(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は広義には後脊椎固定具を目的としており、更に、哺乳類の脊椎において互いに隣接し合う椎骨を安定化させるシステムを目的としている。制限することを意図しない具体例として、本発明は骨移植片と連携して使用されることもある。脊椎を固定しながら椎骨を硬化させる、または、椎骨を1個の大きな骨塊にする金具が脊椎に設置される。該システムは、経椎弓根固定装置、経関節突起固定装置、または、経椎弓板固定装置のいずれかとして脊椎の背側部に挿入される湾曲した固定具または留め具を備えており、挿入位置は椎骨に見られる
背側要素すなわち背側椎弓突起群またはその近辺であるのが好ましい。
【0011】
哺乳類の体内において背側椎弓突起群34および椎体36から構成されている椎骨32に挿入するのに好適なように後脊椎固定具30が設けられているのがより好ましい(
図1から
図15を参照のこと)。後脊椎固定具30は、一般に、椎骨32に挿入するのに適した構成の長手部材38を備えている。長手部材38は前側部40および背側部42が設けられており、前側部40は椎体36への設置に適した弓形、アーチ形、湾曲状、弓なり状の形状を呈しており、背側部42は、前側部40を椎体36に配備する時に背側椎弓突起群34に接近して操作することができるようにした長さを有しているのが好ましい。好ましい実施例においては、長手素子または長手部材38は10 mmから200 mmの範囲の長さを有しており、これは20 mmから60 mmの範囲であるのがより好ましく、長手部材38は2 mmから20 mmの直径を有しており、3.5 mmから10 mmの範囲であるのがより好ましい。より詳細に説明すると、固定具は脊椎内部への固定に好適な装置である。斯かる装置は、少なくとも1本の湾曲した脊椎固定具30が設けられて椎弓板から関節突起接合面を通り、椎弓根を通り、または、関節突起接合面と椎弓根の両方を通って椎体36に挿入されるようにした集成体から構成されている。
【0012】
説明の必要上、また、
図4に例示されているように、椎骨32の関連各部を簡単に解説する。長手部材はその前側部などのような各部が湾曲したスリーブ被覆部材を通して視認することができるようにしていることから、
図4および
図5乃至
図13は参照と解説を目的として概略的であることに留意するべきである。椎骨32は、椎体36を含んでいる前側部または前方部と背側椎弓突起群34を含んでいる背側部または後方部とから構成されており、背側椎弓突起群34の具体例としては椎弓または神経弓、横突起(複数本)46、関節突起(複数本)48、椎弓根50、棘突起52、椎弓板54、および、上関節突起56および下関節突起58を含む関節突起(複数本)などが挙げられる。脊髄60は椎骨の前側部と背側部とのほぼ中間に位置しており、神経根62がそこから伸びている。
【0013】
本発明の一実施例の装置は、少なくとも1本の湾曲した脊椎骨固定具30が設けられて椎弓根50を通って椎体36に挿入されるようにした集成体から構成されている。この湾曲した経椎弓根ネジ集成体は、
図1から
図3で明らかなように、真直ぐな背側部66および弓形前側部40が設けられたシャフトにより形成されている、ネジ加工が施されていない内側部材すなわち長手本体部64を含んでおり、少なくとも一実施例においては、該シャフトはヘッド68で終端している。斯かるシステムまたは装置は、前側部40または前端の湾曲部と真直ぐな背側部42とから成る固定具または留め具を備えているものとして詳細に記載されているが、該システムまたは装置は背側部42または後端に湾曲部が設けられている場合があることも思量される。
【0014】
長手部材38は、シャフトすなわち軸心を通る長手素子または長手本体部64および着脱自在なスリーブ被覆部材70から構成されているようにするとよい。概して、長手部材38のシャフトは1 mmから20 mmの範囲の直径を有しており、これは2 mmから10 mmの範囲の直径であるのがより好ましい。長手本体部64は10 mmから100 mmの範囲の長さで形成されており、15 mmから60 mmの範囲の長さであるのがより好ましい。ネジを切っていない内側部材すなわち軸心を通る長手本体部64の前側部86は、軸心を通る長手本体部64の後端74から或る距離だけ離隔した位置にある内側部72から長手本体部64の前端76まで延在している。前側部86の長さは5 mmから100 mmの範囲であればよいが、10 mmから30 mmの範囲がより好ましい。前側部86の直径は、背側部66の直径と等しい長さでもよいし、異なる長さであってもよい。前側部86のシャフトの外周面78は滑らかでもよいし、ネジ加工が施されていてもよく、或いは、少なくとも一部に沿って粗面加工を施した表面が設けられているようにしてもよい。前側部は外周面が概ね不変で、直径の範囲は1 mmから20 mmであるが、直径の範囲は2 mmから10 mmであるのがより好ましい。一実施例においては、ヘッド68は長手本体部64の前端76に保持されている。ヘッド68は円錐形状を呈しており、その直径は遠位尖端部80に向かうにつれて逓減している。
【0015】
ヘッド68は最大外径が長手本体部64のシャフトの概ね一定の直径よりも大きく、また、その最小径の尖端または前端80は長手本体部64のシャフトの直径よりも幅が短いのが好ましい。ヘッド68はその最大外径から前端まで、円錐構造を形成するように先細り状になっている。ヘッド68の最大径は1 mmから20 mmの範囲であればよいが、2 mmから10 mmの範囲であるのがより好ましい。しかしながら、ヘッド寸法に変動があったとしても、本発明の全体的範囲から逸脱することはない。ヘッド68はそこに外側ネジ82が設けられておりネジを利用したスクリュー式挿入に備えるようにしていてもよいし、或いは、概ね滑らかな周面または粗面加工を施した周面から構成されているようにしてもよい。ヘッド68は上記以外にも好適であればどのような形状を呈していてもよい。
【0016】
図2で明らかなように、固定具または留め具、もしくは、シャフトすなわち長手本体部64の背側部66は軸心を通る長手本体部64の内部72から長手本体部64またはネジを切っていない内側部材の後端74まで延在している。背側部66はその外径すなわち最大径が概ね一定であり、この長さは前側部86の直径と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
長手本体部64またはネジを切っていない部材の前側部86のシャフトの直径は1 mmから20 mmの範囲であればよいが、2 mmから10 mmの範囲であるのがより好ましい。背側部66の長さは、前側部40
、86ならびに背側部42
、66を椎体36に配置すると、背側椎弓突起群34の位置で背側部に接近して操作することができるような寸法である。背側部66の長さは5 mmから100 mmの範囲であればよいが、10 mmから30 mmの範囲であるのが好ましい。更に、背側部66の外周面84は滑らかであってもよいし、粗面加工が施されていてもよく、或いは、その少なくとも一部に沿って粗面加工が施された部分が設けられているようにしてもよい。
【0017】
好ましい実施例においては、ネジを切っていない内側部材すなわち軸心を通る長手本体部64は可撓性であるのが好ましく、すなわち、その一部に沿って可撓性であるか、または、その全長に沿って可撓性であるのが好ましく、該シャフトはすくなくともその前側部86に沿って弾性を有しており、湾曲したスリーブ被覆部材70を装着することによって曲がって形状が弓なりになるのがより好ましい。可撓性または弾性の長手本体部64には、真直ぐな形状になる静止位置またはホームポジションが設けられている(
図3を参照のこと)。これに代わる例として、長手本体部64は剛性で、少なくともその一部に沿って形状が弓形であるとよいが、その前側部86が弓形であるのがより好ましい。
【0018】
長手本体部64は中実材から形成されており、一実施例では、円柱断面に近似する断面を呈している。使用される素材は形状記憶合金などのような形状記憶素材であってもよいし、或いは、非形状記憶素材または非形状記憶合金でもよく、後者の具体例として、チタニウム、ステンレス鋼、または、これら以外の脊椎固定に好適な何らかの素材が挙げられる。形状記憶合金を採用した場合、移植片、骨、または、その両方の破損が生じることを想定した場合に必要となる力の量を増大させる目的で、全体または一部を拡張させることができるように、または、形状を変えることができるように湾曲した部材を設計することもあり得る。使用される素材は生体吸収性であってもよいし、または、生体吸収性でなくてもよい。
【0019】
図示のように、長手部材
38には中心軸線88があるとともに前側部40および背側部42が設けられており、
長手本体部64の前側部86は弾性本体部を備えている。湾曲したスリーブ被覆部材70は前側部86に被せて配備されて、長手部材
38の前側部
40を弓形経路を辿って椎体36に案内することができる。更に、前側部86は湾曲したスリーブ被覆部材70の内側で中心軸線88を中心として回転自在であり、椎体36の中に前側部40をネジ込むことができるようにしてもよい。
【0020】
詳細に説明すると、湾曲した椎弓根固定具集成体または長手部材38は、ネジを切っていない内側部材または長手本体部64に被せて載置される湾曲したスリーブ被覆部材を備えている。湾曲したスリーブ被覆部材70は可撓性部分86または弓形部86に被せて配置される(
図2を参照のこと)。より詳細に説明すると、ネジを切っていない内側部材64は湾曲したスリーブ被覆部材70の内側に受容される。従って、湾曲したスリーブ被覆部材70は、外周面を有しているシャフトすなわち
部材89を利用して、軸心を通る穿孔90がシャフトすなわち長手部材の長尺に沿って延在するように成形することができるが、スリーブ被覆部材の内径は軸心を通る穿孔90によって規定され、長手本体部64の外径と一致しているのが好ましい(
図3を参照のこと)。湾曲したスリーブ被覆部材の内径は概ね一定であり、1 mmから20 mmの範囲であるのが好ましいが、1.5 mmから10 mmの範囲であるのがより好ましい。従って、穿孔90はネジを切っていない内側部材すなわち長手本体部を受容するよう構成されている。湾曲したスリーブ被覆部材70は曲率半径が2ミリメートル(mm)から4メートル(m)の範囲であるのが好ましく、10ミリメートル(mm)から2メートル(m)の範囲であるのがより好ましく、10センチメートル(cm)であるのが最も好ましい。曲率半径は、固定具の湾曲部の長さ全体に亘って均一でもよいし、均一でなくてもよい。その結果として、湾曲したスリーブ被覆部材70は長手部材
38の弓形の前側部
40を形成している。湾曲したスリーブ被覆部材70の円柱断面に近似する断面の外径は長手本体部64のものよりも大きくなる。湾曲したスリーブ被覆部材70はその外径が、長手本体部64が保持しているヘッド68の最大径である外径と同じであるのが好ましい。湾曲したスリーブ被覆部材70の外径は1 mmから20 mmの範囲であるのが好ましく、2 mmから10 mmであるのがより好ましく、約3.5 mmであるのが最も好ましい。
【0021】
湾曲したスリーブ被覆部材70には、後端92と、該後端から離隔された位置にある前端94とが設けられている。湾曲したスリーブ被覆部材70はその長さが長手本体部64の前側部86の長さに近似している。湾曲したスリーブ被覆部材70はその長さが5 mmから100 mmの範囲であるのがより好ましいが、10 mmから45 mmの範囲の長さであるのが更により好ましい。湾曲したスリーブ被覆部材70は背側部66の少なくとも一部の周囲に外側ネジが設けられおり、更に、湾曲したスリーブ被覆部材70にはその背側部92の周囲を廻って延びているネジを切った部分96が形成されているのが好ましい。前側部94または前端には、長手本体部64が保持しているヘッド68に当接するのに好適な構成の面98が設けられている。
【0022】
湾曲したスリーブ被覆部材70の外周面100はその周面または該周面の一部が滑らかな面または粗面加工された面から構成されており、粗面加工された面は骨を中に成長させることができる。湾曲したスリーブ被覆部材70は剛性であるのが好ましく、また、哺乳類の肉体や脊柱に使用するのに好適な素材、例えば、ステンレス鋼、チタニウム、または、それ以外の好適な素材から形成されているとよいが、それ以外の各種素材であっても本発明の全体的範囲から逸脱することはない。
【0023】
好ましい実施例の湾曲した経椎弓根ネジ集成体または長手部材38は、外側にネジを切った背側部42を有している。
図1から
図3に示されている実施例では、背側部42には着脱自在な第2のスリーブ被覆部材すなわちネジを切ったスリーブ被覆部材102が設けられている。長手本体部64の背側部66は着脱自在なネジを切ったスリーブ被覆部材102を携帯支持しており、より詳細に説明すると、ネジを切ったスリーブ被覆部材102はネジ加工を施していない内側部材すなわち長手本体部64に被せて配置される。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、長手本体部64の前側部86に載置された第1のスリーブ被覆部材すなわち湾曲したスリーブ被覆部材70に着脱自在に係合するようになっていてもよい。
【0024】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102には、後端104と、該後端から離隔された位置にある前端106とが設けられている。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、その後端から前端までの全長に沿って軸心を通る穿孔108を延在させたシャフトであり、スリーブ被覆部材の内径はネジを切っていない内側部材すなわち長手本体部64の外径と一致しているのが好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102の長さは5 mmから105 mmの範囲であるのが好ましいが、10 mmから45 mmの範囲であるのがより好ましい。軸心を通る穿孔は円筒断面に近似する断面を有しており、穿孔の直径すなわちスリーブ被覆部材の内径は1 mmから30 mmの範囲であり、1.5 mmから15 mmの範囲であるのがより好ましい。従って、穿孔108は長手本体部64を受容するのに適した構成となっている。ネジを切ったスリーブ被覆部材102はその前端106に内側ネジ110が設けられており、該内側ネジは湾曲したスリーブ被覆部材70の背側部92に設けられた外側ネジ96に着脱自在に係合するのに好適な構成であるのが好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102の内ネジまたは内側ネジ110のネジ山間ピッチは湾曲したスリーブ被覆部材70の外側ネジ96のネジ山間ピッチと同じであり、ネジを切ったスリーブ被覆部材102に湾曲したスリーブ被覆部材70の背側部92の上を伝って前進させることができるようにするのが好ましい。従って、湾曲したスリーブ被覆部材70の背側部92はネジを切ったスリーブ被覆部材102の穿孔の内側に受容される。ネジを切ったスリーブ102はその一部にネジが切られていてもよいし、その全体にネジが切られているようにしてもよい。詳細に説明すると、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の外径は該被覆部材の一部を取巻いて設けられた外側ネジ112によって規定されるが、該外側ネジはネジを切ったスリーブ被覆部材102のシャフトのほぼ全長に沿って延在しているのが好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102の外径は長手本体部64の外径よりも大きい。ネジを切ったスリーブ被覆部材の外径は2 mmから35 mmの範囲であるのが好ましいが、2.5 mmから15 mmの範囲であるのがより好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、関節突起接合面を圧縮させることができるように、可変ネジを切ってあってもよいし、そうでなくてもよい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、一実施例では、その後端にツール係合部またはヘッド114を保持しており、該後端は形状が鐘形または球状として図示されているが、それ以外の何らかの好適な形状であってもよい。この球状部114は首状くびれ部116によって外側ネジ112から離隔されているのが好ましい。球状部114は、ツール、ソケット、ソケット以外の係留部材、または、それ以外の固定部材、ツールとソケットまたはその代替物の両方を受容するのに好適な構成である。例えば、好ましい実施例においては、球状部114はチューリップ形部材118を受容するのに適した構成である。
【0025】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102を前段までに説明してきたが、湾曲した経椎弓根ネジ集成体または長手部材38はそこにネジを切ったスリーブ被覆部材が設けられているようにしてもよいし、そうでなくてもよい。
【0026】
哺乳類の体内の、椎体36および背側椎弓突起群34からなる椎骨32に後脊椎固定具30を挿入する方法を提示してゆくが、該挿入方法は、一般に、背側椎弓突起群34の位置で固定具30を椎骨32に導入して、固定具を椎体36の中へ弓なりに伸長させる操作を含んでいる。
【0027】
図1から
図3の実施例に従った後脊椎固定具30の長手部材38を経椎弓根挿入する好ましい方法が
図4から
図8に例示されているが、これらの図では、固定具30は、椎体36の中に入れる目的で、椎弓根50を貫いて延びている。より詳細に説明すると、まず最初に、当該技術で公知の従来からの様式で挿入に備えて椎弓根50または椎弓根壁が準備される。例えば、椎弓根50への進入位置が確認される。これは、関節突起の小片または一部を上椎弓根から除去することで椎弓根50へ接近することができるようにする処置を含んでいる。その後、椎弓根50の硬質外面を刺し通すためにドリル(図示せず)を使って外面を貫く小さな穴を穿つが、この場合、椎弓根50の背部から穿孔を行うのが最も広く実施されている態様であるが、これに限定されるものではない。次に、ツールは、そこに尖った端部、ピック状の鶴嘴端、平らにされたうえに湾曲した端部、または、平らで真直ぐな端部などが設けられており、「ギア転換装置」と呼ぶ場合があるが(図示せず)、穿孔部を通してツールを揺らしながら椎体36の多孔性硬質骨物質に挿入し、多孔性硬質骨物質を貫く穿孔122を設ける。穿孔122は、後脊椎固定具30の少なくとも一部の長さと同じである長さに設けられているのが好ましい。穿孔122は、その前端124が湾曲して椎体36の中心部120に向かうように成形される。
【0028】
ギア転換装置はその直径が概ね2.5 mmから3.5 mmの範囲にあるが、仙骨または腸骨への挿入と同様に、直径が2.5 mmから15 mmの範囲であってもよく、更に、弓形遠位端および真直ぐな近位端が設けられているようにしてもよい。弓形遠位端のみが椎弓根50に挿入されるのが好ましい。ギア転換装置が約2.5 mmから3.5 mmの直径を有しているため、ギア転換装置により設けられる穿孔または経路112は、湾曲したスリーブ被覆部材70を取付けた長手部材38のネジを切っていない部材すなわち長手本体部64よりも短いかまたはそれに等しく、その直径は約3.5 mmであるのが好ましい。より一般的には、椎弓根50に設けられる湾曲した穿孔または経路112は、幅がギア転換装置の湾曲部の一部の幅に概ね等しいかそれよりも狭く、長さはギア転換装置の該一部に一致しており、従って、後脊椎固定具の長さに一致している。
【0029】
最初に経路122が形成されてしまうと、感触器または先端にボールを付けた探針(図示せず)を使って経路の内壁を触診することで、医者は椎弓根50に穴を穿つのが完了したかどうかを判定する。
【0030】
次に、湾曲した集成体または長手部材38が触診済みの経路122に挿入される。長手部材38は、長手本体部64の可撓性の前側部86に被せて配置された状態で湾曲した剛性のスリーブ被覆部材70を備えているが、該長手部材38は第1位置(
図4に例示)から、ギア転換装置およびドリルによって設けられた椎弓根50の穿孔122の中に移動させられる、または、該穿孔に挿入されるのが好ましい。詳細には、脊椎固定具の前側端に位置しているヘッド68が、まず、椎弓根50に設けられた穿孔に挿入される。次に、椎体36に入れる目的で、固定具が椎弓根50に通される。
【0031】
図4から
図6の順次工程図に例示されているように、集成体38を第1位置から第2位置すなわち挿入完了位置まで移動させることにより、湾曲した集成体が継続的に挿入される。後脊椎固定具30を触診済み経路122の中に更に挿入するために、医者は挿入ツール(図示せず)を長手本体部64の後端66に取付け、これにより医者は湾曲した集成体を椎骨32の中に移動させることができる。一実施例においては、医者は長手本体部64を中央軸線88を中心として剛性の湾曲したスリーブ被覆部材70に相関的に回転させ、従って、長手本体部64のネジを切った端部または尖端により、具体的には、ヘッド68またはネジを切ったヘッドにより、湾曲したスリーブ被覆部材70を携帯支持している長手本体部64を椎体36の中に更に引き入れる。固定具全体を弓形の態様で移動させて椎体に入れるのに、スリーブ被覆部材70およびヘッド68を穿孔122に押し込むか、または、穿孔122を越えた先の内奥にまで進入させる作業中にヘッド68をスリーブ被覆部材70に相関的に回転させるか、いずれであってもよい。スリーブ被覆部材70およびヘッド68は穿孔122の中に僅かだけ押し込まれるのが好ましい。次に、ヘッド68をスリーブ被覆部材70の内部でネジ回転させることで穿孔の入口を越えた先に移動するが、ネジが該穿孔を越えて椎体の内奥まで移動するのが好ましい。一実施例においては、このようになるには、集成体が十分な密度の骨に挿入された場合に限られる。これに代わる例として、劣悪な骨では、集成体全体が穿孔と椎体に押し込まれる。長手本体部64は可撓性であり、そのホームポジションまたは静止位置では真直ぐな形状を呈しているのが、剛性の湾曲したスリーブ被覆部材70の内側では曲げたり回転させたりすることができるようになっているのが好ましく、また、湾曲したスリーブ被覆部材の内側でも束縛無しに長手本体部をその中心軸線を中心として回転させることができるようになっているのが好ましい。上述のように、ネジを切っていない長手本体部64の背側部66の円柱断面外径は、一例として、約2.5 mmであってもよく、従って、直径が約3.5 mmの剛性の湾曲したスリーブ被覆部材70の円筒断面内径よりも小さい。従って、ネジを切っていない長手部材を椎体36の奥深くへ進入させるにつれて、ネジを切っていない内側部材64の真直ぐな背側部66に椎弓根50に設けられたより大きな径のネジを切った穿孔の中を前進させることができる。更に、上述のように、剛性のスリーブ被覆部材70の概ね一定の外径は、ギア転換装置の遠位弓形端によって椎弓根50に設けられた穿孔122の内径にほぼ等しいか、または、それよりも大きい。その結果として、後脊椎固定具30は椎弓根50の内側にきっちりと、または、ぴったりと適合する。
【0032】
ネジを切ったヘッド68は前進しながら、挿入位置の内奥へ湾曲した集成体を移動させる。ギア転換装置により設けられた弓形の穿孔または経路122を越えた先へネジを切ったヘッド68が挿入されることにより、長手部材38の前側部40または前端が椎体36の内部に堅固に埋設されるのが好ましい。
【0033】
代替の実施例においては、内側の長手本体部64の前端86にはネジを切っていないヘッドが設けられている。挿入は、ネジを切ったヘッドについて概ね既に述べたとおりに行われる。しかしながら、挿入処置中は、穿孔122の中にネジを回転させて入れてギア転換装置によって設けられた弓形穿孔を越えた内奥に進ませる代わりに、医者は集成体または長手部材38を弓形穿孔の中に押し込み、または、弓形穿孔を越えた内奥まで押し込み、長手部材38を椎体36に埋設するだけでよい。
【0034】
いずれの実施例においても、最終結果としては、湾曲した集成体または長手部材38が
図6に例示されているように椎体36に挿入され、固定具の弓形前側部40が椎体36の内部に置かれ、固定具の真直ぐな背側部42が椎弓根50に初期的に設けられた穿孔122の中に置かれることになる。この挿入位置においては、湾曲したスリーブ被覆部材70の少なくとも一部は、ドリルおよびギア転換装置によって初期的に形成された穿孔122の内側に置かれるのが好ましく、該スリーブ被覆部材のまた別な一部は椎体36の内側に置かれ、特に、椎体の中心部120に置かれるのが好ましい。更に、長手本体部64の背側部66の少なくとも一部は、椎骨32の背側椎弓突起群34の位置で椎弓根50に設けられた開口から外に張出し、または、該開口の近辺に張出す。
【0035】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、内側の長手本体部64の背側面または背側部66に螺合され、または、ネジ結合されたうえで、椎弓根50に設けられた弓形穿孔の中に進入させることができる。特に、後脊椎固定具30には前側部40および背側部42が設けられているが、前側部40が椎体36の内側に配備されると、椎弓根50の内部に背側部42をネジ込み式にまたは回動自在に挿入することにより、後ろ脊椎固定具は椎体36にネジ留め式に固着される。ネジを切ったスリーブ被覆部材102の前端106を長手本体部64の後端66に被せて配置することにより、脊椎固定具の背側部42は椎骨内にネジ留め式に固着され、長手本体部64はネジを切ったスリーブ被覆部材102の内側穿孔108すなわち経路の内部に受容される。
【0036】
次に、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の外側ネジ112は椎弓根50に設けられた弓形穿孔の内壁126に回転自在に係合する。ネジを切ったスリーブ被覆部材102に設けられた外側ネジ112は、椎弓根50に形成された経路122に配備されたネジを切ったヘッド68により形成されたネジピッチが一致しており、椎弓根50に新たに設けられたネジ筋を切った穿孔から回転せずには飛び出すことができないようにすることで、堅固な取付けを実施している。ネジを切ったスリーブ被覆部材102を回転させると、ネジの螺合により、ネジを切ったスリーブ被覆部材102に軸心を通る長手本体部64の上を伝って前進させることになるばかりか、椎弓根50の内部の穿孔または経路122の中まで進入させることになる。従って、ネジを切ったスリーブ被覆部材102は椎骨32のほぼ真外側の第1位置から完全に螺合完了した第2位置まで前進させられる(
図7を参照のこと)。
【0037】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102が長手本体部64の背側部66および長手部材38の上を伝ってほぼ完全に進入が完了すると、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の前端106の内側ネジ110が湾曲したスリーブ被覆部材70の背側部92に設けられた外側ネジ96に係合する。回転させ続けることで、ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、究極的には、湾曲したスリーブ被覆部材70の背側部92にネジ留め式に接続される。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、その挿入完了位置においては、その前側部106と端部とが、椎弓根50に形成された経路122の内側に配置されるとともに、球状部114を保持しているその後端104の一部が椎弓根50の外に張出して、この位置から接近して操作することができる。
【0038】
前述の方法を利用して、2本以上の後脊椎固定具30を椎骨32に挿入することができる。例えば、
図7および
図8に例示されているように、
図4から
図6に関連づけて既に説明した挿入方法を利用して第1の後脊椎固定具30を右側椎弓根50に挿入することができ、更に、この同じ方法を利用して第2の後脊椎固定具31を左側椎弓根51に挿入することができる。第1固定具30を椎弓根50に、また、第2固定具31を椎弓根51に挿入するにあたり、第1固定具30の弓形端部40と第2固定具31の弓形端部41が互いに向けて湾曲する態様で実施することができる。
【0039】
湾曲した第1の後脊椎固定具および第2の後脊椎固定具は、当該技術で周知の多様な機構により互いに接続することもできるし、更に別な1個以上の固定具に接続することもできる。第1固定具および第2固定具を接続する好ましい実施例としては、後脊椎固定具30、31の後端42に係留部材118を取付ける方法が挙げられるが、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の球状端114を受容する係留部材を取付けるのが好ましい。長軸部材、斜軸部材、または、横断部材128、130も係留部材118に取付けることができる。好ましい実施例においては、
図9から
図10に例示されているように、ネジを切った部材(単数または複数)または長手部材(単数または複数)38の後端42に取付ける係留部材として、チューリップ形部材118を取付ける方法が挙げられる。すなわち、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の球状ヘッド114はチューリップ形部材118の表面の受容器に受容される。ここで、チューリップ118を利用して、互いに隣接し合う後脊椎固定具30、31を接続することができる。例えば、架橋128は2個のチューリップ形部材118、119に係合するか、または、各々からの張出し部材、例えば、バーまたはロッド130などに係合し(
図10を参照のこと)、第1の固定具30すなわち右椎弓根固定具と第2の固定具31すなわち左椎弓根固定具とを接続する。互いに隣接し合う椎骨32、33も接続することができる。例えば、バーまたはロッド130は第1の椎骨32の固定具のチューリップ形部材118から、これに隣接する第2の椎骨33に配備されている固定具35が保有しているチューリップ形部材119まで延びている。これらとは別の第3の椎骨37および左右椎弓根固定具30、31もこれと同じ態様で相互接続することができる。湾曲した固定具も、ボルト、ネジ、スロット、それ以外の各種装置、または、これらの各種組合わせによりロッドまたはプレート装置に取付けることができる。
【0040】
後椎骨固定具30の挿入方法の代替の実施例が
図11から
図15に例示されている。図示されている実施例では、
図1から
図3の後脊椎固定具は椎弓板に経椎弓板配向または経関節突起配向で挿入されるが、この配向では、後脊椎固定具は椎弓板54および椎弓根136を経て椎体138に挿入される。特に、
図11から明らかなように、長手部材38は第1椎骨32の椎弓板54を経てこれに隣接する椎骨33の椎弓根136に挿入されて、長手部材38の弓形部分40が第2椎骨33の椎体138に配置されて第2椎骨33の椎弓根136を通って延び、更に、真直ぐな背側部42はその一部が第1の椎骨32の椎弓板54に残留する。経椎弓板法では、
図4から
図8に記載されている経椎弓根法の実施例に関して概ね既に説明したが、
図11および
図12で明らかなように、第1椎骨32の椎弓板54が挿入に備えて準備され、その場合、椎弓板に接近して操作する目的で背側椎弓突起群(棘突起)の一部を除去することもあれば除去しないこともある。その後、ドリル(図示せず)を利用して第1椎骨32の椎弓板54の外面を貫いて第2椎骨33の椎弓根136の中まで通じる小さな穴を設ける。次に、ギア転換装置を挿入して、経椎弓根挿入法に関して既に説明したように、第2椎骨33の多孔性硬質材を貫く弓形穿孔または湾曲した穿孔132を設ける。
【0041】
次に、医者が第2椎骨33の椎弓根136に穴を穿つのを完了したか否かを判定するのに上述の感触器を利用して、成形完了した経路132の内壁134が触診される。好ましい実施例においては、
図4から
図10の実施例に関連づけて概ね既に説明したように、湾曲した集成体または長手部材38を触診済みの経路に挿入する。しかしながら、経椎弓板法では、長手部材38は穿孔132の外側の第1位置から第1椎骨32の椎弓板54およびこれに隣接する第2椎骨33の椎弓根136に設けられた穿孔の中まで移動するが、後者の穿孔はギア転換装置およびドリルにより設けられた穴である(
図11および
図12を参照のこと)。従って、挿入作業中は、長手部材38は第1椎骨32の椎弓板54に挿入されてからそこを横断し、更に、第2椎骨33の椎弓根136を横断して椎体138の中まで進入させられる。長手部材38は内向きに湾曲して椎体36の中央部120に向かうように挿入される。長手部材38は、その挿入完了位置にくると、
図13から
図15に例示されているように、第2椎骨33の椎体138に挿入されるが、その第2端すなわち後端42は第1椎骨32の椎弓板54の位置か、または、その外側の位置で接近・操作可能にされており、弓形部は第1椎骨33の内部に配備されているとともに、真直ぐな部分は少なくともその一部が第1椎骨32に置かれた状態となる。
【0042】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、
図4から
図10の実施例に関して概ね既に説明したように、長手部材38の背側面または背側部42に螺合またはネジ留めされたうえで第1椎骨32の椎弓板54、第2椎骨33の椎弓根136、および、第2椎骨33の椎体138に設けられた弓形穿孔132に進入させられる。従って、ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、その挿入完了した位置にくると、その前端106が第2椎骨33の椎弓根136に形成された経路132の内側に置かれるとともに、その後端104はツール係合部114が第1椎骨32の椎弓板54から外に張出して接近・操作可能になっている。
【0043】
互いに隣接し合う多数の固定具は、
図13および
図14に例示されているように、互いに隣接位置にある椎骨32、33に挿入される。互いに隣接し合う固定具は、
図11から
図13に関連づけて概ね既に説明したように挿入される。特定の、限定することを意図しない具体例として、第1の後脊椎固定具30は第1椎骨32の椎弓板54を横断して、第2椎骨33の椎弓根136および椎体138に挿入される。第2の後脊椎固定具
35は第2椎骨33の椎弓板140を横断して第3椎骨37の椎弓根142および椎体144に挿入される。
図9および
図10に関連付けて概ね既に説明した多様な機構により第1の後脊椎固定具30および第2の後脊椎固定具
35は互いに接続することができ、または、別な1個以上の固定具に接続することができる。
【0044】
周知のように、椎骨はその上関節突起および下関節突起が椎骨の背側椎弓突起群を形成する構造となっている。固定具の挿入方法の更に別な代替の実施例によれば、
図1から
図3に関連づけて既に説明した固定具は、上記態様の代わりに、上関節突起を貫いて延びて椎弓根の中に挿入するようにしてもよい。この場合の挿入は、
図4から
図15の各実施例に関連づけて概ね既に説明した態様で行われる。
図11から
図15の実施例と同様に、固定具導入方法は椎骨の上関節突起を貫いて長手部材を進入させてから更に椎弓根を通って椎体に挿入する処置を含んでいる。もう1つの代替の実施例においては、第1椎骨の下関節突起を通して固定具を伸長させることにより、固定具を第1椎骨に挿入してから、更に、第2椎骨の上関節突起および椎弓根の中まで伸長させることができる。好ましい実施例によれば、棘突起は患者の特定の幾何学的構造に基づいて切除する必要のあることもあれば、切除する必要のない場合もある。経関節突起挿入法においては、小型ドリルを利用して、上椎骨の下突起から下椎骨の上突起を通り、すなわち、解剖学上の関節突起接合面を通って更に椎弓根そのものに入り、下椎骨の椎弓根と椎体との接合部に至る接近経路を設けることができる。ドリルを用いて意図された経路を設けた後で、解剖学的構造の幾何学的形状と固定具の意図された直線経路とに適合するギア転換装置を用いて、手術部位が準備される。湾曲した長手部材は椎体にそのように進入するのを上手く達成するのに適した幾何学的形状を呈している。従って、湾曲した脊椎固定具は、
図4から
図6に関連する本件の方法において既に説明したように、穿孔の経路とそれを越えた内奥まで挿入される。椎弓根の基部に達してから更に椎弓根の基部を越えて短い距離だけ(3 mmから15 mmの範囲であるのが好ましい)張出した後で、湾曲した集成体は自らの幾何学的形状を椎体の曲率に合致させ始め、中心軸線方向に漸進する。
【0045】
前述の幾何学的形状は固定具集成体の引抜き耐性を著しく向上させている。更に、固定具集成体は湾曲の程度を多様に変化させるように作用し、一方では椎骨中心に向けてより緩やかに曲がるようにすることができ、他方でより急進的かつ短絡的に椎骨内に最終配備することができる。これにより、複数の固定具を「中心軸線に向かわせる」すなわち「中心に配置する」にあたり椎体の多様な深度に配備する技巧的変差を容易に達成することができるようにしている。
【0046】
本発明およびその方法には、従来の経椎弓根ネジに勝る利点が幾つかある。湾曲した後脊椎固定具は経椎弓根固定具、経関節突起固定具、または、経椎弓板固定具のいずれとしてでも挿入することが可能で、ネジの引抜き耐性に依存せずに安定性を向上させている。本発明の後脊椎固定具30すなわちネジの直径は、先行技術の現在使用されている各種ネジの外径よりも小さくすることができる。その結果として、後脊椎固定具が椎弓根50の側壁を打ち抜いて神経に触れてしまう危険が少ない。更に、後脊椎固定具は湾曲しているか、または、弓形部が設けられて、この湾曲した弓形部が椎体36の内部に配置されるため、従来の経椎弓根ネジではそのネジ切り部如何で決まるネジの引抜き耐性に骨の密度が関与するほどには、本発明の弓形の固定具は骨の密度に直接依存することはない。後脊椎固定具は、引抜き耐性ではなく、むしろ、椎体36の内部に配備された湾曲した部材により椎体内の骨に付与される圧縮力を克服することに深く関与している。従って、ネジを引抜く恐れのある剪断力を受け易いが、本件既述の実施例の後脊椎固定具は圧縮力を付与しない限り引抜くことができない。周知のように、骨は剪断力に比して圧縮力に対してより高い耐性を示す。換言すると、圧縮力が付与されると、ネジの湾曲した前端は組織に係合するので一直線に引抜かれることはない。例えば、椎骨32の1面ごとに1本の固定具を置いたり、または、右椎弓根50に1本の固定具を置いて左椎弓根51にもう1本の固定具を置いた場合のように、複数の後脊椎固定具が一緒に接続される際には、これら連結された複数の固定具が椎体36の内部に「爪」を形成する点で有利である。その結果、「爪」を引抜くためには、椎体36の内部の骨が全部、圧縮される必要がある。更に、複数のネジすなわち固定具は各々が後端で互いに堅固に接続されているため、引抜き力を加えられても、曲がったり挿入経路に沿って逆戻りしたりすることはあり得ない。本発明は、ネジを切ったスリーブ被覆部材102の外側ネジを更に活用するが、スリーブ被覆部材は標準的な経椎弓根ネジのように作用するとともに引抜き耐性を増し、引抜き耐性は該外側ネジが椎弓根50の内側部に係合することにより生じるものである。
【0047】
図16および
図17に例示されている代替の実施例による湾曲した経椎弓根ネジ集成体または長手部材は、真直ぐな背側部232と弓形の前側部234が設けられたシャフトから構成された剛性の長手部材230からなる。この代替の実施例においては、
図1から
図3の実施例の剛性の湾曲したスリーブ被覆部材と剛性の長手本体部は単体の部材であってもよく、すなわち、1個の統合部材または一体型の剛性部材であってもよい。該一体型部材は長さが10 mmから300 mmの範囲であるのが好ましいが、20 mmから150 mmの範囲であるのがより好ましい。
【0048】
剛性部材230の前側部234は弓形または湾曲した形状であり、剛性部材230の内部236から剛性部材230の前端238まで延びている。前側部234は長さが5 mmから200 mmの範囲であり、10 mmから30 mmの範囲であるのがより好ましい。前側部234の曲率半径は2ミリメートル(mm)から4メートル(m)の範囲にあるとよいが、10ミリメートル(mm)から2メートル(m)の範囲であるのがより好ましい。曲率半径は固定具の湾曲部の長さ全体に亘って均一であってもよいし、そうでなくてもよい。前側部234のシャフトの外面240は円筒状であるのが好ましいが、その一部または全部が滑らかであり、または、粗面加工が施された表面を呈しているのが好ましい。剛性部材230の前側部234のシャフトの直径は背側部232のシャフトの直径よりも大きいのが好ましい。概ね円筒状の前側部の直径は1 mmから20 mmの範囲であるが、2 mmから10 mmの範囲であるのがより好ましい。
【0049】
ヘッド242は前端に保持されており、丸味付け加工されていてもよいし、または、遠位先端に向かって直径が逓減する円錐形状を有していてもよい。ヘッド242の外径すなわち最大径は、剛性部材230の前側部234のシャフトの円筒断面の外径に概ね等しいのが好ましい。従って、固定具230の剛性部材230の先端すなわちヘッド242は、その最も幅広の点における直径が固定具230の直径と同じであるが先細りとなっており、その場合の形状はネジを切った円錐状またはネジを切っていない円錐状のいずれか、鈍端、円球状、もしくは、上記以外の、挿入するのに好適であると思われる何らかの形状である。ヘッド242は概ね滑らかな面または粗面加工を施した面から構成されている。
【0050】
剛性部材230の固定具または留め具もしくはシャフトの背側部232は真直ぐであり、すなわち、直線方向に延びており、剛性部材230の内側部236から剛性部材230の後端244まで延在しているのが好ましい。背側部232の長さは5 mmから100 mmの範囲であればよいが、10 mmから45 mmの範囲であるのがより好ましい。背側部232の円筒断面はその直径が、上述のように、前側部234の外径よりも小さい。特に、背側部232の外径は1 mmから20 mmの範囲であり、2 mmから15 mmの範囲であるのがより好ましく、約2.5 mmであるのが更により好ましくさえある。背側部232の外周面246は滑らかであってもよいし、ネジ切り加工が施されていてもよいし、或いは、その少なくとも一部に沿って粗面加工が施された表面が設けられているようにしてもよい。
【0051】
剛性の長手部材230の内側部分すなわち首状くびれ部236は長手部材の両端部238、244から或る距離だけ離隔した位置にあり、その少なくとも一部の周囲に外側ネジ248が設けられている。外側ネジ248が切られているのに加えて、内側部分236は外径が不均一な場合がある。特に、剛性のスリーブ被覆部材の前側部234と背側部232とを接続している内側部分には、前側部234の凡その直径に一致した最大径である第1径の部分と、最小径であるのが好ましいが、背側部232の凡その直径に一致している第2径の部分とが設けられているようにしてもよい。より詳細に説明すると、内側部分は先細り状になっており、すなわち、円錐形状を呈しており、この点について、内側部分の外径は第1径から第2径まで逓減している。
【0052】
剛性の長手部材230は中実材から形成されているとよく、一実施例においては断面が円筒断面を呈し、滑らかな面である場合もあれば粗面加工された面であることもある表面40、46から構成されており、粗面加工された面は骨を中に成長させることができる。使用される素材はチタニウム、ステンレス鋼、または、それ以外の、脊椎を固定するのに好適な何らかの素材であればよい。使用される素材はまた、生体吸収性があってもよいし、生体吸収性がなくてもよい。
【0053】
ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、
図1から
図3の実施例に関連づけて概ね既に説明したように、剛性部材230の背面または背側部232に螺合し、または、着脱自在にネジ留めすることができる。より詳細に説明すると、本実施例においては、剛性部材230の背側部232はネジを切ったスリーブ被覆部材102を携帯支持する。従って、ネジを切ったスリーブ被覆部材102はその軸心位置に設けられた穿孔108が長尺に沿って延在しており、また、スリーブ被覆部材の内径は剛性部材230の背側部の外径に一致しているのが好ましい。それゆえに、穿孔108は剛性部材230を受容するのに適した構成になっている。ネジを切ったスリーブ被覆部材102はその前端106に内側ネジ110が設けられており、該内側ネジは剛性部材230の内側部分236に設けられた外側ネジ248に係合するのに適した構成となっており、ネジを切ったスリーブ被覆部材102を剛性部材230に取外し自在に固着させることができるようにするのが好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102は前段までに既に説明したが、剛性の湾曲した後脊椎固定具230はネジを切ったスリーブ被覆部材102を欠いた状態で使用することもできる。
【0054】
剛性の長手固定具230の挿入および使用は、
図4から
図15の実施例に関連づけて明示したものに概ね類似している。従って、剛性の長手部材230は概ね前述のとおり、経椎弓根配向、経椎弓板配向、または、経関節突起配向で挿入される。しかしながら、
図16から
図17の本発明の実施例は湾曲した剛性部材であるので、代替の実施例の前端238はネジを切っていないヘッド242を保持しているのが好ましい。従って、挿入処置中は、長手部材のスクリュー式ヘッドおよび前側部を弓形の穿孔を越えた先までネジ込む代わりに、医者は単に剛性の長手部材230の全体を椎骨32と背側椎弓突起群34とに設けられた弓形穿孔122押し込むだけでよく、より詳細に説明すると、長手部材を椎弓根50に設けられた弓形穿孔を越えた更に先まで押し込んで、背側端232、244を椎体36に埋設するだけでよい。最終結果として、1本の剛性長手部材230を椎体36に挿入して、
図4から
図15の各実施例に関連付けて概ね既に説明したように、剛性固定具の弓形の前側部234は椎体36の内部に配備され、真直ぐな部分すなわち背側部232は椎弓根50に初期的に設けられた穿孔122内に置かれて、その後端の位置で接近して操作できるようになる。
【0055】
一番最初に言及した実施例に関連づけて既に説明したように、多数の剛性固定具を挿入して相互接続することができる。
【0056】
図1から
図15の実施例と同様に、剛性の長手固定具230およびその挿入方法または使用方法には、従来の経椎弓根ネジに勝る幾つかの利点がある。すなわち、本発明の後脊椎固定具の直径は先行技術の現在使用されているネジの外径よりも短い。従って、後脊椎固定具が椎弓根50の側壁を打ち抜いて神経に触れる危険が少ない。同様に、剛性の後脊椎固定具230はその湾曲部すなわち弓形部が椎体36の内部に配備されるようになっているため、ネジを引抜く恐れのある剪断力を受け易いが、本件既述の実施例の後脊椎固定具は圧縮力を付与しない限り引抜くことができない。同様に、椎骨32の1面ごとに1本の固定具を置いたり、または、右椎弓根50に1本の固定具を置いて左椎弓根51に1本の固定具を置いた場合のように、複数の後脊椎固定具が一緒に接続される際には、これら連結された複数の固定具が椎体36の内部に「爪」を形成する。更に、多数の剛性固定具は各々が後端で互いに堅固に接続されているため、引抜かれても、曲がることはあり得ない。また、前述の実施例と同様に、本発明はネジを切ったスリーブ被覆部材102に設けられた外側ネジを更に活用するが、スリーブ被覆部材を使用すれば引抜き耐性を増し、引抜き耐性は該外側ネジが椎弓根50の内側部に係合することにより生じるものである。
【0057】
図18から
図19に例示されている代替の実施例による湾曲した後脊椎固定具330すなわち長手部材はカニューレ型であってもよい。より詳細に説明すると、後脊椎固定具の長手部材332にはその中を長軸線方向に貫いて延びる通路すなわち穿孔334が設けられている。長手部材すなわちカニューレ型の部材は、真直ぐな背側部336および弓形の前側部338が設けられて、剛性材または弾性材もしくは一部が可撓性の素材により形成されているとよい。カニューレ型の部材332は有窓状態にされてもよいし、または、有窓状態になっていなくてもよい。
【0058】
弾性のカニューレ型長手部材332は、長手穿孔または長軸線方向に延在する穿孔334が設けられた弾性の長手本体部340と、剛性の湾曲したスリーブ被覆部材70
(図示せず)とから構成されている。弾性のカニューレ型長手部材332は長さが5 mmから200 mmの範囲であるとよいが、20 mmから60 mmの範囲であるのがより好ましい。
図1から
図3の実施例と同様に、内側のカニューレ型長手本体部340の前側部342は長手本体部340の内側部344から張出しており、該内側部は長手本体部340の後端346および前端348から或る距離だけ離れた位置にある。前側部342は長さが5 mmから100 mmの範囲であるが、10 mmから30 mmの範囲であるのがより好ましい。長手本体部340はその前側部342に位置する外面350が円筒面であるのが好ましく、滑らかであってもよいし、または、粗面加工されていてもよく、もしくは、少なくともその一部に沿って粗面加工された面が設けられていてもよい。長手本体部340の概ね円筒状のシャフトの外径は1 mmから25 mmの範囲であるとよいが、2 mmから15 mmの範囲であるのがより好ましい。軸心を通る穿孔334は断面が円筒断面であり、長手部材332の長尺に亘って延びており、すなわち、長手本体部340の後端
346から前端
348まで延在している。軸心を通る穿孔の円筒断面の内径は1 mmから25 mmの範囲であるとよいが、1.5 mmから14 mmの範囲であるのがより好ましい。この実施例においては、
図1から
図3の実施例に関連づけて概ね既に説明したように、湾曲したスリーブ被覆部材70を取付けることにより曲がって形状が弓形になるようにするのに、長手本体部340はその一部に沿って弾性または可撓性を有しているのが好ましく、シャフトが少なくともその前側部42に沿って可撓性を有しているのがより好ましい。従って、カニューレ型長手本体部340は形状記憶素材または形状記憶合金などのような素材から形成されているとよい。しかしながら、チタニウム、ステンレス鋼、または、それ以外の、脊椎固定に好適な何らかの素材などのような形状記憶しない素材または合金が使用されてもよい。使用される素材は生体吸収性であってもよいし、そうでなくてもよい。図示されているように、前側部342は湾曲したスリーブ被覆部材70の内側に保持される。このため、湾曲したスリーブ被覆部材70は、その長尺に沿って軸心を通る穿孔108を延在させた、ネジを切ったスリーブ被覆部材であるとよいが、該スリーブ被覆部材は内径が剛性部材230の背側部の外径に一致しているのが好ましい。よって、穿孔108は前側部342を受容するのに適した構成である。前端106の内側ネジ110は長手部材342に設けられた外側ネジ343に係合して、ネジを切ったスリーブ被覆部材102を取外し自在に固着させることができる。
【0059】
図18で明らかなように、カニューレ型の長手
本体部340の背側部336は長手本体部340の内側部344から後端46まで延在している。背側部336は長さが5 mmから100 mmの範囲であるのが好ましいが、10 mmから30 mmの範囲であるのがより好ましい。背側部336は外径が外周面により規定されるが、該外径は長手本体部340の前側部342の外径と等しい場合もあれば、それとは異なっている場合もある。このため、背側部336の外径は1 mmから25 mmの範囲であればよいが、2 mmから15 mmの範囲であるのがより好ましい。これに加えて、背側部336の外面352は滑らかであってもよいし、または、粗面加工されていてもよいし、もしくは、少なくともその一部に沿って粗面加工された面が設けられているようにしてもよい。
【0060】
長手本体部340の背側部336はその端部にネジを切った接続部または滑らかな接続部が設けられており、該接続部はその外側に注射器366などを装着するか、または、その内側に注射器366などを受容するのに好適な構成になっているとよい。注射器366には滑らかな端部が設けられていてもよいし、またその代替例として、端部にネジが切られていてもよいため、接続部に接続するか、または、背側部に直接接続することにより、注射器を長手部材332の端部に締り嵌めしてもよいし、または、該端部にネジ留めしてもよい。物質導入用装置すなわち注射器366は、カニューレ型長手
本体部340の軸心を通る穿孔334に対応してこれと連絡状態になるように配置された開口部が設けられており、硬化剤364または何らかの好適な物質をカニューレ型長手部材の中に注入し、該長手部材を通して伝送するよう図っている。
【0061】
これに代わる例として、カニューレ型長手部材、すなわち、長手本体部340と湾曲したスリーブ被覆部材70とを完全に連結してできるのが、
図16および
図17の実施例に関連づけて概ね既に説明した、
図18及び
図19に示す剛性の一体装置である。しかしながら、剛性のカニューレ型装置は、その後端から前端までの長尺分だけ延在している、軸心を通る穿孔が設けられていてもよい。
【0062】
図1乃至
図3と
図16および
図17の各実施例に関連づけて概ね既に説明したように、前述のカニューレ型長手部材は各々がネジを切ったスリーブ被覆部材102を携帯支持しているようにしてもよく、該スリーブ被覆部材は長手部材332の背側面または背側部336に保持されるか、または、そこにネジ留め式に取付けられるのが好ましい。ネジを切ったスリーブ被覆部材102を説明してきたが、カニューレ型長手部材はネジを切ったスリーブ被覆部材102を伴わずに使用されてもよい。
【0063】
該固定具または該留め具には任意で1個以上の開口356が設けられていてもよいが、具体例として、多様な穴、孔、窓、溝穴、細隙穴、または、これらの各種組合わせが挙げられる。カニューレ型長手部材の前側部338は有窓であるのが好ましい。複数の開口または窓356はカニューレ型長手部材332のシャフトに沿って配置されているとよく、必要に応じて、長軸線方向、周方向、または、その両方向に互いから離隔しているとよい。これに加えて、カニューレ型長手部材332には周辺に1個以上の開口356が設けられて矢状の外肢などの付属物を挿入することができるようにすることにより、固定具を椎体36に更に係留することができるよう図っている。例えば、付属物はカニューレ型部材に設けられた穿孔を通して挿入されるように設けられており、その場合、複数の矢状の突起が後方を向くため、付属物を一旦挿入してから引き戻すと、付属物は複数の矢状の外肢を窓から外に出た状態に配備する。また別な代替の実施例においては、メッシュまたはネットが椎体に配備されたカニューレ型部材に設けられた穿孔を通して挿入され、メッシュまたはネットが椎体内に配備されてから硬化剤が注入される。メッシュまたはネットは硬化剤を強化するために使用される。
【0064】
図19に例示されているように、好ましい実施例においては、カニューレ型部材の軸心を通る穿孔334は、前端に先端部360が設けられているとともに後端に止め具またはフランジ362が設けられているスタイレット358、または、それに類似する装置で、例えば、ロッド、ネイル、スパイク、または、ネジなどを受容するのに好適に構成されている。スタイレット358は外周面の外径がカニューレ型部材の軸心を通る穿孔334の内部に適合するように寸法設定されているのが好ましく、それ故、その直径の範囲は0.1 mmから24 mmであるのが好ましく、1 mmから15 mmであるのがより好ましい。スタイレット358の長さはカニューレ型部材332の長さを超えるため、前端の先端部360はカニューレ型部材の前端348を越えて先まで張出し、また、止め具362はカニューレ型部材の後端346に隣接して配置されるか、または、該後端に当接する。スタイレット358の長さは5 mmから300 mmの範囲であればよく、10 mmから200 mmの範囲であるのがより好ましい。集成体のネジ回し式挿入法で使用するためには、先端部360には外側ネジが設けられているとよいものと思量される。フランジ362の外径はカニューレ型部材の軸心を通る穿孔334の内径よりも大きいため、フランジ362は係止部材として作用し、スタイレット358がカニューレ型部材332の更に内奥に挿入されるのを防止するのが好ましい。このため、フランジ362の外径は2 mmから30 mmの範囲であり、3 mmから20 mmの範囲であるのがより好ましい。スタイレット358は哺乳類の体内で使用するのに好適な素材から構成されており、カニューレ型部材の湾曲した前側部338に通して導入したりそこから取出したりすることが束縛なしにできるのが好ましい。
【0065】
図18および
図19に記載されている後脊椎固定具すなわちカニューレ型長手部材332の好ましい使用方法を、
図20から
図22を参照しながら説明するが、これらの図面は経椎弓根配向での挿入を例示している。軸心を通る穿孔、スタイレット、または、その両方が長手部材、スリーブ被覆部材、または、その両方を透過して視認することができるようにしていることから、
図20から
図28は概略的である点に留意するべきである。従って、後脊椎固定具330は
図4から
図8に関連づけて概ね既に説明したとおりに挿入される。しかしながら、カニューレ型の長手部材330の使用方法においては、スタイレット358は、椎弓根50に挿入する前に、まず最初にカニューレ型長手部材332の穿孔334に挿入される。カニューレ型長手部材332とスタイレット358は互いに連携して長手部材を形成してから概ね前述したとおりに挿入されることで、カニューレ型長手部材332が初期的に椎骨に挿入される第1位置(図示せず)から
図21に例示されている、挿入完了位置である第2位置まで集成体を移動させる。前述の実施例についてと同様に、挿入完了位置では、前端348は椎弓根50に設けられた弓形穿孔または弓形経路を越えた先まで挿入されることにより、椎骨32に脊椎固定具330の端部を堅固に埋設する。着脱自在な、ネジを切ったスリーブ被覆部材102もまた、
図4から
図15の実施例に関連づけて既に説明したとおりに、任意で装着されてもかまわない。
【0066】
この位置では、カニューレ型集成体は椎体36に
図21に例示されているように配置されているため、固定具の弓形の前側部338は椎体36に置かれて、固定具の真直ぐな部分336は椎弓根50に初期的に設けられた穿孔122に置かれている。この挿入完了位置では、湾曲部338の少なくとも一部は初期形成された穿孔122の内部に配備されており、別な一部は椎体36の内部に置かれているのが好ましい。更に、長手部材332の背側部336の少なくとも一部は、椎弓根50に設けられた開口部の外側またはその近辺に張出すため、カニューレ型の長手部材とそこに設けられた穿孔334は椎体36の外側から接近・操作可能となる。後脊椎固定具30を挿入する標的位置である椎体部位の断面の半径を考えると、椎骨の中心部120の断面の半径は該椎骨部位の半径の4分の3(3/4)倍を超えないのが好ましい。椎骨中心部120の半径は該椎体部位の半径の3分の2(2/3)倍を超えないのがより好ましい。中心部120の半径は該椎体部位の半径の3分の1(1/3)倍を超えないのが更にもっと好ましくさえあり、該椎体部位の半径の4分の1(1/4)程度の狭さでもよいぐらいである。
【0067】
経椎弓根挿入による挿入方法を詳細に説明してきたが、カニューレ型の長手部材は、本明細書で概ね既に説明したとおりの態様で、経椎弓板配向に挿入されてもよいし、または、経関節突起配向に挿入されてもよい。
【0068】
カニューレ型集成体がその挿入完了位置に配備されてしまうと、穿孔334が椎体36の内部に通じる経路として作用するようにスタイレット358をカニューレ型長手部材から取出す(
図22を参照のこと)。
【0069】
カニューレ型集成体の挿入とスタイレット358の取出しの後で、注射器またはレザバーもしくは投入装置に物質が充填され、椎骨への投入に備える。容認できる物質導入装置の具体例としては、注射器、ノズル、レザバー、または、提案された目的に好適な何らかの投入装置が挙げられる。物質を投入するのに好適であれば如何なる技術を利用してもよいが、具体的には、液圧注射器を利用した加圧、振動、手動圧、または、これらの何らかの組合わせなどがある。
【0070】
特に、注射器またはレザバーもしくは投入装置には骨固定用セメント、抗生剤、骨修復用化合物、メッシュ装置、または、これら以外の、脊椎の解剖学的構造の再建に役立てることができる物質、構造的安定性に有用となり得る物質、感染率を低減するのに有用な物質、脊椎の治療に役立つ物質、もしくは、これら物質の各種組合わせが充填されるとよい。限定するものではない具体例として、硬化物質または硬化剤364は椎骨32へ導入するのに注射器に充填され、後脊椎固定具が望みもしないのに引抜かれるのを阻止するようにするとよい。容認できる硬化剤としては、骨セメント、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、ポリメチルメタクリレート、または、これら以外の、多数の製造業者から入手可能な何らかの好適な生体吸収性剤もしくは生体非吸収性剤などがある。
【0071】
硬化剤364またはそれ以外の物質を貯蔵している導入装置366、または、それら物質を受容することができる導入装置366は、
図23に例示されているように、カニューレ型の後脊椎固定具すなわち長手部材332の後端346に取付けされる。導入装置または該導入装置の開口がカニューレ型長手部材の軸心を通る穿孔334と連絡状態に配置されて、硬化剤364またはそれ以外の物質をカニューレ型長手部材の中に投入して伝送することができるようにする。
【0072】
既に示したように、カニューレ型長手部材は、また特に、穿孔334は多様な薬剤、素材、物質、ツール、または、これらの各種組合わせの供与を可能にする。例えば、各種装置またはツールを穿孔334に通して椎骨の内部に直接挿入することができる。これに代わる例として、カニューレ型長手部材に装着された注射器または投入装置を使用するといったような手段により、各種物質または薬剤をカニューレ型部材を通して椎骨に導入するようにしてもよい。例えば、セメントまたは硬化剤364といった粘着剤が椎体36に導入されるようにしてもよい。限定するものではない具体例として、
図23から
図27に例示されているようなカニューレ型固定具330を使うことで後脊椎固定具が望みもしないのに引抜かれるのを阻止するようにして、硬化物質または硬化剤364を椎骨32に導入するようにしてもよいが、この場合、椎骨32の中心部120に導入するのが好ましい。特に、この方法は、固定具が望みもしないのに引抜かれるのを阻止するのに、固定具に設けられた穿孔334を通して椎体36に硬化剤364を導入する処置を含んでいる。
【0073】
物質364は、
図24に例示されているように、注射器366からカニューレ型部材の軸心を通る穿孔334を通って椎体の中へ搬送される。投入を達成する手段としては、選択された導入装置366に関連して好適な手段であればよく、例えば、プランジャーが取付けられた注射器の使用が挙げられるが、この場合のプランジャーは物質の投入を強制する目的で利用され、すなわち、押圧されたり振動を加えられたりする。物質364を継続して導入することにより、または、力を加えることにより、物質は注射器366からカニューレ型長手部材の後端に入ってから更にカニューレ型長手部材332の前端の穿孔334の出口開口を通って椎体36の中に移動する(
図25を参照のこと)。物質364を椎体に導入するにあたり、カニューレ型長手部材332のシャフトに沿って互いから離隔された付加的な代替の穴または窓356(
図18を参照のこと)を通して導入されるようにしてもよいが、但し、このような穴または窓が適用できる場合に限られる。長手部材332を係留するのに適した量のセメント剤が椎体内に配備されるのが好ましい。導入される物質の量は0.01 ccから150 ccの範囲であるとよく、1 ccから30 ccの範囲であるのがより好ましい。
【0074】
椎体36においては、硬化剤364は固化して、椎体36に導入された硬化剤364と接触しているか、または、少なくとも一部が硬化剤により包囲されている長手部材332の前側部338に係留具を形成し、よって、後脊椎固定具330の係留具として作用する。硬化剤は椎体の密度を増すとともに、空隙を埋めるのに役立ち、構造的安定性を増大するうえに、椎体の解剖学的構造が骨折、腫瘍、または、それ以外の病理学的症候のせいで崩壊している場合には、これを再建することができる。
【0075】
硬化剤364の導入が完了してしまうと、導入装置366はカニューレ型部材332から切り離される。次に、
図26に例示されているように、カニューレ型部材の軸心を通る穿孔334にスタイレット358を挿入して、穿孔334の内部を洗浄することができる。より詳細に説明すると、スタイレット358は、穿孔334に残留する硬化剤364またはそれ以外の物質を強制的に穿孔の外に排出する。続いて、
図27に例示されているように、スタイレット358を再び取外すとよい。
【0076】
前述の方法を利用して、
図28から
図30に例示されているように、2本以上の後脊椎固定具30を椎体32に挿入することができる。挿入は、
図4から
図27の前述の実施例に関連づけて概ね既に説明したとおりに行われる。この実施例においては、硬化剤364はまた別な脊椎固定具331によっても、
図23から
図27に関連づけて概ね既に説明されたように椎体36の中心部120に導入することができるため、最初に説明した第1の脊椎固定具330により導入された硬化剤364を追加の第2脊椎固定具331により導入された硬化剤364と結合させることができ、従って、椎体36の内部で第1の脊椎固定具を第2の脊椎固定具に連結させることができる。
【0077】
図28から
図30で明らかなように、ネジを切ったスリーブ被覆部材102も任意でカニューレ型長手部材332の背側面または背側部336に螺合され、または、ネジ留めされて、
図4から
図15の実施例に関連づけて概ね既に説明したように、椎弓根50に設けられた弓形穿孔の中に進入させることができる。前述の実施例に関連づけて既に説明したとおり、ネジを切ったスリーブ被覆部材102は、挿入完了した位置にくると、その前端106が椎弓根50に形成された経路122の内部に置かれ、その後端104は球状部114が椎弓根50の外に張出して、接近・操作可能となる。
【0078】
複数の後脊椎固定具または湾曲した脊椎固定具330、331も、当該技術で周知であり尚且つ本明細書で概ね既に説明した多様な機構により、互いに接続することができる。追加の第2固定具は最初に説明した第1固定具に連結されて、固定具の相互の結合を向上させ、第1椎骨32のこれに隣接する椎骨33への結合を向上させ、または、その両方の結合を向上させることができる。
【0079】
カニューレ型後脊椎固定具330には、前述の各実施例と同様に、従来の経椎弓根ネジに勝る幾つもの利点がある。例えば、前述の実施例に関してと同様に、先行技術の現在使用されているネジと比較して本発明の固定具の外径が小さいおかげで、後脊椎固定具が椎弓根50の側壁を打ち抜いて神経に触れてしまう危険が少なくて済む。同様に、骨の密度が先行技術のネジの引抜き耐性に関与するほどには、湾曲した後脊椎固定具は骨の密度に直接依存してはおらず、従来の経椎弓根ネジの剪断引抜き耐性が本発明の固定具では圧縮引抜き耐性に取って代わっている。ネジを切ったスリーブ被覆部材102に設けられた外側ネジも引抜き耐性を増すが、引抜き耐性は該外側ネジが椎弓根50の内側部に係合することにより生じるものである。これに加えて、カニューレ型の後脊椎固定具330により各種薬剤、各種装置、または、薬剤と装置の両方を導入することができるようになるばかりか、硬化剤364などのような係留用の物質も導入することができ、固定具を椎骨32の適所に更に堅固に固着させるのに有用となる。更に、複数の固定具は各々が互いに連携した集成体の形態に構成されて、隣接する椎骨との結合を向上させる手段として作用するとともに、もっと強い力を及ぼさない限り「爪」すなわち固定具を引抜くことができないようにしている。
【0080】
本明細書中に具体例として特定の範囲と寸法を明示しているが、集成体と個々の構成部材は特定の応用例および使用者の好みに合わせて誂えることができる。このため、集成体および個々の構成部材は、脊柱の異なる部位ごとに適合するように相互に異なる寸法に設定するとよい。同様に、脊椎を仙骨および腸骨に接続するのに移植片を利用してもよいが、仙骨および腸骨の部位では、移植片は概ねかなり大型で長くなると思われる。一例として、上述のような移植片は長さが150 mmかそれを超える寸法にまで及び、直径は少なくとも10 mmから15 mmになると思われる。
【0081】
本発明の多様な代表的実施例を或る程度まで詳細に説明してきたが、当業者であれば、本明細書および添付の特許請求の範囲に明示された発明の主題の真髄すなわち範囲から逸脱せずに、開示された実施例の代替例を無数に思いつくことができる。「結合」に関する言及(例えば、「取付け・装着」、「連結」、「接続」など)は広く解釈されるべきであり、各構成要素の接続とそれに関連する構成要素相互間の運動との間に介在する各種部材をも包含している場合がある。斯様に、「結合」に関する言及は必ずしも、2個の構成要素が直接接続されて互いに固定関係にあることを暗示してはいない。場合によっては、本明細書に直接的または間接的に明示されている方法ごとに、多様な工程および処置を1連の考えられる作業順に説明したが、これら工程および処置は再構成し直したり、置き換えたり、または、削除しても、必ずしも本発明の真髄および範囲から外れることがないことを当業者なら認識するだろう。前段までの説明に含まれている事項、または、添付の図面に例示されている事項は全て、例示にすぎず限定するものではないと解釈されるべきであるとの意図がある。細部または構造の修正も、添付の特許請求の範囲に規定されているような発明の真髄から逸脱せずに行い得る。
【0082】
好ましい実施例に言及しながら本発明を説明してきたが、本発明の真髄および範囲から逸脱せずに実施形態の変更を行うことができることを当業者なら認識するであろう。