特許第5653885号(P5653885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653885
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】太陽炉装置
(51)【国際特許分類】
   F24J 2/26 20060101AFI20141218BHJP
   F24J 2/24 20060101ALI20141218BHJP
   F24J 2/46 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   F24J2/26
   F24J2/24 B
   F24J2/46 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-232669(P2011-232669)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2013-92266(P2013-92266A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2013年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】511257067
【氏名又は名称】小川 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 静夫
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−066027(JP,A)
【文献】 特開2009−264670(JP,A)
【文献】 特開2011−027268(JP,A)
【文献】 米国特許第04644933(US,A)
【文献】 国際公開第83/001292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/00 − 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光線を受光して熱エネルギーを取り出すための受光部を備えた太陽炉装置であって、
前記受光部は、内面に断熱層が形成されたケーシングの内部に配設されて、前記太陽光線の受光により生じた熱によって、前記ケーシング内の熱媒体を当該熱媒体に接触することで加熱し
前記ケーシングは、当該ケーシングの内部に前記太陽光線を導いて当該太陽光線を前記受光部に受光させる窓部を備え、
前記窓部は、当該窓部を介した物質の出入りを遮断する透明部材と、前記窓部を介した熱伝導を低減させる真空層と、を備え
前記受光部には、前記熱媒体に接触される面を当該熱媒体側に向けて突出させた受光溝が形成され、
前記受光溝は、前記窓部により導かれた前記太陽光線に対して垂直となるように配設された面と、この面に向かう前記太陽光線に沿うように延びることで当該太陽光線を遮断しないように配設された面とを備えて、前記受光部が前記熱媒体に接触して当該熱媒体を加熱する面の面積を増加させていることを特徴とする太陽炉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽炉装置であって、
前記受光溝は、前記受光部が前記熱媒体に接触する側に向かって板状あるいは棒状に形成された複数の放熱器を備えていることを特徴とする太陽炉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽炉装置であって、
前記受光部は、内壁面を有する管形状に形成されて、その内部の前記熱媒体に接触して当該熱媒体を加熱し、前記放熱器は、前記受光部において当該受光部が前記熱媒体に接触する内部側に形成された他の前記放熱器または前記受光部の前記内壁面に接続されていることを特徴とする太陽炉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽炉装置に関する。詳しくは、太陽光線を受光して熱エネルギーを取り出すための受光部を備えた太陽炉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光線を集光してその熱エネルギーを利用することが広く行われている。この際、集光された太陽光線を受光する受光部に熱媒体を流通させて熱エネルギーを取り出すことが一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、太陽光線をヘリオスタットで集光してケーシングとなる受熱器本体の開口部に導き、この受熱器本体の内壁面に沿って配設された熱交換受熱管に圧縮空気を流通させて加熱し、加熱された圧縮空気を用いてガスタービンユニットにより発電を行う技術が開示されている。ここで、受熱器本体の内壁面には全域にわたって断熱材が取り付けられて、受熱器本体から失われる圧縮空気の熱エネルギーを低減させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−007458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、受熱器本体からその開口部を通して熱エネルギーが失われることを防ぐことができないという問題があった。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、太陽光線を受光部に受光させる窓部分から失われる熱エネルギーを低減させて、太陽炉装置のエネルギー回収効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の太陽炉装置は次の手段をとる。
まず、第1の発明は、太陽光線を受光して熱エネルギーを取り出すための受光部を備えた太陽炉装置である。受光部は、内面に断熱層が形成されたケーシングの内部に配設されて、太陽光線の受光により生じた熱によって、ケーシング内の熱媒体をこの熱媒体に接触することで加熱する。ケーシングは、このケーシングの内部に太陽光線を導いてこの太陽光線を受光部に受光させる窓部を備えている。窓部は、この窓部を介した物質の出入りを遮断する透明部材と、窓部を介した熱伝導を低減させる真空層と、を備えている。受光部には、熱媒体に接触される面をこの熱媒体側に向けて突出させた受光溝が形成されている。この受光溝は、窓部により導かれた太陽光線に対して垂直となるように配設された面と、この面に向かう太陽光線に沿うように延びることでこの太陽光線を遮断しないように配設された面とを備えて、受光部が熱媒体に接触してこの熱媒体を加熱する面の面積を増加させている。
この第1の発明によれば、窓部を介した物質の出入りを遮断することで、物質の対流および拡散による熱エネルギーの損失を防ぐことができる。また、真空層により窓部を介した熱伝導を低減させることで、受光部に集光される太陽光線を遮断することなく熱エネルギーの損失を防ぐことができる。
さらに、窓部により導かれた太陽光線に対して垂直となるようにされた面を受光溝に備えさせる構成によれば、この受光溝における太陽光線の反射を低減させて、太陽炉装置のエネルギー回収効率を向上させることができる。
さらに、受光溝により受光部が熱媒体に接触してこの熱媒体を加熱する面の面積を増加させる構成によれば、受光部が熱媒体を加熱する際のエネルギー効率を向上させることができる。
【0006】
ついで、第2の発明は、上述した第1の発明において、太陽光線の直達光線を受光部に集光させる直達光集光レンズと、太陽光線をケーシングに向けて反射させる平面鏡と、この平面鏡により反射された太陽光線を受光部に集光させる反射光集光レンズと、ケーシングと受光部と直達光集光レンズと平面鏡と反射光集光レンズとを一体に動かして太陽を追尾する太陽光追尾装置と、を備え、窓部は、ケーシングの複数箇所に形成されて、直達光集光レンズを通った太陽光線と反射光集光レンズを通った太陽光線とを別々の光路で受光部に導くものである。
この第2の発明によれば、太陽炉装置の集光手段(直達光集光レンズ、反射光集光レンズおよび平面鏡)は、ケーシングおよび受光部と一体に太陽を追尾する。このため、太陽光線を集光させる際に集光手段の各構成を個別に制御する必要がなくなり、太陽炉装置の構成が簡単になる。さらに、ケーシングの複数箇所に窓部を形成して、直達光線と反射光線とを別々の光路で集光させるため、太陽炉装置に集光手段の各構成を配設しやすくなる。
ところで、鏡の鏡面に凹みがある場合も、その凹んだ鏡面により反射光を集光させることができる。しかしながら、この場合は、鏡面と入射光の角度関係によっては、鏡面の凹みにより生じる陰が鏡面の他の部分に落ちることで、その部分の鏡面が入射光を反射しなくなる。言い換えると、太陽炉装置の集光手段において、その鏡の鏡面に凹みがある場合、その鏡面と太陽との角度関係によっては、集光手段の集光能力が低下する可能性が生じる。
すなわち、上記第2の発明によれば、平面鏡で反射した太陽光線を反射光集光レンズにより受光部に集光させることで、鏡の鏡面に陰が落ちて集光能力が低下することを防ぐことができる。さらに、鏡の製造コストを抑えて太陽炉装置をより安価にすることができる。
【0007】
さらに、第3の発明は、上述した第1または第2の発明において、ケーシングは、長尺の直管形状に形成されて、その長手方向に沿うように受光部を配設し、かつ、この長手方向に熱媒体を流通させ、窓部は、ケーシングの長手方向に沿うように長尺に形成されているものである。
この第3の発明によれば、長尺の受光部に熱媒体を連続的に流通させながらこの熱媒体を連続的に加熱することができる。このため、太陽炉装置は、太陽光線から効率的に熱エネルギーを取り出すことができる。
【0008】
さらに、第4の発明は、上述した第1から第3の発明のいずれかにおいて、透明部材は、その内部が中空に形成されて、その中空部分に真空層を備えているものである。
この第4の発明によれば、真空層は、透明部材という1つの部材の内部に形成される。このため、透明部材の気密性を高めることで真空層の維持を簡単にして、太陽炉装置の構成を簡単にすることができる。
さらに、第5の発明は、上述した第1の発明において、上記受光溝は、受光部が熱媒体に接触する側に向かって板状あるいは棒状に形成された複数の放熱器を備えているものである。
この第5の発明によれば、受光部の受光溝に板状あるいは棒状に形成された複数の放熱器を備えさせることで、受光部が熱媒体に接触する面積を増加させて受光部が熱媒体を加熱する際のエネルギー効率を向上させることができる。
さらに、第6の発明は、上述した第5の発明において、上記受光部は、内壁面を有する管形状に形成されて、その内部の熱媒体に接触してこの熱媒体を加熱し、上記放熱器は、上記受光部においてこの受光部が熱媒体に接触する内部側に形成された他の放熱器または受光部の内壁面に接続されているものである。
この第6の発明によれば、管形状に形成されてその内部の熱媒体を加熱する受光部において、この受光部の放熱器に支柱としての機能を追加して、上記受光部の強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽炉装置が適用された発電設備を表す模式図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図2の部分拡大図であり、上記太陽炉装置の窓部の構造を表す。
図4】本発明の第2の実施形態に係る太陽炉装置の窓部の構造を表した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
〈第1の実施形態〉
始めに、第1の実施形態に係る太陽炉装置10の構成について、図1ないし図3を用いて説明する。この太陽炉装置10は、図2に示すように、太陽光線Lを直達光集光レンズ14、反射光集光レンズ15および平面鏡16(すなわち集光手段)により集光してケーシング11の受光部12に受光させるようになっている。受光部12は、受光した太陽光線Lから熱エネルギーを取り出し、ケーシング11内の水wを加熱するようになっている。ここで、水wが本発明における「熱媒体」に相当する。
【0011】
上記水wは、図1に示すように、まず水源Wから液体の状態で水タンクT2に供給されて蓄えられ、この水タンクT2から太陽炉装置10に供給される。ついで、水wは、太陽炉装置10により加熱されてその状態が高圧の蒸気(または超臨界流体)に変化し、この状態で蒸気タンクT1に供給されて蓄えられる。蒸気タンクT1に蓄えられた水wは、原動機Pを駆動させてその状態が低圧の蒸気に変化する。
なお、本実施形態においては、原動機Pは蒸気機関であり、その駆動力は発電機Gによる発電に用いられる。また、原動機Pを駆動させた後の水wは、その一部が復水器Cにより液体の状態で回収されて水タンクT2に戻される。これにより、水源Wから供給する水wの量を減らすとともに、原動機Pを駆動させた後の水wが持つ熱エネルギーの一部を回収することができる。
【0012】
受光部12は、長尺の直管形状に形成されてその長手方向(図1で見て上下方向)に水wを流通させるようになっている。この受光部12は、長尺の直管形状に形成されたケーシング11の内部に、ケーシング11の長手方向(図1で見て上下方向)に沿うように配設されている。
受光部12は、図3に示すように、集光された太陽光線Lを受光して発熱し、その熱を受光部12の表面に沿った方向(熱移動方向H1を参照)に熱伝導させながら水wを加熱する(熱移動方向H2を参照)ように構成されている。このため、受光部12はその内部の水wをより均一に加熱することができる。
【0013】
ここで、受光部12には、図2に示すように、複数本(本実施形態では3本)の受光溝12Aが形成されている。そして、受光部12は、上記各受光溝12Aにより太陽光線Lを受光するように構成されている。これにより、受光部12が水wに接触する面積が増加し、受光部12が水wを加熱する際のエネルギー効率が向上する。なお、各受光溝12Aは、受光部12の直管を、その表面側からその長手方向(図1で見て上下方向)に沿って長尺の直線状に凹ませることで形成されている。
上記各受光溝12Aは、図3に示すように、その溝の底が集光される太陽光線Lに対して垂直になるように湾曲している。これにより、各受光溝12Aにおける太陽光線Lの反射を低減させて、太陽炉装置10のエネルギー回収効率を向上させることができる。また、各受光溝12Aは、受光部12の内部側(図3で見て下側)に向かって板状に形成された複数枚(本実施形態では3枚)の放熱器12Bを備えている。これにより、受光部12が水wに接触する面積が増加し、受光部12が水wを加熱する際のエネルギー効率が向上する。
【0014】
ケーシング11は、図2および図3に示すように、ケーシング11の内面に形成された断熱層11Aと、ケーシング11の内部に太陽光線Lを導いて上記受光部12に受光させる窓部13と、を備えている。
断熱層11Aは、図3に示すように、受光部12を外側から覆うように配設されて、この受光部12から外部に向かう方向(熱移動方向H3を参照)の熱移動を遮断するように構成されている。これにより、受光部12から外部に逃げる熱エネルギーの量を低減させて、太陽炉装置10のエネルギー回収効率を向上させることができる。
窓部13は、図1ないし図3に示すように、上記断熱層11Aの複数箇所(本実施形態では3箇所、図2参照)にケーシング11の長手方向(図1で見て上下方向)に沿って開けられた長孔形状に形成されている。ここで、各窓部13は、受光部12の各受光溝12Aに対応した位置に形成されて、受光部12が各受光溝12Aで太陽光線Lを受光できるようになっている。
【0015】
上記各窓部13には、それぞれ透明部材13Aが嵌め込まれている。この各透明部材13Aは、光を透過させ、かつ、各窓部13を介した物質の出入りを遮断するように構成されている。これにより、物質の対流および拡散により各窓部13から受光部12の熱エネルギーが失われることを防いで、太陽炉装置10のエネルギー回収効率を向上させることができる。
透明部材13Aは、図3に示すように、その内部に真空層13Bを備えている。このため、透明部材13Aは、光を透過させる性質を保ったまま、その熱伝導率が低減されている。言い換えると、各窓部13は、この各窓部13を介した熱伝導を各真空層13Bにより低減させるようになっている。そして、各真空層13Bは、それぞれ透明部材13Aという1つの部材の内部に形成されている。
これにより、受光部12に集光される太陽光線Lを遮断することなく、透明部材13Aを介した熱伝導による熱エネルギーの損失を防いで、太陽炉装置10のエネルギー回収効率を向上させることができる。また、透明部材13Aの気密性を高めることで真空層13Bの維持を簡単にして、太陽炉装置10の構成を簡単にすることができる。
【0016】
ここで、太陽炉装置10の集光手段について説明する。太陽炉装置10の集光手段は、図1および図2に示すように、太陽光線Lの直達光線を受光部12に集光させる直達光集光レンズ14と、太陽光線Lをケーシング11に向けて反射させる一対の平面鏡16と、この各平面鏡16により反射された太陽光線Lを受光部12に集光させる一対の反射光集光レンズ15と、で構成されている。
ところで、鏡の鏡面に凹みがある場合も、その凹んだ鏡面により反射光を集光させることができる。しかしながら、この場合は、鏡面と入射光の角度関係によっては、鏡面の凹みにより生じる陰が鏡面の他の部分に落ちることで、その部分の鏡面が入射光を反射しなくなる。言い換えると、太陽炉装置の集光手段において、その鏡の鏡面に凹みがある場合、その鏡面と太陽との角度関係によっては、集光手段の集光能力が低下する可能性が生じる。
すなわち、上記構成によれば、平面鏡16で反射した太陽光線Lを反射光集光レンズ15により受光部12に集光させることで、鏡の鏡面に陰が落ちて集光能力が低下することを防ぐことができる。さらに、鏡の製造コストを抑えて太陽炉装置10をより安価にすることができる。
【0017】
なお、直達光集光レンズ14を通った太陽光線Lと各反射光集光レンズ15を通った太陽光線Lは、図2に示すように、それぞれ別々の光路を通って別々の窓部13から受光部12に導かれるようになっている。
このため、窓部13を、直達光集光レンズ14および平面鏡16と反射光集光レンズ15の組がそれぞれ集光する太陽光線Lの光路に対応させて配設することで、直達光集光レンズ14、平面鏡16、および、反射光集光レンズ15の配設をしやすくすることができる。
【0018】
上記直達光集光レンズ14および各反射光集光レンズ15は、図1および図2に示すように、その曲率方向と垂直な方向に長尺な(図1参照)平凸のシリンドリカルレンズ(図2参照)として形成されている。そして、この各レンズ14、15は、その平面側を窓部13に向けた状態で(図2参照)、その長手方向がケーシング11の長手方向(図1で見て上下方向)に沿うように配設されている。なお、上記各平面鏡16は、図1に示すように、長尺に形成されて、その長手方向がケーシング11の長手方向(図示上下方向)に沿うように配設されている。
【0019】
太陽光線Lは一般的に平行光線とみなすことができる。ここで、平面鏡には、平行光線を平行光線として反射するという性質がある。また、シリンドリカルレンズには、その曲率方向と垂直な方向には集光も光の拡散も行わないという性質がある。さらに、平凸のシリンドリカルレンズには、その凸面側から平行光線を入射させると、この平行光線をシリンドリカルレンズの平面側に線分形状に集光(結像)させるという性質がある。ここで、上記集光による線分は、その向きが上記シリンドリカルレンズの曲率方向に対して垂直になるように結像される。
【0020】
上述した各構成により、図2に示すように、直達光集光レンズ14に入射した太陽光線Lを、長孔形状に形成された窓部13を通して長尺の直線状に形成された受光溝12Aに集光させることができる。また、各平面鏡16により太陽光線Lを平行光線の状態で反射して各反射光集光レンズ15に入射させ、長孔形状に形成された窓部13を通して長尺の直線状に形成された受光溝12Aに集光させることができる。
このため、太陽炉装置10は、長尺の直管形状に形成された受光部12の長手方向(図1で見て上下方向)に水wを連続的に流通させながら、この水wを連続的に加熱することができる。これにより、太陽炉装置10は、太陽光線Lから効率的に熱エネルギーを取り出すことができる。
【0021】
ところで、第1の実施形態の太陽炉装置10は、図2に示すように、太陽を追尾することで太陽炉装置10のエネルギー回収効率を向上させる太陽光追尾装置17を備えている。この太陽光追尾装置17は、地面に対して一体に固定された基台17Aと、支柱11Bを介してケーシング11が一体に固定された設置台17Bと、この設置台17Bを基台17Aに対して傾動可能に連結させるジャッキ17Fと、このジャッキ17Fに駆動力を与えて設置台17Bを傾動させる複数のモーター17Dと、この各モーター17Dを制御して設置台17Bを傾動させ、そのケーシング11が固定された側の設置面17Cを太陽に向ける制御装置17Eと、を備えている。
ここで、直達光集光レンズ14は、支柱14Aによりケーシング11に対して一体に固定されている。また、各反射光集光レンズ15は、それぞれ支柱15Aにより設置台17Bの設置面17C側に一体に固定されている。また、各平面鏡16は、それぞれ支柱16Aにより設置台17Bの設置面17C側に一体に固定されている。
【0022】
上記構成により、太陽光追尾装置17は、設置台17Bの設置面17Cを、ケーシング11および太陽炉装置10の集光手段(すなわち、直達光集光レンズ14、反射光集光レンズ15および平面鏡16)と一体に太陽に向けるようになっている。言い換えると、太陽炉装置10の集光手段の各構成は、ケーシング11およびその内部の受光部12と一体に太陽を追尾する。
このため、太陽光線Lを集光させる際に集光手段の各構成を個別に制御する必要がなくなり、太陽炉装置10の構成が簡単になる。また、ケーシング11および集光手段に当たる太陽光線Lの角度が一定となるので、ケーシング11およびその支柱11Bにより遮られる範囲の太陽光線を直達光集光レンズ14により集光することができる。さらに、太陽炉装置10の集光手段の各支柱14A、15A、16Aを太陽光線Lと干渉しない位置に配設して、太陽炉装置10の集光能力の低下を防止することができる。
【0023】
〈第2の実施形態〉
続いて、第2の実施形態に係る太陽炉装置20の構成について、図4を用いて説明する。第2の実施形態に係る太陽炉装置20は、第1の実施形態に係る太陽炉装置10を変形した実施形態である。したがって、上記第1の実施形態に係る太陽炉装置10の各構成と共通する構成については、第1の実施形態に係る太陽炉装置10の各構成に付した符号から、その十の位の数字を「2」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
第2の実施形態の太陽炉装置20は、図4に示すように、窓部23の真空層23Bを、透明部材23Aと受光部22との間に配設したものである。言い換えると、上記真空層23Bは、透明部材23Aと受光部22との間の空気を真空ポンプ23Cおよび排気管23Dにより排気することで形成される。ここで、何らかの理由により透明部材23Aと受光部22との間の空間に空気が入り込むと、上記真空層23Bは失われる。この場合、上述した真空ポンプ23Cを再駆動させて入り込んだ空気を排気することで、真空層23Bを再び形成することができる。
上記構成によれば、窓部23を介した熱伝導を真空層23Bにより低減させて、太陽炉装置20のエネルギー回収効率を向上させることができる。さらに、透明部材23Aの製造コストを抑えて太陽炉装置20をより安価にすることができる。
【0024】
ここで、窓部23は、その窓枠23Eが金属により形成されて受光部22に対して一体に熔接されている。また、この窓枠23Eには、板状に形成された透明部材23Aがガスケット23Fを挟んだ状態でボルト23Gにより固定されている。これにより、透明部材23Aと受光部22との間の空間に気密性を持たせて、真空層23Bを維持することができる。
なお、上記太陽炉装置20においては、受光部22から窓枠23Eおよびボルト23Gを介して外部に逃げる熱量は無視できるほど小さいとみなしている。しかしながら、窓枠23Eおよびボルト23Gを熱伝導率の小さい素材で形成したり、ボルト23Gの頭部を断熱材で覆ったりすることで、太陽炉装置20のエネルギー回収効率をさらに向上させることもできる。
【0025】
本発明は、上述した第1および第2の実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
(1)直達光集光レンズおよび反射光集光レンズの形状は平凸のシリンドリカルレンズに限定されず、例えばトーリックレンズなど適宜設定することができる。また、各レンズをフレネルレンズとして各レンズの軽量化を図ることもできる。
(2)太陽炉装置の集光手段としてレンズを用いる必要はなく、例えば凹面鏡により太陽光線を集光する構成を用いることができる。
(3)太陽炉装置から集光手段を省略することができる。
(4)太陽光追尾装置が太陽炉装置の集光手段を個別に制御して動かす構成を用いることができる。
(5)太陽炉装置から太陽光追尾装置を省略することができる。
(6)熱媒体の流通経路は受光部の内部に限定されず、受光部から熱エネルギーを伝えることができ、かつ、ケーシングにより外部に逃げる熱エネルギーを低減させることができる流通経路を適宜設定することができる。
(7)太陽炉装置に流通させる熱媒体は水に限定されず、流通可能な流体を適宜設定することができる。
(8)太陽炉装置に熱媒体を流通させる必要はなく、例えば受光部に熱伝導率の高い金属を連結させて、この金属からの熱伝導により熱エネルギーを取り出す構成を用いることができる。
(9)放熱器の形状および配置は第1および第2の実施形態の形状に限定されない。すなわち、例えば放熱器を棒状に形成することができる。また、放熱器を他の放熱器または受光部の内壁面に接続させて、この放熱器に受光部の強度を高める支柱としての機能を追加して持たせることもできる。
(10)受光部の放熱器および受光溝は、それぞれ省略することができる。
(11)窓部およびケーシングの形状および配置は第1および第2の実施形態の形状に限定されず、円形の窓部を1つだけ配置するなど、太陽炉装置の各構成の形状および配置に合わせて適宜変更することができる。
(12)太陽炉装置により駆動される原動機は蒸気機関に限定されず、蒸気タービンなど任意の熱機関を用いることができる。
(13)太陽炉装置は原動機を駆動させて発電機により発電を行うものに限定されず、例えば熱電変換部材により熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する構成を用いることができる。また、原動機の駆動力を直接利用する構成や、熱エネルギーを直接化学反応に利用する構成を用いることもできる。
【符号の説明】
【0026】
10 太陽炉装置
11 ケーシング
11A 断熱層
11B 支柱
12 受光部
12A 受光溝
12B 放熱器
13 窓部
13A 透明部材
13B 真空層
14 直達光集光レンズ
14A 支柱
15 反射光集光レンズ
15A 支柱
16 平面鏡
16A 支柱
17 太陽光追尾装置
17A 基台
17B 設置台
17C 設置面
17D モーター
17E 制御装置
17F ジャッキ
20 太陽炉装置
21 ケーシング
21A 断熱層
22 受光部
22A 受光溝
22B 放熱器
23 窓部
23A 透明部材
23B 真空層
23C 真空ポンプ
23D 排気管
23E 窓枠
23F ガスケット
23G ボルト
C 復水器
G 発電機
H1 熱移動方向
H2 熱移動方向
H3 熱移動方向
L 太陽光線
P 原動機
T1 蒸気タンク
T2 水タンク
W 水源
w 水(熱媒体)
図1
図2
図3
図4