(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653902
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント素子用フッ素誘導体
(51)【国際特許分類】
C07C 13/567 20060101AFI20141218BHJP
C07D 209/82 20060101ALI20141218BHJP
C07D 265/38 20060101ALI20141218BHJP
C07D 279/36 20060101ALI20141218BHJP
C07D 241/48 20060101ALI20141218BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20141218BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20141218BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20141218BHJP
C07D 219/14 20060101ALI20141218BHJP
C07D 333/18 20060101ALI20141218BHJP
C07D 213/38 20060101ALI20141218BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20141218BHJP
C07D 235/18 20060101ALI20141218BHJP
C07D 235/02 20060101ALI20141218BHJP
C07D 213/50 20060101ALI20141218BHJP
C07D 251/24 20060101ALI20141218BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20141218BHJP
C07D 239/26 20060101ALI20141218BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20141218BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20141218BHJP
C07C 25/22 20060101ALI20141218BHJP
C07C 211/61 20060101ALI20141218BHJP
C07C 49/792 20060101ALI20141218BHJP
C07F 9/53 20060101ALI20141218BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20141218BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
C07C13/567CSP
C07D209/82
C07D265/38
C07D279/36
C07D241/48
C07D401/14
C07D409/14
C07D405/14
C07D219/14
C07D333/18
C07D213/38
C07D519/00 311
C07D235/18
C07D235/02 B
C07D213/50
C07D251/24
C07D471/04 112Z
C07D239/26
C07D403/04
C07D403/14
C07C25/22
C07C211/61
C07C49/792
C07F9/53
C09K11/06 690
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
【請求項の数】14
【全頁数】79
(21)【出願番号】特願2011-503351(P2011-503351)
(86)(22)【出願日】2009年3月11日
(65)【公表番号】特表2011-521894(P2011-521894A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2009001736
(87)【国際公開番号】WO2009124627
(87)【国際公開日】20091015
【審査請求日】2012年3月9日
(31)【優先権主張番号】102008017591.9
(32)【優先日】2008年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100101812
【弁理士】
【氏名又は名称】勝村 紘
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(74)【代理人】
【識別番号】100127144
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 卓三
(74)【代理人】
【識別番号】100141933
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 元
(72)【発明者】
【氏名】ストエッセル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハイル、ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーステン、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】フルム、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト、アンヤ
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−182088(JP,A)
【文献】
特開平10−095972(JP,A)
【文献】
特開平05−127374(JP,A)
【文献】
特表2007−520875(JP,A)
【文献】
特開2007−049055(JP,A)
【文献】
特開2005−085599(JP,A)
【文献】
特開平07−146372(JP,A)
【文献】
Chemistry Letters,2004年,33(3),276-277
【文献】
Journal of the Chinese Chemical Society (Taipei),2000年,47(1),71-76
【文献】
K.-T. LIU,SOLVOLYSIS OF 9-ARYL-9-CHLOROFLUORENES REVISITED.SOLVENT AND SUBSTITUENT EFFECTS,ORGANIC REACTIVITY,1997年,31(1),59-66
【文献】
Tetrahedron Letters,1992年,33(38),5575-5576
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1988年,53(6),1267-1273
【文献】
Journal of the American Chemical Society,1987年,109(23),7088-7094
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1984年,49(5),770-778
【文献】
Bulletin of the Chemical Society of Japan,1982年,55(8),2512-2515
【文献】
Justus Liebigs Annalen der Chemie,1972年,757,153-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)により表される化合物。
【化1】
式中、使用された符号及び指数は以下の通りである。
Xは、出現するごとに同一でも異っていてもよく、CR
1又はNであって、各環において最大3基のXはNを
表す:
Yは、単結
合である。
Rは、
出現するごとに同一でも異っていてもよく、NAr2、C(=O)Ar又はP(=O)Ar2を表し、あるいは、5〜30個の芳香環原子を有し、1又は2以上の非芳香族ラジカルR1により置換されていてもよい芳香環類を表す。
Arは、出現するごとに同一でも異っていてもよく、5〜30個の芳香環原子を有し、1又は2以上の非芳香族ラジカルR
1により置換されていてもよい芳香環もしくは芳香族複素環類である。ここで、同じ窒素原子又はリン原子に結合している2つのArラジカルは、単結合、あるいはB(R
2)、C(R
2)
2、Si(R
2)
2、C=O、C=NR
2、C=C(R
2)
2、O、S、S=O、SO
2、N(R
2)、P(R
2)及びP(=O)R
2から選択される架橋により互いに結合してもよい。
R
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、
H、F、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル基、又は3〜6個のC原子を有する分岐鎖もしくは環状アルキル基であり、ここで、各基は1又は2以上のR2ラジカルで置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、Fにより置換されていてもよく、またはR1は、5〜14個の芳香環原子を有する芳香環類であって、各場合において1又は2以上のR2ラジカルにより置換されていてもよい芳香環類である。
R
2は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、又は、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素ラジカルであり、更に、H原子はFにより置換されていてもよい。ここで、2以上の隣接する置換基R
2は、一緒になって単環又は多環の脂肪族又は芳香族環類を形成してもよい。
n
は2である。
下記化合物は、本発明から除かれる。
【化2】
【請求項2】
式(2)
又は(3
)により表される請求項1に記載の化合物。
【化3】
式中、使用される符号及び指数は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項3】
式(2a)
又は(3a)により表される請求項1
又は2に記載の化合物。
【化4】
式中、使用される符号は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項4】
式(4a)又は(4b)により表される請求項1
又は2に記載の化合物。
【化5】
式中、使用される符号は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項5】
式(4c)
又は(4d)により表される請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【化6】
式中、使用される符号及び指数は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項6】
RラジカルがN(Ar)
2基である場合、式(5)又は式(6):
【化7】
[式中、R
2は上述した意味を有し、更に
Eは、単結合、O、S、N(R
2)又はC(R
2)
2を表し、
Ar
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類、もしくは15〜30個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基を表し、これらの各基は、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよく、好ましくは、6〜14個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、もしくは18〜30個の芳香環原子、好ましくは18〜22個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、これらの各基は、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい。
pは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、0又は1である。]
により表される基から選択され、及び/又は
Rラジカルが芳香環又は芳香族複素環類である場合、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェニルアントラセニル、1−又は2−ナフチルアントラセニル、ビナフチル、ピレニル、フルオロランテニル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾアントラセニル、N−ベンゾイミダゾリル、フェニル−N−ベンゾイミダゾリル、N−フェニルベンゾイミダゾリル、及びフェニル−N−フェニルベンゾイミダゾリルから選択されることを特徴とする請求項1〜
5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
ビス(3,5−ジブロモ)−ベンゾフェノンと置換又は無置換の2−リチオビフェニル、2−リチオジフェニルエーテル、2−リチオジフェニルチオエーテル、2−(2−リチオフェニル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、2−リチオフェニルジフェニルアミン、又は対応するグリニャール化合物を反応させてトリアリールメタノールを得、これを酸性条件下で環化させ、任意に臭素基を更に反応させることを含む請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の合成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の1又は2以上の化合物を含む二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーであって、R1又はR2が、二量体、三量体、四量体又は五量体における式(1)で表される化合物間の結合を表し、または、式(1)により表される化合物からポリマー、オリゴマー又はデンドリマーへの結合を表
し、または、この結合はR基上の置換基を介してなされるものである二量体、三量体、四
量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマー。
【請求項9】
請求項1〜6又は請求項8のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物と、少なくとも1種の更なる化合物を含有する混合物。
【請求項10】
請求項1〜6又は請求項8のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物と、少なくとも1種の有機溶剤を含有する溶液。
【請求項11】
電子素子における請求項1〜6又は請求項8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
請求項1〜6又は請求項8のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を含有する電子素子。
【請求項13】
有機エレクトロルミネセント素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチ素子(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機半導体レーザー(O−レーザー)又は有機光受容体から選択される請求項12に記載の電子素子。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物が、蛍光又はりん光化合物の母材として使用されることを特徴とし、及び/又は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物が、正孔輸送物質、正孔注入物質、電子遮蔽物質又は励起子遮蔽物質として使用されることを特徴とし、及び/又は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物が、電子輸送物質又は正孔遮蔽物質として使用されることを特徴とする請求項13に記載の有機ルミネセント素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体及び有機電素子における有機半導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、異なる種類の多くの電子適用について開発されつつある。これら有機半導体が機能材料として使用されている有機エレクトロルミネセント素子の構造(OLED)が、例えば、特許文献1〜4に記載されている。しかしながら、高品質であり長持ちするディスプレイ用のこれら素子の使用における更なる改善がなお望まれている。したがって、特に青色発光有機エレクトロルミネセンスの寿命及び効率を改善する必要性が目下のところある。化合物が高い熱安定性と高いガラス転移点を有し、分解せずに置換され得ることが更に必要である。特に高温での使用においては、寿命の長期化を達成するためにガラス転移点が高いことが本質である。
【0003】
例えば、蛍光性及びりん光性エミッター用のホスト材などの材料の改善に対する要求は止まることはなないが、特に、電荷輸送用物質、すなわち、正孔及び電子輸送物質及び電荷遮蔽物質においては更なる改善が望まれる。これら物質の特性は、有機エレクトロルミネセント素子の寿命及び効率をよく制限する。
【0004】
驚くべきことに、2つのフェニル基各々の3’−及び5’−位が置換された9,9−ジフェニルフルオレン誘導体が、有機エレクトロルミネセント素子における使用において非常に安定であり、先行技術に対して有意な改善をもたらすことが見出された。これは、該フルオレンに替えて9,10−ジヒドロアントラセン誘導体又は対応するヘテロ環誘導体が用いられた場合にも同様に当てはまる。それ故に、本発明は、これら化合物及び有機電子素子におけるその使用に関する。フェニル基における置換に応じて、本発明に係る化合物は正孔輸送物質、電子又は励起子遮蔽物質、蛍光性又はりん光性化合物のマトリックス材料、正孔遮蔽物質及び電子輸送物質として特に好適である。本発明に係る物質は、従来技術による物質と比較して有機電子素子の同一又は改善された寿命における効率を増加させ得る。更に、これら化合物は優れた熱安定性を有する。概して、これら化合物はガラス転移点が高いために有機電子素子における使用に極めて好適である。対応する広範な構造、特にインデノフルオレン構造及びインデノカルバゾール構造は同様に極めて優れた特性を有する。
【0005】
近い先行技術として、特許文献5〜7を挙げることができる。特許文献5及び6は、2つのフェニル基の各々が、少なくとも1つのアミノ基で置換された、又は、1つ若しくは2つの置換基を持つアミノ基で置換された9,9−ジフェニルフルオレン誘導体を開示している。各フェニル基の4´位、すなわち、フルオレンに対する環のパラ位にアミノ基が置換した構造のみが明確に記載されている。1つのフェニル基に複数のアミノ基が置換した構造は記載されていない。特許文献7は、少なくとも1つの置換又は無置換ピロール又はベンゾイミダゾール基で2つのフェニル基の少なくとも1つが置換された9,9−ジフェニルフルオレン誘導体を開示している。各フェニル基の4´位、すなわち、フルオレンに対する環のパラ位にアミノ基が置換した構造のみが明確に記載されている。1つのフェニル基に複数のアミノ基が置換した構造は記載されていない。しかしながら、これら出願に開示された置換パターンは、有機電子素子における使用において十分に優れた特性を有する化合物をもたらすものではない。驚くべきことに、3´−及び5´−位各々において2つのフェニル基を同時に置換することが本発明に係る化合物の優れた特性の要因であることが具体的に見出された。
【0006】
更に、特許文献8には、りん光性エレクトロルミネセント素子におけるホールブロック材料として、各トリアジン基の3,5−位にフェニル基を有する9,9−ビス(トリアジニル)フルオレンが開示されている。しかしながら、この化合物の効果は、分子中のトリアジン基の存在にあるとされているトリアジンの3,5−位における脂環基の存在は重要視されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4539507号明細書
【特許文献2】米国特許第5151629号明細書
【特許文献3】欧州特許第0676461号明細書
【特許文献4】国際公開第98/27136号
【特許文献5】米国特許第5698740号明細書
【特許文献6】特開2005−08559号公報
【特許文献7】特開2007−049055号公報
【特許文献8】国際公開第05/053055号
【発明の概要】
【0008】
明確性の観点から、9,9−ジフェニルフルオレンの構造及びナンバリングを以下に示す。
【化1】
【0009】
本発明は式(1)で表される化合物に関する。
【化2】
【0010】
ここで、使用された符号は以下の通りである。
【0011】
Xは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、CR
1又はNであって、各環において最大3基のXはNを表し、もしくは2つの直接隣接する基Xは下記式(7)により表される単位を表す。
【化3】
【0012】
式中、点線の結合は、隣接するC又はN原子に対する該単位の連結を示す。
【0013】
Yは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、単結合、あるいはBR
1、(CR
1)
2、C(=O)、C(=NR
1)、C(=C(R
1)
2)、Si(R
1)
2、NR
1、PR
1、P(=O)R
1、O、S、S(=O)、S(=O
2)、C(R
1)
2−C(R
1)
2、C(R
1)
2−NR
1又はCR
1=CR
1から選択される基である。
【0014】
Zは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、CR
1又はNであって、各環において最大2つの符号ZはNを表す。
【0015】
Rは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、Cl、Br、I、トリフラート、B(OR
2)
2、B(R
2)
2、B(N(R
2)
2)
2、NAr
2、N(R
2)
2、SiAr
3、Si(R
2)
3、C(=O)Ar、C(=O)R
2、OAr、OR
2、SAr、SR
2、S(=O)Ar、S(=O)R
2、S(=O)
2Ar、S(=O)
2R
2、PAr
2、P(R
2)
2、P(=O)Ar
2、P(=O)(R
2)
2、又は、5〜60個の芳香環原子を有し、1又は2以上のR
1ラジカルにより置換されていてもよい芳香環もしくは芳香族複素環類である。
【0016】
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜30個の芳香環原子を有し、1又は2以上の非芳香族ラジカルR
1により置換されていてもよい芳香環もしくは芳香族複素環類である。ここで、同じ窒素原子又はリン原子に結合している2つのArラジカルは、単結合、あるいはB(R
2)、C(R
2)
2、Si(R
2)
2、C=O、C=NR
2、C=C(R
2)
2、O、S、S=O、SO
2、N(R
2)、P(R
2)及びP(=O)R
2から選択される架橋により互いに結合してもよい。
【0017】
R
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R
2)
2、NAr
2、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)
2、S(=O)Ar、S(=O)
2Ar、CR
2=CR
2Ar、CN、NO
2、Si(R
2)
3、B(OR
2)
2、B(R
2)
2、B(N(R
2)
2)
2、OSO
2R
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、又は3〜40個のC原子を有する分岐鎖もしくは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基であり、ここで、各基は1又は2以上のR
2ラジカルで置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、Ge(R
2)
2、Sn(R
2)
2、C=O、C=S、C=Se、C=NR
2、P(=O)(R
2)、SO、SO
2、NR
2、O、S又はCONR
2により置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNO
2により置換されていてもよく、又は、R
1は、5〜60個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、各場合において1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類であり、又は、5〜60個の芳香環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であって、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよいアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であり、あるいはこれらの組み合わせであり、2以上の隣接する置換基R
1は互いに単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
【0018】
R
2は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、又は、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素ラジカルであり、更に、H原子はFにより置換されていてもよい。ここで、2以上の隣接する置換基R
2は、一緒になって単環又は多環の脂肪族又は芳香族環類を形成してもよい。
【0020】
下記化合物は、本発明から除かれる。
【化4】
【0021】
式(1)で表される化合物は、ガラス転移温度T
Gが70℃を超えることが好ましく、100℃を超えることがより好ましく、110℃を超えることが更に好ましい。
【0022】
式(1)から明らかなように、n=2は、3,5−位に置換基を有する二つのアリールラジカルが、化合物中のフルオレン又は対応する誘導体の9,9−位に結合していることを意味し、n=1とは、そのような1つのアリールラジカルと更に1つの基R
1が存在することを意味する。
【0023】
本発明の目的のために、アリール基は6から60個のC原子を含み、本発明の目的のために、ヘテロアリール基は2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つC原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5個である。ヘテロ原子は好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基又はヘテロアリール基は、1個の芳香環、すなわちベンゼン、又は1個の芳香族複素環、例えばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、又は、縮合したアリール又はヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかを意味するものと解される。
【0024】
本発明の目的のために、芳香環類は環類中に6〜60個のC原子を含む。本発明の目的のために、芳香族複素環類は環類中に2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つC原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5個である。ヘテロ原子は好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。本発明の目的のために、芳香環又は芳香族複素環類は、必ずしもアリール又はヘテロアリール基のみを含むものではなく、代わりに複数のアリール又はヘテロアリールが、例えば、sp
3−混成C、N又はO原子などの短い非芳香族単位(好ましくはH以外の原子の10%未満)により割り込まれていてもよいものと理解される。従って、例えば、9,9´−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等の類もまた、本発明の目的のために芳香族環類を意味するものと理解される。同様に、芳香環又は芳香族複素環類は複数のアリール又はヘテロアリール基が単結合により互いに結合されている類(例えば、ビフェニル、テルフェニル又はビピリジン)を意味することが理解される。
【0025】
本発明の目的のために、C
1〜C
40アルキル基、加えて個々のH原子又はCH
2基が上述した基で置換されたこれらの基として、以下のラジカル:メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−へプチル、シクロへプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル及び2,2,2−トリフルオロエチルが特に好ましいことが理解される。本発明の目的のために、アルケニル基として、特には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル又はシクロオクテニルを意味することが理解される。本発明の目的のために、アルキニル基として、特には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル又はオクチニルを意味することが理解される。C
1〜C
40アルコキシ基として、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ又は2−メチルブトキシが特に好ましいことが理解される。5〜60個の芳香環原子を有し、各場合において上述したラジカルRにより、所望されるいずれかの位置において置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類として、特には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾアントラセン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−又はトランス−インデノフルオレン、トルキセン(truxene)、イソトルキセン(isotruxene)、スピロトルキセン(spirotruxene)、スピロイソトルキセン(spiroisotruxene)、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフチムイミダゾール、フェナントリムイミダゾール、ピリジムイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、及び、ベンゾチアジアゾールから誘導される基であることが理解される。
【0026】
本発明の好ましい態様において、符号Xは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、CR
1又はNを表す。ここでフルオレン単位中の環1つ当たり最大1つの符号XはNであり、フルオレン単位の9位の置換基において全ての符号XがCR
1を表すか、すべての符号XがNを表す。本発明の更に好ましい態様において、2つの隣接するX基が上述した式(7)の単位を表す。故にフルオレンの9位における置換基は、3,5−置換型フェニル又はトリアゾールであることが好ましい。中央単位がフルオレンを表さず、式(1)により包含される他の誘導体の一つに代わる場合には、対応する形態が適用される。符号Xは、特に好ましくはCR
1を表す。
【0027】
式(7)により表される単位中の符号Zは、好ましくはCR
1を表す。
【0028】
式(1)により表される化合物の好ましい態様は、式(2)、(3)、(8)、(9)、(10)及び(11)により表される化合物である。
【化5】
【化6】
【0029】
ここで、使用されている符号及び指数は上述した意味を有する。
【0030】
本発明の好ましい態様において、式(1)、(2)、(3)、(8)、(9)、(10)及び(11)により表される化合物における6員環中の符号Yは、単結合、または、C(R
1)
2、O 又は NR
1から選択される基を表し、更に好ましくはC(R
1)
2又は Nであり、特に好ましくはC(R
1)
2である。
【0031】
したがって、より好ましいものとして、式(2a)、(3a)、(8a)、(8b)、(9a)、(9b)、(10a)、(10b)、(11a)及び(11b)により表される化合物が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0032】
ここで、使用されている符号及び指数は上述した意味を有する。
【0033】
本発明の好ましい態様において、n=2である。
【0034】
式(1)により表される化合物の更に好ましい態様は、式(4a)及び(4b)により表される化合物である。
【化9】
【0035】
ここで、使用されている符号及び指数は上述した意味を有する。
【0036】
本発明の特に好ましい態様は、以下の式(4c)、(4d)、(8c)、(8d)、(9c)、(9d)、(10c)、(10d)、(11c)及び(11d)により表される化合物である。
【化10】
【化11】
【0037】
ここで、使用されている符号及び指数は上述した意味を有する。
【0038】
本発明の更に好ましい態様において、上述した式により表される化合物中の符号Rが、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、NAr
2、C(=O)Ar、P(=O)Ar
2、又は5〜30個の芳香環原子を有し、1又は2以上の非芳香族ラジカルR
1により置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類である化合物である。Rがフェニル基に結合している場合には、Rは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、NAr
2又はC(=O)Arであることが更に好ましく、NAr
2であることが特に好ましい。Rがトリアジン基に結合している場合には、Rは、5〜10個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基であることが更に好ましい。更に好ましい置換基Rは、Cl、Br、I及びトリフラートであり、特に好ましくはBrである。これらは更に本発明の化合物を合成する際の有用な中間体であるため好ましい。
【0039】
本発明の更に好ましい態様において、上述した式により表される化合物中の符号Rとして、すべて同一のものが選択される。
【0040】
R又はR
1ラジカルがN(Ar)
2基である場合、この基は、好ましくは式(5)又は式(6)により表される基から選択される。
【化12】
【0041】
式中、R
2は上述した意味を有し、更に
Eは、単結合、O、S、N(R
2)又はC(R
2)
2を表し、
Ar
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類、もしくは15〜30個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基を表し、これらの各基は、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい。好ましくは、6〜14個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、もしくは18〜30個の芳香環原子、好ましくは18〜22個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、これらの各基は、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい。
【0042】
pは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、0又は1である。
【0043】
Ar
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、特に好ましくはフェニル、ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−、3−又は4−トリフェニルアミン、1−又は2−ナフチルジフェニルアミンであり、これらの各基は、該ナフチル又はフェニル基、もしくは1−又は2−ナフチルジフェニルアミンを介して結合していてもよく、これらの各基は、該ナフチル又はフェニル基、N−カルバゾリル又はN−フェニル−2−カルバゾリル又はN−フェニル−3−カルバゾリルを介して結合していてもよい。これらの各基は、1〜4個のC原子を有する1又は2以上のアルキル基又はフッ素により置換されていてもよい。
【0044】
R又はR
1ラジカルが芳香環又は芳香族複素環類を表す場合、好ましくは5〜30個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類から選択され、より好ましくは6〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類から選択され、特に好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェニルアントラセニル、1−又は2−ナフチルアントラセニル、ビナフチル、ピレニル、フルオロランテニル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾアントラセニル、N−ベンゾイミダゾリル、フェニル−N−ベンゾイミダゾリル、N−フェニルベンゾイミダゾリル、及びフェニル−N−フェニルベンゾイミダゾリルから選択される。
【0045】
本発明の更に好ましい態様において、上述した式により表される化合物中の符号R
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、F、N(Ar)
2、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)
2、S(=O)Ar、S(=O)
2Ar、CR
2=CR
2Arであり、または、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基又は3〜10個のC原子を有する分岐鎖もしくは環式アルキル基であって、これら基は、各々、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよく、1個のもしくは2以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2又はOにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子はFにより置換されていてもよい直鎖、分岐鎖もしくは環式アルキル基であり、または、5〜20個の芳香環原子を有し、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類を表し、あるいはこれらの組み合わせを表す。本発明の特に好ましい形態において、上述した式により表される化合物中のR
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、F、N(Ar)
2、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル基又は3〜6個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル基であって、これらの各基は1又は2以上のR
2ラジカルによって置換されていてもよく、1又は2以上の水素原子がFにより置換されていてもよいアルキル基、または、5〜14個の芳香環原子を有し、1又は2以上のR
2ラジカルによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類を表す。ここで、2以上の隣接する置換基R
1は、互いに結合して単環もしくは多環の、脂肪環又は芳香環を形成してもよい。R
1は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、特には、H、F、メチル、エチル、イソプロピル又はtert−ブチルを表し、更にはHである。溶液から合成される化合物である場合には、C原子が10個以下の直鎖又は分岐鎖アルキルも好ましい。
【0046】
Yの対応する選択においてY架橋中に存在する好ましいR
1ラジカルは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、好ましくはH、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル基又は3〜6個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル基であって、1又は2以上の隣接していないCH
2基が−R
2C=CR
2−、−C≡C−又は−O−により置換されていてもよく、1又は2以上のH原子がFにより置換されていてもよいアルキル基、または、6〜20個のC原子を有するアリール基又は2〜20個のC原子を有するヘテロアリール基であって、1又は2以上のR
2ラジカルによって置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基を表し、あるいはこれらの2以上の組み合わせを表す。ここで、Yに結合した2つのR
1ラジカルは、互いに結合して環を形成してもよく、これによりスピロ系を形成してもよい。
【0047】
Y架橋に結合している特に好ましいR
1ラジカルは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、1又は2以上のH原子がFにより置換されていてもよいメチル、エチル、イソプロピル又はtert−ブチルから選択され、または、1又は2以上のR
2ラジカルにより置換されていてもよい6〜14個のC原子を有するアリール基から選択される。ここで、2つのR
1ラジカルは互いに結合して環類を形成してもよい。溶液から合成される化合物である場合には、C原子が10個以下の直鎖又は分岐鎖アルキルも好ましい。Y架橋がNR
1基である場合、R
1基は、5〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類から選択されることも特に好ましい。
【0048】
式(1)〜(4)で表される好ましい化合物の例として、下記に示す構造(1)〜(276)が挙げられる。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【0049】
本発明の式(1)により表される化合物は、当業者に概括的に知られた合成方法で調製することができる。対称性を有するように置換された本発明の化合物に使用される出発化合物は、例えば、3,3‘,5,5’−テトラブロモベンゾフェノンである(Eur. J. Org. Chem. 2006, 2523-2529)。これは、例えば、スキーム1に従い、置換又は無置換の2−リチオビフェニル、2−リチオジフェニルエーテル、2−リチオジフェニルチオエーテル、2−(2−リチオフェニル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、又は2−リチオフェニルジフェニルアミンとの反応により、対応するトリアリールメタノールに変換され、次いで酸性条件、例えば、酢酸及び臭化水素等の無機酸の存在下において環化される。この反応に要求される有機リチウム化合物は、n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物を用い、対応する臭化アリール(2−ブロモビフェニル、2−ブロモジフェニルエーテル、2−ブロモジフェニルチオエーテル、2−(2−ブロモフェニル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、2−ブロモフェニルジフェニルアミン等)のトランスメタレーションにより調製することができる。
【化50】
【0050】
このように調製されたテトラブロミドは、当業者に知られた方法で更に変換される。ボロン酸を用いたパラジウム触媒反応(スズキカップリング)又は有機亜鉛化合物を用いたパラジウム触媒反応(ネギシカップリング)により、本発明に係る芳香環又は芳香族複素環が得られる(スキーム2)。
【化51】
【0051】
アミンを用いたパラジウム触媒反応(Hartwig-Buchwaldカップリング)にいより、本発明の芳香族又は芳香族複素環アミンが得られる(スキーム3)。
【化52】
【0052】
臭素基は、有機リチウム化合物又はグリニャール化合物を用い、トランスメタレーションにより求電子基に変換され、次いで、多数の求電子剤、例えば、アリールボロンハライド、アルデヒド、ケトン、ニトリル、エステル、ハロゲンエステル、二酸化炭素、アリールホスフィンハライド、ハロスルフィン酸、ハロアリールスルホン酸等にカップリングされる。このようにして得られた化合物は本発明に係る最終産物であり得、あるいは中間体として更なる反応に付される。これを、本発明のケトン、ホスフィンオキシド及びベンゾイミダゾールの調製の例を参照して説明する(スキーム4)。
【化53】
【0053】
非対称性に置換された本発明の化合物は、スキーム5に従い順次合成することができ、フルオレノン及びアリール−金属化合物(例えば、1−リチオ−3,5−ジブロモベンゼン)のカルボニル官能基への添加による類似アリールケトンから出発し、上述した方法の一つにより一つの官能基を構築して臭素化芳香族化合物を変換し、1,3−ジブロモベンゼンに酸触媒Friedel-Craftアリール化を介して次いで他の官能基を導入し、上述した方法の一つにより臭素化芳香族化合物を変換することにより得ることができる(例えば、Org.Lett.2001,3(15),2285、を参照)。
【化54】
【0054】
対応するインデノフルオレン誘導体、インデノカルバゾール誘導体、及び他の式(1)により表される誘導体を相当する方法により合成することができる。
【0055】
更に、本発明は、ビス(3,5−ジブロモ)−ベンゾフェノンと置換又は無置換の2−リチオビフェニル、2−リチオジフェニルエーテル、2−リチオジフェニルチオエーテル、2−(2−リチオフェニル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、2−リチオフェニルジフェニルアミン、又は対応するグリニャール化合物を反応させてトリアリールメタノールを得、これを酸性条件下で環化させ、任意に臭素基を更に反応させることを含む式(1)の化合物の合成方法に関する。
【0056】
上述した本発明の化合物、特には、例えば、臭素、要素、トリフラート、トシレート、ボロン酸、又はボロン酸エステル等の反応性離脱基により置換された化合物は、対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマーのモノマーとして、あるいはデンドリマーのモノマーとして使用することができる。ここでオリゴマー化またはポリマー化は、好ましくはハロゲン官能基又はボロン酸官能基を介して実施される。これは、特には、各R
1ラジカルが反応性脱離基、特に上述した基から選択される基である式(4)により表される化合物に適用される。
【0057】
したがって、本発明は、一般式(1)により表される1又は2以上の化合物を含む二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーに関するものであり、その場合のR
1又はR
2は、二量体、三量体、四量体又は五量体における一般式(1)の化合物間の結合を表し、または、式(1)の化合物からオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーへの結合を表す。または、この結合はR基上の置換基を介してなされる。本発明の目的のために、オリゴマーは、式(1)で表されるユニットを少なくとも6個有する化合物であると理解される。ポリマー、オリゴマー又はデンドリマーは共役し得、あるいは部分的に共役し得、あるいは非共役であり得る。三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーは、直線状又は分岐状であり得る。直鎖状に連結した構造において、式(1)の単位は、互いに直接に連結していてもよいし、2価の基、例えば、置換又は無置換のアルキレン基、ヘテロ原子、二価の芳香環もしくは芳香族複素環基を介して連結していてもよい。分岐状の構造においては、例えば、式(1)の3つ以上の単位が3価もしくは多価(例えば、3価又は多価の芳香環もしくは芳香族複素環基)を介して連結され、分岐状の三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーを形成していてもよい。
【0058】
二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー及びポリマーにおける式(1)の繰り返し単位において、上述したのと同様の選択が適用される。したがって、ここで好ましい繰り返し単位としても上述した式により表される単位が挙げられる。
【0059】
オリゴマー又はポリマーの調製において、本発明によるモノマーは、ホモポリマー化されてもよいし、更なるモノマーと共重合化される。好適且つ好ましいコモノマーは、フルオレン(例えば、EP842208又はWO00/22026に準拠する)、スピロビフルオレン(例えば、EP707020、EP894107又はWO06/061181に準拠する)パラ−フェニレン(例えば、WO92/18552に準拠する)、カルバゾール(例えば、WO04/070772又はWO04/113468に準拠する)、チオフェン(例えば、EP1028136に準拠する)、ジヒドロフェナントレン(例えば、WO05/014689に準拠する)、シス−及びトランス−インデノフルオレン(例えば、WO04/041901又はWO04/113412に準拠する)、ケトン(例えば、WO05/040302に準拠する)、フェナントレン(例えば、WO05/104264又はWO07/017066に準拠する)、もしくはこれらの複数の単位から選択される。ポリマー、オリゴマー及びデンドリマーは、通常、更なる単位を含んでいてもよい。更なる単位としては、例えば、発光性(蛍光又はリン光)単位(例えば、ビニルトリアリールアミン(例えば、WO 07/068325に準拠する)又はりん光を発する金属錯体(例えば、WO06/003000に準拠する)等)、及び/又は、電荷輸送単位が挙げられる。本発明の繰り返し単位は、特に1又は2以上のR基がNAr
2を表す場合には、正孔のための電荷輸送単位であることが好適である。
【0060】
更に、本発明は、少なくとも1つの式(1)で表される化合物又は対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーと、少なくとも1つの更なる化合物を含有する混合物に関する。更なる化合物は、例えば、式(1)の化合物がマトリックス材として使用される場合には、蛍光性又はりん光性ドーパントである。好適な蛍光性又はりん光性ドーパントを、以下に有機エレクトロルミネセント素子に関連して説明する。蛍光性又はりん光性ドーパントは、本発明の混合物においても好ましい。更なる化合物はまた、式(1)の化合物が正孔輸送又は電子輸送化合物である場合には、ドーパントであってもよい。好適なドーパントを、以下に有機エレクトロルミネセント素子に関連して説明する。
【0061】
また、本発明は更に、少なくとも1つの式(1)で表される化合物又は対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーと、少なくとも1つの有機溶剤を含有する溶液に関する。この種の溶液は、例えばスピンコーティングや印刷工程など、溶液から有機電子素子を製造する際に必須である。
【0062】
本発明の式(1)で表される化合物及び対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーは、電子素子における使用、特には有機エレクトロルミネセント素子(OLED、PLED)における使用に好適である。置換基によって、本発明の化合物は種々の機能又は層に使用される。ここで好ましい態様は、上述した式に適合する。
【0063】
したがって、本発明は更に、電子素子、特には有機エレクトロルミネセント素子における式(1)で表される化合物及び対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーの使用に関する。
【0064】
また、本発明は更に、式(1)で表される化合物及び対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーを含有する有機電子素子、特に、アノード、カソード及び少なくとも1つの発光層を含み、少なくとも1つの有機層(発光層でも他の層でもよい)が少なくとも式(1)で表される化合物もしくは対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーを含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子に関する。
【0065】
有機エレクトロルミネセント素子は、カソード、アノード及び発光層とは別に、更なる層を含んでいてもよい。これらは、例えば、場合ごとに、1又は2以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮蔽層、電子輸送層、電子注入層、電子遮蔽層、励起子遮蔽層、電荷発生層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N.Kawamura, A.Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)、及び/又は、有機又は無機p/n接合から選択される。更に、層(特に、電荷輸送層)はドープされていてもよい。層へのドーピングは電荷輸送の改善に有利である場合がある。しかしながら、これらの各層は存在しなければいけないものではなく、層の選択は使用される化合物や、素子が蛍光エレクトロルミネセント素子かりん光エレクトロルミネセント素子かに依存する。
【0066】
本発明の更に好ましい態様において、有機エレクトロルミネセント素子は複数の発光層を含み、少なくとも1つの有機層は少なくとも1つの式(1)で表される化合物を含有する。これらの発光層は、特に好ましくは、380nm〜750nmに合計で複数の発光極大を有し、全体で白色の発光をもたらす。すなわち、蛍光又はりん光を発することができ、青色及び黄色、橙又は赤光を放つ種々の発光化合物が発光層で使用される。
【0067】
具体的な選択として、三層系、すなわち、3つの発光層を有し、そのうちの少なくとも1層は少なくとも1つの式(1)で表される化合物を含有し、3層が青、緑、及び、橙又は赤の発光を示す系が挙げられる(典型的な構造として、例えば、WO05/011013を参照)。幅広い発光バンドを有し、そのため白色を示すエミッターは、同様に白色発光に好適である。
【0068】
本発明の好ましい態様において、式(1)で表される化合物は、発光層において蛍光又はりん光化合物のマトリクス材として使用される。りん光化合物のマトリクス材の場合、1又は2以上のR及び/又はR
1は、好ましくは、C(=O)Ar、N(Ar)
2,、S(=O)Ar、S(=O)
2Ar又はP(=O)Ar
2を表す。式(2)、(3)及び(4)で表される構造におけるR及びR
1基に同様の選択が適用される。蛍光化合物のマトリクス材の場合、1又は2以上のR及び/又はR
1は、好ましくは、芳香環又は芳香族複素環類を表し、特にアントラセンを含む芳香環系を表すことが好ましい。上述した式で表される構造におけるR及びR
1基に同様の選択が適用される。
【0069】
マトリクス及びドーパントを含む系において、マトリクス材は高い割合において系に存在する成分であることが理解される。1つのマトリクスと複数のドーパントを含む系において、マトリクスは混合物中における割合が最も高い成分であることが理解される。
【0070】
本発明の好ましい態様において、使用されるマトリクスは混合物であり、混合物の少なくとも1つの成分は式(1)で表される化合物である。この混合物の一つの成分は、正孔輸送化合物であり、他の成分は電子輸送化合物であることが好ましい。好ましい正孔輸送化合物は芳香族アミン及びカルバゾール誘導体である。好ましい電子輸送化合物は芳香族ケトンである。
【0071】
式(1)で表される化合物が発光層において発光化合物のマトリクス材として使用される場合には、1又は2以上のりん光性物質と組み合わせて使用され得る(三重項エミッター)。本発明の目的において、りん光は、比較的高いスピン多重度、すなわち>1のスピン状態を有する励起状態、特に励起三重項状態からの発光を意味すると理解される。本発明の目的において、すべて、特にはルミネセンス、イリジウム、白金、オスミウム、金及び銅化合物は、発光性物質という。式(1)で表される化合物と発光化合物を含有する混合物は、エミッター及びマトリクス材を含有する混合物全体を基準として、式(1)で表される化合物を、通常99〜1重量%、好ましくは98〜10重量%、より好ましくは97〜60重量%、特に好ましくは95〜85重量%の範囲で含有する。また、該混合物は、エミッター及びマトリクス材を含有する混合物全体を基準として、エミッターを、通常1〜99重量%、好ましくは2〜90重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で含有する。
【0072】
好適なりん光化合物(=三重項)、特には、好適な励起において光(好ましくは可視領域)を発し、更には原子番号が20を超える、好ましくは原子番号が38を超え84未満、より好ましくは56を超え80未満である少なくとも1つの原子を含む化合物である。使用されるりん光性エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金又はユーロピウムを含む化合物であり、特にはイリジウム又は白金を含む化合物である。
【0073】
上述したエミッターの具体例としては、WO00/70655、WO01/41512, WO02/02714, WO02/15645, EP1191613, EP1191612, EP1191614及びWO05/033244に示されたものが挙げられる。上述した本発明に係る化合物は、エミッターとして更に好適である。一般に、りん光OLEDの先行技術に従い使用され、有機エレクトロルミネセンスの分野における当業者に公知であるすべてのりん光錯体が好適であり、当業者であれば困難なく更なるりん光錯体を使用することができる。
【0074】
式(1)で表される化合物が蛍光化合物のマトリクスとして使用される場合、発光層におけるマトリクス材の割合は50.0〜99.9重量%であり、好ましくは80.0〜99.5重量%であり、より好ましくは90.0〜99.0重量%である。また、ドーパントの割合は、0.1〜50.0重量%であり、好ましくは0.1〜20.0重量%であり、より好ましくは0.5〜15重量%であり、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0075】
好ましいドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル及びアリールアミンの群から選択される。モノスチリルアミンは、1つの置換又は無置換のスチリル基と、少なくとも一つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有する化合物であることが理解される。ジスチリルアミンは、2つの置換又は無置換のスチリル基と、少なくとも一つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有する化合物であることが理解される。トリスチリルアミンは、3つの置換又は無置換のスチリル基と、少なくとも一つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有する化合物であることが理解される。テトラスチリルアミンは、4つの置換又は無置換のスチリル基と、少なくとも一つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有する化合物であることが理解される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベンであり、更に置換されていてもよい。対応するホスフィン及びエーテルは、アミンと同様に規定される。本発明の目的において、アリールアミン又は芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの置換又は無置換の芳香環又は芳香族複素環類を含む化合物を意味することが理解される。これらの芳香環又は芳香族複素環類の少なくとも1つが縮合環類であることが好ましく、その芳香環原子が少なくとも14個であることがより好ましい。その好ましい具体例としては、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン又は芳香族クリセンジアミンが挙げられる。芳香族アントラセンアミンは、ジアリールアミノ基がアントラセン基に直接結合したものを意味し、好ましくは9位に置換したものである。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基がアントラセン基に直接結合したものを意味し、好ましくは9,10−位に置換したものである。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミン及びクリセンジアミンは、上記と同様に規定され、ジアリールアミノ基は好ましくは1位又は1,6−位においてピレンに結合している。更に好ましいドーパントは、インデノフルオレンアミン又はインデノフルオレンジアミン(例えば、WO06/122630に準拠する)、ベンゾインデノフルオレンアミン又はベンゾインデノフルオレンジアミン(例えば、WO08/006449に準拠する)、及び、ジベンゾインデノフルオレンアミン又はジベンゾインデノフルオレンジアミン(例えば、WO07/140847に準拠する)から選択される。スチリルアミンの群からのドーパントの具体例としては、置換又は無置換のトリスチルベンアミン、又はWO06/000388, WO06/058737, WO06/000389, WO07/065549及びWO07/115610に記載のドーパントが挙げられる。
【0076】
本発明の更なる態様において、式(1)で表される化合物は、正孔輸送物質、又は正孔注入物質、又は電子遮蔽物質、又は励起子遮蔽物質として使用される。該化合物は、通常、少なくとも1つのN(Ar)
2基により置換され、好ましくは少なくとも2つのN(Ar)
2基により置換され、及び/又は、正孔輸送を改善する更なる基を含む。ここではすべてのR基がN(Ar)
2基を表すことが特に好ましい。N(Ar)
2基は、好ましくは上述した式(5)及び(6)から選択される。これは、上述した式の構造において、特にRラジカルに適用される。正孔輸送を改善する更に好ましい基は、例えば、架橋Yとして、N(R
1)、S又はO基、特にN(R
1)基であり、またはR又はR
1基として、電子リッチ芳香族ヘテロ環基、特にチオフェン、ピロール又はフランである。
【0077】
化合物は、好ましくは、正孔輸送層、又は正孔注入層、又は電子遮蔽層、又は励起子遮蔽層に使用される。本発明の目的において、正孔注入層は、アノードに直接接合する層である。本発明の目的において、正孔輸送層は、正孔注入層と発光層の間の層である。本発明の目的において、電子遮蔽層又は励起子遮蔽層はアノード側において発光層に直接接合する層である。式(1)で表される化合物が正孔輸送物質又は正孔注入物質として使用される場合、該化合物は、電子受容体化合物(例えばF
4−TCNQ)、又はEP1476881もしくはEP1596445に記載の化合物と共にドープされることが好ましい場合がある。
【0078】
本発明の更なる態様として、式(1)で表される化合物は、電子輸送層又は正孔遮蔽層において電子輸送物質又は正孔遮蔽物質として使用される。ここで、Y基はC=O、P(=O)、SO又はSO
2を表し、及び/又は、少なくとも1つの置換基R及び/又はR
1は、例えば、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ベンゾチアヂアゾール、フェナントロリン等の電子不足複素環を表すヘテロアリール基、または、C(=O)Ar、P(=O)Ar
2、S(=O)Ar又はS(O)
2Arを表すことが好ましい。該化合物が電子供与体化合物と共にドープされることが更に好ましい場合がある。本発明の目的において、正孔遮蔽層は発光層と電子輸送層との間にあり、発光層に直接接合している。式(1)で表される化合物が電子輸送物質として使用される場合、更なる化合物との混合物として使用されることが好ましい場合がある。好ましい混合成分はアルカリ金属化合物であり、リチウム化合物が好ましく、Liq(キノリン酸リチウム)又はLiq誘導体が特に好ましい。
【0079】
式(1)で表される繰り返し単位は、同様に、ポリマー中において、ポリマー骨格、正孔輸送単位、及び/又は、電子輸送単位のいずれかとして使用され得る。ここで好ましい置換パターンは、上述した各々に対応する。
【0080】
更なる選択は、1又は2以上の層が、10
−5mbar以下、好ましくは10
−6mbar以下の圧力下における真空昇華単位において蒸着される昇華プロセスにより形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子である。ここで、当該圧力は更に低くてもよく、例えば、10
−7mbar以下であってもよい。
【0081】
同様に、更なる選択は、1又は2以上の層が、OVPD(有機気相蒸着:organic vapour phase deposition)プロセスにより、場合により搬送ガス昇華を用いて、10
−5mbar〜1barの圧力において形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子である。このプロセスの特別な形態において、物質がノズルから直接塗布され構造形成される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301を参照)。
【0082】
更なる選択は、1又は2以上の層が、
例えば、スピンコーティングや所望される印刷法(例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘導赤外線画像、熱転写印刷)又はインクジェット印刷)
)など溶液から製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子である。この目的においては可溶性化合物は必須である。化合物の置換基を好適なものとすることにより、高い溶解性は実現することができる。ここでは、個々の物質の溶液を使用するだけでなく、複数の化合物(例えばマトリクス材及びドーパント)を含有する溶液も使用することができる。
【0083】
本発明に係る化合物は、有機エレクトロルミネセント素子に使用されることにより、先行技術に対して以下に示す驚くべき効果を有する。すなわち、
1.本発明の化合物は優れた熱安定性を有し、分解することなく昇華することができる。
【0084】
2.本発明の化合物、特にR基としてジアリールアミノ置換基を含む化合物は、りん光エレクトロルミネセント素子における電子/励起子遮蔽層に使用された場合、先行技術における物質と比較して効率を相当に改善することができる。
【0085】
3.本発明の化合物、特に、ジアリールアミノ基により置換され、及び/又は、Y基として単結合もしくはS、O又はN(R
1)を含み、及び/又は、電子リッチ芳香族複素環基により置換された化合物は、正孔注入物質及び正孔輸送物質としての使用に極めて好適であり、動作電圧を低減することができる。
【0086】
4.本発明の化合物を用いて製造されたOLEDは、通常、非常に長い寿命を有する。
【0087】
5.本発明の化合物を用いて製造されたOLEDは、通常、非常に高い量子効率を有する。
【0088】
本願の書類は、OLED及びPLED、並びに対応するディスプレイに関する発明に係る化合物の使用に係わる。本書類の限定に拘らず、当業者であれば困難なく本発明の化合物を他の電子素子、例えば、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチ素子(organic field-quench device;O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機半導体レーザー(O−レーザー)又は有機光受容体に使用することができる。
【0089】
同様に、本発明は、対応する素子における本発明の化合物の使用、並びにこれら素子自体に関する。
【0090】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。当業者であれば、困難なく、本発明の更なる化合物を調製することができ、該化合物を有機電子素子に使用することができる。
【実施例】
【0091】
以下に示す合成は、他に言及のない限り、保護ガス雰囲気下、無水溶剤中において実施される。溶剤及び試薬は、ALDRICH又はABCRから購入することができる。前駆体3,3’,5,5’−テトラブロモベンゾフェノンbは、Eur.J.Org.Chem.2006、2523−2529の記載に従い調製することができる。
【0092】
例1:9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン
【化55】
【0093】
対応するグリニャール化合物を、テトラヒドロフラン500mlとジメトキシエタン250mlの混合物中の2−ブロモビフェニル144.5g(620mmol)とマグネシウム15.3g(580mmol)から調製する。次に、テトラヒドロフラン1000ml中のビス(3,5−ジブロモフェニル)ケトン224.0g(450mmol)の懸濁液を室温において添加し、混合物を更に12時間撹拌する。真空下において溶剤を除去し、氷酢酸1000mlと臭化水素5mlを残渣に加え、混合物を1時間撹拌する。懸濁液を30分間還流下で加熱し、室温において12時間撹拌する。固体を吸引しながら濾過して除き、エタノール300mlで3回洗浄し、トルエンから2回再結晶させる。
収率:183.2g(289mmol)、64.3%、純度約99.8%(HPLC)。
【0094】
例2及び3:
本発明に係る下記化合物は、対応する臭化物から例1に類似の方法で得られる。
【化56】
【0095】
例4:9,9−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)フルオレンの合成
【化57】
【0096】
トリ−o−トリルホスフィン1.0g(3.3mmol)及び酢酸パラジウム(II)0.5g(2.2mmol)を、トルエン300ml、1,4−ジオキサン300ml及び水300mlの混合液中における9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン30.4g(48mmol)、フェニルボロン酸35.4g(290mmol)及びリン酸三カリウム121.0g(570mmol)の十分に撹拌した懸濁液に添加し、次いで混合物を還流下において3時間加熱する。冷却した後、有機相を分離し、150mlの水で3回洗浄し、シリカゲルを通して濾過する。減圧下において溶剤を除去し、残渣をエタノール200ml中に採り、吸引下において濾過し、エタノール100mlで3回洗浄する。固体をクロロベンゼンから3回再結晶化させ、乾燥し、減圧下において2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=320℃)。収率:11.1g(18mmol)、37.1%、純度約99.9%(HPLC)。
【0097】
例5〜7:
本発明に係る下記化合物は、対応するボロン酸から例4に類似の方法で得られる。
【化58】
【0098】
例8:9,9−ビス(3,5−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成
【化59】
【0099】
トリ−tert−ブチルホスフィン101mg(0.5mmol)及び酢酸パラジウム(II)56mg(0.25mmol)を、500mlのトルエン中における9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン25.4g(40mmol)、ジフェニルアミン33.8g(200mmol)及び21.1g(220mmol)の十分に撹拌した懸濁液に添加し、次いで混合物を還流下において5時間加熱する。冷却した後、溶液をシリカゲルを通して濾過し、次いで減圧下において蒸発させ乾燥する。残渣を、エタノールと水の1:1混合物600ml中で1時間60℃において撹拌し、吸引下において濾過し、250mlのエタノールで5回洗浄し、減圧下において乾燥する。ベージュ色の固体を、ジメチルホルムアミドから5回再結晶化させ、クロロベンゼンから3回再結晶化させ、減圧下において乾燥し、次いで2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=350℃)。収率:10.2g(10mmol)、25.0%、純度99.9%(HPLC)、Tg=99.8℃。
【0100】
例9〜13:
本発明に係る下記化合物は、対応するアミン及び対応するフルオレンから例8に類似の方法で得られる。
【化60】
【0101】
例14:9,9−ビス(3,5−ジカルバゾール−N−イル)フルオレンの合成
【化61】
【0102】
9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン50.7g(80mmol)、カルバゾール78.6g(470mmol)及びリン酸三カリウム201.7g(950mmol)の懸濁液を、p−キシレン1000ml中でガラスビーズ500gと共に勢いよく撹拌する。トリ−tert−ブチルホスフィン1.62g(8.0mmol)及び酢酸パラジウム(II)894mg(4.0mmol)を懸濁液に添加し、次いで還流下において5日間加熱する。冷却した後、水1000mlを加え、混合物を12時間攪拌し、次いで濾過する。有機相を分離し、水200mlで3回洗浄し、次いで減圧下において乾燥し、粘着性のあるオイルを得る。エタノール300mlと共に撹拌する際に結晶性固体が形成され、吸引下で濾過し、エタノール250mlで3回洗浄する。ジメチルホルムアミド350ml中における固体の溶液を、沸騰エタノール1500mlに滴下して加える。冷却した後、固体を吸引下において濾過し、クロロベンゼンから3回再結晶化させ、減圧下において乾燥し、減圧下において2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=370℃)。収率:33.2g(34mmol)、42.4%、純度99.8%(HPLC)。
【0103】
例15〜16:
本発明に係る下記化合物は、対応するカルバゾール誘導体から例14に類似の方法で得られる。
【化62】
【0104】
例17:9,9−ビス((3,5−ビスベンゾイル)フェニル)フルオレンの合成
【化63】
【0105】
n−ブチルリチウム67.5ml(ヘキセン2.5M)を、−78℃まで冷却したTHF1000ml中の9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン25.4g(40mmol)の溶液に滴下して加え、次いで混合物を−78℃において30分間撹拌する。次いで、ベンゾニトリル18.6g(180mmol)とTHF50mlの混合物を迅速に加え、混合物を−78℃において更に1時間撹拌した後、室温まで温め、5Nの塩酸100mlを加え、混合物を還流下において5時間ボイルする。冷却した後、ロータリーエバポレーター中で減圧下においてTHFを除去し、残渣をジクロロメタン500ml中に採り、水と飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中性になるまで洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次いでシリカゲルを用いたショートカラムで濾過する。ロータリーエバポレーター中で減圧下において溶剤を約50mlまで蒸発させ、吸引下において沈殿した固体を濾過し、メタノール100mlを用いて1回洗浄する。乾燥した後、ベージュの固体をジメチルホルムアミドから5回再結晶化させ、減圧下において乾燥し、次いで2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=360℃)。収率:14.3g(19mmol)、48.6%、純度99.9%(HPLC)。
【0106】
例18及び19:
本発明に係る下記化合物は、対応するニトリルから例17に類似の方法で得られる。
【化64】
【0107】
例20:9,9−ビス((3,5−ビスジフェニルホスフィニル)フェニル)フルオレンの合成
【化65】
【0108】
n−ブチルリチウム67.5ml(ヘキセン2.5M)を、−78℃まで冷却したTHF1000ml中の9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン25.4g(40mmol)の溶液に滴下して加え、次いで混合物を−78℃において30分間撹拌する。次いで、クロロジフェニルホスフィン39.7g(180mmol)とTHF50mlの混合物を迅速に加え、混合物を−78℃において更に1時間撹拌した後、室温まで温め、ロータリーエバポレーター中で減圧下においてTHFを完全に除去し、残渣を酢酸エチル500ml中に採り、10%の過酸化水素150mlを勢いよく撹拌しながら滴下して加え、混合物を更に16時間攪拌し、水相を分離し、ロータリーエバポレーター中で減圧下において溶剤を約50mlまで蒸発させ、メタノール300mlを加え、沈殿した固体を吸引下において濾過し、メタノール100mlを用いて1回洗浄する。乾燥した後、ベージュの固体をクロロベンゼンから5回再結晶化させ、減圧下において乾燥し、次いで2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=390℃)。収率:12.0g(11mmol)、26.8%、純度99.9%(HPLC)。
【0109】
例21:
本発明に係る下記化合物は、対応するクロロホスフィンから例20に類似の方法で得られる。
【化66】
【0110】
例22:9,9−ビス((3,5−ビス−N−フェニルベンゾイミダゾール2−イル)−フェニル)フルオレンの合成
【化67】
【0111】
a)9,9−ビス(3,5−ジシアノフェニル)フルオレン
9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン63.4g(100ml)、シアン化亜鉛58.7g(500mmol)、亜鉛3.3g(50mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)11.6g(10mmol)の、ジメチルアセトアミド1000ml中における懸濁液を、140℃において60時間撹拌する。冷却した後、濃縮アンモニア溶液1000mlを加え、混合物を更に1時間撹拌した後、吸引下において濾過し、固体を水500mlで洗浄し、エタノール100mlで3回洗浄し、減圧下において乾燥させる。収率:39.8g(95mmol)、95.1%、純度98%(
1H−NMR)。
【0112】
b)9,9−ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)フルオレン
9,9−ビス(3,5−ジシアノフェニル)フルオレン39.8g(95mmol)の、エタノール300ml及び水100mlの混合物中における水酸化ナトリウム40gの溶液における懸濁液を、透明な溶液形態になるまで還流下において加熱する(約10時間)。冷却した後、5Nの塩酸を加えてpHを1に調整する。沈殿した固体を吸引下において濾過し、母液がpH4〜5で流れるまで水で洗浄し、吸引して乾燥し、次いでトルエンを用いて共沸的に乾燥させる。収率:44.5g(90mmol)、94.8%、純度98%(
1H−NMR)。
【0113】
c)9,9−ビス((3,5−ビス−N−フェニルベンゾイミダゾール2−イル)−フェニル)フルオレン
9,9−ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)フルオレン44.5g(90mmol)を塩化チオニル150ml中に懸濁させ、懸濁液に1滴のDMFを添加し、次いでガスが完全に蒸発するまで60℃に温める。次いで、余分な塩化チオニルを吸引下において除去し、残渣をジクロロメタン500ml中に溶解させ、次いでジクロロメタン200mlとトリエチルアミン150mlの混合物中のN−フェニル−o−フェニレンジアミン66.3g(360ml)の溶液を滴下して加える。発熱反応が治まったとき、混合物を室温で16時間撹拌する。反応混合物を1NのNaOH500mlで洗浄し、次いで水500mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次いでジクロロメタンを用い酸化アルミニウムにおいてクロマトグラフ(ベーシック、活性グレード1)にかける。最後に、産物をクロロベンゼンから3回再結晶化させ、吸引下において乾燥し、次いで2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=410℃)。収率:33.8g(31mmol)、31.0%、純度99.9%(HPLC)。
【0114】
例23:9,9−ビス(4,6−ジフェニルトリアジン−2−イル)フルオレンの合成
【化68】
【0115】
水素化ナトリウム7.2g(300ml)をTHF500ml中のフルオレン16.6g(100mmol)の溶液に加える。ジイソプロピルアミン0.5mlを添加した後、混合物を1時間室温で攪拌し、次いで2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン58.9g(220mmol)の溶液を滴下して加え、次いで混合物を50℃で16時間撹拌する。冷却した後、混合物を水5mlを加えてクエンチし、THFを吸引下において取り除き、残渣をジクロロメタンに溶解させ、有機相を水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムを用いて乾燥する。ジクロロメタンを除去した後、残渣をDMFから4回再結晶化させ、吸引下において乾燥し、次いで2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=340℃)。収率:17.0g(27mmol)、27.0%、純度99.9%(HPLC)。
【0116】
例24:10−フェニル−12,12−ビス[1,1’;3,1’’]テルフェニル−5’−イル−10,12−ジヒドロ−10−アザインデノ[2,1−b]フルオレンの合成
【化69】
【0117】
a)3−(2−ブロモフェニル)−N−フェニルカルバゾール
テトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)1.1g(1mmol)を、ジオキサン150ml、2−エトキシエタノール100ml及び2Nの炭酸ナトリウム溶液中のN−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸28.7g(100mmol)、1,2−ジブロモベンゼン36.1ml(300mmol)の混合物に加え、混合物を還流下において16時間加熱する。冷却した後、有機相を分離し、トルエン500mlを加え、混合物を水500mlで3回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、シリカゲルを通して濾過し、次いでトルエン及び余分な1,2−ジブロモベンゼンを減圧下において除去する。残渣を加熱したエタノールで3回撹拌しながら洗浄する。収率:26.7g(67mmol)、67.1%、純度97%(
1H−NMR)。
【0118】
b)12,12−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−10−フェニル−10,12−ジヒドロ−10−アザ−インデノ[2,1−b]フルオレン
n−ブチルリチウム24.0ml(60mmol)(ヘキセン2.5M)を、−78℃まで冷却したTHF500ml中の3−(2−ブロモフェニル)−N−フェニルカルバゾール23.9g(60mmol)の溶液に滴下して加え、次いで混合物を−78℃において更に30分間撹拌し、次いでTHF100ml中の9,9−ビス−(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン38.0g(60mmol)の溶液を滴下して加える。添加が終わったとき、混合物を室温とし、減圧下においてTHFを除去し、残渣を氷酢酸500ml中に採り、臭化水素5mlを加え、懸濁液を還流下において30分間加熱する。冷却した後、固体を吸引下において濾過し、エタノール300mlで3回洗浄し、トルエン/エタノールから1回再結晶化させる。収率:36.2g(45mmol)、75.3%、純度約97%(HPLC)。
【0119】
c)10−フェニル−12,12−ビス[1,1’;3,1’’]テルフェニル−5’−イル−10,12−ジヒドロ−10−アザインデノ[2,1−b]フルオレン
例4に類似の調製。9,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)フルオレン30.4g(48mmol)に替え、12,12−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−10−フェニル−10,12−ジヒドロ−10−アザインデノ[2,1−b]フルオレンを使用する。固体をNMPから3回再結晶化させ、乾燥した後、減圧下において2回昇華させる(p=1×10
−5mbar、T=400℃)。収率:15.0g(19mmol)、42.3%、純度約99.9%(HPLC)。
【0120】
例25:本発明に係る化合物を含有する有機エレクトロルミネセント素子の製品及び特性
本発明のエレクトロルミネセント素子は、例えば、WO05/003253に記載されているように製造することができる。ここで種々のOLEDの結果が比較される。よりよい比較のために、それらの基本構造、使用物質、ドーピングの程度、及び層厚みは同一である。
【0121】
第一の素子の例は、先行技術に準拠した比較基準を記載するものであり、発光層は母材のビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン及び微量物質(ドーパント)のIr(ppy)
3からなる。更に、種々のデザインのOLEDが記載され、各ケースにおいて微量物質(ドーパント)はIr(ppy)
3である。下記構造を有するOLEDが上述した一般的な方法に類似の方法で製造される。
【0122】
正孔注入層(HIL) 20nmの2,2’,7,7’−テトラキス(ジ−パラ−
トリル−アミノ)スピロ−9,9’−ビフルオレン
正孔輸送層(HTL) 20nmのNPB(N−ナフチル−N−フェニル−4,4'
−ジアミノビフェニル)又はアミン1(比較)
又は化合物1
発光層(EML) 40nmのホスト:スピロ−ケトン(SK)(ビス(9,9’
−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン)(比較)
又は化合物2
ドーパント:Ir(ppy)
3(10%ドーピング、蒸着、
WO04/085449に準拠し合成)
電子伝導体(ETL) 20nmのAlQ
3(トリス(キノリナト(quinolinato))−
アルミニウム(III))(比較)又は化合物3
カソード 最上部に1nmのLiF、150nmのAl
明確化のため、Ir(ppy)
3、スピロ−ケトン(SK)及びアミン1を以下に記載する。ここでアミン1は最も近い先行技術(JP2005/085599)に準拠した比較化合物である。
【化70】
【0123】
本発明に係る化合物1〜7を以下に示す。
【化71】
【化72】
【0124】
これらの未だ最適化されていないOLEDは、標準方法により特徴づけられる。この目的において、エレクトロルミネセンススペクトル、電流電圧ルミネセンス特性ライン(IUL特性ライン)から計算される輝度の関数としての効率(cd/Aにおいて測定)、及び寿命が決定される。
【0125】
上述した構造に従い製造され正孔輸送物質として比較実験のNPBを用いた物質のOLEDに関し、最大効率が約30cd/A、CIE:x=0.38、y=0.57のカラーコーディネートが、上述した条件下において典型的に得られる。1000cd/m
2の参照光束密度において、4.4Vの電圧が必要とされる。1000cd/m
2の初期光束密度において寿命は約7700時間である(表1における例26を参照)。正孔輸送物質としてアミン1を用い、その他は同一の素子構造においては(表1における例27を参照)、最高効率においてよりよい41cd/Aが得られているが、1000cd/m
2の参照光束密度において、5.3Vの電圧が必要とされ、寿命は約5600時間だけである。
【0126】
それに反して、本発明の電子遮蔽物質(化合物1)を用いて製造された本発明のOLEDにおいては、
最大効率が47cd/Aと有意に増加し、カラーコーディネートはCIE:x=0.38、y=0.58であり、1000cd/m
2の参照光束密度において必要な電圧は4.4Vである(表1の例28を参照)。1000cd/m
2の初期光束密度における寿命は7400時間であり、比較例26と同程度である(表1の例28を参照)。比較実験とは対照的に、スピロ−ケトンに替え母材(化合物2)を使用して製造され、その他は同一の構造である本発明のOLEDは、最高感度が35cd/Aであり、カラーコーディネートがCIE:x=0.31、y=0.62と改善され、1000cd/m
2の参照光束密度において必要な電圧は5.2Vである(表1の例29を参照)。1000cd/m
2の初期光束密度における寿命は6900時間であり、スピロ−ケトンを使用した例と同程度である(表1の例29を参照)。
【0127】
電子遮蔽物質として化合物1が使用され、Alqに替えて電子輸送物質として化合物3が使用された場合、最大効率が54cd/Aであり、カラーコーディネートがCIE:x=0.37、y=0.59であるものが得られ、1000cd/m
2の参照光束密度において必要な電圧は4.1Vである(表1の例30を参照)。1000cd/m
2の初期光束密度における寿命は7200時間であり、参照物質Alqと同程度であり、4.1Vの電圧は参照物質Alqより低い(表1中の例22を参照)。
【0128】
本発明の化合物4、5及び7が母材として使用された場合、良好な寿命との組み合わせにおいて極めて優れた効率が得られる。電子伝導体として化合物6はとりわけ好適であり、低電圧において良好な効率と寿命を実現する。
【0129】
表1:本発明の化合物とドーパントとしてIr(ppy)
3を用いた素子結果
【表1】