特許第5654418号(P5654418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654418
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 5/16 20060101AFI20141218BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20141218BHJP
【FI】
   H04L5/16
   H02M7/48 H
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-130113(P2011-130113)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2012-257153(P2012-257153A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302038844
【氏名又は名称】東芝シュネデール・インバータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新家 惇
(72)【発明者】
【氏名】西村 博道
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−312253(JP,A)
【文献】 特開2000−078150(JP,A)
【文献】 特開2001−292150(JP,A)
【文献】 特開平03−032133(JP,A)
【文献】 特開2009−010702(JP,A)
【文献】 特開平04−326831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 5/16
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ主回路と、
一対の通信線を通じた半二重通信により外部機器との間でデータの送受信を行うとともに前記インバータ主回路の制御を行う制御手段と、
前記制御手段から与えられる送信用データを一対の差動信号に変換して前記一対の通信線に出力する送信信号変換手段と、
前記一対の通信線から取得される一対の差動信号を受信用データに変換して前記制御手段に出力する受信信号変換手段と、
前記一対の通信線から取得される一対の差動信号を観測用データに変換する観測信号変換手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記送信信号変換手段が送信可能状態とされて前記送信用データの送信が指令される第1時点から所定の待ち時間だけ、前記送信用データの出力を待機させ前記待ち時間が経過すると前記送信用データを出力する待機手段と、
前記送信用データと、その送信用データに対応した前記観測用データとを比較し、各データが一致しない場合、前記半二重通信においてコリジョンが発生していると判断する検出手段と、
前記待機手段により前記待ち時間が経過して前記送信用データが出力された後、前記検出手段により前記コリジョンの発生が検出されると、そのコリジョンの発生が検出された第2時点より前であり且つ前記送信信号変換手段が送信可能状態になった時点以降の第3時点から、そのコリジョンの発生が検出されなくなる第4時点までの時間を前記待ち時間として設定する時間設定制御を実行する待ち時間設定手段と、を備えていることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記待ち時間設定手段による前記時間設定制御の実行を許可または禁止する時間設定制御可否手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記コリジョンの発生が検出された際における送信用データを再度送信するリトライ制御を実行するリトライ手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記リトライ手段による前記リトライ制御の実行を許可または禁止するリトライ制御可否手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記待ち時間設定手段は、
前記時間設定制御の実行中、前記検出手段による前記コリジョンの検出動作の実行回数をカウントするカウンタを備え、
前記カウンタのカウント値が所定のしきい値を超えると、前記第3時点から前記カウント値が前記しきい値を超えた第5時点までの時間を前記待ち時間に設定して前記時間設定制御を終了することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
マイクロコンピュータであり、
前記受信信号変換手段から出力される前記受信用データと、前記観測信号変換手段から出力される前記観測用データとを同一の入力ポートを通じて受信するように構成され、
前記外部機器からのデータを受信する際に前記入力ポートを前記受信用データの受信用に設定し、前記外部機器に対しデータを送信する際に前記入力ポートを前記観測用データの受信用に設定するポート設定切替手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記送信信号変換手段、前記受信信号変換手段および前記観測信号変換手段は、1組のドライバおよびレシーバを有するトランシーバにより構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置と、インバータ装置を制御するPLC(Programmable Logic Controller)などの上位側コントローラとの間では、通信によりデータを送受信してパラメータの設定やインバータの駆動制御などが行われる。その通信としては、例えばRS485通信などの一対の差動信号を用いた半二重通信方式が広く用いられている。半二重通信方式は、データの送受信を同時に行うことはできない。また、通信に差動信号が用いられるため、差動信号とデータ(ディジタル信号)との相互変換を行うためのレシーバ/ドライバが必要となる。そのため、送受信が切り替わる際にはレシーバ/ドライバの切り替えが行われる。このような通信の際、インバータ装置および上位側コントローラの双方が送信状態であると、コリジョンの発生により通信データ(送信データ)が破損する。
【0003】
例えば、上位側コントローラからインバータ装置に対し、所定のデータを送信した後、インバータ装置から上位側コントローラに対し、返信データを送信する状況を想定する。この場合、インバータ装置がデータを受信してから返信データを送信するまでの時間よりも、上位側コントローラのレシーバ/ドライバの切り替えに要する時間のほうが長いと、双方が送信状態となる期間が生じてコリジョンが発生することになる。従って、インバータ装置と、レシーバ/ドライバの切り替え時間が比較的長い上位側コントローラとの間で通信が行われる際、コリジョンが多発して伝送効率が著しく低下することが懸念される。
【0004】
そのため、インバータ装置には、データを受信した後、上位側コントローラに対する返信データの送信を所定の待ち時間だけ待機する機能が設けられていることが多い。その機能により、通信データのコリジョンの発生を未然に防ぐことを可能としている。上記待ち時間は、例えばパラメータなどの設定を通じてユーザにより指定されるようになっている。その理由は、通信対象の上位側コントローラの仕様などにより、レシーバ/ドライバの切り替え時間は様々であり、待ち時間を一義的に決定することが難しいからである。なお、このような半二重通信を行う際における送信待ち時間を設定する機能については、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
上記構成においては、インバータ装置および上位側コントローラの仕様を十分に理解したユーザでなければ、適切な待ち時間を設定することが難しい。しかし、毎回、各装置に関する知識を豊富に持つユーザ(熟練者)により待ち時間の設定が行われるとは限らず、知識を十分に持たないユーザ(初心者)により待ち時間が設定されることも有り得る。このような場合、コリジョンの発生を防止できなかったり、あるいは、むやみに長い待ち時間が設定されてしまい逆に通信効率が低下したりするといった問題の発生が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−178199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、外部機器との間で行われる半二重通信における通信データのコリジョンの発生を容易に且つ効果的に防止することができるインバータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のインバータ装置は、インバータ主回路、制御手段、送信信号変換手段、受信信号変換手段および観測信号変換手段を備えている。制御手段は、一対の通信線を通じた半二重通信により外部機器との間でデータの送受信を行うとともにインバータ主回路の制御を行う。送信信号変換手段は、制御手段から与えられる送信用データを一対の差動信号に変換して一対の通信線に出力する。受信信号変換手段は、一対の通信線から取得される一対の差動信号を受信用データに変換して制御手段に出力する。観測信号変換手段は、一対の通信線から取得される一対の差動信号を観測用データに変換する。また、制御手段は、待機手段、検出手段および待ち時間設定手段を備えている。待機手段は、送信信号変換手段が送信可能状態とされて送信用データの送信が指令される第1時点から所定の待ち時間だけ、送信用データの出力を待機させ待ち時間が経過すると送信用データを出力する。検出手段は、送信用データと、その送信用データに対応した観測用データとを比較し、各データが一致しない場合、半二重通信においてコリジョンが発生していると判断する。待ち時間設定手段は、待機手段により待ち時間が経過して送信用データが出力された後、検出手段によりコリジョンの発生が検出されると、そのコリジョンの発生が検出された第2時点より前であり且つ送信信号変換手段が出力可能な状態になった時点以降の第3時点から、そのコリジョンの発生が検出されなくなる第4時点までの時間を待ち時間として設定する時間設定制御を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示すもので、インバータ装置およびPLCの構成を概略的に示すブロック図
図2】インバータ装置の通信に関する動作の流れを示すフローチャート
図3】時間設定制御の内容を示すフローチャート
図4】時間設定制御によって設定される待ち時間を示す図
図5】一対の通信線間の電圧波形を示す図
図6】第2の実施形態を示す図1相当図
図7図2相当図
図8】第3の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1図5を参照しながら説明する。
図1は、インバータ装置およびPLCの構成を示すブロック図であり、主に通信に関する部分を示している。インバータ装置1は、ドライバ2(送信信号変換手段に相当)、レシーバ3(受信信号変換手段に相当)、レシーバ4(観測信号変換手段に相当)、制御回路5(制御手段に相当)、インバータ主回路6などを備えている。PLC7(外部機器に相当)は、ドライバ8、レシーバ9、制御回路10などを備えている。インバータ装置1の通信端子11、12とPLC7の通信端子13、14とは一対の通信線15、16(差動信号伝送路)により互いに接続されている。インバータ装置1およびPLC7の間では、通信線15、16を通じた半二重通信方式の通信(例えばRS485通信)が行われる。上記通信によりデータの送受信が行われることで、各種パラメータの設定やインバータ主回路6の駆動制御など、PLC7によるインバータ装置1の制御が実施される。
【0011】
インバータ装置1において、ドライバ2は、制御回路5から与えられる送信用ディジタル信号Sd1を一対の差動信号に変換して出力する。それら差動信号は、通信端子11、12を介して通信線15、16に与えられる。具体的には、ドライバ2は、制御回路5から与えられる送信用ディジタル信号Sd1を互いに逆位相となる一対の差動信号に変換し、それら差動信号が伝送されるように通信線15、16をドライブする。一対の差動信号は、例えば一方が+5.0Vであるときには他方が0Vになるものである。
【0012】
レシーバ3は、通信端子11、12を介して通信線15、16から取得される一対の差動信号を受信用ディジタル信号Sd3に変換して出力する。受信用ディジタル信号Sd3は、制御回路5に与えられる。レシーバ4は、通信端子11、12を介して通信線15、16から取得される一対の差動信号を観測用ディジタル信号Sd2に変換して出力する。観測用ディジタル信号Sd2は、制御回路5に与えられる。なお、本実施形態では、ドライバ2およびレシーバ3、4は、それぞれ個別に構成されているが、ドライバ2およびレシーバ3として、ドライバ/レシーバが一体構成された一般的なトランシーバICなどを用いてもよい。また、レシーバ4として、トランシーバICのレシーバを用いてもよい。各ディジタル信号Sd1〜Sd3は、いずれもシリアルデータを示すものである。具体的には、送信用ディジタル信号Sd1は後述する送信用データD1を表す信号であり、観測用ディジタル信号Sd2は後述する観測用データD2を表す信号であり、受信用ディジタル信号Sd3は後述する受信用データD3を表す信号である。
【0013】
ドライバ2は、差動信号を出力可能な状態、つまり通信線15、16をドライブする送信可能状態と、差動信号を出力できない状態、つまり通信線15、16をドライブしない送信不可状態とを切り替え可能に構成されている。インバータ装置1は、ドライバ2が送信可能状態に設定されることにより、ドライバ2を通じてPLC7にデータを送信する送信状態となる。また、インバータ装置1は、ドライバ2が送信不可状態に設定されることにより、レシーバ3を通じてPLC7から送信されるデータを受信する受信状態となる。このようなドライバ2およびレシーバ3の状態切り替え、つまりインバータ装置1におけるレシーバ/ドライバの切り替えは、制御回路5により制御される。
【0014】
制御回路5は、例えばCPUやメモリなどの基本構成の他、A/D変換器、I/Oポート、通信I/Fなどの周辺回路を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御回路5は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、制御部17、データ送信部18、データ受信部19、観測用データ受信部20、通信データ処理部21、待機部22(待機手段に相当)、記憶部23、パラメータ設定部24、検出部25(検出手段に相当)、待ち時間設定部26(待ち時間設定手段に相当)、リトライ部27(リトライ手段に相当)などの機能を実現するようになっている。制御部17は、PLC7との間において通信によりデータの送受信を行うとともに、インバータ主回路6の駆動などを制御する。
【0015】
データ送信部18、データ受信部19および観測用データ受信部20は、マイクロコンピュータのI/Oポートがそれぞれ次のように割り当てられることで実現されている。すなわち、データ送信部18は、通信データ処理部21から待機部22を介して与えられる送信用データD1を送信用ディジタル信号Sd1に変換して出力するための出力ポートとして割り当てられている。データ送信部18から出力される送信用ディジタル信号Sd1は、ドライバ2に与えられる。データ受信部19は、レシーバ3から与えられる受信用ディジタル信号Sd3を受信用データD3に変換して入力するための入力ポートとして割り当てられている。データ受信部19から出力される受信用データD3は、通信データ処理部21に与えられる。観測用データ受信部20は、レシーバ4から与えられる観測用ディジタル信号Sd2を観測用データD2に変換して入力するための入力ポートとして割り当てられている。観測用データ受信部20から出力される観測用データD2は、記憶部23に順次記憶される。
【0016】
通信データ処理部21は、制御部17からデータの送信を指令するコマンドが与えられると、送信用データD1を待機部22に出力する。また、このとき、その送信用データD1は、記憶部23に順次記憶される。待機部22は、送信用データD1が与えられると、所定の待ち時間Twだけ待機した後、その送信用データD1をデータ送信部18に出力する。通信データ処理部21は、データ受信部19から受信用データD3が与えられると、その受信用データD3に応じた内容のコマンドを制御部17に出力する。
【0017】
記憶部23は、不揮発性のメモリにより構成されており、その記憶内容はインバータ装置1に対する電源供給が遮断されても消去されないようになっている。記憶部23には、インバータ主回路6の駆動制御に関する各種パラメータ、通信に関する各種パラメータを含む種々のパラメータの値が記憶される。また、記憶部23には、前述したとおり、送信用データD1および観測用データD2も記憶される。
【0018】
記憶部23に記憶される各種パラメータの値は適宜変更可能になっている。すなわち、ユーザによる操作に応じてパラメータの値が変更され、その変更後の値が記憶部23に記憶されるようになっている。このようなパラメータ値の変更は、パラメータ設定部24により実施される。パラメータ設定部24は、ユーザによりパラメータを設定するための操作が行われると、その操作に応じてパラメータの値を変更し、その変更後の値を記憶部23に記憶する。
【0019】
送信用データD1(送信用ディジタル信号Sd1)と、その送信用データD1に対応する観測用データD2(観測用ディジタル信号Sd2)とは、通信に何らかの不具合が生じていない限り一致するはずである。検出部25は、このようなことを利用して通信におけるコリジョンの発生を検出するようにしている。すなわち、検出部25は、送信用データD1と、その送信用データD1に対応する観測用データD2とを比較し、各データが一致しない場合、通信においてコリジョンが発生していると判断する。具体的には、検出部25は、送信用データD1と、その送信用データD1が送信されたタイミングから所定の遅延時間だけ経過した後のタイミングで受信された観測用データD2とを記憶部23から順次読み出し、それら各データD1、D2を比較する。上記した遅延時間は、待ち時間Twの設定値、ドライバ2、レシーバ4などにおける信号処理に要する時間などに基づいて求められる。また、本実施形態では、送信用データD1が1バイト単位で送信されるようになっているとともに、送信用データD1および観測用データD2の比較が1バイト毎に行われるようになっている。
【0020】
検出部25は、上記比較の結果を表す検出信号Saを出力する。本実施形態では、検出信号Saは、各データD1、D2が一致する場合(コリジョン発生していないと判断された場合)にはLレベルになり、各データD1、D2が一致しない場合(コリジョンが発生していると判断された場合)にはHレベルになる。検出部25から出力される検出信号Saは、待ち時間設定部26およびリトライ部27に与えられる。
【0021】
待ち時間設定部26は、検出部25から与えられる検出信号Saのレベルなどに基づいて、待ち時間Twを設定する時間設定制御(詳細は後述する)を実行可能に構成されている。待ち時間設定部26は、制御部17から与えられる指令に応じて上記時間設定制御を実行するようになっている。すなわち、制御部17は、待ち時間設定部26による時間設定制御の実行を許可または禁止する時間設定制御可否手段として機能する。待ち時間設定部26により設定された待ち時間Twは、記憶部23に記憶される。また、待ち時間設定部26は、時間設定制御において用いるためのカウンタ28を備えている。
【0022】
リトライ部27は、検出部25から与えられる検出信号Saのレベルなどに基づいて、コリジョン発生期間に送信された送信用データD1を再度送信するリトライ制御(詳細は後述する)を実行可能に構成されている。リトライ部27は、制御部17から与えられる指令に応じて上記リトライ制御を実行するようになっている。すなわち、制御部17は、リトライ部27によるリトライ制御の実行を許可または禁止するリトライ制御可否手段として機能する。なお、制御部17は、記憶部23に記憶されるパラメータの値に応じてリトライ制御の実行を許可または禁止する。なお、そのパラメータ値は、インバータ装置1の仕様として固定値にしてもよいし、ユーザによる値の変更が可能なパラメータとしてもよい。
【0023】
インバータ主回路6は、交流電源29に接続される整流回路30、直流電源線31、32間に接続される平滑用のコンデンサ33、負荷である電動機34が接続されるインバータ部35などを備えている。整流回路30は、直流電源線31、32間にダイオードをブリッジ接続して構成されている。インバータ部35は、直流電源線31、32間にスイッチング素子をブリッジ接続して構成されている。インバータ部35のスイッチング素子の制御端子には、制御部17から図示しない駆動回路を介して制御信号が与えられている。
【0024】
PLC7において、ドライバ8は、制御回路10から与えられる送信用ディジタル信号を一対の差動信号に変換して出力する。それら差動信号は、通信端子13、14を介して通信線15、16に与えられる。ドライバ8の具体的な動作としてはインバータ装置1のドライバ2と同様である。レシーバ9は、通信端子13、14を介して通信線15、16から取得される一対の差動信号を受信用ディジタル信号に変換して出力する。その受信用ディジタル信号は、制御回路10に与えられる。なお、本実施形態では、ドライバ8およびレシーバ9は、それぞれ個別に構成されているが、ドライバ8およびレシーバ9として、ドライバ/レシーバが一体構成された一般的なトランシーバICなどを用いてもよい。また、上記した送信用ディジタル信号および受信用ディジタル信号は、いずれもシリアルデータを示すものである。
【0025】
ドライバ8は、インバータ装置1のドライバ2と同様に、差動信号を出力可能な送信可能状態と、差動信号を出力できない送信不可状態とを切り替え可能に構成されている。PLC7は、ドライバ8が送信可能状態に設定されることにより、ドライバ8を通じてインバータ装置1にデータを送信する送信状態となる。また、PLC7は、ドライバ8が送信不可状態に設定されることにより、レシーバ9を通じてインバータ装置1から送信されるデータを受信する受信状態となる。このようなドライバ8およびレシーバ9の状態切り替え、つまりPLC7におけるレシーバ/ドライバの切り替えは、制御回路10により制御される。
【0026】
制御回路10は、インバータ装置1の制御回路5と同様に、マイクロコンピュータを主体として構成されている。制御回路10は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、制御部36、データ送信部37、データ受信部38、通信データ処理部39などの機能を実現するようになっている。制御部36は、インバータ装置1との間において通信によりデータの送受信を行うとともに、PLC7の動作全般を制御する。
【0027】
データ送信部37およびデータ受信部38は、マイクロコンピュータのI/Oポートがそれぞれ次のように割り当てられることで実現されている。すなわち、データ送信部37は、通信データ処理部39から与えられる送信用データを送信用ディジタル信号に変換して出力するための出力ポートとして割り当てられている。データ送信部37から出力される送信用ディジタル信号は、ドライバ8に与えられる。データ受信部38は、レシーバ9から与えられる受信用ディジタル信号を受信用データに変換して入力するための入力ポートとして割り当てられている。データ受信部38から出力される受信用データは、通信データ処理部39に与えられる。
【0028】
通信データ処理部39は、制御部36からデータの送信を指令するコマンドが与えられると、送信用データをデータ送信部37に出力する。通信データ処理部39は、データ受信部38から受信用データが与えられると、その受信用データに応じた内容のコマンドを制御部36に出力する。
【0029】
次に、本実施形態の作用および効果について図2図5も参照して説明する。
ここでは、PLC7からインバータ装置1に対し、インバータ装置1を制御するための制御データが送信された後、インバータ装置1からPLC7に対し、返信データが送信される、という状況におけるインバータ装置1側の動作を主体に説明する。図2は、上記状況におけるインバータ装置1の通信に関する動作の流れを表すフローチャートである。
【0030】
まず、PLC7の制御回路10から制御データが出力されると、ドライバ8からその制御データを表す差動信号が出力される。なお、このとき、インバータ装置1は受信状態であり、ドライバ2は送信不可状態に設定されている。このようにして差動信号が出力されると、インバータ装置1の制御回路5には、通信線15、16およびレシーバ3などを通じて制御データを表す受信用ディジタル信号Sd3が与えられる(ステップS1)。そして、これを受けて、制御回路5において返信データが生成される(ステップS2)。
【0031】
続いて、ドライバ2が送信可能状態に設定されるとともに、制御部17が返信データである送信用データD1の送信を指令する(ステップS3)。ただし、送信用データD1の実際の送信は、待機部22の機能によって、受信用データD3(制御データ)を受信した時点(第1時点に相当)から待ち時間Twの間だけ待機される(ステップS4)。なお、待ち時間Twの初期値はゼロ(=待ち時間無し)に設定されている。待ち時間Twが経過すると(ステップS4で「YES」になると)、待機部22から送信用データD1が出力される。これにより、データ送信部18を通じてドライバ2から返信データを表す差動信号が出力される。また、この際、制御回路5は、レシーバ4などを介して観測用ディジタル信号Sd2を取得する(ステップS5)。その後、検出部25において、送信用データD1およびそれに対応した観測用データD2が比較されることにより、コリジョンの発生が監視される(ステップS6)。
【0032】
上記監視の結果、コリジョンの発生が検出されない場合(ステップS6で「NO」)、ステップS7に進む。ステップS7では、ドライバ2が送信不可状態に設定され(インバータ装置1が受信状態に設定され)、処理が終了する(END)。一方、上記監視の結果、コリジョンの発生が検出された場合(ステップS6で「YES」)、ステップS8に進む。ステップS8では、時間設定制御の実行が許可されているか否かが判断される。
【0033】
本実施形態では、インバータ装置1の起動後、最初にデータ送信が行われる際、つまり図2のフローチャートに示す制御が実行される際には必ず時間設定制御の実行が許可される。その後は、時間設定制御が実行された結果、待ち時間Twの更新がN回(Nは1以上の整数)無ければ、次からは時間設定制御の実行が禁止されるようになっている。また、Nの値は、インバータ装置1の仕様として固定値にしてもよいし、ユーザによる値の変更が可能なパラメータとして記憶部23に記憶するようにしてもよい。また、待ち時間Twの更新回数の判定については、累積回数でもよいし、連続回数でもよい。
【0034】
時間設定制御の実行が許可されている場合(ステップS8で「YES」)、時間設定制御が実行される(ステップS9)。図3は、時間設定制御の内容を表すフローチャートである。時間設定制御が開始されると、ステップT1において、カウンタ28のカウント値cntがゼロに初期化される(cnt=0)。続くステップT2では、カウント値cntがインクリメントされる(cnt=cnt+1)。
【0035】
そして、制御部17は、さきほど送信した送信用データD1の先頭1バイト分のデータの送信を指令する(ステップT3)。この際、待機部22においてデータの送信は待機されず、直ちにドライバ2から送信用データD1の先頭1バイト分のデータに対応した差動信号が出力される。また、この際、制御回路5は、レシーバ4などを介して観測用ディジタル信号Sd2を取得する。なお、ここで送信される送信用データD1の先頭1バイト分のデータは、例えば送信バッファに残されたものを利用すればよい。その後、検出部25において、送信用データD1の先頭1バイト分のデータと、それに対応した1バイト分の観測用データD2とが比較されることにより、コリジョンの発生が監視される(ステップT4)。
【0036】
上記監視の結果、コリジョンの発生が検出された場合(ステップT4で「YES」)、ステップT5に進む。ステップT5では、カウント値cntがしきい値nより大きいか否かが判断される。カウント値cntがしきい値n以下である場合(ステップT5で「NO」)、ステップT2に戻り、ステップT2〜T4の処理が再度実行される。一方、コリジョンの発生が検出されない場合(ステップT4で「NO」)、あるいは、カウント値cntがしきい値nより大きい場合(ステップT5で「YES」)、ステップT6に進む。ステップT6では、ドライバ2が送信可能状態に設定された時点から現時点までの時間が待ち時間Twに設定され、処理が終了する(RETURN)。
【0037】
時間設定制御が終了した場合、あるいは、時間設定制御の実行が禁止されている場合(ステップS8で「NO」)、ステップS10に進む。ステップS10では、リトライ制御の実行が許可されているか否かが判断される。リトライ制御の実行が禁止されている場合(ステップS10で「NO」)、リトライ制御が実行されることなく、ステップS7に進む。一方、リトライ制御の実行が許可されている場合(ステップS10で「YES」)、リトライ制御が実行される(ステップS11)。リトライ制御においては、さきほど送信を試みた返信データである送信用データD1の送信が再度実行される。なお、ここで送信される送信用データD1は、例えば送信バッファに残されたものを利用すればよい。リトライ制御の実行後はステップS7に進み、その後処理が終了する(END)。
【0038】
図4は、上記処理により設定される待ち時間Twを表すタイミング図である。なお、図4では、PLC7側のレシーバ/ドライバの切り替え、つまりドライバ8およびレシーバ9の状態切り替え時間が比較的長い場合を想定しており、このときに設定されている待ち時間Tw(例えば初期値であるゼロ)ではコリジョンが発生する、と仮定している。図4の時刻t1の時点は、図2におけるステップS3の時点であり、ドライバ2が送信可能状態に設定される時点である。この時刻t1の時点においては、インバータ装置1から返信データに相当する差動信号が出力されていないため、PLC7側の状態にかかわらず、コリジョンは発生していない。そして、時刻t2の時点は、図2におけるステップS4で「YES」となる時点であり、待機部22から送信用データD1が出力される時点である。この時刻t2の時点においても、未だ差動信号は出力されていないため、コリジョンは発生していない。
【0039】
時刻t3の時点は、図3におけるステップS5の時点であり、ドライバ2から差動信号の出力が開始される時点である。この時刻t3の時点以降は、PLC7側が送信状態である限りコリジョンが発生することになる。そして、時刻t4の時点は、図3におけるステップS6で「YES」となる時点であり、最初にコリジョンが検出される時点(第2時点に相当)である。この時刻t4の時点以降、時間設定制御が実行されることになる。その時間設定制御において、時刻t5の時点までコリジョンが検出される。そして、時刻t6の時点は、PLC7においてレシーバ/ドライバの切り替えが完了し、PLC7が受信状態となる時点である。従って、この時刻t6の時点以降は、コリジョンが発生しない。そのため、時刻t7の時点(第4時点に相当)では、コリジョンが検出されなくなる。
【0040】
本実施形態の時間設定制御によれば、ドライバ2が送信可能状態に設定される時刻t1の時点から、時間設定制御が開始された後に初めてコリジョンが検出されなくなる時刻t7の時点までの期間が待ち時間Twとして設定される。一方、このときのコリジョン発生期間は、図4の時刻t3〜時刻t6までの期間となる。すなわち、設定される待ち時間Twは、このときのコリジョン発生期間に比べて確実に長い期間となる。このようにして設定された待ち時間Twが次回以降の通信において用いられることにより、コリジョンの発生を回避することが可能となる。
【0041】
図5は、通信線15、16間の電圧波形、つまり差動信号の波形を示している。図5において、(a)はコリジョンが発生する通信異常状態を示し、(b)はコリジョンが発生しない通信正常状態を示している。なお、ここでも、PLC7からインバータ装置1に対して制御データが送信された後、インバータ装置1からPLC7に対して返信データが送信されるという状況を想定している。
【0042】
従来技術では、待ち時間をユーザが設定するため、PLC7側のレシーバ/ドライバの切り替え時間に対し、設定された待ち時間が十分長くない場合には、図5(a)に示すようにコリジョンが発生するおそれがある。図5(a)では、2度目の通信時、PLC7側のレシーバ/ドライバの切り替えが完了する前に、インバータ装置1から返信データを表す差動信号が送信されてしまい、コリジョンが発生している。一方、本実施形態によれば、時間設定制御により自動的に最適な待ち時間が設定されるため、コリジョンの発生を防止できる。図5(b)に示すように、時間設定制御により設定される待ち時間がPLC7側のレシーバ/ドライバの切り替え時間よりも十分に長いため、1度目の通信時および2度目の通信時のいずれにおいても返信データを表す差動信号が正常に送信されている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のインバータ装置1は、PLC7からのデータを受信した後、PLC7に対して返信データを送信する際、上記データを受信した時点から待ち時間Twだけ待機した後、返信データを送信するようになっている。また、待ち時間Twは、データ送信時に時間設定制御が実行されることにより、その際にコリジョンが発生している期間よりも確実に長く、且つ、むやみに長くない時間に自動的に設定される。つまり、本実施形態のインバータ装置1は、PLC7側のレシーバ/ドライバの切り替え時間に合わせて最適な待ち時間Twを設定する。そのため、PLC7側のレシーバ/ドライバの切り替え時間に関係なく、インバータ装置1とPLC7との間で行われる半二重通信における通信データのコリジョンの発生を容易に且つ効果的に防止することができる。
【0044】
通信において、遅延が生じる要因としては待ち時間Twの設定ミスだけでなく、他のパラメータ(例えば、ボーレート、通信対象とするインバータ装置を表す番号など)の設定ミス、通信経路の断線、通信経路において重畳する外乱ノイズの影響など、様々な要因が考えられる。このように数多く存在する要因の中から、通信遅延がコリジョンによるものであるか否かを正確に判断することは極めて困難である。本実施形態のインバータ装置1によれば、前述したように最適な待ち時間が自動的に設定されるので、仮に通信遅延が生じた場合には、待ち時間Twの設定以外の要因を調査すればよい。そのため、通信遅延の原因究明を比較的容易に行い得るようになるという効果も得られる。
【0045】
コリジョン発生期間の長さは、同一のシステム構成であっても、毎回同じ長さであるとは限らない。本実施形態の時間設定制御においては、前回よりもコリジョン発生期間が長い場合には待ち時間Twが随時更新される。そのため、待ち時間Twは、その時点における最も長いコリジョン発生期間よりも確実に長い時間に設定されることになる。従って、時間設定制御が繰り返し実行されることにより、コリジョンの発生を防止するという効果を一層確実に得ることが可能な待ち時間Twが設定されることになる。
【0046】
また、時間設定制御が実行された結果、待ち時間Twの更新がN回無ければ、次からは時間設定制御の実行が禁止されるようになっている。このような構成により、次のような効果が得られる。すなわち、時間設定制御が何度か実行されたにもかかわらず、待ち時間Twが更新されない場合、待ち時間Twは、想定される最も長いコリジョン発生期間よりも長い時間に既に設定されている可能性が高い。このような場合、時間設定制御を実行する必要性が低い。このような条件でもって時間設定制御の実行を禁止することで、例えば、コリジョン以外の通信異常(例えば通信経路における断線やノイズによる影響など)が生じたことにより、意図せず時間設定制御が実行されてしまう事態を未然に防止できる。
【0047】
リトライ部27は、コリジョン発生期間に送信が試みられた送信用データD1を再度送信するリトライ制御を実行可能に構成されている。このリトライ制御が実行されることにより、コリジョンの発生により破棄されるはずであったデータをPLC7に対し正常に送信することが可能となる。また、リトライ部27によるリトライ制御の実行は、制御部17から与えられる指令に応じて許可または禁止されるようになっている。インバータ装置1とPLC7との間にて送受信されるデータが、リアルタイム性が要求されるものである場合、リトライ制御により正常にデータ送信が行われたとしても、データ送信に遅延があるため、そのデータが意味をなさない可能性が高い。そして、再送信されるデータは、リトライ制御が繰り返されるほど意味をなさないことになる。このような場合、リトライ制御の実行を完全に禁止したり、あるいは、リトライ制御の実行回数を制限したりするとよい。これにより、コリジョンが発生している期間は正常にデータが送信されない可能性が高くなるが、コリジョンの発生が解消されれば、直ちにデータがリアルタイムで送信されることになる。
【0048】
待ち時間設定部26が備えるカウンタ28は、時間設定制御の実行中、検出部25によるコリジョンの検出動作(ステップT4)の実行回数をカウントするためのものである。そして、待ち時間設定部26は、カウント値cntが所定のしきい値nを超えると(ステップT5での「YES」)、ドライバ2を送信状態に設定した時点からカウント値cntがしきい値nを超えた時点(第5時点に相当)までの時間を待ち時間Twに設定して時間設定制御を強制的に終了する。このようにすれば、コリジョン以外の通信異常(通信経路における断線やノイズによる影響)が原因で正常に通信できない状態が継続するような事態が生じている場合に、時間設定制御において無限ループに陥ることを回避することができる。なお、しきい値nは、想定される最も長いコリジョン発生期間に合わせて設定すればよい。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図6および図7を参照しながら、第1の実施形態と異なる部分を主体に説明する。
図6は、第1の実施形態における図1相当図であり、本実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態のインバータ装置41は、第1の実施形態のインバータ装置1に対し、制御回路5に代えて制御回路42(制御手段に相当)を備えている点が異なっている。制御回路42は、基本的な構成については制御回路5と同様であるが、観測用データ受信部20に代えて受信信号切替部43(ポート設定切替手段に相当)を備えている点が異なっている。
【0050】
受信信号切替部43は、レシーバ3から与えられる受信用ディジタル信号Sd3およびレシーバ4から与えられる観測用ディジタル信号Sd2を同一のI/Oポート(入力ポート)を通じて受信するために設けられたものである。具体的には、受信信号切替部43は、インバータ装置41が受信状態に設定される場合には受信用ディジタル信号Sd3をデータ受信部19に与え、インバータ装置41が送信状態に設定される場合には観測用ディジタル信号Sd2をデータ受信部19に与える。このように、本実施形態のデータ受信部19は、PLC7からのデータを受信する際に受信用ディジタル信号Sd3を受信用データD3に変換して入力するための入力ポートとして割り当てられ、PLC7に対しデータを送信する際に観測用ディジタル信号Sd2を観測用データD2に変換して入力するための入力ポートとして割り当てられる。データ受信部19から出力される受信用データD3は、通信データ処理部21に与えられる。また、データ受信部19から出力される観測用データD2は、記憶部23に順次記憶される。
【0051】
次に、本実施形態の作用および効果について図7も参照して説明する。
図7は、第1の実施形態における図2相当図であり、インバータ装置41の通信に関する動作の流れを表すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、図1に示すフローチャートに対し、ステップS2、S3間にステップU1が追加されている点と、ステップS6、S7間にステップU2が追加されている点とが異なっている。
【0052】
図7のフローチャートが実行される際、受信信号切替部43は、受信用ディジタル信号Sd3をデータ受信部19に与えられる状態となっている。そして、ステップS2が実行された後、受信信号切替部43は、観測用ディジタル信号Sd2をデータ受信部19に与える状態に切り替えられる(ステップU1)。なお、ステップS3が実行された後にステップU1が実行されるように変更してもよい。また、ステップS6で「NO」となった後、ステップS10で「NO」となった後、または、ステップS11が実行された後、ステップU2が実行される。ステップU2において、受信信号切替部43は、受信用ディジタル信号Sd3をデータ受信部19に与える状態に切り替えられる。なお、ステップS7が実行された後にステップU2が実行されるように変更してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のインバータ装置41は、マイクロコンピュータを主体として構成された制御回路42を備えている。そして、レシーバ3から出力される受信用ディジタル信号Sd3と、レシーバ4から出力される観測用ディジタル信号Sd2とを、データ受信部19を通じて受信するように構成されている。このような構成によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。さらに、観測用ディジタル信号Sd2および受信用ディジタル信号Sd3を同一のI/Oポートを通じて受信可能となるため、制御回路42を構成するマイクロコンピュータにおいて使用される通信リソースが削減されるという効果が得られる。
【0054】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図8を参照しながら、第1の実施形態と異なる部分を主体に説明する。
図8は、第1の実施形態における図1相当図であり、本実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態のインバータ装置51は、第1の実施形態のインバータ装置1に対し、制御回路5に代えて制御回路52(制御手段に相当)を備えている点と、ドライバ2およびレシーバ3に代えてドライバ53(送信信号変換手段に相当)およびレシーバ54(受信信号変換手段および観測信号変換手段に相当)を備えている点と、レシーバ4が省かれている点とが異なっている。制御回路52は、基本的な構成については制御回路5と同様であるが、データ受信部19に代えてデータ受信部55を備えている点と、観測用データ受信部20が省かれている点とが異なっている。
【0055】
本実施形態のドライバ53およびレシーバ54は、一体的に構成された1チップのトランシーバ56であり、ドライバ53側で通信線15、16をドライブしながらレシーバ54側で通信線15、16から差動信号を取得することが可能となっている。そのため、レシーバ54は、インバータ装置51が受信状態に設定される場合には受信用ディジタル信号Sd3をデータ受信部55に与え、インバータ装置51が送信状態に設定される場合には観測用ディジタル信号Sd2をデータ受信部55に与えることができる。
【0056】
データ受信部55は、受信用ディジタル信号Sd3および観測用ディジタル信号Sd2を受信用データD3および観測用データD2に変換して入力するための入力ポートとして割り当てられている。データ受信部55は、インバータ装置51が受信状態に設定されている状態で与えられるディジタル信号(受信用ディジタル信号Sd3)を受信用データD3に変換して通信データ処理部21に出力する。また、データ受信部55は、インバータ装置51が送信状態に設定されている状態で与えられるディジタル信号(観測用ディジタル信号Sd2)を観測用データD2に変換して記憶部23に順次記憶する。本実施形態では、このような構成により、レシーバ54から与えられる受信用ディジタル信号Sd3および観測用ディジタル信号Sd2を同一のI/Oポート(入力ポート)を通じて受信することを可能としている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のインバータ装置51は、マイクロコンピュータを主体として構成された制御回路52およびトランシーバ56を備えている。トランシーバ56は、ドライバ53側で通信線15、16をドライブしながらレシーバ54側で差動信号を取得することが可能となっている。そして、レシーバ54から出力される受信用ディジタル信号Sd3および観測用ディジタル信号Sd2は、データ受信部55を通じて受信される。このような構成によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる上、次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、レシーバ4を省いた分だけ回路構成が簡素化されるという効果が得られる。また、本実施形態によれば、観測用ディジタル信号Sd2および受信用ディジタル信号Sd3を同一のI/Oポートを通じて受信可能となるため、制御回路52を構成するマイクロコンピュータにおいて使用される通信リソースが削減されるという効果が得られる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
必ずしも送信用データD1および観測用データD2を記憶部23に記憶させるような構成とする必要はなく、検出部25において、送信用データD1と、その送信用データD1に対応した観測用データD2との比較ができる構成であればよい。
【0059】
待ち時間設定部26による時間設定制御の実行を常に許可してもよい。つまり、図2および図7におけるステップS8による判断を省いてもよい。リトライ部27によるリトライ制御の実行を常に許可してもよい。つまり、図2および図7におけるステップS10による判断を省いてもよい。また、リトライ部27によるリトライ制御の実行を常に禁止してもよい。つまり、リトライ部27としての機能自体(図2および図7におけるステップS10、S11)を省いてもよい。
【0060】
インバータ装置1の起動後、データが所定回(少なくとも1回)送信されるまで時間設定制御の実行を許可し、その後に禁止するようにしてもよい。すなわち、インバータ装置1の起動後、待ち時間設定制御がM回(Mは1以上の整数)実行されると、時間設定制御の実行が禁止されるようにしてもよい。なお、Mの値は、インバータ装置1の仕様として固定値にしてもよいし、ユーザによる値の変更が可能なパラメータとして記憶部23に記憶するようにしてもよい。また、装置の起動直後は、CPUの動作負荷が軽くなる傾向があるため、通信においてコリジョンが発生し難い。そこで、インバータ装置1の起動後、実際にインバータ主回路6の駆動制御が開始されてから(インバータを実動作させてから)所定回数は時間設定制御の実行が許可され、その後に禁止するようにしてもよい。また、ステップS6で「NO」となる(コリジョンが検出されない)ケースが所定回数続いた場合には、待ち時間Twが既に最適値である可能性が高いため、時間設定制御の実行が禁止されるようにしてもよい。
【0061】
待ち時間Twの初期値は適宜変更可能である。
待ち時間Twは、受信用データD3を受信した後であり且つコリジョンの発生が検出される時点より前の時点(第3時点に相当)から、時間設定制御が開始された後に初めてコリジョンが検出されなくなる時点(図4の時刻t7の時点)までの時間に設定されればよい。例えば、待機部22から送信用データD1が出力される時点(図4の時刻t2の時点)から時間設定制御が開始された後に初めてコリジョンが検出されなくなる時点までの期間を待ち時間Twとして設定してもよい。
【0062】
送信用データD1の送信単位は、例えば1ワード、1ブロックなど、他のデータ単位であってもよい。また、送信用データD1の送信単位を変更した場合には、送信用データD1および観測用データD2の比較についても、その変更に合わせてデータ単位を変更すればよい。図3におけるステップT3では、送信用データD1の先頭1バイト分のデータの送信を指令するようになっていたが、例えば1ワードや1ブロックなど、他のデータ単位であってもよい。
【0063】
上記各実施形態では、1台のPLCと1台のインバータ装置との間の通信動作について本発明を適用した例を説明したが、本発明は1台のPLCと複数のインバータ装置との間の通信動作についても適用可能である。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
図面中、1、41、51はインバータ装置、2、53はドライバ(送信信号変換手段)、3はレシーバ(受信信号変換手段)、4はレシーバ(観測信号変換手段)、5、42、52は制御回路(制御手段、マイクロコンピュータ)、6はインバータ主回路、7はPLC(外部機器)、15、16は通信線、17は制御部(時間設定制御可否手段、リトライ制御可否手段)、22は待機部(待機手段)、25は検出部(検出手段)、26は待ち時間設定部(待ち時間設定手段)、27はリトライ部(リトライ手段)、28はカウンタ、43は受信信号切替手段(ポート設定切替手段)、54はレシーバ(受信信号変換手段、観測信号変換手段)、56はトランシーバを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8