特許第5654042号(P5654042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5654042患者の脊柱の特徴を測定するための方法および機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654042
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】患者の脊柱の特徴を測定するための方法および機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 19/00 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   A61B19/00 501
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-545976(P2012-545976)
(86)(22)【出願日】2010年11月23日
(65)【公表番号】特表2013-515564(P2013-515564A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】US2010057794
(87)【国際公開番号】WO2011078933
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】12/881,411
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/290,115
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512159720
【氏名又は名称】ダビドフ,アルバート
【氏名又は名称原語表記】DAVYDOV,Albert
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ダビドフ,アルバート
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−68678(JP,A)
【文献】 特表2002−510214(JP,A)
【文献】 特表2002−527833(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0285466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に向かうX線ビームを放射するX線源と;
患者の脊柱に、既知の向きおよび大きさを有し、第1軸と第2軸を有するコンパスを具えるポジショナであって、当該第1軸が第2軸に直交しており、当該第2軸が前記X線源から放射されたX線に平行になるように構成されており、前記コンパスが、前記患者が当該コンパスの第1軸に沿って、及び当該コンパスの第2軸に直交するように位置するように、前記患者を前記X線源に対して位置決めするよう動作可能である、ポジショナと;
生のX線像を受け取るレシーバと、
画面上に前記生のX線像を提示する画面と、
前記生のX線像上の関心のある点を示す情報をユーザから受け取るユーザ入力部と、
前記生のX線像を、前記情報に基づいて椎骨の対応する理想的形状に変換し、前記理想的形状に基づいてレポートを生成するように構成されるプロセッサと、
を含むことを特徴とする椎骨のX線像を分析するための機器。
【請求項2】
請求項に記載の機器において、前記プロセッサが、前記生のX線像を多角形の形状を有する理想的形状の画像に変換することを特徴とする機器。
【請求項3】
請求項に記載の機器において、各椎骨の前記画像が、n個の頂点を有する理想的多角形に変換されることを特徴とする機器。
【請求項4】
請求項に記載の機器において、前記情報がn−1個の頂点の位置を定め、前記プロセッサが多角形ごとにn番目の頂点の位置を決定することを特徴とする機器。
【請求項5】
請求項に記載の機器において、前記プロセッサが、事前に選択された軸に対する前記生のX線像の角回転を示す歪みデータをさらに受け取り、前記歪みを補正するために前記生のX線像を回転させるようにさらに構成されることを特徴とする機器。
【請求項6】
請求項に記載の機器において、前記プロセッサが、前記椎骨の縮尺を示す縮尺データをさらに受け取り、前記椎骨の大きさに基づく情報を含む前記レポートを生成するようにさらに構成されることを特徴とする機器。
【請求項7】
請求項に記載の機器において、前記レシーバが、前記生のX線像内のポジショナの像を更に受け取り、前記ポジショナの像が前記ポジショナの実際の位置を示していることを特徴とする機器。
【請求項8】
請求項に記載の機器において、前記プロセッサが、前記ポジショナの像に基づいて歪み角を検出し、前記歪み角を使用して前記生のX線像を回転させることを特徴とする機器。
【請求項9】
請求項に記載の機器において、回転角が、それぞれの直交軸に沿って割り付けられる3つの成分を含むことを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:本願は、2009年12月24日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる仮出願第61/290,115号明細書の優先権を主張する。
【0002】
A.発明の分野
本発明は、人の脊柱の厳密な表現を提供するための方法に関し、より詳細には、脊柱の個々の椎骨の相対位置および絶対位置の厳密な表現をその画像に基づいて提供するための方法に関する。本発明は、前記表現を得るための機器にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
B.従来技術の説明
各種の病気は、患者の脊柱の変形に由来することがある。そのような病気のための予後を得るために、長年にわたり標準的慣行は患者の脊柱の画像を取得し、それらの画像を視覚的に検査し、その患者の病歴を検討することであった。典型的には、脊柱の変形は先天性症状から生じる可能性があり、または自動車事故、落下、喧嘩等の間に被った重篤な外傷に起因することがある。不都合なことに、これまでそうした画像から入手できる定量的情報(通常、患者が立った状態または座った状態のいくつかの異なる角度におけるX線写真から得られる)は実に少なく、そのため医師はかなり正確な予後予測のために自らの実体験に基づく証拠および長年の経験に頼らなければならなかった。
【0004】
近年、米国医師会(AMA)が動きだし、新しいGuides to the Evaluation of Permanent Impairment,6th Editionを2008年に発行した。これらのガイドラインは、患者/相談者のケアの特定の標準に関し、医療分野がその手順を適合させることを要求する。医療行為および法律実務のほとんどについて、そうした変更に対処するために利用できる技術がないのでこれらの変更は困難である。本願は、少なくとも脊柱に関する事項の評価および予後に関係する限りこれらの問題に対処する。
【0005】
より詳細には、AMAによるThe Guides to the Evaluation of Permanent Impairment(Sixth Edition)は、運動分節の完全性の変化の定量化(Alteration of Motion Segment Integrity quantification)を含む。AMSIはインペアメントレイティングの計算に含まれ、以下の通りである。
【0006】
「並進測定による頚椎におけるAOMSIの診断は、屈曲放射線写真上または伸張放射線写真上のそれぞれで、ある椎骨の別の椎骨に対する20%を超える前方の相対的並進または20%超の後方の相対的並進を必要とし、または屈曲放射線写真上で、それぞれの隣接レベルよりも11度を超えて大きい角運動を必要とする」。AMAガイド第6版578項。
【0007】
「並進測定による胸椎におけるAOMSIの診断は、屈曲放射線写真上または伸張放射線写真上のそれぞれで、ある椎骨の別の椎骨に対する少なくとも2.5mmの前方の並進または2.5mmの後方の並進を必要とし、または動的安定化を含む外科的な関節固定における成功裏のもしくは失敗した試みを必要とする」。AMAガイド第6版578項。
【0008】
「並進測定による腰椎(L1−L5)におけるAOMSIの診断は、屈曲放射線写真上または伸張放射線写真上のそれぞれで、ある椎骨の別の椎骨に対する8%を超える前方の相対的並進または9%を超える後方の相対的並進を必要とする」。AMAガイド579項。
【0009】
「腰仙椎(L5−S1)では、並進測定によるAOMSIの診断は、屈曲放射線写真上または伸張放射線写真上のそれぞれで、L5−S1において、L5のS1に対する6%を超える前方の相対的並進または9%を超える後方の相対的並進を必要とする。角運動測定による腰仙椎におけるAOMSIの診断は、(隣接レベルの角運動と比較して)L1−2、L2−3、およびL3−4において15度超必要とし、L4−L5において20度超必要とし、またはL5−S1において25度超必要とする。」AMAガイド第6版579項。
【0010】
並進測定によるAOMSIの診断は、あまりにも時間がかかり、不正確であるばかりでなく、(定規と鉛筆を使って作業する場合は)介在する作業者が不正確なので測定値は常に有意な誤差を免れない。自動化された手段を使用して計算を行うための様々な解決策が提案されてきたが、それらの提案の全てが以下の欠点の1つまたは複数に見舞われることを本発明者は見出した。
【0011】
様々なモデルを使った広範な研究の後、数多くの先天的な欠陥が見つかった。それらの欠陥にはとりわけ以下のものがある。
a)例えば画像の縮尺変更や角度に関する光学的歪みによる精度の欠如。
b)分節の不適切な定量化。
c)AMA第6版に明記された新たな標準により更新されていないこと。
d)装置の一部に含まれる多くの不要な機能が、それらの装置を使いづらくし、扱いにくくすること。
e)画像の縮尺および光学的な角度の歪み、ならびに不適切な幾何学的な点の指定による角度の不適切な定量化。
f)インペアメントレイティングの計算の無効な主張。
g)不法に販売されている装置は、販売がFDAによって許可されないが(DX Analyzer Professional)、現在販売されているものには多くの固有のソフトウェア上の欠陥がある。
【0012】
本明細書に開示する機器および方法は、これらの全ての問題を克服する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、患者の脊柱を分析し、診断するための方法および機器に関する。患者をX線源の前に置き、以下で使用される方法を用いて脊柱のX線写真を数枚撮る。好ましくは、(必要ならば)X線写真をデジタル化し、分析を行う遠隔地に電子的に送る。
【0014】
手短に言えば、本発明は、様々な分節における椎骨が既知の形状、例えば長方形、三角形等を有するとみなすプロセスを使用する。このプロセスは以下のように機能する。
【0015】
1.背中の特定の位置にある関連する脊柱区域に隣接して、患者の背中に基準物体を付加する。基準物体は、X線の軸および電子コンパスの水平軸に対してできるだけ垂直に配置される、幅、長さ、および奥行きが知られているプレートを含み、電子コンパスは、プレートの向きに関する情報を3つの異なる方向においてそれぞれの角度に関して提供し、その情報は放射線専門医がa)可能な限り適切に患者を配置することを可能にし、b)x線と患者の位置との間の理想的な角度から何らかのずれがある場合、歪み角をコンパスから求め、対応するX線像の撮影時に一緒に記録する。
【0016】
2.患者の脊柱がX線ビームに対してほぼ90度にあるように、放射線専門医が患者を配置する。
【0017】
3.X線ビームを関連する脊柱区域および基準物体に向ける。医療標準の定めるところにより、患者が自らの頭を2つの異なる位置(屈曲および伸張)に保った状態で2組のX線像を得る。その結果生じる画像をスキャンし、X線像を記録した間にプレート(したがって脊柱)が理想的な向きからずれていた分の3つのオフセット角度を示すコンパスの対応する読取値とともに、画像集合として遠隔地に電子的に送る。画像集合は特定の患者の情報も含む。
【0018】
3.遠隔地において、マイクロプロセッサがこれらの3つの偏差角を取得し、基準物体のプレートのx線像データを操作してこれらの偏差を補償する。プレートの3D変換係数に従って画像を変換する。プレートの大きさは事前に知られており、よってプレートの大きさを使用して変倍情報をもたらし、その結果、データの変換後、実際の向きだけでなく各椎骨の大きさも分かる。
【0019】
4.脊柱の補正済み画像を技師に提示する。技師は、それぞれの椎骨の理想的形状のn個の頂点に対応する、椎体のそれぞれのn個の点を選択し、理想的形状はn+1個の頂点を有する。次いでマイクロプロセッサがその形状のn+1番目の頂点の位置を選択する。AOMSI(運動分節の完全性の変化)の計算における精度を得るために、点の並び順に従うことが重要である。点の並び順に従わない場合は所望の四角形が描かれず、その結果、作業者が誤りを犯すのを防ぐ。理想的形状は、分析される特定の椎骨によって決まる。ほとんどの椎骨では、理想的形状は長方形である。しかし、後頭には単一のディメンションしかなく、その回転角だけに関心がある。
【0020】
ある区域内の各椎骨の絶対位置および相対位置ならびに大きさが分かると、1組の所定の規則を使用して脊柱(または少なくとも脊柱の個々の区域)を分析し、それぞれの診断を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、頚椎の一部のある程度理想的な側面図を示す。
図2図2は、図1の側面図に似ているが、椎骨のいくつかが突起および他の凹凸を有する、概略的だがより現実的な図を示す。
図3図3は、図1の側面図に似ているが、椎骨のいくつかが突起および他の凹凸を有する、概略的だがより現実的な図を示す。
図4図4は、椎骨の形状に近似する幾何学的形状の角を手動で選択する従来技術の技法を示す図である。
図5図5は、実際の椎骨の輪郭の等角図を示す。
図6図6は、X線像を集めるためのポジショナおよび機器のブロック図を示す。
図7図7は、本発明による人の脊柱のX線像を撮るための機器の平面図を示す。
図8図8は、本発明によるX線像を分析するための機器のブロック図を示す。
図9図9は、図6、7および8の機器に関する流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
脊柱は一連の椎骨、および骨格哺乳動物の長さに沿って配置され配列される相互接続組織からなる。ヒトでは、索状構造はいくつかの湾曲を呈し、それらの湾曲に沿って4つの領域、頚椎、胸椎、腰椎、および腰仙椎に分けられる。異なる領域の椎骨は(場合によっては同じ領域内でさえ)、異なる形状および大きさを有する。
【0023】
脊柱の軸に沿った垂直のまたは横方向の脊柱へのとっさの衝撃、先天的欠陥、または特定の病気によって生じる損傷は、椎骨を変形させ、椎骨の一部を折ることさえ引き起こす場合があり、患者の不快感または苦痛の原因になり、その患者の体を曲げて動かす能力を低下させる。さらに、隣接する椎骨間の(回転的よりむしろ)横方向の並進的な外傷性の力は、隣接する椎骨の内部経路を通る脊髄が損傷を受け、それどころか切断され得るまでに、隣接する椎骨の内部経路をオフセットさせることがあり、体の一部/複数の部分を動かす能力や感じる能力を失うことなど、患者の重大な健康問題を招く。
【0024】
本発明は、単純X線像を利用して、様々な椎骨の互いに対する寸法および相対位置を測定することの決定手段を提供する。この情報は、患者の容態を評価する手段として利用することができる。
【0025】
より詳細には、X線像から椎骨の形状および位置を求める。各椎骨を画像上で特定し、装置内で処理すると、装置の一部である自動化ソフトウェアを使用して脊柱または少なくとも脊柱のある領域を分析し、この分析を使用してその患者の診断を生成する。これまでこの分析を悩ませてきた問題は、それぞれの椎骨が患者の大きさに固有であり、撮った画像が、X線ビーム源、患者、およびX線像レコーダ(フィルム)の相対位置が原因で生じる縮尺および向きの歪みを有し、その結果、別の椎骨に対する厳密な形状、大きさ、および位置を従来のX線像から正確に求めるのが難しいことであった。明らかに、椎骨の形状、向き、および大きさを求める際のいかなる誤差も、間違った診断、治療、および病気の予後の原因になり得る。
【0026】
椎骨の形状、大きさ、および位置を厳密に検出する際のさらなる問題は、年齢、性別、怪我、椎骨および脊柱自体の病変など、多くの要素に基づいて脊柱の椎骨および脊柱全体の実際の形状がかなり違って見える可能性があり、人によって変わり得ることである。
【0027】
図1に側面からある程度理想的な方法で図示する典型的な椎骨10は、X線写真側面像上で横から見たとき管状であり、ある程度長方形の主部12を含む。理想的には、椎骨の個々の経路が脊髄(不図示)のための通路を形成するように全ての椎骨が並ぶ。主部12の後方に延び、各椎骨10は、棘突起(ラテン語の単数形:Processus Spinosus)として知られる骨の伸長部14を有する。椎骨の一部は、人の胸郭を形成する肋骨につながる横方向の伸長部(ラテン語の単数形:processus transversus)も有する。しかし、簡潔にするためにそれらの横方向の伸長部は省略した。椎骨は、椎間板16として知られる柔らかく多少ゼラチン質の組織によって分けられる。椎間板16は、ある椎骨が隣接する椎骨を基準にして曲がり、または旋回できるように通常柔らかく、この動作は人が必要に応じて自身の体を様々な方向に曲げられるようにする。
【0028】
実際には、椎体はX線写真側面像上で長方形として見えることは決してなく、図2および図3に示すように、突起12A、12B、12C、または12Dを伴う多角形の形状を有する。さらに、補償することなしに、図5のSに示すように椎骨の上面または底面も可視的であり得る。これが、椎骨の厳密な位置、大きさ、および形状を求めることが真の難題となる理由であり、というのは鉛筆と定規を使ってこれらのパラメータを求めることはほぼ不可能であるように思われるからである。
【0029】
本発明は、まず全ての椎骨を事前に選択された正規の幾何学的形状として理想化(idealize)することによりこの問題を解決する。以下で明らかになるように、適切な理想的形状が一貫して選択される限り、実際の形状はもはやそれ程重要ではない。
【0030】
脊柱を分析するための方法が以前提案されており、その方法では、取得した椎骨の画像がPCモニタ上に投影されまたは写し出され、事前に選択された形状が指定され、作業者がその事前に選択された形状の角を手動で選択する。www.dxanalyzer.comにおいて示される、International Diagnostic TechnologiesによるDX Analyzerを参照されたい。この手法に関連するいくつかの問題がある。主な問題の1つは、システムが正方形の椎体および三角形の椎体のために5点分析を利用していることであり、1人の人物が全てのx線像を検討し、とりわけその人物がこの訓練を何度も行う場合、その人物は一定の専門知識を発展させ、それにより点をかなり一貫して選択する。しかし、ある人物が画像の角を選択し、第2の人物が同じ画像または異なる画像の角を選択する場合、選択されるこれらの角の位置は常に非常に恣意的である。例えば図4を参照して、椎骨の突起が原因で、ある人物は角A、BおよびCについて同じ位置を選択する可能性があり、4番目の角Dとして5つの位置D1、D2、D3、D4またはD5のうちのいずれか1つを選択することができる。または、ある人物がD1を選択することができ、別の人物がD2を選択することができる等である。つまり、全ての角の選択が幾らか恣意的であり、精度が求められるので、従来技術の方法を一貫してまたは任意の種類の高信頼の再現性を伴って使用することはできない。
【0031】
もう1つの問題はDX Analyzerが、縮尺および向きに起因する歪みの問題を解決しないことである。作業者はX線源およびフィルム距離を事前に選択するが、X線源およびフィルムに関連した患者の位置は指定しない。患者がX線源の近くに立つ場合、フィルム上の画像は通常よりも大きく現れ、患者がフィルムの近くに立つ場合、画像は通常の大きさに近く現れる。さらに、患者が完全に真っすぐに立たない場合および/またはX線ビームの方向に対して厳密に垂直な方向に向いていない場合、X線像の向きの(角度に関する光学的)歪みが問題となる。これらの欠陥が原因で、DX Analyzerが使用する方法では測定の精度を得ることができない。
【0032】
本願は、理想的な椎体を表す複数の角を選択するための単純化されかつ自動化されたプロセスを提供する。角または頂点を定めると、大きさ、形状、位置、および他の情報を高精度、調査者間の高信頼性、および高い再現性で求めることができる。この方法を、図1の2つの隣接する椎骨10、10’についてまず例証する。最初に、対象となる椎骨に平行四辺形などの理想的形状を割り当てる(以下に説明するように、ある一定の椎骨を表すために平行四辺形は使用できず、その場合は他の理想的形状を使用する)。
【0033】
上記で論じ、図2図4に示したように椎骨は一般に複雑な形状を有し、他の形状を使用して理想化することができるが、本発明者は理想的形状として正方形、長方形、ひし形などの平行四辺形を使用することがほとんどの場合に特に有利であることを見出した。本発明を説明するために、以下に記す例外とともに椎骨の理想的形状として長方形を選択した。
【0034】
先に述べたように、X線像を作成するための既存の方法に関する1つの問題は、そのような画像が生成されまたは撮られても、角度に関する三(3)次元のおよびスカラの歪みが画像内に生じ、その歪みはそれらの画像を正しく解釈し、分析するのを困難にする。これらの歪みをなくすために、図6および図7の機器を使用してX線像を得る。機器300は、軸X−Xに沿って患者304に向けてX線ビームを選択的に発生させる従来型のX線ビーム源302を含む。X線は患者304を貫通し、出て行くX線をX線センサ306または他の同様の手段によって捕獲する。図7の中の寸法の一部は明瞭にするために拡大してある。センサ306からのX線像が制御機器308に与えられ、制御機器308はそのX線像を処理し、その場でまたは要求があり次第遠隔地のサードパーティーに送る。患者の体の領域、例えば脊柱のある区域に付加されるのがポジショナ310である。ポジショナの目的は、X線像に関する向きおよび大きさ(変倍)情報の両方を提供することである。
【0035】
図6に示すように、コントローラ308は、必要な場合にx線センサ306からの画像をデジタル化するデジタイザ310を含むことができる。デジタル化画像はマイクロプロセッサ312によって受け取られ、記憶される。マイクロプロセッサ312は、3つの軸X、Y、およびZに関して患者304の角位置を示す向き情報も受け取る。このためにポジショナ310は、OceanServer Technologies Inc,.によって作成されるものなどのデジタルコンパス314、または他の同様の装置を含む。埋め込まれ、またはポジショナ310のハウジング内に他の方法で配置される。さらに、放射性鉛(radiological lead)またはX線を通さない他の材料で作られる金属プレート316も含む。典型的には、プレート316の寸法は10mm×20mm×1.5mmとすることができる。
【0036】
コンパス314は、USBポート318およびケーブル320を介してマイクロプロセッサ312に接続される。好ましくは、ポジショナ310は、プラスチック材料で作られるT字型の本体を有し、図示のようにプレートはT字の脚に配置される。
【0037】
典型的には本発明によれば、放射線専門医が、軸X−Xに対して垂直に軸Y−Yに沿って一線上に並ぶように患者304を配置する。好ましくは、放射線専門医は配置された316を問題になっている椎骨の付近に据える。配置された中のコンパスは、患者の向きを示す読取値を提供し、放射線専門医は(任意選択で)この情報を使用して患者の位置を確認することができる。
【0038】
本発明の目的は、脊柱のある区域内の椎骨の位置を自動で分析し、適切な予後を提供することである。この目的を達成するためのプロセスを次に説明する。
【0039】
放射線専門医は必要なX線像ごとに上記に記載したように患者を配置し、患者の脊柱の参照部分にポジショナをあてがい、コンピュータの画面上に表示されるコンパスデータに応じて配置された中に埋め込まれる鉛プレートに対してX線ビームが垂直である患者を配置し、ビームを平行化するようにソース302を調節して画像を撮る。センサ306がX線像を検知し、必要に応じてデジタル化し、コントローラ208に与える。コントローラは、各画像の間の各患者の向きや他の患者IDなどの他の情報を追加する。全ての画像および関連情報を有するデータファイルを遠隔地に伝送する。
【0040】
図1に戻り、本発明の目的上、このプロセスを今度は図1の2つの隣接する椎骨12、12’について説明し、図7図8、および図9にさらに示す。
【0041】
より詳細には、本発明の目標は運動分節を定量化することである。
(運動分節は2つの隣接する椎骨の間にある椎間板を含む、2つの隣接する椎骨およびそれらの椎骨を結合する靭帯からなる。)
1.第1の椎骨12を、頂点ABCDを有する長方形10として理想化する。
2.下にある第2の椎骨を、頂点A’B’C’D’を有する第2の長方形12’として理想化する。
3.以下でより詳細に論じるように、2つの長方形を分析して、ある所定のパラメータまたは脊柱の特徴を見つける。
【0042】
当然ながら、多くの場合、3つ以上の椎骨をこの方法で分析する場合最良の結果が得られるが、明瞭にするためにこの例では2つの椎骨しか扱わない。
【0043】
この方法の重要な部分は、特定の椎骨を画定する点が全て手動で選択されるとは限らないことである。むしろ一部の点は手動で選択される一方で、他の点は手動で選択された点および事前に選択された椎体の形状を使用して自動で選択される。さらに、この装置は点の配置に関する適切なプロトコルに従うように作業者を導き、そのプロトコルと異なって点が配置された場合、描かれる椎骨の形状は誤りが犯されたことを示すように特に描かれる。
【0044】
上記で論じたように、以前の技法では、作業者は全ての主部の形状を正方形または適切な四角形として表すことを目指す。上記で論じたように、適切な四角形を描くために点を一貫して同じ位置に配置するのは無理なので、全ての点を手動で配置することにより、このプロセス中に誤りを犯しやすい。ある椎骨の他の椎骨に対するダイナミックス比を計算しなければならない場合、誤りは計算プロセスの結果内に示される。
【0045】
本発明では、図9に示す機器を使用して椎骨10、10’の理想的形状を以下のように得る。この機器101は、X線レシーバ、表示画面102、ポインティングデバイス104、マイクロプロセッサ106、メモリ108、および通信装置110を含む。
【0046】
患者の脊柱のX線像が図6および図7の機器によって生成され、X線レシーバ100によって受け取られる。(図10のステップ200)。最初このX線像は、患者が適切に方向付けされていない可能性があることが原因で椎骨の上面および側面が歪んだ状態の、図5に示す画像のような生画像である。レシーバが、生画像をその画像の角度の歪みを示す角度とともにマイクロプロセッサ106に送る。マイクロプロセッサは、画像データを改質して歪みを補償し、定量化プロセスに歪み係数を含める。その結果生じる画像を画面102上で作業者に提示する(ステップ203)。この画像は、依然としてある程度生であり、図8に示すように非常に不均整である。
【0047】
画像が作業者に提示されると、その作業者は、ポインティングデバイス104を使用して理想的形状の輪郭を形成する4点のうちの3点を選択する。ポインティングデバイス104は、画像が受動画面上に表示される場合はマウスとすることができ、または活性状態の接触画面を使用する場合は表示画面102内に組み込むことができる。
【0048】
本発明者は1100個近くの椎骨を分析し、いくつかの重要な結論に達した。
【0049】
最初の結論は、長方形12の上辺(AB)および後方の高さ(線分BCの長さ)は、(脊柱が健康であるか外傷を被っているか、または他の現象とは無関係に)任意の解剖学的変化を最も受けないことである(図1参照)。
【0050】
したがって画像が提示されると、作業者は好ましくは点A、B、およびC(図1および図8)の位置を最初に選択する。
【0051】
本発明者は、この作業を正確に行うために作業者を数分で訓練できることが分かった。これらの点(またはより適切には点の座標)をマイクロプロセッサ106に供給し、マイクロプロセッサ106は、理想的形状が長方形であると想定し、かつ標準的な幾何学的解法を使用して点Dを計算する。
【0052】
点A、B、C、Dが図示のように画面上に提示され(代替的実施形態では作業者が点D(および必要でない5番目の点Eも選択する)、マイクロプロセッサは自らの点を選択し、作業者が自身の作業を確認できるように作業者に提示する(品質管理機構)。椎骨10の点をメモリ108内に記憶し、次いで、次の椎骨10’の形状を取得し、同様の方法で分析して点A’、B’、C’、D’の位置を求める。第2の椎骨10’の第2(必要に応じて第3の点の組)を得ると、それらの形状を比較して椎骨間の垂直的間隔、椎骨の相対的角位置、横方向オフセットなどの様々な特徴を求める。例えば、横方向オフセット2つの椎骨12、12’は、線ADとA’D’との間の横方向距離に等しい。相対的角位置は、任意の2本のそれぞれの線、例えばDCおよびD’C’の向きの間で表される。垂直的間隔は、それぞれの点の一部、例えば点DおよびA’間の距離である。以下で論じるように、おおよそ三角形のまたは細長い形状を有する椎骨に対しても同様の分析を行う。さらに、明瞭にするために本明細書に記載する最も複雑な理想的形状は長方形であり、この技法は4つの辺、5つの辺、6つの辺を有する他の理想的形状等に容易に拡張することができる。
【0053】
本発明の明確な理解を提供するために、上記に示した技法は単純な形式で示した。この技法は、以下の規則に基づいていくつかの椎骨を分析するために使用し、図10に図示する。
【0054】
様々な領域を構成する互いに異なる個々の椎骨も、医療分野でよく知られている特定の名称または呼称を有する。
【0055】
1.全ての椎骨は、X線写真側面像上で見たときに理想的近似(ideal approximations)にどれだけ近いかに応じてグループ分けされる。より詳細には、脊柱の椎骨に以下の形状が割り当てられる。
A.正方形:
後頭およびC2を除く全ての椎骨
B.線
後頭
C.三角形
C2椎骨
【0056】
患者の脊柱のX線写真を得ると、X線像を表示画面102上に提示し(ステップ203)、椎骨のそれぞれを作業者が順に調べ、上記に記載した理想的形状の1つを有するものとして分類する。
【0057】
ステップ204で頚椎を分析する。後頭については、直線を得るために作業者によって選択される2点しか必要でない。
【0058】
他の椎骨では、4点のうちのいずれか3点が必要である。非後頭の頚椎では作業者が3点選択し、4番目の点は自動で選択され(ステップ206)、残りの椎骨については(ステップ208)、上記で論じたように3点選択され、1つの点が自動化される。
【0059】
点を定めると、ステップ212でその椎骨のための理想的形状を生成し、ステップ214で保存し、そのためこのプロセスが終わるまでに特定の領域または脊柱全体の特徴が理想的形状から分かり、分析することができる。好ましくは患者の脊柱部分ごとに、患者が2つの異なる姿勢(屈曲および伸張)を取った状態で2枚のX線写真を撮り、それぞれのX線写真を個々の画像集合に変換し、それらの集合を論じたように理想的形状の様式で処理する。
【0060】
X線像を作成して投影するプロセスの間、様々な光学的変換が発生し、その結果、表示画面102上に投影される最終的な画像を適切に変倍するのは一般に困難である。言い換えれば、フィルムオブジェクト距離およびそれぞれの先天的な縮尺が原因で、実際の長さBCおよび2つの椎骨間の距離を検出するのは困難である。この問題を解決するために、本発明ではポジショナを配置した状態で各X線像を撮り、先に記載したようにポジショナは垂直の鉛プレートを有し、このプレート316の像は、図1に示すように基準またはターゲット50としてX線像で見ることができ、2点XおよびY間で概して垂直方向に方向付けられる。ターゲット50の画像は、図9の機器へのデータの一部として提供される。点XおよびYは、図10に示すプロセスの一環として手動でまたは自動でマイクロプロセッサのために検出することができる。マイクロプロセッサは、これらの2点XおよびY間の(事前に知られている)距離Lを使用して、様々な椎骨の形状の実際の寸法を求めるために使用可能な比例定数(proportional constant)を決定することができる。さらに、基準ターゲット50を表す線XYの向きを使用して、図1の様々な線分の向きを患者の背中の対応する湾曲を基準にして求めることができる。マイクロプロセッサは、点XおよびY間のLに関連して、X−Y−Z方向に対する歪みの係数を幾何学的に定量化し、定量化を再フォーマットするための調節光学係数としてこの係数をさらに使用する。図10では、椎骨の理想的形状の様々な寸法を中間ステップのうちの1つの間に、またはステップ212でデータを保存する直前のステップ213で較正することができる。
【0061】
ヒトの脊柱における運動分節の完全性の変化(AOMSI)を計算する際、これらの全てが重要である。運動分節は2つの隣接する椎骨の間にある椎間板を含む、2つの隣接する椎骨およびそれらの椎骨を結合する靭帯からなる。ある椎骨の別の椎骨に対する関係についての測定値を得ると、それらの測定値を標準状態および異常状態と比較する。
【0062】
Guides to the Evaluation of Permanent Impairment Sixth Editionの中でAMAによりバイオメカニカルデータが刊行されており、これらのデータは上述した運動分節の完全性の変化を定量化し、患者を診断するために使用されるガイドラインである。
【0063】
向きおよび縮尺の歪みを調節した状態で患者の画像データを定量化すると、適切な診断を確立し、適切な治療プロトコルを制定することができる。
【0064】
患者をより良く治療することができ、より優れた結果が伴う。例えば、陰性の病変および陰性のAOMSIを有する患者は治療を受けず、保険業者はかなりの金額を節約する。上記に記載したように、この装置は運動分節の完全性を定量化するための選択肢である。この装置はAOMSI(運動分節の完全性の変化)専用である。
【0065】
この装置は、作業者が配置する4番目の点は使用しない。
【0066】
代わりに、この装置はコンピュータが配置する4番目の点を
a)椎骨の調査を結論づけ、
b)前に配置された点の正しい並び順を示し、
c)正しくない多角形を正しい長方形にグラフィカルに変更して、図形間の角変化を調査する
ために使用する。
【0067】
本発明者の発明の新規特徴の一部には、以下の特徴が含まれる。
1)脊柱の椎骨固有に配置される点の並び順、および
2)目に見える結果を得るために、上述した理由からコンピュータが生成する4番目の点を利用することであり、目に見える結果とは、治療計画を確立し、陽性/陰性のAOMSIを定量化および認定し、AMAのSixth Guidesによるインペアメントレイティングをさらに認定するための特定の診断所見である。
【0068】
特許請求の範囲に定義する本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に数多くの修正を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10