特許第5654210号(P5654210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654210
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】塗膜保護用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20141218BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20141218BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   B32B27/40
   B32B27/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2009-112049(P2009-112049)
(22)【出願日】2009年5月1日
(65)【公開番号】特開2009-299035(P2009-299035A)
(43)【公開日】2009年12月24日
【審査請求日】2011年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2008-126712(P2008-126712)
(32)【優先日】2008年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107939
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 由美子
(72)【発明者】
【氏名】上杉 正紀
(72)【発明者】
【氏名】白井 光義
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀典
(72)【発明者】
【氏名】井本 栄一
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322359(JP,A)
【文献】 特開平10−287849(JP,A)
【文献】 特開2001−520127(JP,A)
【文献】 特開平11−123787(JP,A)
【文献】 特開2003−253222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材層と粘着剤層とからなる粘着シートであって、前記基材層は、ウレタンポリマー単独フィルム、または、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムを備えており、前記粘着シートの20℃における10%モジュラス強度が35N/cm以下であり、前記粘着シートの20℃における100%モジュラス強度が8N/cm以上であり、かつ、前記粘着シートの5℃における10%モジュラス強度が80N/cm以下であることを特徴とする塗膜保護用粘着シート。
【請求項2】
前記塗膜保護用粘着シートの破断強度が40N/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項3】
前記基材層が、フッ素またはウレタンを含有する表面コート層を、粘着剤層が設けられている面とは反対側の面に有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項4】
基材層と、粘着剤層と、アプリケーションシートとからなる粘着シートであって、前記基材層は、ウレタンポリマー単独フィルム、または、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムを備えており、前記粘着シートの20℃における10%モジュラス強度が35N/cm以下であり、かつ、前記粘着シートの5℃における10%モジュラス強度が80N/cm以下であることを特徴とする塗膜保護用粘着シート。
【請求項5】
前記アプリケーションシートと前記基材層との間の接着強度が、6N/25mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項6】
前記基材層が、フッ素またはウレタンを含有する表面コート層を、粘着剤層が設けられている面とは反対側の面に有することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムを備えた基材を有する塗膜保護用粘着シートに関し、特に、良好な柔軟性を有する塗膜保護用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーの複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムとして、例えば、特開2003−96140号公報、特開2003−171411号公報、特開2004−10662号公報等に開示されている。この複合フィルムは、フィルムとして高強度、高破断伸び等の強靭な物性を有しているが、例えば自動車塗膜等の塗装面保護用粘着シートの基材として用いようとすると、フィルムとしての柔軟性(特に、塩化ビニルゾル塗装部分の凹凸面や曲面に対する柔軟性)が十分でないという問題があった。
【0003】
特表2001−520127号公報には自動車等の塗装面保護フィルムとして、相互侵入高分子網目層(IPN層)、および、少なくとも1層のフルオロ含有ポリマー層を含む多層フィルムが開示されている。この多層フィルムのIPN層にはウレタンポリマーとアクリルポリマーのIPN複合体が用いられており、アクリルモノマーとアクリル架橋剤、および、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン架橋物先駆体の混合液を、基材上に塗布し、熱によりアクリルモノマーおよびウレタン先駆体であるポリオール/ポリイソシアネートを不干渉様式で、それぞれ重合、架橋させて得られる。
【0004】
この方法によれば、用いられる単量体の種類や組み合わせ、配合比等による制限(制約)が生じ難いという利点はあるが、ウレタン重合はアクリルのような連鎖反応に比べて遅い重付加反応であることから、生産性の面で課題があった。
【0005】
この生産性の課題の解決のために、IPN層を特開2003−96140号公報に開示されているような逐次合成と光重合を利用して得ようとすると、架橋ウレタンポリマーがアクリルモノマーおよび架橋剤の存在下で膨潤した状態となるため、シロップの粘度が著しく上昇してコーティングやキャスティングによる基材への塗布は極めて困難になるという問題が生じた。
【0006】
すなわち、フィルムとしての柔軟性、特に、塩化ビニルゾル塗装部分の凹凸面や曲面に対する柔軟性を有する塗膜保護用粘着シートは未だ存在せず、切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−96140号公報
【特許文献2】特開2003−171411号公報
【特許文献3】特開2004−10661号公報
【特許文献4】特表2001−520127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は良好な柔軟性を有する塗膜保護用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、ウレタンポリマーを少なくとも含む複合フィルムを備えた基材層と粘着剤層とからなる粘着シートであって、20℃における10%モジュラスが35N/cm以下であり、かつ、20℃における100%モジュラスが8N/cm以上であることを特徴とする。
この複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムであることが好ましい。
【0010】
ここで、前記塗膜保護用粘着シートは、破断強度が40N/cm以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記塗膜保護用粘着シートの5℃における10%モジュラスは80N/cm以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記基材層は、フッ素またはウレタンを含有する表面コート層を、粘着剤層が設けられている面とは反対側の面に有することが好ましい。
【0013】
本発明の別の態様の塗膜保護用粘着シートは、ウレタンポリマーを少なくとも含む複合フィルムを備えた基材層と、粘着剤層と、アプリケーションシートとからなる粘着シートであって、20℃における10%モジュラスが35N/cm以下であることを特徴とする。
この複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムであることが好ましい。
【0014】
ここで、前記粘着シートは、5℃における10%モジュラスが80N/cm以下であることが好ましい。
【0015】
また、前記アプリケーションシートと前記基材層との間の接着強度は、6N/25mm以下であることが好ましい。
【0016】
ここで、前記基材層は、フッ素またはウレタンを含有する表面コート層を、粘着剤層が設けられている面とは反対側の面に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた柔軟性を有する塗膜保護用粘着シートを実現することができる。この塗膜保護用粘着シートは、特に、曲面に対する柔軟性や塩化ビニルゾル塗装部分の凹凸面に対する柔軟性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の塗膜保護用粘着シートは、基材層および粘着剤層を有し、この基材層は複合フィルムを含む。
【0019】
本発明の複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムであって、ウレタンポリマー単独フィルムまたは他のポリマーを更に含有するフィルムである。本発明において複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーを含有することが好ましい。この場合、複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、(メタ)アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系ポリマーの含有比率が1/99未満では、前駆体混合物の粘度が高くなり、作業性が悪化する場合があり、80/20を超えると、フィルムとしての柔軟性や強度が得られない場合がある。
【0020】
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマー、および、単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることが好ましく、特に、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを用いることが好ましい。さらに、本発明においては、(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0021】
本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。本発明においては、複合フィルム前駆体が(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体である場合には、上記(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、複合フィルム前駆体中、1重量%以上、15重量%以下であり、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が15重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。複合フィルムが(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む場合、本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。また、本発明において(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系モノマーのように、「(メタ)アクリル」と表示する場合には、メタアクリル、アクリルを総称する概念とする。また、「アクリル」と表示した場合でも、一般常識上問題がなければ、メタアクリルも含む概念とする。
【0022】
本発明において、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
【0023】
本発明においては、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、および、ジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、あるいは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートを用いることが更に好ましく、特にイソボルニルアクリレートを用いることが好ましい。
【0024】
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0025】
本発明において、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルオロフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチルを用いることが特に好ましい。
【0026】
Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくても良い(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0027】
(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0028】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系モノマーとともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0029】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0030】
多官能モノマーはアクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下含まれることができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0031】
ウレタンポリマーは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0032】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0033】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0034】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0035】
本発明において、ウレタンポリマーは架橋構造を含まない。ウレタンポリマーの形成に使用されるジオールは、線状(リニア)のジオールであることが好ましい。但し、ウレタンポリマーに架橋構造を形成させないという条件を満たす限りにおいて、ジオールは側鎖状のジオールまたは分岐構造を含むジオールであっても良い。すなわち、本発明の複合フィルムを構成するウレタンポリマーは架橋構造を含まないものであり、したがって、IPN構造とは構造的に全く異なるものである。
【0036】
本発明においては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0037】
ジイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0038】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)基材等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0039】
本発明においては、ウレタンポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましい。
【0040】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、ジオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、
1.15以上、1.35以下であることがさらに好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、フィルム強度が低下しやすい。また、NCO/OH(当量比)が2.0以下であれば、伸びと柔軟性を十分確保することができる。
【0041】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0042】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとジオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に添加してもよい。
【0043】
本発明においては、塗工の粘度調整のため少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0044】
本発明における複合フィルムが(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーを含む複合フィルムである場合には、例えば、アクリル系モノマーを希釈剤として、このアクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物を基材(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射して硬化させ、その後、基材等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。あるいは、基材等を剥離除去せずに、基材等の上に複合フィルムが積層された形態で得ることもできる。
【0045】
具体的には、ジオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してジオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持体等に、あるいは、必要に応じて支持体等の剥離処理面に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることができる。この方法では、アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0046】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、支持体等上に塗布した混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0047】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0048】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0049】
また、紫外線等を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0050】
本発明において、少なくともウレタンポリマーを含む混合物(例えば、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを主成分とする混合物)には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
【0051】
本発明に係る基材層の厚みは、目的等に応じて、例えば被覆保護する対象物の種類や箇所等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、基材層の厚みは、1,000μm以下であることが好ましく、750μm以下であることが更に好ましく、特に、500μm以下であることが好ましい。基材層を構成する複合フィルムの厚みは、例えば、自動車のボディーを保護するために用いられるチッピング用途の場合には、50〜500μm程度であることが好ましく、更に好ましくは100〜300μm程度であることが好ましい。
【0052】
本発明の第一の態様の塗膜保護用粘着シートは、複合フィルムを含む基材層と粘着剤層とからなる。すなわち、上記基材層の片面または両面に粘着剤層を有する。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されず、アクリル系、ゴム系、シリコン系等、一般的なものを使用することができるが、低温での接着性や高温での保持性、コスト面等を考慮するとアクリル系の粘着剤が好ましい。粘着剤の形成方法も特に限定されるものではなく、基材に、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を基材に塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、基材と粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と基材層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【0053】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は20μm以上であることが好ましく、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。但し、上限値は通常100μm程度であることが好ましい。
【0054】
本発明の塗膜保護用粘着シートを構成する基材層は、柔軟性等の本発明の効果を損なわない範囲内で、複合フィルムの一方の面に表面コート層を設けることができる。表面コート層は、耐候性、柔軟性等の観点から、フッ素またはウレタンを含有するものであることが好ましい。例えば、表面コート層として、フルオロエチレンビニルエーテル層を設けることが好ましい。表面コート層を設けることにより、光沢性、耐摩耗性、防汚性、撥水性等の特性を付与することが可能となり、また、複合フィルム自体の劣化を抑制する効果もある。なお、基材層が表面コート層を有する場合には、複合フィルムの一方の面に表面コート層を有し、他方の面に粘着剤層を有する構成とすることが好ましい。
【0055】
コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは8〜30μmである。コート層の厚みが2μm未満では、ピンホールなど、コート層が形成されない欠陥部位が発生しやすく、またコート層の特性が充分に発揮できない場合がある。また50μmを超えると、コート層の物性が複合フィルムの物性を低下させてしまう場合がある。
【0056】
本発明において基材層は、柔軟性等の本発明の効果を損なわない範囲内で、複合フィルムの片面または両面に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等のような熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記コート層を設ける場合には、コート層を基材層の最外層の位置に配置することが好ましい。
【0057】
本発明の基材層および粘着剤層からなる塗膜保護用粘着シートは、20℃における10%モジュラスが35N/cm以下であることが必要であり、30N/cm以下であることが好ましく、25N/cm以下であることが更に好ましい。また、粘着シートの20℃における10%モジュラスは3N/cm以上であることが好ましく、更に好ましくは5N/cm以上である。粘着シートの20℃における10%モジュラスが35N/cmを超えると、塩化ビニルゾル塗装部分等の凹凸面や曲面部分への接着性が低下する。
【0058】
粘着シートの貼り付け作業を屋外等のように気温の低いところで行う場合には、低温でのモジュラスを考慮することが好ましい。例えば5℃の温度では、粘着剤層の凝集力の上昇により、目標とされるモジュラス値が異なる。本発明において、5℃における塗膜保護用粘着シートの10%モジュラスは80N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは70N/cm以下、特に好ましくは60N/cm以下である。ただし、粘着シートの5℃における10%モジュラスは3N/cm以上であることが好ましく、5N/cm以上であることが更に好ましい。5℃における塗膜保護用粘着シートの10%モジュラスが80N/cm以下であれば、低温時の作業性、凹凸面への接着性なども良好である。
【0059】
本発明の基材層および粘着剤層からなる塗膜保護用粘着シートは、20℃における100%モジュラスが8N/cm以上であることが必要であり、好ましくは10N/cm以上であり、更に好ましくは12N/cm以上である。また、粘着シートの20℃における100%モジュラスは250N/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは200N/cm以下である。上記塗膜保護用粘着シートは、100%モジュラスが8N/cm未満で容易に変形してしまうので、貼着作業時に位置ズレが発生したり、貼りかえ時に粘着シートが変形して使用不可能になる等の不都合が生じやすい。なお、後述するアプリケーションシートを有する態様の場合には、10%モジュラスが35N/cm以下であれば、100%モジュラスについては特に制限はない。
【0060】
本発明の基材および粘着剤層からなる塗膜保護用粘着シートは、破断強度が40N/cm以上であることが好ましく、更に好ましくは50N/cm以上であり、特に好ましくは60N/cm以上である。ただし、通常、破断強度は300N/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは250N/cm以下である。上記塗膜保護用粘着シートでは、破断強度が40N/cm未満であると粘着シートの切れ等の不具合が生じることがある。
【0061】
本発明の基材層および粘着剤層からなる塗膜保護用粘着シートは所定の接着強度を有することが好ましい。例えば、アクリル板との接着強度は3N/cm以上であることが必要であり、5N/cm以上であることが好ましく、6N/cm以上であることが更に好ましく、7N/cm以上であることが特に好ましい。ただし、通常は100N/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは70N/cm以下である。上記塗膜保護用粘着シートのアクリル板との接着強度が5N/cm以上あれば、低温環境下でも塩化ビニル塗装部分等の凹凸面や曲面部へも十分な接着性を発揮して貼着することができる。接着強度が強すぎると、位置ずれ、ゴミや気泡の混入時に貼り替えが困難になる。
【0062】
本発明の別の態様の塗膜保護用粘着シートは、上記基材層および上記粘着剤層の他に、アプリケーションシートを更に有している。アプリケーションシートは、塗膜保護用粘着シートの貼り付け作業を向上させるために、例えば貼付位置決め等のために有効に利用される。アプリケーションシートは粘着剤層が形成されている面とは反対側の面に積層される。なお、基材層が表面コート層を含む形態の場合には、表面コート層の上にアプリケーションシートが積層される。
【0063】
本発明に用いられるアプリケーションシートとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるフィルム等に、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等を塗布してなる粘着シート等が挙げられる。市販のアプリケーションシートを使用してもよいが、アプリケーションシートを含む態様の塗膜保護用粘着シートは、20℃における10%モジュラスが35N/cm以下となるように調整する必要がある。
【0064】
なお、5℃における塗膜保護用粘着シートの10%モジュラスは上述のアプリケーションシートを含まない塗膜保護用粘着シートの場合と同様であり、80N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは70N/cm以下、特に好ましくは60N/cm以下である。ただし、5℃における粘着シートの10%モジュラスは、3N/cm以上であることが好ましく、更に好ましくは5N/cm以上である。
【0065】
本発明の基材層、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる塗膜保護用粘着シートでは、アプリケーションシートと基材層との間の接着強度が6N/25mm以下であることが好ましく、更に好ましくは4.5N/25mm以下であり、特に好ましくは3N/25mm以下である。ただし、その接着強度は、0.1N/25mm以上であることが好ましく、更に好ましくは0.2N/25mm以上である。アプリケーションシートと基材層との間の接着強度が6N/25mmより大きいと、塗膜保護用粘着シートを被着体の所定位置に貼付した後、アプリケーションシートを剥離する際に粘着シートが被着体から浮く恐れがある。接着強度が0.1N/25mm未満では、貼り付け前に浮きが発生する恐れがある。また、この塗膜保護用粘着シートはアクリル板との接着強度が5N/cm以上であることが好ましく、更に好ましくは6N/cm以上であり、特に好ましくは7N/cm以上である。この接着強度が5N/cm未満の場合には、低温貼付時に塩化ビニル塗装部分の凹凸面や曲面部へ十分に接着できないことがあり、あるいは、アプリケーションシートを剥離する際に粘着シートが被着体から浮く恐れがある。
【0066】
本発明の基材層および粘着剤層からなる塗膜保護用粘着シートの製造方法について以下に述べる。例えば、まず、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)の剥離処理面に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上に透明のセパレータ等をのせて、その上から紫外線等を照射して複合フィルムを形成し、その後、セパレータを除去する。別途、剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の剥離処理面に粘着剤層用の塗布液を塗布して粘着剤層を形成する。その後、この粘着剤層を、複合フィルム面に重ねて、基材層と粘着剤層とからなる塗膜保護用粘着シートを得ることができる。なお、ここでは、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)/複合フィルム/粘着剤層/剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の層構成となっているが、この仮支持体1および仮支持体2は、使用時に、すなわち粘着シートが貼付適用される際に剥離除去されるものであるので、本発明の塗膜保護用粘着シートの構成には特に含めてはいない。ただし、これらの仮支持体1、仮支持体2等を、必要に応じて適宜設けることは可能であるし、これらの構成は本発明の技術的範囲に属するものである。
【0067】
本発明に係る基材層が表面コート層を含む場合には、上記製造方法の基材層の形成において、仮支持体1の上に、表面コート層用の塗布液を塗布して表面コート層を形成した後、その上に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上にセパレータ等をのせて、複合フィルムを形成すればよい。
【0068】
本発明の基材層、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる塗膜保護用粘着シートは、上記と同様にして、基材層および粘着剤層からなる粘着シートを作製した後、基材層に仮貼付されている仮支持体1を剥離除去して、この面にアプリケーションシートを積層して製造することができる。なお、基材層が複合フィルムのみからなる場合には複合フィルムの面上に、また、表面コート層を含む基材の場合には表面コート層の上にアプリケーションシートを重ねる。
【0069】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、高強度と高破断伸びを両立することができ、また、曲面に対する柔軟性に優れており、塩化ビニルゾル塗装部分の凹凸面に対する柔軟性にも優れている。さらにまた、良好な接着性も有する。したがって、自動車、航空機等の塗装面を保護するための保護用粘着シート等に好適であり、例えば、自動車の塗装面や建造物等の被着体に、この塗膜保護用粘着シートを貼り合わせて使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0071】
(測定方法および評価方法)
(1)モジュラスの測定と破断強度の測定
i)10%モジュラス
仮支持体付きのままの状態で、基材層および粘着剤層からなる粘着シート、あるいは、基材層、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(20℃)で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。粘着シートの10%伸張時における単位面積当たりの応力を20℃における10%モジュラス(RT−10%モジュラス)とした。なお、念のため言及しておくと、アプリケーションシートを含む粘着シートではアプリケーションシートを付けたままの状態で測定を行っている。
また、5℃における10%モジュラスは、上記のように切断した粘着シートを5℃の条件下で1時間放置した後、仮支持体を除去し、上記引張試験を温度5℃で行って応力−歪み曲線を求めた。粘着シートの10%伸張時における単位面積当たりの応力を5℃における10%モジュラス(5℃−10%モジュラス)とした。
【0072】
ii)100%モジュラス
仮支持体付きのままの状態で、基材層および粘着剤層からなる粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(20℃)で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。粘着シートの100%伸張時における単位面積当たりの応力を20℃における100%モジュラス(RT−100%モジュラス)とした。
【0073】
iii)破断強度
仮支持体付きのままの状態で、基材層および粘着剤層からなる粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(20℃)で引張試験を行い、粘着シートが破断したときの力を測定した。
【0074】
(2)接着強度
仮支持体付きのままの状態で、基材層および粘着剤層からなる粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去した。イソプロピルアルコールで洗浄したメタクリル板(三菱レイヨン(株)製のアクリライト)に、粘着シートの粘着剤層面を重ねて、2kgの圧力で1往復させて圧着した。これを1時間放置した後、300mm/minの引張速度で180°方向に引き剥がした際の応力を求めて接着強度とした。
【0075】
(3)塩化ビニルゾルへの接着性の評価
仮支持体付きのままの状態で、基材層および粘着剤層からなる粘着シート、あるいは、基材層、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去し、塩化ビニルゾルのパネル(表面粗さ=11.4μm)に、ハンドローラを用いて貼着した。その接着状態を目視で観察して下記評価基準に基づき評価を行った。但し、評価は室温(20℃)および5℃の2種類で行った。上記貼着作業を室温(20℃)で行った場合を20℃(RT)における塩化ビニルゾル接着性とし、切断後、5℃で1時間放置した後、5℃の条件下で貼着作業を行った場合を5℃における塩化ビニルゾル接着性とした。
評価基準:
A 粘着シートの浮きが確認できないもの
B 粘着シートの一部に浮きが確認されたもの
C 粘着シートの大半にわたって浮きが発生したもの
【0076】
(4)貼り付け易さの評価
上記「(3)塩化ビニルゾルへの接着性の評価」において、粘着シートが塩化ビニルゾルのパネルへ、きれいに直線で貼着できた場合には記号「○」で示し、曲がって貼り付いてしまった場合には記号「×」で示した。
【0077】
(5)アプリケーションシートの接着力の測定
仮支持体付きのままの状態で、基材層、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる粘着シートを、幅25mm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去し、イソプロピルアルコールで洗浄したメタクリル板(三菱レイヨン(株)製のアクリライト)に、粘着シートの粘着剤層面を重ねて、ハンドローラを用いて圧着した。これを常温(20℃)で1時間放置した後、300mm/minの引張速度で180°方向にアプリケーションシートを引き剥がし、この際の応力を求めてアプリケーションシート接着力とした。
【0078】
(6)アプリケーションシートの剥がし易さ
上記「(5)アプリケーションシートの接着力の測定」と同様にして、粘着シートをイソプロピルアルコールで洗浄したメタクリル板(三菱レイヨン(株)製のアクリライト)に圧着した。これを常温(20℃)で1分間保持した後、アプリケーションシートを手で剥がした。この際、アプリケーションシートを容易に剥離することができた場合には記号「○」、重たくて剥がし難かった場合には記号「×」で表示した。
【0079】
(実施例1)
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35.5部、アクリル酸n−ブチル(BA)を9.5部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0080】
その後、架橋剤として、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部、紫外線吸収剤として、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチルオキシラン]との反応生成物と、1−メトキシ−2−プロパノールとからなる紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤として、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0081】
《表面コート層用塗布液の作製》
フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる溶解液(旭硝子(株)製の「LF600」、固形分50重量%含有)の100部に、硬化剤として、10.15部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製の「コロネートHX」)と、触媒として、3.5部のジブチル錫ラウリン酸のキシレン希釈液(固形分濃度が0.01%)と、希釈溶媒として、101部のトルエンとを添加して、表面コート層用塗布液(固形分率28%)を作製した。
【0082】
《基材層の作製》
得られた表面コート層用塗布液を、仮支持体1として剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の上に塗布し、温度140℃で3分間乾燥および硬化させてフルオロエチレンビニルエーテル層を形成した。なお、乾燥後の表面コート層の厚みは10μmであった。
【0083】
得られた表面コート層の上に、作製した複合フィルム用塗布液を、硬化後の厚みが290μm(表面コート層の厚みも含めると300μm)と成るように塗布し、この上にセパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ねた。このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体1の上に複合フィルム(表面コート層を備えている)を形成した。その後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)を剥がした後、140℃で3分間乾燥させて、未反応の残存アクリル系モノマーを乾燥させ、基材層を得た。
【0084】
《粘着剤層の作製》
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート90部およびアクリル酸10部を混合した混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュア 651」(チバ・ジャパン社製)を0.05部と、商品名「イルガキュア 184」(チバ・ジャパン社製)を0.05部とを配合した後、粘度が約15Pa・s(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)になるまで紫外線を照射して、一部が重合したアクリル組成物(UVシロップ)を作製した。
【0085】
得られたUVシロップの100部に対して、ヘキサンジオールジアクリレートを0.08部、ヒンダードフェノール型酸化防止剤(チバ・ジャパン社製の商品名「イルガノックス1010」)を1部添加して粘着剤組成物を作製した。
【0086】
この粘着剤組成物を、仮支持体2として厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、最終製品としての厚みが50μmになるように塗布した。
この上に、セパレータとして剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆し、次いで、PETフィルム面にメタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体2の上に粘着剤層を形成した。その後、剥離処理したPETフィルムを剥がした後、140℃で3分間乾燥させて、未反応の残存アクリル系モノマーを乾燥させ、粘着剤層を作製した。
【0087】
《粘着シートの作製》
得られた基材層の表面コート層と反対の面に、粘着剤層が重なるように貼り合わせて粘着シート(仮支持体1/表面コート層/複合フィルム/粘着剤層/仮支持体2の層構成)を作製した。
【0088】
《測定および評価》
得られた粘着シートについて、上記に示す測定方法および評価方法に従い、モジュラス(20℃における10%モジュラス、20℃における100%モジュラス、20℃における破断強度、5℃における10%モジュラス)、接着強度、塩化ビニルゾルへの接着性、貼り付け易さの測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
(実施例2)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0090】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を8.8部、およびイソボルニルアクリレート(IBXA)を31.2部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を43.7部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の16.3部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを2重量部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0091】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.12部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0092】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0093】
(実施例3)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0094】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を6.5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を28.3部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を8.7部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を32.5部、および1,4−ブタンジオールを1.5部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の22.5部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを2.7部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0095】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.13部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。この複合フィルム用塗布液を使用して粘着シートを作製した。
【0096】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0097】
(実施例4)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0098】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を20部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0099】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.13部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0100】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0101】
(実施例5)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0102】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を7.5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を32.5部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を26.5部、および1,4−ブタンジオールを3.7部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の19.8部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを2.4部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0103】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0104】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0105】
(実施例6)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0106】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を6.3部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を27.5部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を8.4部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を26.7部、1,4−ブタンジオールを3.6部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の27.5部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを3.3部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0107】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.13部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0108】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0109】
(実施例7)
表面コート層として、フルオロエチレンビニルエーテル層の替わりに、ウレタン基材(エスマーURS−PXN、日本マタイ社製)(30μm)を使用し、基材層の厚みが300μmとなるように複合フィルムの厚みを変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0110】
(実施例8)
表面コート層を設けずに、剥離処理したPETフィルム上に複合フィルム用塗布液を塗布して、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0111】
(比較例1)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0112】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を6.3部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を27.1部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を8.4部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を25.9部、および1,4−ブタンジオールを3.5部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の28.8部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを4.5部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0113】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.12部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤として、デカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0114】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0115】
(比較例2)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0116】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を7.5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を19.8部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を17.7部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を37.1部、および1,4−ブタンジオールを1.7部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の16.2部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0117】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.14部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0118】
得られた粘着シートについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
表1から明らかなように、10%モジュラスが35N/cm以下、かつ、100%モジュラスが8N/cm以上である、基材および粘着剤層からなる実施例1〜8の粘着シートは、優れた柔軟性を有しており、曲面に対する柔軟性や塩化ビニルゾルの塗装部分の凹凸に対する柔軟性に優れており、貼り付け作業時に貼り付け易いものであることが分かった。なお、実施例1〜4、7〜8の粘着シートは、低温での塩化ビニルゾルへの接着性にも優れていることが分かった。また、優れた破断強度も有することが分かった。また、これらの粘着シートは接着強度が3N/cm以上であった。
【0121】
一方、10%モジュラスが35N/cm以上である、基材および粘着剤層からなる比較例1の粘着シートは、室温でも低温でもいずれの場合においても塩化ビニルゾルへの接着性に非常に劣っていることが分かった。また、100%モジュラスが8N/cm未満である比較例2の粘着シートは、破断強度が小さくて実用不可能なレベルのものであり、しかも20℃における貼り付け易さの評価では劣っているものであることが分かった。
【0122】
(実施例9)
実施例1にて得られた粘着シートの表面コート層の上に、アプリケーションシート(日東電工(株)製の「SPV−214」)を貼り合わせて粘着シートを作製した。
【0123】
すなわち、実施例1と同様にして作製した表面コート層用塗布液を、仮支持体1の上に塗布し、温度140℃で3分間乾燥および硬化させてフルオロエチレンビニルエーテル層を形成した。なお、乾燥後の表面コート層の厚みは10μmであった。得られた表面コート層の上に、実施例1と同様にして作製した複合フィルム用塗布液を、実施例1と同様にして塗布して複合フィルムを作製して基材層(表面コート層を備えている)を得た。また、この複合フィルムの上に実施例1と同様にして作製した粘着剤層を積層した。
次に、基材層に仮貼付されている仮支持体1を剥離除去し、表面コート層の面にアプリケーションシート(日東電工(株)製の「SPV−214」)を貼り合わせて、粘着シート(アプリケーションシート/表面コート層/複合フィルム/粘着剤層/仮支持体2の層構成)を作製した。
【0124】
《測定および評価》
得られた粘着シートについて、上記に示す測定方法および評価方法に従い、モジュラス(20℃における10%モジュラス、5℃における10%モジュラス)、塩化ビニルゾルへの接着性、貼り付け易さ、アプリケーションシートの接着力、アプリケーションシートの剥がし易さの測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0125】
(実施例10)
粘着シートを実施例2において作製した粘着シートに変更した以外は実施例9と同様にして、アプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0126】
(実施例11)
粘着シートを実施例3において作製した粘着シートに変更した以外は実施例9と同様にして、アプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0127】
(実施例12)
粘着シートを実施例4において作製した粘着シートに変更した以外は実施例9と同様にして、アプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0128】
(実施例13)
粘着シートを実施例5において作製した粘着シートに変更した以外は実施例9と同様にして、アプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0129】
(実施例14)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例13と同様にしてアプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
【0130】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を7.5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を19.8部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を17.7部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を37.1部、および1,4−ブタンジオールを1.7部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の16.2部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0131】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.14部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0132】
得られた粘着シートについて実施例13と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0133】
(実施例15)
実施例8と同様にして得られた粘着シートの非粘着剤層側に、アプリケーションシート(日東電工(株)製の「SPV−214」)を貼り合わせて粘着シートを作製した。
得られた粘着シートについて実施例13と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0134】
(比較例3)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例9と同様にしてアプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。
【0135】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を6.3部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を27.5部、およびアクリル酸n−ブチル(BA)を8.4部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を26.7部、および1,4−ブタンジオールを3.6部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の27.5部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを3.3部滴下した後、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0136】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.13部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。
【0137】
得られた粘着シートについて実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0138】
(比較例4)
アプリケーションシートの種類を「SPV−3620」(日東電工(株)製)に変更した以外は比較例3と同様にしてアプリケーションシートを有する粘着シートを作製した。得られた粘着シートについて、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
表2から明らかなように、20℃における10%モジュラスが35N/cm以下である、基材、粘着剤層およびアプリケーションシートからなる実施例9〜15の粘着シートは、アプリケーションシートの接着性が6N/25mm以下であり、位置決め作業等の終了後に容易に剥離除去することができた。また、20℃における塩化ビニルゾル接着性が良好であることが分かった。さらにまた、塩化ビニルゾルへの貼り付け易さおよびアプリケーションシートの剥がし易さの評価において優れた結果が得られることが分かった。
【0141】
一方、20℃における10%モジュラスが35N/25mmを超えている比較例3および比較例4の粘着シートは、室温および低温のいずれの場合でも塩化ビニルゾル接着性に劣っており、また、比較例4では、アプリケーションテープ接着力が6N/25mmを超えるものであり、アプリケーションテープの剥離が容易ではないことが分かった。
【0142】
本発明によれば、柔軟性に優れた塗膜保護用粘着シートを提供することができた。また、本発明によれば、曲面に対する柔軟性および塩化ビニルゾルの塗装による凹凸に対する柔軟性に優れた粘着シートを提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、曲面等への柔軟性が要求される粘着シートとして好適に使用することができる。例えば、屋外の天候、溶剤、ほこり、油脂および海洋環境などを含む有害環境にさらされる塗膜表面を保護するための粘着シートとして使用することができる。また、自動車の塗膜を保護するための粘着シートとしても好適である。