(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653897
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】中性子線照射用患者治療台及び中性子線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20141218BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20141218BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20141218BHJP
A61G 13/00 20060101ALN20141218BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61N5/10 H
G21K5/02 N
A61B6/00 370
!A61G13/00 P
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-286281(P2011-286281)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132501(P2013-132501A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 直樹
【審査官】
堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−189643(JP,A)
【文献】
特表2007−501663(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0274446(US,A1)
【文献】
特表2012−506748(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/049660(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線照射治療において患者が配置される中性子線照射用患者治療台であって、
前記患者の体を支えるための治療台本体と、
前記患者の頭部を支えるための頭部支持部と、
水平面内で前記頭部支持部を前記治療台本体に対して移動可能に支持する移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、
前記治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、
前記第1の軸部材に対して前記頭部支持部を前記第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、
を備えることを特徴とする中性子線照射用患者治療台。
【請求項2】
前記移動機構は、前記頭部支持部を鉛直軸回りで回転可能又は揺動可能に支持する請求項1に記載の中性子線照射用患者治療台。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、
前記第1の軸部材に支持された第2の軸部材と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を前記第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を前記第2の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第2のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、
前記第2の軸部材に対して前記頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第2の接続部と、
を備える請求項1に記載の中性子線照射用患者治療台。
【請求項4】
前記頭部支持部は、X線照射を受けて前記頭部のX線画像を取得するX線画像取得手段を有している請求項1〜3の何れか一項に記載の中性子線照射用患者治療台。
【請求項5】
中性子線を照射する照射部と前記照射部からの中性子線の照射方向に患者を配置させる中性子線照射用患者治療台とを備え、
前記中性子線照射用患者治療台は、
前記患者の体を支持するための治療台本体と、
前記患者の頭部を支持するための頭部支持部と、
水平面内で前記頭部支持部を前記治療台本体に対して移動可能に支持する移動機構と、
を有し、
前記移動機構は、
前記治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、
前記第1の軸部材に対して前記頭部支持部を前記第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、
を備えることを特徴とする中性子線照射装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記頭部支持部を鉛直軸回りで回転可能又は揺動可能に支持する請求項5に記載の中性子線照射装置。
【請求項7】
前記移動機構は、
前記治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、
前記第1の軸部材に支持された第2の軸部材と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を前記第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を前記第2の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第2のスライド支持部と、
前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、
前記第2の軸部材に対して前記頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第2の接続部と、
を備える請求項5に記載の中性子線照射装置。
【請求項8】
前記頭部支持部は、X線照射を受けて前記頭部のX線画像を取得するX線画像取得手段を有している請求項5〜7の何れか一項に記載の中性子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線照射用患者治療台及び中性子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌等を治療する方法の一つとして中性子線捕捉療法が知られている。中性子線捕捉療法では、例えばホウ素を含む薬剤を患者へ投与し、ホウ酸が堆積した患部周辺に中性子線を照射することで、ホウ酸と中性子線とが反応してα線等を放出し、周辺の癌細胞等が破壊される。
【0003】
中性子線捕捉療法のうち、ホウ酸を含む薬剤を患者に投与して治療する方法をBNCT[Boron Neutron Capture Therapy]と呼び、BNCTを行う装置をBNCT装置と呼ぶ。BNCT装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたBNCT装置では、患者を椅子に座らせ、顔の正面側から中性子線の照射を行うことで患者頭部の患部に対する治療を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−189725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中性子線の届く範囲は限られており、患部の位置によっては顔の正面から届かない場合がある。また、顔の正面からの照射には目等の組織に対する影響も懸念される。このため、患者を寝かせた状態で患者頭部に中性子線を照射することが検討されている。
【0006】
しかしながら、単純なベッド形状の患者治療台を用いると、患者治療台が中性子線の照射部に干渉してしまい、患部を照射部に対して十分に近づけられないという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、中性子線の照射部に対して患者頭部の患部を十分に近づけることができる中性子線照射用患者治療台及び中性子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、中性子線照射治療において患者が配置される中性子線照射用患者治療台であって、患者の体を支えるための治療台本体と、患者の頭部を支えるための頭部支持部と、水平面内で頭部支持部を治療台本体に対して移動可能に支持する移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記中性子線照射用患者治療台によれば、頭部支持部が治療台本体に対して水平面内で移動可能に構成されているので、治療台本体を動かすことなく、患者頭部の位置を変えることができる。従って、上記中性子線照射用患者治療台によれば、頭部支持部と治療台本体とが一体となっている場合と比べて、治療台本体が照射部に干渉することなく、患者頭部の位置のみを変えることができるので、中性子線の照射部に対して患者頭部の患部を十分に近づけることができる。
【0010】
上記移動機構は、頭部支持部を鉛直軸回りで回転可能又は揺動可能に支持しても良い。
この構成によれば、中性子線の照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になるので、患者頭部の患部に対して照射部をより一層近づけることができる。
【0011】
上記移動機構は、治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、第1の軸部材に対して頭部支持部を第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、第1の軸部材に対して頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、を備えても良い。
【0012】
上記中性子線照射用患者治療台によれば、第1の軸部材に対して頭部支持部がスライド自在に支持されるので、第1の軸部材の延在方向で患者頭部を自在に移動させることができる。また、上記中性子線照射用患者治療台では、頭部支持部が第1の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になり、患者頭部の患部に対して中性子線の照射部をより一層近づけることができる。
【0013】
上記移動機構は、治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、第1の軸部材に支持された第2の軸部材と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を第2の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第2のスライド支持部と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に支持する第1の接続部と、第2の軸部材に対して頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第2の接続部と、を備えても良い。
【0014】
上記中性子線照射用患者治療台によれば、第1の軸部材及び第2の軸部材の両方に対して、頭部支持部がスライド自在に支持されるので、水平面内で患者頭部を自在に移動させることができる。しかも、上記中性子線照射用患者治療台では、第2の軸部材が第1の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、患者頭部が移動できる範囲を大きく広げることができる。また、上記中性子線照射用患者治療台によれば、頭部支持部が第2の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になり、患者頭部の患部に対して中性子線の照射部をより一層近づけることができる。
【0015】
上記頭部支持部は、X線照射を受けて頭部のX線画像を取得するX線画像取得手段を有していても良い。
この構成によれば、患者の頭部を頭部支持部に対して固定した状態でX線画像を取得することができるので、X線画像に基づいて照射部に対する患者頭部の位置決めを正確に行うことができる。
【0016】
本発明は、中性子線を照射する照射部と照射部からの中性子線の照射方向に患者を配置させる中性子線照射用患者治療台とを備え、中性子線照射用患者治療台は、患者の体を支持するための治療台本体と、患者の頭部を支持するための頭部支持部と、水平面内で頭部支持部を治療台本体に対して移動可能に支持する移動機構と、を有することを特徴とする。
【0017】
上記中性子線照射装置によれば、頭部支持部が治療台本体に対して水平面内で移動可能に構成されているので、治療台本体を動かすことなく、患者頭部の位置を変えることができる。従って、上記中性子線照射用患者治療台によれば、頭部支持部と治療台本体とが一体となっている場合と比べて、治療台本体が照射部に干渉することなく、患者頭部の位置のみを変えることができるので、中性子線の照射部に対して患者頭部の患部を十分に近づけることができる。
【0018】
上記移動機構は、頭部支持部を鉛直軸回りで回転可能又は揺動可能に支持しても良い。
この構成によれば、中性子線の照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になるので、患者頭部の患部に対して照射部をより一層近づけることができる。
【0019】
上記移動機構は、治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、第1の軸部材に対して頭部支持部を第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、第1の軸部材に対して頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に接続する第1の接続部と、を備えても良い。
【0020】
上記中性子線照射装置によれば、第1の軸部材に対して頭部支持部がスライド自在に支持されるので、第1の軸部材の延在方向で患者頭部を自在に移動させることができる。また、上記中性子線照射装置では、頭部支持部が第1の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になり、患者頭部の患部に対して中性子線の照射部をより一層近づけることができる。
【0021】
上記移動機構は、治療台本体に対して固定された第1の軸部材と、第1の軸部材に支持された第2の軸部材と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を第1の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第1のスライド支持部と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を第2の軸部材の延在方向でスライド可能に支持する第2のスライド支持部と、第1の軸部材に対して第2の軸部材を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に支持する第1の接続部と、第2の軸部材に対して頭部支持部を鉛直軸周りで回転可能又は揺動可能に支持する第2の接続部と、を備えても良い。
【0022】
上記中性子線照射装置によれば、第1の軸部材及び第2の軸部材の両方に対して、頭部支持部がスライド自在に支持されるので、水平面内で患者頭部を自在に移動させることができる。しかも、上記中性子線照射装置では、第2の軸部材が第1の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、患者頭部が移動できる範囲を大幅に広げることができる。また、上記中性子線照射装置によれば、頭部支持部が第2の軸部材に対して回転可能又は揺動可能に接続されているので、照射部に対する患者頭部の向きの微調整が可能になり、患者頭部の患部に対して中性子線の照射部をより一層近づけることができる。
【0023】
上記頭部支持部は、X線照射を受けて頭部のX線画像を取得するX線画像取得手段を有していても良い。
この構成によれば、患者の頭部を頭部支持部に対して固定した状態でX線画像を取得することができるので、X線画像に基づいて照射部に対する患者頭部の位置決めを正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、中性子線の照射部に対して患者頭部の患部を十分に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る中性子線照射装置の一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1の中性子線照射装置を示す側面図である。
【
図3】中性子線照射用患者治療台を示す平面図である。
【
図4】中性子線照射用患者治療台を示す側面図である。
【
図5】患者の頭頂部に中性子線を照射する場合の中性子線照射装置を示す平面図である。
【
図6】
図5の中性子線照射装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る中性子線照射装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、水平面内で直交する二軸をX軸及びY軸とし、X軸及びY軸に直交する鉛直軸をZ軸として以下の説明に用いる。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る中性子線照射装置1は、ホウ酸を含む薬剤を投与した患者頭部の患部(被照射体)へ向けて中性子線を照射するBNCT[Boron Neutron Capture Therapy]用の装置である。中性子線は、例えばベリリウム、リチウム、タンタル、タングステン等の材料から形成されたターゲットに対して陽子や重陽子からなるイオンビームを照射することにより発生させることができる。
【0028】
中性子線照射装置1は、中性子線照射用の患者治療台2に配置された患者Aの患部に向かって中性子線を照射部3から照射する。
図1及び
図2では、患者Aの右側頭部に位置する患部を治療する場合の中性子線照射装置1を示している。この場合においては、患者Aの右側頭部を照射部3に十分近づける必要がある。中性子線の照射方向を矢印N1として
図1に示す。
【0029】
患者治療台2は、治療台本体4、体支持部5、及び頭部支持部6を備えている。治療台本体4は、患者治療台2のベースとなる部材である。治療台本体4は、図示しない脚部を介して床上に配置されている。治療台本体4は、施設の床上を移動可能であり、任意の位置で床面に固定することができる。なお、治療台本体4は、脚部ではなくロボットアームにより移動可能に支持されていても良い。
【0030】
体支持部5は、患者Aの体を支持するためのベッド部材である。この体支持部5を介して治療台本体4は患者の体を支えている。体支持部5は、鉛直方向(Z軸方向)から見て長方形状を成すベッド部材であり、その長手方向はY軸方向に等しい。体支持部5は、スライド部7によって治療台本体4に対してY軸方向にスライド可能に支持されている。体支持部5のスライド方向を矢印S1として示す。また、スライド部7は、任意の位置で体支持部5を固定するためのクランプ機能を有している。
【0031】
なお、患者治療台2は、ロボットアーム等によりと移動自在に構成されていても良い。また、患者治療台2は、必ずしもスライド部7を有する必要はない。例えば、体支持部5が治療台本体4上に直接置かれている態様であっても良い。或いは、体支持部5が治療台本体4に対して一体的に固定されていても良い。
【0032】
頭部支持部6は、患者Aの頭を支持するための部材である。頭部支持部6は、イメージングプレート(X線画像取得手段)8、イメージングプレートホルダ9、及び枕部10を有している。
【0033】
イメージングプレート8は、X線照射を受けて患者頭部のX線画像を取得するためのものである。X線照射は、例えばイメージングプレート8の上方から患者Aの頭部に向けて照射される。長方形状のイメージングプレート8は、ロの字形状のイメージングプレートホルダ9内に差し込まれている。
【0034】
ロの字形状のイメージングプレートホルダ9は、イメージングプレート8を保持する部材である。イメージングプレートホルダ9は、X軸方向に貫かれた貫通孔を有しており、この貫通孔にイメージングプレート8が差し込まれる。
【0035】
イメージングプレートホルダ9は、イメージングプレート8をX軸方向で移動可能に保持しており、必要に応じてイメージングプレート8の位置を変更することができる。イメージングプレートホルダ9は、患者頭部を照射部3のビーム照射口に近づけるため、X軸方向の幅が狭く形成されている。なお、イメージングプレートホルダ9は、ロの字形状ではなく、コの字形状に構成されていても良い。
【0036】
枕部10は、患者Aの頭部が置かれる部位である。枕部10は、イメージングプレートホルダ9上に設けられている。患者Aの頭部は、枕部10の上に配置された状態で専用の固定具により頭部支持部6に固定される。
【0037】
頭部支持部6は、移動機構11を介して治療台本体4に支持されている。移動機構11は、頭部支持部6が治療台本体4に対して水平面内(XY平面内)で移動可能となるように構成されている。
【0038】
図3は、
図1の患者治療台2を示す平面図である。また、
図4は、
図3の患者治療台2を示す側面図である。
図3及び
図4に示されるように、移動機構11は、軸固定部12、第1の軸部材13、第1のスライド支持部14、第1の回転接続部(第1の接続部)15、第2のスライド支持部16、第2の軸部材17、第2の回転接続部(第2の接続部)18を有している。
【0039】
一対の軸固定部12は、X軸方向に延在する第1の軸部材13の両端部を治療台本体4に対して固定する部材である。一対の軸固定部12は、治療台本体4におけるY軸方向の端部に固定されている。一対の軸固定部12は、先端部12aが治療台本体4のキリ穴に差し込まれた状態で治療台本体4の裏側からボルトで締め付けられることにより固定されている。第1の軸部材13は、X軸方向に延在する丸棒形状の部材である。
【0040】
第1のスライド支持部14、第1の回転接続部15、及び第2のスライド支持部16は、第1の軸部材13に対して第2の軸部材17を接続する部位である。第1のスライド支持部14、第1の回転接続部15、及び第2のスライド支持部16は、互いに連結して設けられている。
【0041】
第1のスライド支持部14は、第1の軸部材13が挿通された貫通孔を有するブロック状の部材である。第1のスライド支持部14は、第1の軸部材13に沿ってX軸方向(第1の軸部材13の延在方向)にスライドする。第1のスライド支持部14の移動方向を矢印S2として示す。第1のスライド支持部14は、第1の軸部材13に対して第2の軸部材17をX軸方向にスライド可能に支持している。
【0042】
また、第1のスライド支持部14は、図示しないクランプ機構を備えており、第1の軸部材13上の任意の位置に固定することができる。第1のスライド支持部14の側方(Y軸方向で体支持部5の反対側)には、第1の回転接続部15が固定されている。
【0043】
第1の回転接続部15は、Z軸方向に延在する鉛直軸15aを有している。第1の回転接続部15は、鉛直軸15aをZ軸周り(鉛直軸15a周り)で回転可能に支持している。第1の回転接続部15における鉛直軸15aの回転を矢印R1として示す。
【0044】
また、第1の回転接続部15は、クランプレバー15bを備えている。クランプレバー15bは、第1の回転接続部15の鉛直軸15aを任意の回転位置で固定するためのものである。第1の回転接続部15の鉛直軸15aの上端には、第2のスライド支持部16が固定されている。第1の回転接続部15は、第1の軸部材13に対して第2の軸部材17を鉛直軸15a周りで回転可能に接続している。
【0045】
第2のスライド支持部16は、丸棒形状の第2の軸部材17が挿通された貫通孔を有するブロック状の部材である。第2のスライド支持部16は、第2の軸部材17の延在方向にスライドする。第2のスライド支持部16の移動方向を矢印S3として示す。第1のスライド支持部14は、第1の軸部材13に対して第2の軸部材17を第2の軸部材17の延在方向でスライド可能に支持している。
【0046】
また、第2のスライド支持部16は、クランプレバー16aを備えている。クランプレバー16aは、第2の軸部材17上の任意の位置で第2のスライド支持部16を固定するためのものである。第2の軸部材17の一端には、第2のスライド支持部16の抜け止めとして機能する抜け止め部17aが形成されている。
【0047】
第2の軸部材17の他端には、第2の回転接続部18が固定されている。第2の回転接続部18は、第2の軸部材17と頭部支持部6とを接続する部材である。第2の回転接続部18は、Z軸方向に延在する鉛直軸18aを有している。第2の回転接続部18は、鉛直軸18aをZ軸周り(鉛直軸18a周り)で回転可能に支持している。第2の回転接続部18における鉛直軸18aの回転を矢印R2として示す。
【0048】
また、第2の回転接続部18は、クランプレバー18bを備えている。クランプレバー18bは、第2の回転接続部18の鉛直軸18aを任意の回転位置で固定するためのものである。第2の回転接続部18の鉛直軸18aの上端に頭部支持部6が固定されている。第2の回転接続部18は、第2の軸部材17に対して頭部支持部6を鉛直軸18a周りで回転可能に接続している。
【0049】
次に、
図5及び
図6を参照して、患者Aの頭頂部に位置する患部を治療する場合の患者治療台2の形態について説明する。
図5は、患者Aの頭頂部に中性子線を照射する場合の中性子線照射装置1を示す平面図である。
図6は、
図5の中性子線照射装置1を示す側面図である。中性子線の照射方向を矢印N2として示す。
【0050】
患者Aの頭頂部に中性子線を照射する場合には、患者Aの頭頂部と照射部3とを十分に近づける必要がある。以下、
図1及び
図2に示す患者治療台2の形態から、
図5及び
図6に示す患者治療台2の形態への変更について説明する。
【0051】
図1及び
図2に示す形態の患者治療台2において、まず頭部支持部6を支持する第2の回転接続部18と第2のスライド支持部16とが当接するまで第2の軸部材17をスライドさせる。次に、第1の回転接続部15の鉛直軸15aを中心として、第1の軸部材13と平行になるように第2の軸部材17を回転させる。
【0052】
続いて、第1のスライド支持部14を移動させて、頭部支持部6が体支持部5の幅方向(X軸方向)の中心となるように位置を調節する。その後、体支持部5を頭部支持部6に寄せるようにスライドさせることで、
図5及び
図6に示す患者治療台2の形態となる。このように患者治療台2の形態を変更することで、頭部支持部6が患者治療台2の端に位置することになり、患者Aの頭頂部を照射部3に対して十分に近づけることができる。
【0053】
以上説明した中性子線照射用の患者治療台2を備える中性子線照射装置1によれば、頭部支持部6が治療台本体4に対して水平面内で移動可能に構成されているので、治療台本体4を動かすことなく、患者頭部の位置を変えることができる。従って、中性子線照射装置1によれば、頭部支持部6が治療台本体4や体支持部5と一体になっている場合と比べて、治療台本体4や体支持部5が照射部3に干渉することなく、患者頭部の位置のみを変えることができるので、中性子線の照射部3に対して患者頭部の患部を十分に近づけることができる。
【0054】
また、中性子線照射装置1によれば、第1の軸部材13及び第2の軸部材17の両方に対して、頭部支持部6がスライド自在に支持されるので、水平面内で患者の頭部を自在に移動させることができる。しかも、中性子線照射装置1では、第2の軸部材17が第1の軸部材13に対して回転可能に接続されているので、患者頭部が移動できる範囲を大幅に広げることができる。また、中性子線照射装置1によれば、頭部支持部6が第2の軸部材17に対して回転可能に接続されているので、照射部3に対する患者頭部の向きの微調整が可能になり、患者頭部の患部に対して中性子線の照射部3をより一層近づけることができる。
【0055】
更に、中性子線照射装置1によれば、X線照射を受けて頭部のX線画像を取得するイメージングプレート8を頭部支持部6が有しているので、患者Aの頭部を頭部支持部6に対して固定した状態でX線画像を取得することができる。従って、中性子線照射装置1では、X線画像に基づいて照射部3に対する患者頭部の位置決めを正確に行うことができる。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、移動機構11は、頭部支持部6をZ軸方向に移動可能に構成されていても良い。具体的には、第2の回転接続部18と頭部支持部6との間にパンタグラフ式のジャッキ機構等を設けることができる。このような構成によれば、患者が横向きに寝た状態で治療を行う場合に、体と頭部との間の段差に合わせて頭部支持部6の高さを調整することで安定して頭部を固定することができる。
【0057】
また、第1の回転接続部15及び第2の 回転接続部18は、必ずしも360°回転可能である必要ではなく、360°未満の角度で揺動可能な構成であっても良い。
【0058】
また、移動機構11の構成は上述したものに限られず、水平面内で頭部支持部6を治療台本体4に対して移動可能に支持するものであれば良い。ここで、水平面内で移動可能とは、厳密な水平方向にのみ移動する場合に限られず、水平面に対して傾いた平面内を移動する場合であっても水平面内で移動可能なものに含まれる。
【0059】
同様に、鉛直軸回りに回転可能又は揺動可能とは、厳密に鉛直軸の周りのみを回転又は揺動する場合に限られず、鉛直軸に対して傾いた軸線周りを回転又は揺動する場合であっても鉛直軸回りに回転可能又は揺動可能なものに含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…中性子線照射装置 2…中性子線照射用患者治療台 3…照射部 4…治療台本体 5…体支持部 6…頭部支持部 7…スライド部 8…イメージングプレート(X線画像取得手段) 9…イメージングプレートホルダ 10…枕部 11…移動機構 12…軸固定部 13…第1の軸部材 14…第1のスライド支持部 15…第1の回転接続部 15a…鉛直軸 15b…クランプレバー 16…スライド支持部 16a…クランプレバー 17…第2の軸部材 18…第2の回転接続部 18a…鉛直軸 18b…クランプレバー A…患者