【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが本発明は下記例に制限されるものではない。
【0024】
実施例1〜2
起泡材の調製と気泡量
アルファオレフィンスルホン酸塩として、ライオン(株)製の商品名「リポランLB−440」を使用した。リポランLB−440は、RCH=CH(CH
2)
nSO
3NaとRCH
2CH(OH)(CH
2)
mSO
3Naとの混合物(Rの炭素数14)である。
また、ポリエチレングリコールとして、日油(株)製の商品名「PEG#300」を使用した。PEG#300の重量平均分子量は300である。
前記アルファオレフィンスルホン酸塩を水に溶解し、水溶液を調製した。水溶液中のアルファオレフィンスルホン酸塩の濃度は、0.4
w/v%であった。この水溶液に、前記ポリエチレングルコールを、前記水溶液に対し、1.00倍容量添加した。
この起泡材を九州北部の気泡シールド工事現場で使用した。
なお、掘削始点から土砂を12m
3掘削した掘削長を1リングとし、さらに土砂を12m
3掘削した掘削長を2リング、さらに次の土砂を12m
3掘削した掘削長を3リング、同様に土砂を12n(m
3)掘削した掘削長をnリングとしたとき、253リング(実施例1)および254リング(実施例2)のトンネル掘削現場に前記起泡材を使用した。
この現場において、まず、シールドマシン内の発泡装置を用い、前記起泡材を発泡倍率4倍で発泡させ、気泡が掘削土(掘削された土砂)の35〜40容量%の範囲となるように、シールドチャンバー内の掘削土に混合した。その結果、土砂12m
3に対し、気泡量は4760、4810リットルとなった。
次に、シールドマシンに対する負荷状況を、切羽土圧、カッタ圧、平均推力として調べた。その結果を下記の表1に示す。なお、シールドマシンの掘削速度は25〜30mm/分、実掘削時間は40〜45分/リングであった。
【0025】
比較例1〜3
起泡材の調製と気泡量
実施例1〜2で使用したアルファオレフィンスルホン酸塩を用い、このアルファオレフィンスルホン酸塩を水に溶解し、水溶液を調製した。水溶液中のアルファオレフィンスルホン酸塩の濃度は、2.0
w/v%であり、これを比較例の起泡材として用いた。
この比較例の起泡材を、実施例1〜2と同じ気泡シールド工事現場で使用した。
使用場所は、259〜261リングである。
この現場において、まず、シールドマシン内の発泡装置を用い、比較例の起泡材を発泡倍率4倍で発泡させ、気泡が掘削土(掘削された土砂)の35〜40容量%の範囲となるように、シールドチャンバー内の掘削土に混合した。その結果、土砂12m
3に対し、気泡量は4150〜4790リットルとなった。
次に、シールドマシンに対する負荷状況を、実施例1〜2と同様に調べた。その結果を下記の表1に示す。なお、シールドマシンの掘削速度は実施例1〜2と同じである。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の結果から、本発明の起泡剤を使用した実施例1〜2は、従来の起泡剤を使用した比較例1〜3と比べて、同等の気泡注入状況で、同等のマシン負荷状況を呈し、掘削性能に何ら遜色がないことが分かった。
【0028】
実施例3
実施例1および2で生じた気泡土の気泡の自然消泡性を調べた。
すなわち、掘削した気泡土を立坑上に搬出し、一定量サンプリングし、質量および含水比を測定した後、下記の式により空気間隙率vaを求めた。
【0029】
空気間隙率Va(%)の概算値は水の密度ρwを1.0とすれば以下の式で求められる。
va (%) = 100−ρd×(100/ρs+w)
上記式中、ρsは土粒子の密度(g/cm
3)を、ρdは現場で測定した乾燥密度(g/cm
3)を、wは含水比(%)を意味する。
【0030】
その結果を表2に示す。なお、空気間隙率vaは、掘削して0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間経過後にそれぞれ測定した。
【0031】
比較例4
前記比較例1〜2で生じた気泡土の気泡の自然消泡性を、実施例3と同様に調べた。結果を表2に示す。
【0032】
比較例5
前記比較例3で生じた気泡土の気泡の自然消泡性を、実施例3と同様に調べた。結果を表2に示す。なお、この比較例5では、261リング掘削直後の気泡土12m
3に消泡剤(京浜ソイル社製FT−01、主成分名=ジメチルポリシロキサン)を、起泡剤の1.0容量%(21リットル)の割合で添加し、消泡性を調べたものである。
【0033】
【表2】
【0034】
図1は、表2の各例の空気間隙率vaを掘削後の経過時間毎にプロットしたグラフである。
表2および
図1の結果から、以下の事項が導き出される。
(1)本発明の起泡剤を使用した実施例3の空気間隙率vaは、掘削後0.5時間経過した時点で20.8%であるが、3.5時間経過後は8.5%まで低下している(約12%の低下)。
(2)これに対し、比較例4の空気間隙率vaは、掘削後0.5時間経過した時点で24.6%であり、3.5時間経過しても21.2%までしか低下しない(約3%の低下)。
(3)比較例5の気泡土には消泡剤を添加しているが、空気間隙率vaは、掘削後0.5時間経過した時点で15.9%であり、3.5時間経過後は10.9%であり、本発明の起泡剤よりも自然消泡性に劣る結果となっている。
【0035】
実施例4
陰イオン界面活性剤濃度と海面埋立て
国民の地球環境への関心が高まる中、化学物質への監視・規制が厳しくなってきている。そのような中、都市部での大規模工事では掘削土を海面埋立てに利用する必要性が発生している。気泡シールド工法でも長距離・大断面トンネルから発生する掘削土を海面埋立てする事例があり、起泡剤のアルファオレフィンスルホン酸塩による水生生物への影響が懸念され、掘削土の陰イオン界面活性剤濃度が受入基準値を満足するまで、掘削土を仮置きして微生物による生分解によって陰イオン界面活性剤濃度を低下させる対策が講じられている。
【0036】
陰イオン界面活性剤濃度の受入基準値
一例として次のような陰イオン界面活性剤濃度の受入基準値がある。
気泡シールド工法の起泡剤は従来の特殊起泡剤(成分:アルファオレフィンスルホン酸塩)を用いたものである。
受入基準値=(特殊起泡剤の急性毒基準値LC
50)×(気泡混合率)×(特殊起泡剤原液濃度)×(安全率)
・特殊起泡剤の96時間半数致死濃度LC
50:6,600ppm
・気泡混合率 :35%
・特殊起泡剤原液濃度 :3%
・安全率 :0.01
上式から受入基準値は、0.693mg/リットルとなる。
【0037】
起泡材の調整
アルファオレフィンスルホン酸塩として、実施例1で使用したライオン(株)製の商品名「リポランLB−440」を用い、ポリエチレングリコールとして、日油(株)製の商品名「PEG#300」を用いた。
前記アルファオレフィンスルホン酸塩を水に溶解し、水溶液を調製した。水溶液中のアルファオレフィンスルホン酸塩の濃度は、0.147
w/v%であった。この水溶液に、前記ポリエチレングルコールを、前記水溶液に対し、1.5倍容量添加し、起泡材を調製した。この起泡材を発泡倍率8倍で発泡させ、気泡が模擬土の35容量%となるように混合し供試体とした。
【0038】
陰イオン界面活性剤濃度試験
供試体の陰イオン界面活性剤濃度試験は、メチレンブルー吸光光度法(JIS K0102 30.1.1)により行った。
この測定法は、陰イオン界面活性剤が陽イオン性の色素とイオン会合体を生成してクロロホルムなどの有機溶媒に抽出される性質を利用して、陽イオン性色素であるメチレンブルーを用い、クロロホルムで抽出定量するものである。
【0039】
試験内容
海水10リットルに対して、供試体10リットルを投下させ、所定時間毎に溶出した上澄み液を250ml採取して、溶出時間毎の陰イオン界面活性剤濃度を測定した。なお、海水に投下させる前の供試体としては、下記表3に示すような各種時間で仮置きを行った各種供試体を用いた。
【0040】
試験結果を表3に示す。
仮置き時間0日、溶出時間0日の陰イオン界面活性剤濃度は0.48mg/リットルである。これは前記の受入基準値以下であり、掘削土の仮置き無しで海面埋立てが可能であることが分かった。
【0041】
【表3】