特許第5653991号(P5653991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5653991
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】携帯端末試験装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/06 20090101AFI20141218BHJP
   H04B 17/00 20150101ALI20141218BHJP
   H04M 1/24 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H04W24/06
   H04B17/00 D
   H04M1/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-270963(P2012-270963)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-116873(P2014-116873A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079337
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 誠志
(72)【発明者】
【氏名】音羽 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 尚史
(72)【発明者】
【氏名】辻村 裕史
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/135864(WO,A1)
【文献】 特開2010−41157(JP,A)
【文献】 特開2004−56792(JP,A)
【文献】 3GPP TS 36.508 V10.2.0,2012年 9月,pp.92-120,315-349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 7/24 − 7/26
H04B 17/00
H04M 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源投入またはリセット操作による動作初期時に、基地局との間の信号送受信により、リンク確立、位置登録の処理を行い、リンク開放後にアイドル状態に移行し、該アイドル状態中に基地局からの接続要求に対して再度リンク確立の処理を行い、基地局を介して通信を行うように構成された携帯端末を試験するための携帯端末試験装置であって、
前記動作初期時の携帯端末との間で前記リンク確立のために必要なメッセージの交換を行うリンク確立手段(211)と、
前記リンク確立手段によって試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、該試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知し、当該試験対象の携帯端末から通知メッセージに対する応答メッセージを返させることで、テストモードに移行させるテストモード移行手段(213)と、
前記テストモード移行手段によってテストモードに移行させた携帯端末に対して送受信試験を行う試験手段(214)とを有することを特徴とする携帯端末試験装置。
【請求項2】
前記リンク確立手段によって試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、当該試験対象の携帯端末との間で、認証に関するメッセージ交換を行う擬似認証手段(212)を備え、
前記テストモード移行手段は、前記擬似認証手段によって前記認証に関するメッセージ交換が完了した段階で、試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知することを特徴とする請求項1記載の携帯端末試験装置。
【請求項3】
電源投入またはリセット操作による動作初期時に、基地局との間の信号送受信により、リンク確立、位置登録の処理を行い、リンク開放後にアイドル状態に移行し、該アイドル状態中に基地局からの接続要求に対して再度リンク確立の処理を行い、基地局を介して通信を行うように構成された携帯端末を試験するための携帯端末試験方法であって、
前記動作初期時の携帯端末との間で前記リンク確立のために必要なメッセージの交換を行ってリンク確立させる段階と、
前記試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、該試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続の設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知して、当該試験対象の携帯端末から通知メッセージに対する応答メッセージを返させることで、テストモードに移行させる段階と、
前記テストモードに移行させた携帯端末に対して送受信試験を行う段階とを含むことを特徴とする携帯端末試験方法。
【請求項4】
前記試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、当該試験対象の携帯端末との間で、認証に関するメッセージ交換を行う段階を含み、
該認証に関するメッセージ交換が完了した段階で、試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知することを特徴とする請求項3記載の携帯端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、スマートフォン等のように基地局との間で無線通信を行う携帯端末の試験を効率的に行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末の通信システムでは、基地局のサービスエリア内にある携帯端末が電源投入時やリセット操作されたときにその基地局の電波を受信して基地局に対して通信を可能とするための要求を行い、基地局との間で通信ができる状態(リンク確立状態)となり、続いて携帯端末の固有の情報を基地局に通知して、その基地局が属するネットワークにその携帯端末の存在エリアを登録する認証・位置登録処理を行った後、リンク開放処理によりアイドル状態に遷移し、その後、基地局からの呼接続(着信)や発信等、通信が必要な状況になると基地局との通信状態に移行する。
【0003】
このような通信を基地局との間で行う携帯端末の試験を試験装置(擬似基地局装置ともいう)で行う場合、従来は、図4に例として示すように、基地局が行っているのと同等の手順で試験対象の携帯端末とメッセージの交換を行っていた。
【0004】
即ち、動作初期時の携帯端末1は、位置登録のために基地局との間の通信を要求するメッセージ、
Mu1=rrc Connection Request(establishment Cause :registration)
を送信し、この要求に対して、試験装置10は、携帯端末1との通信に使用するチャネル等を指定するメッセージ、
Md1=rrc Connection Setup
を送る。以下、Mu(数字)は携帯端末1が発するメッセージ、Md(数字)は試験装置擬似基地局装置)10が発するメッセージとする。
【0005】
これを受けた携帯端末1は、指定された情報に基づいて通信に使用するチャネル等の設定を行い、設定が完了したことを表すメッセージ、
Mu2=rrc Connection Setup Complete
を送信し、続いて、位置登録のための接続要求メッセージ、
Mu3=initial Direct Transfer(Attach request)
を送信する。
【0006】
上記Mu1〜Mu2までの処理はリンク確立処理であり、Mu3は接続要求処理であるが、ここではMu1〜Mu3まで行われた段階でリンク確立とする。このリンク確立が完了した後、携帯端末1の認証処理に移行する。
【0007】
即ち、試験装置10は、携帯端末1の認証の計算に用いる乱数(RAND)値を通知するメッセージ、
Md2=downlink Direct Transfer(Authentication and ciphering request)
を送り、これを受けた携帯端末1は、RAND値と自機の情報とを用いた所定の演算を行い、その計算結果をメッセージ、
Mu4=uplink Direct Transfer(Authentication and ciphering response)
に含めて返す。
【0008】
試験装置10はこの計算結果が正しいか否かを判定し、正しければメッセージ認証使用開始通知のメッセージ、
Md3=security Mode Command
を送り、携帯端末1が、このメッセージを受信したことを報告するメッセージ、
Mu5=security Mode Complete
を返す。
【0009】
続いて、試験装置10から、携帯端末ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別番号IMSI(International Mobile Subscriber Identity)を問い合わせるメッセージ、
Md4=downlink Direct Transfer (Identity request :IMSI)
を送り、携帯端末1からそれに答えるメッセージ
Mu6=uplink Direct Transfer (Identity response)
が返される。なお、IMSIは、認証に用いるユーザ固有のキー情報(Authentication key)とともに携帯端末のSIMに記憶されている。
【0010】
次に、試験装置10から、携帯端末毎に割り当てられた端末識別番号IMEI(International Mobile Equipment Identity)を問い合わせるメッセージ、
Md 5=downlink Direct Transfer (Identity
request :IMEI)
を送り、携帯端末1からそれに答えるメッセージ
Mu7=uplink Direct Transfer (Identity response)
が返される。
【0011】
そして、試験装置10から、位置登録要求(Attach request)を認めるメッセージ、
Md6=downlink Direct Transfer (Attach accept)
を送り、これに応答するメッセージ、
Mu8=uplink Direct Transfer (Attach Complete)
が携帯端末1から返される。
【0012】
これまでの処理により、携帯端末1の認証及び位置登録処理が完了したので、リンク開放のために試験装置10から、チャネル開放を指示するメッセージ、
Md7=rrc Connection Release
が送信され、携帯端末1はこれに応答するメッセージ、
Mu9=rrc Connection Release Complete
を出力して、アイドル状態となる。
【0013】
そして試験装置10は、このアイドル状態にある携帯端末1に対して試験のための接続要求メッセージ、
Md8=paging Type1
を送信し、これを受けた携帯端末1は、再び試験装置10との通信を要求するメッセージ、
Mu10=rrc Connection Request(establishment Cause :terminating
Conversational Call)
を返す。
【0014】
続いて、試験装置10は、携帯端末1との通信に使用するチャネルなどを指定するメッセージ、
Md9=rrc Connection Setup
を送る。
【0015】
これを受けた携帯端末1は、指定された情報に基づいて通信に使用するチャネル等の設定を行い、設定が完了したことを表すメッセージ、
Mu11=rrc Connection Setup Complete
を送信し、続いて、接続要求メッセージ、
Mu12=initial Direct Transfer(paging response)
を送信する。
【0016】
上記Md8〜Mu12までのメッセージ交換は、試験のための再リンク確立処理であり、このリンク確立が完了した後に、試験装置10は、携帯端末1の認証のために、認証の計算に用いるRAND値を通知するメッセージ、
Md10=downlink Direct Transfer(Authentication and ciphering request)
を送り、これを受けた携帯端末1は、認証キー情報(Authentication key)とRAND値を用いた所定の演算を行い、その演算結果を含むメッセージ、
Mu13=uplink Direct Transfer(Authentication and ciphering response)
を返す。
【0017】
そして、試験装置10はこの計算結果が正しいか否かを判定し、正しければメッセージ認証使用開始通知のメッセージ、
Md11=security Mode Command
を送り、これを受けた携帯端末1が、受信したことを報告するメッセージ、
Mu14=security Mode Complete
を返す。
【0018】
上記Md10〜Mu14までのメッセージ交換により、試験対象の携帯端末1が認証され、その認証が終了した段階で、試験装置10は、試験のためのテストモード接続の設定を行うためのメッセージ、
Md12=downlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)
を携帯端末1に送信し、これを受けた携帯端末1はこれに答えるメッセージ、
Mu15=uplink Direct Transfer(Activate RB Test Mode Complete)
を返す。
【0019】
そして、試験装置10は、試験のためのデータ通信に用いるチャネル等を指定するメッセージ、
Md13=radio Bearer Setup
を送り、これを受けた携帯端末1がその設定を完了したことを通知するメッセージ、
Mu16=radio Bearer Setup Complete
を返す。
【0020】
続いて、試験装置10は、テストモードの種別の設定を行うためのメッセージ、
Md14=downlink Direct Transfer(Close UE Test Loop)
を携帯端末1に送信し、これを受けた携帯端末1はメッセージ、
Mu17=uplink Direct Transfer(Close UE Test Loop Complete)
を返す。
【0021】
このようにしてテストモードに移行してから、携帯端末1に対する送受信試験が行われることになる。この試験は、携帯端末1の送信機能に関しては送信電力、EVM、ACLR等、受信機能に関しては受信感度、ループバックテスト等である。
【0022】
このように、従来の試験装置では、基地局と携帯端末との通信手順と同じ手順で携帯端末を試験できる状態まで移行させてから携帯端末に対する試験を行っていたが、携帯端末は年々高速化、多機能化、マルチバンド化しており、それに伴う試験項目の増加により試験時間が長くなってしまい、製造ラインなどで一台ずつ試験を行う場合、その効率的に試験できるようにすることが強く望まれている。
【0023】
その一つの方法として、次の特許文献1には、位置登録に必要な情報を予め携帯端末側に記憶させておき、試験装置との間で位置登録処理を省略してからアイドル状態におけるテストを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2004−56792号公報(特許第4261258)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、上記特許文献1のように携帯端末側に試験のためだけに用いる位置登録処理に必要な情報を記憶させておくことは無駄であり、そのためにメモリの記憶容量を無駄に消費してしまう。また、試験用の位置登録情報を予め記憶した携帯端末だけしか適用できず、汎用性という点で問題がある。
【0026】
また、たとえ上記特許文献1のように位置登録処理を短縮化しても、図4に示したチャートのように、位置登録処理後にリンクを開放して一旦アイドル状態に入ってから、再びリンクを確立してテストモードに移行しているから、その間に相当な時間を費やしてしまい、携帯端末の製造過程で効率よく試験を行うことが困難であった。
【0027】
また、上記試験では、携帯端末の認証のために、記憶されている情報が既知の試験用SIMを用いる必要があるが、M2Mモジュールの出荷前の動作確認等のように、携帯端末の電話番号等のユーザ情報を特定するための情報が記憶された実際のSIM(Subscriber Identity Module )が実装された状態での試験要求が強くなってきており、実際のSIMに保存されているパラメータが既知でないため、試験を行う上で障害となり得る。特に、SIM固有の値であるIMSIや認証に用いられるキー情報(Authentication
key)が不明であることは影響が大きい。
【0028】
例えば、アイドル状態の携帯端末に対して接続を行う場合、基地局は、携帯端末に対してページング(paging)を送信するが、アイドル状態の携帯端末は、IMSIから算出されるタイミングでのみ、ページングを間欠的に受信している。このため、基地局は携帯端末のSIMに記憶されているIMSIを取得しており、さらに、SIMに記憶されているキー情報を用いた演算結果を照合して認証を行っているので、試験装置としても上記手順による認証処理を用いて再リンク(呼接続)を行う必要があり、記憶内容が不明の実際のSIMを実装した携帯端末の試験が困難であった。
【0029】
本発明は、これらの問題を解決して、試験用の無駄な情報を予め携帯端末に記憶させる必要がなく、動作初期後の位置登録およびリンク開放処理、アイドル状態や再リンク確立のための時間を要することなく、迅速に携帯端末を試験できる状態に移行でき、しかも、アイドル状態からの呼接続による再リンク処理が不要で、SIMの記憶内容を意識することなく接続できる携帯端末試験装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の携帯端末試験装置は、
電源投入またはリセット操作による動作初期時に、基地局との間の信号送受信により、リンク確立、位置登録の処理を行い、リンク開放後にアイドル状態に移行し、該アイドル状態中に基地局からの接続要求に対して再度リンク確立の処理を行い、基地局を介して通信を行うように構成された携帯端末を試験するための携帯端末試験装置であって、
前記動作初期時の携帯端末との間で前記リンク確立のために必要なメッセージの交換を行うリンク確立手段(211)と、
前記リンク確立手段によって試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、該試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知し、当該試験対象の携帯端末から通知メッセージに対する応答メッセージを返させることで、テストモードに移行させるテストモード移行手段(213)と、
前記テストモード移行手段によってテストモードに移行させた携帯端末に対して送受信試験を行う試験手段(214)とを有することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項2の携帯端末試験装置は、請求項1記載の携帯端末試験装置において、
前記リンク確立手段によって試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、当該試験対象の携帯端末との間で、認証に関するメッセージ交換を行う擬似認証手段(212)を備え、
前記テストモード移行手段は、前記擬似認証手段によって前記認証に関するメッセージ交換が完了した段階で、試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知することを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項3の携帯端末試験方法は、
電源投入またはリセット操作による動作初期時に、基地局との間の信号送受信により、リンク確立、位置登録の処理を行い、リンク開放後にアイドル状態に移行し、該アイドル状態中に基地局からの接続要求に対して再度リンク確立の処理を行い、基地局を介して通信を行うように構成された携帯端末を試験するための携帯端末試験方法であって、
前記動作初期時の携帯端末との間で前記リンク確立のために必要なメッセージの交換を行ってリンク確立させる段階と、
前記試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、該試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続の設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知して、当該試験対象の携帯端末から通知メッセージに対する応答メッセージを返させることで、テストモードに移行させる段階と、
前記テストモードに移行させた携帯端末に対して送受信試験を行う段階とを含むことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項4の携帯端末試験方法は、請求項3記載の携帯端末試験方法において、
前記試験対象の携帯端末との間でリンクが確立した段階で、当該試験対象の携帯端末との間で、認証に関するメッセージ交換を行う段階を含み、
該認証に関するメッセージ交換が完了した段階で、試験対象の携帯端末に対して、基地局からのテストモード接続設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
このように、本発明では、試験対象の携帯端末の動作初期時に、該携帯端末との間でリンクを確立させるための処理を行い、そのリンク確立した段階で、基地局からのテストモード接続の設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知し、当該試験対象の携帯端末から通知メッセージに対する応答メッセージを返させることで、当該試験対象の携帯端末をテストモードに移行させて、送受信試験を行っている。
【0035】
このため、携帯端末の動作初期時に基地局との間の通信で通常行われる位置登録処理からアイドル状態までに必要な処理、およびアイドル状態から再リンク確立までの処理を行うことなく、携帯端末に対する試験を実行できる状態に移行でき、試験時間を大幅に短縮できる。
【0036】
また、アイドル状態から再リンク確立までの処理が不要となるので、携帯端末のSIMに記憶されている情報を意識しないで試験を行え、試験用のSIM以外で、記憶されている情報が未知のSIMが実装されている携帯端末の試験も短時間に行うことができる。
【0037】
また、リンク確立後の擬似認証処理を省略したものでは、試験時間をさらに短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態の構成図
図2】実施形態の処理手順を示すチャート図
図3】実施形態の別の処理手順を示すチャート図
図4】従来装置の処理手順を示すチャート図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した携帯端末試験装置20の実施形態の構成図である。
【0040】
この携帯端末試験装置20は、WCDMA方式やTD−SCDMA方式で携帯端末と通信を行うものであり、試験用制御部21、変調部22、周波数変換部23、復調部24によって構成されている。
【0041】
試験用制御部21は、試験対象の携帯端末1に通知するメッセージMdや試験用データ信号を予め決められた手順によって出力し、携帯端末1から送信されたデータ信号を解析して、携帯端末1の試験および評価を行う。
【0042】
変調部22は、試験用制御部21の出力信号に対して、携帯端末1の変調方式に対応した変調処理を行い、周波数変換部23に出力する。
【0043】
周波数変換部23は、変調部22で変調された信号を携帯端末1との通信で用いる周波数帯に変換して試験対象の携帯端末1に送信し、携帯端末1から出力された信号を復調部24が扱える周波数帯に変換して出力する。
【0044】
復調部24は、携帯端末1から送信されて周波数変換部23で周波数変換された信号を受けて携帯端末1の変調方式に対応した復調処理を行い、携帯端末1からのメッセージMuやデータを復調して試験用制御部21に与える。
【0045】
なお、周波数変換部23の周波数制御は、試験用制御部21によってなされるものとする。
【0046】
この試験用制御部21には、リンク確立手段211、擬似認証手段212、テストモード移行手段213、試験手段214が設けられている。
【0047】
リンク確立手段211は、携帯端末1の動作初期時に、試験装置20との間で初回のリンクを確立するためのメッセージ交換処理を行う。
【0048】
擬似認証手段212は、試験対象の携帯端末1がSIMの情報に関する認証処理を経過しないとテストモードへ移行できない場合に使用されるものであり、その認証に必要なメッセージの交換を携帯端末1との間で行うが、実際のデータ照合に必要な判定処理などは行わず、携帯端末1から通知された情報に対して無条件に認証完了のメッセージを送り返す(擬似認証)。
【0049】
テストモード移行手段213は、リンク確立が完了し、且つ擬似認証処理のためのメッセージ交換が完了した段階で、基地局からのテストモード接続の設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知して、試験対象の携帯端末1をテストモードに移行させる。この移行は、通知されたメッセージに対する携帯端末の応答柔軟性を前提とするものであり、近年製造されている携帯端末では、基地局とリンクが確立した状態で基地局から予期しないモードにおけるメッセージに対して正しく応答してそのモードへ移行できるものがかなりあり、この実施形態の試験装置20もそのような携帯端末1を試験対象としている。
【0050】
ただし、そのような携帯端末1でも、SIMのキー情報を用いた演算結果を基地局に通知して基地局から認証が適合しているという意味のメッセージを受ける処理が必要な携帯端末と、その認証さえも省略可能な携帯端末とがあることがわかっている。
【0051】
そのため、この実施形態では、認証が必要な携帯端末を試験する場合には、第1の試験モードとして、前記した擬似認証手段212により、基地局からの認証処理に必要なRAND値等を通知するためのdownlink Direct Transfer(Authentication and ciphering request)メッセージを通知して、擬似的な認証処理を行ってから、テストモード接続の設定段階に移行している。
【0052】
また、上記擬似認証処理が省略可能な携帯端末を試験する場合には、第2の試験モードとして、リンク確立が完了した段階で、前記擬似認証処理を行うことなくテストモード接続の設定用のdownlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)メッセージを通知して、テストモード接続の設定段階に移行する。
【0053】
また、試験手段214は、テストモードに移行した携帯端末1に対して前記した送受信の試験を行う。
【0054】
図2は、上記擬似認証処理が必要な携帯端末を試験する場合の試験装置20の動作をより具体的に示すチャートである。以下、この図に基づいて試験装置20の動作を説明する。
【0055】
即ち、動作初期時の携帯端末1は、位置登録のために基地局との間の通信を要求するメッセージ、
Mu1=rrc Connection Request(establishment Cause :registration)
を送信し、この要求に対して、試験装置20は、携帯端末1との通信に使用するチャネル等を指定するメッセージ、
Md1=rrc Connection Setup
を送る。
【0056】
これを受けた携帯端末1は、指定された情報に基づいて通信に使用するチャネル等の設定を行い、設定が完了したことを表すメッセージ、
Mu2=rrc Connection Setup Complete
を送信し、続いて、位置登録のための接続要求メッセージ、
Mu3=initial Direct Transfer(Attach request)
を送信する。
【0057】
上記Mu1〜Mu2までの処理はリンク確立処理であり、Mu3は接続要求処理であるが、ここではMu1〜Mu3まで行われた段階でリンク確立とする。このリンク確立が完了した段階で、携帯端末1の擬似認証のために、認証計算に用いるRAND値を通知するメッセージ、
Md2(=Md10)
=downlink Direct Transfer(Authentication and ciphering request)
を送り、これを受けた携帯端末1は、計算結果を送るためのメッセージ、
Mu4(=Mu13)
=uplink Direct Transfer(Authentication and ciphering response)
を返す。
【0058】
そして、試験装置20は、試験対象の携帯端末1から通知された計算結果に関わらず、メッセージ認証使用開始通知のメッセージ、
Md3(=Md11)=security Mode Command
を送り、これを受けた携帯端末1が、受信したことを報告するメッセージ、
Mu5(=Mu14)=security Mode Complete
を返す。
【0059】
上記Md2〜Mu5までのメッセージ交換により、試験対象の携帯端末1が擬似的に認証され、その認証が終了した段階で、従来であれば、位置登録のためのメッセージ交換に移行するが、この試験装置20は、試験のためのテストモード接続の設定を行うためのメッセージ、
Md12=downlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)
を携帯端末1に送信し、携帯端末1はこれに答えるメッセージ、
Mu15=uplink Direct Transfer(Activate RB Test Mode Complete)
を返す。
【0060】
そして、試験装置20は、試験のためのデータ通信に用いるチャネル等を指定するメッセージ、
Md13=radio Bearer Setup
を送り、携帯端末1がその設定を完了したことを通知するメッセージ、
Mu16=radio Bearer Setup Complete
を返す。
【0061】
続いて、試験装置20は、テストモードの種別の設定を行うためのメッセージ、
Md14=downlink Direct Transfer(Close UE Test Loop)
を携帯端末1に送信し、これを受けた携帯端末1はメッセージ、
Mu17=uplink Direct Transfer(Close UE Test Loop Complete)
を返す。
【0062】
こうして、携帯端末1をテストモードに移行させた後、前記した送受信の試験を行う事になる。
【0063】
このように、実施形態の携帯端末試験装置20は、初期動作時の携帯端末1についての位置登録処理、リンク開放処理、アイドル状態および再リンク確立処理を省略して、テストモードに移行できるため、従来に比べて大幅に試験時間を短縮することができる。
【0064】
しかも、アイドル状態からの呼接続による再リンク処理が不要であるからSIMのIMSIの値を考慮しなくて済み、さらに携帯端末側でのSIMのキー情報が未知であっても携帯端末から通知された計算結果の判定をしないことで、記憶内容が未知の実際のSIMが実装された携帯端末の試験も短時間に行うことができる。
【0065】
なお、上記実施例では、TD−SCDMA方式の場合、位置登録処理、リンク開放処理に要する時間3〜4秒と、アイドル状態の間欠受信に伴うページング送信待ち時間(端末がページングを受信する間隔640ms〜2560ms)を短縮できる。
【0066】
SIM認証が省略可能な携帯端末を試験する場合の試験装置20の動作を示すチャートは、図3の通りである。このチャートは、図2のチャートの擬似認証用のメッセージMd2、Md3、Mu4、Mu5の交換を省略し、動作初期時におけるMu1〜Mu3までのリンク確立処理が完了した段階で擬似認証処理を行うことなく、直ちに試験のためのテストモード接続の設定を行うためのメッセージ、
Md12=downlink Direct Transfer(Activate RB Test Mode)
を携帯端末1に送信してテストモードに移行し、以後は図2の場合と同じ手順で携帯端末1の試験を行っている。
【0067】
したがって、この場合では、初期動作時の携帯端末1についての位置登録処理、リンク開放処理、アイドル状態および再リンク確立処理に加えて擬似認証処理も省略できるので、さらに試験時間を短縮することができる。
【0068】
なお、上記二つの試験モードは、ユーザが図示しない操作部のモード指定操作により任意に指定できるようになっている。また、これら二つの短縮化された試験モードの他に、図4で示した従来の試験モード(第3の試験モード)も実行可能にしておき、試験対象の携帯端末のメッセージによるモード移行の柔軟性に応じて、前記第1〜第3の試験モードのいずれかをモード指定操作で実行させることもでき、このようにすれば、異なる多くのメーカーが製造する携帯端末に対応できるとともに、同一メーカーであっても機能が異なる複数機種に対応でき、汎用性の高い試験装置を実現できる。
【0069】
なお、本発明は、LTEから、WCDMA/TD−SCMAへのCSFB(circuit switch Fall Back :LTEネットワークに存在する端末が、音声発着信等CS接続サービス利用時に、WCDMA等他のシステムを使用する仕組み)時の接続時間短縮にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
20……携帯端末試験装置、21……試験用制御部、22……変調部、23……周波数変換部、24……復調部、211……リンク確立手段、212……擬似認証手段、213……テストモード移行手段、214……試験手段
図1
図2
図3
図4