(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5654095
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】あんかけパスタセットの製造方法およびあんかけパスタの詰め合わせセット
(51)【国際特許分類】
A23L 1/48 20060101AFI20141218BHJP
A23L 1/39 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
A23L1/48
A23L1/39
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-151553(P2013-151553)
(22)【出願日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年2月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505395892
【氏名又は名称】有限会社からめ亭
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097146
【弁理士】
【氏名又は名称】下出 隆史
(72)【発明者】
【氏名】志智 均
【審査官】
田村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−346690(JP,A)
【文献】
特開平07−123943(JP,A)
【文献】
特開2006−034208(JP,A)
【文献】
特開2002−199852(JP,A)
【文献】
特開2004−049224(JP,A)
【文献】
特開2012−044927(JP,A)
【文献】
実開平01−140284(JP,U)
【文献】
実開平07−013192(JP,U)
【文献】
特開2007−111013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あんかけパスタセットの製造方法であって、
パスタ麺を用意する第1の工程と、
あんかけソースを用意する第2の工程と、
前記用意されたパスタ麺とあんかけソースを収容容器に収容する第3の工程と
を備え、
前記第1の工程では、
茹でたパスタ麺を略板状の所定形状に整形し、
前記整形したパスタ麺を半冷凍状態とし、
前記整形し半冷凍状態としたパスタ麺の片面に、前記パスタ麺の重量の所定の割合のラードを存在させ、
該ラードを存在させたパスタ麺を、当該ラードを内側として折り畳み、
前記折り畳んだパスタ麺を袋に入れて真空パックし、
前記第2の工程では、
野菜および肉を、塩、胡椒を含む調味料と共に煮込んだあんかけソースを用意し、
該あんかけソースを所定の容器に詰め、
前記第3の工程では、前記第1工程により袋に詰められた前記パスタ麺と、前記第2工程により所定の容器に詰められた前記あんかけソースとを、冷凍状態とし、所定の形状の収容容器に収容して詰め合わせる
あんかけパスタセットの製造方法。
【請求項2】
前記ラードは前記パスタ麺の重量の5〜15重量%である請求項1記載のあんかけパスタセットの製造方法。
【請求項3】
前記ラードは、前記半冷凍状態としたパスタ麺の片面に塗布された請求項1記載のあんかけパスタセットの製造方法。
【請求項4】
前記あんかけソースは、片栗粉を加えてとろみが付けられており、該あんかけソースを袋に詰め、あんかけソースがゲル化して真空パックした請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のあんかけパスタセットの製造方法。
【請求項5】
前記あんかけソースは、冷凍乾燥により粉末化したソースに片栗粉を加えた粉体として提供される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のあんかけパスタセットの製造方法。
【請求項6】
パスタ麺とあんかけソースとを詰め合わせたあんかけパスタの詰め合わせセットであって、
前記パスタ麺は、茹でたパスタ麺を略板状の所定形状に整形した上で、半冷凍状態とした状態で、当該パスタ麺の片面にラードを所定面積に亘って配置し、前記ラードが内側になるように前記パスタ麺を折り畳んでから冷凍し、当該冷凍状態で真空パックされており、
前記あんかけソースは、所定の容器に収容されており、少なくとも野菜および肉を原材料とし、塩、胡椒を含む調味料と共に煮込んだソースであり、
前記冷凍状態で真空パックされたパスタ麺と前記所定の容器に収容されたあんかけソースとが、所定の収容容器に収容されたあんかけパスタの詰め合わせセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あんかけパスタ(スパゲティ)の製造方法およびその詰め合わせセットに関する。
【背景技術】
【0002】
パスタのソースに独特のとろみを付けた「あんかけスパ」と呼ばれるパスタがある。このタイプのパスタは、太さ1.9ミリ以上の太い麺を用い、多種類の野菜を長時間煮込んだ独特のスープに、片栗粉などでとろみを付け、これをゆであげたパスタにかけて(あんかけにして)、食するものである。
【0003】
こうしたあんかけパスタは、一般には専門店で提供されるものだが、家庭で食べられるように、様々な工夫がなされている。出願人は、既にこうしたあんかけソースを粉末化して提供する技術を開発している(下記特許文献1参照)。従って、粉末化したソースと冷凍したパスタあるいは乾麺とをセットにして販売すれば、家庭で簡単にあんかけパスタを楽しむことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−111013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした家庭用のあんかけパスタの詰め合わせ商品などを作っても、実際に家庭でこれを賞味すると、専門店の味は到底再現できなかった。その理由としては、パスタに、あんかけパスタ独特の風味がないことが挙げられる。そのほか、従来のあんかけパスタセットおよびその製造方法においては、その低コスト化、省資源化、製造の容易化、調理の簡単化等が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
即ち、本発明のあんかけパスタセットの製造方法は、パスタ麺を用意する第1の工程と、あんかけソースを用意する第2の工程と、前記用意されたパスタ麺とあんかけソースを収容容器に収容する第3の工程とを備える。ここで、前記第1の工程では、茹でたパスタ麺を略板状の所定形状に整形し、前記整形したパスタ麺を半冷凍状態とし、前記整形し半冷凍状態としたパスタ麺の片面に、前記パスタ麺の重量の所定の割合のラードを存在させ、該ラードを存在させたパスタ麺を、当該ラードを内側として折り畳み、前記折りたたんだパスタ麺を袋に入れて真空パックする。また、前記第2の工程では、野菜および肉を、塩、胡椒を含む調味料と共に煮込んだあんかけソースを用意し、該あんかけソースを所定の容器に詰め、前記第3の工程では、前記第1工程により袋に詰められた前記パスタ麺と、前記第2工程により所定の容器に詰められた前記あんかけソースとを、冷凍状態とし、所定の形状の収容容器に収容して詰め合わせる。
【0007】
(1)本発明の第1の形態は、あんかけパスタセットの製造方法として提供される。この製造方法は、パスタ麺を用意する第1の工程と、あんかけソースを用意する第2の工程と、前記用意されたパスタ麺とあんかけソースを所定の容器に収容する第3の工程とを備える。前記第1の工程では、茹でたパスタ麺を略板状の所定形状に整形し、前記整形したパスタ麺の片面に、前記パスタ麺の重量の所定の割合のラードを存在させ、該ラードを存在させたパスタ麺を、当該ラードを内側として折り畳み、前記折りたたんだパスタ麺を袋に入れて真空パックすることができる。また、前記第2の工程では、野菜および肉を、塩、胡椒を含む調味料と共に煮込んだあんかけソースを用意し、該あんかけソースを所定の容器に詰め、前記第1工程により袋に詰められた前記パスタ麺と、前記第2工程により所定の容器に詰められた前記あんかけソースとを、冷凍状態とし、所定の形状の収容容器に詰めて詰め合わせる。
【0008】
かかるあんかけパスタセットの製造方法によれば、冷凍されたパスタ麺の内側にラードが配置されているので、これを解凍して調理すると、パスタ麺内部のラードがパスタ麺になじみ、あんかけソースをかけたときのパスタ麺の風味を引き立て、専門店で提供されるあんかけパスタに一層近い風味を実現することができる。なお、パスタ麺の解凍・調理は、自然解凍と電子レンジによる加熱調理とを組み合わせたり、蒸し器での解凍と加熱調理とを組み合わせた入り、種々の手法が採用可能である。
【0009】
(2)ここで、前記ラードは前記パスタ麺の重量の5〜15重量%とすることができる。この程度の割合が、もっともパスタ麺とあんかけソースとの相性がよくなる。
【0010】
(3)また、ラードをパスタ麺の片面に存在させる前に、前記パスタ麺を半冷凍状態としてもよい。こうすると、ラードをパスタ麺に配置しやすくなる。
【0011】
(4)ラードは、前記半冷凍状態としたパスタ麺の片面に塗布するものとしてもよい。こうすると、ラードが一層パスタ麺になじみやすくなる。
【0012】
(5)他方、あんかけソースは、片栗粉を加えてとろみが付けられており、該あんかけソースを袋に詰め、あんかけソースがゲル化してから真空パックしたものであっても差し支えない。こうすれば、あんかけソースを容易に提供することができる。
【0013】
(6)他方、あんかけソースを、冷凍乾燥により粉末化したソースに片栗粉を加えた粉体として提供しても良い。こうすれば、熱湯を注ぐだけで、容易にあんかけソースを得ることができる。また粉体で提供されるので、保存や収納が容易となる。
【0014】
(7)本発明の第2の形態は、パスタ麺とあんかけソースとを詰め合わせたあんかけパスタの詰め合わせセットとして提供される。この詰め合わせセットは、パスタ麺が、冷凍状態で真空パックされており、該冷凍状態とされたパスタ麺の内面に、ラードが所定面積に亘って配置されている。また、あんかけソースは、所定の容器に収容されており、少なくとも野菜および肉を原材料とし、塩、胡椒を含む調味料と共に煮込んだソースであり、前記冷凍状態で真空パックされたパスタ麺と前記所定の容器に収容されたあんかけソースとが、所定の収容容器に収容されている。
【0015】
かかるあんかけパスタの詰め合わせセットは、パスタ麺が冷凍状態で詰め合わされているので、長期保存が可能であり、利便性が高い。しかも、冷凍されたパスタ麺の内側にラードが配置されているので、これを解凍して調理すると、パスタ麺内部のラードがパスタ麺になじみ、あんかけソースをかけたときのパスタ麺の風味を引き立て、専門店で提供されるあんかけパスタに一層近い風味を実現することができる。
【0016】
本発明は、製造方法や詰め合わせセット以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、あんかけパスタ用パスタ麺の製造方法、その製造を自動的に行なう自動製麺機、その自動製麺機を制御するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例のあんかけパスタ用麺の製造方法の工程図。
【
図5】あんかけパスタの詰め合わせセットの形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照してあんかけパスタセットの製造方法の実施形態について説明する。あんかけパスタセットとは、冷凍したパスタ麺とあんかけソース(共に二人前)を、収容容器に詰めたものである(
図5参照)。まずこのパスタ麺とあんかけソースの製造方法について説明する。
【0019】
(1)工程S10:製麺
パスタ麺を製麺する。デュラムセモリナというパスタ用のデュラム小麦を粗挽きした強力粉に水を加え、練り機で錬った後、業務用バスタマシンで生地を作り、これを太さ2.2ミリにカッティングして、あんかけパスタ用の麺を作る。
(2)工程S20:麺を茹でる
製麺した麺を、一定時間置いた後、適量の湯で茹で上げる。そのまま食する時の茹で時間より1、2分短い時間で茹でる。もとより、茹で時間は、好みにもよるので、好みの固さに茹で分けても差し支えない。
【0020】
(3)工程S30:整形
茹で上げた麺を水あげして冷ましつつ、一人前200グラムに分け、形を整える。一人前200グラムである必要はなく、少なめなから多め、あるいは二倍など、所望のグラム数に分けることは差し支えない。形は後で袋に詰めるため、その袋の短手方向(幅)より僅かに小さく、袋の長手方向長さの約2倍弱の形にする。この状態で、更に冷却し、半冷凍状態とする。半冷凍状態とは、麺同士がある程度くっついた状態となっているものの、完全に冷凍されてはおらず、折り曲げたりできる状態を言う。
【0021】
(4)工程S40:ラード塗布
この半冷凍状態の麺の片面にラードを塗布する。この様子を
図3に示した。
図3において、半冷凍状態にされた麺200の片面に、ナイフ210により、ラード220が塗布されている。ラード220は、この実施形態では、麺200グラムに対して、15グラムとした。ラードの量は、麺重量の5%〜15%程度の範囲が好ましい。また、ラード220は、ナイフ210などで塗布するものとしても良いが、ラードの溶融温度より僅かに高い温度に温め、溶融したラードを噴霧しても良い。噴霧されたラードは半冷凍状態の麺に触れて直ちに個体化するので、塗布された状態と同じ状態となる。噴霧すれば、互いに絡んだ麺の内部までラードが到達するので好ましい。あるいはラードを半溶融状態としてチューブなどの内部に収容し、絞り出すようにして、麺の片面に配置しても良い。絞り出しながら、麺との相対位置を変更すれば、麺の片面に配置することは容易である。また絞り出す量をコントロールすることで、適量のラードを配置することができる。
【0022】
本実施形態では、ラードは、塗布や噴霧、絞り出しなどの手法で麺の片面に配置するものとしたが、ラードを予め薄く、薄板状に整形しておき、麺の片面に単に載置するものとしても良い。この場合は、麺は半冷凍状態でなくても差し支えない。むしろラードの溶融温度に近い状態としておけば、薄板状に整形されたラードが載置されると溶融して麺になつき、好ましい。ラードは、一枚で十分な量になるように整形するものに限られず、複数枚に分けて載置しても良い。予めラードを整形して用意すれば、ラードの量を正確に制御することができる。大量生産する場合には、茹で上げた麺を水あげした後、適量(例えば200グラム)ずつ計量して、矩形形状の容器に入れ、搬送しつつ冷却し、ラードの溶融温度前後になったところで、薄板状に整形したラードを載置する、といった手法を採用すれば、製造を自動化することができ、大量生産が可能となる。
【0023】
(5)工程S50:麺を畳む
こうして麺の片面にラードを配置した状態で、麺を半冷凍状態としてからこれを畳む。この様子を
図4に示した。
図4の(A)は、麺200の片面にラード220が配置された状態を示している。この状態から麺200を長手方向のほぼ中央で、折り曲げ、麺200を折り畳む。この様子を
図4の(B)に示した。折り畳みが完了すると、麺200は元の大きさと比べて面積で1/2、厚みが2倍となり、中心にラード220の塗布層が位置することになる。この様子を
図4(C)に示した。なお、以上に説明からも明らかだが、ラードは、整形した麺の片面全面に塗布する必要はなく、片面の更に片側1/2に塗布しておいても、麺200を折り畳めば、
図4(C)と同じ状態とすることができる。また、半分の大きさの麺を2つ作り、折り畳む代わりに重ね合わせて一体化しても良い。折り畳む場合には、麺を一体化する手間を要しない。
【0024】
(6)工程S60:真空パック
図4(C)の状態とした麺を適切な大きさの袋に入れ、真空包装機に装着する。真空包装機により、袋の内部を減圧し、袋を熱溶着して封じる。こうして長期保存可能なあんかけパスタ用麺が製造される。
【0025】
次に、あんかけバスタの冷凍パックの製造方法について、
図2を参照しつつ説明する。
(7)工程S110:あんかけソースの製造
あんかけパスタではあんかけパスタ専用のソースを用いるので、まずソースを製造する。
a.ソース用原材料の準備
ソース用原材料として、トマトピューレ、トマトペースト、タマネギ、人参、ジャガイモなどを準備する。これらのソース用原材料のうち野菜は、適宜、裁断することにより用いる。さらに、ソース用原材料に、胡椒やグルタミン酸ナトリウム等の調味料を加えることにより味を調節する。
ここで、ソース用原材料の量は、例えば、重さで以下の割合とすることができる。
タマネギ 400g/(18%)
人参 200g/(9%)
ジャガイモ 500g/(22%)
トマトピューレ 200g/(9%)
トマトペースト 425g/(19%)
牛の挽肉 200g/(9%)
塩 100g/(4%)
調味料 200g/(9%)
胡椒 10g/(1%)
【0026】
b.ソース用ペーストの作成
オーブンに、準備したソース用原材料を入れ、さらに水200mlに入れてかき混ぜつつ加熱する。加熱時間は、約12時間である。これにより、粘性のあるソース用ペーストが約1.4kg作られる。最終工程で、これに片栗粉(化工澱粉)やグルタミン酸調味料などを加えて、とろみのついたあんかけパスタ用ソースが完成する。
【0027】
(8)工程S120:ソースの真空パック
工程S110で製造したソース100グラムを袋に入れて冷却する。温度を下げてソースがゲル化したところで、真空包装機にセットして、袋の内部を負圧にし、そのまま袋を熱溶着して封じる。
【0028】
以上の工程S110,S120により、真空パックされたあんかけソースが完成する。他方、
図1を用いて説明したように、あんかけパスタ用麺も真空パックされて、準備されている(工程S100)。そこで、次に、両者をケースに収納する(工程S150)。ケースは、本実施形態では、2つのあんかけパスタ用麺と2つのあんかけソースとが収容される大きさのものを用意した。
【0029】
図5は、収容容器270に、袋260にパックされたあんかけパスタ麺200を2つ並べ、その脇に、2つのあんかけソースのパック300を配置した様子を示している。この状態で、収容容器270に蓋をして、そのまま冷凍・保存する。以上で、あんかけパスタセットの製造は完了する。
【0030】
上記の製造工程を経て製造されたあんかけパスタセットは、収容容器270の内部に2食分のあんかけパスタの麺とソースが同梱されている。そして、あんかけパスタ用麺は、内部に適量のラードが配置された状態で真空パックされている。従って、これを解凍し、調理することで、ラードが麺になじみ、これにあんかけソースをかけることにより、専門店で提供されるのと同じ状態のあんかけパスタが得られる。
【0031】
こうしたあんかけパスタセットを用いて2人前のあんかけパスタを調理する方法について簡単に説明する。まず、収容容器270から、あんかけパスタ用の麺とソースの袋を取り出し、そのまま30分ほど常温で自然解凍する。その上で、パスタ麺を袋から取り出し、電子レンジで500ワットで3〜4分加熱調理する。他方、あんかけソースは、袋の端をカットして、そのままあるいは加熱容器に移して、電子レンジで500ワット、3分間ほど加熱調理する。パスタ麺を加熱したあと、これを食器に移して麺をほぐすと、加熱されたラードが麺全体に行き渡り、麺の表面に皮膜となって、麺を包んだ状態となる。これに、熱々になったあんかけソースをかけることで、あんかけパスタが完成する。なお、あんかけソースをバスタにかけてから電子レンジで加熱することは避けた方が好ましい。ソースをかけて加熱するとラードが麺全体に行き渡りにくくなり、しかもソースの水分で麺がふやけてしまうことがあるからである。また、パスタ麺は、ラードが電子レンジによる加熱とその後のほぐしにより、全体に行き渡るので、フライパンで炒める必要は特にない。
【0032】
以上、あんかけバスタセットの製造方法とその製造方法により製造したパスタ麺とあんかけソースとをセットにしたあんかけパスタの詰め合わせセット、更にはその調理方法について説明した。この製造方法によって製造されたあんかけパスタ麺には、真空パックされた麺全体のおよそ中心部に、ラードが配置されており、調理する際に、麺の表面を皮膜のように覆い、あんかけソースとのなじみを良くし、かつあんかけソースによって麺がふやけることを防止して、独特の食感を醸している。このため、専門店と同様のあんかけパスタを手軽に提供することができる。しかも、あんかけパスタの詰め合わせでは、あんかけソースも一緒に詰め合わされているので、手軽にあんかけパスタを楽しむことができる。
【0033】
しかも、本実施形態のあんかけパスタでは、パスタ麺を油で揚げていないので、αデンプンがそのまま保持されており、食感および食味を良好に保つのに寄与している。油で揚げると、パスタ麺表面近くのαデンプンが変質しやすく、食感と食味を損なうのである。従来のあんかけパスタでは、麺にその独自の食感を持たせるために、茹で上げた麺を油で揚げる、と言うことが行なわれていたが、本実施形態のあんかけパスタ麺では、油で揚げなくても、あんかけパスタ麺独特の食感を味わうことができる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0035】
例えば、あんかけソースは、本実施形態では、袋に入れて提供されているが、紙製、ブラスチック製、陶器製などの容器に入れて提供しても良い。これらの容器は、開封がそのまま電子レンジで用いられるものでも良いし、電子レンジでの使用ができないものでも良い。後者の場合は、あんかけソースを、電子レンジで使用可能な容器に移し替えて加熱すれば良い。あるいは鍋などに移して、通常の電気またはガスレンジ等で加熱しても良い。
【0036】
また、本実施形態では、ラードを用いたが、ラードとバター、ラードと植物性油などの混合物を用いても良い。ラードは、整形したパスタ麺の少なくとも片面に塗布などにより配置すれば良く、両面に配置しても、あるいは片面と他の一以上の側面に塗布しても良い。また、パスタ麺を折り畳むのは、一重に限らず、複数回折り畳んでも差し支えない。あるいは、折り畳みの曲率を大きく、かつ連続的として、麺を丸めるように折り畳んでも差し支えない。パスタ麺は折り畳まれていれば良く、整形は長方形でなくても良い。例えば円形に整形し、折り畳んで時に半月形になってもよい。ひょうたん型に整形し、折り畳んだときに略円形になるものとしても良い。もとより、他の形状、三角形状や多角形状、異形形状としても差し支えない。
【0037】
あんかけソースは、上記実施形態では、袋に詰めてゲル化したものを真空パックしたが、ソースを製造するとき、片栗粉を加える前の状態で、凍結乾燥することにより粉末化し、これに片栗粉を加えた状態で提供しても良い。この場合、あんかけソースは、熱湯を加えて攪拌することで、容易に製造することができる。こうしたあんかけソースの粉末化の手法は、特開2007−111013号公報に記載されているので、詳しい説明は省略する。
【符号の説明】
【0038】
200 … パスタ麺
210 … ナイフ
220 … ラード
260 … 袋
270 … 収容容器
300 … あんかけソース
【要約】
【課題】あんかけパスタを冷凍食品として提供しようとすると、あんかけパスタ独自の風味が損なわれる。
【解決手段】あんかけパスタ用の麺を用意する工程では、茹でたパスタ麺を略板状の所定形状に整形し、前記整形したパスタ麺の片面に、前記パスタ麺の重量の所定の割合のラードを存在させ、該ラードを存在させたパスタ麺を、当該ラードを内側として折り畳み、前記折りたたんだパスタ麺を袋に入れて真空パックする。こうすることで、調理する際にラードかパスタ麺の表面になじみ、あんかけパスタ独自の食感を再現することができる。
【選択図】
図1