(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジエチル−カルバミン酸5−ジエチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2−[2,4−ビス−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[2,4−ビス−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2−[2−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[4−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[2−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[4−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
から選ばれる請求項1に記載の化合物、ならびにその塩、溶媒和物、互変異性体、およびN−オキシド。
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル。
【背景技術】
【0003】
熱、毒素、放射線、感染、炎症および酸化体を含む細胞ストレスに応答して、すべての細胞は共通の一連の熱ショックタンパク質(Hsp)を産生する(マカリオ(Macario)およびデマカリオ(de Macario)2000年)。大部分の熱ショックタンパク質は分子シャペロンとして作用する。シャペロンは、折りたたみの中間段階でタンパク質と結合し安定化させ、タンパク質がその機能的状態に折りたたまれることを可能にする。Hsp90は正常条件下で最も豊富にあるサイトゾルHspである。Hsp90の2つのヒトアイソフォーム(メジャーな誘導される型のHsp90αおよびマイナーな構成的に発現される型のHsp90β)および細胞内局在に限定される2つの他の非常によく関連したシャペロン(小胞体のGP96/GRP94;ミトコンドリアのTRAP1)がある。特に明記しない限り、本明細書ではHSP90なる語はこれらのアナログをすべて包含する。Hsp90は折りたたみの後期段階でタンパク質を結合し、大部分のそのタンパク質基質がシグナル伝達に関与するという点で他のHspとは区別される。Hsp90は、細菌性ジャイレース、トポイソメラーゼ、およびヒスチジンキナーゼに特徴的であるのベルジュラ(Bergerat)折りたたみを含む、固有のATP結合部位を有する。Hsp90のN末端ポケットにて結合したATPは加水分解されていることが示されている。このATPアーゼ活性は、クライアントタンパク質におけるコンフォメーション変化を可能にするために必要とされるHsp90におけるコンフォメーション変化をもたらす。
【0004】
二量体化ドメインおよび第2のATP結合部位(これはATPアーゼ活性を調節し得る)は、Hsp90のC末端の近くに見られる。HSP90の二量体化はATP加水分解のために重要な意味を持つようである。Hsp90の活性化は様々な他のシャペロンタンパク質との相互作用を介してさらに調節され、Hsp70、Hip、Hop、p23、およびp50cdc37を含む他のシャペロンとの複合体中に単離することができる。他の多くのコシャペロンタンパク質もHSP90と結合することが実証されている。アミノ末端ポケットへ結合するATPが、マルチシャペロン複合体との会合を可能にするようにHsp90コンフォメーションを変更する、単純化されたモデルが出現した。第一に、クライアントタンパク質がHsp70/Hsp40複合体へ結合される。次にこの複合体はHopを介してHsp90と会合する。ADPがATPにより置換される場合、Hsp90のコンフォメーションが変化し、HopおよびHsp70が遊離され、p50cdc37およびp23を含むコシャペロンの異なるセットが動員される。ATPの加水分解は、成熟複合体からの当該コシャペロンおよびクライアントタンパク質の遊離を結果的にもたらす。アンサマイシン抗生物質ハービマイシン、ゲルダナマイシン(GA)、および17−アリルアミノ−17−デスメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)は、ATPの結合をブロックし成熟複合体への変換を防ぐATP結合部位阻害剤である(グレナート(Grenert)ら、1997年、「ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)」、272:23834〜23850)。
【0005】
Hsp90は遍在的に発現しているにもかかわらず、GAは、正常細胞株と対比して腫瘍細胞株に由来したHsp90に高い結合親和性を有する(カマル(Kamal)ら、「ネイチャー」、2003年;425:407〜410)。GAはまた、腫瘍細胞においてさらに強力な細胞毒性活性を示し、異種移植マウスモデルにおいて腫瘍内でさらに高い濃度で隔離されている(ブラジデック(Brazidec)、「ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)」2004年、47、3865〜3873)。さらに、Hsp90のATPアーゼ活性は癌細胞の中で増加しており、癌細胞中のストレスレベルの増加を示している。Hsp90遺伝子増幅もまた、癌の後期段階において生じることもまた報告されている(ジョリー(Jolly)およびモリモト(Morimoto)、「ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)」第92巻、第19号、1564〜1572、2000年)。
【0006】
癌表現型に関連した遺伝的不安定性が増加すると、変性タンパク質または変異タンパク質の産生が増加する。ユビキチン経路はまた、プロテアソームによる分解のために変性タンパク質または誤って折りたたまれたタンパク質を標的とすることにより、これらのタンパク質から細胞を防御する働きをする。変異タンパク質は本来的に変性しており、したがって構造的に不安定である可能性があり、シャペロン系に対する必要性が大きい(ジャンニーニ(Giannini)ら、「モレキュラーセルバイオロジー(Mol.Cell Biol.)」2004年;24(13):5667〜76)。
【0007】
正常細胞中の「潜在的」複合体とは対照的に腫瘍細胞中の「活性化」マルチシャペロン複合体内でHsp90が主に見出されるといういくつかの証拠がある。マルチシャペロン複合体のうちの1つの成分は、cdc37コシャペロンである。Cdc37はATP結合部位の基部でHsp90を結合し、「活性化」状態のHsp90へ結合したインヒビターの解離速度に影響し得る(ロー(Roe)ら、「セル(Cell)」116、(2004年)、pp.87〜98)。シャペロン複合体のHsp90−Hsp70型へ結合したクライアントタンパク質は、ユビキチン化や、分解のためにプロテアソームへの標的化に対してより感受性があると考えられている。E3ユビキチンリガーゼはシャペロン相互作用モチーフにより同定され、そのうちの1つ(CHIP)はHsp90クライアントタンパク質のユビキチン化および分解を促進することが示された(コネル(Connell)ら、2001年.シュー(Xu)ら、2002年)。
【0008】
Hsp90クライアントタンパク質
報告されているHsp90クライアントタンパク質の数は現在100を超える。そのクライアントタンパク質の多くが細胞シグナル伝達、増殖、および生存に関与するので、Hsp90は腫瘍学の対象として大きな関心を得ている。特に2つのグループのクライアントタンパク質(細胞シグナル伝達プロテインキナーゼおよび転写因子)が、Hsp90の調節が抗癌療法として有益である可能性があることを示唆している。細胞増殖および生存に関係するHsp90プロテインキナーゼクライアントタンパク質は下記のものを含む。
【0009】
c−Src
細胞Src(c−Src)は、表皮増殖因子受容体(EGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、コロニー刺激因子−1(CSF−1R)、および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFR)についての受容体を含む複数の増殖因子受容体によって開始される有糸分裂誘発のために必要とされる受容体チロシンキナーゼである。c−Srcもまた、EGFRおよびErbB2を過剰発現する同じヒト癌の多くにおいて、過剰発現および活性化される。Srcは、Srcが破骨細胞機能を調節することを介して通常の骨ホメオスタシスの維持のためにもまた必要とされる。
【0010】
p185erbB2
ErbB2(Her2/neu)は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、および胃癌を含む様々な悪性腫瘍において過剰発現される受容体チロシンキナーゼである。ErbB2は、もとは癌遺伝子として同定され、Hsp90の阻害はerbB2のポリユビキチン化および分解をもたらす。
【0011】
ポロ有糸分裂キナーゼ
ポロ様キナーゼ(Plk)はM期中の細胞周期進行に重要なレギュレーターである。Plkは、紡錘体装置の集合およびCDK/サイクリン複合体の活性化に関与する。Plk1は、Cdc25Cのリン酸化および活性化を介してCDKのチロシン脱リン酸化を調節する。CDK1活性化はひいては紡錘体形成およびM期への進入につながる。
【0012】
Akt(PKB)
Aktは、細胞増殖を刺激しアポトーシスを抑制することによって細胞増殖を調節する経路に関与する。アンサマイシンによるHsp90の阻害は、ユビキチン化およびプロテアソームによる分解を介してAkt半減期の減少をもたらす。Hsp90へのcdc37の結合はまたAktのダウンレギュレーションのために必要とされる。アンサマイシン処理に続いて、癌細胞は処理の24時間後に細胞周期のG2/M期において停止し、24〜48時間後にアポトーシスへと進行する。正常細胞もまたアンサマイシン処理の24時間後に停止するが、アポトーシスへは進行しない。
【0013】
c−Raf、B−RAF、Mek
RAS−RAF−MEK−ERK−MAPキナーゼ経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を仲介する。RASはヒト癌のおよそ15%において腫瘍形成型へ変異している。3種類のRAF遺伝子は、RASの結合によって調節されるセリン/スレオニンキナーゼである。
【0014】
EGFR
表皮増殖因子受容体(EGFR)は、細胞の成長、分化、増殖、生存、アポトーシス、および移動に関係する。EGFRの過剰発現は様々な癌において見出され、EGFRのキナーゼドメインの活性化変異は肺の腺癌のサブセットにおいて病因性であると思われる。
【0015】
Flt3
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)は、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスに関与する受容体チロシンキナーゼである。Flt3活性化もまた、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)およびRASシグナル伝達カスケードの活性化につながる。
【0016】
c−Met
c−metは、肝細胞増殖因子(HGF)を結合し、細胞運動性および細胞増殖の両方を調節する受容体チロシンキナーゼである。c−metは、甲状腺癌、胃癌、膵臓癌、および結腸癌を含む腫瘍において過剰発現される。HGFもまた肝転移を含む腫瘍の周囲で検出される。このことは、c−metおよびHGFが浸潤および転移に重要な役割を果たすことを示唆する。
【0017】
Cdk1、Cdk2、Cdk4、Cdk6
Cdk1、Cdk2、Cdk4およびCdk6は、細胞周期を駆動する。CDKの活性は、サイクリン、阻害性因子、および集合因子などの特異的なサブユニットへCDKが結合することによって調節される。CDK活性の基質特異性およびタイミングは、特異的なサイクリンとのCDKの相互作用によって決まる。Cdk4/サイクリンDおよびCdk6/サイクリンDはG1期において活性があり、Cdk2/サイクリンEおよびCdk2/サイクリンAはS期において活性があり、Cdc2/サイクリンAおよびCdc2/サイクリンBはG2/M期において活性がある。
【0018】
サイクリン依存性キナーゼタイプ4(CDK4)は、細胞周期のG1期からS期移行を細胞が通過できるようにすることにおいて重要な役割を果たし、多くのヒト癌において構成的に活性化される。様々なヒト腫瘍において、CDK4活性化因子(サイクリンD1)は過剰発現され、CDK4インヒビター(p16)は欠損する。
【0019】
G1/S期において、またはG2/M境界でのいずれかで、正常細胞を可逆的にブロックするCdk1/Cdk2インヒビターが開発されている。一般にG2/M停止は、細胞の耐容性はそれほど良好ではなく、それゆえ細胞はアポトーシス性細胞死を起こす。Hsp90もまた細胞生存経路に影響することが知られており、この効果はさらにHsp90インヒビターにより増幅される可能性がある。
【0020】
Wee−1
Wee−1プロテインキナーゼは、チロシン15(Tyr15)にCDC2の阻害性リン酸化を行う。これはDNA損傷に応答してG2期チェックポイントの活性化のために必要とされる。
【0021】
細胞の増殖および生存に関係するHsp90転写因子は下記を含む。
【0022】
変異p53
P53は、細胞周期停止を引き起こし、アポトーシスを誘導する腫瘍サプレッサータンパク質である。P53は癌全体の約半分で変異している。変異p53はHsp90と会合し、Hsp90インヒビターにより処理された癌株においてダウンレギュレートされるが、野生型p53レベルは影響されなかった。
【0023】
エストロゲン受容体/アンドロゲン受容体
乳癌を発症する閉経後の女性のおよそ70%は、エストロゲン受容体を発現する腫瘍を有している。当該患者の一次治療は、この経路を介してシグナル伝達を妨害し、したがって腫瘍増殖を阻害することに向けられる。これは、卵巣除去、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニストによる治療、アロマターゼ阻害、またはエストロゲン受容体へ結合するがさらなるシグナル伝達を妨害する特異的アゴニストによる治療によって行うことができる。最終的には、細胞膜上に位置するエストロゲン受容体と増殖因子受容体との間のクロストークの結果として、患者は多くの場合これらの介入に対する耐性を発達させる。リガンドが結合されていない状態において、エストロゲン受容体は、ホルモン結合を促進するHsp90と共に複合体を形成する。成熟受容体Hsp90複合体への結合に続いて、リガンドが結合した受容体は、細胞増殖の維持に関与する標的遺伝子の制御領域内のホルモン応答エレメント(HRE)へ結合できる。Hsp90の阻害は、エストロゲン受容体のプロテオソームによる分解を開始させ、したがってこの経路を介するさらなる増殖シグナル伝達を妨害する。前立腺癌は、テストステロンの血中循環レベルを減少させるか、またはアンドロゲン受容体へのテストステロン結合を妨害する治療的介入に対して応答する、ホルモン依存性の悪性腫瘍である。患者は最初のうちは当該治療に対して応答するが、大部分はアンドロゲン受容体を介するシグナル伝達の回復によって耐性を発達させる。リガンド結合の前に、アンドロゲン受容体は、Hsp90、ならびにp23およびイムノフィリンを含む他のコシャペロンと共に複合体中に存在する。この相互作用は、高親和性のリガンド結合コンフォメーションでアンドロゲン受容体を維持する。Hsp90の阻害は、さらなるホルモン療法への腫瘍の感受性を高め得るアンドロゲン受容体および他のコシャペロンのプロテオソームによる分解につながる。
【0024】
例えば抗ホルモン療法中に生じて、このような療法に対して耐性を持ち得る変異したステロイドホルモン受容体は、当該受容体の安定性およびホルモン結合機能についてHSP90に対してさらに高い依存性を有する可能性がある。
【0025】
Hif−1a
低酸素誘導因子−1a(HIF−1a)は、血管形成において役割を果たす遺伝子の発現を制御する転写因子である。HIF−1aは大多数の転移において発現され、Hsp90と会合することが知られている。腎癌細胞株のアンサマイシン処理は、HIF−1aのユビキチン化およびプロテアソームによる分解をもたらす。
【0026】
Hsp90インヒビターは、腫瘍細胞増殖におけるシグナル伝達に重要な多数の標的に影響することができる。単一標的の活性を調節するシグナル伝達インヒビターは、シグナル伝達経路の冗長性および耐性の急速な発達のために、同程度には効果的ではない可能性がある。
【0027】
細胞シグナル伝達および細胞増殖に関与する複数の標的の調節によって、HSP90インヒビターは、広い範囲の増殖障害の治療において有用であることが証明される可能性がある。
【0028】
ZAP70
Syk−ZAP−70タンパク質チロシンキナーゼファミリーのメンバーであるZAP−70は、通常はT細胞およびナチュラルキラー細胞において発現され、T細胞シグナル伝達の開始において重大な役割を有する。しかしながら、ZAP−70はCLLの症例のおよそ50%においてもまた異常に発現され、通常はそれらの場合には変異していないB細胞受容体遺伝子を持っている。慢性リンパ球性白血病(CLL)の白血病細胞における免疫グロブリン重鎖可変領域(IgV
H)遺伝子の変異状態は、重要な予後因子である。CLL細胞のZAP−70の発現は、IgV
Hの変異状態、疾患進行、および生存と相関する。ZAP−70陽性CLLはZAP−70陰性CLLよりも侵攻性であり、ZAP−70がこの疾患における悪性度の重要な原動力かもしれないことを示す。ZAP−70は、B−CLLリンパ芽球においてHSP90と物理的に会合し、したがってHsp90の阻害により既存の化学療法またはモノクローナル抗体療法に対するこれらの細胞の感受性を高め得る。
【0029】
抗真菌剤、抗原生動物剤、および抗寄生虫剤としてのHSP90インヒビター
真菌感染は、免疫抑制療法の広範囲にわたる使用や、およびアゾールなどの承認された抗真菌剤に対する耐性を持つ種の発生率が増加しているため、近年大きな懸念材料となっている。免疫障害を持つ患者(例えば、臓器移植患者、化学療法を受ける癌患者、熱傷患者、AIDS患者、または糖尿病性ケトアシドーシスに罹患する患者などの患者)の集団の増加は、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptoccocus)、およびアスペルギルス属(Aspergillus)の種ならびに場合によってはフザリウム属(Fusarium)、トリコスポロン属(Trichosporon)、およびドレシュレラ属(Dreschlera)の種などの、真菌剤による日和見真菌症の発生率の増加を引き起こしている。
【0030】
それゆえ、真菌感染、および特に既存の抗真菌薬に対する耐性を持つようになった真菌に起因する感染に罹患する患者が増加してきたが、これらを治療するために使用できる、新しい抗真菌剤に対する必要性がある。
【0031】
HSP90は進化を通じて保存され、細菌(例えば大腸菌(E.coli)におけるHTPG)および酵母(例えばHSC82およびHSP82)において見出される。クライアントは大腸菌型については正式に同定されていないが、酵母およびすべての高等生物において、HSP90ファミリーは、上記のような多くの必須タンパク質に対するシャペロンとして機能することが示されている。
【0032】
様々な病原体による感染は、HSP90に対する抗体応答と関連している。例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)感染患者において、HSP90の47kDaのC末端フラグメントは免疫優勢エピトープである。さらにこの抗体応答は予後良好と関連しており、感染に対する防護効果を示唆している。このポリペプチド中のエピトープに対する組換え抗体もまた、侵襲性カンジダ症のマウスモデルを感染から防御する(マシュース(Mathews)ら、「抗生物質および化学療法(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)」2003年、47巻、2208〜2216、およびその中の参照文献を参照)。同様に、表面に発現するHSP90は、シャーガス病、回虫症、リーシュマニア症、トキソプラモシス(toxoplamosis)、およびマンソン住血吸虫に起因する感染における抗原としての機能を果たし、HSP90に対する抗体はプラモディウム(plamodium)感染およびマラリアからの防御を伝達することが提唱されている。
【0033】
マイコグラブ(Mycograb)(ニューテックファーマ/ノバルティス(NeuTec Pharma/Novartis))は、カンジダ属に対する治療として開発されており、る熱ショックタンパク質90に対するヒト組換えモノクローナル抗体であり、初期の治験において有意な応答を示した。さらに、天然産物のHSP90インヒビターであるゲルダナマイシン、ハービマイシン、およびラディシコールは、元来これらの抗真菌活性によって同定された。重要な必須タンパク質は、いくつかのヒト病原体においてHSP90クライアントとして同定された(カウエン(Cowen)およびリンドキスト(Lindquist)、「サイエンス(Science)」、2005年9月30日;309(5744):2175〜6参照)。したがってHSP90はカンジダ属の種などの病原体の増殖に重要役割を果たし得、HSP90インヒビターはカンジダ症を含む広範囲にわたる感染症に対する治療として有用となり得る。
【0034】
Hsp90が、抗真菌薬耐性を発達させる真菌の能力を増加させることもまた見出されている(カウエン(Cowen)LE、リンドキスト(Lindquist)S.、Hsp90は、新しい形質の急速な進化を促進する:多様な真菌における薬剤耐性(Hsp90 potentiates the rapid evolution of new traits: drug resistance in diverse fungi).「サイエンス(Science)」、2005年9月30日;309(5744):2185〜9参照)。したがって、抗真菌薬とHsp90インヒビターの共投与は、抗真菌薬の効能を促進し、耐性表現型の出現を予防することによって耐性を減少し得る。
【0035】
疼痛、ニューロパシー症状および卒中の治療におけるHSP90インヒビター
Cdk5は、セリン/スレオニンキナーゼのCdkファミリーのメンバーであり、これらの大部分は細胞周期の重要なレギュレーターである。Cdk5活性は、そのニューロン特異的な活性化因子(p35およびp39)との会合を介して調節される。最近の知見によって、CDK5が、タウタンパク質、ならびにNUDE−1、シナプシン1、DARPP32、およびMunc18/シンタキシン1A複合体などの多数の他の神経タンパク質をリン酸化できることが示唆されている。この知見によって、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびニーマン・ピック病タイプC(NPD)などの神経変性疾患の病因において、p35がp25へ変換されることによって誘導される異常なCdk5活性が役割を果たすこともまた示唆される。A1−42処理後のタウの異常な過剰リン酸化は微小管を不安定にし、神経突起の変性、および神経原線維濃縮体(NFT)を含む対らせんフィラメント(PHF)の形成(ADの主要な病変のうちの1つ)に寄与する。cdk5が適切な神経発生のために必要であることがさらに見出されている。
【0036】
CDK5活性のレギュレーターとして作用するp35タンパク質は、HSP90に対するクライアントタンパク質として最近同定され、したがってCDK5の活性は、HSP90のレベルおよび活性の変化によって調節することができる。したがってHSP90の阻害は、p35の減少、CDK5の阻害、感受性のある個体におけるリン酸化されたタウタンパク質の減少をもたらすことができ、アルツハイマー病の罹患者に対して利益をもたらす可能性がある。
【0037】
加えて、公知の薬剤を使用するHSP90の阻害は、細胞系におけるタウタンパク質凝集体の蓄積をインビトロで減少させることが示されている(ディッキー(Dickey)ら、「カレント・アルツハイマー・リサーチ(Curr Alzheimer Res)」、2005年、4月;2(2):231〜8)。
【0038】
Cdk5は、疼痛シグナル伝達の仲介においてもまた役割を有することが示されている。Cdk5およびp35はいずれも、侵害受容ニューロンにおいて発現されることが示された。実質的に減少したCdk5活性を示すp35ノックアウトマウスでは、疼痛熱刺激に対する応答は遅れる(パリーク(Pareek, T.K.)ら、「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)」、103:791〜796(2006))。加えて、サイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5)インヒビターであるロスコビチンの投与は、ラットにおけるホルマリン誘導性の侵害刺激反応を弱化することが示されている(ワン(Wang)、チェン−ハン(Cheng-haung)ら、「アクタ・ファルマコロジカ・シニカ(Acta Pharmacologica Sinica)」、26:46〜50(2005年))。カルパインの活性化はカルシウム依存性であり、NMDA受容体カルシウムチャンネルの活性化によって影響されることが知られている(アマドロ(Amadoro,G.);「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」、103、2892〜2897(2006年))。NMDA受容体アンタゴニストは、神経障害性疼痛症状に対して臨床的に効果的であることが知られている(クリストフ(Christoph,T.)ら、「ニューロファルマコロジー(Neuropharmacology)」、51、12〜17(2006年))。この効能は、カルパイン活性に対するNMDA受容体関連カルシウム流入の効果およびCdk5の活性に対するその後続効果に結び付けて考えることができる。それゆえ、Cdk5活性を修飾する化合物は疼痛の治療または予防に有用となることが期待され、したがってHSP90の阻害によるCDK5レギュレーターp35の修飾はCDK5の阻害を導き得る。
【0039】
疼痛の待機的療法(すなわち疼痛の原因である基礎疾患または病状の改善の結果の疼痛の軽減に加えて、疼痛の直接的な軽減)のための薬剤を有することが望ましい。
【0040】
様々なCdk(特にCdk4、Cdk5、およびCdk6)は、低酸素性傷害または虚血性傷害に続く神経死と関連するか、またはそれらを仲介することが示されている(ラシダン(Rashidan, J.)ら;「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)」、102:14080〜14085(2005年)。さらに、Cdkインヒビターのフラボピリドールは、局所性脳虚血のラットモデルにおける神経死を有意に減少させることが示されている(オオスガ(Osuga,H.)ら;「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of sciences)」、97:10254〜10259(2000年))。Cdk5インヒビターは、神経細胞死の壊死性例およびアポトーシス性例において防護効果を有することが示されている(ワイスハウプト(Weishaupt,J.)ら;「モレキュラー・アンド・セルラー・ニューロサイエンス(Molecular and Cellular Neuroscience)」、24:489〜502(2003年))。
【0041】
卒中は、脳への通常の血流が破壊される場合に生じる脳血管性の事象であり、脳へ流れる血液が多すぎたりまたは少なすぎたりする。卒中は世界中で主な死因のうちの1つであり、神経系障害の最も一般的な原因のうちの1つでもある。
【0042】
最も一般的なタイプの卒中である虚血性脳卒中は、動脈血の流入の閉塞によって引き起こされる、血液の脳循環が不十分になることに起因する。通常は、脳内の動脈のシステムによって適切な大脳血液の供給が確保される。しかしながら、炎症およびアテローム性動脈硬化症を含む様々な障害は、血栓(すなわち血管中に生ずる血餅)を引き起こす場合がある。血栓は動脈血流を妨げる可能性があり、脳虚血および結果として生ずる神経学的症状の原因となる。虚血性脳卒中は頭蓋内血管中の心臓からの塞栓(気泡)が留まることによってもまた引き起こされ、不適正な脳血流と伴って、潅流圧の低下または血液粘性の増加を引き起こす。塞栓は心房細動およびアテローム性動脈硬化症を含む様々な障害によって引き起こされ得る。
【0043】
第2のタイプの卒中(出血性卒中)は、脳に通じる動脈の出血または破壊を伴う。出血性卒中は、脳の硬膜上腔、硬膜下腔、またはクモ膜下腔を含む脳組織中への出血をもたらす。出血性卒中は、典型的には動脈性高血圧症または血栓症にさらされた動脈硬化性血管の破壊に起因する。
【0044】
卒中における介入の1つの機会は、卒中のリスクがある患者における卒中のリスクの予防または低減である。血管炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈性高血圧症、糖尿病、高脂血症、および心房細動を含む、卒中についての多くの公知のリスクファクターがある。リスクのある患者は血圧を制御または血中脂質レベルを管理するために薬剤により治療され、抗血小板剤(クロピドロゲル(clopidrogel)などの)および抗凝血剤により治療されている。第2の機会としては急性卒中の治療である。しかしながら、急性卒中の治療のための現在の薬理療法は、卒中後3時間以下の狭い治療時間ウィンドウ内での血流の回復に限定されている。より長い治療時間ウィンドウ内で効果的である薬剤の必要性が依然としてある。他の機会は、急性卒中期間後の回復または修復(すなわち周辺部における二次的な細胞損傷の減少または予防)である。卒中後の二次的な細胞損傷の減少または予防に効果的な薬剤の必要性がある。
【0045】
卒中を治療する上述の機会のうちの1つ以上において使用することができる単一の医薬用薬剤を得ることが望ましい。そのような薬剤は、卒中のリスクがある患者に投与でき、急性卒中に罹患する患者、または急性卒中期間後の回復または修復のための治療を受けている患者に投与され得る。そのような薬剤はまた、卒中の生化学的カスケードにおける1つ以上の個別のメカニズムも標的とし得る。
【0046】
HSP90インヒビター、ならびにC型肝炎および他のウイルス疾患の治療
ウイルスRNA/DNAによる宿主細胞の感染により、細胞タンパク質の合成は、ウイルス性核酸によってコードされる鍵となるウイルスタンパク質に向けて実質的に再び方向付けられる。タンパク質合成負荷の増加は、エネルギーおよび合成の前駆体の需要増加の結果として細胞にストレスを与える。熱ショックタンパク質のアップレギュレーションは、しばしば、少なくとも部分的にはこのストレスに起因するウイルス感染の結果である。HSP誘導の1つの機能は、ウイルス複製に備えて生成される高レベルの「外来」タンパク質の安定化および折りたたみを支援することであり得る。特に、最近の研究ではC型肝炎(HCV)レプリコン感染細胞における機能的なNS2/3プロテアーゼの安定した産生のために、HSP90が必要とされることが示唆されている。
【0047】
HSP90インヒビターは、インビトロのシステムにおけるウイルス複製をブロックすることもまた実証されている(ナカガワ(Nagkagawa, S.)、ウメハラ(Umehara T.)、マツダ(Matsuda C.)ら、「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.)」353(2007年)882〜888;ワックスマン(Waxman, L.)、ウイットニー(Witney, M.)ら、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」98(2001年)13931〜13935)。
【0048】
熱ショックタンパク質および抗腫瘍薬耐性
任意のポリペプチドの天然の三次コンフォメーションは、その一次(アミノ酸)配列によって決定されることが長い間認識されている。しかしながら上で説明したように、生体内での多くのタンパク質の適切な折りたたみは、分子シャペロンとして作用する熱ショックタンパク質(Hsp)の支援を必要とすることが現在明らかである。このシャペロン機能はすべての条件下で通常の細胞機能にとって重要であるが、これはストレスを受けた(例えば熱、低酸素、またはアシドーシスによって)細胞において決定的なものになる。
【0049】
そのような条件は、典型的には、不利な宿主環境中に存在する腫瘍細胞において支配的である。したがって、そのような細胞においてしばしば見られるHspのアップレギュレーションは、タンパク質の折りたたみを損なう条件下で、悪性細胞がプロテオームの全体性を維持するメカニズムを示している可能性がある。したがって、一般にストレスタンパク質(および特にHsp90)のモジュレーターまたはインヒビターは、複数の異常なシグナル伝達経路を同時に阻害するユニークな能力の化学療法薬のクラスを表す。したがってそれらは、他の治療パラダイムと比較して、耐性を消失させる(または耐性の発生率を減少させる)が、抗腫瘍の効果を発揮することができる。
【0050】
さらに、すべてのタイプの治療的抗癌性介入は、標的腫瘍細胞に課されたストレスを必然的に増加させる。そのようなストレスの有害作用を緩和する際に、Hspは制癌剤および治療レジメンの効果に抵抗する際に直接関与する。したがって、一般にストレスタンパク質機能(および特にHsp90)のモジュレーターまたはインヒビターは、以下の能力を有する化学療法薬のクラスを表す。(i)抗癌薬剤および/または治療に対して悪性細胞を感作させる;(ii)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性の発生率を緩和または低減する;(iii)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性を撤回させる;(iv)抗癌薬剤および/または治療の活性を増強する;(v)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性の発現を遅延または防止する。
【0051】
プロドラッグ
プロドラッグは、それ自体は薬理活性をほとんどまたはまったく有しないが、生体内変化を経て治療上活性のある代謝産物となる化合物であると一般に認識されている(例えば、バーナード テスタ(Bernard Testa),生化学的薬理学,68(2004年),2097〜2106、「プロドラッグの設計」(ブンガード(Bundgaard H.)編集)1985年エルゼビア・サイエンス・パブリッシャーズ社(Elsevier Science Publishers B.V.)(生物医学部門)、およびラウティオ(Rautio)ら、「ネイチャーリビューズ(Nature Reviews)(ドラッグディスカバリー)」、第7巻、2008年3月、255〜270を参照のこと)。
【0052】
プロドラッグは、様々な理由で用いられる。例えば、特に、下記の目的で用いられる可能性がある:
・本来不溶であるか溶解性の乏しい薬剤に対してより優れた溶解性を付与するため
・化学的安定性を向上させるため
・薬剤の官能特性を向上させるため
・薬剤の薬物動態を変化させるため
・全身循環前(初回通過)の代謝を低減するため
・薬剤の共役の度合いを低減させるため
・経口吸収を向上させるため
・薬剤の選択的な標的化を実現するため
・細胞毒性剤のin situにおける活性化を実現するため
【0053】
世界中で承認されている5〜7%もの薬剤がプロドラッグとして分類することができる(ラウティオ(2008年)を参照のこと)が、フェノール性水酸基を含む薬剤のプロドラッグの開発は、いくぶん困難であることが示されている。
【0054】
水酸基の様々な誘導体が提案および/または研究されている(ラウティオ(2008年)が、結果は一様ではない。
【0055】
テルブタリンのプロドラッグ(バンブテロール)の場合、テルブタリンの2個のフェノール性水酸基が誘導体化され、ジメチルカルバモイルオキシ基を与え、これが生体内でゆっくりと再び水酸基にまで変換されてテルブタリンを再生成する。
【0056】
しかしながら、この文献のほかの部分では、ヒドロキシル化合物の多くの単純なジアルキルカルバミン酸塩誘導体は、プロドラッグとして機能するにはあまりにも安定しておりかつあまりにも加水分解に抵抗性があることが分かっている(イガラシ(Igarashi)ら、ケミカル・アンド・ファーマシューティカルブレティン(Chem. Pharm. Bull.)55(2)、328〜333(2007年)、特に329ページ第2欄を参照のこと)。
【0057】
単純なジアルキルカルバミン酸(dialkylcarbamate)プロドラッグも有毒な副作用に関連付けられている(ソーンバーグ(Thorberg)ら、「ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)」、1987年、30、第11、2008〜2012、特にページ2010、第2欄を参照のこと)。ソーンバーグらは、アリールカルバミン酸誘導体は同様の毒性作用を生じないことを見出した。
【0058】
フェノール性水酸基化合物のモノアルキルカルバミン酸誘導体も可能性のあるプロドラッグとして研究されている。イガラシら(同上)は、フェノール性カピラリシンアナログのモノエチルカルバモイル誘導体は、親フェノール性化合物の良好な血漿中濃度をもたらすが、他の一置換カルバミン酸は適切なプロドラッグとなるためには容易に加水分解されすぎるか代謝されすぎるということを見出した。さらに、ジアルキルカルバミン酸と同様に、モノアルキルカルバミン酸も有毒な副作用と関連付けられている(ソーンバーグら、同上の2010ページ、第2欄)。
【0059】
フェノール性ドーパミン自己受容体アゴニスト(−)−3−(ヒドロキシフェニル)−N−プロピル−ピペリジンのエステルおよびエーテル誘導体も、可能性のあるプロドラッグとしてソーンバーグらにより研究されたが、ソーンバーグらは、エーテルおよびアシルエステル誘導体は、恐らく安定性の欠如および消化管にいる間に加水分解する傾向があるために血漿中で親化合物を生成しないこと見出した(2010ページ、第1欄を参照のこと)。
【0060】
したがって、上述のように、フェノール性化合物のプロドラッグの開発は全く容易ではなく、あるクラスの化合物において有用なプロドラッグ特性を呈する官能基誘導体は、他のクラスの化合物においては効果がないかあるいは毒性の問題まで生ずる可能性がある。
【0061】
WO99/29705(グライコメッド(Glycomed)ら)には、癌の治療を含む多くの可能性のある用途を有するグリコミメティック化合物のクラスが開示されている。WO99/29705に具体的に開示されている1つの化合物は、2−(2−ヒドロキシ−ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸化合物である。
【0062】
WO2006/117669(ファイザー(Pfizer))には、Hsp90阻害剤としてのアミドレゾルシノールのクラスが開示されている。
【0063】
国際出願WO2006/109085(アステックス・セラピューティクス(Astex Therapeutics))には、Hsp90阻害剤としてのヒドロキシ安息香酸アミドが開示されている。
【0064】
WO2008/044027(アステックス・セラピューティクス)には、WO2006/109085の化合物のプロドラッグが開示されている。
【発明の概要】
【0065】
本発明は、Hsp90阻害または調節活性を有する化合物が得られる、生体内で修飾または除去される官能基を含むプロドラッグ化合物の新規なグループを提供する。当該プロドラッグ化合物は、Hsp90に仲介される病態もしくは症状の予防または治療に有用であると期待される。
【0066】
したがって、例えば、本発明の化合物は、癌の罹患率の緩和または減少において有用であると予想される。
【0067】
したがって、第1の態様(態様I)では、本発明は、式(1)の化合物またはその塩、溶媒和物、N−オキシド、もしくは互変異性体を提供し:
【化1】
式中、R
1はR
1aであり、R
2はR
2aであるか;またはR
1はR
1bであり、R
2はR
2bであるが;但しそれぞれの場合においてR
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外であり;
R
1aおよびR
2aは、同一または異なって、それぞれ水素、C
1−4アルキル、C
2−4アルケニル、およびC
2−4アルキニルから選ばれ、ここでC
1−4アルキルはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよく;
R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素、C(O)NR
4R
5、C(O)R
6、およびC(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキルであり、R
4およびR
5はいずれもC1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によってO、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含み、当該ヘテロ環は1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;かつ
R
3は、基A〜Gから選ばれ、
【化2】
式中、アスタリスクはイソインドリン環への結合部位を表すが;しかし、
化合物であるジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;および
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステルは除く。
【0068】
式(1)において、R
1はR
1aであり、R
2はR
2aであるか;またはR
1はR
1bであり、R
2はR
2bであるが;但しそれぞれの場合においてR
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外である。
【0069】
1つの一般的な実施形態(実施形態AA)では、R
1はR
1aであり、R
2はR
2aである。
【0070】
実施形態AAの内で、化合物の1つのグループ(グループAAA)では、R
1aおよびR
2aは同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、C
1−2アルキル(例えば、メチル)、C
2−3アルケニル(例えば、アリル)、およびC
2−3アルキニル(例えば、プロパルギル)から選ぶことができ、ここでC
1−2アルキルはメトキシによって置換されていてもよい。
【0071】
例えば、グループAAAの内の化合物のグループAAAAでは、R
1aおよびR
2aは、それぞれ水素、メチル、メトキシメチル、およびアリルから選ぶことができる。
【0072】
グループAAAAの内の化合物の1つの特定のサブグループ(AAAAA)では、R
1aおよびR
2aは、それぞれ水素およびメチルから選ばれる。
【0073】
グループAAAAの内の化合物の他の特定のサブグループ(AAAAB)では、R
1aおよびR
2aは、それぞれ水素およびメトキシメチルから選ばれる。
【0074】
グループAAAAの内の化合物のさらなる特定のサブグループ(AAAAC)では、R
1aおよびR
2aは、それぞれ水素およびアリルから選ばれる。
【0075】
他の一般的な実施形態(実施形態AB)では、R
1はR
1bであり、R
2はR
2bである。
【0076】
実施形態ABの内で、化合物の1つのサブグループ(グループABA)では、R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素、C(O)NR
4R
5、C(O)R
6、およびC(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキル、R
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルである。
【0077】
グループABAの内で、化合物の1つのサブグループ(グループABAA)では、R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素およびC(O)NR
4R
5から選ばれる。グループABAAの内で、より具体的には、R
4およびR
5は、いずれもC
1−3アルキルであり得る。例えば、R
4およびR
5は、いずれもメチルおよびエチルから選ぶことができる。1つの実施形態では、R
1aは水素であり、R
1bはC(O)NR
4R
5である。他の実施形態では、R
1bは水素であり、R
1aはC(O)NR
4R
5である。
【0078】
グループABAの内で、化合物の他のサブグループ(グループABAB)では、R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素およびC(O)R
6から選ばれる。グループABABの内では、R
6は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、またはtert−ブチルであり得る。1つの好ましい実施形態(グループABABA)では、R
6は、C
2−4アルキル(より好ましくは、C
3−4アルキル、例えば、tert−ブチルまたはイソプロピルなど)である。
【0079】
グループABAの内で、化合物の他のサブグループ(グループABAC)では、R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素およびC(O)OR
6から選ばれる。グループABACの内では、R
6は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、またはtert−ブチルであり得る。1つの好ましい実施形態(グループABACA)では、R
6は、C
2−4アルキル(より好ましくは、C
3−4アルキル、例えば、tert−ブチルまたはイソプロピルなど)である。
【0080】
化合物の他のサブグループ(グループABAD)では、R
1bおよびR
2bの一方はC(O)NR
4R
5であり、ここでR
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルであり、R
1bおよびR
2bの他方はC(O)R
6およびC(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はグループABAB、ABABA、ABAC、およびABACAのいずれか1つにおいて規定した通りである。
【0081】
実施形態ABの内で、化合物の他のサブグループ(グループABB)では、R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、それぞれ水素または基C(O)NR
4R
5であり、ここでNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によって、O、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでおり、当該ヘテロ環は、1もしくは2個のC
1−4アルキル基(例えば、メチル基)および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよい。
【0082】
例えば、グループABBの内で、化合物の1つのサブセット(グループABBA)では、飽和ヘテロ環は、アゼチジン、ピロリジン、ピロリドン、ピペリジン、ピペリドン、アゼピン、ピペラジン、4−メチルピペラジン、モルホリン、およびチオモルホリンから選ばれる。
【0083】
実施形態ABBの内で、化合物の他のサブセット(グループABBB)では、NR
4R
5は5員または6員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によって、O、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでおり、当該ヘテロ環は、1もしくは2個のC
1−4アルキル基(例えば、メチル基)および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよい。グループABBBの内で、飽和ヘテロ環の好ましいサブセット(グループABBBA)は、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、4−メチルピペラジン、およびモルホリンからなる。グループABBBAの内で、1つの好ましい実施形態では、飽和ヘテロ環はピロリジンである。グループABBBAの内で、他の好ましい実施形態では、飽和ヘテロ環はモルホリンである。
【0084】
上に規定する態様I、一般的な実施形態AAおよびAB、ならびにこれらのサブグループおよびサブセットにおいて、R
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外でなければならない。
【0085】
上に規定する態様I、一般的な実施形態AAおよびAB、ならびにこれらのサブグループおよびサブセットのそれぞれの内の化合物の1つのサブグループでは、R
1およびR
2の一方は水素以外であり、他方は水素である。1つの一般的な実施形態では、R
2は水素以外である。
【0086】
上に規定する態様I、一般的な実施形態AAおよびAB、ならびにこれらのサブグループおよびサブセットのそれぞれの内の化合物の他のサブグループでは、R
1およびR
2はいずれも水素以外である。
【0087】
上に規定する態様I、一般的な実施形態AAおよびAB、ならびにこれらのサブグループおよびサブセットでは、R
3はグループA〜Gのいずれかであり得る。上に規定する態様I、一般的な実施形態AAおよびAB、ならびにこれらのサブグループおよびサブセットのそれぞれの内の化合物の1つの好ましいサブグループでは、R
3はグループDである。
【化3】
【0088】
本発明の第2の態様(態様II)によれば、式(2)の化合物、またはその塩、溶媒和物、N−オキシド、もしくは互変異性体が提供される。
【化4】
式中、R
1はR
1aであり、R
2はR
2aであるか;またはR
1はR
1bであり、R
2はR
2bであるが;但しそれぞれの場合においてR
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外であり;
R
1aおよびR
2aは、同一または異なって、それぞれ水素、C
1−4アルキル、C
2−4アルケニル、およびC
2−4アルキニルから選ばれ、ここでC
1−4アルキルはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよく;
R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素、C(O)NR
4R
5、C(O)R
6、およびC(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキルであり、R
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によってO、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含み、当該ヘテロ環は1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;かつ
(i)R
1もR
2も基C(O)NR
4R
5でない場合(ここでNR
4R
5は、上に規定する置換されていてもよい4〜7員の飽和ヘテロ環を形成する)、nは1であり、そしてR
3は、イソインドリン基の4位または5位のいずれかに結合しており、グループA〜Gから選ばれ:
【化5】
式中、アスタリスクはイソインドリン環への結合部位を表すか;あるいは
(ii)R
1およびR
2の少なくとも一方がC(O)NR
4R
5である場合(ここでNR
4R
5は、上に規定する置換されていてもよい4〜7員の飽和ヘテロ環を形成する)、nは0、1、または2であり、R
3は:
ハロゲン;
CO
2R
14(ここでR
14は、水素またはC
1−6アルキルである);
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3aから選ばれ、
【化6】
式中、X
4はNHまたはOであり、mは0または1であり、nは1、2、または3であり、R
11は水素、COR
12、C(O)OR
12、またはR
12であり;R
12は、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、アリール、アリール−C
1−6アルキル、またはCH
2R
15であり;そしてR
15は、水素、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、ヒドロキシ−C
1−6アルキル、ピペリジン、N−C
1−6アルキルピペラジン、ピペラジン、モルホリン、COR
13、またはC(O)OR
13から選ばれ;そしてR
13は、C
1−6アルキルであるが;しかし
化合物である、
ジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;および
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステルは除く。
【0089】
本発明の第3の態様(態様III)によれば、式(3)の化合物、またはその塩、溶媒和物、N−オキシド、もしくは互変異性体が提供される。
【化7】
式中、R
1はR
1aであり、R
2はR
2aであるか;またはR
1はR
1bであり、R
2はR
2bであるが;但しそれぞれの場合においてR
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外であり;
R
1aおよびR
2aは、同一または異なって、それぞれ水素、C
1−4アルキル、C
2−4アルケニル、およびC
2−4アルキニルから選ばれ、ここでC
1−4アルキルはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよく;
R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素、基C(O)NR
4R
5、基C(O)R
6、または基C(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキルであり、R
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によってO、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含み、当該ヘテロ環は1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;
nは、0、1または2であり;かつ
R
3は:
ハロゲン;
CO
2R
14(ここでR
14は、水素またはC
1−6アルキルである);
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3aから選ばれ、
【化8】
式中、X
4はNHまたはOであり、mは0または1であり、nは1、2、または3であり、R
11は水素、COR
12、C(O)OR
12、またはR
12であり;R
12は、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、アリール、アリール−C
1−6アルキル、またはCH
2R
15であり;そしてR
15は、水素、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、ヒドロキシ−C
1−6アルキル、ピペリジン、N−C
1−6アルキルピペラジン、ピペラジン、モルホリン、COR
13、またはC(O)OR
13から選ばれ;そしてR
13は、C
1−6アルキルであるが;しかし
化合物である、
ジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;および
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
(1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−(2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ−フェニル)−メタノン;
[5−(1−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ−エチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−(5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ−フェニル)−メタノン;および
[5−(2−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシ−エチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−(5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ−フェニル)−メタノンは除く。
【0090】
本発明の第4の態様(態様IV)によれば、式(4)の化合物、またはその塩、溶媒和物、N−オキシド、もしくは互変異性体が提供される。
【化9】
式中、R
1はR
1aおよびR
1bから選ばれ、R
2はR
2aおよびR
2bから選ばれるが;但しR
1およびR
2の少なくとも一方は水素以外であり;
R
1aおよびR
2aは、同一または異なって、それぞれ水素、C
1−4アルキル、C
2−4アルケニル、およびC
2−4アルキニルから選ばれ、ここでC
1−4アルキルはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよく;
R
1bおよびR
2bは、同一または異なって、水素、基C(O)NR
4R
5、基C(O)R
6、または基C(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキルであり、R
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によってO、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含み、当該ヘテロ環は1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;
nは、0、1または2であり;かつ
R
3は:
ハロゲン;
CO
2R
14(ここでR
14は、水素またはC
1−6アルキルである);
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3aから選ばれ、
【化10】
式中、X
4はNHまたはOであり、mは0または1であり、nは1、2、または3であり、R
11は水素、COR
12、C(O)OR
12、またはR
12であり;R
12は、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、アリール、アリール−C
1−6アルキル、またはCH
2R
15であり;そしてR
15は、水素、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、ヒドロキシ−C
1−6アルキル、ピペリジン、N−C
1−6アルキルピペラジン、ピペラジン、モルホリン、COR
13、またはC(O)OR
13から選ばれ;そしてR
13は、C
1−6アルキルであるが;しかし
化合物である、
ジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;および
酢酸5−アセトキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
(1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−(2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ−フェニル)−メタノン;
[5−(1−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ−エチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−(5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ−フェニル)−メタノン;および
[5−(2−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシ−エチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−(5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ−フェニル)−メタノンは除く。
【0091】
本発明の第5の態様(態様V)によれば、式(5)の化合物、またはその塩、溶媒和物、N−オキシド、もしくは互変異性体が提供される。
【化11】
式中、nは、0、1、または2であり;
R
1およびR
2の一方は、基R
1cであり;かつR
1およびR
2の他方は、R
1aおよびR
1bから選ばれ;
R
1aは、水素、C
1−4アルキル、C
2−4アルケニル、およびC
2−4アルキニルから選ばれ、ここでC
1−4アルキルは、C
1−2アルコキシによって置換されていてもよく;
R
1bは、水素、基C(O)NR
4R
5、基C(O)R
6、または基C(O)OR
6から選ばれ、ここでR
6はC
1−4アルキルであり、R
4およびR
5はいずれもC
1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5は4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によってO、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含み、当該ヘテロ環は1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;
R
1cは、基C(O)NR
4cR
5cであり、ここでNR
4cR
5cは4〜7員の飽和ヘテロ環を形成し、場合によって、O、NもしくはSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでおり、当該ヘテロ環は、1もしくは2個のC
1−4アルキル基および/または1もしくは2個のオキソ基によって置換されていてもよく;
R
3は:
ハロゲン;
CO
2R
14(ここでR
14は、水素またはC
1−6アルキルである);
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−4アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3aから選ばれ、
【化12】
式中、X
4はNHまたはOであり、mは0または1であり、nは1、2、または3であり、R
11は水素、COR
12、C(O)OR
12、またはR
12であり;R
12は、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、アリール、アリール−C
1−6アルキル、またはCH
2R
15であり;そしてR
15は、水素、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、ヒドロキシ−C
1−6アルキル、ピペリジン、N−C
1−6アルキルピペラジン、ピペラジン、モルホリン、COR
13、またはC(O)OR
13から選ばれ;そしてR
13は、C
1−6アルキルである。
【0092】
本明細書のさらなる態様(本明細書で規定する態様(VI)、(VII)、および(VIII))では、本明細書に添付の請求項で規定の式(1a)、(1b)、および(1c)の化合物が提供される。
【0093】
上に規定する態様(II)、態様(III)、態様(IV)、および態様(V)のそれぞれにおいて、nは好ましくは1または2である。態様(II)、態様(III)、態様(IV)、および態様(V)のそれぞれの内の1つの一般的な実施形態(実施形態BA)では、nは1である。
【0094】
態様(II)、(III)、(IV)、および(V)ならびに実施形態BAのそれぞれの内の化合物の1つのサブグループ(グループBAA)では、R
3は:
ハロゲン;
CO
2R
14(ここでR
14は、水素またはC
1−2アルキルである);
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−2アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−2アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3bから選ばれ、
【化13】
式中、X
4はNHまたはOであり、mは0または1であり、nは1、2、または3であり、R
11は水素、COR
12、C(O)OR
12、またはR
12であり;R
12は、C
1−4アルキル、C
3−6シクロアルキルであり;R
15は、水素、C
1−4アルキル、COR
13、またはC(O)OR
13であり;かつR
13はC
1−4アルキルである。
【0095】
態様(II)、(III)、(IV)、および(V)ならびに実施形態BAAのそれぞれの内の化合物の他のサブグループ(グループBAB)では、R
3は:
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−2アルキル;
ヒドロキシまたはC
1−2アルコキシによって置換されていてもよいC
1−2アルコキシ;あるいは
基[sol]、CH
2[sol]、C(O)[sol]、OCH
2CH
2[sol]、またはOCH
2CH
2CH
2[sol](ここで[sol]は下記基から選ばれる)からなる基R
3cから選ばれる。
【化14】
【0096】
態様(II)、(III)、(IV)、および(V)ならびに実施形態BAAのそれぞれの内で、好ましい化合物はR
3が基A〜Gから選ばれる化合物である。
【化15】
【0097】
態様(II)、(III)、(IV)、および(V)ならびに実施形態BAAのそれぞれの内の特に好ましい化合物(以下グループBACと呼ぶ)は、R
3が基Dであるものである。
【化16】
【0098】
態様(II)、(III)、および(IV)、実施形態BA、ならびにグループBAA、BAB、およびBACのそれぞれにおいて、R
1およびR
2は、上に規定した実施形態AAおよびAB、ならびにグループAAA、AAAA、AAAAA、AAAAB、AAAAC、ABA、ABAA、ABAB、ABABA、ABAC、ABACA、ABB、ABBA、ABBB、ABBBA、およびABAD、ならびに当該グループのそれぞれの内の好ましいもののいずれか一つに規定したものであり得る。
【0099】
態様(V)ならびに実施形態BAならびにそのグループBAA、BAB、およびBACにおいて、R
1aおよびR
1bは、上に規定した実施形態AAおよびAB、ならびにグループAAA、AAAA、AAAAA、AAAAB、AAAAC、ABA、ABAA、ABAB、ABABA、ABAC、ABACA、ABB、ABBA、ABBB、ABBBA、およびABAD、ならびに当該グループのそれぞれの内の好ましいもののいずれか一つで規定したものであり得、そして部分R
1cの飽和ヘテロ環は、グループABBA、ABBB、およびABBBA、ならびに当該グループのそれぞれの内の好ましいもののいずれか一つで規定したものであり得る。
【0100】
本発明の具体的な化合物は次のとおりである。
【0101】
(4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
(2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
(5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
(2−アリルオキシ−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
(4−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
(2,4−ビス−アリルオキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
[4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)−フェニル]−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
[2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)−フェニル]−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
[5−イソプロピル−2,4−ビス−(メトキシメチルオキシ)−フェニル]−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン;
ジエチル−カルバミン酸5−ジエチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ジメチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2−[2,4−ビス−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[2,4−ビス−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
2−[2−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[4−(ピロリジン−1−イルカルボニルオキシ)−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[2−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
2−[4−(モルホリン−4−イルカルボニルオキシ)−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゾイル]−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール;
炭酸tert−ブチルエステル5−ジメチルカルバモイルオキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
炭酸5−tert−ブトキシカルボニルオキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステルtert−ブチルエステル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
イソ酪酸5−イソブチリルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ならびにこれらの塩、溶媒和物、互変異性体、およびN−オキシド。
【0102】
本発明の好ましい化合物の1つのグループは下記のものからなる。
【0103】
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;および
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ならびにこれらの塩、溶媒和物、互変異性体、およびN−オキシド。
【0104】
本発明の好ましい化合物の上記グループの内で、1つの特定の化合物は、
ジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル;
ならびにその塩、溶媒和物、互変異性体、およびN−オキシドである。
【0105】
本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物ならびにそのサブグループは、我々の以前の出願であるPCT/GB2006/001382で開示した化合物のプロドラッグである。したがって、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物は生体内で変換されて、R
1およびR
2がいずれもOHである化合物を与えると予想される。
【0106】
さらなる態様では、本発明は下記のものを提供する:
・Hsp90Aにより仲介される病態もしくは症状の予防または治療で用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・Hsp90により仲介される病態もしくは症状の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・Hsp90により仲介される病態もしくは症状の予防または治療方法であって、それを必要とする被験体に、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を投与することを含む方法。
・Hsp90により仲介される病態もしくは症状の罹患率の緩和または低減に用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、もしくはそれから生じる疾患または症状の治療に用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、もしくはそれから生じる疾患または症状の治療用薬剤の製造のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾患あるいは症状の治療方法であって、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で当該哺乳類に投与することを含む方法。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、もしくはそれから生じる疾患または症状の罹患率の緩和または減少に用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、もしくはそれから生じる疾患または症状の罹患率の緩和または減少用薬剤の製造のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾患あるいは症状の罹患率の緩和または減少方法であって、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で当該哺乳類に投与することを含む方法。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾患あるいは症状の治療方法であって、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を、Hsp90の活性を阻害するのに有効な量で当該哺乳類に投与することを含む方法。
・哺乳類における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾患あるいは症状の罹患率の緩和または減少方法であって、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を、Hsp90の活性を阻害するのに有効な量で当該哺乳類に投与することを含む方法。
・Hsp90の阻害剤として用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・Hsp90の阻害方法であって、当該Hsp90と、本明細書で規定するHsp90阻害性の式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例とを接触させることを含む方法。
・Hsp90の活性を阻害することによる細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾に用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を用いてHsp90の活性を阻害することによる細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾方法。
・本明細書に記載の病態の予防または治療で用いるための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・本明細書で規定するいずれか1つ以上の用途のための薬剤の製造のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例と、薬学的に許容される担体とを含む、経口投与に適した形態の医薬組成物。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例と、薬学的に許容される担体とを含む、例えば静脈内(i.v.)投与による、非経口投与に適した形態の医薬組成物。
・本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例と、薬学的に許容される担体とを含む、注射または点滴による静脈内(i.v.)投与に適した形態の医薬組成物。
・薬に使用するための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・上記および本明細書の他の箇所に記載の使用および方法のいずれかのための、本明細書で規定する化合物。
・スクリーニングされ、Hsp90に対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾患もしくは症状に罹患している、もしくは罹患する危険性があると判定された患者における病態または症状の治療あるいは予防における使用のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例。
・スクリーニングされ、Hsp90に対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾患もしくは症状に罹患している、もしくは罹患する危険性があると判定された患者における病態または症状の治療あるいは予防用薬剤の製造のための、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例の使用。
・(i)患者が罹患している、もしくは罹患している可能性のある疾患または症状がHsp90対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)患者の疾患または症状がそのような感受性を有することが示された場合に、その後、本明細書で規定する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物あるいはその任意の実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、または例を当該患者に投与することを含む、Hsp90により仲介される病態または症状の診断あるいは治療方法。
【0107】
本明細書の化合物は、我々の以前の国際出願であるPCT/GB2006/001382で開示したヒドロキシ安息香酸アミドHsp90阻害剤のプロドラッグである。便宜上、PCT/GB2006/001382の化合物を、本明細書では「親化合物」または「フェノール化合物」として種々言及することがある。「親化合物」または「フェノール化合物」に「由来」するプロドラッグに対する言及は、単に構造的な関係を意味することを意図し、プロドラッグを調製する特定の方法を意味することは意図していない。したがって、プロドラッグは、下に記載するようにPCT/GB2006/001382の化合物から調製されてもよいし、PCT/GB2006/001382のフェノール化合物の仲介(intermediacy)を伴わない方法によって調製されてもよい。
【0108】
この節では、本願の他の全ての節と同様、文脈上他の意味に解す場合を除き、式(1)の化合物に対する言及は、本明細書で規定するその全ての実施形態(Embodiments)、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、実施形態(embodiments)、例、および特定の化合物を包含する。
【0109】
同様に、式(2)の化合物に対する言及は、本明細書で規定するその全ての実施形態(Embodiments)、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、実施形態(embodiments)、例、および特定の化合物を包含し、式(3)または式(4)または式(5)の化合物に対する言及は、本明細書で規定するその全ての実施形態(Embodiments)、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、実施形態(embodiments)、例、および特定の化合物を包含する。
【0110】
さらに、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物およびその実施形態、サブグループに対する言及は、下に記載するように、それらのイオン形態、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、および同位体を包含する。
【0111】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物およびその実施形態、サブグループは、本明細書で規定するそれらのイオン形態、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、および同位体を包含し、便宜上、「本発明の化合物(compounds)」または単数形で「本発明の化合物(compound)」と呼ばれる。
【0112】
本明細書では、「治療」なる語ならびに関連する語である「治療する」および「治療すること」は、痛みの予防的または防止的治療のいずれも、そして治癒的または緩和的治療を意味する。したがって当該用語は、被験者または患者が既に痛みを経験している状況、ならびに現時点では痛みを経験していないが、痛みが出現すると予想される状況を含む。「治療」、「治療する」、「治療すること」、および関連する語は、完全におよび部分的にの両方で痛みを低減または予防させることを包含する。したがって、例えば、本発明の化合物は、既存の痛みが悪化することを防ぐ可能性があるか、あるいは痛みを軽減またはさらには除去する可能性がある。予防的な意味で使われた場合、当該化合物はいかなる痛みが生じることも防ぐ可能性があるか、あるいは生じうる痛みの程度を低減させる可能性がある。
【0113】
本明細書では、「修飾」なる語は、熱ショックタンパク質Hsp90の活性に対して使用された場合、熱ショックタンパク質の生物学的活性のレベルの変化を明確にすることを意図している。したがって、修飾には、関連する熱ショックタンパク質の活性の増加または減少をもたらす生理学的変化が包含される。後者の場合では、修飾は「阻害」として記載される場合がある。修飾は、直接的または間接的に生じてもよく、任意のメカニズムにより、ならびに例えば遺伝子発現のレベル(例えば、転写、翻訳および/または翻訳後修飾を含む)、熱ショックタンパク質の活性のレベルに直接的または間接的に作用する修飾エレメントをコードする遺伝子発現のレベル、任意の生理的なレベルで仲介されてもよい。したがって、修飾は、遺伝子増幅(すなわち複数の遺伝子コピー)を含む熱ショックタンパク質の増加した発現/抑制された発現または過剰発現もしくは低発現および/または転写効果による増加した発現または減少した発現に加えて、変異による((脱)活性化を含む)熱ショックタンパク質の過剰活性(または低活性)および(脱)活性化を意味してもよい。「修飾された」、「修飾している」および「修飾する」なる語は適宜解釈されるべきである。
【0114】
本明細書では、例えば、本明細書に記載する(そして、例えば、様々な生理的な過程、疾患、状態、症状、処置、治療、あるいは介入に対して使用される)ような、熱ショックタンパク質と共に使用される、「仲介される」なる語は、この用語が適用される様々な過程、疾患、状態、症状、治療、および介入は熱ショックタンパク質Hsp90が生物学的役割を果たすものであるように、制限的に働くことを意図するものである。この用語が、疾患、状態または症状に対して使用される場合において、熱ショックタンパク質Hsp90により果たされる生物学的役割は、直接的または間接的であってもよく、疾患、状態、または症状の病徴の発現(またはその病因または進行)のために、必要および/または十分であってもよい。したがって、熱ショックタンパク質Hsp90の活性(特に異常なレベルの熱ショックタンパク質Hsp90の活性(例えば、Hsp90過剰発現))は、必ずしも疾患、状態、または症状の近因である必要がなく、むしろ熱ショックタンパク質Hsp90に仲介される疾患、状態または症状は、Hsp90が部分的にのみ関わる、多元的な病因および複雑な進行を有するものを含んでいると理解される。当該用語が、治療、予防、または介入に対して使用される場合において(例えば、本発明の「Hsp90に仲介される治療」および「Hsp90に仲介される予防」において)、Hsp90により果たされる役割は直接的または間接的であってもよく、または、治療、予防、または介入の転帰の操作のために必要および/または十分であってもよい。したがって、Hsp90が仲介する病態または症状は、ある特定の抗癌剤あるいは治療に対する耐性(特に本明細書に記載する1種またはそれ以上のシグナル伝達阻害剤に対する耐性を含む)の発生を含む。
【0115】
「介入」なる語は、任意のレベルで生理学的変化をもたらす任意の作用を規定するために本明細書において使用される専門用語である。したがって介入は、任意の生理的なプロセス、事象、生化学的経路または細胞の事象/生化学的事象の誘導または抑制を含んでもよい。本発明の介入は、典型的には、疾病または症状の療法、治療または予防を行う(またはそれらに寄与する)。
【0116】
本明細書では、「組み合わせ」なる語は、2種以上の化合物および/または薬剤(本明細書においては成分とも呼ばれる)に対して使用されて、当該2種以上の化合物/薬剤が結合(associated)している物質を意味することを意図している。この文脈における「組み合わせた」および「組み合わせる」なる語は適宜解釈されるべきである。
【0117】
組み合わせ中の2種以上の化合物/薬剤の結合は、物理的または非物理的であってもよい。物理的に結合した組み合わせ化合物/薬剤の例としては以下のものが挙げられる。
・混合剤(例えば、同一の単位用量内に)中に2種以上の化合物/薬剤を含む組成物(例えば、一体型の製剤);
・2種以上の化合物/薬剤が化学的に/物理化学的に結合している(例えば、架橋、分子的な凝集または共通の賦形剤部分への結合により)物質を含む組成物;
・2種以上の化合物/薬剤が化学的に/物理化学的に共にパッケージされている(例えば、脂質小胞、粒子(例えば、ミクロ粒子またはナノ粒子)またはエマルジョン滴上に、またはそれらの内部に配置された)物質を含む組成物;
・2種以上の化合物/薬剤が共にパッケージされているか、または共に提供されている(例えば、一連の単位用量の一部として)薬学的キット、薬学的パックまたは患者パック。
【0118】
非物理的に結合した組み合わせ化合物/薬剤の例としては以下のものが挙げられる。
・2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、当該2種以上の化合物/薬剤の物理的結合を形成するための、当該少なくとも一方の化合物の即時結合のための説明書とを含む物質(例えば、非一体型の製剤);
・2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、当該2種以上の化合物/薬剤による併用療法のための説明書とを含む物質(例えば、非一体型の製剤);
・2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、当該2種以上の化合物/薬剤の他方が投与された(または投与されている)患者集団への投与のための説明書とを含む物質;
・2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方を、前記2種以上の化合物/薬剤の他方と組み合わせて使用するために特に適した量または形態で含む物質。
【0119】
本明細書では「組み合わせて」なる語は、同一の治療レジメン全体の一部として投与される化合物/薬剤を指す場合がある。それゆえ、2種以上の化合物/薬剤の各々の薬量は異なってもよく、各々は同時にまたは異なる時間で投与されてもよい。したがって、当然のことであるが、組み合わせの化合物/薬剤は順次に(例えば、前後して)または同時に投与されてもよい(同一の医薬製剤(すなわち一緒に)または異なる医薬製剤(すなわち個別に)のどちらかにおいて)。同一の製剤での同時投与は一体型の製剤であるが、異なる医薬製剤での同時投与は非一体型である。併用療法の2種以上の化合物/薬剤の各々の薬量はまた、投与経路に関連して異なってもよい。
【0120】
本明細書では「薬学的キット」なる語は、場合によってはすべて共通の外装内に含まれる、投薬手段(例えば、計測装置)および/または送達手段(例えば、吸入器またはシリンジ)と共にある、医薬組成物の1つ以上の単位用量の一群を意味する。2種以上の化合物/薬剤の組み合わせを含む薬学的キットにおいて、個々の化合物/薬剤は一体型の製剤または非一体型の製剤のいずれであってもよい。単位用量はブリスターパック内に含まれていてもよい。薬学的キットは任意に使用説明書をさらに含んでもよい。
【0121】
本明細書では「薬学的パック」なる語は、場合によっては共通の外装内に含まれる、医薬組成物の1つ以上の単位用量の一群を意味する。2種以上の化合物/薬剤の組み合わせを含む薬学的パックにおいて、個々の化合物/薬剤は、一体型の製剤または非一体型の製剤であってもよい。単位用量はブリスターパック内に含まれていてもよい。薬学的パックは任意に使用説明書をさらに含んでもよい。
【0122】
本明細書では、「患者パック」なる語は、治療コース全体に対する医薬組成物を含む、患者に対して処方されたパッケージを規定する。患者パックは、通常1つ以上のブリスターパックを含んでいる。患者パックは、調剤師がバルク供給から患者分の医薬を分配する従来の処方箋調剤に優る利点があり、患者は患者パックに入っている、患者の処方箋調剤では見ることができない添付文書をいつでも見ることができる。添付文書を包含しておけば、患者が医師の指示をよりよく遵守することが示されている。
【0123】
下記の一般的な好ましい選択肢および定義が、文脈上他の意味に解す場合を除き、置換基R
1、R
2、およびR
3に適用される。
【0124】
本明細書では「アルキル」なる語は、従来の意味で用いられ、実験式C
nH
2n+1(ここでnは整数(例えば、1〜6)である)を有する基を意味する。「アルキル」なる語は、直鎖および分岐鎖両方のアルキル基を包含する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ならびにn−ヘキシルおよびその異性体が挙げられる。1〜6個の炭素原子を有するアルキル基のサブセットの内で、特定の例としては、C
1−4アルキル基(例えば、C
1−3アルキル基またはC
1−2アルキル基またはC
2−3アルキル基またはC
2−4アルキル基)が挙げられる。
【0125】
本明細書では「シクロアルキル」なる語は、従来の意味で用いられ、実験式C
nH
2n−1(ここでnは整数である)を有する環状アルキル基を意味する。このようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0126】
本明細書では「アルケニル」なる語は、従来の意味で用いられ、1個以上の炭素炭素二重結合、より好ましくは1個の炭素炭素二重結合を含む非環式炭化水素基を意味する。アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、ブテニル、およびブタ−1,4−ジエニルが挙げられる。
【0127】
本明細書では「アルキニル」なる語は、従来の意味で用いられ、炭素炭素三重結合を含む炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、プロパルギル基である。
【0128】
本明細書では接頭語「C
x−y」(ここでxおよびyは整数)は所与の基における炭素原子の数を指す。したがって、C
1−4アルキル基は1〜4個の炭素原子を含み、C
3−6シクロアルキル基は3〜6個の炭素原子を含み、C
1−4アルコキシ基は1〜4個の炭素原子を含み、他のものも同様である。
【0129】
本明細書では「アルコキシ」なる語は、従来の意味で使用され、実験式OC
nH
2n+1(ここでnは整数(例えば、1〜6)である)を有する基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルプロポキシ、およびtert−ブトキシがある。
【0130】
本明細書では「飽和ヘテロ環」なる語は、隣接する環員間で多重結合(例えば、二重結合)を有さず、1個以上のヘテロ原子環員を含有し、残りの環員が炭素原子である環状基を意味する。特に明記しない限り、飽和ヘテロ環は、O、NおよびSならびに酸化した形態のNおよびSから選ばれる1個または2個のヘテロ原子環員を含む。好ましい飽和ヘテロ環基は、5個または6個の環員を有するものである。飽和ヘテロ環基の例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼピン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンS−オキシドおよびS,S−ジオキシド、ピペラジン、ならびにN−メチルピペラジンが挙げられる。特定の飽和ヘテロ環基は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、およびN−メチルピペラジンである。
【0131】
本明細書では「アリール」なる語は、従来の意味で用いられ、環員がすべて炭素原子である芳香族基を意味する。アリール基は単環式であっても二環式であってもよく、したがってフェニル基またはナフチル基であってもよい。アリール基は非置換であってもよいし、4個までの置換基、より典型的には3個までの置換基、そして好ましくは2個までの置換基で置換されていてもよい。本明細書における置換基R
12の文脈では、アリール基は好ましくは単環式であり、置換されていてもよいフェニル基であり、ここでフェニル基に対する任意の置換基は、C
1−4アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、または臭素)、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、C
1−4アルコキシ(例えば、メトキシ)、メチレンジオキシから選ばれる。1つの一般的な実施形態では、置換基R
12の一部を形成するアリール基は、非置換のフェニルであってもよいし、あるいは、メチル、メトキシ、フッ素、または塩素から選ばれる1または2個の置換基により置換されたフェニルであってもよい。
【0132】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例を構成する種々の官能基および置換基は、典型的には、本発明の化合物の分子量が1000を超えないように選ばれる。より通常には、化合物の分子量は、750未満、例えば、700未満、650未満、600未満、または550未満になる。より好ましくは、分子量は、525未満、例えば、500以下である。
【0133】
塩、溶媒和物、互変異性体、異性体、N−オキシド、および同位体
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例に対する言及は、例えば、下に記載するそのイオン形態、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、同位体、および保護形態;好ましくは、その塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物;より好ましくは、その塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物も含む。
【0134】
上記化合物の多くは、例えば酸付加塩、または特定の場合には有機塩基および無機塩基の塩、例えば、フェノール酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、およびリン酸塩の形態で存在し得る。このような塩すべてが本発明の範囲内であり、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例に対する言及には当該化合物の塩の形態を含む。
【0135】
本発明の塩は、「医薬用塩:特性、選択および使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)」、ハインリヒスタール(P. Heinrich Stahl)(編者)、カミールワーマス(Camille G. Wermuth)(編者)、ISBN:3−90639−026−8、ハードカバー、388ページ、2002年8月、に記載されている方法などの通常の化学法により、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸型または遊離塩基型を、水中または有機溶媒中、または両者の混合物中の適切な塩基または酸と反応させることにより製造することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が用いられる。
【0136】
酸付加塩は、無機および有機双方の様々な酸と形成される。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、ショウノウ−スルホン酸、(+)−(1S)−ショウノウ−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、および吉草酸からなる群から選ばれる酸、ならびにアシル化アミノ酸および陽イオン交換樹脂により形成された塩が挙げられる。
【0137】
化合物が陰イオン性であるか、または陰イオン性となり得る官能基(例えば、−COOHは−COO
−となり得る)を有する場合には、塩は、適切な陽イオンを伴って形成できる。適切な無機陽イオンの例としては、Na
+およびK
+などのアルカリ金属イオン、Ca
2+およびMg
2+などのアルカリ土類金属陽イオン、ならびにAl
3+などの他の陽イオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な有機陽イオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH
4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH
3R
+、NH
2R
2+、NHR
3+、NR
4+)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの適切な置換アンモニウムイオンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸に由来するのものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの一例としては、N(CH
3)
4+が挙げられる。
【0138】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例がアミン官能基を含む場合、これらは、例えば当業者に周知の方法に従ったアルキル化剤との反応により、第四級アンモニウム塩を形成し得る。このような第四級アンモニウム化合物は、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例の範囲内にある。
【0139】
本発明の化合物の塩形態は典型的には医薬上許容される塩であり、医薬上許容される塩の例は、ベルジュ(Berge)ら、1977年、薬学的許容塩(Pharmaceutically Acceptable Salts)、「ジャーナル・オブ・ファーマシューティカルサイエンス(J. Pharm. Sci.)」、第66巻、1〜19ページに記載されている。しかしながら、医薬上許容されない塩も中間形態として製造されてよく、これらはその後医薬上許容される塩へと変換することができる。このような医薬上許容されない塩形態も、例えば本発明の化合物の精製または分離に有用である場合があり、本発明の一部をなす。
【0140】
アミン官能基を含む式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例はN−オキシドを形成し得る。アミン官能基を含む式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例に対する本明細書における言及には、N−オキシドも包含する。
【0141】
化合物がいくつかのアミン官能を含む場合には、1個以上の窒素原子を酸化してN−オキシドを形成できる。N−オキシドの特定の例としては、窒素含有ヘテロ環の第三級アミンまたは窒素原子のN−オキシドがある。
【0142】
N−オキシドは、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)のような酸化剤で対応するアミンを処理することにより形成されてもよい(例えば、「機能化学特論(Advanced Organic Chemistry)」、ジェリーマーチ(Jerry March)、第4版、ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ページ、を参照のこと)。より具体的には、N−オキシドはデディー(L.W.Deady)(「シンセティックコミュニケーションズ(Syn. Comm.)」、1977年、7、509〜514ページ)の方法により製造されてもよく、この方法ではアミン化合物を、例えばジクロロメタンなどの不活性溶媒中でm−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)と反応させる。
【0143】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例は、多数の異なる幾何異性型および互変異性型で存在する可能性があり、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例に対する言及には、このような形態が全て包含される。誤解を避けるため記述すると、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例は、いくつかの幾何異性型または互変異性型のうちの1つで存在でき、1種類のみが具体的に記載または表示されている場合にも、他の全てのものがやはり意図される。
【0144】
互変異性型の例としては、例えば、ケト型、エノール型、およびエノレート型があり、例えば、次の互変異性体対:ケト/エノール(下に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、およびニトロ/アシ−ニトロなどの場合がある。
【化17】
【0145】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例が1つ以上のキラル中心を有し、かつ、2種以上の光学異性体の形態で存在できる場合、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例に対する言及は、文脈上他の意味に解する場合を除き、その全ての光学異性型(例えば、鏡像異性体、エピマーおよびジアステレオ異性体)を、個々の光学異性体として、混合物(例えば、ラセミ混合物)または2種以上の光学異性体として含む。
【0146】
光学異性体は、その光学活性(すなわち、+および−異性体、またはdおよびl異性体)として特性評価および同定してもよいし、カーン(Cahn)、インゴールド(Ingold)およびプレログ(Prelog)により開発された「RおよびS」命名法を用いて絶対立体化学に基づき特性評価してもよい、「機能化学特論(Advanced Organic Chemistry)」、ジェリーマーチ(Jerry March)、第4版、ジョンワイリー&サンズ、ニューヨーク、1992年、109〜114ページを参照のこと、またカーン、インゴールド&プレログ(Cahn、 Ingold & Prelog)、「アンゲヴァンテケミーインターナショナルエディション(Angew. Chem. Int. Ed.)」、Engl.、1966年、5、385〜415ページを参照のこと。
【0147】
光学異性体は、キラルクロマトグラフィー(キラル支持体上でのクロマトグラフィー)をはじめとする様々な技術によって分離してもよく、このような技術は当業者に周知のものである。
【0148】
キラルクロマトグラフィーの別法として、光学異性体を、(+)−酒石酸、(−)−ピログルタミン酸、(−)−ジ−トルオイル−L−酒石酸、(+)−マンデル酸、(−)−リンゴ酸、および(−)−ショウノウ−スルホン酸などのキラル酸によりジアステレオ異性体塩を形成させ、優先的結晶化によりそのジアステレオ異性体を分離した後、それらの塩を解離させて遊離塩基の個々の鏡像異性体を得ることにより、分離してもよい。
【0149】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例が2種以上の光学異性型で存在する場合、鏡像異性体対のうち一方の鏡像異性体は他方の鏡像異性体よりも、例えば生物活性の点で優位性を示すことがある。したがって、ある状況では、鏡像異性体対の一方のみ、または複数のジアステレオ異性体の1種のみを治療薬として使用するのが望ましい場合がある。よって、本発明は、1つ以上のキラル中心を有する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例を含み、本発明の化合物の少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)が単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在している組成物を提供する。1つの一般的な実施態様では、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例の総量の99%以上(例えば、実質的に全部)が単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在していてもよい。
【0150】
本発明の化合物は、1つ以上の同位体置換を有する化合物を含み、特定の元素は、その範囲内にその元素の全ての同位体を含む。例えば、水素の場合、その範囲内に
1H、
2H(D)、および
3H(T)を含む。同様に、炭素および酸素の場合は、それらの範囲内にそれぞれ
12C、
13Cおよび
14Cと、
16Oおよび
18Oとを含む。
【0151】
同位体は放射性であっても放射性でなくてもよい。本発明の一実施態様では、化合物は放射性同位体を含まない。このような化合物は治療用として好ましい。しかしながら、別の実施態様では、化合物は1個以上の放射性同位体を含んでもよい。このような放射性同位体を含む化合物は診断の場合に有用となる可能性がある。
【0152】
また式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例によって、当該化合物の任意の多形、当該化合物の溶媒和物(例えば、水和物)および錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体すなわち包接化合物、あるいは金属との錯体)が包含される。
【0153】
好ましい溶媒和物は、非毒性の薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和性溶媒(solvating solvent)と呼ぶ)の分子が本発明の化合物の固体構造(例えば、結晶構造)に取り込まれることにより形成した溶媒和物である。このような溶媒の例としては、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール、およびブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、溶媒和性溶媒を含む溶媒または混合溶媒で本発明の化合物を再結晶化させることにより調製してもよい。溶媒和物が所与の場合に形成されたかどうかは、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定法(DSC)、およびX線結晶解析などの周知であり標準的な技術を用いて、化合物の結晶を分析に供することにより決定し得る。
【0154】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的な溶媒和物であり得る。
【0155】
特に好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例としては、半水化物、一水和物、および二水和物が挙げられる。
【0156】
溶媒和物のより詳細な記載、ならびに溶媒和物の製造および特性評価に用いられる方法に関しては、ブリン(Bryn)ら、「ソリッドステートケミストリー・オブ・ドラッグス(Solid-State Chemistry of Drugs)」、第2版、SSCI社発行、ウェスト・ラファイエット、インディアナ州、米国)、1999年、ISBN0−967−06710−3を参照のこと。
【0157】
生物学的活性および治療上の使用
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、(5)の化合物ならびにその実施形態、サブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例は、Hsp90阻害剤である化合物のプロドラッグであると考えられる。
【0158】
本発明のプロドラッグ化合物は、その親化合物に対して多くの利点を有する可能性がある。例えば、当該プロドラッグ化合物は、例えば向上した腸管吸収による、向上した経口バイオアベイラビリティーを呈し得る。さらに、プロドラッグを形成することにより、親化合物の共役(conjugation)および/または代謝が実質的に減少され得る。
【0159】
本発明のプロドラッグ化合物は、広範囲の増殖性疾患の治療に有益であると期待される。このような増殖性疾患の例としては、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、直腸腺癌および直腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌(例えば、腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、外分泌膵臓癌)、胃癌、子宮頚癌、甲状腺癌、前立腺癌、消化管系の癌(例えば、消化管間質性腫瘍)、または皮膚癌(例えば、扁平上皮癌);リンパ球系列の造血系腫瘍(例えば、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫(びまん性大B細胞リンパ腫など)、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫);骨髄細胞系列の造血系腫瘍(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄性白血病、イマチニブ感受性および抵抗性の慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ボルテゾミブ感受性および抵抗性の多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患、または前骨髄球性白血病を含む);甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍(例えば、線維肉腫または横紋筋肉種);中枢または末梢神経系の腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫(高悪性度神経膠腫)または神経鞘腫);黒色腫(例えば、悪性または転移性黒色腫);精上皮腫;奇形癌;骨肉腫;角化棘細胞腫;甲状腺瀘胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。間葉由来の腫瘍のその他の例としてはユーイング肉腫がある。
【0160】
癌の1つのサブグループとしては、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、直腸腺癌および直腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌(例えば、腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、外分泌膵臓癌)、胃癌、甲状腺癌、前立腺癌、消化管系の癌(例えば、消化管間質性腫瘍)、または皮膚癌(例えば、扁平上皮癌);リンパ球系列の造血系腫瘍(例えば、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫(びまん性大B細胞リンパ腫など)、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫);骨髄細胞系列の造血系腫瘍(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄性白血病、イマチニブ感受性および抵抗性の慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ボルテゾミブ感受性および抵抗性の多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患、または前骨髄球性白血病を含む);甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍(例えば、線維肉腫または横紋筋肉種);中枢または末梢神経系の腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠腫(高悪性度神経膠腫));黒色腫(例えば、悪性または転移性黒色腫);骨肉腫;または甲状腺瀘胞癌が挙げられる。間葉由来の腫瘍のその他の例としてはユーイング肉腫がある。
【0161】
癌の1つの好ましいのグループは、HER2陽性である転移性乳癌;前立腺の腺癌;転移性黒色腫;肺非小細胞癌(NSCLC);肺小細胞癌(SCLC);高悪性度神経膠腫;消化管間質性腫瘍(GIST);結腸直腸癌;膠芽腫;黒色腫;転移甲状腺癌;前立腺癌;および直腸癌から選ばれる固形腫瘍からなる。
【0162】
このグループの癌の内で、特定のサブグループは、結腸直腸癌;膠芽腫;黒色腫;転移甲状腺癌;前立腺癌;および直腸癌からなる。
【0163】
上記の癌は、Hsp90阻害に感受性のある癌である可能性があり、このような癌は「診断方法」と題した節に示す方法により判定することができる。
【0164】
癌の1つのグループには、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜乳癌);およびマントル細胞リンパ腫が含まれる。さらに、他の癌として、結腸直腸癌および子宮内膜癌がある。
【0165】
癌の別のサブセットには、リンパ球系および骨髄細胞系列双方の造血系腫瘍、例えば、急性リンパ芽球性白血病および慢性リンパ性白血病(T細胞およびB細胞両方)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫およびB細胞リンパ腫(びまん性大B細胞リンパ腫など)が含まれ、さらに、場合によっては慢性骨髄性白血病および多発性骨髄腫が含まれる。
【0166】
癌の好ましいサブセットは、ErbB2陽性の乳癌、前立腺癌、肺癌、および胃癌;慢性骨髄性白血病;アンドロゲン受容体依存性前立腺癌;Flt3依存性急性骨髄性白血病;Braf変異関連黒色腫;多発性骨髄腫;ベルケイド抵抗性の多発性骨髄腫;および消化管間質性腫瘍(GIST)からなる。
【0167】
これらのうち特に好ましい癌は、本明細書で規定する多発性骨髄腫およびベルケイド抵抗性の腫瘍タイプである。
【0168】
他の癌の好ましいサブセットは、ホルモン抵抗性の前立腺癌、転移性黒色腫、HER2陽性乳癌、変異EGFR陽性非小細胞肺癌、およびグリベック抵抗性の消化管間質性腫瘍からなる。
【0169】
癌のさらなる好ましいサブセットは、ホルモン抵抗性の前立腺癌、転移性黒色腫、HER2陽性乳癌、変異EGFR陽性非小細胞肺癌、小細胞肺癌、および消化管間質性腫瘍からなる。
【0170】
Hsp90阻害剤は、ウイルス感染、寄生虫性疾患、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症および紅斑性狼瘡)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)、炎症、I型およびII型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心疾患、ならびに色素性乾皮症(癌でないが、紫外線で誘発された皮膚癌になりやすい傾向があるDNA修複の遺伝的な多系統疾患)などの他の症状の治療にも使用することができる。
【0171】
またHsp90阻害剤は、移植および免疫抑制にも臨床上の利益を有する可能性がある。
【0172】
またHsp90阻害剤は、既存治療薬または新規治療薬と併用した場合に上記の疾患において臨床上の利益を有する可能性がある。
【0173】
Hsp90クライアントタンパク質の活性と実験的証拠に基づけば、以下の疾患がHsp90阻害剤による治療に特に感受性がある可能性がある。
【0174】
ErbB2陽性の乳癌、前立腺癌、肺癌、および胃癌
ErbB2(HER−2)の過剰発現は乳癌の約30%に見られ、予後の悪さと薬剤耐性に関連している(ツガワ(Tsugawa)ら)1993年、「オンコロジー(Oncology)」、1993年;50:418)。
【0175】
肺癌における変異EGFR
L858Rおよびエクソン19の欠失を含む、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)のキナーゼドメインの体細胞変異は、非小細胞肺癌(NSCLC)におけるゲフィチニブおよびエルロチニブ応答性の基礎にある。これらのチロシンキナーゼ阻害剤に対する獲得耐性には、いくつかの場合、第2の変異T790Mにより仲介される。ゲルダナマイシンなどのアンサマイシン系抗生物質は熱ショックタンパク質90(Hsp90)を強力に阻害し、適切なコンフォメーションへの折りたたみにシャペロンを必要とする発癌性キナーゼのユビキチン仲介性の分解を促進する。EGFR変異の細胞株をゲルダナマイシンに曝露すると、リン酸化AktおよびサイクリンD1の著しい枯渇ならびにアポトーシスが誘導された。これらのデータは、EGFRの変異による活性化は、安定性についてHsp90依存性に関連し、Hsp90の阻害がEGFR変異のNSCLC治療のための新たな戦略となり得ることを示唆する。
【0176】
慢性骨髄性白血病
異常なBCR−Ablタンパク質は染色体の転座により作り出され、構成的に活性のあるAblキナーゼドメインが生じる。この転座はCMLの原因であることが示されている。P210BcrAblはHsp90の既知のクライアントタンパク質である。BCR−Abl陽性細胞株K562をHsp90阻害剤で処理するとアポトーシスが誘導された。Bcr−Abl阻害剤グリベック(登録商標)もまたK562細胞においてアポトーシスを誘導するが、グリベック(登録商標)耐性K562細胞はHsp90阻害剤に対する感受性を維持する(ゴレ(Gorre)ら、2002年、「ブラッド(Blood)」100:3041〜3044ページ)。
【0177】
アンドロゲン受容体依存性前立腺癌
アンドロゲン受容体キナーゼはHsp90クライアントタンパク質である。耐性の発生が不可避ではあるが、テストステロンは、依然として非限局性疾患に対する一次治療である。いくつかの症例では、耐性は、リガンド非依存性のシグナル伝達をもたらすアンドロゲン受容体において起こる変異の結果として発生する。このような環境下では、Hsp90の阻害に続くアンドロゲン受容体発現のダウンレギュレーションは、見込みのある治療手法をである。
【0178】
並列システム(parallel system)がエストロゲン依存性乳癌で存在する。
【0179】
Flt3依存性急性骨髄性白血病
チロシンキナーゼ受容体Flt3の内部重複により、その構成的活性化および発癌性がもたらされる。これらの内部重複は報告されている全AML癌の20%で見られ、予後の悪さの指標となる。Flt3シグナル伝達の阻害は過渡応答にもたらすことが示されている。Flt3はHsp90クライアントタンパク質であることから、Hsp90阻害剤はこれらの患者に臨床上有益であるものと推測される(バリ(Bali)ら、2004年、「キャンサーリサーチ(Cancer Res.)」64(10):3645〜52ページ)。
【0180】
Braf変異関連黒色腫
Brafはセリン/スレオニンキナーゼをコードし、全ての黒色腫の70%で変異している。これらの80%は、BRAFに増加したキナーゼ活性を与える単一のV599E点変異を示す。この変異はNIH3T3細胞においてもまた変化する(ビグネル(Bignell)ら、2002年、「ネイチャー(Nature)」417(6892):949〜54ページ)。
【0181】
多発性骨髄腫
Hsp90阻害剤17−AAGは、ボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫細胞株の増殖を強力に阻害する。IGF−1RおよびIL−6Rの細胞表面レベルは、17−AAGで処理されたMM−1細胞でも減少する(ミチエーズ(Mitsiades)ら、「ブラッド(Blood)」、107:1092〜1100ページ、2006年)。また、IL−6による多発性骨髄腫細胞のオートクライン刺激ならびに骨髄間質細胞のパラクライン刺激もHsp90クライアントIKKのダウンレギュレーションを介して減少する。
【0182】
ボルテゾミブ(ベルケイド)抵抗性癌
本発明の化合物は、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、緩徐進行性非ホジキンリンパ腫、第IIIB期およびIV期細気管支肺胞上皮癌、進行性非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌および卵巣癌ならびに非ホジキンリンパ腫患者の治療を含む、ベルケイド抵抗性の腫瘍タイプの治療に使用することができる。
【0183】
消化管間質性腫瘍(GIST)
GIST腫瘍は、特に、増殖因子(例えば、c−kit)の活性化または過剰発現に依存する疾患である。
【0184】
B−CLL
ZAP−70は、CLLを有する患者の循環性リンパ球における(このキナーゼが通常発現されるT細胞においてではなく)Hsp90クライアントタンパク質である。したがって、ZAP−70のシャペロン依存性はZAP−70が発現される細胞の種類に依存するのでZAP−70は同定されたHsp90クライアントの中ではユニークである。
【0185】
Hsp90阻害剤が臨床上有益である可能性のある他の症状または疾患としては、限定されるものではないが、以下のものがある。
【0186】
神経変性疾患
ハンチントン病(HD)は、有効な治療の無い進行性の神経変性疾患である。Hsp90のGA阻害およびその結果としてのHspのアップレギュレーションは、神経細胞におけるハンチントンタンパク質の凝集の阻害に有効である(シトラー(Sittler)ら、2001年、「ヒューマン・モレキュラー・ジェネティックス(Human Molecular Genetics)」、第10巻、第12号、1307〜1315ページ)。Hspのアップレギュレーションはまた、他のタンパク質の異常な折りたたみに起因する疾患、例えば、CJDおよびアルツハイマー病にも臨床上有益である可能性がある。
【0187】
関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、および炎症性腸疾患を含む炎症性疾患
GAはHsp90からHSF−1を解離してHSF−1の活性化と核移行をもたらすことが示されている。HSF−1は次に転写因子として働き、Hsp90およびHsp70を誘導する。浮腫誘導マウスモデルにおいて、Hsp70の誘導は炎症の緩和に関連づけられている(イアナロ(Ianaro)ら、2004年、「ヒューマン・モレキュラー・ジェネティックス(Human Molecular Genetics)」、2001年、第10巻、第12号、1307〜1315ページ)。さらに、GA処理は、TNF−αまたはPMAによるIκBキナーゼ(IKK)の活性化を阻害した。IKKはNf−κBおよびAp−1のレギュレーターである(ブレーマー(Broemer)ら、2004年)。Ap−1およびNf−κBは炎症誘発性サイトカインの産生をもたらす主要な転写因子である(エオ(Yeo)ら、2004年、「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem Biophys Res Commun.)」30;320(3):816〜24ページ)。炎症誘発性サイトカイン転写産物の安定性もまたp38MapKの阻害を介して調節される(ワックス(Wax)ら、2003年、「リューマチズム(Rheumatism)」、第48巻、第2号、541〜550ページ)。
【0188】
アテローム性動脈硬化症
ヒトアテローム性動脈硬化症の発症および進行において、炎症性細胞および免疫細胞が中心的役割を担うことが知られており(リガノ(Rigano)ら、「ニューヨークアカデミー・オブ・サイエンス年報(Ann. N.Y. Acad. Sci.)」、2007年、1107:1〜10ページ)、Hsp90が頚動脈アテローム性動脈硬化症における自己抗原として作用することが提唱されている。リガノらは、頚動脈アテローム硬化性プラークに罹患している60%の被験者の血清中に、Hsp90に特異的な抗体および細胞が存在するが、健康な被験者の血清中にはHsp90を標的とする特異的な抗体またはT細胞は存在しないことを見出した。したがって、Hsp90の阻害剤は、アテローム性動脈硬化症の治療または予防に有用である可能性がある。
【0189】
血管形成関連疾患(腫瘍血管形成、乾癬、関節リウマチおよび糖尿病性網膜症を含むがこれらに限定されない)
内皮細胞における、血管形成の誘導は、Hsp90クライアントタンパク質であるeNOSおよびAktにより調節される(サン(Sun)およびリャオ(Liao)、2004年、「アーティリオスクローシス・スランボーシス・アンド・ヴァスキュラー・バイオロジー(Arterioscler Thromb Vasc Biol.)」24(12):2238〜44ページ)。また、マウスモデルでは、低酸素誘導性因子(HIF)−1αの抑制は、胃腫瘍の増殖、血管形成、および血管成熟を損ない得る(ストールツィング(Stoeltzing)ら、2004年、「ジャーナル・オブ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J Natl Cancer Inst)」;96:946〜956ページ)。
【0190】
I型およびII型糖尿病
Hsp90の阻害は、Aktシグナル伝達ならびにe−nosに著しい作用を示す。これらは、I型糖尿病の高グルコースにより誘導される内皮細胞アポトーシス(リン(Lin)ら、2005年、「ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J Cell Biochem.)」1;94(1):194〜201ページ)およびII型糖尿病の高血圧症の発症(コバヤシ(Kobayashi)ら、2004年、「ハイパーテンション(Hypertension)」44(6):956〜62ページ)における2つの重要なレギュレーターである。
【0191】
免疫抑制および移植
Hsp90阻害は、T細胞の活性化に必要なT細胞特異的チロシンキナーゼであるLckをダウンレギュレーションすることが示されている(ヨルギン(Yorgin)ら、2000年、「ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol.)」15;164(6):2915〜23ページ)。
【0192】
心疾患
心虚血は、西洋諸国において最も多い死因である。Hsp、特に、Hsp70(ラディシコール処理により誘導)はラット心筋細胞において心臓保護活性を示す(グリフィン(Griffin)ら、2004年)。Hsp90が阻害されると、シャペロン複合体からHSF−1が遊離し、次に、Hsp遺伝子の活性化が起こる。Hsp90の阻害はまた、HIF−1のダウンレギュレーションをもたらし、これが虚血性心疾患および卒中の病因と関連づけられている。
【0193】
感染症
C型肝炎ウイルスNS2/3プロテアーゼはHsp90クライアントタンパク質であり、Hsp90活性はウイルスのプロセッシングおよび複製に必要である(ホイットニー(Whitney)ら、2001年、「米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)」、20;98(24):13931〜5ページ)。
【0194】
寄生虫性疾患
ゲルダナマイシン(GA)に関しては、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)において見られるHsp90オーソログに対する抗マラリア活性が報告されている。マラリア原虫の増殖は、クロロキンにより見られるものと同じようなIC
50でGAにより阻害された。GAはまた、熱帯熱マラリア原虫のクロロキン耐性株に対しても有効である(クマール(Kumar)ら、2003年、マラリアジャーナル(Malar J.)15;2(1):30ページ)。
【0195】
薬剤耐性の発生の阻害、予防、または撤回
上記のように、一般にストレスタンパク質機能(および特にHsp90)のモジュレーターまたはインヒビターは、以下の能力を有する化学療法薬のクラスを表す。(i)抗癌薬剤および/または治療に対して悪性細胞を感作させる;(ii)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性の発生率を緩和または低減する;(iii)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性を撤回させる;(iv)抗癌薬剤および/または治療の活性を増強する;(v)抗癌薬剤および/または治療に対する耐性の発現を遅延または防止する。
【0196】
したがって、本発明はさらに下記のものを提供する。
・Hsp90により仲介される病態もしくは症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、本発明の化合物をその必要のある被験体に投与することを含み、当該Hsp90により仲介される病態もしくは症状が抗癌剤に対する耐性の発生である方法。
・(i)抗癌剤に対して悪性細胞を感作させる、(ii)抗癌剤に対する耐性の発生率を緩和または低減する、(iii)抗癌剤に対する耐性を撤回させる、(iv)抗癌剤の活性を増強する、(v)抗癌剤に対する耐性の発現を遅延または防止する方法であって、その必要のある被験体に本発明の化合物を投与することを含む方法。
・癌の治療方法であって、その必要のある被験体に本発明の化合物を投与することを含み、薬剤耐性が現れないことを特徴とする方法。
・治療薬(例えば、抗癌剤)で治療を受けている被験体におけるHsp90により仲介される病態もしくは症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、当該被験体に本発明の化合物を投与することを含み、当該Hsp90により仲介される病態もしくは症状が当該治療薬に対する耐性の発生である方法。
・(i)抗癌剤に対して悪性細胞を感作させる、(ii)抗癌剤に対する耐性の発生率を緩和または低減する、(iii)抗癌剤に対する耐性を撤回させる、(iv)抗癌剤の活性を増強する、(v)抗癌剤に対する耐性の発現を遅延または防止する方法であって、当該抗癌剤で治療を受けている被験体に本発明の化合物を投与することを含む方法。
・抗癌剤で治療を受けている被験体における癌の治療方法であって、その必要のある被験体に本発明の化合物を投与することを含み、当該抗癌剤に対する薬剤耐性が現れないことを特徴とする方法。
【0197】
生物学的活性
本発明のプロドラッグ化合物が由来するフェノール化合物の生物学的活性(例えば、Hsp90の阻害剤としての)は、以下の実施例で示すアッセイ、例えば、実施例46に記載する等温滴定熱量測定(ITC)実験および実施例47に記載する抗増殖活性アッセイを用いて測定することができる。ITCアッセイにおいて、所与の化合物が示す活性レベルはK
d値として規定することができ、本発明の好ましい化合物は、1マイクロモル未満、より好ましくは0.1マイクロモル未満のK
d値を有する化合物である。抗増殖活性アッセイでは、アッセイにおいて、所与の化合物が示す活性レベルはIC
50値として規定することができ、本発明の好ましい化合物は1マイクロモル未満、より好ましくは0.1マイクロモル未満のIC
50値を有する化合物である。
【0198】
hERG
1990年代末頃、米国FDAによって認可された多くの医薬品が、心機能不全による死亡に関係していることが見出されたため、米国市場からの撤退を余儀なくされた。後に、これらの医薬品の副作用は、心臓細胞におけるhERGチャネルのブロッキングによる不整脈の発生であることが分かった。hERGチャネルは、カリウムイオンチャネルファミリーの1つであり、その最初のメンバーは、1980年代末頃に、ショウジョウバエの一種であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の変異体で見出された(ジャン(Jan, L.Y.)およびジャン(Jan, Y.N.)(1990年)「イオンチャネルのスーパーファミリー(A Superfamily of Ion Channels)」、ネイチャー(Nature)、345(6277):672ページを参照)。hERGカリウムイオンチャネルの生物物理特性は、サンギネッチ(Sanguinetti, M.C.)、ジャン(Jiang, C)、クラン(Curran, M.E.)、およびキーティング(Keating, M.T.)(1995年)「遺伝性心不整脈と後天性心不整脈との機構的関連:HERGはIkrカリウムチャネルをコードする(A Mechanistic Link Between an Inherited and an Acquired Cardiac Arrhythmia: HERG encodes the Ikr potassium channel)」、「セル(Cell)」、81:299〜307ページ、ならびにトルード(Trudeau, M.C.)、ウォームク(Warmke, J.W.)、ゲネツキー(Ganetzky, B.)、およびロバートソン(Robertson, G.A.)(1995年)HERG、電位依存性カリウムチャネルファミリーにおけるヒトの内向き整流(HERG, a Human Inward Rectifier in the Voltage-Gated Potassium Channel Family)、「サイエンス(Science)」、269:92〜95ページに記載されている。
【0199】
hERGをブロックする活性の除去は、依然としてあらゆる新規な医薬品の開発における重要な懸案事項である。
【0200】
本発明のプロドラッグ化合物が由来するフェノール化合物の多くは、hERG活性が低く、Hsp90阻害活性とhERG活性とが良好に区別されていることが分かっている。
【0201】
好ましいプロドラッグ化合物は、フェノール化合物のプロドラッグ化合物であって、細胞増殖アッセイにおける当該化合物のIC
50値の30倍よりも大きいか、または40倍よりも大きいか、または50倍よりも大きいhERGに対する平均IC
50値を有するものである。好ましいプロドラッグ化合物は、5μMより大きい、より具体的には10μMより大きい、そしてより好ましくは15μMより大きいhERGに対する平均IC
50値を有するフェノール化合物のプロドラッグである。本発明のプロドラッグ化合物が由来するいくつかのフェノール化合物は、50μMより大きいhERGに対する平均IC
50値を有する。
【0202】
本発明の化合物は有利なADME特性を有し、特に、フェノール親化合物よりも良好な経口バイオアベイラビリティーを有する可能性がある。
【0203】
疼痛、神経障害、卒中、および関連する症状の治療
本発明の化合物はHsp90を阻害または修飾する活性を有するため、cdk5により仲介される特定の疾病および症状を治療、緩和、または予防するのに有用に用いられる可能性がある。
【0204】
したがって、本発明は、疼痛の治療用薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用を提供する。
【0205】
他の態様において、本発明は、卒中の予防または治療用薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用を提供する。
【0206】
別の態様において、本発明は、神経保護剤として用いる薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用を提供する。
【0207】
他の態様では、本発明は下記のものを提供する。
・疼痛の治療に用いる、本明細書で規定する本発明の化合物。
・疼痛を患う患者(例えば、ヒトなどの哺乳類)の疼痛の低減または除去に用いる、本明細書で規定する本発明の化合物。
・疼痛を患う患者(例えば、ヒトなどの哺乳類)の疼痛の低減または除去に用いる薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・痛覚、体性痛、内臓痛、急性疼痛、慢性疼痛、痛覚過敏、異痛、術後疼痛、知覚過敏による疼痛、頭痛、炎症性疼痛(リューマチ痛、歯痛、月経痛、または感染痛)、神経学的疼痛、筋骨格系疼痛、癌性疼痛、または血管痛のうちのいずれか1つ以上の治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・痛覚、体性痛、内臓痛、急性疼痛、慢性疼痛、痛覚過敏、異痛、術後疼痛、知覚過敏による疼痛、頭痛、炎症性疼痛(リューマチ痛、歯痛、月経痛、または感染痛)、神経学的疼痛、筋骨格系疼痛、癌性疼痛、および血管痛のうちのいずれか1つ以上の治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・哺乳類(例えば、ヒト)などの患者の疼痛の治療方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で当該患者に投与することを含む方法。
・疼痛を患う患者(例えば、ヒトなどの哺乳類)の疼痛の低減または除去方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を疼痛を低減または除去するのに有効な量で当該患者に投与することを含む方法。
・痛覚、体性痛、内臓痛、急性疼痛、慢性疼痛、痛覚過敏、異痛、術後疼痛、知覚過敏による疼痛、頭痛、炎症性疼痛(リューマチ痛、歯痛、月経痛、または感染痛)、神経学的疼痛、筋骨格系疼痛、癌性疼痛、および血管痛のうちのいずれか1つ以上の治療方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で患者に投与することを含む方法。
・卒中の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・哺乳類(例えば、ヒト)などの患者における卒中の予防または治療方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で当該患者に投与することを含む方法。
・神経保護剤として用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・卒中を患う患者における神経損傷の防止または低減方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を神経保護に有効な量で当該患者に投与することを含む方法。
・卒中の危険性がある患者、例えば、血管炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈高血圧、糖尿病、高脂血症、および心房細動から選ばれる1つ以上の危険因子を有する患者における卒中の危険性の防止または低減用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・卒中の危険性がある患者、例えば、血管炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈高血圧、糖尿病、高脂血症、および心房細動から選ばれる1つ以上の危険因子を有する患者における卒中の危険性を防止または低減するための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・卒中の危険性がある患者、例えば、血管炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈高血圧、糖尿病、高脂血症、および心房細動から選ばれる1つ以上の危険因子を有する患者における卒中の危険性を防止または低減するための方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で当該患者に投与することを含む方法。
・サイクリン依存性キナーゼ5により仲介される病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・サイクリン依存性キナーゼ5により仲介される病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・サイクリン依存性キナーゼ5により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・サイクリン依存性キナーゼ5により仲介される病態または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用であって、当該病態または症状がアルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外である使用。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用であって、当該病態または症状が神経変性疾患以外である使用。
・cdk5またはp35のレベルの上昇を特徴とする病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物であって、当該病態または症状がアルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外である化合物。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物であって、当該病態または症状が神経変性疾患以外である化合物。
・cdk5またはp35のレベルの上昇を特徴とする病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、当該病態または症状がアルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外であり、その必要のある患者に本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で投与することを含む方法。
・cdk5またはp35により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、当該病態または症状が神経変性疾患以外であり、その必要のある患者に本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で投与することを含む方法。
・cdk5またはp35のレベルの上昇を特徴とする病態または症状の予防または治療方法であって、その必要のある患者に本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で投与することを含む方法。
・神経障害、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外の末梢神経障害の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・神経障害、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外の末梢神経障害の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・神経障害、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、またはクロイツフェルト−ヤコブ病以外の末梢神経障害の予防または治療方法であって、その必要のある患者に本明細書で規定する本発明の化合物を治療上有効な量で投与することを含む方法。
【0208】
抗真菌活性、抗原虫活性、抗ウイルス活性、および抗寄生虫活性
本発明の化合物、ならびにその酸付加塩および結晶形態は、抗真菌活性、抗原虫活性、および抗寄生虫活性を有する可能性がある。
【0209】
特に、本発明の化合物は、病原体による感染が通常はHsp90に対する抗体反応と関係がある病原菌、原虫、および寄生虫による感染の治療に有用である可能性がある。
【0210】
1つの実施形態では、本発明は、抗真菌剤として用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物を提供する。
【0211】
真菌としては、例えば、下記ようなヒトおよび他の動物において病因となる真菌が挙げられる:
・カンジダ(Candida)属の種、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis);
・クリプトコッカス(Cryptococcus)属の種、例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)およびクリプトコッカス・メナンジャイタス(Cryptococcal meningitis);
・アスペルギルス(Aspergillus)属の種、例えばアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger);
・ミクロスポルム(Microsporum)属の種、例えばミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)およびミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum);
・エピデルモフィトン(Epidermophyton)属の種;
・トリコフィトン(Trichophyton)属の種、例えばトリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)およびトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum);
・エピデルモフィトン・フロッコースム(Epidermophyton floccosum);
・エキソフィアラ・ベルネッキ(Exophiala werneckii);
・フザリウム(Fusarium)属の種、例えばフザリウム・ソラニ(Fusarium solani);
・スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii);
・ペニシリウム(Penicillium)属の種、例えばペニシリウム・ルブルム(Penicillium rubrum);
・アルテルナリア(Alternaria)属の種;
・セラトシィスティス・ピリフェラ(Ceratocystis pilifera);
・クリソスポリウム・プルイノスム(Chrysosporium pruinosum);
・ヘルミンソスポリアム(Helminthosporium)属の種;
・ペシロミセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii);
・酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびピチロスポルム(Pityrosporum)属の種、例えばピチロスポルム・オルビクラーレ(Pityrosporum orbiculare)およびピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale);
・ヒストプラズマ(Histoplasma)属の種、例えばヒストプラズマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum);
・コクシジオイデス(Coccidioides)属の種;
・パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)属の種;ならびに
・ブラストミセス(Blastomyces)属の種。
【0212】
他の実施形態では、本発明は、抗原虫剤として用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物を提供する。
【0213】
原虫としては、例えば、下記のものが挙げられる:
・トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi);
・リーシュマニア(Leishmania)属の種;例えば、ドノバンリーシュマニア(L.donovani)コンプレックス(ドノバンリーシュマニア、幼児リーシュマニア(L.infantum)およびシャガシリーシュマニア(L.chagasi));メキシコリーシュマニア(L.mexicana)コンプレックス(3大種−メキシコリーシュマニア、アマゾンリーシュマニア(L.amazonensis)およびベネズエラリーシュマニア(L.venezuelensis));熱帯リーシュマニア(L.tropica);大形リーシュマニア(L.major);エチオピアリーシュマニア(L.aethiopica);およびビアーニア(Viannia)亜属−4大種(ブラジルリーシュマニア(L.(V.)braziliensis)、ギアナリーシュマニア(L.(V.)guyanensis)、パナマリーシュマニア(L.(V.)panamensis)およびペルーリーシュマニア(L.(V.)peruviana));
・トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii);ならびに
・膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)。
【0214】
別の実施形態では、本発明は、抗寄生虫剤として用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物を提供する。
【0215】
寄生虫としては、例えば、下記の寄生虫が挙げられる:
・寄生回虫、例えば、アスカリス・ルンブリコイデス(Ascaris lumbricoides);
・寄生扁形虫、例えば、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)などの寄生吸虫。
【0216】
また、本発明は、とりわけ下記のものを提供する。
・(熱帯熱マラリア原虫による病態または症状以外の)真菌性、原虫性、または寄生虫性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・(熱帯熱マラリア原虫による病態または症状以外の)真菌性、原虫性、または寄生虫性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・(熱帯熱マラリア原虫による病態または症状以外の)真菌性、原虫性、または寄生虫性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・真菌性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・真菌性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・真菌性の病態または症状、例えば、Hsp90に対する抗体反応を特徴とする病態または症状の予防または治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・動物(例えば、ヒトなどの哺乳類)の病原菌による感染の防止、停止、または撤回に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・動物(例えば、ヒトなどの哺乳類)の病原菌による感染の防止、停止、または撤回用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・動物(例えば、ヒトなどの哺乳類)の病原菌による感染の防止、停止、または撤回方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・上述のおよび本明細書の他所に記載される使用および方法のいずれかのための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・本明細書で規定する病態または症状のいずれかの予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・本明細書で規定する本発明の化合物と抗真菌剤(例えば、アゾール系抗真菌剤)である補助化合物との組み合わせ。
・本明細書で規定する本発明の化合物と抗真菌剤(例えば、アゾール系抗真菌剤)である補助化合物とを含む医薬組成物。
・併用投与する抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤(好ましくは抗真菌剤)に対する耐性の発現の防止、低減、または撤回に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発現を防止、低減、または撤回させるために、抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤(好ましくは抗真菌剤)との併用投与用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・患者(例えば、ヒト患者)における抗真菌剤に対する耐性の発現の防止または低減方法であって、抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤(好ましくは抗真菌剤)と、本明細書で規定する本発明の化合物との組み合わせを患者に投与することを含む方法。
・Hsp90により仲介される病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物と、抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤との組み合わせを投与することを含み、上記Hsp90により仲介される病態または症状が抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発現である方法。
・(i)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対して真菌性、原虫性、または寄生虫性の細胞を感作させ、(ii)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発生率を緩和または低減し、(iii)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性を撤回させ、(iv)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤の活性を増強し、(v)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発現を遅延または防止する方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物と、上記抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤との組み合わせを投与することを含む方法。
・真菌性、原虫性、または寄生虫性の疾病または症状の治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物と、抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤との組み合わせを投与することを含み、薬剤耐性が現れないことを特徴とする方法。
・抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤を用いた治療を受けている被験体における、Hsp90により仲介される病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、上記被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含み、上記Hsp90により仲介される病態または症状が上記抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発現である方法。
・(i)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対して真菌、原虫、または寄生虫の細胞を感作させる、(ii)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発生率を緩和または低減する、(iii)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性を撤回させ、(iv)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤の活性を増強する、(v)抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤に対する耐性の発現を遅延または防止する方法であって、上記補助化合物を用いた治療を受けている被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤を用いた治療を受けている被験体における、真菌性、原虫性、または寄生虫性の疾病の治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含み、(例えば、上記抗真菌剤、抗原虫剤、または抗寄生虫剤への)薬剤耐性が現れないことを特徴とする方法。
【0217】
本出願の導入部に記載したように、Hsp90阻害活性を有する化合物は、強力な抗真菌活性を示し、抗真菌性物質に対する耐性、特に抗真菌性物質に対するHsp90依存性耐性の発現を防止することが分かっている。さらに、Hsp90活性の阻害により、一般的な抗真菌剤、例えば、アゾールに対する耐性の発現が低減可能となることが分かっている。したがって、本発明の化合物は、真菌性の疾病および症状の範囲の予防または治療に有用であり、アゾールなどの他の抗真菌剤と併用投与した場合に、抗真菌剤の活性を増強させるのに有用となることが予想される。
【0218】
本発明の化合物の抗真菌活性は、最小真菌発育(阻止)濃度(m.i.c.)を求めることにより評価され得る。通常、試験は、適切な栄養培地および各々異なる濃度の試験化合物を含む一連のプレートまたはチューブを調製し、培地に真菌種を接種することにより行われる。インキュベーション期間後、プレートを目視して、真菌増殖の有無を確認する。m.i.c.とは、真菌増殖を防止するために必要な最小濃度を意味する。
【0219】
化合物は、動物医療(例えば、ヒトなどの哺乳類の治療)において用いられてもよい。
【0220】
本明細書で規定する本発明の化合物が用いられ得る、動物における真菌感染は、以下を含む:
・表在性真菌症−すなわち、皮膚および毛髪の最外層に限定される真菌感染;
・皮膚真菌症−すなわち、表皮のより深い箇所ではあるが、典型的には皮膚、毛髪、および爪のケラチン化層に限定される真菌感染;
・皮下真菌症−すなわち、真皮、皮下組織、筋肉、および筋膜を含む真菌感染;
・一次病原体による全身性真菌症−(典型的には、肺において最初に発生し、他の器官系に広まる);および
・日和見病原体による全身性真菌症−(通常なら感染しない免疫不全患者の感染)。
【0221】
本明細書で規定する本発明の化合物が用いられ得る、真菌性の病態の具体例は、以下を含む:
・皮膚糸状菌感染、例えば、癜風(皮膚の表在性真菌感染)、足部白癬(水虫)、頭部白癬(頭部の表在性真菌感染)、白癬性毛瘡(髭部位の真菌感染)、体部白癬(滑らかな皮膚部位の真菌感染)
・粘膜カンジダ症、例えば口腔カンジダ症、食道炎、および膣カンジダ症
・侵襲性または深部器官のカンジダ症(例えば、真菌血症、心内膜炎、および眼内炎)
・クリプトコッカス感染、例えばクリプトコッカス・メナンジャイタス感染
・ヒストプラズマ症
・ブラストミセス症、肺および場合により皮膚の真菌感染
・AIDSに罹患している患者(抗AIDS剤を用いた治療を受けている患者)または抗がん剤を用いた治療を受けている患者などの免疫系が弱まっている患者における侵襲性真菌感染(例えば、侵襲性カンジダ症および侵襲性アスペルギルス症)
・アスペルギルス症、例えばアレルギー性気管支肺アスペルギルス症
・アスペルギローマ
・間擦疹感染(皮膚と皮膚の間、例えば、足趾または手指の間、腋下部位、あるいは鼠蹊部位に生じる真菌感染)
・マズラ菌症(マズラ足としても知られる、足組織の真菌の侵襲)
・コクシジオイデス症
・ムーコル症
・ブラストミセス症
・ゲオトリクム症
・クロモブラストミコーシス
・コニジオスポローシス
・ヒストプラズマ症
・リノスポリジウム症
・ノカルジア症
・パラアクチノミセス症
・ペニシリウム症
・モノリアシス
・スポロトリクム症
特に関心が高い真菌感染は、カンジダ症およびアスペルギルス症である。
【0222】
また、本発明の化合物は、抗原虫活性および抗寄生虫活性を有する。本発明の化合物の抗原虫活性は、例えば最小発育阻止濃度(m.i.c.)または50%阻害濃度(IC
50)などを求めるという従来方法により評価し得る。
【0223】
本発明の化合物が有用であると証明し得る原虫性および寄生虫性の疾病または症状は、例えば、以下を含む。
【0224】
・シャーガス病((トリパノソーマ症)−寄生虫トリパノソーマ・クルージにより引き起こされる感染
・回虫症−寄生回虫アスカリス・ルンブリコイデスにより引き起こされるヒトの疾病
・リーシュマニア症−リーシュマニア属の寄生虫により引き起こされる疾病
・トキソプラズマ症−原虫トキソプラズマ・ゴンヂにより引き起こされる寄生虫性の疾病
・住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫症)−寄生虫マンソン住血吸虫により引き起こされる疾病
・トリコモナス症−寄生原虫膣トリコモナスにより引き起こされる性感染疾病
抗ウイルス活性
本出願の導入部に記載したように、ウイルスRNA/DNAを有する宿主細胞の感染により、細胞タンパク質合成を、ウイルス核酸によりコードされる重要なウイルスタンパク質へと実質的に向けなおし、これにより、熱ショックタンパク質のアップレギュレーションがしばしば起こる。Hsp誘導の機能の1つは、ウイルス複製のための準備において生成される高レベルの「外来」タンパク質の安定化および折りたたみを補助することである可能性があると考えられており、Hsp90阻害剤がウイルス複製を遮断可能であることが示されている(ナカガワ(Nagkagawa)ら)。したがって、本発明の化合物は、例えば、ウイルス複製の遮断または阻害によってウイルス感染に対して対抗するのに有用であり得る。
【0225】
したがって、別の態様において、本発明は、ウイルス感染(またはウイルス疾患)の予防または治療に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物を提供する。
【0226】
さらなる態様では、本発明は以下のものを提供する:
・ウイルス感染(またはウイルス疾患)の予防または治療用の薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・ウイルス感染(またはウイルス疾患)の予防または治療方法であって、その必要のある被験体に本明細書で規定する本発明の化合物を投与することを含む方法。
・宿主生物(例えば、哺乳類などの動物(例えば、ヒト))におけるウイルス複製の遮断または阻害に用いるための、本明細書で規定する本発明の化合物。
・宿主生物(例えば、哺乳類などの動物(例えば、ヒト))におけるウイルス複製の遮断または阻害に用いる薬剤を製造するための、本明細書で規定する本発明の化合物の使用。
・宿主生物(例えば、哺乳類などの動物(例えば、ヒト))におけるウイルス複製の遮断または阻害方法であって、本明細書で規定する本発明の化合物を宿主生物に投与することを含む方法。
【0227】
本発明の化合物を用いて治療し得るウイルス感染は、例えば、以下のウイルスのうちいずれか1つ以上による感染が挙げられる:
・ピコルナウイルス、例えば、ライノウイルス(一般的な風邪ウイルス)、コクサッキーウイルス(例えば、コクサッキーBウイルス);および口蹄疫ウイルス;
・肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、およびE型肝炎ウイルス(HEV);
・コロナウイルス(例えば、一般的な風邪ウイルスおよび重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス);
・アデノウイルス、例えば、ヒトアデノウイルス(呼吸器および結膜感染の原因);
・アストロウイルス(インフルエンザ様症状の原因);
・フラビウイルス、例えば、黄熱病ウイルス;
・オルソミクソウイルス、例えば、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザA型、B型、およびC型ウイルス);
・パラインフルエンザウイルス;
・呼吸器多核体ウイルス;
・エンテロウイルス、例えば、ポリオウイルス(灰白脊髄炎ウイルス);
・パラミクソウイルス、例えば、麻疹(はしか)ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、およびイヌジステンパーウイルス(CDV);
・トガウイルス、例えば、風疹(ドイツ麻疹)ウイルスおよびシンドビスウイルス;
・以下のようなヘルペスウイルス:
・単純ヘルペスウイルス(HSV)、例えば、熱性疱疹(口唇疱疹)、歯肉口内炎、疱疹性角膜炎、疱疹性湿疹;およびHSV脳炎を引き起こすHSV−1、ならびに生殖器病変、新生児感染、HSV髄膜炎、およびHSV直腸炎を引き起こすHSV−2;
・水痘、先天性水痘症候群、および帯状疱疹を引き起こす水痘帯状疱疹ウイルス(VZV);
・伝染性単核細胞増加症、バーキットリンパ腫、および鼻咽頭癌を引き起こすエプスタイン−バーウイルス(EBV);
・サイトメガロウイルス(CMV)、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV);
・突発性発疹または小児薔薇疹を引き起こすヒトヘルペスウイルス6(HHV−6);
・多くのAIDS患者の唾液中に見られ、カポジ肉腫関連ヒトヘルペスウイルス8(HHV−8)またはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV);
・パポバウイルス、例えば、ポリオーマウイルスおよびヒトパピローマウイルス(HPV);
・パルボウイルス;
・ポックスウイルス、例えば、痘瘡ウイルス(ヒト天然痘ウイルス);
・ラブドウイルス、例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV);ならびに
・レトロウイルス、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV);およびヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)。
【0228】
本発明の化合物が用いられ得る特定のウイルス感染は、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルス、シンドビスウイルス、アデノウイルス、HIV(HIVに感染した個体のAIDS発症の防止)、HPV、HCV、およびHCMVウイルスを含む。
【0229】
ウイルス感染は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染以外であってもよい。
【0230】
宿主生物または宿主細胞におけるウイルス複製を遮断または防止する薬剤としての本発明の化合物の活性は、当業者に公知の標準的な手法に従って求めることが可能である。
【0231】
本発明の化合物は、単独の抗ウイルス剤として用いてもよく、アクシロビル、ガンシクロビル、オセルタミビル(タミフル(登録商標))、およびザナミビル(リレンザ(登録商標))、アマンチジン、リマンタジン、アデホビルジピボキシル、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ−2bおよびペグインターフェロンアルファ−2a)、ラミブジン、エンテカビル、リバビリン、ファムシクロビル、バルシシロビル(valcicylovir)、バラシクロビル、アジドチミジン(AZT−レトロビル(登録商標))、アタザナビル、ホスアンプレナビル、ラミブジン、ラミブジン+アバカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、フマル酸テノホビルジソプロキシル+エムトリシタビン、チプラナビル、ネルフィナビル、インジナビル、ラルテグラビル、リトナビル、ロピナビル+リトナビル、ダルナビル、アンプレナビル、エンフビルチド、サキナビル、ヒドロキシウレア、VGV−1および抗ウイルス性ワクチンなどの抗ウイルス剤と併用してもよい。
【0232】
したがって、本発明はさらに以下のものを提供する。
・本明細書で規定する本発明の化合物と抗ウイルス剤である補助化合物との組み合わせ。
・本明細書で規定する本発明の化合物と抗ウイルス剤である補助化合物とを含有する医薬組成物。
【0233】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物ならびにそのサブグループの調製方法
この節では、本明細書の他の全ての節と同様に、文脈上他の意味に解する場合を除き、式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)に対する言及はまた、文脈上他の意味に解する場合を除きそのすべての実施形態、サブグループ、サブセットを包含する。
【0234】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物は、式(10)の化合物
【化18】
【0235】
またはその反応性誘導体(酸クロリドなど)と、式(11)の化合物
【化19】
【0236】
とをアミド形成条件下で反応させることにより調製してもよい。
【0237】
例えば、式(10)の化合物を、アミド結合またはペプチド結合の形成に一般に使用される種類のアミドカップリング試薬の存在下で、式(11)の化合物と反応させてもよい。このような試薬の例としては、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(シーハン(Sheehan)ら、「米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.)」、1955年、77、1067)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(本明細書ではEDCまたはEDACと呼ぶが、当技術分野ではEDCIおよびWSCDIとしても知られる)(シーハン(Sheehan)ら、「ジャーナル・オブ・オーガニックケミストリー(J. Org. Chem.)」、1961年、26、2525)、ウロニウム系カップリング剤、例えば、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、およびホスホニウム系カップリング剤、例えば、1−ベンゾ−トリアゾリルオキシトリス−(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(カストロ(Castro)ら、「テトラへドロンレターズ(Tetrahedron Letters)」、1990年、31、205)が挙げられる。カルボジイミド系カップリング剤は、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(カルピノ(L.A. Carpino)、「米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.)」、1993、115、4397)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(ケーニッヒ(Konig)ら、「ケミシェベリヒテ(Chem. Ber.)」、103、708、2024〜2034)と併用するのが有利である場合がある。好ましいカップリング試薬としては、EDC(EDAC)およびDCCとHOAtまたはHOBtとの組み合わせが挙げられる。
【0238】
1つの特定のカップリング試薬は、HOBtと組み合わせたEDCを含む。
【0239】
カップリング反応は、典型的には、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリジンなどの非水性非プロトン性溶媒中、あるいは場合によって1種以上の混和性補助溶媒を伴ってもよい水性溶媒中で行われる。反応は室温で行われてもよく、または、反応物がそれほど反応性を有さない場合には、適切に上昇させた温度(例えば、100℃まで、より典型的には約80℃まで)で行われる。反応は非干渉塩基、例えばトリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンの存在下で行ってもよい。
【0240】
あるいは、カルボン酸(10)は、まず酸クロリドなどの反応性誘導体に変換され、次いで式(11)のイソインドリン化合物と反応させてもよい。酸クロリドは、カルボン酸を塩化チオニルで処理することにより、または、触媒量のジメチルホルムアミドの存在下で塩化オキサリルとの反応とにより、または、上記酸のカリウム塩を塩化オキサリルと反応させることにより調製してもよい。酸クロリドは次いで、トリエチルアミンなど非干渉性塩基の存在下で式(11)の化合物と反応させてもよい。反応は、ジオキサンなどの極性溶媒中にて室温くらいで行ってもよい。
【0241】
式(11)の化合物は、WO2006/109085に記載の方法またはそれに類似の方法により調製してもよい。
【0242】
式(10)の化合物は、式(12)のエステル化合物の加水分解により調製してもよい:
【化20】
【0243】
式中ALKはメチルまたはエチル基、好ましくはメチル基である。エステル(12)の加水分解は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を用いて水溶液またはアルコール(例えば、メタノール)水溶液中で行ってもよい。加水分解は、典型的には、加熱しながら、例えば、水溶液の還流温度まで行われる。
【0244】
式(12)の化合物は、本明細書の実施例の節における実施例中に記載する様々なアルキル化およびアシル化反応によって式(13)のレゾルシノール誘導体から調製してもよい。
【化21】
【0245】
例えば、R
1が水素である式(12)の化合物を得るため、式(13)の化合物中の4−ヒドロキシル基を、塩基の存在下で式PG
2−L
1の化合物(ここでPG
2は除去可能な保護基であり、L
1はハロゲンなどの脱離基である)と反応させて選択的に保護してもよく、中間体(14)が得られる。
【化22】
【0246】
好ましい保護基PG
2はベンジルである。ベンジルオキシ基としての4−ヒドロキシル基の保護は、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩のような塩基の存在下でアセトニトリルなど極性非プロトン性溶媒中で、1当量をわずかに超える臭化ベンジルと式(13)の化合物を反応させることにより達成してもよい。反応は室温で行ってもよい。ベンジル保護基の他の選択肢として、アセトニトリル中にて炭酸カリウム存在下でほぼ1当量の塩化メトキシメチルと式(13)の化合物とを反応させることにより4−ヒドロキシル基をメトキシメトキシ基として保護してもよい。
【0247】
式(14)の化合物は、次いで、L
2がハロゲンなどの脱離基である式R
2−L
2の化合物と反応させてもよいし、または硫酸ジメチルなどのアルキル化剤と反応させてもよく、式(15)の化合物が得られる。
【化23】
【0248】
式(14)の化合物の反応物は、炭酸カリウムなどの塩基の存在下でアセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中にて、式R
1−L
2の化合物またはアルキル化剤と反応させてもよい。
【0249】
保護基PG
2は、次いで、(例えば、ベンジル基の場合にはパラジウム炭素上での水素化によって)除去してもよく、R
2が水素である式(12)の化合物が得られる。
【0250】
PG
2がメトキシメチル基である場合は、PG
2はその場所に残されてもよいし(したがって、R
1およびR
2が異なる中間体化合物(12)が得られる)、または、メタノールなどアルコール水溶液中で塩酸などの酸との反応により除去されてもよい。
【0251】
R
1が水素である式(12)の化合物を得るため、式(13)の化合物を、L
2がハロゲンなどの脱離基であるほぼ1当量の式R
2−L
2の化合物と反応させてもよいし、または硫酸ジメチルなどのほぼ1当量のアルキル化剤と反応させてもよい。反応は、式(14)の化合物の調製に関して上に使用記載した条件と類似の条件下で行ってもよい。
【0252】
R
1=R
2でありいずれも水素以外である式(12)の化合物を調製するため、式(13)の化合物を、R=R
1=R
2でありL
2がハロゲンなどの脱離基であるほぼ2当量の式R−L
2の化合物と反応させてもよいし、または硫酸ジメチルなどのほぼ1当量のアルキル化剤と反応させてもよい。
【0253】
式(13)の化合物は、エタノール、メタノール、またはそれらの混合物などのアルコール溶媒中にてパラジウム炭素上で、式(16)の化合物の水素化により調製してもよい。
【化24】
【0254】
式(16)の化合物は、WO2006/109085に記載の方法に従って調製してもよく、特にWO2006/109085の84ページの調製B5を参照されたい。
【0255】
前述の方法は、R
1および/またはR
2が置換されていてもよいアルキルまたはアルケニル基である化合物の調製に特に適している場合がある。
【0256】
式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物はまた、式(17)の化合物を基R
1および/またはR
2を導入するのに適した一種以上の試薬と反応させることにより調製してもよい。
【化25】
【0257】
例えば、R
1および/またはR
2がC(O)NR
4R
5であり、ここでR
4およびR
5がいずれもC
1−4アルキルであるか、またはNR
4R
5が4〜7員の飽和ヘテロ環を形成する式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、および(5)の化合物を調製するため、式(17)の化合物を、テトラヒドロフラン(THF)などの極性非プロトン性溶媒中にて、トリエチルアミンまたはN,N−4−ジメチルアミノ−ピリジンなどの非干渉性の塩基の存在下で、式Cl−C(O)NR
4R
5の化合物と反応させてもよい。反応は、適度に加熱しながら(例えば、50℃〜100℃の温度まで)行ってもよい。2当量以上の式Cl−C(O)NR
4R
5の化合物を使用する場合、R
1およびR
2がいずれもC(O)NR
4R
5である式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物が形成される。
【0258】
所望であれば、水酸化ナトリウムのメタノール水溶液などのアルカリ金属水酸化物と加熱することにより、2個の基C(O)NR
4R
5の一方を除去してもよく、分取HPLCにより分離され得るモノ−ヒドロキシ位置異性体の混合物が得られる。得られたモノ−ヒドロキシ化合物を、次いで、異なる基R
1またはR
2を導入するのに適した一種以上の試薬で処理してもよい。例えば、R
1およびR
2の一方が基C(O)NR
4R
5であり他方が水素である化合物は、式R
6OC(O)OR
6の炭酸ジアルキル(ジ−tert−ブチル−炭酸など)と反応させてもよく、R
1およびR
2の一方がC(O)NR
4R
5であり他方がC(O)OR
6(ここでR
6はC
1−4アルキル(例えば、tert−ブチル)である)である式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(2)、(3)、(4)、または(5)の化合物が得られる。炭酸ジアルキルとの反応は、典型的には、THFなどの極性非プロトン性溶媒中にて、N,N−4−ジメチルアミノピリジンなどの非干渉性の塩基の存在下で、通常、例えば、50℃〜100℃の温度まで加熱することで行う。
【0259】
あるいは、R
1およびR
2の一方が基C(O)NR
4R
5であり他方が水素である化合物は、硫酸ジメチルまたはメトキシメチルクロリドなどのアルキル化剤と反応させてもよく、R
1およびR
2の一方がC(O)NR
4R
5であり他方が置換されていてもよいアルキル基である式(4)または(5)の化合物が得られる。
【0260】
R
1およびR
2がいずれもC(O)OR
6である化合物は、上記と同様または類似の条件下で少なくとも2当量のR
6OC(O)OR
6と反応させることにより、式(17)の化合物から調製してもよい。
【0261】
R
1およびR
2がいずれもC(O)R
6である化合物は、THFなどの極性非プロトン性溶媒中にてトリエチルアミンおよび/またはN、N−4−ジメチルアミノピリジンなどの非干渉性の塩基の存在下で、少なくとも2当量のCl−C(O)OR
6と反応させることにより、式(17)の化合物から調製してもよい。反応は、典型的には室温で行われる。
【0262】
式(17)の化合物は、WO2006/109085(PCT/GB2006/001382)に記載の方法により調製されてもよく、当該文献の内容は参照により本書に援用される。特に、123ページの実施例36、125ページの実施例42、128ページの実施例50、137ページの実施例55、143ページの実施例61、143ページの実施例63、および145ページの実施例68を参照されたい。
【0263】
上記の手法の多くは当業者に周知であり、アルキル化、アシル化、官能基相互変換の例、ならびにこのような変換を行うための試薬および条件は、例えば、「機能化学特論(Advanced Organic Chemistry)」、ジェリーマーチ(Jerry March)、第4版、119、ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク;「フィーザーの有機合成試薬(Fiesers' Reagents for Organic Synthesis)」、第1〜17巻、ジョンワイリー、メアリーフィーザー(Mary Fieser)編(ISBN:0−471−58283−2);および「有機合成(Organic Syntheses)」、第1〜8巻、ジョンワイリー、ジェレミア P.フリーマン(Jeremiah P.Freeman)編(ISBN:0−471−31192−8)に見出すことができる。
【0264】
上記した反応のいくつかでは、分子の望まない位置で反応が起こらないように1つまたは複数の基を保護する必要のある場合がある。保護基の例ならびに官能基を保護および脱保護する方法は、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(グリーン(T. Green)およびワッツ(P. Wuts);第3版、ジョンワイリー&サンズ、1999年)に見出すことができる。
【0265】
新規中間体
製造中間体(10)、(12)、(14)、および(15)の多くは新規なものであり、これら自体本発明のさらなる態様を成す。
【0266】
したがって、本発明はまた、本明細書で規定する式(10)または式(12)または式(14)または式(15)の化合物である新規な製造中間体を提供するが、化合物である2,4−ジメトキシ−5−イソプロピル安息香酸メチルエステルおよび2,4−ジメトキシ−5−イソプロピル安息香酸は除く。
【0267】
特定の新規製造中間体化合物は下に示す通りである:
【化26】
【0268】
精製方法
本発明の化合物は、当業者に周知の方法により単離し精製することができ、そのような方法の例としては、カラムクロマトグラフィー(例えば、フラッシュクロマトグラフィー)およびHPLCなどのクロマトグラフ法が挙げられる。分取LC−MSは、本明細書に記載する化合物のような有機小分子の精製に用いられる標準的で有効な方法である。液体クロマトグラフィー(LC)および質量分析(MS)の方法には、粗物質のよりよい分離とMSによるサンプルの検出の向上をもたらすために変更を加えてもよい。分取勾配LC法の至適化には、カラム、揮発性溶離剤および改質剤、ならびに勾配の変更を含む。分取LC−MS法を至適化し、その後それを化合物の精製に用いるための方法は当技術分野で公知のものである。このような方法は、ローゼントレター(Rosentreter U)、フーバー(Huber U.);分取LC/MSにおける至適部分採取(Optimal fracion collecting in preparative LC/MS);「ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J. Comb. Chem.)」;2004年;6(2)、159〜64およびリースター(Leister W)、ストラウス(Strauss K)、ビスノスキ(Wisnoski D)、ジャオ(Zhao Z)、リンズリー(Lindsley C.)、化合物ライブラリの予備精製および解析的分析のためのカスタムハイスループット分取液体クロマトグラフィー/質量分析計プラットフォームの開発(Development of a custom high-throughput preparative liquid chromatography/mass spectrometer platform for the preparative purification and analytical analysis of compound libraries);「ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J. Comb. Chem.)」;2003年;5(3);322〜9に記載されている。
【0269】
あるいは、逆相法の代わりに、順相分取LCに基づく方法を用いてもよい。ほとんどの分取LC−MS系では逆相LCと揮発性酸性改質剤を用いるが、これはこのアプローチが小分子の精製に極めて有効であり、これらの溶離剤が陽イオンエレクトロスプレー質量分析に適合しているからである。他のクロマトグラフィー溶液、上記の分析法で概説したような、例えば順相LC、あるいは緩衝移動相、塩基性改質剤などを代わりに用いて化合物を精製してもよい。
【0270】
医薬製剤
プロドラッグ化合物は単独で投与され得る一方で、1種以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、担体、アジュバント、希釈剤、フィラー、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知の他の物質)と、任意で他の治療または予防剤(例えば、化学療法に伴う副作用のいくつかを減少させるまたは緩和する薬剤)と一緒に、少なくとも1種の本発明の活性化合物を含有する医薬組成物(例えば、製剤)として提供することが好ましい。このような薬剤の具体例としては、制吐剤、化学療法に伴う好中球減少の持続性を防止または減少させ、赤血球レベルまたは白血球レベルの減少から生じる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ならびに胃腸毒性を最小限に抑える薬剤が挙げられる。
【0271】
したがって本発明はさらに、上に規定した医薬組成物ならびに、上に規定した少なくとも1種の活性化合物と、本明細書で規定する1種以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または他の物質とを会合(混合)させることを含む医薬組成物の製造方法を提供する。本明細書では「賦形剤」なる語は、活性化合物(すなわち、本件ではプロドラッグ化合物)とは別に任意の医薬組成物の成分を指す。
【0272】
本明細書において「薬学上許容される」なる語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なく、被験体(例えば、ヒト)の組織との接触に用いるのに適しており、妥当な利益/リスク比で釣り合いがとれた化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。賦形剤(例えば、担体など)などの各々はまた、その製剤の他の成分と適合するという点で「許容される」ものでなければならない。
【0273】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本明細書で規定する本発明の化合物およびそのサブグループを医薬組成物の形態で提供する。
【0274】
医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、点眼投与、点耳投与、直腸投与、膣内投与、または経皮投与に適したいずれの形態であってもよい。当該組成物が非経口投与を意図したものである場合、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与用に処方することもできるし、あるいは注射、点滴(infusion)、または他の送達手段により標的臓器または組織に直接送達するために処方してもよい。送達はボーラス注射、短時間点滴、または長時間点滴によるものであってもよく、また、受動的送達であっても、または適切な点滴ポンプの利用を介したものでもよい。
【0275】
非経口投与に適した医薬製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有していてもよい水性および非水性無菌注射液;ならび懸濁化剤および増粘剤を含有していてもよい水性および非水性無菌懸濁剤が挙げられる。このような医薬製剤は、例えば、ストライクリー(R.G. Strickly)、経口および注射製剤における賦形剤の溶解(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulation)、「ファーマシューティカルリサーチ(Pharmaceutical Research)」、第21巻2号、2004年、201〜230ページに記載されている。さらに、上記医薬製剤は、共溶媒、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、乳化剤(エマルジョン製剤を形成および安定化するため)、リポソーム形成のためのリポソーム成分、高分子ゲルを形成するためのゲル化可能なポリマー、凍結乾燥保護剤、ならびにとりわけ有効成分を可溶形態で安定化させるための薬剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする薬剤の組み合わせを含有してもよい。該製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供することもできるし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。
【0276】
イオン性の薬剤分子は、その薬剤のpKaが製剤のpH値と十分に離れている場合には、pH調整により所望の濃度まで可溶化させてもよい。許容される範囲は、静脈内投与および筋肉内投与ではpH2〜12であるが、皮下ではpH2.7〜9.0である。溶液のpHは塩形態の薬剤、塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの強酸/塩基、緩衝剤溶液(限定されるものではないが、グリシン、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(TRIS)、または炭酸塩が挙げられる)のいずれかにより制御される。
【0277】
注射製剤では多くの場合、水溶液と水溶性有機溶媒/界面活性剤(すなわち、共溶媒)との組み合わせが用いられる。注射製剤に用いられる水溶性有機溶媒および界面活性剤としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;ファーマソルブ(Pharmasolve))、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ソルトール(Solutol)HS15、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベート80が挙げられる。このような製剤は、必ずというわけではないが、通常、注射前に希釈される。
【0278】
プロピレングリコール、PEG300、エタノール、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベート80は市販の注射製剤に用いられている、完全に水混和性の有機溶媒および界面活性剤であり、互いに併用され得る。得られる有機注射製剤は通常、静脈内ボーラスまたは静脈内点滴前に少なくとも2倍希釈される。
【0279】
あるいは、水に対する溶解度の上昇はシクロデキストリンとの分子複合体形成によって達成されてもよい。
【0280】
リポソームは外側の脂質二重膜および内側の水性核からなる、閉じられた球状小胞であり、全体の直径が100μm未満である。疎水性の程度によって、中程度の疎水性薬剤であれば、薬剤をリポソーム内に封入またはインターカレーションした場合に、リポソームにより可溶化させてもよい。疎水性薬剤はまた、薬剤分子を脂質二重膜の一体部分とした場合にも、リポソームにより可溶化されてもよく、この場合、この疎水性薬剤は脂質二重膜の脂質部分に溶解される。典型的なリポソーム製剤はリン脂質を5〜20mg/mLで含む水、等張剤、pH5〜8の緩衝液、および必要に応じてコレステロールを含む。
【0281】
製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプル、バイアル、充填済みシリンジで提供してもよいし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。
【0282】
医薬製剤は、式(I)の化合物またはその酸付加塩を凍結乾燥させることによる調製してもよい。凍結乾燥とは、組成物をフリーズドライする手順をさす。よって、本明細書においてフリーズドライと凍結乾燥は同義語として用いられる。典型的な方法としては、化合物を可溶化させ、得られた製剤を明澄化し、ろ過除菌し、凍結乾燥に適当な容器(例えば、バイアル)に無菌的に移すことである。バイアルの場合には、リオストッパー(lyo-stopper)で軽く栓をする。製剤は標準条件下で凍結するまで冷却し、凍結乾燥を行った後に密閉キャップをしてもよく、安定な凍結乾燥製剤を形成される。この組成物は典型的には残留水分含量が低く、例えば、凍結乾燥物の重量の5重量%未満、例えば1重量%未満である。
【0283】
凍結乾燥製剤は、他の賦形剤、例えば、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤および張力調整剤を含んでもよい。典型的な緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩およびグリシンが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオ尿素、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、およびエチレンジアミン四酢酸塩が挙げられる。保存剤としては、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。必要に応じて張力調整のために、上述の緩衝剤ならびにデキストロースおよび塩化ナトリウムを使用してもよい。
【0284】
凍結乾燥技術では一般に、プロセスを容易にするため、かつ/または凍結乾燥塊に嵩および/または機械的強度をもたせるために増量剤を用いる。増量剤は、上記化合物またはその塩とともに凍結乾燥した際に物理的に安定な凍結乾燥塊を生じ、より好適な凍結乾燥プロセスとし、さらに、迅速かつ完全な再構成をもたらす、水溶性の高い固体粒子希釈剤を意味する。増量剤はまた溶液を等張とするためにも利用することができる。
【0285】
水溶性増量剤は、凍結乾燥に典型的に用いられる薬学上許容される不活性の固体材料のいずれのものであってもよい。このような増量剤としては、例えば、グルコース、マルトース、スクロースおよびラクトースなどの糖類、ソルビトールまたはマンニトールなどのポリアルコール、グリシンなどのアミノ酸、ポリビニルピロリジンなどのポリマー、ならびにデキストランなどの多糖類が挙げられる。
【0286】
活性化合物の重量に対する増量剤の重量比は典型的には、約1〜約5の範囲、例えば、約1〜約3、例えば、約1〜2の範囲である。
【0287】
あるいは、医薬製剤は、濃縮および適当なバイアルで密封されていてもよい溶液の形態で提供されてもよい。投与形態の滅菌は、製剤過程の適当な段階で、ろ過によるか、またはバイアルとその内容物とをオートクレーブ処理することにより行ってもよい。供給された製剤は、例えば、適切な無菌点滴パック中に希釈するなど、送達前にさらなる希釈または調製が必要な場合がある。
【0288】
即時調合注射溶液および懸濁液は無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0289】
本発明の1つの実施形態では、医薬組成物は、例えば注射または点滴による静注投与に適した形態である。
【0290】
他の実施形態では、医薬組成物は皮下(s.c.)投与に適した形態である。
【0291】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は経口投与に適している。
【0292】
経口投与に適した医薬投与形としては、錠剤、カプセル剤(ハードシェルまたはソフトシェル)、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、ウエハー剤またはパッチ剤(バッカルパッチ剤など)が挙げられる。
【0293】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、公知の技術にしたがって処方されてもよい。例えば、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、マックパブリッシング社(Mach Publishing Company)、イーストン、ペンシルベニア州、米国を参照のこと。
【0294】
したがって、錠剤組成物は、単位用量の活性化合物を、糖もしくは糖アルコール(例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール、もしくはマンニトール)などの不活性希釈剤または担体、および/あるいは非糖由来希釈剤(炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはセルロースもしくはその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース(MCC)、およびコーンスターチなどのデンプンなど)とともに含有してもよい。錠剤はまた、標準的な成分、例えば、結合剤および造粒剤、例えば、ポリビニルピロリドン、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤(例えば、クエン酸塩/重炭酸塩混合物)を含有してもよい。このような賦形剤は公知であり、ここでは詳細に記載する必要はない。
【0295】
カプセル製剤は、硬質ゼラチンの種類であっても軟質ゼラチンの種類であってもよく、固体、半固体、または液体状の有効成分を含有していてもよい。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の均等物から形成されていてもよい。
【0296】
医薬組成物(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、胃液との接触に際して薬剤を放出するように(即時放出性組成物)もしくは長期間にわたって制御された様式で放出するように(制御放出組成物)または胃腸管の特定部位との接触に際して放出するように設計してもよい。
【0297】
固形投与形態(例えば、錠剤、カプセル剤など)はコーティングを施しても施さなくともよいが、典型的には、例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ポリマー、ワックス、またはワニス)または放出制御コーティングを有する。当該コーティング(例えば、オイドラギット(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の位置で有効成分が放出されるように設計され得る。したがって、コーティングは胃腸管内の特定のpH条件下で分解するように選択され得、これにより選択的に胃においてまたは回腸、十二指腸、もしくは結腸において化合物を放出する。あるいはまたはさらに、コーティングは、苦味のある薬剤など不快な味を消すために矯味剤として使用されてもよい。コーティングは、不快な味を消す手助けをする糖分または他の物質を含んでもよい。
【0298】
コーティングの代わりにまたはコーティングに加えて、放出制御剤、例えば、胃腸管において酸性度またはアルカリ性度が変化する条件下で化合物を選択的に放出するようにすることができる放出遅延剤を含んでなる固体マトリックス中に薬剤を提供してもよい。あるいは、マトリックス材料または放出遅延コーティングは、投与形態が胃腸管を通過するにつれて実質的に連続的に崩壊する崩壊性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態であってもよい。さらなる別法としては、活性化合物は、化合物の放出の浸透圧制御をもたらす送達系において処方されてもよい。浸透圧放出性および他の遅延放出性または徐放性製剤は当業者に周知の方法にしたがって製造してもよい。
【0299】
医薬組成物は、活性成分を約1%から約95%、好ましくは約20%から約90%含む。本発明による医薬組成物は、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、タブレット、またはカプセル形態、特にタブレットおよびカプセル形態などの単位用量形態であってもよい。
【0300】
当業者であれば、製剤に使用するのに適切な量の成分を選ぶための専門的な知識を有することになる。例えば、錠剤およびカプセル剤は、典型的には、崩壊剤を0〜20%、滑沢剤を0〜5%、流動助剤を0〜5%、および/または充填剤もしくは増量剤を0〜100%(薬剤用量に応じて)含む。それらはまた、高分子結合剤を0〜10%、抗酸化剤を0〜5%、顔料を0〜5%を含んでいてもよい。遅延放出性錠剤は、さらに重合体を0〜100%(薬剤用量に応じて)含む。錠剤またはカプセル剤の被覆膜は、典型的には、0〜10%の重合体、0〜3%の顔料、および/または0〜2%の可塑剤を含んでいる。
【0301】
非経口製剤は、典型的には、緩衝液を0〜20%、共溶媒を0〜50%、および/または注射用蒸留水(WFI)を0〜100%(薬剤用量に応じておよび凍結乾燥した場合)を含む。筋肉内のデポー用製剤はまた、油を0〜100%含んでもよい。
【0302】
経口投与用医薬組成物は、有効成分と固体担体とを組み合わせ、所望であれば得られた混合物を粒状にし、所望または必要であれば適当な賦形剤の添加後、混合物を錠剤、糖衣錠コアまたはカプセルへ加工することによって得られ得る。また、経口投与用医薬組成物を、一定量の有効成分を拡散させたり放出させたりする可塑性の担体に組み入れることも可能である。
【0303】
医薬製剤は単一のパッケージ、通常はブリスターパック中に全コースの治療薬を含んだ「患者パック」として患者に提供してもよい。患者パックは、調剤師がバルク供給から患者分の医薬を分配する従来の処方箋調剤に優る利点があり、患者は患者パックに入っている、患者の処方箋調剤では見ることができない添付文書をいつでも見ることができる。添付文書を包含しておけば、患者が医師の指示をよりよく遵守することが示されている。
【0304】
局所使用のための組成物としては、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。このような組成物は、公知の方法にしたがって処方してもよい。
【0305】
非経口投与用の組成物は、典型的には無菌水性もしくは油性溶液または微細懸濁液として提供されるか、あるいは注射用無菌水で即時構成できる微細無菌粉末の形態で提供してもよい。
【0306】
直腸投与または膣内投与用の製剤の例としては、ペッサリーおよび坐剤が挙げられ、これらは、例えば、活性化合物を含有する付形成形材またはワックス材から形成することができる。したがって、単位用量の坐剤またはペッサリーは、有効成分と1種以上の従来の固体担体(例えば、コカバター)とを混合することおよび得られる混合物を付形することにより調製されてもよい。成形可能なワックス材のさらなる例としては、高分子量ポリアルキルエングリコール(例えば、高分子量ポリエチレングリコール)などのポリマーが挙げられる。
【0307】
あるいは、膣内投与の場合、製剤は、有効成分と場合により1種以上の賦形剤または希釈剤とを含浸させたタンポンとして提供してもよい。直腸および膣内投与に適した他の製剤としては、クリーム、ゲル、発泡体、ペースト、およびスプレーが挙げられる。
【0308】
局所組成物のさらなる例としては、活性成分と場合により1種以上の賦形剤または希釈剤とを含浸させた包帯および絆創膏などの包帯材が挙げられる。使用され得る担体としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはグリセロールなどの多価アルコールが挙げられる。適切な賦形剤は、当該技術分野において公知の適切なものである。
【0309】
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアゾールディスペンシング装置を用いた標準的な形態で投与してもよい。このような装置は周知である。吸入投与用の粉末製剤は、典型的には、活性化合物をラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに含む。
【0310】
本発明の化合物は、一般に単位投与形態で提供され、それ自体、所望の生物活性レベルを与えるのに十分な化合物を典型的に含んでいる。例えば、製剤は、有効成分を1ナノグラムから2グラムまで含んでいてもよい。この範囲内で、化合物の特定の部分範囲としては、1マイクログラム〜2グラム、または1マイクログラム〜1グラム、または0.1ミリグラム〜2グラムの有効成分(より通常には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム〜2ミリグラムの有効成分)である。
【0311】
経口投与用組成物に関しては、単位投与形態は、1ミリグラム〜2グラム、より典型的には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜1グラム、例えば、100ミリグラム〜1グラムの活性化合物を含んでいてもよい。
【0312】
活性化合物は、投与を必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与されることになる。
【0313】
治療方法
本明細書で規定する本発明の化合物およびサブグループは、Hsp90クライアントタンパク質により仲介される種々の病態もしくは症状の予防または治療に有用となることが予想される。そのような病態および症状の例は上述している。
【0314】
本発明のプロドラッグ化合物の利点は、経口投与が可能ということである。本発明の好ましいプロドラッグ化合物は、経口経路により投与された場合、増強したバイオアベイラビリティー(親活性化合物と比較して)をもたらす。
【0315】
上記化合物は、一般に、そのような投与を必要とする被験体(例えば、ヒトまたは動物の患者、好ましくはヒト)に対して投与される。
【0316】
上記化合物は、典型的には、治療上または予防上有用であり一般に毒性のない量で投与されることになる。しかしながら、特定の状況において(例えば、生命を脅かす疾患の場合には)、本発明の化合物を投与する利点は、いかなる毒性作用または副作用の不利益に勝ることがあり、この場合には化合物を毒性を伴う量で投与することが望ましいと考えられる可能性がある。
【0317】
上記化合物は、有用な治療上の効果を維持するために長期間にわたって投与してもよいし、または短期間のみ投与してもよい。あるいは、継続的な様式、または持続的で間欠的な投薬をもたらすような様式(例えば、パルス的な様式)で投与してもよい。
【0318】
式(I)の化合物の典型的な1日量は、体重1キログラムあたり100ピコグラム〜100ミリグラム、より典型的には体重1キログラムあたり5ナノグラム〜25ミリグラム、そしてより通常には体重1キログラムあたり10ナノグラム〜15ミリグラム(例えば、10ナノグラム〜10ミリグラム、およびより典型的には1キログラムあたり1マイクログラム〜1キログラムあたり20ミリグラム、例えば、1キログラムあたり1マイクログラム〜10ミリグラム)の範囲であり得るが、必要であればより高用量またはより低用量で投与してもよい。当該化合物は、例えば、毎日、または2もしくは3もしくは4もしくは5もしくは6もしくは7もしくは10もしくは14もしくは21もしくは28日毎に繰り返し投与してもよい。
【0319】
1つの特定の服薬スケジュールでは、患者に1日に1時間から4時間、10日間まで、特に1週間に2日間まで、3で2週間毎に化合物の点滴を施し、この処置を所望の間隔(例えば、3〜6週間、特に3週間毎)で繰り返す。
【0320】
より具体的には、患者に3週間の間に2週間、週に2回、1日に1時間化合物の点滴を施し、この処置を3週間おきに繰り返してもよい。
【0321】
あるいは、患者に、化合物の点滴を1日1時間、週に2回、4週間のうち3週間施し、この治療を4週間毎に繰り返してもよい。
【0322】
他の特定の服薬スケジュールでは、患者に1日に1時間、最大10日間、特に1週間に最大5日間化合物の点滴を施し、この処置は所望の間隔(例えば、2〜4週間、特に3週間毎)で繰り返されることになる。
【0323】
より具体的には、患者に1日に1時間、5日間の期間化合物の点滴を施し、この処置を3週間毎に繰り返してもよい。
【0324】
他の特定の投薬スケジュールでは、患者に30分〜1時間にわたって点滴を施し、続いて様々な長さ(例えば、1〜5時間、例えば、3時間)の維持点滴を施す。
【0325】
さらなる特定の投薬スケジュールでは、患者に12時間〜5日間の期間の継続的な点滴、特に24時間〜72時間の継続的な点滴を施す。
【0326】
しかしながら最終的には、投与される化合物の量および使用される組成物のタイプは、治療されている疾病または生理的な症状の性質に相応し、医師の裁量によることとなる。
【0327】
本明細書で規定する化合物は、単一の治療剤として投与してもよいし、特定の病態(例えば、上に規定した癌などの新生物疾患)の治療のための1種以上の他の化合物との併用療法において投与してもよい。
【0328】
本発明の化合物と共に投与してもよい(同時にまたは異なる時間間隔であるかどうかにかかわらず)、他の治療用薬剤または治療の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
・トポイソメラーゼI阻害剤
・代謝拮抗剤
・チューブリン標的化剤
・DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤
・アルキル化剤
・モノクローナル抗体
・抗ホルモン
・シグナル伝達阻害剤
・プロテアソーム阻害剤
・DNAメチルトランスフェラーゼ
・サイトカインおよびレチノイド
・クロマチン標的化療法、例えば、HDACまたはHATモジュレーター
・放射線療法、ならびに、
・他の治療剤または予防薬;例えば、化学療法に伴う副作用のいくつかを減少または緩和する薬剤。そのような薬剤の具体的な例としては、制吐剤、および化学療法に伴う好中球減少の持続性を防止または減少させる薬剤、および赤血球レベルまたは白血球レベルの減少から生じる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が挙げられる。また、ビスフォスフォネート剤(例えば、ゾレドネート、パミドロネートおよびイバンドロネート)などの骨吸収を阻害する薬剤、炎症反応を抑制する薬剤(デキサメタゾン、プレドニゾンおよびプレドニゾロンなど)、および天然ホルモンのソマトスタチンの薬理学的特性を模倣する薬理学的特性を備えた長時間作用性のオクタペプチドである酢酸オクトレオチドを含む、脳ホルモンソマトスタチンの合成型のような、先端肥大症患者において成長ホルモンおよびIGF−Iの血中濃度を減少させるために使用される薬剤が挙げられる。さらには、ロイコボリン(葉酸レベルを減少させる薬剤に対する解毒剤として使用される)またはフォリン酸それ自体などの薬剤、および浮腫および血栓塞栓症発作を含む副作用の治療のために使用することができる酢酸メゲストロールのような薬剤が挙げられる。
【0329】
本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて投与され得る他の治療剤としては、PCT/GB2007/003864(公開番号WO/2008/044029)に記載の治療剤が挙げられ、この文献の内容は参照により本書に援用される。
【0330】
好ましくは、本発明の組み合わせで用いる他の治療剤は、以下のクラスから選ばれる:
1.ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン修飾剤(コルチコステロイド、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよびGNRAを含む);
2.サイトカインおよびサイトカイン活性化剤;
3.レチノイドおよびレキシノイド
4.モノクローナル抗体(例えば、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体);
5.カンプトテシン化合物および他のトポイソメラーゼI阻害剤;
6.代謝拮抗剤;
7.ビンカアルカロイドおよび他のチューブリン標的化剤;
8.タキサン;
9.エポチロン;
10.白金化合物;
11.DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤(アントラサイクリン誘導体を含む);
12.アルキル化剤(アジリジン、ナイトロジェンマスタードおよびニトロソウレアアルキル化剤を含む);
13.シグナル伝達阻害剤(PKA/PKB阻害剤およびPKB経路の阻害剤を含む);
14.CDK阻害剤;
15.COX−2阻害剤;
16.HDAC阻害剤;
17.選択的免疫反応モジュレーター;
18.DNAメチル基転移酵素阻害剤;
19.プロテアソーム阻害剤;
20.オーロラ阻害剤;
21.Hsp90阻害剤(補助Hsp90阻害剤を含む);
22.チェックポイント標的剤;
23.DNA修復阻害剤
24.Gタンパク質共役受容体阻害剤の阻害剤
25.他の治療剤または予防薬;例えば、化学療法に伴う副作用のいくつかを減少または緩和する薬剤。そのような薬剤の具体的な例としては、制吐剤、ならびに化学療法に伴う好中球減少の持続性を防止または減少させる薬剤、ならびに赤血球レベルまたは白血球レベルの減少から生じる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が挙げられる。また、ビスフォスフォネート剤(例えば、ゾレドネート、パミドロネート、およびイバンドロネート)などの骨吸収を阻害する薬剤、炎症反応を抑制する薬剤(デキサメタゾン、プレドニゾン、およびプレドニゾロンなど)、および天然ホルモンのソマトスタチンの薬理学的特性を模倣する薬理学的特性を備えた長時間作用性のオクタペプチドである酢酸オクトレオチドを含む、脳ホルモンソマトスタチンの合成型のような、先端肥大症患者において成長ホルモンおよびIGF−Iの血中濃度を減少させるために使用される薬剤が挙げられる。さらには、ロイコボリン(葉酸レベルを減少させる薬剤に対する解毒剤として使用される)またはフォリン酸それ自体などの薬剤、および浮腫および血栓塞栓症発作を含む副作用の治療のために使用することができる酢酸メゲストロールのような薬剤が挙げられる。
【0331】
本明細書では、本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用され得る「他の治療剤」(1)〜(24)を便宜上「補助化合物」と呼ぶ場合がある。
【0332】
上記治療剤(補助化合物)(1)〜(24)のそれぞれの種類に関する定義、生物学的活性、好ましい選択肢、具体的な実施形態、および薬学量は、我々の以前の国際出願であるPCT/GB2007/003864(公開番号WO/2008/044029)で規定した通りであり、この文献の内容は参照により本書に援用される。
【0333】
組み合わせが1種以上の他の補助化合物を含む本発明の実施形態において、当該補助化合物は、好ましくは、クラス(1)(特に、コルチコステロイド)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(16)、(17)、(18)、(22)、および(23)からそれぞれ選ばれる。好ましくは、補助化合物は、上述のクラス(1)〜(24)(例えば、クラス(1)〜(23))からそれぞれ選ばれる。最も好ましくは、1種以上の他の補助化合物は、クラス(1)(特にコルチコステロイド)、(4)、(6)、(8)、(10)、(11)、(12)、(17)、(18)、および(23)からそれぞれ選ばれる。
【0334】
組み合わせが2種以上の補助化合物を含む本発明の実施形態において、当該2種以上の補助化合物は、好ましくは、上述のクラス(1)〜(24)(例えば、クラス(1)〜(23))からそれぞれ選ばれる。
【0335】
組み合わせが2種以上の補助化合物(本発明のプロドラッグ化合物に加えて)を含む本発明のさらなる実施形態は以下の場合が挙げられる:
・レノリダミドおよびサリドマイドの組み合わせ;
・(1)(好ましくはコルチコステロイド)、(12)、および(16)(好ましくはレノリダミドまたはサリドマイド)からそれぞれ選ばれる前述のクラスの2種以上の組み合わせ;
・(1)(好ましくはコルチコステロイド)、(7)、および(11)からそれぞれ選ばれる前述のクラスの2種以上の組み合わせ;
・前述のクラスの2種である(1)(好ましくはコルチコステロイド)および(18)の組み合わせ;
・前述のクラスの2種である(17)および(22)の組み合わせ;
・前述のクラスの2種である(10)および(22)の組み合わせ;
・(1)(好ましくはコルチコステロイド)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(16)、(17)、(18)、(22)、および/または(23)からそれぞれ選ばれる前述のクラスの2種以上の組み合わせ;
・(1)(好ましくはコルチコステロイド)、(4)、(6)、(8)、(10)、(11)、(12)、(17)、(18)、および/または(23)からそれぞれ選ばれる前述のクラスの2種以上の組み合わせ;および
・(1)(好ましくはコルチコステロイド)、(11)、(12)、(16)、および/または(18)からそれぞれ選ばれる前述のクラスの2種以上の組み合わせ;
本発明のプロドラッグ化合物と、白金薬剤、タキソール、タキソテール、ゲムシタビン、ペメトレキセド、マイトマイシン、イホスファミド、ビノレルビン、エルロチニブ、およびベバシズマブとの組み合わせ、あるいは式(I)の化合物と、カルボプラチンおよびタキソールとのまたはシスプラチンおよびゲムシタビンとの組み合わせは、非小細胞肺癌の治療のために特に適している。
【0336】
本発明のプロドラッグ化合物と、5−FU、ロイコボリン、およびCPT11との組み合わせ、あるいは式(I)の化合物と、5−FU、ロイコボリン、およびオキサリプラチンとの組み合わせ(それぞれの組み合わせはベバシズマブと共に)は、結腸癌の治療のために特に適している。
【0337】
乳癌の治療に特に適しているのは、本発明のプロドラッグ化合物と次のものとの組み合わせである:(a)モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブおよびベビシザマブ(bevicizamab))、(b)モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブおよびベビシザマブ)およびタキサン、ならびに(c)代謝拮抗剤(例えば、カペシタビン)およびシグナル伝達阻害剤(例えば、ラパチニブ)。
【0338】
乳癌の治療に適したさらなる組み合わせは、本発明のプロドラッグ化合物と、5−FU、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドとの組み合わせ、あるいは本発明のプロドラッグと、特にドキソルビシンおよびシクロホスファミドとの組み合わせである。
【0339】
HER2乳癌の治療に用いられる特定の組み合わせは、本発明のプロドラッグ化合物およびラパチニブを含有する。
【0340】
本発明のプロドラッグ化合物と、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチン、リツキシマブ、およびプレドニゾンとの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫(特に高悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療に特に適している。
【0341】
本発明のプロドラッグ化合物と、シクロホスファミド、ビンクリスチン、リツキシマブ、およびプレドニゾンとの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫(特に低悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療のために特に適している。
【0342】
多発性骨髄腫の治療に特に適するのは、本発明のプロドラッグ化合物と次のものとの組み合わせである:(a)モノクローナル抗体(例えば、インターロイキン6を標的とするもの)、(b)プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、(c)プロテアソーム阻害剤およびコルチコステロイド(例えば、ベルケイドおよびデキサメタゾン)、ならびに(d)コルチコステロイド、アルキル化剤、およびレノリダミド/サリドマイド(例えば、プレドニゾロン、メルファラン、およびサリドマイド)。
【0343】
多発性骨髄腫の治療に適した具体的な組み合わせは、本発明のプロドラッグ化合物と、ビンクリスチン、ドキソルビシン、サリドマイド、およびデキサメタゾンとの組み合わせである。
【0344】
本発明のプロドラッグ化合物と、フルダラビンおよびリツキサマブ(rituxamab)との組み合わせは、慢性リンパ球性白血病の治療に特に適している。
【0345】
黒色腫の治療に特に適しているのは、本発明のプロドラッグ化合物と次のものとの組み合わせである:(a)DNAメチル化酵素阻害剤/低メチル化剤(例えば、テモゾラミド)、(b)アルキル化薬(例えば、ダカルバジンまたはフォテムスチン(fotemustine))、ならびに(c)DNAメチル化酵素阻害剤/低メチル化剤(例えば、テモゾラミド)およびDNA修複阻害剤/PARP阻害剤。
【0346】
消化管間質性腫瘍(GIST)の治療に特に適しているのは、本発明のプロドラッグ化合物と、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、およびスニチニブから選ばれる補助剤との組み合わせである。
【0347】
前立腺癌の治療に特に適しているのは、本発明のプロドラッグ化合物と、ホルモンおよびGタンパク質共役受容体阻害剤との組み合わせである。
【0348】
非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に特に適しているのは、本発明のプロドラッグ化合物と、(a)白金化合物およびタキサン;(b)白金化合物および抗代謝剤;(c)ゲフィチニブおよび/またはセツキシマブとの組み合わせである。
【0349】
NSCLCの治療に使いられる1つの特定の組み合わせは、本発明のプロドラッグと、ゲフィチニブおよび/またはセツキシマブとを含有する。
【0350】
癌(および特に急性骨髄白血病)の治療のため、アントラサイクリン、Ara C(別名:シタラビン)、6−メルカプトプリン、チオプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、ゲムツズマブ・オゾガミシン、および顆粒球コロニー刺激因子からそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。あるいは、当該2種以上の抗癌剤を、アントラサイクリン、Ara C(別名:シタラビン)、ダウノルビシン、イダルビシン、ゲムツズマブ・オゾガミシン、および顆粒球コロニー刺激因子の2種以上からそれぞれ選んでもよい。
【0351】
癌(および特に乳癌)の治療のため、ベバシズマブ、タキサン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、ドキソルビシン、ハーセプチン、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、エピルビシン、およびカペシタビン、特に5−FU、メトトレキサート、およびシクロホスファミド;5FU、ドキソルビシン、およびシクロホスファミド;またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。好ましくは、癌(および特に乳癌)の治療のために、また当該2種以上の抗癌剤を、タキサン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、ドキソルビシン、ハーセプチン、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、エピルビシン、およびカペシタビン、特に5−FU、メトトレキサート、およびシクロホスファミド;5FU、ドキソルビシン、およびシクロホスファミド;またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドからそれぞれ選んでもよい。
【0352】
癌(特に慢性リンパ球性白血病(CLL))の治療のため、アレムツズマブ、クロラムブシル、シクロホスファミド、アルメンツズマブ(almentuzumab)、ビンクリスチン、プレジニゾロン(predinisolone)、フルダラビン、ミトキサントロン、およびリツキシマブ/リツキサマブ、特にフルダラビンおよびリツキサマブからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。好ましくは、癌(特に慢性リンパ球性白血病(CLL))の治療のため、上記2種以上の抗癌剤は、クロラムブシル、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレジニゾロン、フルダラビン、ミトキサントロン、およびリツキシマブ/リツキサマブ、特にフルダラビンおよびリツキサマブからそれぞれ選ばれる。
【0353】
癌(特に慢性骨髄性白血病(CML))の治療のため、ヒドロキシウレア、シタラビン、デサチニブ(desatinib)、ニロチニブ、およびイマチニブからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0354】
癌(特に結腸癌の治療)のため、セツキシマブ、5−フルオロウラシル、パンツマブ(pantumab)、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、ラルチレキセド(raltirexed)、カペシタビン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、CPT11、特に5−フルオロウラシル、ロイコボリン、およびCPT11、あるいはフルオロウラシル、ロイコボリン、およびオキサリプラチンからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0355】
あるいは、癌(特に結腸癌の治療)のため、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、ラルチレキセド、カペシタビン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、CPT11、ならびに特に5−フルオロウラシル、ロイコボリン、およびCPT11、あるいはフルオロウラシル、ロイコボリン、およびオキサリプラチンからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0356】
癌(特に多発性骨髄腫の治療)のため、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、エトポシド、パミドロネート、サリドマイド、ゾレドロネート、およびボルテゾミブ、特にビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾンからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0357】
癌(特に非ホジキンリンパ腫の治療)のため、シクロホスファミド、ドキソルビシン/ヒドロキシダウノルビシン、ビンクリスチン/Onco−TCS(V/O)、プレドニゾロン、メトトレキサート、シタラビン、ブレオマイシン、エトポシド、リツキシマブ/リツキサマブ、フルダラビン、シスプラチン、およびイホスファミド(ifosphamide)、特に高悪性度非ホジキンリンパ腫にはシクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチン、およびプレドニゾン、あるいは低悪性度非ホジキンリンパ腫にはシクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾンからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0358】
癌(特に非小細胞肺癌(NSCLC))の治療のため、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびビノレルビン、特にタキソールおよびカルボプラチン、またはゲムシタビンおよびシスプラチンからそれぞれ選ばれ得る2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0359】
癌(特に卵巣癌)の治療のため、白金化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、ドキソルビシン、リポソームのドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、メルファラン、およびミトキサントロンからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0360】
癌(特に前立腺癌)の治療のため、ミトキサントロン、プレドニゾン、ブセレリン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、酢酸シプロテロン、メゲストロール/メゲストレル、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、ゾレドロン酸、プレドニゾロン、およびタキソテールからそれぞれ選ばれる2種以上の抗癌剤を本発明のプロドラッグ化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0361】
特に好ましい実施形態では、本発明のプロドラッグ化合物は、シスプラチン、ボルテゾミブ、エルロチニブ、パクリタキセル、トラスツズマブ、およびシタラビンから選ばれる1種以上の補助剤と組み合わせて投与される。
【0362】
他の療法剤と組み合わせたHsp90阻害剤の場合、上記2種以上の治療剤は、個別に違う用量スケジュール、かつ異なる経路を通じて投与されてもよい。
【0363】
上記化合物が、1、2、3、4種またはそれ以上の治療剤(好ましくは1または2種、より好ましくは1種)との併用療法で投与される場合は、当該化合物は同時にまたは順次に投与されてもよい。順次に投与される場合、それらは短い間隔で(例えば、5〜10分にわたり)、またはより長い間隔(例えば、1、2、3、4時間またはそれ以上離れて、または必要とされる場合にはさらにより長い期間離れて)で投与されてもよいが、正確な投与レジメンは治療剤の特性に応じて異なる。
【0364】
本発明の化合物はまた、放射線療法、光力学療法、遺伝子療法などの非化学療法的治療;手術および栄養制限食と併用して投与されてもよい。
【0365】
他の化学療法剤との併用療法における使用では、上記化合物および1、2、3、4種またはそれ以上の他の治療剤は、例えば、2、3、4種またはそれ以上の治療剤を含む投薬形態で、一緒に製剤化されてもよい。あるいは、個々の治療剤は個別に製剤化され、キットの形態で一緒に提供されてもよく、場合によってそれらの使用説明書が添付される。
【0366】
当業者であれば、通常の知識により、用いるべき投与レジメンおよび併用療法が分かるであろう。
【0367】
本発明のさらなる態様では、下記のものが提供される:
・(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、L−乳酸塩)とゲフィチニブおよび/またはセツキシマブとを含有する組み合わせ(例えば、非小細胞肺癌の治療で用いるため);
・(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、L−乳酸塩)と、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、およびスニチニブから選ばれる補助剤とを含有する組み合わせ(例えば、消化管間質性腫瘍(GIST)の治療で用いるため);
・(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、L−乳酸塩)とラパチニブとを含む組み合わせ(例えば、HER2乳癌の治療で用いるため);および
・(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、L−乳酸塩)とダウノルビシンおよびイダルビシンから選ばれる補助剤とを含有する組み合わせ(例えば、急性骨髄性白血病の治療で用いるため)。
【0368】
上記(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、L−乳酸塩)を含有する組み合わせの投薬レジメン、製剤、および投与プロトコルは、プロドラッグ化合物に関する投薬レジメン、製剤、および投与プロトコルに関連して上に記述した通りであってもよいし、WO2008/044027に記述した通りであってもよく、この文献の内容はその全体において参照により本書に援用される。
【0369】
化合物(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンは、WO2006/109085に記載のように調製することができ、そのL−乳酸塩および他の塩はWO2008/044034に記載のように調製することができる。WO2006/109085およびWO2008/044034の内容は、その全体において参照により本書に援用される。
【0370】
診断方法
化合物の投与前に、患者が罹患しているかまたは罹患している可能性のある疾患または症状が、Hsp90に対する活性を有する化合物による治療に対して感受性のある疾患または症状であるかどうかを決定するために患者をスクリーニングしてもよい。
【0371】
例えば、患者が罹患しているかまたは罹患している可能性のある癌などの症状または疾患がHsp90クライアントタンパク質の変異または過剰な活性化をもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定するために、患者から採取した生体サンプルを分析してもよい。Hsp90クライアントタンパク質の活性化をもたらすこのような異常の例としては、Bcr−ABL転座、Flt−3内部重複、およびBrafまたはErbB2の変異が挙げられる。
【0372】
よって、患者をアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験に供してもよい。診断なる語はスクリーニングも含む。本発明者らはマーカーに、例えば、Braf、BCR−abl、Flt3および他の罹患クライアントタンパク質を同定するためのDNA組成の測定をはじめとする遺伝マーカーも含める。マーカーなる語にはまた、ErbB2などのタンパク質が含まれ、タンパク質もしくはいくつかの断片もしくは分解産物の、そして酵素に関しては酵素活性の、レベルまたは濃度が含まれる。タンパク質(例えば、リン酸化されたものまたはされていないもの)および上記のタンパク質のmRNAレベルも活性の変化を特性決定するために評価することができる。例えば、リン酸化AKTのレベルはHsp90阻害剤に対する感受性の指標となり得る。
【0373】
診断試験は典型的には、例えば、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水、頬内からの塗抹標本、または生検から、あるいは尿から選ばれる生体サンプルに対して行われる。
【0374】
スクリーニング方法は、典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質マイクロアレイ分析、質量分析によるプロテオーム解析、免疫組織化学法、または特異抗体を用いた検出を伴うことになる。
【0375】
タンパク質の変異およびアップレギュレーションの同定および分析方法は当業者に周知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーション、または免疫ブロット法などの標準的な方法が挙げられる。
【0376】
RT−PCRによるスクリーニングでは、腫瘍におけるmRNAのレベルは、該mRNAのcDNAコピーを作成した後、該cDNAをPCRにより増幅することにより評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は当業者に公知である。核酸の操作およびPCRは、例えば、オースベル(Ausubel, F. M.)ら(編者)、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、2004年、ジョンワイリー&サンズ、またはイニス(Innis, M. A.)ら(編者)、「PCRプロトコル:方法および応用の手引き(PCR Protocols:a guide to methods and applications)」、1990年、アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、に記載のような標準的な方法により行う。核酸技術に関する反応および操作はまた、サムブルック(Sambrook)ら、2001年、第3版、「モレキュラークローニング:レボラトリーマニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。あるいは、RT−PCR用の市販キット(例えば、ロシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))、または米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号;第5,272,057号;第5,882,864号および第6,218,529号に開示の方法が使用でき、これらは参照により本書に援用される。
【0377】
mRNAの発現を評価するためのin situハイブリダイゼーション技術の例として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)がある(アンゲラー(Angerer)、1987年、「メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth. Enzymol)」、152:649を参照のこと)。
【0378】
一般に、in situハイブリダイゼーションは以下の主要な工程を含む:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の接近性を高めるためそして非特異的結合を軽減するためのサンプルのプレハイブリダイゼーション処理;(3)核酸混合物と生物学的構造または組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄;および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。このような用途に用いるプローブは典型的には、例えば、放射性同位元素または蛍光リポーターで標識される。好ましいプローブは、ストリンジェント条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするに十分な長さ、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。また、白血病細胞集団内でBcr−Abl転座を検出するために使用され得る、染色体再配列の細胞遺伝学的検出用の市販のFISHプローブも存在する。FISHを行うための標準的な方法は、オースベル(Ausubel, F. M.)ら(編者)、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、2004年、ジョンワイリー&サンズ、および「モレキュラーダイアグノシス・オブ・キャンサー、メソッズ・アンド・プロトコルズ(Molecular Diagnosis of Cancer, Methods and Protocols)」第2版;ISBN:1−59259−760−2;2004年3月、077〜088ページ中のバートレット(John M. S. Bartlett)による蛍光in situハイブリダイゼーション:技術的概観(Fluorescence In Situ Hybridization: Technical Overview)、メソッズ・イン・モレキュラーメディシンシリーズ(Series: Methods in Molecular Medicine)に記載されている。
【0379】
遺伝子発現プロファイリング法は、デプリモ(DePrimo)ら、「BMCキャンサー(BMC Cancer)」、2003年、3:3に記載されている。要するに、このプロトコルは次の通りである:第一鎖cDNA合成を誘導するための(dT)24オリゴマーを用い、全RNAから二本鎖cDNAを合成した後、ランダムヘキサマープライマーを用い、第二鎖cDNAを合成する。この二本鎖cDNAを、ビオチン化リボヌクレオチドを用いるcRNAのインビトロ転写の鋳型として用いる。アフィメトリクス(Affymetrix)(サンタクララ、カリフォルニア州、米国)が記載しているプロトコルに従い、cRNAを化学的にフラグメント化した後、ヒトゲノムアレイ上で一晩ハイブリダイズさせる。
【0380】
あるいは、mRNAから発現したタンパク質産物を、腫瘍サンプルの免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いる固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリー、および特定のタンパク質を検出するための当技術分野で公知の他の方法により評価することができる。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれことになる。当業者であれば、bcr−ABL転座の指標となる「フィラデルフィア染色体」の検出のためのこのような周知の技術を全て認識しているものである。
【0381】
したがって、これらの技術はいずれも、本発明の化合物による治療に特に適した腫瘍を同定するために使用することができる。
【実施例】
【0382】
本発明を、以下の実施例に記載する具体的な実施形態を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0383】
実施例において、次の略語を用いる場合がある。
AcOH 酢酸
BOC tert−ブチルオキシカルボニル
Bn ベンジル
CDI 1,1−カルボニルジイミダゾール
DMAW90 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H
2O(90:18:3:2)
DMAW120 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H
2O(120:18:3:2)
DMAW240 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H
2O(240:20:3:2)
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド
Et
3N トリエチルアミン
EtOAc 酢酸エチル
Et
2O ジエチルエーテル
h 時間
HOAt 1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min. 分
P.E. 石油エーテル
r.t. 室温
SiO
2 シリカ
TBTU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオロボレート
THF テトラヒドロフラン
プロトン磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルは特に断りのない限りBruker AV400にて、DMSO−d
6またはMeOH−d
4(示されている通り)中、27℃、400.13MHzで操作して記録し、次のように表す:化学シフトδ/ppm(プロトン数、多重度:s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット、br=ブロード)。残存するプロトン性溶媒は内部標準として用いた。
【0384】
本実施例では、調製した化合物を、以下に示すアジレントLC−MS分取システムおよび作動条件を用いる液体クロマトグラフィーおよび質量分析により特性評価した。種々の同位体を有する原子が存在し、1つの質量で示される場合には、その化合物に関して表示されている質量はモノアイソトピック質量である(すなわち、
35Cl;
79Brなど)。
【0385】
Agilent 1100 LC−MS分取システム:
ハードウェア:
オートサンプラー:1100シリーズ「prepALS」
ポンプ:分取流量勾配(preparative flow gradient)には1100シリーズ「PrepPump」そして分取流(prep flow)中に調節剤をポンプで送るためには1100シリーズ「QuatPump」
UV検出器:1100シリーズ「MWD」多波長検出器
MS検出器:1100シリーズ「LC−MSD VL」
フラクションコレクター:2×「Prep−FC」
補充液ポンプ:「Waters RMA」
Agilentアクティブスプリッタ
ソフトウェア:
Chemstation:Chem32
Agilent MS運転条件:
キャピラリー電圧:4000V(ESネガティブでは3500V)
フラグメンター/ゲイン:150/1
乾燥ガスの流量:13.0L/分
ガス温度:350℃
ネブライザー圧:50psig
走査範囲:125〜800amu
イオン化モード:エレクトロスプレーポジティブまたはエレクトロスプレーネガティブ
酸性法:
Phenomenex Synergy MAX−RP、10μ、100×21.2mm
溶媒A:H
20+0.1%トリフルオロ酢酸、
溶媒B:CH
3CN+0.1%トリフルオロ酢酸
塩基性法:
Waters XBridge C18 5μ 100x19mm
溶媒A:H
20+10mM NH
4HCO
3+NH
4OH、pH=9.2
溶媒B:CH
3CN
補充用溶媒:
MeOH+0.2%ギ酸(いずれのクロマトグラフィータイプであっても)
方法:
分取HPLCにとって最適の条件を決定するため、特定の化合物の構造に最も適したタイプのクロマトグラフィー(低または高pH)を用いてまず分析LC−MSを行った。クロマトグラフィーを行った一連の条件を同定したら、同じタイプの適切な分取方法を選択した。低pHおよび高pHクロマトグラフィー法の両方の典型的な運転条件は次のとおりであった:
流量:24mL/分
勾配:一般に、勾配はすべて、95%A+5%Bで最初の0.4分間の工程を行った。次に、分析された僅かな量(analytical trace)にしたがって、良好な分離を達成するため3.6分間の勾配を選択した(例えば、初期保持化合物については5%〜50%B;中間保持化合物については35%〜80%B、といった具合である)。
洗浄:1.2分間の洗浄工程を勾配の最後に行った。
再平衡:次の運転のためにシステムを準備するため2.1分間の再平衡工程を行った。
補充液流量:1mL/分
溶媒:
化合物はいずれも、通常は100%MeOHまたは100%DMSOに溶解した。
得られた情報から、当業者ならば、本明細書に記載の化合物を分取LC−MSによって精製し得る。
【0386】
中間体の調製
調製A1
5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールトリヒドロクロリド
工程1:ジ−プロプ−2−イニル−カルバミン酸ベンジルエステル
【化27】
EtOAc(200mL)および10%K
2CO
3水溶液(700mL、507mmol)中のジプロパルギルアミン(46.7g、502mmol)の冷却溶液(0℃)に、EtOAc(500mL)中のN−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(125g、502mmol)の溶液を20分間かけてゆっくりと加えた。この溶液を0℃で2時間、次いで室温で16時間撹拌した。相を分離し、有機相を10%K
2CO
3水溶液(700mL、507mmol)、次いで飽和ブライン(500mL)で洗浄し、EtOAcで1000mLまで希釈して0.5M溶液を得た。
【0387】
工程2:5−ヒドロキシメチル−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル
【化28】
トルエン(120mL)中のプロパルギルアルコール(26.4mL、424mmol)溶液を脱気した。上記0.5Mジイン溶液(440mL、220mmol)を蒸発させ、残渣をトルエン(80mL)に溶解した。この保護ジイン溶液およびウィルキンソン触媒(2.26g、2.44mmol、1.11%)を、14等分に分けて、温度が50〜100℃に保たれるように内部温度を常時モニタリングしながら2時間かけて加えた。この溶液を30分間かけて50℃まで冷却し、溶液を蒸発させた(過剰のプロパルギルアルコールを除去するため)。残渣をトルエン(500mL)および木炭(ダルコ(Darco)4〜12メッシュ、20g)を用いて100℃で30分間加熱した後、セライトベッドで高温ろ過し、褐色溶液を蒸発させた。残渣を80℃のEtOAc(400mL)に溶解し、シリカゲル(クロマトグラフィーグレード、65g)を加え、加熱を20分間続けた。溶液を熱いうちにろ過した後、蒸発させて(シード添加しながら)、淡褐色の固体を得た。10%EtOAc/ヘプタン(v/v、100mL)を加え、固体をろ去した。固体を焼結体上でヘプタン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(50℃、オイルポンプ、16時間)、標題化合物を59.0g(95%)得た。1H NMR(400MHz、Me−d3−OD):7.51−7.16(m,8H)、5.21(s,2H)、4.74(s,2H)、4.70(s,2H)、4.61(s,2H).
【0388】
工程3:5−メタンスルフォニルオキシメチル−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル
【化29】
THF(470mL)およびEtOAc(770mL)中の5−ヒドロキシメチル−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル(65.75g、0.232mol)の溶液にEt
3N(39mL、0.28mol)を加えた。この溶液を氷浴中で冷却し、EtOAc(50mL)に溶解した塩化メタンスルホニル(19mL、0.245mol)の溶液を加えた(内部温度が12℃未満となるように)。氷浴中で2時間撹拌した後、塩化メタンスルホニル(1.9mL、0.95mL)およびEt
3N(3.9mL)をさらに加えた(薄層クロマトグラフィーによって、さらに1時間撹拌した後に出発物質が残存しないように)。NaHCO
3(550mL)を加え、溶液を20分間撹拌した後、飽和ブライン(200mL)を加え、相を分離した。有機相を乾燥させ(MgSO
4)、シード添加しながら蒸発させると、湿った固形物が得られ、これを完全には乾燥させずに次の工程で用いた。
【0389】
工程4:5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル二塩酸塩
【化30】
工程3からの固形物(0.232molとする)をアセトン(700mL)に溶解し、この溶液をアセトン(330mL)中のK
2CO
3(48g)とN−メチルピペラジン(50mL、0.45mol)との冷却懸濁液(内部温度15〜17℃)に45分間かけて加えた。この懸濁液を15℃で3時間撹拌し(薄層クロマトグラフィーによる出発物質の完全除去)、溶液を小容量になるまで蒸発させ、残渣をEtOAc(1000mL)および水(500mL)と飽和ブライン(50mL)との混合液で分液した。有機相を水(500mL)と飽和ブライン(150mL)との混合液で洗浄し、最後に飽和ブライン(300mL)で洗浄した。この溶液を乾燥させ(MgSO
4)、ろ過し、この溶液にMeOH中の1M HCl(430mL、0.43mol)を加えた。この懸濁液を冷却し(0℃で30分間)、固形物をろ去し、これを焼結体上でEtOAcに次いでヘプタンで洗浄し、固形物を乾燥させ(オイルポンプ、室温72時間)、標題化合物66.34g(65%)のクロップ1を無色の固体として得た。1H NMR(400MHz、Me−d3−OD):7.64−7.51(m,2H)、7.51−7.29(m,6H)、5.23(s,2H)、4.79(dd,J=16.2,6.1Hz,4H)、4.49(s,2H)、3.66(s,8H)、3.03(s,3H).
【0390】
代替工程4A 5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル二塩酸塩
【化31】
工程4Aを代替経路として用いて上記工程3および4に代えてもよい。
DCM(100mL)中の二酸化マンガン(15.5g、178mmol)の懸濁液に5−ヒドロキシメチル−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル(3.35g、11.8mmol)を加え、室温で6時間撹拌した後、二酸化マンガン(5g、57mmol)をさらに加えた。さらに室温で1時間撹拌した後、セライト(7g)を加え、溶液をセライト(登録商標)ベッドでろ過し、澄んだ淡黄色の溶液を得た。セライト(登録商標)をDCMで洗浄し、合わせた有機溶液の容量を蒸発により100mLに調整した。N−メチルピペラジン(1.31mL、11.8mmol)および酢酸(0.68mL)に次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.98g、23.5mmol)を加えた。黄色の溶液を16時間撹拌し無色の溶液を得た。この溶液に2M HCl(10mL、20mmol)を加えると沸騰した。30分後、水(10mL)およびK
2CO
3(5.5g、39.8mmol)を加え、有機相を乾燥させた(Na
2SO
4)。ろ過後、ジオキサン(6mL)中の4M HClを撹拌しながら加え、懸濁液を蒸発乾固した。残渣を温めながらMeOHに溶解させ、蒸発後、固形物を焼結体上でEtOAc次いで石油(bp40〜60℃)で洗浄した後、50℃で真空乾燥させて標題化合物を3.61g(70%)得た。1H NMR(400MHz,Me−d3−OD):7.65−7.51(2H,m),7.51−7.27(6H,m),5.23(2H,s),4.83−4.69(4H,m),4.49(2H,s),3.66(8H,d),3.03(3H,s)
【0391】
工程5:5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールトリヒドロクロリド
【化32】
10%パラジウム炭素(300mg)をメタノール(50ml)中の5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸ベンジル(3.65g、10.0mmol)の懸濁液に加え、この混合物を室温で水素雰囲気下にて5時間撹拌した。触媒をろ過により除去し、メタノール(2×5ml)ですすぎ、合わせたろ液を酢酸エチル(20ml)中の塩化水素ガスの飽和溶液で処理した。混合物を室温で30分間撹拌し、揮発性物質および溶媒を真空除去して、5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールトリヒドロクロリド(3.39g、99%)をオフホワイト色の固形物として得た。1H NMR(MeOH−d
4)7.73(1H、s)、7.68(1H、d)、7.57(1H、d)、4.72(2H、s)、4.70(2H、s)、4.52(2H、s)、3.70(8H、br s)、3.02(3H、s).MS:[M+H]
+232.
【0392】
調製A2
2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル
【化33】
10%パラジウム炭素(350mg)をエタノール(30ml)中の2,4−ビス−ベンジルオキシ−5−イソプロぺニル安息香酸メチル(3.88g、10.0mmol)(WO2006/109085A1と同様に調製)の懸濁液に加え、この混合物を室温で水素雰囲気下にて1時間撹拌した。溶解を補助するためメタノール(20ml)を加え、この混合物を室温で水素雰囲気下にて16時間撹拌した。混合物をろ過し、触媒をメタノール(3×20ml)ですすぎ、合わせたろ液を真空下で蒸発させて、2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(2.10g、100%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.54(1H、s)、10.44(1H、br s)、7.52(1H、s)、6.37(1H、s)、3.85(3H、s)、3.08(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M+H]
+211.
【0393】
調製A3
4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ安息香酸
【化34】
アセトニトリル(25ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(1.05g、5.0mmol)と無水炭酸カリウム(828mg、6.0mmol)との混合物を臭化ベンジル(0.655ml、5.5mmol)で処理し、この混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣を水(50mL)で処理した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×50ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(1.25g、83%)を無色の針状のものとして得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.68(1H、br s)、7.57(1H、s)、7.48−7.40(4H、m)、7.34(1H、m)、6.64(1H、s)、5.20(2H、s)、3.87(3H、s)、3.18(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+H]
+301.
【0394】
無水炭酸カリウム(450mg、3.26mmol)および硫酸ジメチル(0.25ml、2.64mmol)を、アセトニトリル(20ml)中の4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(650mg、2.17mmol)の懸濁液に加え、この混合物を撹拌し、還流状態で16時間保持した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去し、2M塩酸(20ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物を酢酸エチル(2×30ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、4−ベンジルオキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ安息香酸メチル(644mg、95%)を淡黄色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)7.56(1H、s)、7.50(2H、d)、7.43(2H、t)、7.37(1H、t)、6.80(1H、s)、5.26(2H、s)、3.83(3H、s)、3.75(3H、s)、3.19(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+H]
+315.
【0395】
10%パラジウム炭素(80mg)をメタノール(16ml)中の4−ベンジルオキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ安息香酸メチル(624mg、1.99mmol)の懸濁液に加え、この混合物を室温で水素雰囲気下にて3時間撹拌した。混合物をろ過し、触媒をメタノール(3×5ml)ですすぎ、合わせたろ液を真空下で蒸発させて、4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ安息香酸メチル(432mg、97%)をオフホワイト色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.18(1H、br s)、7.52(1H、s)、6.52(1H、s)、3.73(3H、s)、3.71(3H、s)、3.11(1H、m)、1.14(6H、d).MS:[M+Na]
+247.
【0396】
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、0.5ml)を、メタノール(4ml)および水(2ml)中の2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ安息香酸メチル(418mg、1.87mmol)の懸濁液加え、この混合物を撹拌し還流状態で4時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−メトキシ安息香酸(332mg、85%)をオフホワイト色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)11.88(1H、br s)、10.11(1H、s)、7.54(1H、s)、6.51(1H、s)、3.75(3H、s)、3.11(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M+Na]
+233.
【0397】
調製A4
2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ安息香酸
【化35】
アセトニトリル(10ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(420mg、2.0mmol)と無水炭酸カリウム(331mg、2.4mmol)との混合物を硫酸ジメチル(0.2ml、2.1mmol)で処理し、この混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ安息香酸メチル(440mg、98%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.70(1H、br s)、7.54(1H、s)、6.53(1H、s)、3.87(3H、s)、3.84(3H、s)、3.12(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M+H]
+225.
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、0.2ml)を、メタノール(5ml)および水(2ml)中の2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ安息香酸メチル(420mg、1.88mmol)の懸濁液に加え、この混合物を撹拌し還流状態で3時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−メトキシ安息香酸(275mg、70%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)13.50(1H、br s)、11.40(1H、br s)、7.53(1H、s)、6.51(1H、s)、3.83(3H、s)、3.12(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M+H]
+211.
【0398】
調製A5
5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ安息香酸
【化36】
アセトニトリル(10ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(420mg、2.0mmol)と無水炭酸カリウム(662mg、4.8mmol)との混合物を硫酸ジメチル(0.4ml、4.2mmol)で処理し、この混合物を室温で16時間撹拌し、次いで還流状態で6時間保持した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ安息香酸メチル(350mg、74%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)7.53(1H、s)、6.67(1H、s)、3.92(3H、s)、3.86(3H、s)、3.75(3H、s)、3.13(1H、m)、1.14(6H、d).MS:[M+Na]
+261.
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、0.2ml)を、メタノール(5ml)および水(2ml)中の5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ安息香酸メチル(330mg、1.39mmol)の懸濁液に加え、この混合物を撹拌し還流状態で3時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物を酢酸エチル(2×30ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、5−イソプロピル−2,4−ジメトキシ安息香酸(305mg、98%)をオフホワイト色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)12.07(1H、br s)、7.57(1H、s)、6.64(1H、s)、3.90(3H、s)、3.85(3H、s)、3.13(1H、m)、1.14(6H、d).MS:[M+H]
+225.
【0399】
調製A6
2−アリルオキシ−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸
【化37】
アセトニトリル(25ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(1.05g、5.0mmol)と無水炭酸カリウム(828mg、6.0mmol)との混合物をクロロメチルメチルエーテル(0.4ml、5.27mmol)で処理し、この混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣を水(30mL)で処理した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×20ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチル(1.02g、80%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.61(1H、br s)、7.58(1H、s)、6.62(1H、s)、5.30(2H、s)、3.88(3H、s)、3.42(3H、s)、3.17(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+H]
+255.
アセトニトリル(25ml)中の2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチル(995mg、3.92mmol)と無水炭酸カリウム(650mg、4.71mmol)との混合物を、臭化アリル(0.356ml、4.11mmol)で処理し、この混合物を撹拌し還流状態で16時間保持した。室温まで冷却した後、溶媒は真空除去し、水(30ml)を加え、有機物をジクロロメタン(2×30ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を真空下で蒸発乾固させ、2−アリルオキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチル(1125mg、97%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)7.58(1H、s)、6.78(1H、s)、6.03(1H、m)、5.52(1H、dm)、5.33(2H、s)、5.28(1H、dm)、4.61(2H、m)、3.78(3H、s)、3.42(3H、s)、3.19(1H、m)、1.18(6H、d).MS:[M+Na]
+317.
【0400】
濃塩酸(0.4ml)を、メタノール(25ml)中の2−アリルオキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチル(1049mg、3.57mmol)の溶液に加え、この混合物を撹拌し還流状態で3時間保持した。室温まで冷却した後、揮発性物質および溶媒を真空下で除去して、2−アリルオキシ−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(880mg、98%)を淡緑色の油状物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.18(1H、s)、7.54(1H、s)、6.51(1H、s)、6.03(1H、m)、5.51(1H、dm)、5.27(1H、dm)、4.52(2H、m)、3.73(3H、s)、3.10(1H、m)、1.15(6H、d).MS:[M+Na]
+273.
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、2ml)を、メタノール(12ml)および水(4ml)中の2−アリルオキシ−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(860mg、3.44mmol)の混合物に加え、この混合物を撹拌し還流状態で5時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(30ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×20ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2−アリルオキシ−4−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸(715mg、88%)を淡緑色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)11.92(1H、br s)、10.08(1H、s)、7.56(1H、s)、6.48(1H、s)、6.03(1H、m)、5.50(1H、dm)、5.27(1H、dm)、4.53(2H、m)、3.11(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M+Na]
+259.
【0401】
調製A7
4−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸
【化38】
アセトニトリル(10ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(420mg、2.0mmol)と無水炭酸カリウム(662mg、4.8mmol)との混合物を臭化アリル(0.35ml、4.0mmol)で処理し、この混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物をジクロロメタン(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させ、残渣をシリカカラムクロマトグラフィーに供した。石油エーテル中で2〜10%酢酸エチルで溶出して、4−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(330mg、60%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)10.68(1H、s)、7.55(1H、s)、6.54(1H、s)、6.06(1H、m)、5.42(1H、dm)、5.29(1H、dm)、4.65(2H、m)、3.88(3H、s)、3.16(1H、m)、1.16(6H、d).
【0402】
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、0.2ml)を、メタノール(6ml)および水(2ml)中の4−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(313mg、1.25mmol)の懸濁液に加え、この混合物を撹拌し還流状態で4時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、4−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸(285mg、96%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)13.50(1H、br s)、11.40(1H、s)、7.55(1H、s)、6.51(1H、s)、6.06(1H、m)、5.42(1H、dm)、5.28(1H、dm)、4.64(2H、m)、3.17(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+H]
+237.
【0403】
調製A8
2,4−ビス−アリルオキシ−5−イソプロピル安息香酸
【化39】
アセトニトリル(10ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(420mg、2.0mmol)と無水炭酸カリウム(662mg、4.8mmol)との混合物を臭化アリル(0.364ml、4.2mmol)で処理し、この混合物を室温で16時間撹拌した。さらなる分量の臭化アリル(0.364ml、4.2mmol)を加え、この混合物を撹拌し還流状態でさらに16時間保持した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去し、2M塩酸(20ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物を酢酸エチル(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、2,4−ビス−アリルオキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(480mg、83%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)7.56(1H、s)、6.68(1H、s)、6.07(2H、m)、5.51(1H、dm)、5.44(1H、dm)、5.28(2H、m)、4.68(2H、m)、4.64(2H、m)、3.75(3H、s)、3.18(1H、m)、1.16(6H、d).MS:[M+Na]
+313.
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、0.5ml)を、メタノール(6ml)および水(2ml)中の2,4−ビス−アリルオキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(450mg、1.55mmol)の混合物に加え、この混合物を撹拌し還流状態で3時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×10ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2,4−ビス−アリルオキシ−5−イソプロピル安息香酸(418mg、98%)をオフホワイト色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)12.16(1H、br s)、7.58(1H、s)、6.66(1H、s)、6.07(2H、m)、5.51(1H、dm)、5.44(1H、dm)、5.28(2H、m)、4.68(2H、m)、4.64(2H、m)、3.17(1H、m)、1.15(6H、d).MS:[M+Na]
+299.
【0404】
調製A9
4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸
【化40】
アセトニトリル(20ml)中の4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(900mg、3.0mmol)と無水炭酸カリウム(994mg、7.2mmol)との混合物をクロロメチルメチルエーテル(0.24ml、6.6mmol)で処理し、この混合物を撹拌し50℃で24時間保持し、その後さらなる無水炭酸カリウム(994mg、7.2mmol)およびクロロメチルメチルエーテル(0.96ml、26.4mmol)を加え、この混合物を撹拌し50℃でさらに4日間保持した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去し、残渣を水(30mL)で処理した。有機物をジクロロメタン(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、粗4−ベンジルオキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチルを淡黄色の油状物として得、これをさらなる精製をしないで次の工程で使用した。1H NMR(DMSO−d
6)7.57(1H、s)、7.48(2H、d)、7.44(2H、t)、7.38(1H、t)、6.90(1H、s)、5.23(4H、s)、3.78(3H、s)、3.39(3H、s)、3.21(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+Na]
+367.
【0405】
粗4−ベンジルオキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチルをメタノール(20ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(160mg)を加え、この混合物を室温にて水素雰囲気下で16時間撹拌した。この混合物をろ過し、触媒をメタノール(3×5ml)ですすぎ、合わせたろ液を真空下で蒸発させて、粗4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチルを無色の油性固形物として得、これをさらなる精製をしないで次の工程で使用した。1H NMR(DMSO−d
6)10.19(1H、br s)、7.52(1H、s)、6.57(1H、s)、5.13(2H、s)、3.73(3H、s)、3.40(3H、s)、3.11(1H、m)、1.13(6H、d).MS:[M−H]−253.
【0406】
粗4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチルをメタノール(20ml)および水(8ml)に溶解し、水酸化カリウム水溶液(50%w/v、5ml)を加え、この混合物を撹拌し還流状態で16時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(30ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物を酢酸エチル(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、黄色の油状物を得、これをStrata−NH2カートリッジ上のカラムクロマトグラフィーに供した。メタノール中で2Mアンモニアで溶出すると粗4−ヒドロキシ−5−イソプロピル−2−(メトキシメチルオキシ)安息香酸(180mg、25%)が淡灰色の固形物として得られ、これをさらなる精製をしないで使用した。MS:[M+Na]
+263.
【0407】
調製A10
2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸
【化41】
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、1ml)を、メタノール(10ml)および水(4ml)中の2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸メチル(508mg、2.0mmol)の懸濁液に加え、この混合物を撹拌し還流状態で6時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、2M塩酸(30ml)を加えて残渣を酸性化した。固形物を吸引ろ過により採取し、水(2×20ml)ですすぎ、減圧下で吸引乾燥させて、2−ヒドロキシ−5−イソプロピル−4−(メトキシメチルオキシ)安息香酸(400mg、83%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)13.60(1H、br s)、11.30(1H、br s)、7.58(1H、s)、6.58(1H、s)、5.30(2H、s)、3.42(3H、s)、3.15(1H、m)、1.18(6H、d).MS:[M+H]
+241.
調製A11
2,4−ビス−(メトキシメチルオキシ)−5−イソプロピル安息香酸
【化42】
アセトニトリル(12ml)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸メチル(420mg、2.0mmol)と無水炭酸カリウム(332mg、2.4mmol)との混合物をクロロメチルメチルエーテル(0.16ml、2.1mmol)で処理し、この混合物を室温で16時間撹拌し、その後さらなる無水炭酸カリウム(1.38g、10.0mmol)およびクロロメチルメチルエーテル(0.76ml、10.0mmol)を加え、この混合物を撹拌し50℃でさらに4日間保持した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去し、残渣を水(30mL)で処理した。有機物をジクロロメタン(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させて、2,4−ビス−(メトキシメチルオキシ)−5−イソプロピル安息香酸メチル(580mg、97%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)7.57(1H、s)、6.88(1H、s)、5.32(2H、s)、5.20(2H、s)、3.78(3H、s)、3.41(6H、s)、3.21(1H、m)、1.17(6H、d).MS:[M+Na]
+321.
【0408】
水酸化カリウム水溶液(50%w/v、1.0ml)を、メタノール(12ml)および水(4ml)中の2,4−ビス−(メトキシメチルオキシ)−5−イソプロピル安息香酸メチル(560mg、1.88mmol)の混合物に加え、この混合物を撹拌し還流状態で3時間保持した。室温まで冷却した後、有機溶媒を真空除去し、残渣を水(20ml)で希釈し、2M塩酸(10ml)を加えて残渣を酸性化した。有機物をジクロロメタン(2×20ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を真空下で蒸発させた。残渣を石油エーテルとジエチルエーテルとの混合物でトリチュレーションして、2,4−ビス−(メトキシメチルオキシ)−5−イソプロピル安息香酸(392mg、73%)を無色の固形物として得た。1H NMR(DMSO−d
6)12.38(1H、br s)、7.59(1H、s)、6.84(1H、s)、5.31(2H、s)、5.20(2H、s)、3.41(6H、s)、3.21(1H、m)、1.18(6H、d).MS:[M+Na]
+307.
【0409】
調製B1
N−ベンゾイル置換5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールの一般的合成法
【化43】
5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール三塩酸塩(409mg、1.2mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(8ml)中の置換安息香酸(1.0mmol)と塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(211mg、1.1mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(149mg、1.1mmol)とトリエチルアミン(606mg、6.0mmol)との混合物に加え、この混合物を室温または50〜80℃で16時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を炭酸水素ナトリウム水溶液およびメタノールで処理した。有機溶媒を真空下で除去し、水層をデカンテーションにより除去した。暗色の油状残渣をシリカカラムクロマトグラフィーに供した。ジクロロメタン中において5〜10%メタノールで溶出すると、対応するN−ベンゾイル置換5−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールが得られた。必要な場合は、メタノール中において2Mアンモニアで溶離してSCXカートリッジ上のカラムクロマトグラフィーにより化合物をさらに精製した。
【0410】
実施例1〜9
上記の一般法に従って、下記表に示す実施例1〜9の化合物を調製した。
【表1】
【0411】
実施例10
ジエチル−カルバミン酸5−ジエチルカルバモイルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−シクロヘキサ−1,3−ジエニルエステルの調製
【化44】
Et
3N(0.68mL、4.88mmol)およびN,N−4−ジメチルアミノピリジン(5mg、0.41mmol)を含むTHF(25mL)中の(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン(1.0g、2.44mmol)の溶液にN,N−ジエチルカルバモイルクロリド(1.5mL、11.62mmol)を加えた。この溶液を60℃まで18時間加熱し、EtOAc(50mL)および10%K
2CO
3水溶液(50mL)を加えた。有機相を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、有機相を分離し、容量が少なくなるまで蒸発させた。DCM中の残渣の溶液を、シリカゲルを含むカラムに入れ、生成物をDCMに続いてDCM中の5%MeOH中の0.2%アンモニア水で逐次的に溶離した。生成物を含む画分を、DCM、続いてジエチルエーテルから蒸発させて、標題化合物を発泡体1.07gとして得た。1H NMR(400MHz、DMSO−d6):7.44(1H、d)、7.37−7.30(1H、m)、7.30−7.15(2H、m)、7.01(1H、s)、4.75(2H、s)、4.61(2H、d)、3.56−3.40(4H、m)、3.33(4H、d)、3.24(3H、d)、3.19−3.09(2H、m)、3.09−2.95(2H、m)、2.85−2.56(4H、m)、2.42(3H、s)、1.38−0.76(18H、m);m/z608(MH).
【0412】
実施例11〜13
実施例11〜13は、実施例10に関して記載した方法と同様の方法により調製した。
【表2】
【0413】
実施例14
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル
および
【0414】
実施例15
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル
【化45】
MeOH(36mL)および2M NaOH水溶液(4mL)に溶解した実施例10(0.826g)の生成物の溶液を60℃で24時間加熱した。この溶液を室温まで冷却し、これに5M HCl(1.6mL、pH6まで)を加え、溶液を容量が少なくなるまでに蒸発させた。残渣を飽和ブラインおよびEtOAcで分液し、有機層を蒸発させて油状物にした。この油状物を分取hplc(塩基性法)により精製して、2種類の別々の異性体であるモノ−ジエチルカルバモイル誘導体を得た:
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル(137mg)
1H NMR(400MHz、DMSO−d6):9.86(1H、s)、7.35−7.25(1H、m)、7.25−7.12(3H、m)、6.65(1H、s)、4.71(2H、s)、4.57(2H、d)、3.43(2H、d)、3.27−3.08(5H、m)、2.32(8H、s)、2.14(3H、d)、1.18(6H、d)、1.05−0.85(6H、m)、m/z509(MH)
および
ジエチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル(292mg)
1H NMR(400MHz、DMSO−d6):10.01(1H、s)、7.37−7.27(1H、m)、7.27−7.17(2H、m)、7.15(1H、d)、6.60(1H、s)、4.79(2H、s)、4.63(2H、d)、3.44(4H、m)、3.34(2H、m)、3.01−2.87(1H、m)、2.32(8H、s)、2.14(3H、d)、1.22(3H、s)、1.15(9H、d)、m/z509(MH).
【0415】
実施例16〜21
実施例16〜21は、実施例14および15に記載の方法と同様の方法で、脱アシル化誘導体(実施例11、12、および13)をMeOH中でNaOHで処理することによって(60℃h、3.5時間〜24時間)調製した。生成物の混合物は分取hplcにより分離した。
【表3】
*分取塩基性hplc法からのピークの単離は、溶媒の蒸発によるものであり遊離塩基が得られた。酸性hplc法を用いた場合、単離は、蒸発に続いて、SCXイオン交換カラム(2g、ストラタ(Stata))上の吸着、そしてこれに続いてMeOH中の2M NH
3での溶離によるものであった。
【0416】
実施例22
炭酸tert−ブチルエステル5−ジメチルカルバモイルオキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル
【化46】
THF(10mL)中のジメチル−カルバミン酸5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル(実施例17、50mg)の溶液に、ジ−t−ブチル−重炭酸塩(54.5mg)およびN,N−4−ジメチルアミノピリジン(1.25mg)を加えた。この溶液を60℃まで1時間加熱し、室温まで冷却し、蒸発乾固させた。残渣をシリカゲル上で精製し、DCM中の5%MeOH中で0.2%アンモニア水を用いて溶離した。生成物を含む画分をDCMおよびジエチルエーテルから蒸発させて、標題化合物を発泡体(40mg)として得た。
【0417】
1H NMR(400MHz、DMSO−d6):7.51(1H、d)、7.36−7.28(1H、m)、7.26−7.17(2H、m)、7.08(1H、s)、4.77(2H、s)、4.62(2H、d)、3.44(2H、d)、3.10(3H、s)、3.05(1H、dd)、2.95(3H、s)、2.32(8H、d)、2.14(3H、d)、1.34(9H、s)、1.21(6H、dd).
立体化学配置は、ブチル基とイソインドリンCH
2Nとの間の核オーバーハウザー効果(nOe)を観察することにより確認した。
【0418】
実施例23
炭酸5−tert−ブトキシカルボニルオキシ−4−イソプロピル−2−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステルtert−ブチルエステル
【化47】
THF(25mL)中の(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン(1g、2.44mmol)の溶液に、ジ−t−ブチル−重炭酸塩(1.17g、5.5mmol)およびN,N−4−ジメチルアミノピリジン(45mg、0.37mmol)を加えた。この溶液を60℃まで3時間加熱し、次いで室温まで冷却し、蒸発乾固させた。残渣を、DCMに続いてDCM中の5%MeOH中0.2%アンモニア水で溶離するシリカゲル上で精製した。生成物を含む画分を蒸発させて発泡体にし、標題化合物(1.52g)を得た。1H NMR(400MHz、DMSO−d6):7.58(1H、d)、7.38−7.28(1H、m)、7.28−7.15(3H、m)、4.77(2H、s)、4.61(2H、d)、3.44(2H、d)、3.09−2.96(1H、m)、2.47−2.17(8H、m)、2.15(3H、d)、1.52(9H、s)、1.34(9H、s)、1.21(6H、dd);m/z610(MH)
【0419】
実施例24
2,2−ジメチル−プロピオン酸5−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル二塩酸塩
【化48】
THF(10mL)中の(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン(0.546g、1.33mmol)の溶液に、Et
3N(0.464mL)、塩化ピバロイル(0.492mL、3.99mmol)、およびN,N−4−ジメチルアミノピリジン(15mg、0.123mmol)を加えた。この溶液を室温で5時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発により除去した。残渣をEtOAcと飽和NaHCO
3との間で分液し、有機相を飽和ブラインで洗浄し乾燥させた(Na
2SO
4)。溶媒を蒸発させて油状物を得、これをジエチルエーテルおよびEtOAc中に溶解し、この溶液にジオキサン中の4M HCl(0.67mL、2.68mmol)を加えた。懸濁液を真空下で蒸発させて乾燥し、標題化合物を発泡体(0.835g)として得た。1H NMR(400MHz、DMSO−d6):7.64−7.42(3H、m)、7.39(1H、d)、7.06(1H、s)、4.78(2H、s)、4.61(2H、s)、3.44(10H、s)、3.07−2.95(1H、m)、2.79(3H、s)、1.35(9H、s)、1.20(6H、d)、1.18−1.15(9H、m);m/z578(MH).
【0420】
実施例25
イソ酪酸5−イソブチリルオキシ−2−イソプロピル−4−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボニル]−フェニルエステル
【化49】
標題化合物は、塩化イソブチリルを用いて、実施例24に記載した方法と同様の方法で調製した。1H NMR(400MHz、DMSO−d6):7.53(1H、d)、7.38−7.28(1H、m)、7.28−7.16(2H、m)、7.07(1H、s)、4.75(2H、s)、4.58(2H、d)、3.44(2H、d)、3.07−2.95(1H、m)、2.95−2.83(1H、m)、2.72−2.64(1H、m)、2.48−2.18(8H、m)、2.15(3H、d)、1.28(6H、d)、1.23−1.17(6H、m)、1.08(6H、d);m/z510(MH).
【0421】
生物学的活性
実施例26
等温滴定熱量測定
本発明のプロドラッグ化合物のフェノール親化合物の、ヒトHsp90タンパク質と結合する能力は、等温滴定熱量測定法を用いて決定し得る。
等温滴定熱量測定(ITC)実験は、VP−ITC滴定熱量計(マイクロカル社(Microcal Inc.)、ノーザンプトン、マサチューセッツ州、米国)を用いて行った。ヒトHsp90αN末端ドメインのクローニング、発現、および精製は、出版済みの方法(ジェズ(Jez, J.M.)ら、ケミストリーアンドバイオロジー(Chem Biol.)、2003年、4月;10(4):361〜8)に従って行った。ヒトHsp90αN末端ドメインと化合物との溶液は、25mM Tris、100mM NaCl、1mM MgCl
2、1mM TCEP、5%DMSO、pH7.4を含む緩衝液中で調製した。溶液は全て滴定を行う前にろ過し脱気した。リガンドの注入毎に生じるエンタルピーの変化は、熱量シグナルの積分によって得た。データはOrigin7.0(マイクロカルソフトウェア社(Microcal Software Inc.)、ノーザンプトン、マサチューセッツ州)を用いて解析した。希釈液の熱を個々の各滴定の最終の注入を用いて予測し、データフィッティングの前に差し引いた。広範な親和性にわたって化合物解離定数(Kd)を得るために、種々のITC試験形式を用いた。結合の弱い化合物には、低c値ITC法を用いた(ターンブル(Turnbull W.B.)およびダラナス(Daranas A.H.)、米国化学界誌(J. Am. Chem. Soc.)、2003年12月3日;125(48):14859〜66)、この場合、タンパク質は熱量測定セル中に10〜20μMで存在し、化合物濃度は注入シリンジ中で1〜20mMであった。この種の試験では、化学量論パラメーター(N)はデータフィッティングのため1で固定した。20〜0.004μM範囲におけるKdについて、結合部位濃度をKd(c値)で割ったものが5〜1000の間となるように試験を構成した。これらの試験の大部分では、熱量測定セル中のタンパク質濃度は4〜100μMの範囲であり、注入シリンジ中のリガンド濃度は50〜1500μMの範囲であった。まれではあるが化合物の溶解度が限定的である場合には、化合物溶液を熱量測定セルに入れ、c値を5〜1000の間に維持しつつ、注射シリンジからのタンパク質で滴定した。競合的ITC試験を用い、シグルスキヨルド(Sigurskjold, B.W.)、アナリティカルバイオケミストリー(Anal Biochem.)、2000年1月15日;277(2):260〜6に記載の方法により、より弱い結合競合物の存在下で滴定を行うことにより、Kd<4nMにアクセスした。
【0422】
実施例27
抗増殖活性
ヒト結腸癌細胞株HCT116などの多くの細胞株における細胞増殖を阻害する化合物の能力を測定することにより、本発明のプロドラッグの親化合物の抗増殖活性を測定し得る。細胞増殖の阻害はアラマーブルーアッセイ(ノシアリ(Nociari, M.M)、シャレフ(Shalev, A.)、ベナイアス(Benias, P.)、ルッソ(Russo, C.)、ジャーナル・オブ・イミュノロジカルメソッズ(Journal of Immunological Methods)1998年、213、157〜167)を用いて測定される。当該方法はレザズリンをその蛍光産物レゾルフィンへ還元する生細胞の能力に基づいている。各増殖アッセイにおいては、細胞を96ウェルプレートに入れ、16時間培養してから、さらに72時間阻害剤化合物を加える。インキュベーションの終了時に10%(v/v)アラマーブルーを加え、さらに6時間インキュベーションしてから、535nM ex/590nM emにより蛍光産物を調べる。非増殖細胞アッセイの場合には、細胞を96時間集密状態で維持してから、さらに72時間阻害剤化合物を加える。生細胞の数を前記のようにアラマーブルーアッセイで調べる。細胞株はECACC(ヨーロピアンコレクションオブセルカルチャー(European Collection of cell Cultures))から入手され得る。
【0423】
実施例1〜25のプロドラッグの親化合物、すなわち(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンは、そのL−乳酸塩形態で、オンコデザイン(Oncodesign)(ディジョン、フランス)により100個の細胞株に対する抗増殖性アッセイ中で試験された。各細胞株に対するIC
50値を下記表に記載し、表中の数字はナノモル濃度を表す。化合物は最大10,000ナノモルの濃度まで試験した。
【表4】
結果は(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンが広範囲の異種細胞株に対して強力な抗増殖活性を有していることを実証する。
【0424】
医薬製剤
実施例28
(i)錠剤製剤
本発明の化合物を含有する錠剤組成物は、化合物50mgと、希釈剤としてのラクトース(BP)197mgと、滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgとを混合し、公知の方法で打錠することにより調製される。
【0425】
(ii)カプセル製剤
カプセル製剤は、本発明の化合物100mgとラクトース100mgとを混合し、得られた混合物を標準的な不透明硬ゼラチンカプセルに充填することにより調製される。
【0426】
(iii)注射用製剤I
注射投与用の非経口組成物は、本発明の化合物(例えば、塩形態で)を、10%プロピレングリコールを含有する水に溶解し、活性化合物濃度を1.5重量%とすることにより調製してもよい。この溶液を次にろ過滅菌し、アンプルに充填および密封する。
【0427】
(iv)注射用製剤II
注射用の非経口組成物は、本発明の化合物(例えば、塩形態で)(2mg/ml)およびマンニトール(50mg/ml)を水に溶解し、溶液をろ過滅菌し、密封可能な1mlバイアルまたはアンプルに充填することにより調製される。
【0428】
v)注射用製剤III
注射または点滴による静脈内送達用の製剤は、式(I)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mlで水に溶解することにより調製してもよい。次いで、バイアルを密封し、オートクレーブ処理により滅菌する。
【0429】
vi)注射用製剤IV
注射または点滴による静脈内送達用の製剤は、緩衝剤(例えば、0.2M酢酸、pH4.6)を含有する水に式(I)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mlで溶解することにより調製できる。次いで、バイアルは密封され、オートクレーブ処理により滅菌される。
【0430】
(vii)皮下注射製剤
皮下投与用組成物は、本発明の化合物を医薬級のコーン油と混合して濃度5mg/mlとすることにより調製される。この組成物を滅菌し、適切な容器に充填する。
【0431】
viii)凍結乾燥製剤
式(I)の製剤化合物のアリコートを50mlバイアルへ入れ凍結乾燥する。凍結乾燥の間、−45℃でワンステップ凍結プロトコルを用いて組成物を凍結する。アニーリングのために温度を−10℃に上げ、次いで低下させて−45℃で凍結し、次いでほぼ3400分間+25℃で一次乾燥させ、徐々に50℃まで昇温して二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥中の圧力は80ミリトルに設定する。
【0432】
(ix)2%局所用ゲル製剤
%w/w
化合物 2.00
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel F4M) 2.50
ポリエチレンオキシド(Polyox WSR−205) 0.25
プロピレングリコール 10.00
メチルパラベン 0.15
プロピルパラベン 0.05
精製水 100.00まで
【0433】
実施例29
血漿安定性の研究
活性部分への本発明のプロドラッグ化合物の変換され易さは、化合物の血漿安定性をインビトロで測定することによって評価され得る。この方法は、血漿酵素が化合物を活性部分まで代謝させる能力に基づいている。化合物を血漿に加え、37℃で約1時間培養する。血漿のアリコートを一定の間隔で取り出し、内部標準を含有するアセトニトリルを加えることで化合物を抽出する。次いで、すべての抽出物を化合物特異LCMS−MSアッセイを用いて親化合物、活性部分、および内部標準に関して分析する。安定性は、親化合物および内部標準の時刻ゼロにおけるピーク面積比と培養サンプルにおける親化合物および内部標準のピーク面積比とを比較することによって測定する。サンプルにおける活性部分の生成についても評価する。
【0434】
実施例30
全血および肝臓ホモジネート安定性の調査
生体内でのプロドラッグの分解は、例えば、血液/血漿、肝臓、胃、標的組織(例えば、腫瘍)を含むいくつかの異なるコンパートメントの1つまたはそれ以上で起こり得る。親薬剤の至適な形成に好ましい場所は、プロドラッグおよび親薬物(parent)の生体内での動態ならびに、標的組織における活性部分への暴露を最も多くさせるための、循環系において必要とされる各々の最適な濃度についての知識に応じて異なることになる。プロドラッグ分子が活性な親薬物を供給する可能性は、関連する体液の存在下でのプロドラッグの分解を測定することにより生体外で評価され得る。2つのこのような身体のコンパートメントにおける酵素加水分解に対する本発明の化合物の安定性の予備知識を獲得する目的で、マウスおよびヒトからの全血および肝臓ホモジネートにおける培養後に化合物のターンオーバーを研究した。この研究から得られたデータは、当該コンパートメントにおいて、プロドラッグのうちのどれが親化合物をよりよく供給できる(つまり、より迅速に親化合物まで分解する)かについての予備知識を提供する。さらなる研究ではまた、他のコンパートメントにおける安定性(例えば、腫瘍溶解物における安定性を測定することによる標的腫瘍においての)が判定できる。
【0435】
当該研究に関して、ヒト全血は、3人の男性健常ボランティアからヘパリンリチウムチューブに採取した。培養を開始する前に室温で最大で2時間血液をプールおよび保存した。マウス血液は、70匹の雄マウス(系統:Balb/c)から採取しヘパリンリチウムチューブに入れプールした。
【0436】
マウス肝臓は、ストック動物からの20匹の雄マウス(系統:Balb/c)から入手した。ヒト肝臓組織は、英国ヒト組織バンクから調達した、3人からのものであった。肝臓は凍結保存されていた。肝臓を解凍し次いで均質化して、100mMのpH7.4のリン酸緩衝液(「緩衝液」と呼ぶ)中で約30%(w/v)のホモジネートを形成させた。ホモジネートは使用するまで氷上で保持した。
【0437】
各インキュベーションは、容量が1mLであった。次いで、試験化合物投与溶液を1μMの最終化合物濃度で各ホモジネートへ入れた。培養は大気中にて振とう水浴中にて37℃で行った。
【0438】
培養サンプルのアリコートを、様々な時点で等体積の氷冷アセトニトリルへ取り出した。サンプル(全血/ホモジネート+アセトニトリル)を遠心分離し、上清のアリコートをUPLC−MS/MSにより分析した。
【0439】
化合物X(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノンおよび実施例1〜24の化合物を、クオーシェントバイオリサーチ(Quotient Bioresearch)(ラシュデン、英国)により全血および肝臓ホモジネートの両方で培養した。ヒトおよびマウスからの全血/肝臓ホモジネートにおける培養後の親化合物の残留百分率を下記表に示す。
【表5】
*これら培養物に関しては、記載した残留百分率は、60分時点におけるものであり、記載したような120分時点におけるものではない。
【0440】
実施例31
マウスにおける薬物動態学
Balb/cマウスにプロドラッグを経口強制給飼により投与する。24の実施例の1つを単回投与し、PO投与には10mL/kgの投与容量を使用する。
【0441】
血液サンプルを、特定の時点で、ヘパリンリチウムでコーティングしたチューブに採取する。血漿を遠心分離により単離し、分析前に凍結する。
【0442】
血漿サンプルを、内部標準を含有するアセトニトリルで液液抽出により調製する。定量化は、各化合物を用いて作成した標準検定線の比較および各化合物に特有のLC−MS/MS法の使用による。24の実施例の1つを投与した動物を、プロドラッグおよび化合物X(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−フェニル)−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−メタノン)に関して分析した。薬物動態学パラメーターを、WinNonLin(登録商標)非コンパートメント解析ソフトウェアを用いて計算する。
【0443】
選択した実施例のPO投与後の血漿AUC
0.25−2時間を下記表に示す。実施例16、17、および11に関しては、血漿AUC
0.25−2時間は、120μモル/kgまたは240μモル/kgの単回投与後に測定した。これによると、実施例17の化合物が、開始用量に対して、活性薬剤の至適な暴露をもたらした。
【表6】
別の研究では、実施例17および11は、それぞれ120μモル/kgまたは240μモル/kgの一日量を連続4日間投与した場合に良好な忍容性を示した。
【0444】
実施例32
抗真菌活性の測定
本発明のプロドラッグ化合物の活性親化合物の抗真菌活性を、以下のプロトコルを用いて測定する。
【0445】
化合物を、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)−ATCC36082、およクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)を含む真菌のパネルに対して試験する。試験生物を、サブローデキストロース寒天斜面培地の斜面上にて4℃で保持する。0.05モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)を含むアミノ酸含有酵母窒素基礎培地(YNB)(ディフコ(Difco)、ミシガン州デトロイト)(pH7.0)中で、回転ドラム上で27℃にて一晩酵母を増殖させることにより、各生物の単一体懸濁液を調製する。次に、この懸濁液を遠心分離し、0.85%NaClで2回洗浄した後、洗浄した細胞懸濁液を4秒間超音波処理する(ブランソン(Branson)製ソニファイアー(Sonifier)、350型、コネチカット州ダンバリー)。単一体出芽胞子を血球計算盤でカウントし、0.85%NaClで所望の濃度に調節する。
【0446】
試験化合物の活性を、微量液体希釈法の改良法を用いて測定する。試験化合物を、DMSO中に希釈して1.0mg/mlの比率とした後、MOPSを含むYNB培地(pH7.0)で64μg/mlまで希釈し(対照としてフルコナゾールを使用)、各化合物の希釈標準溶液を調製する。96ウェルプレートを用い、ウェル1およびウェル3〜12を、YNB培地を用いて調製し、化合物溶液の10倍希釈液を、ウェル2〜11(濃度範囲は64〜0.125μg/ml)中に調製する。ウェル1は、無菌対照および分光光度アッセイのブランクとして用いる。ウェル12は増殖対照として用いる。このマイクロタイタープレートのウェル2〜11に各々10μlを接種する(最終接種量は、10
4生体/mlである)。接種したプレートを、35℃で48時間インキュベートする。MIC値は、ボルテックスミキサー(ボルテックス・ジェニー(Vortex-Genie)ミキサー、サイエンティフィック・インダストリーズ社(Scientific Industries, Inc.)、ニューヨーク州ボヘミア(Bolemia))で2分間プレートを撹拌した後、420nmで吸光度を測定することにより(自動マイクロプレートリーダー(Automatic Microplate Reader)、デュポン・インストルメンツ(DuPont Instruments)、デラウエア州ウィルミントン)、分光光度法で測定する。MIC終点は、対照ウェルと比較して増殖の約50%(またはそれ以上)の減少を示す最低薬剤濃度として規定される。濁度アッセイによれば、これは、ウェルにおける濁度が対照の50%未満である最低薬剤濃度(IC50)として規定される。96ウェルプレートの全てのウェルをサブローデキストロース寒天(SDA)プレートで継代培養し、35℃で1〜2日間インキュベートした後、生存率を確認することにより、最小細胞溶解濃度(MCC)を測定する。
【0447】
実施例33
疼痛低減または疼痛防止活性の試験方法
(i)炎症性痛覚過敏試験
機械的痛覚過敏は、炎症性疼痛のラットモデルで検査され得る。増加する圧迫刺激に対する足底逃避閾値は、左後足底へのフロイント完全アジュバント(FCA)の足底内注射前の未処理の動物において、鎮痛効果測定装置(ウゴバジレ(Ugo Basile)、ミラノ)を用いたランダルセリット(Randal-Sellito)法により測定される。24時間後、足底逃避閾値を、薬剤または賦形剤投与に先立って(投与前)再び測定し、投与後10分間〜6時間にも測定する。同側足底における痛覚過敏の撤回は、以下の式にしたがって計算する。
【数1】
【0448】
(ii)神経障害性痛覚過敏試験
機械的痛覚過敏は、左座骨神経の部分的結紮により引き起こされる神経障害性疼痛のラットモデルにおいて検査され得る。外科手術の約14日間後、結紮を行った足底(同側)および結紮を行わない足底(対側)の両方の機械的逃避閾値を、薬剤または賦形剤投与に先立って(投与前)測定し、投与後10分間〜6時間にも測定する。各時点における痛覚過敏の撤回は、以下の式にしたがって計算する。
【数2】
全ての実験は、6体の動物群を用いて行う。薬剤の固形濃縮物を蒸留水中に溶解し、体積4ml/kgで皮下投与するために0.9%食塩水中に希釈した。全ての薬剤をプラスチックのバイアル中に調製し、暗所に保存する。
測定を繰り返し行いANOVA次いで、テューキーHSD検定を用いて、逃避閾値読取り値(g)の統計分析を行う。有効性とは、使用した投与量で観察される最大の痛覚過敏の後退を意味する。
【0449】
(iii)骨癌疼痛のラットモデルにおける本発明のプロドラッグ化合物の活性親化合物の効果の試験
成体雌ラットに、MRMZ−1ラット乳腺癌腫細胞(3μl、10
7細胞/mL)を脛骨内注射する。典型的には、細胞注射後12〜14日目から、機械的痛覚過敏、機械的異痛(非侵害刺激に対する皮膚過敏)、および後肢の擁護動作(hind limb sparing)が徐々に動物に現れる。式(0)の化合物(例えば、10および30μg/Kgの皮下投与量で)を細胞注射の日から週3回投与し、後肢保護および機械的異痛の阻害の程度を、賦形剤を用いて治療した対照と比較して測定する。
【0450】
均等
上記の実施例は、本発明を説明する目的で記載したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。上記に記載し、また、実施例で示す本発明の特定の実施形態に対して、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改変および変更をなし得ることは容易に明らかである。このような改変および変更は総て本願に含まれるものとする。