【実施例】
【0037】
以下の方法で単板の木質系ボードを作製し、このボードを積層して積層型電波吸収板材を
作製し、その電波吸収特性を測定した。
<木質系ボードの作製>
磁性粉体と木粉とをフェノール樹脂をバインダーとして、190℃、49N/cm
2にて10
分間熱圧縮して、250mm×250mm×18mmの形状のボード状に成形し、木質系
ボードを作製した。磁性粉体は、Mn−Znフェライト(BSF-547,戸田工業製、平均粒径
3,3μm)を、木粉にはオガ屑粉(粒径2mm以下、瀬川興業製)を、バインダーには
、フェノール樹脂(SA-100、旭有機材製)を用いた。粉体を混合する際には適量の水を
用いた。磁性粉体の重量含有量は33%(試料A)、50%(試料B)、66%(試料C
)、80%(試料D)の4段階に変えて表1に示す4種類の電波吸収ボードを作製して試
料とした。
【表1】
【0038】
<電波吸収特性の測定法>
測定には、外径6.95mm、内径3.05mm、厚さ3.0mmに加工した環状試料を
用い、ネットワークアナライザー(Agilent E8361A)により、周波数0.5GHzから1
8GHzでの材料定数(複素誘電率、複素透磁率)をNicolson-Ross法により求めた。求
めた材料定数から、試料裏面をアルミニウム反射板で裏打ちした単層型電波吸収体として
、厚さを5mmと10mmに設定し、各試料ごとに電波吸収量の周波数特性を算出した。
【0039】
<電波吸収特性の測定結果>
図1と
図2に、Nicolson-Ross法により算出した材料定数のグラフを示す。
図1−1に示
す複素誘電率の実部は、磁性粉体の重量含有率の高い試料が高い値を示し、周波数が高く
なるにつれ、各々減少している。また、
図1−2に示す複素誘電率の虚部は、同様に磁性
粉体の重量含有率の高い試料が高い値を示し、実部とは逆に周波数が高くなるにつれて増
加している。
図2−1に示す複素透磁率は、実部、虚部ともに周波数が高くなるにつれ減
少しているが、低周波数側では重量含有率の高い試料が高い値を示している。2〜6GH
zでの誘電率e´は、試料A=2.71〜2.54、試料B=4.38〜4.00、試料
C=6.77〜6.11、試料D=11.47〜10.39と算出された。
【0040】
なお、試料A、B,C,Dの曲げ強さは、それぞれ10.1N/mm
2、14.8N/mm
2,22
.5N/mm
2、33.0N/mm
2であり、曲げ弾性率は、それぞれ1640N/mm
2、2430N/m
m
2,3970N/mm
2、8830N/mm
2であり、建材としての十分な強度を有していた。
【0041】
図3に、材料定数から算出した試料厚さが5mm(
図3−1)と10mm(
図3−2)の
木質系ボードの電波吸収特性を示すグラフを示す。傾向として、磁性粉体の重量含有率が
高い試料ほど、低い周波数に高いピークを持つが、試料が厚いと重量含有率が低い試料で
も10GHzを超える周波数で最も高いピークを持つものもある。厚さが5mmから10
mmに増加するにつれ、電波吸収ピークが低周波数側にシフトしている。
【0042】
また、20dBを超える吸収量は、試料厚さ5mmでは試料C(フェライト含有量66w
t%)では、6.02GHzにおいて28.5dBであり、試料厚さ10mmでは試料B
(フェライト含有量50wt%)では、12.05GHzにおいて24.2dBであり、
試料C(フェライト含有量66wt%)では、2.51GHzにおいて25.2dBであ
り、試料D(フェライト含有量80wt%)では、1.38GHzにおいて25.7dB
となり、良好な値を示した。しかし、2〜6GHz帯域における電波吸収量は小さい。
【0043】
[実施例1,2]
<積層型電波吸収板材の作製>
図4に、本発明の積層型電波吸収板材の多層構造の概念図を示す。
図4は、試料層3層、
空気層2層の5層構造を示している。試料層として、試料A、試料B、試料C、試料Dを
組み合わせた構造の積層板を作製した。表2に、実施例1,2及び比較例1の各層に用い
た試料と厚みを示す。
【0044】
【表2】
【0045】
図5に、実施例1,2及び比較例1の積層型電波吸収板材の電波吸収性能を示す。実施例
1では、積層型電波吸収板材の全体厚みは22.6mmで、電波吸収ボードの合計厚みは
7.6mmであり、
図5に示すように、2.38GHzから7.45GHzの範囲で20
dBを超える吸収性能が得られた。実施例2では、積層型電波吸収板材の全体厚みは28
mmで、電波吸収ボードの合計厚みは16.3mmであり、1.98GHzから6.35
GHzの範囲で19dB以上の吸収性能が得られた。
【0046】
比較例1では、積層型電波吸収板材の全体厚みは33mmで、電波吸収ボードの合計厚み
は26mmであり、0.77GHzから10.47GHzの広い帯域で10dBを超える
吸収性能が得られているが、2〜6GHzの帯域では19dBを超える吸収性能は得られ
なかった。この理由は、1層目と3層目との間の空気層の厚みが0.5mmであり、1層
目と3層目に介在させた効果が得られず、1〜3層で高誘電率層1層と実質的に相違しな
いためと推測される。
【0047】
[実施例3〜7]
<木質系ボードの作製>
実施例1,2と同様に木質系ボードを作製した。導電性粉末は、グラファイト(1500M84C
伊藤黒鉛工業製)、炭素繊維(S-244大阪ガスケミカル製)、又はカーボンブラック(カ
ーボンMBPEC-416レジノカラー)を用いた。表3、4、5に試料E〜Pの組成を示す。ま
た、同様に、表6,7に示す組成の非磁性ボードを作製した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
<積層型電波吸収板材の作製>
実施例1,2と同様に積層型電波吸収板材を作製した。それぞれの層構造を表8〜10に
示す。各表中の英文字は試料の種類、mmは試料又は空気層の厚み、その下段の数値は4
GHzにおける誘電率を示す。
【表8】
【0054】
【表9】
【0055】
【表10】
【0056】
また、実施例1,2と同様に測定した電波吸収特性を
図6〜10に示す。実施例3では、
2GHz〜6GHz帯域での最低の電波吸収能は20.8dBであり、20dBの水準の
帯域は1.90GHz〜6.34GHzであった。実施例4では、2GHz〜6GHz帯
域での最低の電波吸収能は20.5dBであり、20dBの水準の帯域は1.81GHz
〜6.56GHzであった。実施例5では、2GHz〜6GHz帯域での最低の電波吸収
能は22.3dBであり、20dBの水準の帯域は1.82GHz〜6.91GHzであ
った。実施例6では、2GHz〜6GHz帯域での最低の電波吸収能は20.4dBであ
り、20dBの水準の帯域は1.95GHz〜6.03GHzであった。実施例7では、
2GHz〜6GHz帯域での最低の電波吸収能は22.3dBであり、20dBの水準の
帯域は1.89GHz〜6.41GHzであった。いずれも、2GHz〜6GHzの全帯
域内(帯域幅が4GHz)で19dB以上の電波吸収性能を有するものが得られたことが
分かる。
【0057】
比較例2は、低誘電率層を設けないで高誘電率層3層を積層した例であり、
図8に示すと
り、電波吸収ボード単板の場合より5GHz帯域の電波吸収能は改善されるものの、所望
の電波吸収性能が得られなかった。