(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、
図1はその全体構成を示す機能ブロック図である。送信用振動子10は生体内へ送信波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は生体内からの反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。本実施形態において利用される連続波は、デジタル変調された連続波であり、FSK変調器20によって形成される。
【0021】
FSK変調器20は、パターン発生器24から供給される周期的な信号列に基づいた周波数シフトキーイング(FSK)により、RF波発振器22から供給されるRF波に対してデジタル変調処理を施して連続波を発生する。周波数シフトキーイング(FSK)により形成される連続波の波形については後に説明する。FSK変調器20は、デジタル変調された連続波を電力増幅器14に出力する。
【0022】
電力増幅器14は、デジタル変調された連続波を電力増幅して送信用振動子10に供給する。そして、デジタル変調された連続波に対応する送信波が送信用振動子10から送波され、生体内からの反射波が連続的に受信用振動子12によって受波される。
【0023】
前置増幅器16は、受信用振動子12から供給される受波信号に対して低雑音増幅等の受信処理を施し、受信RF信号を形成して受信ミキサ30へ出力する。受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0024】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、デジタル変調された連続波(送信信号)に基づいて生成される。つまり、FSK変調器20から出力される連続波が遅延回路26Iと遅延回路26Qにおいて遅延処理され、遅延回路26Iにおいて遅延処理された連続波がミキサ32に供給され、遅延回路26Qにおいて遅延処理された連続波がミキサ34に供給される。
【0025】
遅延回路26Iと遅延回路26Qは、目標位置の深さに応じた遅延量だけ連続波に遅延処理を施し、遅延された参照信号を出力する。遅延回路26Iと遅延回路26Qは、各々、例えばn段のシフトレジスタによって形成することができる。この場合、シフトレジスタのn段のタップから目標位置の深さに応じた遅延量のタップが選択され、選択されたタップから目標位置の深さに応じた参照信号(遅延処理された連続波)が出力される。
【0026】
なお、遅延回路26Iと遅延回路26Qは、互いに連続波の位相をπ/2だけずらして遅延処理を行う。その結果、ミキサ32から同相信号成分(I信号成分)が出力され、ミキサ34から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられるLPF(ローパスフィルタ)36,38によって、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされて検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0027】
後の原理説明で詳述するが、各ミキサで実行される受信RF信号と参照信号との混合処理の結果である受信ミキサ出力信号(復調信号)には、目標位置からの受信信号成分が多く含まれている。LPF36,38において、その目標位置からの受信信号成分に含まれている直流信号成分(移動体が存在すればドプラ信号成分が含まれる)が抽出される。
【0028】
FFT回路(高速フーリエ変換回路)40,42は、復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT回路40,42において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT回路40,42から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0029】
ドプラ情報解析部44は、周波数スペクトラムに変換された復調信号から、その極性を含んだドプラ情報を抽出する。その際、予め遅延回路26I,26Qによって、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係が調整されているため、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。遅延関係の調整と目標位置からのドプラ情報の抽出との関連については、後の原理説明において詳述する。ドプラ情報解析部44は、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ情報を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力する。なお、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0030】
表示処理部46は、生体組織の深さ(位置)ごとの速度に基づいて、例えばドプラ波形や、深さ速度の情報を含むグラフなどを形成し、形成したドプラ波形やグラフなどを表示部48にリアルタイムで表示させる。なお、
図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部50によって制御される。つまり、システム制御部50は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0031】
以上、概説したように、本実施形態では、デジタル変調処理された連続波に対応した超音波を送受波して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からの生体内情報としてドプラ情報を選択的に抽出する。そこで、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。
【0032】
図2は、周波数シフトキーイング(FSK)により形成される連続波の送信信号を説明するための図である。
図2(I)には、パターン発生器(
図1の符号24)から出力される周期的な信号列の一例が示されている。パターン発生器は、例えば
図2(I)に示すような、ランダムに値を変化させた2値符号(擬似ランダム信号)を発生する。周期的な信号列である擬似ランダム信号の符号系列としては、PN(Pseudo Noise)系列、M系列、Gorey系列など、パルス圧縮などで実用化されている符号系列を用いればよい。
【0033】
図2(II)には、FSK変調器(
図1の符号20)において形成される変調された連続波(送信信号)が示されている。FSK変調器は、
図2(I)の2値符号に基づいた周波数シフトキーイングにより、RF波(搬送波)に対してデジタル変調処理を施して連続波の送信信号を形成する。FSK変調器は、例えば、2値符号が「1」のビット期間において周波数f
1とし、2値符号が「0」のビット期間において周波数f
2とすることにより、
図2(II)の送信信号を形成する。
【0034】
こうして、例えば
図2(II)の送信信号に対応した連続波の超音波が送信用振動子(
図1の符号10)から出力され、受信用振動子(
図1の符号12)を介して生体内から受信信号が得られる。
【0035】
図3は、FSK変調器から出力される連続波の位相の変化を説明するための図である。なお、
図3では、搬送波の位相は常に一定として0(ゼロ)で表現し、周波数f
1あるいは周波数f
2に対応して位相回転した量を表現している。周波数シフトキーイング(FSK)によりデジタル変調処理された信号を復調処理する際には、その信号の周波数を弁別すればよい。例えば、
図2(II)の連続波であれば、周波数f
1と周波数f
2を弁別することにより、
図2(II)の信号から
図2(I)の2値符号を復調することができる。単に周波数を弁別するだけであれば、符号に対応した各周波数の位相は特に決めなくてもよい。例えば、符号の切り替わりの時点で位相が不連続に変化しても、単に周波数を弁別するだけであれば問題はない。しかし、符号変化時に位相が不連続となると、その分だけ周波数帯域が広がってしまう。そこで、符号変化時に位相が連続的に変化するように各周波数と1ビットの時間長Tを決めておけば、より狭い帯域でFSK変調および復調を行うことが可能となる。
【0036】
図3は、その条件を満足したときの連続波の位相変化を描いたものである。
図3に示す連続波の位相変化は、2値符号の符号変化時に位相が連続的に変化し、2値符号が「1」のビット期間(周波数f
1の期間)において連続波の位相が+φだけ変化し(φだけ進み)、2値符号が「0」のビット期間(周波数f
2の期間)において連続波の位相が−φだけ変化する(φだけ遅れる)場合の連続波の位相変化である。
【0037】
図3に示す例の連続波では、符号がどのように変化しようとも、連続波の位相が連続的に変化し、必ず
図3のグラフ内の破線の増加直線または破線の減少直線上を移動するという特徴がある。さらに、符号に対応した周波数の間隔をある程度小さく設定しておけば、狭帯域のFSK連続波を得ることができる。周波数間隔が狭くなると1ビットで回転する位相も小さくなる。この位相回転量がπ/2となるように周波数間隔を設定すると、つまり1ビットの期間T内において位相を+π/2または−π/2だけ変化させた連続波とすることにより、狭帯域でありながら、符号誤り率を小さく保った状態でデジタル信号の送受信をすることができる。このときのFSK方式は特別にMSK(Minimum Shift Keying)方式と呼ばれる。
【0038】
図4は、FSK変調器から出力される連続波の周波数スペクトラムを説明するための図である。
図4には、横軸を周波数として縦軸に各周波数成分の電力を示したグラフが示されており、グラフ内には、周波数シフトキーイングにより周波数f
0の搬送波(RF波)から周波数をf
1,f
2だけ変化させたFSK信号(FSKの連続波)の周波数スペクトラムが変調度により変化する様子が示されている。なお、FSKの変調度mは次式のように定義される。
【0039】
【数1】
【0040】
上式で表現される変調度mは、周波数差(f
1とf
2の差)とビットレートf
b(bit/s.)との比であり、アナログFM変調の変調度βと類似の意味を持っている。変調度mを大きくするということは、周波数差を大きく設定することに相当し、その結果、周波数スペクトラムは広がってゆく。したがって、例えば超音波プローブなどの周波数帯域を考慮しながら変調度mを設定することが望ましい。
【0041】
本実施形態では、FSK変調器(
図1の符号20)において形成された送信信号に対して遅延処理を施して参照信号を形成し、受信ミキサ(
図1の符号30)においてその参照信号を用いて受信信号に対してミキサ処理(参照信号と受信信号の乗算)が行われる。このミキサ処理において、遅延処理された参照信号の位相に対応する深さ(目標位置の深さ)からの受信信号と参照信号との間の相関が強められて最大となり、その他の深さからの受信信号と参照信号との間の相関が極端に小さくなる。つまり、本実施形態の超音波診断装置は、位置選択性の機能を備えている。
【0042】
図5から
図7は、本実施形態における位置選択性を説明するための図であり、
図5から
図7の各図には、目標位置からの受信信号(受信波)と参照信号(参照波)の各位相の時間変化の様子と、目標位置からの受信信号と参照信号との間の位相差の時間変化の様子が図示されている。
図5から
図7の各図において、位相φは、擬似ランダム信号の1ビットの期間Tにおける連続波の位相の変化である。そして、各図において位相差の時間変化については、φ=π/2の場合における変化も図示されている。
【0043】
乗算器(
図1の受信ミキサ30)は、受信信号と参照信号の両者の位相差に応じた結果(例えば電圧)を出力する。例えば、両者の位相差がπ/2,3π/2,−π/2,−3π/2の場合に乗算器の出力値が「0(ゼロ)」であり、両者の位相差が0(ゼロ),2πの場合に乗算器の出力値が「+1」であり、両者の位相差がπ,−πの場合に乗算器の出力値が「−1」となる。
【0044】
なお、
図5から
図7の例においては、7ビットの周期で変化する擬似ランダムパターンを用いているが、装置を具現化する際には、例えば100〜200ビット程度の周期で変化する擬似ランダムパターンを用いることが望ましい。
【0045】
図5は、参照信号の位相が目標位置からの受信信号と一致している場合の様子を示している。参照信号の位相が目標位置からの受信信号の位相と一致している場合には、両者の位相差は常に0(ゼロ)となる。両者の位相差が0の場合の乗算器(
図1の受信ミキサ30)の出力を「+1」とすると、両者の位相が一致している場合に7ビットの期間内において得られる乗算器出力の合計値は「+7」となる。
【0046】
これに対し、
図6,
図7は、参照信号の位相が目標位置からの受信信号と一致していない場合の様子を示している。
【0047】
図6は、目標位置からの受信信号(実線)に対して、参照信号(破線)の位相がTだけ遅れている場合の様子を示している。この場合の両者の位相差は、
図6の下段に示すとおりであり、φ=π/2の場合において、乗算器(
図1の受信ミキサ30)の出力が常に「0(ゼロ)」となり、7ビットの期間内において得られる乗算器出力の合計値も「0(ゼロ)」となる。
【0048】
また、
図7は、目標位置からの受信信号(実線)に対して、参照信号(破線)の位相が2Tだけ遅れている場合の様子を示している。この場合の両者の位相差は、
図7の下段に示すとおりであり、φ=π/2の場合において、乗算器(
図1の受信ミキサ30)の出力は「+1」と「−1」をランダムに繰り返し、7ビットの期間内において得られる乗算器出力の合計値が「+1」となる。
【0049】
このように、参照信号の位相が目標位置からの受信信号の位相と一致している場合には乗算器出力の合計値が「+7」と極端に大きくなり、両者の位相が一致していない場合には乗算器出力の合計値が「0」や「+1」と極端に小さくなる。
【0050】
図8は、参照波の位相と乗算器出力との関係を示す図である。
図8に示すグラフは、
図5から
図7の例に対応しており、
図8に示すグラフの縦軸は、7ビットの期間内において得られる乗算器出力の合計値である。また、
図8に示すグラフの横軸は、受信信号に対する参照波(参照信号)の位相、つまり、受信信号と参照信号の位相差を示している。なお、
図8の横軸は、φ=π/2を基準とした場合の(φ=π/2を「1」とした場合の)位相の相対的な大きさを示している。
【0051】
参照信号と受信信号の位相差が0(ゼロ)の場合には、
図5を利用して説明したように、乗算器出力の合計値は「+7」となる。したがって、
図8において、参照波の位相が0の場合における乗算器出力値が「+7」となっている。また、
図6,
図7を利用して説明したように、位相差がφの場合における乗算器出力値は「0」となり、位相差が2φの場合における乗算器出力値は「+1」となる。したがって、
図8において、参照波の位相が1の場合における乗算器出力値は「0」となり、参照波の位相が2の場合における乗算器出力値は「+1」となっている。
【0052】
図8には、参照波の位相を3,4,5,6,7,・・・とさらに変化させた場合の乗算器出力値も示している。乗算器出力値(7ビットの期間内の合計値)は、位相差が存在する場合に比べて、位相差が0(ゼロ)の場合に極端に大きな値「+7」を示していることがわかる。また、参照波の位相が相対値で7だけずれると、7ビットの周期の擬似ランダム信号が1周期分だけずれるため、乗算器出力値は、位相差が0の場合と同じく極端に大きな値「+7」を示す。
【0053】
以上のことから、本実施形態においては、目標までの遅延時間に対応するように参照信号の位相を調整することにより、その目標の深さのみの反射波電力とドプラ情報を選択的に検出することができる。また、その選択性は、擬似ランダムパターンの長さが長くなるほどシャープになる。そして、その選択性は、パターン長を大きくするほど、パルス波ドプラ(PWドプラ)のレンジゲートと同様の特性に近づいてくる。つまり、連続波の長所を維持しつつ、パルス波のメリットを得ることも可能になる。
【0054】
図9は、本実施形態における復調信号を説明するための図であり、
図9には、ミキサ処理により得られる復調信号の周波数スペクトラムが示されている。
図9の復調信号は、相関が最大の場合における参照信号と受信信号の乗算結果に相当する。つまり、目標位置からの受信信号と、目標位置の深さに位相を合わせた参照信号との間の乗算結果が、
図9の復調信号となる。
【0055】
図9に示す復調信号には、直流信号成分と、RF信号の周波数f
0の2倍の高調波成分が含まれている。なお、
図2(II)に示したように、FSKによりデジタル変調された連続波の周波数は、例えば周波数f
1と周波数f
2をランダムに繰り返す。周波数f
1と周波数f
2の差が小さく、二つの周波数に対応したスペクトラムが周波数f
0のスペクトラムとして重なって検出できる程度の場合には、
図9のような周波数スペクトラムとなる。
【0056】
ドプラ信号は、直流信号成分と周波数f
0の2倍の高調波成分に付着した形で出現する。なお、LPF(
図1の符号36,38)において、高調波成分がカットされて直流信号成分のみが抽出されるため、FFT回路(
図1の符号40,42)においては、
図9に示す直流信号成分と周波数f
0の2倍の高調波成分のうち、直流信号成分の周波数スペクトラムのみが形成される。そして、ドプラ情報解析部(
図1の符号44)において、
図9に示す直流信号成分の周波数スペクトラムからドプラ信号が抽出され、ドプラシフト量などに基づいて、目標位置に存在する血流の流速などが算出される。受信ミキサ(
図1の符号30)において、直交検波を施しているため、流速の極性を判断することもできる。直流信号成分の周波数スペクトラムからクラッタ信号を抽出して、目標位置に存在する血管壁の位置などを算出してもよい。
【0057】
なお、超音波が生体内を伝搬する際の減衰特性は、周波数依存性減衰(FDA)と呼ばれ、生体内の軟部組織では、ほぼ周波数と伝搬距離に比例することが知られている。FDAは、復調信号の周波数スペクトラムの形に影響を与える。つまり、体表付近から得られ復調信号の周波数スペクトラムに比べて、深い位置から得られる復調信号の周波数スペクトラムほど減衰が大きい。そこで、FFT回路(
図1の符号40,42)から出力される周波数スペクトラムに対して、生体内における周波数依存性減衰の補償処理を施すようにしてもよい。例えば、深い位置から得られる信号ほど大きく増幅し、位置(深さ)に応じた減衰量の変化をキャンセルする。受信ミキサ(
図1の符号30)の出力に対して周波数依存性減衰の補償処理を施してもよい。
【0058】
図10は、パターン発生器(
図1の符号24)の具体例を示す図である。
図10の回路構成例では、水晶発振器(OSC)から出力される搬送波(RF信号)を矩形信号に変換してからn分周し、n分周後の信号(データ)をシフトレジスタに入力している。そして、シフトレジスタの途中から引き出したn
1〜n
3の出力とシフトレジスタの最終段からの出力とを利用して、排他論理和をとることにより、PNパターンを得ることができる。PNパターンの長さは、シフトレジスタがn段の場合は、2
n―1ビットとなる。例えば、n=10であれば1023ビットのPNパターンが容易に構成できる。この場合、受信信号と参照信号の位相がぴったり一致したときの乗算器出力は、1ビット分の1023倍となる。しかし、他の部分の出力はせいぜい数倍なので、選択能力を著しく向上させることができる。
図10の回路は、デジタル回路で構成できるので、容易にIC化できるという利点もある。
【0059】
パターン発生器から出力される周期的な信号列に基づいて、FSK変調器(
図1の符号20)において周波数シフトキーイング(FSK)された連続波が形成される。FSK変調器は、例えば、予め用意された周波数f
1と周波数f
2の搬送波を利用し、パターン発生器から出力される周期的な信号列、例えば
図10の回路によって得られるPNパターンに応じて、周波数f
1と周波数f
2の搬送波を適宜選択し、選択した搬送波を時間軸上において互いに接続するようにして、FSKされた連続波を形成してもよい。
【0060】
図11は、遅延回路(
図1の符号26I,26Q)と受信ミキサ(
図1の符号30)の変形例を説明するための図である。
図11の回路では、n段のシフトレジスタによって参照信号が遅延処理され、シフトレジスタのn
1からn
nまでの各タップから、互いに遅延時間の異なる複数の遅延参照信号が同時に出力される。そして、n
1からn
nまでの各タップに対応したn個のミキサにおいて、受信信号と各遅延参照信号の乗算処理が行われ、複数の遅延参照信号に対応した複数の乗算結果が同時に(並列的に)出力される。生体内の深さ方向に並んだ複数の目標位置と、シフトレジスタのn
1からn
nまでの各タップとを対応付けておくことにより、複数の目標位置からのドプラ情報を同時に取得することができる。例えば、超音波ビーム上における全ての位置からの組織情報を同時に検出するようにしてもよい。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態といくつかの変形形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態等は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【0062】
例えば、上述した実施形態においては、連続波をデジタル変調する際に周波数シフトキーイング(FSK)を利用している。このFSKに換えて、デジタル変調方式として当業者において明らかな位相シフトキーイング(PSK)や振幅シフトキーイング(ASK)などを利用してもよい。なお、デジタル変調された連続波のデータをメモリなどに記憶しておき、このメモリから読み出されるデータに基づいて、当該連続波を生成してもよい。