は、その耐圧性が高いほど好ましい。また、ケーブル120は、微粒子センサ100の車両500への配設性を向上させるために可撓性を有することが好ましい。よって、ケーブル120に収容される空気供給管123も可撓性を有するように、樹脂部材で構成されることが好ましい。
【0061】
ところで、一般に、内燃機関の排ガス配管近傍の領域は、著しく高温(例えば600℃程度)になる場合がある。本実施例の微粒子センサ100は排ガス配管415に取り付けられるため、微粒子センサ100に接続されるケーブル120も排ガス配管415の近傍に配設されることになる。しかし、ケーブル120が排ガス配管415の近傍領域などの車両500内の高温領域に配設された場合には、ケーブル120の温度の上昇に伴って、樹脂部材で構成された空気供給管123自体が破損してしまう可能性がある。
【0062】
そこで、本実施例のケーブル120では、空気供給管123の外周に、金属線を編み組みすることによって構成された可撓性を有する補強部材123sが設けられている。この補強部材123sによって、空気供給管123が破損する可能性を低減できる。
【0063】
このように、微粒子センサ100は、排ガス配管415内に先端部100eが挿入・配置されるとともに、ケーブル120によってセンサ駆動部110と接続されて駆動する。車両500では、この微粒子センサ100を用いて、排ガス中に含まれる煤量を検出する。
【0064】
次に、微粒子センサ100の検出動作について説明する。
図6は、微粒子センサ100の先端部100eの断面を模式的に示す図である。ここで
図6では、第1の電極10は、一端部11以外の図示を省略してある。さらに、
図6には、排ガス配管415(
図1(B))における排ガスの流れ方向(矢印F)と、先端部100eの内部におけるガスの流れ方向とを模式的に図示してある。
【0065】
図6に示すように、排ガス中の煤量を検出する際には、微粒子センサ100は、内部空間72内で陽イオンPIを発生させる。より具体的には、電気回路部112(
図1(B))によって第2の電極20を陽極とし、ノズル形成部材41を陰極として所定の電圧を印加し、第2の電極20の一端部21とノズル形成部材41との間にコロナ放電を発生させて、内部空間72内に陽イオンPIを発生させる。
【0066】
内部空間72内に発生した陽イオンPIは、エア供給部113(
図1(B))から空気供給孔54を介して内部空間72に供給される高圧空気とともに、ノズル開口42から内部空間71へと噴射される。これにより、内部空間71に負圧が発生し、煤Sを含む排ガスが流入孔45から内部空間71へと吸引される。
【0067】
ここで、ノズル42から空気(圧縮空気)を噴射させて内部空間71に負圧を発生させることにより、流入孔45を介して検出対象となる排ガスを所定量良好に内部空間71に取り込むことができ、排ガス中の煤Sの量の検出精度を向上できる。詳細には、内部空間71に負圧を発生させることで、排ガス配管415を流れる排ガスのガス流速等の外的影響を低減し、流入孔45を介して所定量の排ガスを内部空間71に良好に取り込むことができる。よって、例えば微粒子センサ100に供給される空気の圧力は、ノズル開口42からの空気の噴射速度が音速程度となる程度の圧力に設定することが好ましい。
【0068】
ノズル開口42から噴射された空気と、流入孔45から吸引された排ガスとは、内部空間71において混合される。これによって、排ガス中に微粒子である煤Sが存在する場合に、空気中の陽イオンPIが煤Sに吸着して煤Sが帯電する。
【0069】
ここで、
図2で説明したとおり、流入孔45は溝部34を介して内部空間71に連通している。この構成により、流入孔45から内部空間71に流入する排ガスの流れ方向と、ノズル開口42から内部空間71に噴射される空気の噴射方向とが互いに対向し合うことになるため、内部空間71において、より大きな乱流が発生する。この乱流により、空気と排ガスとの混合が促進され、煤Sの帯電が促進される。
【0070】
内部空間71において空気と混合された排ガスは、ガス流路31を介して内部空間70へと流れる。ここで上述のごとく、ガス流路31には、上流側から下流側に向かって開口面積が次第に縮小する第1の流路31aが設けられている。本実施例の微粒子センサ100では、この第1の流路31aによって、排ガスをより円滑に最狭小流路31cへと誘導する。そして、最狭小流路31c内で、陽イオンPIと煤Sとの衝突を促進させて、煤Sの帯電を促進させる。
【0071】
最狭小流路31cよりも一端側に位置する第2の流路31b及び内部空間70には、第1の電極10の一端部11が、排ガスの流れ方向に沿って配置されている。電気回路部112は、第1の電極10を陽極とし、第1の電極10を囲むケーシング5を陰極として両極に電圧を印加する。これにより、陽イオンPIと第1の電極10との間で斥力が生じる。
【0072】
ここで、煤Sに吸着しなかった陽イオンPI(余剰陽イオンPI)は、斥力によって第1の電極10から離れる方向に移動する。すなわち、余剰陽イオンPIは斥力によって、排ガスの流れに拘わらず一端部11を取り囲むケーシング5の内壁面に向かう方向に進む。ケーシング5のうち一端部11を取り囲む部分(狭小流路形成部材30やキャップ101)は陰極として機能しているため、該部分の内壁面に衝突した余剰陽イオンPIは内壁面に捕捉される。一方で、煤Sに吸着した陽イオンPI(吸着陽イオンPI)は、余剰陽イオンPIに比べ質量がかなり大きい。このため、外部の電気的な斥力や引力による影響が余剰陽イオンPIに比較して小さい。よって、電気的な力を受けても排ガスの流れによって、流出孔35から排ガス配管415内へと排出される。これにより、余剰陽イオンPIと吸着陽イオンPIとが分離される。
【0073】
ここで、ガス流路31の第2の流路31bは、一端側に向かうに従って開口面積が次第に拡大している。この構成により、排ガスを内部空間70の壁面に向かって、放射状に拡散させることができるため、余剰陽イオンPIの捕捉効率を向上できる。
【0074】
微粒子センサ100の先端部100eでは、ケーシング5によって捕捉した陽イオンPIの捕捉量に応じた電流の変化を検出することができる。センサ制御部111(
図1(B))は、電気回路部112を介して、微粒子センサ100における電流の変化を、微粒子センサ100の検出信号として検出し、その検出信号に基づいて排ガス中に含まれる煤Sの量を検出する。具体的には、センサ制御部111は、以下のように、排ガス中の煤Sの量を検出する。
【0075】
図7は、センサ制御部111による煤量の検出方法を説明するための概略図である。
図7には、微粒子センサ100の先端部100eと、センサ駆動部110のうちのセンサ制御部111と電気回路部112とが模式的に図示されている。
【0076】
電気回路部112は、一次側電源部210と、二次側電源部220と、電流差計測部230とを備える。一次側電源部210は、センサ制御部111の指令に従って、トランスを介して二次側電源部220に高圧電力を供給する。二次側電源部220は、第1電流供給回路221と、第2電流供給回路222とを備えている。
【0077】
第1電流供給回路221は、第1の絶縁電線121を介して、第1の電極10と接続されている。第2電流供給回路222は、第2の絶縁電線122を介して第2の電極20と接続されている。即ち、微粒子センサ100は、第1電流供給回路221から陽イオンPIの捕捉のための電力の供給を受け、第2電流供給回路222から陽イオンPIを発生させるコロナ放電のための電力の供給を受ける。なお、第2電流供給回路222は、定電流回路であり、コロナ放電に際して、例えば5μA程度の一定の電流Iinを第2の電極20に供給する。
【0078】
微粒子センサ100の先端部100eは、排ガス配管415や車両500のシャーシなどとは絶縁された状態で排ガス配管415内に保持される。即ち、微粒子センサ100の先端部100eは、いわゆるシャーシグラウンドとも呼ばれる車両500の基準電位とは異なる基準電位を有する閉回路を構成していると解釈することができる。
【0079】
第2電流供給回路222から第2の電極20に入力電流Iinが流れると、コロナ放電により、第2の電極20からケーシング5に放電電流Idcが流れるとともに、陽イオンPIが発生する。
図6で説明したように、陽イオンPIの一部は煤Sの帯電に用いられ、残りの陽イオンPIは、イオン捕捉部材30においてケーシング5に捕捉される。
【0080】
煤Sの帯電に用いられてケーシング5の外部へと漏洩する陽イオンPIの流れに相当する電流を「漏洩電流Iesc」と呼ぶ。一方、ケーシング5に捕捉される陽イオンPIの流れに相当する電流を「捕捉電流Itrp」と呼ぶ。このとき、コロナ放電によって流れるこれらの4つの電流Iin,Idc,Iesc,Itrpについて、以下の関係式(1)が成り立つ。
Iin=Idc+Itrp+Iecs …(1)
【0081】
これらの電流のうち、放電電流Idcと、捕捉電流Itrpとは、ケーシング5に流れる電流である。また、前記したとおり、第2の電極20への入力電流Iinは、第2電流供給回路222によって一定に制御されている。従って、入力電流Iinと、ケーシング5に流れる2つの電流Idc,Itrpの合計との差をとることにより、漏洩電流Iescを得ることができる(下記(2)式)。
Iesc=Iin−(Idc+Itrp)…(2)
【0082】
電気回路部112は、電流差計測部230によって、入力電流Iinとケーシング5に流れる2つの電流Idc,Itrpの合計との差を、漏洩電流Iescとして検出し、その検出結果に基づく信号をセンサ制御部111に出力する。具体的には、電気回路部112は、漏洩電流Iescを以下のように検出する。
【0083】
電気回路部112の電流差計測部230は、信号線124(ケーブル120の第1のシールド線SL1)を介して、先端部100eのケーシング5と電気的に接続されている。また、電流差計測部230は、排ガス配管415または車両500のシャーシを介して接地されている。
【0084】
ケーシング5では、入力電流Iinに対して漏洩電流Iescの分が不足する分だけ、その基準電位が外部の基準電位より低下する。これに対し、電流差計測部230からは、その低下分を補償するように、補償電流Icが信号線124に流れる。この補償電流Icは漏洩電流Iescに相当する電流であり、電流差計測部230は、補償電流Icの計測値を漏洩電流Iescの計測値として、センサ制御部111に送信する。
【0085】
漏洩電流Iescは、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量と相関関係を有する電流であり、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量は、排ガス中の煤Sの量に相当する量である。従って、漏洩電流Iescを検出(計測)することにより、排ガス中の煤Sの量を求めることができる。センサ制御部111は、予め記憶されたマップや演算式などを用いて、電流差計測部230において検出された漏洩電流Iescに対する排ガス中の煤Sの量を取得する。
【0086】
このように、センサ制御部111は、陽イオンPIの捕捉量に応じた微粒子センサ100のケーシング5における電流変化を利用して、排ガス中の煤Sの量を検出する。即ち、センサ制御部111は、微粒子センサ100における陽イオンPIの捕捉量に基づいて、排ガス中の煤Sの量を検出する。
【0087】
上記のように、本実施例の微粒子センサ100は、流入孔45や流出孔35が形成されたケーシング5を電気的な対極とし、ケーシング5内に第1と第2の電極10,20を配置している(
図6)。これにより、微粒子センサ100が大型化することを抑制できる。また、微粒子センサ100は、ノズル開口42を有し、ノズル開口42の他端側からノズル開口42に高圧の空気を吹き付けることで、内部空間71を負圧にできる。これにより、流入孔45から排ガスを良好に内部に取り込むことができる。さらに、本実施例の微粒子センサ100は、第1と第2の電極10,20と金属製のケーシング5とを絶縁させるための第1と第2のセラミックパイプ15,25を備える(
図3)。これにより、第1と第2の電極10,20とそれぞれの電極の対極となるケーシング5との短絡を防止できる。よって、微粒子センサ100を用いた煤の量の検出精度の低下を抑制できる。ここで、第1と第2のセラミックパイプ15,25は筒状である。これにより、第1と第2の電極10,20の部分のうち、ケーシング5を貫通する部分を第1と第2のセラミックパイプ15,25に配置することで容易に第1と第2の電極10,20とケーシング5との絶縁を図ることができる。
【0088】
また、第1の電極10は屈曲部17を有し一端部11が最狭小流路31cに対向すると共に、軸線CL方向に沿って配置されている(
図3,4)。これにより、一端部11近傍により多くの陽イオンを通過させることができる。よって、より多くの余剰陽イオンに大きな斥力を与えることで、陰極として機能するケーシング5により多くの余剰陽イオンを確実に捕捉させることができる。これにより、余剰陽イオンと吸着陽イオンとをより確実に分離できるため、微粒子センサ100を用いた煤量の検出精度を向上できる。
【0089】
B.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0090】
B−1.第1変形例:
図8は、第1変形例の一例を説明するための図である。上記実施例では、アルミナ等の絶縁性のセラミックから構成される第1と第2のセラミック部材として筒状の第1と第2のセラミックパイプ15,25を用いていたが(
図3,4)、第1と第2のセラミック部材の形状はこれに限定されるものではない。ケーシング5と第1又は第2の電極10,20の間に位置し、ケーシング5と第1又は第2の電極10,20とを絶縁できる形状であれば任意の形状を選択できる。
図8に示すように、例えば第1の電極10のうち、少なくともケーシング5を貫通する部分については第1のセラミック部材15aとしての2枚の板状のセラミック部材15a1,15a2で第1の電極10を挟んでも良い。なお、第2の電極20についても、第1の電極10と同様である。このようにしても、上記実施例と同様、ケーシング5と第1と第2の電極10,20の間の絶縁を図ることができるため、微粒子センサ100を用いた排ガス中の煤量の検出精度の低下を抑制できる。なお、板状のセラミック部材15a1,15a2を用いて第1や第2の電極10,20を挟む場合は、第1や第2の電極10,20を平板状にすることが好ましい。これにより、容易に第1や第2の電極10,20を板状のセラミック部材15a1,15a2によって挟むことができる。
【0091】
B−2.第2変形例:
図9は、第2変形例を説明するための図である。
図9は、第2変形例の第1の電極10と第1のセラミックパイプ15bの外観斜視図である。上記実施例では、第1の電極10とケーシング5との絶縁を図るために、軸線CL方向に延びる単一の第1のセラミックパイプ15が用いられていたが、これに限定されるものではない。すなわち、
図9に示すように、第1の電極10の部分のうち、ケーシング5を貫通する複数の部分とケーシング5との絶縁を図るための複数のセラミックパイプ15b1,15b2,15b3を第1のセラミックパイプ15bとして構成させても良い。このようにしても、上記実施例と同様、第1の電極10とケーシング5との絶縁を図ることができるため、微粒子センサ100を用いた排ガス中の煤量の検出精度の低下を抑制できる。
【0092】
B−3.第3変形例:
上記実施例では、微粒子センサ100は保持部材57を備えていたが(
図3)、保持部材57は省略しても良い。このようにしても、上記実施例と同様、第1と第2のセラミックパイプ15,25を有することで、第1と第2の電極10,20とケーシング5との絶縁を図ることができる。よって、微粒子センサ100を用いた排ガス中の煤量の検出精度の低下を抑制できる。
【0093】
B−4.第4変形例:
上記実施例では、ノズル開口42に高圧空気を供給するために、ケーシング5の内部やケーブル120内部にエア供給部113からの空気を流通させる流路(例えば、
図5に示す空気供給管123や、
図2に示す空気供給孔54)を有していたが、これに限定されるものではない。すなわち、エア供給部113(
図1(B))から、ケーブル120やケーシング5の外側に配置された配管を通じて内部空間72に大気圧以上の高圧空気を供給しても良い。このようにしても、上記実施例と同様、ノズル開口42から内部空間71に向けて気体が噴射されることで内部空間71を負圧にできる。
【0094】
B−5.第5変形例:
上記実施例では、微粒子センサ100は内燃機関から排出される排ガス中の煤量を検出するために用いられていたが、各種ガス中の微粒子を検出するために用いることができる。
【0095】
B−6.第6変形例:
上記実施例では、コロナ放電により第2の電極20とノズル形成部材41との間で陽イオンを発生させ、第1の電極10にて陽イオンとの間で斥力を生じさせる構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、これらの部材10,20,41の正負の接続先を変更することで、コロナ放電により第2の電極20とノズル形成部材41との間で陰イオンを発生させ、第1の電極10にて陰イオンとの間で斥力を生じさせる構成を採って被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するようにしてもよい。