(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654423
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
E06B7/14
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-174632(P2011-174632)
(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公開番号】特開2013-36265(P2013-36265A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】白井 克芳
(72)【発明者】
【氏名】本田 正
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 亮
(72)【発明者】
【氏名】永田 孫史
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−242438(JP,A)
【文献】
特開平10−018727(JP,A)
【文献】
特開2009−144509(JP,A)
【文献】
実開昭56−016794(JP,U)
【文献】
特開2006−022589(JP,A)
【文献】
特開昭62−220687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/14−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、枠に室外側に開くように支持した扉とを備え、扉は、戸先部の室外側面に戸先側に突出する煙返しが形成してあると共に、煙返しの上端部にキャップが取付けてあり、キャップは、天板部と、天板部の室内側縁部に設けた立ち上がり片を有し、立ち上がり片は横枠の室外側見付面よりも室内側に位置しており、横枠は下面の室外側端部に垂下するヒレ片を有し、ヒレ片はキャップの立ち上がり片に当接していることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外側に開く扉を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の出入口や窓に用いられる両開き戸においては、
図7に示すように、一方の扉90の戸先部の室外側面に扉間の隙間91を隠すための煙返し92が戸先側に突出して形成されており、煙返し92の上端のエッジに手の指等が触れて怪我をするのを防ぐために、煙返し92の上端部に樹脂製のキャップ93を取付けている。
煙返し92は、上枠の室外側見付面94よりも室外側に突出しており、キャップ93は単に煙返し92を被っているだけなので、上方から見るとキャップ93と上枠の室外側見付面94との間に孔95が開いた状態になっており、台風などの強い雨風のときにはその孔95から雨水が扉間の隙間91に浸入し、室内側に漏水することがあった。
片開きの扉においても同様に、戸先部の煙返しのキャップの室内側に上方から雨水が浸入することがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、扉間の隙間や扉の戸先部と竪枠間の隙間に上方から雨水が浸入するのを防止できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、枠と、枠に室外側に開くように支持した扉とを備え、扉は、戸先部の室外側面に戸先側に突出する煙返しが形成してあると共に、煙返しの上端部にキャップが取付けてあり、キャップは、天板部と、天板部の室内側縁部に設けた立ち上がり片を有し、立ち上がり片は横枠の室外側見付面よりも室内側に位置しており、横枠は下面の室外側端部に垂下するヒレ片を有し、ヒレ片はキャップの立ち上がり片に当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による建具は、扉の戸先部の室外側面に戸先側に突出する煙返しが形成してあると共に、煙返しの上端部にキャップが取付けてあり、キャップは天板部と、天板部の室内側縁部に設けた立ち上がり片を有し、立ち上がり片が横枠の室外側見付面よりも室内側に位置しており、横枠は下面の室外側端部に垂下するヒレ片を有し、ヒレ片はキャップの立ち上がり片に当接しているので、扉間の隙間や扉の戸先部と竪枠間の隙間に上方から雨水が浸入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図3に示す建具の扉同士の突合せ部の平面図である。
【
図3】本発明の建具の一実施形態を示す室外側正面図である。
【
図5】(a)はキャップの平面図、(b)はキャップの室内側面図、(c)はキャップの底面図、(d)はキャップの側面図である。
【
図6】扉が一枚の場合の戸先框と竪枠との取り合いを示す平面図である。
【
図7】従来の建具の扉同士の突合せ部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜3は、本発明の建具の一実施形態であって、ビル用の両開きの外開き窓に適用した実施形態を示している。本建具は、
図2,3に示すように、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1に蝶番(図示省略)で支持した左右の扉2a,2bを備え、左右の扉2a,2bが室外側に観音開き状に開くようになっている。
【0008】
枠1は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上枠8と下枠10と左右の竪枠11,11とを四方枠組みして構成してある。上枠8は、
図2に示すように、下面の室外側端部にタイト材ホルダー12を形成し、タイト材ホルダー12にゴム製のタイト材9が保持してあり、タイト材9は垂下するヒレ片9a,9bを室外側と室内側に有し、室内側のヒレ片9bが各扉2a,2bの上縁に当接している。さらに上枠8と下枠10と竪枠11は、扉2a,2bの室内側面に当接するタイト材32を有している。
【0009】
各扉2a,2bは、
図2,3に示すように、アルミニウム合金の押出形材で形成した上框13a,13bと下框14a,14bと戸先框3a,3bと吊元框15a,15bとを四周框組みし、各框の内周側に形成された溝15内にガラスパネル16の周縁部を嵌め込み、シール材17で固定してある。
室外側から見て右側の扉2aの戸先框3aは、
図1に示すように、室外側面に扉間の隙間18を隠す煙返し4が設けてある。煙返し4は、室外側に突出する見込み面部4aと、見込み面部4aの先端より戸先側に向けて突出する見付面部4bとを有し、見付面部4bは上枠8の室外側見付面8aよりも室外側に位置している。
室外側から見て左側の扉2bの戸先框3bは、室内側面に煙返し19が右側の扉2aの戸先框3aの煙返し4と対称に形成してある。さらに室外側から見て左側の扉2bの戸先框3bは、室外側面の戸先側端部と見込み面の室内側端部とにタイト材ホルダー20a,20bが形成してあり、各タイト材ホルダー20a,20bにタイト材21a,21bが保持してある。室外側のタイト材21aは、室外側から見て右側の扉2aの戸先框3aの煙返し4の裏面に当接し、室内側のタイト材21bは室外側から見て右側の扉2aの戸先の室内側端部に当接し、両タイト材21a,21bにより扉2a,2b間からの雨や風の浸入を阻止している。
【0010】
室外側から見て右側の扉2aの戸先框3aの煙返し4の上端部には、
図1,2に示すように、樹脂製のキャップ5が取付けてある。このキャップ5は、
図4,5に示すように、煙返し4の上端部を覆うカバー部22と、カバー部22より室内側に延出する天板部6と、天板部6の室内側縁に沿って立ち上げた立ち上がり片7を有している。カバー部22は、煙返し4が差し込まれる溝23内にクサビ状の突起24が複数形成してあると共に、煙返し4に形成した孔25に係止する突起26を有し、煙返し4に上方から差し込むと容易に抜けないようになっている。カバー部22の室内側壁には、突起26と対向する位置に窓31が形成してあり、窓31からドライバー等の工具を差し込んで突起26を押すことで突起26が煙返し4の孔25から外れ、キャップ5を取り外すことができる。
天板部6は、戸先側に室外側に向けて凹んだ入隅部27が設けてあり、立ち上がり片7は入隅部27に沿ってクランク状に曲がった形で形成され、立ち上がり片7の入隅部27よりも吊元側の部分7aは、
図1,2に示すように、上枠8の室外側見付面8aよりも室内側に位置し、この部分に上枠8のタイト材9の室外側のヒレ片9aが当接している。ヒレ片9aは、キャップ5の天板部6にも当接している。
なお、室外側から見て左側の扉2bの戸先框3bの煙返し19の上端部にも樹脂製のキャップ28が取付けてあるが、このキャップ28は煙返し19の上端部をカバーするだけで、天板部6や立ち上がり片7を有しないものである。
また、
図1,4には図示していないが、戸先框3a,3bの上端部には前記キャップ5,28とは別体の小口キャップが取付けてあり、戸先框3a,3bの中空部29を小口キャップにより塞いである。
【0011】
以上に述べたように本建具は、扉2a,2b間の隙間18を室外側から隠す戸先框3aの煙返し4の上端部のキャップ5に天板部6と立ち上がり片7を設け、立ち上がり片7を上枠8の室外側見付面8aよりも室内側に位置させ、且つ上枠8のタイト材9のヒレ片9aが立ち上がり片7に当接するようにしたことで、上枠8と煙返し4の間に隙間が開かず、そのため台風のように強い雨風のときでも、扉間の隙間18への上方からの雨水の浸入を阻止することができる。これにより建具の止水性能を向上することができ、1000Paの止水性能を得ることが可能となる。
【0012】
図6は、本発明の建具の他の実施形態であって、枠1内に扉2を一枚だけ設けた片開きの外開き窓の場合を示している。戸先框3には、先に述べた実施形態と同様に、室外側面に戸先側に向けて突出する煙返し4を有し、この煙返し4により扉2の戸先と竪枠11間の隙間30を室外側から隠してあり、煙返し4の上端部に先の実施形態のものと同じキャップ5が取付けてあり、キャップ5の天板部6と立ち上がり片7により、扉2の戸先部と竪枠11間の隙間30に上方から雨水が浸入するのを阻止している。キャップ5の戸先側に入隅部27を設けたことで、扉2を閉めたときにキャップ5が竪枠11と干渉せず、両開きの場合と片開きの場合でキャップ5を兼用できる。
【0013】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。扉は、室外側に開くように枠に支持してあればよく、扉の構造や支持構造は問わない。横枠は、無目であってもよい。本発明は、窓に限らず、玄関や勝手口等のドアに適用することもできる。
【符号の説明】
【0014】
1 枠
2,2a,2b 扉
3,3a,3b 戸先框(戸先部)
4 煙返し
5 キャップ
6 天板部
7 立ち上がり片
8 上枠(横枠)
8a 上枠の室外側見付面
9 タイト材
9a,9b ヒレ片