(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、眼内レンズの一つとして、乱視矯正に対応したTORIC−IOLが現れている。この場合、術者は、角膜形状測定装置を用いて被検眼(手術眼)の乱視軸を予め測定しておき、その後、専用の部材を用いて被検眼の水平軸方向に第一のマーキングをし、さらに、第一のマーキングを基準として、被検眼の乱視軸に対応する位置に第二のマーキングを施し、この第二のマーキングとIOLの軸が合うように眼内レンズを眼内に挿入する。
【0005】
しかしながら、角膜形状を測定する時とマーキングを施す時とで被検者の体勢が変化し、乱視軸に対応する位置にマーキングを適正に施すことができず、挿入位置がずれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、TORIC−IOLの処方に有用なデータを出力できる角膜形状測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1)
投影光源を有し、角膜形状を測定するための測定指標を被検眼角膜に投影する投影光学系と、
撮像素子を有し、前記測定指標による角膜反射像及び前眼部像を撮像する撮像光学系と、
を備え、被検者眼の角膜形状を測定する角膜形状測定装置において、
被検眼の前眼部を可視光にて照明する可視照明光学系と、
前記可視照明光学系により前眼部を可視光によって照明し、前記撮像素子から出力される画像信号に基づいて眼内レンズ手術用の角膜マーキングを含む可視前眼部画像を取得可能な制御手段と、
前記測定指標による角膜反射像に基づいて被検眼角膜の乱視軸方向を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出結果と、前記角膜マーキングを含む前記可視前眼部画像と、に基づいて前記角膜マーキングに対する乱視軸方向の位置情報を示す前眼部データを作成可能な画像処理手段と、
前記画像処理手段によって作成された前記前眼部データを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする。
(2)
(1)の角膜形状測定装置において、
前記画像処理手段は、さらに、前記角膜マーキングと前記乱視軸方向との間の角度を判断するための角度情報を前記可視前眼部画像に重ね合わせ処理して、前記前眼部データを作成することを特徴とする。
(
3)
(1)〜(
2)のいずれかの角膜形状測定装置において、
前記可視照明光学系及び前記撮像光学系は、眼内レンズ手術用の角膜マーキングに使用されるインク色に対して補色関係にある波長特性の前眼部反射像が前記撮像素子に受光されるように構成されていることを特徴とする。
(
4)
(1)〜(
3)のいずれかの角膜形状測定装置において、
前記可視照明光学系及び前記撮像光学系は、緑色帯に中心波長を持つ波長特性の前眼部反射像が前記撮像素子に受光されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、TORIC−IOLの処方に有用なデータを出力できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は角膜形状測定装置(眼科装置)の光学系について示す概略構成図である。本光学系は、角膜形状測定用の指標を被検眼角膜に投影するケラト投影光学系20と、被検眼前眼部を可視光にて照明する可視照明光学系80と、アライメント投影光学系50と、前眼部正面像を撮像する前眼部正面撮像光学系30と、固視標投影光学系40と、第2の眼特性を測定するための第2の光源を有し被検者眼に第2の測定光を投光しその反射光を受光する第2測定光学系60、被検者眼の前眼部断面像を用いた測定を行う前眼部測定光学系90と、に大別される。なお、以下の光学系は、図示無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント移動機構の駆動により、操作部材(例えば、ジョイスティック)を介して被検者眼に対して3次元的に移動される。
【0011】
投影光学系20は、測定光軸L1を中心に配置されたリング状の光源21を有し、被検眼角膜にリング指標R2を投影して角膜形状(曲率、乱視軸角度、等)を測定するために用いられる(
図2(a)参照)。なお、光源21には、例えば、赤外光または可視光を発するLEDが使用される。なお、投影光学系20について、光軸L1を中心とする同一円周上に少なくとも3つ以上の点光源が配置されていればよく、間欠的なリング光源であってもよい。さらに、複数のリング指標を投影するプラチド指標投影光学系であってもよい。
【0012】
可視照明光学系80は、光源21の外側に配置され、測定光軸L1を中心に配置された4つの緑色光源81を有する。緑色光源81は、角膜形状測定用の光源21とは異なる光源であり、緑色光により前眼部を照明し、青色又は紫色の角膜マーキングMを含む前眼部像を撮影するために用いられる(
図2(b)参照)。
【0013】
なお、角膜マーキングMは、乱視矯正用眼内レンズの手術のために白目部分に施されるインクであり、被検眼の水平軸方向に合わせて施された第一の角膜マーキングである。光源81には、例えば、中心波長がλ=525nmであり、500nm〜550nmの波長領域の光を発する光源(例えば、緑色LED)が用いられる。なお、これに限るものではなく、白色光源の前に、緑色帯のみを透過する特性を有するフィルタを設けても良い。
【0014】
アライメント投影光学系50は、光源21の内側に配置され、赤外光を発する投影光源51(例えば、λ=970nm)を有し、被検者眼角膜にアライメント指標を投影するために用いられる。そして、角膜に投影されたアライメント指標は、被検者眼に対する位置合わせ(例えば、自動アライメント、アライメント検出、手動アライメント、等)に用いられる。本実施形態において、投影光学系50は、被検者眼角膜に対してリング指標を投影する光学系であって、
図2に示すように、被検者眼の角膜上にはリング指標R1が投影される。なお、リング指標R1は、マイヤーリングも兼用する。また、投影光学系50の光源51は、前眼部を斜め方向から赤外光にて照明する前眼部照明を兼用する。なお、投影光学系50において、さらに、角膜に平行光を投影する光学系を設け、投影光学系50による有限光との組合せにより前後のアライメントを行うようにしてもよい。
【0015】
前眼部正面撮像光学系30は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、ダイクロイックミラー62、フィルタ34、撮像レンズ37、二次元撮像素子35、を含み、被検眼の前眼部正面像を撮像するために用いられる。
【0016】
ここで、前述の投影光学系20、可視照明光学系80、投影光学系50による前眼部反射光は、ビームスプリッタ33、対物レンズ47、ダイクロイックミラー62、フィルタ34、及び撮像レンズ37を介して二次元撮像素子35に結像される。
【0017】
すなわち、撮像光学系30は、光源21からの光が照射された前眼部像を撮影することにより、角膜Ec上に形成されたリング指標(角膜反射像)R2を含む前眼部像Aを撮影できる。また、角膜マーキングMが前眼部に施されている場合、撮像光学系30は、緑色光源81によって照明された前眼部像を撮影することにより、角膜マーキングMを含む前眼部像Aを撮影できる。
【0018】
ダイクロイックミラー(ビームスプリッタ)62は、投影光学系90aの光路と撮像光学系30の光路を分岐するための光路分岐部材として用いられる(詳しくは、後述する)。フィルタ34は、光源51による赤外光と光源81による緑色光を透過し、他の光を遮断するために用いられる。
【0019】
投影光学系40に関し、ダイクロイックミラー45の反射方向には、固視標投影光学系40が形成されている。
【0020】
第2測定光学系60は、被検者眼に第2の測定光を投光しその反射光を受光する構成を備える第2測定光学ユニット61と、ダイクロイックミラー45、ビームスプリッタ33(例えば、ハーフミラー、ダイクロイックミラー)を含む。
【0021】
なお、第2測定光学系60としては、例えば、測定光と参照光による干渉光を受光して眼軸長を測定する眼軸長測定光学系(測定光源の波長は、例えば、λ=830nm)、被検者眼眼底に投影された反射光を受光して眼屈折力を測定する眼屈折力測定光学系(測定光源の波長は、例えば、λ=870nm)が考えられる。
【0022】
前眼部測定光学系90は、前眼部断面像を形成するためのスリット光を被検者眼Eに投影する投影光学系90aと、投影光学系90aによって投影されたスリット光による前眼部反射光を受光して前眼部断面像を撮像する撮像光学系90bと、を有する。
【0023】
投影光学系90aは、光源91と、集光レンズ92と、スリット板93と、全反射ミラー94と、ダイクロイックミラー62、対物レンズ47と、ダイクロイックミラー33を含む。
【0024】
光源91には、例えば、中心波長が略470nmで略460〜490nmの波長領域の光(青色光)を発する可視光源が使用される。スリット板93は、前眼部(例えば、角膜頂点付近)と共役な位置に配置され、
図1では、水平方向が長手方向であるスリット開口が形成されている。
【0025】
また、対物レンズ47は、光源91からの光を角膜に集光させる。なお、投影光学系90aの光軸(投影光軸)は、測定軸L1と同軸になっている。
【0026】
撮像光学系90bは、二次元撮像素子97と、投影光学系90aによる前眼部からの反射光を撮像素子97に導く撮像レンズ96と、を含み、シャインプルークの原理に基づいて前眼部断面像を撮像する構成となっている。すなわち、撮像光学系90bは、その光軸(撮像光軸)が投影光学系90aの光軸と所定の角度で交わるように配置されており、投影光学系90aによる投影像の光断面と被検者眼角膜を含むレンズ系(角膜及び撮像レンズ96)と撮像素子97の撮像面とがシャインプルーフの関係にて配置されている。なお、レンズ96の手前(被検者眼E側)には、光源91から出射され,前眼部断面像を撮像するために用いられる光(青色光)のみを透過するフィルタ99が配置されている。
【0027】
次に、制御系について説明する。制御部70は、装置全体の制御及び測定結果の算出を行う。制御部70は、光源91、光源51、光源21、光源81、撮像素子35、撮像素子97、第2測定光学ユニット61、固視標投影光学系40、可視照明光学系80、モニタ71、メモリ75、等と接続されている。ここで、撮像素子35から出力される撮像信号は、制御部70によって画像処理され、モニタ71に表示される。また、制御部70は、撮像素子35から出力される撮像信号に基づいて被検者眼に対するアライメント状態を検出する。
【0028】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。
図2は撮像素子35によって撮像された前眼部像が表示された前眼部観察画面を示す図である。アライメントの際には、光源51及び光源21が点灯される。ここで、検者は、
図2(a)に示すように、電子的に表示されたレチクルLTと、光源51によるリング指標R1と、が同心円状になるように上下左右のアライメントを行う。また、検者は、リング指標R1のピントが合うように、前後のアライメントを行う。なお、リング指標R1の外側には、光源21によるリング指標R2が表示されている。
【0029】
上記のようにしてアライメントが行われ、所定のトリガ信号が発せられると、制御部70は、さらに、緑色光源81を点灯し、撮像素子35を用いて前眼部像を撮影する。そして、制御部70は、撮像素子35から出力される撮像信号に基づいて、リング指標R1、R2、角膜マーキングMを含む前眼部画像を静止画として取得し、メモリ75に記憶させる(
図2(b)参照)。なお、
図2(b)における4つの輝点Gは、光源81による角膜輝点像である。なお、上記においては、一連の測定を同時に行ったが、角膜形状測定と、角膜マーキングMの撮影と、を別タイミングで行っても良い。
【0030】
そして、制御部70は、メモリ75に記憶された前眼部画像におけるリング指標像R2に基づいて被検眼の角膜形状(例えば、強主経線方向及び弱主経線方向における角膜曲率、角膜の乱視軸角度、等)を算出し、測定結果をメモリ75に記憶する。なお、角膜乱視眼の場合、指標像R2が楕円形状となるため、制御部70は、その長径方向及び短径方向を検出することにより乱視軸角度を求める。
【0031】
また、制御部70は、メモリ75に記憶された前眼部画像における角膜マーキングMの位置を検出し、その検出結果をメモリ75に記憶する。より具体的には、制御部70は、画像処理により、虹彩と白目との境界位置をリング状に検出し、その境界より所定量外側(
図2(b)の点線T参照)における輝度分布を求める。そして、制御部70は、その輝度分布において、
図3に示すように、白目部分での輝度レベルMaに対して輝度レベルが最も下がった部分(輝度レベルMi)を検出し、これに基づいてマーキングMの位置Cを特定する。これにより、瞳孔中心(又は角膜中心)を対称とする2つの角膜マーキングMの位置が検出される。
【0032】
図4は乱視矯正用眼内レンズを被検眼に挿入する際に用いる前眼部データを示す図である。制御部70は、上記測定結果及び検出結果に基づいて、
図4のような前眼部データを作成し、モニタ71に表示する。
【0033】
ラインK1及びラインB1は、メモリ75に記憶された前眼部画像に対して画像処理により電子的に合成(重ね合わせ処理)されたものである。ラインK1は、角膜マーキングMに対する被検眼角膜の乱視軸方向を示すための指標である。ラインB1は、乱視軸方向に角膜マーキングを行うための基準軸を示すための指標であり、角膜マーキングMに対応する。
【0034】
制御部70は、前述のように算出された乱視軸角度に基づいてラインK1の表示角度を求め、前眼部画像におけるリング指標R2の中心を通るようにラインK1を合成する。また、制御部70は、前述のように求められた2つの角膜マーキングMの位置に基づいて、2つの角膜マーキングMを結んだ直線(ラインB1)を前眼部画像に合成する。
【0035】
さらに、制御部70は、乱視軸の算出結果と角膜マーキングMの検出結果に基づいて、角膜マーキングMと乱視軸方向との間の角度を算出し、その算出結果を前眼部画像に対して合成してもよい(
図4のRE参照)。この角度は、例えば、画像処理において、瞳孔中心を基準としてラインB1を回転させていき、ラインK1と一致したときの回転角度を基に検出可能である。
【0036】
上記のようにして画像処理により作成された前眼部データは、メモリ75に記憶される。制御部70は、前眼部データをモニタ71に表示出力する他、プリンタによる印字出力、データ出力、が可能である。そして、
図4のような前眼部データに基づく出力データは、被検眼角膜の乱視軸に対応する位置に、第2の角膜マーキングを施す際に利用される。
【0037】
図4のような前眼部データによれば、術者は、基準軸に施された第1の角膜マーキングMに対する乱視軸の角度が確認できるため、乱視軸に対応する第2の角膜マーキングを角膜上の適正な位置に施すことができる。よって、乱視矯正用眼内レンズを眼内の適正な位置に容易に置くことができる。
【0038】
なお、上記構成においては、緑色光源81を用いて角膜マーキングMを含む前眼部像を撮像することにより、前述の前眼部データにおける前眼部像と角膜マーキングとのコントラストがはっきりし、角膜マーキングを容易に視認できる。これは、通常、角膜マーキングのインク色が青色又は紫色であり、三原色(赤、青、緑)においてこれらと干渉しない緑色光であれば、インクによる反射がなく、白目とのコントラストが大きくなるからである。なお、紫色は、赤と青との混合色である。発明者らは、他の光でも実験を行ったが、青色光の場合、青色の角膜マーキングの視認性が悪く、赤色光の場合、紫色の角膜マーキングの視認性が悪いことが分かった。
【0039】
なお、上記説明においては、緑色光にて可視照明するものとしたが、角膜マーキングに使用されるインク色と干渉しにくい波長帯域の光(例えば、中心波長がλ=500〜600の間に中心波長を持つ光)を発する構成であれば、これに限るものではない。すなわち、角膜マーキングに使用されるインク色に対して補色関係にある波長特性の光を発する構成であればよい。また、光源としては、単色性が高い光源の方が好ましい。
なお、上記実施例の前眼部照明光学系80において、角膜マーキングMの撮影において、1種類の光源を使用したが、これに限るものではなく、中心波長の異なる2つ以上の光源を設け、角膜マーキングの色と干渉しない光源に切換えるようにしてもよい。
【0040】
また、上記構成に限るものではなく、可視照明光学系80及び撮像光学系30が、角膜マーキングに対して補色関係にある波長特性の前眼部反射光が撮像素子35に受光されるように構成されていればよい。例えば、可視照明光学系80に白色光源を設け、緑色光及び赤外光を透過し他の光を吸収する特性のフィルタを撮像光学系30の光路に設けるようにしてもよい。
【0041】
また、上記説明においては、検出結果REを出力したが、これに限るものではなく、角膜マーキングと乱視軸方向との間の角度を判断するための角度情報が前眼部画像と共に表示されればよい。例えば、角膜マーキングMに対するラインK1との角度を確認するための角度目盛(例えば、分度計)が前眼部像に合成表示されるようにしてもよい。この場合、マーキングMの位置を0度として、目盛を付与するのが好ましい。
【0042】
なお、上記構成に限るものではなく、制御部70は、検者によって手動操作される所定のスイッチからの操作信号に基づいて、モニタ71の画面上におけるラインK1を回転可能とし、ラインK1と角膜マーキングMとが合致したときのラインK1の回転角度を計測するようにしてもよい。また、制御部70は、モニタ71上のラインB1を回転可能として、回転角度を計測するようにしてもよい。
【0043】
以下に、ダイクロイックミラー62の詳しい構成について説明する。なお、本実施形態では、光源91に使用される波長と光源81に使用される波長との波長差が100nm以下となっている。例えば、光源91には、青色光源(中心波長が略470nmで略460〜490nmの波長領域の光)が用いられ、光源81には、緑色光源(中心波長が略525nmで略500〜550nmの波長領域の光)が用いられる。
【0044】
上記構成において、λ=500nm以下の光を透過し、これ以上の光を反射するコーティングを全面に施したダイクロイックミラーを設計したとしても、波長差が少ない光を完全に分離することは難しく、λ=500nm付近に波長帯域を持つ光源81の光の大部分(約80%)が透過されてしまう(
図5参照)。このため、角膜マーキングMを含む前眼部像を好適に撮影できない。
【0045】
図6は本実施形態に係るダイクロイックミラー62を正面方向及び横方向から見たときの概略構成図である。ダイクロイックミラー62は、一枚のガラス基板301からなり、互いに異なる波長特性のコーティングが施された第1領域303と第2領域305が形成されている。
【0046】
第1領域303は基板301の中心部にスリット状に形成され、第2領域305は第1領域303を除く基板301の周辺部に形成されている。そして、第1領域303は、光源91の出射光を眼Eに向けて透過させるために用いられる。一方、第2領域305は、光源21、光源51、及び光源81による前眼部反射光を撮像素子35に向けて反射させるために用いられる。
【0047】
なお、第1領域303は、投影光学系90aによるスリット光がダイクロイックミラー62を通過するときのスリット幅に対応し、同程度の大きさに形成されている。
【0048】
図7は第1領域303の波長特性の例を示す図である。第1領域303のコーティングは、青色光源91に使用されるλ=460〜490nmの光を約100%透過するが、青色光と波長差が少ない光(λ=470±125nm)に対しても透過特性を持つ。よって、緑色光源81に使用されるλ=500〜550nmの光の大部分が透過され、一部が反射される。なお、光源51に使用される赤外光は、約100%反射される。
【0049】
図8は第2領域305の波長特性の例を示す図である。第2領域305のコーティングは、緑色光源81に使用されるλ=500nm〜550nmの光を約80%反射し、光源51等に使用される赤外光を約100%反射する。この場合、緑色光と波長差が少ない光(λ=525±125nm)に対しても反射特性を持つ。よって、青色光源91による前眼部反射光の大部分が反射され、一部が透過される。なお、光源51等に使用される赤外光は、約100%反射される。
【0050】
上記構成において、第1領域303は、緑色光源81による反射光の多くを透過してしまうが、反射光の一部にすぎず、その大部分は第2領域305によって反射され撮像素子35に受光されるので、角膜マーキングMを含む前眼部像を良好に撮影できる。
【0051】
一方、第2領域305は、青色光源91からの光をほとんど透過しないが、スリット板93からのスリット光の通過領域は、第1領域303の同じぐらいの大きさであるため、ほとんど影響ない。
【0052】
図9はフィルタ34の波長特性の例を示す図である。フィルタ34のコーティングは、緑色光源81に使用されるλ=500nm〜550nmの光と光源51等に使用される赤外光を透過する。
【0053】
なお、赤外帯域に対して緑色帯域の透過率をかなり小さくした(数値的に表せるか)のは、撮像素子35の感度特性の違いに加えて、可視外乱光(例えば、蛍光灯)の遮断に対応するためである。なお、緑色帯域の透過率が小さくしたため、緑色光源81の出力を大きくするのが好ましい。
【0054】
また、フィルタ34は、青色光に対して透過特性を持つが、前眼部断面像の撮影と、角膜曲率測定及び角膜マーキング撮影と干渉しないので、特に問題ない。
【0055】
上記のようにすれば、互いに波長特性の異なる有効エリアを設けることにより、波長差が少ない光を効果的に分岐・結合させることができる。よって、前眼部断面像の撮影と、角膜マーキングMを含む前眼部撮影と、の両方を好適に行うことができる。
【0056】
なお、以上の説明においては、ガラス基板301に対してダイクロイックミラーコーティングを行うものとしたが、これに限るものではない。例えば、第1領域303には表面反射防止用のコーティングのみを施し、全ての光を透過させるようにしてもよい。また、第2領域305には全反射のミラーコーティングを施し、全ての光を透過させるようにしてもよい。この場合、広範囲の波長帯域に対応した可視外乱光除去用コーティングをフィルタ34に行う必要がある。
【0057】
なお、上記構成においては、コート基板として一枚のガラス板を用いたが、これに限るものではなく、プリズムにコーティング処理を施すようにしてもよい。
【0058】
なお、
図10に示すように、フィルタ34において、角膜マーキング撮影用のフィルタ34Gと、アライメント及びケラト指標撮影用のフィルタ34Rと、が切換配置されるような構成であってもよい。
【0059】
上記構成を備える装置において、撮影光学系30を用いた測定について簡単に説明する。前眼部正面撮像光学系30を用いた被検者眼に対する測定光軸L1とのアライメントが行われ、前眼部断面撮影を行うためのトリガ信号が発せられると、制御部70は、光源91を点灯する。そして、光源91からの光は、集光レンズ92によって集光され、スリット93を通過してスリット光となる。そのスリット光は、ダイクロイックミラー94で反射され、ダイクロイックミラー62を透過し、対物レンズ47によって略平行光束とされ、ビームスプリッタ33で反射され、前眼部上で集光される。前眼部上に形成されたスリット断面像は、フィルタ99とレンズ96とを介して、撮像素子97によって撮像される。そして、制御部70は、撮像素子97によって取得された断面像データを解析し、前眼部の眼特性(角膜厚、前房深度)を算出する。そして、前眼部断面像と測定結果がモニタ71上に表示される。
【0060】
なお、上記構成においては、被検者眼にスリット光を投影する投影光学系の光路と、被検眼の前眼部正面像を撮像する撮像光学系の光路と、を分岐するために光路分岐部材について示したが、他の光学系においても、適用可能である。
【0061】
すなわち、第1の眼特性を検査するための第1の光束を投受光する第1光学系と、第1の眼特性とは異なる第2の眼特性を検査する又は被検眼像を観察するための第2の光束を投受光する第2光学系と、を備え、被検眼を検査する眼科装置に適用できる。この場合、第1の光束と第2の光束のうち、いずれか一方の光束の透過に用いる第1領域と,第1領域とは異なる特性を持ち他方の光束の反射に用いる第2領域とが互いに異なる位置に形成され、第1光束と第2光束を透過及び反射により分岐する光路分岐部材を用いて第1光学系と第2光学系の光路が分岐される。
【0062】
また、上記実施形態においては、青色光と緑色光を透過し、赤外光を反射する波長特性のダイクロイックミラーコーティングによって形成された第1領域303をダイクロイックミラー62に設けたが、これに限るものではない。すなわち、少なくとも一方の光束の大部分と他方の光束の大部分を透過し、他の光を反射する波長特性のダイクロイックミラーコーティングによって形成された第1領域、少なくとも他方の光束の大部分と一方の光束の大部分を反射し、他の光を透過する波長特性のダイクロイックミラーコーティングによって形成された前記第2領域、の少なくともどちらか一方を有するものであればよい。