【実施例1】
【0031】
図1(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの上面図(絶縁部を透視して図示)の例であり、
図1(b)は、
図1(a)における金属板28を透視した上面図の例である。
図1(b)のように、直列に接続された共振子(これを直列共振子12という)と、直列共振子12に対して並列に接続された共振子(これを並列共振子14という)と、が設けられている。直列共振子12および並列共振子14は共に、一対の反射電極16とそれらの間に設けられた櫛型電極(IDT)18とで構成された弾性表面波素子である。櫛型電極18は、入力側および出力側の2つの電極が向き合って、それぞれの電極指が互い違いに並ぶように配置されている。
【0032】
直列に接続された複数の直列共振子12のうち両端に位置する直列共振子12の一方の直列共振子12の入力側の電極には直列配線19と端子電極42とを介して入力端子22が接続され、他方の直列共振子12の出力側の電極には直列配線19と端子電極42とを介して出力端子24が接続されている。直列共振子12同士は、夫々の出力側の電極と入力側の電極とが直列配線19により互いに接続している。並列共振子14の入力側の電極は、直列配線19に接続する並列配線21に接続している。並列共振子14の出力側の電極は、グランド配線23と端子電極42とを介してグランド端子26に接続している。直列配線19と並列配線21とは、入力端子22から入力された高周波信号を伝搬する。ここで、入力端子と共振子、共振子同士、および共振子と出力端子を接続する配線を信号配線といい、信号配線は入力端子から入力された高周波信号を伝搬する。したがって、直列配線19と並列配線21とは信号配線20である。入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26は、共振子と外部とを電気的に接続させる接続端子である。
【0033】
直列共振子12および並列共振子14の上方に配置される金属板28(
図1(a)を参照)を支持する複数の金属製の支持柱30が、金属板28の対向する辺29、31夫々に沿って、辺29、31の長さよりも短い長さで、散在して設けられている。支持柱30は、直列共振子12および並列共振子14に、直列共振子12および並列共振子14を伝搬する弾性波の伝搬方向で隣接して設けられている。即ち、支持柱30は、信号配線20上には設けられておらず、信号配線20から離れている。支持柱30の高さは、例えば10μmから30μmであり、これにより、金属板28と直列共振子12および並列共振子14とは、例えば10μmから30μm離れている。
【0034】
図1(a)のように、金属板28は、グランド端子26上に延在しており、グランド端子26に接している。また、金属板28は、グランド端子26によっても支持されている。これにより、金属板28とグランド端子26とは電気的に接続している。一方、金属板28は、入力端子22および出力端子24上には延在していない。つまり、金属板28と入力端子22および出力端子24とは電気的に非接続である。
【0035】
図2(a)は、
図1(a)のA−A断面図の例であり、
図2(b)は、
図1(a)のB−B断面図の例であり、
図2(c)は、
図1(a)のC−C断面図の例である。なお、
図2(a)から
図2(c)においては、
図1(a)で透視した絶縁部34についても図示している。
図2(a)のように、圧電基板10上に、直列共振子12および並列共振子14が設けられている。直列共振子12および並列共振子14夫々の櫛型電極18の電極指上に空洞32が形成されるよう、圧電基板10上に設けられた支持柱30により支持されて金属板28が設けられている。つまり、金属板28は、直列共振子12および並列共振子14夫々の櫛型電極18の電極指上に空洞32を有し空洞32の上面を覆うように設けられている。
図2(c)のように、信号配線20上には支持柱30が設けられてなく且つ金属板28が支持柱30により支持されていることで、金属板28と信号配線20との間には空洞32が形成されている。
【0036】
図2(a)から
図2(c)のように、金属板28および支持柱30を覆うように、圧電基板10上に絶縁部34が設けられていて封止している。絶縁部34は、例えば樹脂膜で形成されている。また、絶縁部34は、櫛型電極18の電極指上に設けられた空洞32の側面の一部に接して覆うように設けられている。入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26は、絶縁部34を貫通して設けられていて、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の夫々の上面には、半田ボール36が設けられている。半田ボール36は絶縁部34の上面よりも突出している。これにより、直列共振子12および並列共振子14と外部とを電気的に接続することができる。
【0037】
図2(a)のように、支持柱30と圧電基板10との間には、給電配線38と下地電極40とが設けられている。
図2(b)のように、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26と圧電基板10との間には、給電配線38と端子電極42とが設けられている。
図2(a)および
図2(b)のように、圧電基板10の上面から金属板28の上面までの高さX1と、圧電基板10の上面から入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26夫々の上面までの高さX2とは、ほぼ同じである。
【0038】
次に、
図3(a)から
図9(c)を用いて、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を説明する。実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法は、多面取り構造を用いた製造方法であり、量産性の向上およびチップ単価の製造コストを下げることが可能である。
【0039】
図3(a)から
図3(c)のように、ウエハ状の例えばLiTaO
3(LT)である圧電基板10の上面に、例えばアルミニウム(Al)等の金属のパターンからなる直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、およびめっき用の給電配線38を形成する。直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、および給電配線38の形成は、例えば蒸着法またはスパッタ法によりAlを成膜した後、所望の形状にドライエッチングすることで形成できる、また、リフトオフ法を用いてもよい。
【0040】
図4(a)から
図4(c)のように、支持柱30を形成すべき領域に下地電極40を、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域に端子電極42を形成する。下地電極40および端子電極42は、例えばCu(銅)等の金属からなる。下地電極40および端子電極42の形成は、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて形成できる。
【0041】
図5(a)から
図5(c)のように、圧電基板10上に、例えばネガ型感光性のめっきレジスト44を塗布して、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングをする。めっきレジスト44の厚さは、例えば10μmから30μmである。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成する。これにより、支持柱30と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aと、が形成される。支持柱30は、信号配線20上に位置しない部分に、金属板28の対向する辺夫々に沿って、その辺の長さよりも短い長さで散在するように複数形成する。
【0042】
図6(a)から
図6(c)のように、例えば蒸着法またはスパッタ法を用いて、全面にCuめっき等のめっき金属用のシードメタル46を成膜する。シードメタル46の厚さは、例えば100nm程度である。その後、厚さが例えば5μmから30μmのめっきレジスト44を塗布して、金属板28、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングをする。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成し、金属板28と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22b、出力端子24b、およびグランド端子26bと、を形成する。
【0043】
図7(a)から
図7(c)のように、例えばレジスト剥離液による超音波洗浄、あるいは、さらに酸素プラズマアッシングを併用する方法を用いて、めっきレジスト44を除去する。金属板28は、複数の支持柱30で支持されていることから、圧電基板10と金属板28との間にもレジスト剥離液等が浸透し、圧電基板10と金属板28との間のめっきレジスト44も除去できる。これにより、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極の電極指上に空洞32が形成される。また、めっきレジスト44に挟まれたシードメタル46は、膜厚が薄いことから、めっきレジスト44の剥離時に同時に除去される。なお、入力端子22a、22bとその間のシードメタル46とにより、入力端子22が構成される。同様に、出力端子24a、24bとその間のシードメタル46とにより出力端子24が構成され、グランド端子26a、26bとその間のシードメタル46とによりグランド端子26が構成される。また、金属板28下のシードメタル46を含めて、金属板28となる。
【0044】
図8(a)から
図8(c)のように、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆うように、例えば熱可塑性の液晶ポリマーシートからなる樹脂シートを圧電基板10上に熱圧着し、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆う樹脂膜からなる絶縁部34を形成する。圧電基板10上に樹脂シートを熱圧着させることで、金属板28と直列共振子12および並列共振子14との間の空洞32に樹脂が流れ込むことが抑制されて空洞32を保つことができる。これにより、樹脂膜からなる絶縁部34は空洞32の側面に接することとなる。なお、樹脂シートは、熱可塑性の樹脂シートに限らず、熱硬化性の樹脂シートである場合でもよく、吸湿性が低く、接着性が高い樹脂シートである場合が好ましい。また、感光性を有していてもよい。
【0045】
図9(a)から
図9(c)のように、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の絶縁部34を、例えばレーザドリリングにより除去し、その後、樹脂の残渣を取り除くために、例えばデスミア処理を行う。絶縁部34を構成する樹脂膜が感光性を有する場合は、露光現像により各端子上の樹脂を取り除いてもよい。この場合、デスミア処理は必要ない。レーザドリリング等の方法により除去した領域に、例えば半田ペーストの印刷およびリフローにより、半田ボール36を形成する。または、給電配線38を再度用いて、SnAgめっきを行ってレーザドリリング等の方法により除去した領域に半田の充填を行い、その後、リフローして半田ボール36を形成してもよい。さらにまた、フラックスの印刷および半田ボールの実装およびリフローで半田ボール36を形成してもよい。その後、ダイシングによりウエハ状から個片化する。個片化することで、余分な給電配線38が除去される。以上により、実施例1に係るラダー型フィルタが完成する。
【0046】
以上のように、実施例1によれば、
図5(a)から
図6(c)で説明したように、圧電基板10上に複数の支持柱30を形成した後、支持柱30上に、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極18の電極指上に空洞32を有し空洞32の上面を覆う金属板28を形成する。そして、
図8(a)から
図8(c)で説明したように、支持柱30および金属板28を形成した後、金属板28と支持柱30とを覆い、空洞32を保つように空洞32の側面に接する樹脂膜からなる絶縁部34を形成する。これにより、
図2(a)のように、圧電基板10上に形成された直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極18の電極指上に空洞32が形成される。空洞32の上面は、支持柱30に支持された金属板28が接して覆うように設けられ、空洞32の側面は、樹脂膜からなる絶縁部34が接して覆うように設けられる。
【0047】
発明が解決しようとする課題で述べたように、金属層を有する樹脂を、弾性表面波素子が形成された圧電基板上に貼り付ける場合は、樹脂が柔らかいため、金属層が弾性表面波素子に対して高さ方向および水平方向に位置ずれする場合がある。しかしながら、実施例1のように、支持柱30上に金属板28を形成することで、金属板28の形成位置を精度よく制御でき、金属板28に位置ずれが生じることを抑制できる。例えば、めっき法を用いて金属製の支持柱30とその上の金属板28を形成することで、金属板28の位置ずれを抑制できる。これにより、ラダー型フィルタの特性劣化をより抑制できる。また、金属板28で空洞32を形成することで、空洞32の強度を強くすることができ、ラダー型フィルタの低背化が実現できる。
【0048】
支持柱30は、金属製である場合に限られず、絶縁材で形成されている場合でもよい。また、樹脂からなる支持柱上に金属板を形成した場合、樹脂が柔らかいために、金属板が共振子に対して高さ方向および水平方向で位置ずれする場合がある。よって、支持柱30は、樹脂以外の材料で形成されている場合が好ましい。金属板28の位置ずれを抑制する観点から、支持柱30は、樹脂よりも硬い材料で形成されている場合が好ましい。
【0049】
また、
図2(c)のように、支持柱30は、信号配線20上に位置しない部分に形成されている。例えば、金属板28を支持するために、直列共振子12および並列共振子14の周囲を完全に取り囲むように支持柱30を設けることが考えられる。この場合、支持柱30は信号配線20上にも設けられるため、支持柱30と信号配線20との間の容量の影響が生じ、フィルタ特性が劣化する場合がある。支持柱30が金属製の場合に限らず、絶縁材で形成した場合であっても、信号配線20上に支持柱30を設けると、誘電率の影響により、支持柱30と信号配線20との間に容量が生じて、フィルタ特性が劣化する場合がある。したがって、実施例1のように、信号配線20上に支持柱30を設けない構造とすることで、信号配線20と支持柱30との間の容量を低減でき、フィルタ特性の劣化を抑制できる。
【0050】
支持柱30は、フィルタ特性の劣化を抑制する観点からは、全ての信号配線20上に設けられていない場合が好ましいが、一部の信号配線20上に支持柱30が設けられている場合でもよい。この場合、フィルタ特性への影響が大きい箇所の信号配線20上には支持柱30が設けられてなく、フィルタ特性への影響が小さい箇所の信号配線20上に支持柱30が設けられている場合が好ましい。例えば、直列配線19上には支持柱30が設けられてなく、並列配線21上に支持柱30が設けられていてもよい。
【0051】
図2(a)および
図2(c)のように、金属板28と、直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20と、の間は、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)離れている。金属板28がグランドに接続されていない場合またはグランドへの接続が不十分の場合、金属板28が直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20に近づくほど、金属板28と直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20との間の容量が大きくなり、ラダー型フィルタの特性に影響を及ぼすこととなる。電極指の膜厚は、使用される周波数に影響し、周波数が高くなるほど電極指の膜厚は小さくなる。支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、使用される周波数によって適切な高さも影響を受ける。したがって、ラダー型フィルタの特性を考慮すると、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の50倍以上離れている場合が好ましく、75倍以上離れている場合がより好ましい。例えば、10μm以上離れている場合が好ましく、15μm以上離れている場合がより好ましい。また、支持柱30が高くなると、絶縁部34を形成する際に、樹脂が空洞32内に流れ込む場合がある。したがって、支持柱30の高さは、樹脂膜からなる絶縁部34の形成において、樹脂が空洞32内に形成された共振子に接触しない程度の流れ込みに抑えられる高さ以下である場合が好ましい。例えば、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の150倍以下である場合が好ましく、100倍以下である場合がより好ましい。
【0052】
一方、金属板28が確実にグランドに接続され、グランドに確実に落ちている場合は、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)が、電極指の膜厚の5倍である場合でも、良好なフィルタ特性を得ることができる。即ち、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の5倍以上とすることができ、7.5倍以上とする場合がより好ましく、例えば1μm以上とすることができ、1.5μm以上とすることがより好ましい。
【0053】
金属板28をグランドに落とすために、金属板28をグランド端子26に電気的に接続する場合が好ましい。例えば、
図1(a)のように、金属板28が、グランド端子26上に延在して設けられ、グランド端子26と接することで、グランドに落ちている場合が好ましい。この場合、支持柱30が金属製であっても絶縁材で形成されている場合であっても、金属板28をグランドに落とすことができる。また、金属板28をグランド端子26上に延在して設けることができない場合は、他のルートにより金属板28をグランドに落とす場合でもよい。例えば、支持柱30が金属製である場合は、支持柱30をグランド配線23上に設ける構造として、金属板28をグランドに落としてもよい。このように、金属板28をグランドに落とすことで、金属板28に覆われた直列共振子12および並列共振子14をシールドする効果も得られる。
【0054】
図8(a)から
図8(c)で説明したように、熱可塑性の液晶ポリマーシートからなる樹脂シートを、金属板28および支持柱30を覆い、空洞32の側面に接するように圧電基板10に圧着することで、金属板28と支持柱30とを覆って封止する樹脂膜からなる絶縁部34を形成している。液晶ポリマーシートからなる樹脂シートは粘度がある程度大きいため、空洞32内部への流れ込みが抑制され、空洞32を保つように空洞32の側面に接する絶縁部34を形成することができる。この観点から、絶縁部34の形成に当っては、樹脂シートを圧電基板10に圧着させる場合に限らず、空洞32内部の共振子に接触しない程度にしか流れ込まない高い粘度を有する液状樹脂を、金属板28と支持柱30とを覆うように塗布する場合でもよい。また、例えばフィラー等を混入させた液状樹脂を用いる場合でもよい。フィラーは、例えば空洞32の高さよりも大きな直径を有する場合が好ましい。これらの場合でも、空洞32内には、樹脂が空洞32内部の共振子に接触しない程度にしか流れ込まずに、空洞32を保つように空洞32の側面に接する絶縁部34を形成できる。
【0055】
図5(a)から
図5(c)で説明したように、支持柱30は、めっき法により、金属板28の対向する辺29、31夫々に沿って、辺29、31の長さよりも短い長さで、散在して複数形成している。このような支持柱30を形成することで、
図7(a)から
図7(c)で説明しためっきレジスト44の除去において、金属板28と圧電基板10との間にもレジスト剥離液等が入り込み易くなり、金属板28と圧電基板10との間のめっきレジスト44を容易に除去できる。したがって、支持柱30の長さは、金属板28の対向する辺29、31の長さの半分よりも短い長さである場合が好ましく、1/4よりも短い長さである場合がより好ましい。また、支持柱30を、金属板28の対向する辺29、31夫々に設けることで、金属板28を安定して支持することができる。
【0056】
図5(a)から
図6(c)で説明したように、支持柱30とその上の金属板28との形成と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の接続端子の形成と、は同時に行われる。したがって、
図2(a)および
図2(b)に示したように、圧電基板10の上面から金属板28の上面までの高さX1と、圧電基板10の上面から入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の上面までの高さX2とは、ほぼ同じ高さになる。このように、支持柱30とその上の金属板28との形成と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の接続端子の形成と、を同時に実行することで、製造工程の簡略化ができる。
【0057】
実施例1では、
図5(a)から
図6(c)で説明したように、支持柱30を形成するためのめっき工程と、金属板28を形成するためのめっき工程と、を別々の工程に分けて行ったが、支持柱30と金属板28とを1回のめっき工程で行う場合でもよい。
図10(a)から
図10(d)に、1回のめっき工程により支持柱30と金属板28とを形成する例を示す。
図10(a)のように、圧電基板10上に、支持柱30を形成すべき領域が開口しためっきレジスト44を形成する。
図10(b)のように、全面にCuめっき用のシードメタル46を形成する。
図10(c)のように、シードメタル46上に、金属板28を形成すべき領域が開口しためっきレジスト44を形成する。
図10(d)のように、例えば電解めっき法により、めっきレジスト44の開口部にCu膜を埋め込み、支持柱30と金属板28とを同時に形成する。
【0058】
また、ラダー型フィルタに接続するコイル、コンデンサ、あるいは伝送線路等の受動素子を、支持柱30と金属板28との形成と同時に、支持柱30と金属板28と同じ金属で形成してもよい。
【0059】
図1(a)のように、金属板28は、複数の直列共振子12および並列共振子14をまとめて覆うように設けられている場合を例に示したが、これに限られない。複数の直列共振子12および並列共振子14夫々を個別に覆う金属板28が複数設けられている場合でもよい。
【0060】
また、圧電基板10は、LTのほかにLiNbO
3(LN)、ZnO、KNbO
3、およびLBO等を用いることもできる。また、櫛型電極18および反射電極16は、Alの他に、Au、Ag、W、Cu、Ta、Pt、Mo、Ni、Co、Cr、Fe、Mn、およびTiを用いて形成することもできる。
【0061】
実施例1では、圧電基板10上に弾性表面波素子である直列共振子12と並列共振子14とが形成されたラダー型フィルタの場合を例に示したが、多重モード型フィルタ、デュアルフィルタ、分波器の場合でもよい。また、素子としては、弾性表面波素子を用いた場合に限らず、圧電薄膜共振器素子等を用いた場合でもよい。さらに、弾性波を利用しない電子部品の場合であっても、基板上に形成された素子の機能部上に空洞を設ける電子部品の場合であればよい。この場合、信号配線は、基板上に設けられた素子同士を接続する配線、素子と入力端子を接続する配線、素子と出力端子を接続する配線等が相当し、電気信号を伝搬する。
【実施例2】
【0062】
図11(a)から
図11(c)は、
図1(a)のA−A間からC−C間に相当する箇所における実施例2に係るラダー型フィルタの断面図の例である。
図11(a)から
図11(c)のように、実施例2に係るラダー型フィルタは、絶縁部34が、例えばシリコン酸化膜等の無機膜49とそれを覆う樹脂膜51とで構成されていて、無機膜49が、空洞32の側面の一部に接して覆うように設けられている。また、金属板28と直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20との間の距離は、例えば1μm程度である。その他の構成は、
図1(a)から
図2(c)で示した実施例1に係るラダー型フィルタと同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
図12(a)から
図17(c)を用いて、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を説明する。まず、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法で説明した
図3(a)から
図4(c)の工程を実施して、圧電基板10上に、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、給電配線38、下地電極40、および端子電極42を形成する。
【0064】
図12(a)から
図12(c)のように、圧電基板10上に、例えばフォトレジスト47を塗布して、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングする。フォトレジスト47の厚さは、例えば3μmから6μmである。その後、例えば蒸着法を用いて、フォトレジスト47の開口部に埋め込まれるように総膜厚が1μmとなるCu膜等の金属膜を形成する。これにより、支持柱30と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aと、が形成される。
【0065】
図13(a)から
図13(c)のように、フォトレジスト47をリフトオフして不要な金属膜を除去する。次に、再度フォトレジスト47を1μm程度の厚さで塗布する。エッチバック等の手法を用いて、支持柱30、入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aの表面を露出させる。
【0066】
図14(a)から
図14(c)のように、例えば蒸着法またはスパッタ法を用いて、全面にCuめっき等のめっき金属用のシードメタル46を成膜する。その後、厚さが例えば5μmから30μmのめっきレジスト44を塗布して、金属板28、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングする。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成し、金属膜28と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22b、出力端子24b、およびグランド端子26bと、を形成する。
【0067】
図15(a)から
図15(c)のように、例えばレジスト剥離液による超音波洗浄等を用いて、めっきレジスト44およびフォトレジスト47を除去する。金属板28は、複数の支持柱30で支持されていることから、圧電基板10と金属板28との間にもレジスト剥離液等が浸透し、圧電基板10と金属板28との間のフォトレジスト47も除去できる。これにより、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極の電極指上に空洞32が形成される。また、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26が形成される。
【0068】
図16(a)から
図16(c)のように、例えばスパッタ法またはSOG(spin coating on glass)塗布法により、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆い、空洞32の側面に接するように、酸化シリコン膜等の無機膜49を例えば2〜3μm程度成膜する。支持柱30の高さが1μmと低いことから、金属板28と直列共振子12および並列共振子14との間の空洞32に無機膜49が入ってきても、直列共振子12および並列共振子14に接触しない程度に抑制され、空洞32を保つことができる。
【0069】
図17(a)から
図17(c)のように、表面の平坦性を兼ねた感光性の樹脂膜51を塗布する。これにより、無機膜49と樹脂膜51とからなる絶縁部34が形成される。露光現像により、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の樹脂膜51を除去する。続いて、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の無機膜49を、CF
4等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより除去する。次いで、前述したような方法により、半田ボール36を形成する。その後、ダイシングによりウエハ状から個片化して、実施例2に係るラダー型フィルタが完成する。
【0070】
実施例2によれば、
図16(a)から
図16(c)に示したように、金属板28や支持柱30等を覆うように酸化シリコン膜等の無機膜49を成膜している。つまり、絶縁部34は、酸化シリコン膜等の無機膜49を含み、無機膜49と樹脂膜51とで形成される。そして、無機膜49が空洞32の側面に接して覆うように設けられている。このように、無機膜49が空洞32の側面に接して覆うように設けられていることで、空洞32の気密性を向上できるため、共振子の信頼性をより向上させることができる。このように絶縁部34は、樹脂以外の絶縁材を含んで形成されている場合でもよく、樹脂以外の絶縁材のみで形成されている場合でもよい。
【0071】
また、支持柱30の高さは、無機膜49の成膜において、無機膜49が空洞32内に形成された共振子に接触しない程度の流れ込みに抑えられる高さ以下である場合が好ましい。例えば、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の15倍以下である場合が好ましく、10倍以下である場合がより好ましい。