(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着性ゲル部は、前記皿部において前記柄部から遠い側に取り付けられるとともに、前記水分除去部は、前記皿部において前記柄部に近い側に取り付けられることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のソフトコンタクトレンズ取外器具。
【背景技術】
【0002】
近年、コンタクトレンズの装用人口は、1600万人から1800万人になり、国民の8人に1人がコンタクトレンズを装用していると推測されている。(厚労省の統計による、カラーコンタクトの普及により実数はより大きいと推測される)テレビ・パソコン・ゲーム・電子ブック・スマートフォン等による急速な普及により我が国の若年層の視力は低下している。また、スポーツをする少年は、メガネではなくコンタクトレンズを選択する。これに伴って、コンタクトレンズの若年使用開始、そして無知識等によるコンタクトレンズによる眼障害が急増しており、コンタクトレンズ装用者の10人に1人以上に目障害が生じていると推測されている。(しかしこれは氷山の一角であり実数はもっと多いと推測されている。)
【0003】
全国の小中高生を対象に実施したコンタクトレンズ装用状況に関する調査によると、中高生の装用人数が全学年で有意に増加している。高校生では4人に1人以上がコンタクトレンズを装用しており、小中学生でも装用する場合が増えている。最近では、小中高生を中心にお洒落感覚によるカラーコンタクトレンズの装用者が急増している。
【0004】
このように装用者の低年齢化が進行しているコンタクトレンズは、高度医療機器であるにもかかわらず、入手・装着のハードルが低く、知識のないままに装用している場合も多い。安価な粗悪品も出回っている。さらに、製品の取り扱い説明書にも眼障害についての記載が少なく、着用によるリスク・障害の警告はもとより、付け外し方法の詳細な解説がない場合もある。また、本来は3か月に一度の定期的な眼科受診が必要だが、ドラッグストア、通販等も参入し、受診なく処方箋なくしても簡単にコンタクトが手に入るシステムになっているのが現状である。もはや医療機器ではなく、化粧品レベルである。そして、使用法・使用年月の積み重ねによる「副作用」は記されていない。
【0005】
実際のところ、コンタクトレンズ装用に伴う、多くの眼障害が報告されている。眼障害には、例えば、点状表層角膜症、角膜内皮障害、角膜浸潤・角膜潰瘍、巨大乳頭結膜炎、角膜血管新生、角膜上皮びらん、角膜浮腫などがある。とりわけ、角膜内皮障害は問題となる。誰しもがに身近で、着実に・確実に進行性であり、重症となれば失明にいたるからである。
【0006】
例えば、
図13、14に示すような障害が報告されている。
図13では、矢印で示した点々部位が角膜の障害を表す。
図14では、広範囲にわたって角膜の障害がみられる。
【0007】
角膜内皮障害は、一般に、角膜に酸素が供給されないことによって生じるとされている。しかし、眼球に対する継続的な摩擦、特にコンタクトレンズを取り外す際の揉み出すような物理的な刺激によって細胞が損傷されて生じる場合も多い。しかし、この揉みだすような直接眼球に圧迫刺激を与えるリスクについての説明やデータ・そして警告等は、公表されていないのが現状である。
コンタクトレンズの取り扱い説明書で明記しているものは皆無である。
【0008】
ここで、角膜内皮細胞について説明しておく。角膜内皮細胞とは、黒目の一番内側にある細胞で、黒目の呼吸や代謝を担い、黒目の透明性、視力を維持する細胞である。そして、一度減ってしまうと再生しない非可逆性細胞である。角膜内皮細胞は、継続して損傷を受けると、次第に減少し、黒目の透明性を維持できなくなり、浮腫んで、濁りが出て、痛みも生じる。ただの充血だろうと目薬程度で放置する、そして引き続きコンタクトレンズを使用し続ける使用者も多く、場合により手遅れとなる。
【0009】
現在、眼科の救急外来は、コンタクト取り外しの困難と損傷に関するものが多数を占めている。忙しさなどによるその場しのぎの放置の繰り返しで、重篤な状態に発展している患者は大学病院へ行く。治療としては、最悪・最終的には角膜移植するしかなくなる。しかし、角膜は供給量が少なく、幸運にも角膜移植しても定着率は非常に低く、失明に至る場合がほとんどである。通常1ミリ平方当り2500個から3000個存在する角膜内皮細胞は、コンタクトレンズ装用歴10年(10年で長期使用者とカテゴリされる)で2000個以下に減少する可能性が高い。1ミリ平方当り1500個以下になると、レーシック施術ができなくなり、1000個以下になると、将来的に白内障等の手術すら不能となる。失明に近い視力低下で90までの高齢化社会を生きる「障碍者」となるのである。
【0010】
より詳細にいえば、
図15に示すような障害された角膜内皮細胞がみられる。細胞の形が破壊されていることがわかる。また、
図16に示すようなアレルギー性結膜炎、角膜の傷、角膜潰瘍が報告されている。
図16の下図に示すように、コンタクトレンズを使用しない場合が細胞密度3,448/mm
2に対し、コンタクトレンズを20年間装用した場合は細胞密度708/mm
2となる。
【0011】
上述したように、このまま低年齢化による無知識でコンタクトレンズ装用を開始する人口が増加し続けると、わが国は、40代で失明する人口を多く抱える若年失明社会となることが懸念される。失明は「障碍者1級」に相当し、働き盛りの若い世代を失うばかりか、社会保障の国費もかかってしまう。アジア圏の中で、最も大きなコンタクトレンズ市場がわが国である現状、公になってはいないが、先進国として、望ましくない近未来図である。そのため、若いうちから眼障害を軽減し、子供たち、若年層の眼球を守るために特に簡便で衛生的な本発明の器具を使用してほしいと考案した。
【0012】
コンタクトレンズを取り外す器具として、例えば特許文献1のコンタクトレンズ装着補助具が公知となっている。この特許文献1のコンタクトレンズ装着補助具は、二股形状の上端部を有しており、眼球上のコンタクトレンズを挟み取ることによって、コンタクトレンズを取り外すように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】眼に対してソフトコンタクトレンズを装着した状態について説明する断面図である。
【
図2】実施例1のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する斜視図である。
【
図3】実施例1のソフトコンタクトレンズ取外器具の粘着性ゲル部の構成を拡大して説明する拡大側面図である。
【
図4】実施例1のソフトコンタクトレンズ取外器具を使用する方法を説明する説明図である。取外器具を接触させるステップを説明している。
【
図5】実施例1のソフトコンタクトレンズ取外器具を使用する方法を説明する説明図である。ソフトコンタクトレンズと取外器具とが接触している状態を説明している。
【
図6】実施例1のソフトコンタクトレンズ取外器具を使用する方法を説明する説明図である。取外器具をスライドさせるステップを説明している。
【
図7】実施例2のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する斜視図である。
【
図8】実施例2のソフトコンタクトレンズ取外器具を使用する方法を説明する説明図である。ソフトコンタクトレンズの表面の水分を取り除くステップを説明している。
【
図9】変形例のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する斜視図である。
【
図10】変形例のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する斜視図である。
【
図11】変形例のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する説明図である。(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA−A線矢視の断面図である。
【
図12】変形例のソフトコンタクトレンズ取外器具の全体構成を説明する説明図である。(a)は斜視図であり、(b)は(a)のB−B線矢視の断面図である。
【
図13】角膜内皮細胞の障害の症例を説明する説明図である。
【
図14】角膜内皮細胞の障害の症例を説明する説明図である。
【
図15】角膜内皮細胞の障害の症例を説明する説明図である。
【
図16】角膜内皮細胞の障害の症例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
(眼とソフトコンタクトレンズの構造)
まず、
図1を用いて、眼5に対してソフトコンタクトレンズ6を装着した状態について説明する。
【0023】
眼5は、角膜51と、前房52と、水晶体53と、硝子体54と、網膜55と、視神経56と、を備えている。そして、ものを見るときは目に入った光は虹彩で調節され、ピントを調節する水晶体53で屈折され、硝子体54を通過して、網膜55の黄斑に焦点を結ぶ。その光が視神経56を通じて信号として脳に伝達される。角膜51の形状は正確な球面ではなく、概して中心部から周辺部に向かうにつれ、曲率が大きくなる非球面である。
【0024】
ソフトコンタクトレンズ6は、水を含有する合成高分子化合物からなる柔軟性のあるコンタクトレンズである。含水率は、素材によって異なるが、約55〜70%である。
【0025】
ソフトコンタクトレンズ6は、角膜51の前面の形状に一致するように、全体として皿状乃至球面状に形成されている。ソフトコンタクトレンズ6の形状は、一般に、レンズ後面の曲率半径であるベースカーブ、周辺部を含んだレンズ全体のレンズ直径、及び、レンズの中心部の厚みである中心厚によって規定される。
【0026】
例えば、レンズ直径は、約13〜14.5mmであり、角膜51よりも大きく結膜の部分まで覆うようになっている。また、ベースカーブは8.5〜8.6mm、中心厚は0.070〜0.085mm(−3.00Dの場合)が一般的である。各社の製品とも、ベースカーブ、直径はほとんど変わりがない。
【0027】
コンタクトレンズは、涙の表面張力によって眼5にくっついている。そのため、ソフトコンタクトレンズのほうがハードコンタクトレンズよりも面積が広い分だけ表面張力が大きく、外れにくいといえる。装着された状態では、ソフトコンタクトレンズ6は、角膜51の表面形状に即して変形している。
【0028】
(取外器具の構成)
次に、
図2を用いて、本発明のソフトコンタクトレンズ取外器具1の全体構成を説明する。本発明のソフトコンタクトレンズ取外器具1は、
図2に示すように、眼5に装着されたソフトコンタクトレンズ6を取り外すためのソフトコンタクトレンズ取外器具1であって、棒状に形成されて指で保持される柄部2と、柄部2の一方の端部に接続して皿状に形成される皿部3と、皿部3に取り付けられる粘着性ゲル部4と、を備えている
【0029】
柄部2は、合成樹脂によって形成される棒状の部材であり、指で保持しやすいように、扁平な楕円状乃至アーモンド形状の断面を有している。そして、
図3に示すように、皿部3に向かって沈み込むように屈曲している。後述するように、柄部2は指で持ってスライドさせるため、スライドさせる際に支障にならない程度の長さとすることが好ましい。(5cm程度と考えられる)
【0030】
皿部3は、合成樹脂によって柄部2と一体に形成される皿状乃至球面状の部材であり、粘着性ゲル(溶剤を使わない、自己粘着性のゲルシートであり、素材として、シリコンゲルシートや、超軟質ウレタンゴムシート等がある)部4の直径よりも小さく形成されている。皿部3は、柔軟性のある粘着性ゲル部4の形状を保持するために、角膜51の形状に即するような形状にされる。
【0031】
そして、本実施例の粘着性ゲル部4は、親水自己粘着性を有するシリコンポリマー、または、新素材ゲル状自己粘着ウレタン超軟質ゴム、によって皿状乃至球面状に形成されている。形状について詳細にいうと、粘着性ゲル部4は、ソフトコンタクトレンズ6の凸状の前面形状に沿うような凹状の表面形状を有している。
【0032】
材質について詳細にいうと、粘着性ゲル部4は、表面に水が付着した状態で粘着性を有するゲル状のシリコンポリマー、または、超軟質ウレタン自己粘着ゴム等によって形成される。粘着性ゲル部4によって発揮されるソフトコンタクトレンズ6に対する粘着力は、ソフトコンタクトレンズ6と眼5との付着力(表面張力による)と同程度以上であることが好ましい。なお、粘着力は、付着力よりも小さくてもよいが、少なくともソフトコンタクトレンズ6を粘着してスライド(回転移動)させることができる程度の大きさは必要である(
図6参照)。
【0033】
さらに、
図3に示すように、粘着性ゲル部4は、柄部2に接続する基端部よりも、柄部2の反対側に位置する先端部近傍が高くなっている。この形状によって、後述の使用方法において、粘着性ゲル部4を眼5の形状に沿って弧を描くようにスライドさせやすくなる。
【0034】
(取外器具を使用する方法)
次に、
図4〜
図6を用いて、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1を使用する方法について説明する。なお、
図4〜
図6では、説明の便宜上、ソフトコンタクトレンズ取外器具1及び眼5を断面図として描き、手のみを平面図として描いている。
【0035】
まず、
図4を用いて、粘着性ゲル部4をソフトコンタクトレンズ6に接触させるステップについて説明する。このステップでは、ソフトコンタクトレンズ6の略正面方向から粘着性ゲル部4を略平行に移動させてソフトコンタクトレンズ6に接触させる。
【0036】
すなわち、柄部2が顔面に対して略平行になるように手指で持ち、略平行の状態を保ったまま、ゆっくりとソフトコンタクトレンズ6(及び眼5)に近づけていき、最終的にソフトコンタクトレンズ6に接触させる(
図5参照)。
【0037】
接触した状態では、
図5に示すように、柄部2は、顔面に対して略平行になるように手指で持たれている。
【0038】
次に、
図6を用いて、ソフトコンタクトレンズ6を取り外すステップについて説明する。このステップでは、ソフトコンタクトレンズ6が付着した粘着性ゲル部4を眼5の形状に沿って弧を描くようにスライドさせて、ソフトコンタクトレンズ6を取り外す。
【0039】
すなわち、前のステップでソフトコンタクトレンズ6が付着した粘着性ゲル部4を、回転移動させつつ、平行移動させる。これにより、ソフトコンタクトレンズ6が眼5から外される。
【0040】
この際、ソフトコンタクトレンズ6がずれ始めると、ソフトコンタクトレンズ6自体の弾性によって中央に戻ろうとするが、この動きを粘着性ゲル部4で抑えるようになっている。この機能は、シリコンまたは粘着ゴムが面間のずれるような動きに対しては大きな抵抗力(粘着力)を有するという特性を利用している。そして、ずれ量が大きくなってくるとソフトコンタクトレンズ6と眼5との間に微量の空気が浸入して、表面張力を打ち消すため、ソフトコンタクトレンズ6が外れやすくなる。
【0041】
(効果)
次に、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1の奏する効果を列挙して説明する。
【0042】
(1)本実施例のソフトコンタクトレンズの取外器具1は、眼5に装着されたソフトコンタクトレンズ6を取り外すためのソフトコンタクトレンズ取外器具1であって、棒状に形成されて指で保持される柄部2と、柄部2の一方の端部に接続して皿状に形成される皿部3と、皿部3に取り付けられる粘着性ゲル部4とを備えている。
【0043】
したがって、粘着性ゲル部4によってソフトコンタクトレンズ6を吸着して取り外すことができるため、眼5に揉み出すような刺激を与えることがなくなる。これによって、角膜内皮障害などの眼障害を抑制することができるようになる。
【0044】
(2)粘着性ゲル部4は、表面に水が付着した状態で粘着性を有するゲル状のシリコンポリマー等によって形成されている。このため、表面が涙によって濡れている状態にある、眼5に装着されたソフトコンタクトレンズ6を、粘着することができる。
【0045】
(3)粘着性ゲル部4は、ソフトコンタクトレンズ6の凸状の前面形状に沿うような凹状の表面形状を有している。このため、粘着面積を大きくすることで、いっそう大きい粘着力を有することができる。なお、粘着性ゲル部4の形状は、ソフトコンタクトレンズ6の形状と厳密に一致する必要はない。
【0046】
(4)粘着性ゲル部4は、柄部2に接続する基端部よりも、柄部2の反対側に位置する先端部近傍が高くなっている。このため、使用する際に、柄部2を手指で持ってスライドさせる動作がしやすくなる。また、ソフトコンタクトレンズ6を引っ掛けて、手前(顔に対して外側方向)に引くような力をかけることができるため、ソフトコンタクトレンズ6自体の弾性力を打ち消すことができる。
【0047】
(5)また、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1を使用する方法は、上述したいずれかのソフトコンタクトレンズ取外器具1を使用する方法であって、ソフトコンタクトレンズ6の略正面方向から粘着性ゲル部4を略平行に移動させてソフトコンタクトレンズ6に接触させるステップと、ソフトコンタクトレンズ6が付着した粘着性ゲル部4を眼5の形状に沿って弧を描くようにスライドさせて、ソフトコンタクトレンズ6を取り外すステップと、を備えている。使い勝手の慣れた方式で使用してゆくことが慣れると考えられる。
【0048】
このため、眼5に揉み出すような刺激を与えることなく、ソフトコンタクトレンズ6を取り外すことができる。
【0049】
この際、柄部2は、眼5に対して平行に保持されるため、コンタクトレンズを装用している人に与える恐怖感を緩和することができる。さらに、取り外す際に、眼5の横の空間(顔の外側の空間)を利用するため、ソフトコンタクトレンズ取外器具1を、弧を描くように動かすことができる。
【実施例2】
【0050】
以下、
図7、
図8及び
図5、6を用いて、前記実施例とは別の形態のソフトコンタクトレンズの取外器具1Aについて説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0051】
(構成)
まず構成について説明すると、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aは、
図7に示すように、柄部2と、皿部3と、粘着性ゲル部4と、を備えている。そして、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aは、粘着性ゲル部4に連続するように、ソフトコンタクトレンズ6の表面の水分を取り除く水分除去部としての吸水スポンジ(吸水シート)7をさらに備えている。
【0052】
すなわち、粘着性ゲル部4は、皿部3において柄部2から遠い側に取り付けられるとともに、吸水スポンジ7は、皿部3において柄部2に近い側に取り付けられている。すなわち、使用時には、顔面の中心寄りに粘着性ゲル部4が配置され、顔面の外寄りに吸水スポンジ7が配置される。これによって、後述するソフトコンタクトレンズ取外器具1Aの使用方法において、1回の動作(1回のストローク)によってソフトコンタクトレンズ6を取り外すことができる。
【0053】
吸水スポンジ7は、ポリウレタン等の合成樹脂や天然樹脂などで形成される多孔体であり、皿部3の近傍に取り外し可能に取り付けられている。なお、水分除去部は、吸水スポンジ7に限定されるものではなく、例えば吸水シートなどであってもよく、柄部2の先端近傍に取り付けられて、眼5の表面の水分を除去する機能があればどのような構成であってもよい。
【0054】
(取外器具を使用する方法)
次に、
図7、
図8(a)、(b)、
図5、
図6を用いて、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aを使用する方法について説明する。
【0055】
本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aの使用方法は、実施例1と同様に、ソフトコンタクトレンズ6の略正面方向から粘着性ゲル部4を略平行に移動させてソフトコンタクトレンズ6に接触させるステップと、ソフトコンタクトレンズ6が付着した粘着性ゲル部4を眼5の形状に沿って弧を描くようにスライドさせて、ソフトコンタクトレンズ6を取り外すステップと、を備えている。
【0056】
そして、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aの使用方法は、接触させるステップの前に、ソフトコンタクトレンズ6の表面の水分を取り除くステップをさらに備えている(
図8(a)、(b)参照)。すなわち、皿部3の柄部2寄りに配置される吸水スポンジ7を、まずソフトコンタクトレンズ6(又は眼5)に接触させて表面の水分を吸い取る。より詳細にいうと、粘着性ゲル部4よりも吸水スポンジ7が、よりソフトコンタクトレンズ6に近くなるように保持しつつ、平行移動させて吸水スポンジ7をソフトコンタクトレンズ6に接触させるようにする。
【0057】
水分を取り除くステップは、粘着性ゲル部4によるソフトコンタクトレンズ6との粘着性能を向上させることを目的としている。つまり、眼5の表面の水分を吸水スポンジ7によって吸い取ることによって、水分が除去されたソフトコンタクトレンズ6が粘着性ゲル部4とより接着しやすくなる。
【0058】
その後、粘着性ゲル部4をソフトコンタクトレンズ6に接触させるステップと、ソフトコンタクトレンズ6を取り外すステップと、が実行される。取り外すステップでは、粘着性ゲル部4が顔面の中心寄りに位置するため、回転移動させつつ平行移動させるときに、主に粘着性ゲル部4によってソフトコンタクトレンズ6を付着させることができる。このように、水分を取り除くステップ、接触させるステップ、取り外すステップが、一連の動作として実行される。
【0059】
(効果)
次に、本実施例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Aの奏する効果を列挙して説明する。
(1)本実施例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Aは、柄部2と、皿部3と、粘着性ゲル部4と、を備えている。そして、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aは、粘着性ゲル部4に連続するように、ソフトコンタクトレンズ6の表面の水分を取り除く水分除去部としての吸水スポンジ7をさらに備えている。このため、水分を除去されたソフトコンタクトレンズ6が、いっそう粘着性ゲル部4と粘着しやすくなり、取り外しやすくなる。
【0060】
(2)水分除去部としての吸水スポンジ7は、皿部3の近傍に取り外し可能に取り付けられた吸水スポンジ7であるため、例えば、2つ以上の吸水スポンジ7、・・・を取替用に用意しておくことによって、衛生面に配慮しつつ、吸水スポンジ7(水分除去部)を使用できる。
【0061】
(3)粘着性ゲル部4は、皿部3において柄部2から遠い側に取り付けられるとともに、吸水スポンジ7は、皿部3において柄部2に近い側に取り付けられるため、水分除去、接触、取り外しの各ステップを、流れるような一連の動作として実行できるようになる。
【0062】
(4)また、本実施例のソフトコンタクトレンズ取外器具1Aを使用する方法は、上述したいずれかのソフトコンタクトレンズ取外器具1Aを使用する方法であって、接触させるステップと、取り外すステップと、を備えている。そして、接触させるステップの前に、ソフトコンタクトレンズ6の表面の水分を取り除くステップをさらに備えている。このため、水分を除去されたソフトコンタクトレンズ6が、より粘着性ゲル部4と粘着しやすくなり、取り外しやすくなる。出先で酔っていて鏡が無くても、汚れた手指でも、また、子供でも簡単に操作できる。
【0063】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0064】
以下、
図9〜
図12を用いて、変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1B、1C、1D、1Eについて説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0065】
(
図9の変形例)
まず、構成について説明する。この変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Bは、実施例1のソフトコンタクトレンズの取外器具1Aよりも柄部2の軸線に沿う方向の長さが長い。例えば、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7(吸水シートでもよい)は、それぞれがソフトコンタクトレンズ6と略同一の長さを有している。形状は、それぞれが楕円を略半分にした形状であり、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とを合わせると、全体として細長い楕円形になる。
【0066】
次に、作用・効果について説明する。変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Bは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7の両方が、ソフトコンタクトレンズ6と略同一の長さであるため、吸水スポンジ7によってソフトコンタクトレンズ6の水分を除去しやすいうえに、粘着性ゲル部4によってソフトコンタクトレンズ6を付着しやすい。
【0067】
(
図10の変形例)
まず、構成について説明する。この変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Cは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されている。そして、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、同一面をなし、全体としてハート形になっている。
【0068】
次に、作用・効果について説明する。変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Cは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されているため、手指による単一の動作を正逆方向に繰り返すことによって、吸水と付着の両方を簡単に実施できる。特に、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、同一面をなすことでスライド動作によって吸水と付着の両方を簡単に実施できる。
【0069】
(
図11の変形例)
まず、構成について説明する。この変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Dは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されている。さらに、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、全体として中心線で折り曲げたハート形になっている。粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とは、互いに所定角度で傾斜している。両者の間の角度は、好ましくは30°〜150°であり、より好ましくは約60°〜120°であり、最も好ましくは約90°である。なお、
図11においては、下に向いた面41、71がそれぞれ付着面、吸水面である。
【0070】
次に、作用・効果について説明する。変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Dは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されているため、手指による単一の動作を正逆方向に繰り返すことによって、吸水と付着の両方を簡単に実施できる。特に、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、互いに所定角度で傾斜しているため、手首を返す動作によって吸水と付着の両方をきわめて容易に実施できる。
【0071】
(
図12の変形例)
まず、構成について説明する。この変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Eは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されている。さらに、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、それぞれ皿状乃至球面状に形成されている。そして、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、柄部2の軸線に対して互いに反対に向いている。換言すると、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、互いに180°の角度をもって傾斜している。
【0072】
次に、作用・効果について説明する。変形例のソフトコンタクトレンズの取外器具1Eは、粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7が柄部2の軸線に対して対称に配置されているため、手指による単一の動作を正逆方向に繰り返すことによって、吸水と付着の両方を簡単に実施できる。特に、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが、互いに反対方向を向いているため、手首を180°返す(反転する)動作によって吸水と付着の両方を実施できる。さらに、粘着性ゲル部4と吸水スポンジ7とが独立して構成されるため、一方のみを交換することも容易である。
【0073】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、柄部2や皿部3に対する粘着性ゲル部4及び吸水スポンジ7(水分除去部)の取り付け方は、限定されるものではなく、どのような取り付け方であってもよい。例えば、接着であってもよいし、機械的(構造的)に嵌め込むような手法(スナップ式)を採用することもできる。
【0076】
また、実施例では、特に限定しなかったが、粘着性ゲル部4や吸水スポンジ7(水分除去部)は、それぞれ取り替え式に構成することもできる。
【解決手段】眼に装着されたソフトコンタクトレンズを取り外すためのソフトコンタクトレンズ取外器具1である。そして、棒状に形成されて指で保持される柄部2と、柄部2の一方の端部に接続して皿状に形成される皿部3と、皿部3に取り付けられる粘着性ゲル部4と、を備えている。粘着性ゲル部4は、表面に水が付着した状態で粘着性を有するゲル状のシリコンポリマーまたは、自己粘着超軟質ウレタンゴム等によって形成されることが好ましい。