(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面(16A)、下面(16B)、上面と下面に対して平行な基準平面(RP);および少なくとも上面(16A)と一定数の逃げ面(13、15)の間に遷移部分の形で周辺境界線に沿って形成され、切粉除去用主刃(12)および(平面図に見られるように)この主刃と鈍角を成す表面拭取り用副刃(14)を個別に内含する一定数の切刃(11)を含むフライス加工用インサートにおいて、フライス加工用インサートを回転させることによって切刃(11)のそれぞれが交互に適用可能であり、個々の切刃(11)の主刃(12)が、連動する副刃(14)に隣接する第1の端部(20)から数えて、まず第1にフライス加工用インサートの下面(16B)に向かって下降し、次に最下部分から再び反対側の第2の端部(21)に向かって上昇しており、個々の副刃(14)が(その逃げ面に対して直角に見た場合)基準平面(RP)との関係において少なくとも1°でありかつ多くとも7°である角度(ε)で主刃(12)に連結された第1の端部(23)が反対側の第2の端部(24)よりも低いレベルに位置づけされるような形に傾斜させられているフライス加工用インサートであって、
主刃は第1の部分刃(121)と第2の部分刃(122)とを含み、第1の部分刃(121)は連動する副刃(14)に最も近いところに位置し、かつ第2の部分刃(122)よりも基準平面(RP)に対して傾斜させられており、第2の部分刃(122)は、第1の部分刃(121)と破断点(31)で隣接しており、該破断点(31)は隣接する副刃よりも連動する副刃(14)に近いところに位置づけされていることを特徴とするフライス加工用インサート。
隣接する切刃の隣り合う副刃(14)と個々の主刃(12)の第2の端部(21)の間で、複数の副刃の第2の端部(24)が共通して位置づけされている平面(P1)に対し平行でかつこの平面より高いレベルに位置づけされた共通平面(P2)に位置している、上部表面(30)を有する肩部(29)が内側に形成されている非切粉除去用刃ライン(28)によって、境界線が中断されていることを特徴とする請求項1に記載のフライス加工用インサート。
上部表面(30)が、主刃(12)の逃げ面(13)と隣接している外側刃ライン(28)から内向きに延びていることを特徴とする請求項4に記載のフライス加工用インサート。
【背景技術】
【0003】
なかでも金属(鋼、アルミニウム、チタンなど)の工作物の切粉除去用機械加工のためのフライス加工工具は、一般に、鋼製であることが最も多い回転可能な基本本体つまりフライス盤本体、ならびに超硬合金、セラミクスなどでできた複数の交換可能なフライス加工用インサートで構成されている。フライス加工用インサートは、かなり急速に磨耗することの結果として消耗材料であることから、可能なかぎり多くの切刃を伴ってこれを形成させることが望ましい場合が多い。このような理由から、片面のフライス加工用インサートと比べて切刃の数が2倍になる一方で上面と同じ数の切刃を伴う下面を形成させるような形で両面型フライス加工用インサートを実施することができる。したがって、正面フライス加工のためのフライス盤には、両面型でかつ4つの切刃すなわち4対の連動する主刃と副刃を上面ならびに下面に沿って伴う正方形基本形状をもち、しかもフライス盤本体内に約45°の有効取付け角度で組立てられるフライス加工用インサートが備わっていることが多い。このような場合には、主刃および副刃は、互いに135°の公称角度を形成する。このような場合には、主刃および副刃は互いに135°の公称角度を成す。
【0004】
本発明の基礎を成す問題は、「マイナス」と命名されたタイプでかつ上面および下面がそれに対し平面である中立面に直角に延びる逃げ面を伴って形成されている両面型正面フライス加工用インサートに関連している。一方では活動状態の表面拭取り用副刃の後ろに(回転する形で)存在する逃げ面と他方では工作物の生成された平坦な表面との間に必要な逃げを提供するために、フライス加工用インサートは、フライス盤本体の中にマイナスの軸方向チップイン角度(chipping-in angle)を伴って組立てられなくてはならない。同時に、フライス加工用インサートはまた、一方では切粉除去用主刃の後ろの逃げ面と、他方ではこれにより生成された全体として円錐形の表面との間に逃げを提供するために、マイナスの半径方向チップイン角度も有していなくてはならない。単にフライス加工用インサートのマイナスの軸方向チップインだけで、一方では、フライス加工用インサートがプラスにチップインされた場合に生じるような切削力よりも大きい軸方向切削力が発生し、他方では、切粉が生成される平坦な表面から離れてではなくむしろこれに向かって斜め下方に方向づけされる傾向をもつような形で、なかでも制御し難い切粉形成ならびに切粉排出に関する問題が発生することになる。
【0005】
本発明の背景をさらに記述する前に、この文書で見出される例えば「逃げ角」といったいくつかの基本的な概念は、公称性または有効性のいずれをも有し得ることを指摘しておくべきである。例えば、逃げ角が「公称逃げ角」である場合、これは単にフライス加工用インサートのみ、すなわちフライス盤本体を伴っていない状態に関係するが、それが「有効逃げ角」である場合には、フライス加工用インサートが回転可能なフライス盤本体内に組立てられ切粉除去を実施する場合に発生する逃げ角が言及されている。
【0006】
それぞれマイナスの軸方向および半径方向のチップインを原因とする問題は、角柱基本形状をもち、かつ切刃を含み、その主刃がまっすぐで共通の逃げ面に沿って対を成して平行であり同じく副刃もまっすぐでその共通逃げ面に沿って対を成して平行であるより旧型のフライス加工用インサートを有するフライス盤において、特に際立っている。この場合、主刃は特に大きい切削力を受け、多大な切粉形成および切粉排出の問題を生じさせることになるが、これは、機械加工すべき部品の生成された平坦な表面と表面拭取り用副刃の後ろの逃げ面との間の所望の有効逃げ角として同等に大きいマイナスの軸方向角度へフライス加工用インサートをチップインしなくてはならないからである。
【0007】
さらに最近になって、以上で言及した問題の一定数の解決法の提案が行なわれてきた。かくして特許文献1では、その切粉除去用主刃がフライス加工用インサートの中立平面との関係において、より厳密に言うと個々の主刃が、連動する副刃に隣接する第1の端部から数えてまず最初にフライス加工用インサートの下面に向かって下降し、次に最下点から再び反対側に向かって上昇するような形で傾斜させられている両面型正方形正面フライス加工用インサートが開示されている。このようにして、以上で言及された問題は一般的に解決され、かくして、固有の主刃の有効軸方向角度は、表面拭取り用副刃の後ろに必要な逃げを提供するのに充分なほど大きいマイナスの軸方向角度をフライス加工用インサート自体(すなわちフライス加工用インサートの中立表面)が有するにも関わらず、比較的大きいマイナスの値からより小さくよりプラスの値へと削減される。しかしながら、この公知のフライス加工用インサートにはそれでも、一定数の短所および不利点が付随している。このような不利点の1つは、フライス加工用インサートの各コーナーの共通の逃げ面に沿った2つの副刃がなおもまっすぐであり互いに平行であるという点にある。このことはすなわち、個々の副刃と付属の主刃との間の遷移が、かなり鋭くボブ様の(bob-like)コーナー(側面図中で公称として見られる通り)を形成し、かくして、副刃と下降する主刃の間の角度が180°よりも著しく小さくなる、ということを意味している。かくして、好ましい実施形態においては、この角度は165°〜170°となる。主刃と副刃の間のコーナー遷移部分は、フライス加工用インサートのなかでも力、熱および腐食に対して最大限露出されている部分であることは絶対的に明らかであることから、かなり顕著なボブを有することは、そのフライス加工用インサートが脆くなり、その磨耗に付随して寿命が制限さることを意味する。さらに、このような顕著なボブの磨耗は、仕上った拭き取られた表面上に可視的な縞、より厳密に言うと、その他の点では平面である表面上にそれ自体浅いもののそれでも最も不利である溝の形をした縞を容易に発生させる。換言すると、生成された表面の仕上げはむしろあまりよくないものとなる。もう1つの不利点は、(それぞれ)上面(および下面)をとり囲む周囲境界線が単一の連続する切刃ラインであるという点にある。かくして、個々の主刃の切刃ラインは隣接する非連動副刃へと直接形を変えるか、または代替的には、主刃の逃げ面と副刃の間のファセット表面に沿った小型部分刃を介して(副刃は上面の最上部分を形成する)形を変える。すなわち、上面に沿ったその他のいかなる点も、中立平面から副刃に比べて大きい距離のところに位置づけられていない。この事実は、生成された表面の仕上げにとって副刃がまさに極めて重大であり、したがって可能なかぎり長期間鋭利であるかまたはいずれの場合でも損傷がない状態になくてはならないことを考慮すると、破壊的である。公知のフライス加工用インサート内の副刃は、上面の残りの部分との関係において上に突き出ていることから、種々の損傷の危険性にさらされる。かくして、損傷は、フライス加工用インサートの取扱いの間、例えば、それが割出しおよび交換と関連して金属テーブルなどの上に設置される場合に、容易に発生し得る。各々の活動状態の主刃は隣接する非活動状態の副刃へと形を変えることから、さらに、除去された切粉がまだ使用されていない副刃に打撃を与え、これを損傷する危険性も存在する。その上、連動する副刃から主刃の最下点に向かって延びる主刃の下降するまたは下向きに傾く部分は、主刃の長さの半分よりも著しく長くなる。このことはすなわちフライス加工用インサート内の材料が主刃の最下点またはくぼみの部域内で著しく薄くなり、かくしてフライス加工用インサートの強度が損なわれるということを意味している。この不利益は、フライス加工用インサートが大きな逃げを必要とする場合に特に顕著なものとなる。
【0008】
上述のフライス加工用インサートに類似し、基本的にこれと同じ不利点によって質が低下している正面フライス加工用インサートが、特許文献2によって以前から知られている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜3においては、基本本体またはフライス盤本体1と一定数の交換可能なフライス加工用インサート2(そのうちの1つのみがフライス盤本体内に組立てた状態で示されている)の形でフライス加工工具が例示されている。フライス盤本体1は、C1と呼称されている中心軸のまわりを回転方向Rで回転可能であり、前方または下方端部で、フライス加工用インサート2の各々のための一定数の切粉ポケット3を内含する。この例において、切粉ポケットの数は5となる。切粉ポケット3は、回転対称の外皮表面4の中に埋め込まれており、平らな底部表面5により表わされている座面またはインサートシートを含む。底部表面5に対して直接個々のフライス加工用インサートを適用することが充分可能であるが、この場合、シムプレート6が底部表面5とフライス加工用インサート2の間に配置される。このシムプレートは、管状ネジ7により底部表面5に対して半永久的に固定された状態に保たれ、その雌ネジ山8の中に適切なフライス加工用インサート2の固定のためにネジ10の雄ネジ山9を締着することができる。
【0014】
図4〜6を見ればわかるように、フライス加工用インサート2は正方形の基本形状を有し、4つの切刃11を内含し、その各々が逃げ面13に隣接する切粉除去用主刃12ならびに第2の逃げ面15に隣接する表面拭取り用副刃14(時として「ワイパー刃」と命名される)を含んでいる。フライス加工用インサートは両面であることから、フライス盤本体1内の特殊なチップイン位置に組立てなくてはならない。かくして、
図2では、フライス盤本体内のフライス加工用インサート2の立体幾何学的位置を究極的に決定する底部表面5が、どのようにして中心軸C1に対して平行には走行せずに回転方向Rで見られるように中心軸C1との関係において下向き/後向きにチッピングされるかがわかる。このようにして、副刃14の下に存在するかまたは回転方向でその後ろに存在する逃げ面15と副刃14により生成され平らにされた平坦な表面との間に、有効逃げが提供される。類似の要領で主刃11の逃げ面13と主刃により生成される円錐形の表面との間に逃げを提供するために、底部表面5は、半径方向にマイナスのチップイン角度で後向き/外向きにさらにチッピングされる(
図3参照)。表面15の逃げが充分に機能するためには、軸方向チップイン角度は少なくとも4°となるべきであるが、さらに大きくてもよい。この例では、軸方向チップイン角度は6°となり、これは約6°という有効逃げ角αを生み出す(
図2参照)。有効な逃げ角αは同様に、半径方向チップイン角度によっても影響されるが、これはわずかである。半径方向チップイン角度は8°以上となってよい。軸方向と半径方向のチップイン角度が合わさって主刃の後ろの有効逃げ角βを決定する(
図3参照)。適切には、βは8°〜20°の範囲内に入るべきである。
【0015】
フライス盤本体1は有利には鋼またはアルミニウムで作られ、一方交換可能なフライス加工用インサート2は超硬合金、セラミクスまたはほかの硬質かつ耐摩耗性の材料で作られている。
【0016】
ここで、フライス加工用インサート2のみ、つまりフライス盤本体1を伴っていないフライス加工用インサートを詳細に示す
図4〜13を参照する。フライス加工用インサートは上面16Aそして、上面16Aの設計と対応したトポグラフィまたは切削幾何学的設計を有する下面16Bを内含する。一般に、上面および下面は、この場合その中間位置にありしたがって同じくフライス加工用インサートの中立平面を形成している基準平面RP(
図8参照)に対して平行である。基準平面RPはフライス加工用インサートの中心軸C2に対して垂直に延びており、この中心軸は、この場合、フライス加工用インサートがネジ10用貫通穴17と共に形成されているとき同じ穴の中心軸も同様に形成する。先に指摘した通り、フライス加工用インサートは正方形基本形状を有し、各々主刃12と表面拭取り用副刃14を含む4つの切刃11を内含している。
図4では、参照番号11、12、13、14および15には、不活動状態の切刃と活動状態の切刃を分けるためa、b、cおよびdという添え字が備わっている。
図5中の対応する参照番号にはこのような添え字は欠如している。かくして、
図4においては、切刃11aは活動状態にあるものとして意図され、主刃12aおよび副刃14aはフライス加工作業中互いに連動し、一方11b、11c、11dと呼称されている他の3つの切刃は非活動状態にある。
図4では、活動状態にある主刃12aは、活動状態の副刃14aが非活動状態の主刃12aに隣接するのと同時に非活動状態の副刃14bと隣接している状態で示されている。同様にこの場合、逃げ面13、15が平面であるということも指摘しておくべきである。
【0017】
上面16Aならびに下面16Bの中には、平らな表面18が内含され、これはシムプレート6に対するフライス加工用インサートの接触または基本表面を形成する。接触表面18の周囲方向外側では、切粉表面19(
図4および5を参照)が形成され、これらは、逃げ面13、15の上部部分と合わさって、異なる切刃を画定している。活動状態の切刃11aに隣接する逃げ面13、15を他の逃げ面と分けるため、
図4ではこれに添え字aが備わっている。これに関連して、参照番号12、14が逃げ面と切粉表面の間の遷移部分内に形成された切刃ラインを指すということも指摘しておくべきである。
【0018】
図示された実施形態においては、逃げ面13のみならず逃げ面15も基準平面RPに直角に延びている(したがって、同じく中心軸C2に対して平行に走っている)。この場合のフライス加工用インサートの有効取付け角K(
図2を参照のこと)は約45°になるべきであることから、対として連動する副刃および主刃14、12そしてこれに連結されたそれぞれの逃げ面15、13は、平面図の中に見られるように互いに135°という鈍角の公称角度を成す(
図6参照)。さらに、副刃14は、二等分線Bに直角に延び、この二等分線は、それ自体、フライス加工用インサートの共通の個別コーナーに向かって走る逃げ面13と主刃12の各対と45°の角度を成す。
【0019】
図8では、個々の主刃12は、第1と第2の端部20、21の間に延び、L1と呼ばれる全長を有する。第1の端部20から、主刃はフライス加工用インサートの下面16Bに対し下向きの方向に、より厳密には角度γで下降して、その後最下点22から再び反対側の第2の端部21に向かって上昇する。
図8および9では、P1はさらに、基準平面RPに対し平行な平面を表わす。
【0020】
先に指摘したように、既知のフライス加工用インサートの副刃は、フライス加工用インサートの中立平面に対し平行であり、それぞれ中立平面から最高の場所または最も遠い場所に位置づけされた上面および下面の部分を形成する。
【0021】
次に、本発明にしたがったフライス加工用インサートの個々の副刃14がどのようにフライス加工用インサートの中立平面RPとの関係において中庸の角度εで、より厳密に言うと主刃12に連結している第1の端部23が反対側の第2の端部24よりも低いレベルに位置づけされるような形で、傾斜させられているかを示す
図10および
図11を参照する。この例においては、副刃と中立平面の間の角度εは3°になる。これに関連して、切刃12、14が1つ以上の半径遷移部分を介して互いに形を変えるということを指摘しておくべきである。この例においては、前記半径遷移部分は、切刃の逃げ面13、15の間に位置づけされた2つの凸状部分表面25、26の形で示されている。
図11に明確に見られるように、副刃14の記述された傾斜のため、フライス加工用インサートの最も露出された部分すなわち副刃と主刃の間のコーナー遷移部分には、切刃が側面図に見られる通り互いに180°よりも著しく小さい角度を成す場合の結果である切り立ったボブが欠如していることになる。より厳密に言うと、副刃14と部分刃121は、
図8による図中で側面から見られるように、実質的に真直ぐな(または最大でもわずかしか反っていない)切刃ラインに沿って互いに形を変える。換言すると、2つの切刃ラインは、調和した遷移ラインに沿って互いに形を変え、これがコーナー遷移部分を強化しフライス加工用インサートの耐用寿命を長くする。
【0022】
ここで、平面P1は、4つの副刃14全ての最上端部点24がP1の平面内にあるような形で方向づけされているという点を記しておかなくてはならない。換言すると、中立平面RPとの関係における平面P1のレベルは、これと各端部点24の間の軸方向距離によって決定される。
【0023】
この例中のεは正確に3°となるものの、この角度は、それが少なくとも1°となることを条件として変動してよい。その一方で、この角度は7°を超えるべきではない。有利には、角度εは2〜5°の間に入る。
【0024】
裸眼では、副刃14は、
図6および13にしたがった平面図内のみならず、
図11にしたがった拡大側面図においても真っすぐであるように思われる。しかしながら、実際には、副刃は、少なくとも座標方向のうちの1つの方向で真に直線以外のその他の形状を有し得る。特に、これは、
図13に従った平面図に見られるように凸形アーチ状になっていてよい。このようにして、機械加工すべき部品の生成された平らな表面に、
図14に例示されている有利な表面構造を与えることができる。副刃がまっすぐであり比較的鋭利な段差を介して主刃へと形を変える場合にそうであるように、表面内の小型で低くなった斜面路または溝を残すのではなく、目には見えない微小な尾根27が、一緒になると平面で平滑な表面として認識されるその他の点では最大でもわずかにだけ凹状である表面領域の間に形成される。切刃ライン14に対し、
図11にしたがった側面図で見られるようなわずかに凸状の形状を与えることもまた可能である。最後に言及したケースでは、角度εは、副刃を構成する弧のラインまで端部点23と24の間を延びる弦により定義される。
【0025】
本発明に従ったフライス加工用インサートと公知のフライス加工用インサートの間のもう1つの有為な差異は、本発明の場合異なる切刃がそれに沿って延びている境界線が、非切粉除去用主刃28によって部分的に中断されている(
図11〜13を参照のこと)のに対して、公知のフライス加工用インサートの切刃は、切粉の除去用に意図された1本の単一の連続した刃ラインに沿って延びている、という点にある。換言すると、全ての切刃が、公知のフライス加工用インサートでは互に直接形を変え、一方、
図4にしたがった主刃12dなどの各々個々の主刃は、隣り合う連動しない副刃14aから一定の距離のところで終り、非切粉除去用刃28ラインによりこれから離隔されている。
【0026】
非活動状態の刃ライン28の内側には、30として表わされているその上部表面を有する肩部が形成され、その全体は29という番号で表わされている。
図8および9を見ればわかるように、フライス加工用インサートの4つの肩部29全ての上部表面30は、副刃14の最高端部点24が内部に位置づけされている平面P1よりも高いレベルにある共通平面P2の中に位置づけされている。
【0027】
ここで示されている好ましい実施形態においては、肩部の上部表面30は平らであり、刃ライン28から内向きに延び、これは平面P2と一致する。
【0028】
ここで
図8を参照すると、これには、主刃12がその2つの端部20、21の間で有する特別な輪郭形状が例示されている。第1の端部20から、第1の部分刃121が、点2まで延びる第3の部分刃123への遷移部分を形成するアーチ形の第2の部分刃122に至るまで延びている。部分刃121は、先に指摘した通り、中立平面RPとの関係において、この例では6°となる角度γで傾いており、一方この場合第3の部分刃123は中立平面RPに対し実質的に平行であり、主刃の最下部分を形成する。この例においては、2つの部分刃121および123は真っすぐであるが、そのうちの一方または両方に対してわずかに凹状の形状(さらには、凹状、直線状および/または凸状の間で交番し得る形状)を付与することも可能である。これに関連して、中性平面RPとの関係において或る中庸な角度で第3の部分刃123を形成することもそれ自体可能である。いずれの場合でも、この角度は、このようなケースにおいて角度γよりも著しく小さいものであるべきである。例中の角度γは6°となるが、これはそれ以上ならびにそれ以下に変動し得る。ただし、それは少なくとも3°そして多くとも10°となるべきである。2つの部分刃121、123の間の遷移部分として役立つ第2の部分刃122は、凹状の形状そしてこの場合10mmとなる半径R1を有する。部分刃121の長さL2は、
図8を見れば明確にわかるように、主刃12の全長L1の半分未満である。この例においては、L2はL1の約36%となる。
【0029】
点22において、部分刃123は、部分刃122と同様に凹状円弧形状を有するものの半径R2はこの例では1.5mmとなる比較的小さいものである第4の部分刃124へと形を変える。部分刃123の長さL4は、全長L1のおよそ38%となり、一方長さL3はL1のおよそ12%、L5はL1の14%となる。副刃14の長さL6(
図6参照)は、この例では主刃の全長L1のおよそ23%となる。実際には、この値は、15〜35%、好ましくは20〜30%の範囲内にあるべきである。
【0030】
以上で言及した寸法は全て、フライス加工用インサートの具体例に関係するものであり、そのIC寸法は(
図6参照)13mmとなり、フライス加工用インサートは5.1mmの厚みTを有する(
図7参照)。平面P1との関係において部分刃123が皿形に広がっている寸法「t」は、この例においては0.4mm、すなわち厚みTのおよそ8%となる。この値は、5〜12%、適切には6〜10%の範囲内にあるべきである。同様に、この場合穴17の直径Dが4.8mmとなるということも指摘すべきである。これに関連して、L2はおよそ4mm、L1は8.7mmとなる。
【0031】
フライス加工用インサートが、精密フライス加工のために使用される場合(表面仕上げの必要条件が高い場合)そして切削深度が非常に大きくそのため部分刃121の長さL2のほぼ全てが使用される場合、切刃のマイナスの軸方向の方向性はγ°だけ、すなわちこの例では6°だけ削減される。このことはすなわち、切削深度が限定され表面仕上げの必要条件が高い場合に、主刃が比較的容易に切削できるものとなる、ということを意味している。荒フライス加工のためにフライス加工用インサートが使用されると考えられる場合、切削深度が非常に大きいために主刃の長さL1ほぼ全体が使用される可能性がある。しかしながら荒フライス加工においては、表面仕上げの必要条件は通常低いかまたは存在しない。したがって、第3の部分刃123が中立平面RPに対し平行であることは付随的な問題である。第3の部分刃123を中立平面に平行に位置設定することの利点は、特許文献1にしたがったフライス加工用インサートの場合のように、端部21の近くにある最下点に至るまで第1の部分刃121に連続的に勾配をつけるという代替案に比べ、フライス加工用インサート内に大量の材料を保持できる、という点にある。換言すると、本発明に従ったフライス加工用インサートは、特許文献1によって公知であるフライス加工用インサートよりも強くなる。
【0032】
凹状部分刃124の内部では、切粉表面19(
図12を参照)は、凹状アーチ形の表面19aを形成し、これは、肩部29上の側面限定表面32へと形を変える。表面32は、平らな上部表面30まで延び、表面19aと共に「スキー場の斜面」にたとえることのできる構成を形成する。副刃14の内部では、切粉表面は、平らな部分表面19aを内含し、これは、フライス加工用インサートの平らな基本表面18に対してかなり大きい角度(呼称なし)で下向きに傾いている(
図4、9および12を参照)。
【0033】
上述の切刃はそれ自体例えば研削によって鋭利になっていることが考えられるが、好ましい実施形態においては、これはいわゆる補強ベベル33すなわちそれぞれの逃げ面と直接連結した状態にある最大限に細長い表面で形成されている(
図4および5を参照のこと)。これに関連して、研削またはそれに類するものにより後処理される必要なくプレス加工および焼結の後に直接その最終形状をとるかぎりにおいて、フライス加工用インサートを直接プレス加工してもよいということにも言及すべきである。
【0034】
「発明の利点」
先に指摘した通り、以上で記述した形での副刃の傾斜のため、フライス加工用インサートの最も敏感な部分すなわち連動する副刃と主刃の間のコーナー遷移部分は、著しく強化されることになる。この傾斜は同様に、副刃が切粉打撃保護として役立つ肩部から下向きに下降し、かくして、肩部の上部表面に沿って通過することが考えられる切粉に対するその露出度が低くなるということをも意味する。肩部の上部表面が副刃の最高点よりも高いレベルにあるという事実は、フライス加工用インサートを副刃に代って肩部上で支えることができるという理由で、製造、取扱いなどに関連した副刃に対する損傷のリスクをさらに低減させる。主刃の当初傾斜している部分刃を連動する副刃からわずかな距離のところで終結させ、これを実質的に中立平面に平行に第2の部分刃へと形を変えることにより、フライス加工用インサート内の超硬合金材料が副刃に隣接する主刃の所望の傾斜に起因して不必要に削減されない、という利点がさらに得られる。このようにして、フライス加工用インサートは、(切削深度が主刃の有効長さの半分よりも小さい場合に)精密フライス加工中の表面仕上げ必要条件を無視することなく、優れた強度を保持する。
【0035】
「本発明の実行可能な修正」
本発明は、独立クレーム1の中で規定されている特長による以外には制限されないものである。かくして、副刃ならびに肩部の形状および場所は、かなり広い限度内で変動し得る。例えば個々の肩部の上部表面は、一方では主刃の逃げ面に隣接する非切粉除去用境界線から一定の距離だけ離隔され、他方では例えばアーチ状または半球状といった正確な平面以外の形状を有していてもよい。さらに、本発明は、正面フライス加工用インサートのみならずエンドミルインサーとにも応用可能である。
【0036】
本発明は、基本的に両面型正面フライス加工用インサートに関係する問題に由来しており、以上で提示されている特殊なインサート幾何形状がこれらの問題に対する解決法であるが、本発明は、片面型フライス加工用インサートすなわちその上面に沿ってのみ少なくとも3つの一連の切刃を含み、平らな下面が上面に対し平行な基準平面を形成しているフライス加工用インサート(このような場合、下面は鋸歯状またはその他のタイプの結合部材を伴って形成されていてよい)にも同様に応用可能である。換言すると、本発明は、上述の独特の幾何形状を有する、両面型フライス加工用インサートのみならず、一組の割出し可能な切刃のみを有する片面型インサートも内含するものとみなされるべきである。同様に、フライス加工用インサートは、例えばクランプ、楔などによって固定され得、ここでフライス加工用インサートはいかなる穴も必要としない、ということも言及しておくべきである。同様に、(それぞれ)上面(および下面)に沿った切刃の数は、全体にわたり3個からそれ以上に変動してもよい。